今週の視点

CSとESの向上は車の両輪だ

第24回ES(従業員満足度)調査で分かった定着率向上の優先課題 [前編]

月刊マーチャンダイジング12月号(11月20日発売)は、恒例の「ドラッグストア顧客満足度(CS)調査2018」です。毎年、ものすごい反響の人気企画なので、関心のある方はぜひ月刊マーチャンダイジングを参照してください。CS(顧客満足)とES(従業員満足)の向上は車の両輪です(図表1)。ESが高く、現場の士気が高く、定着率の良い小売業のCSは概ね高く、ESとCSの高さは正比例の関係にあります。今回と次回の2回に分けて、月刊マーチャンダイジング2017年11月号で特集した「ドラッグストア従業員満足度調査2017」のダイジェスト版を掲載します。

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ES向上が、CS向上、そして業績の向上につながる

図表1
小売業・サービス業におけるESの向上とは、一言でいうと従業員に「この会社・お店で働き続けたい」と思われることです。ESが低くて短期離職が絶えず、常に人手が足りないお店や、やる気の無い従業員がダラダラと働くお店では、陳列・クリンリネス・接客・レジ対応など、あらゆる面で目にみえるほころびが出てきます。

一方、従業員がやりがいを持って働き続けているお店は、採用コストが抑えられるだけでなく業務への習熟による生産性の向上や、サービスのレベルアップにつながり、顧客の集まるお店になっていきます。つまり、ESの向上は、CSや業績を向上させるための必要条件になります(図表2)。

図表2 ESの向上がCS、そして業績の向上につながる

今回のES調査は、ウイルベース株式会社の協力を得て、2017年5月~8月の期間、DgS(ドラッグストア)の従業員を対象に、無記名式の「Webアンケート」を実施しました。回答数は2万3,044人です。

アンケートの設問は図表3の通りです。「総合満足度」と、「従業員満足度(ES)を構成する6つのカテゴリー」の2種類に大別されます。「総合満足度」は総合的な満足度を表しますが、本件ではこの総合満足度を「当社/当店で働くことを友人、知人といった身近な人にどの程度勧めるか」を問うことで判断します。「全く勧められない」から「大いに勧められる」までの10段階で回答してもらいました。

一方、「従業員満足(ES)を構成する6つのカテゴリー」は「全社・店への理解」「顧客・社会」「業務知識・スキル」「人間関係」「処遇」「就労環境」に分かれており、さらに詳細な構成要素(全部で31)に分かれています。各要素に対して「そう思う/ややそう思う/あまりそう思わない/そう思わない」の4段階で回答する形式です。

図表3 ES調査の設問・選択肢一覧

カテゴリ 設問内容
雇用形態 (1)あなたは次のうちどれに該当しますか?
総合満足度 (2)当社/当店で働くことを友人、知人に勧めることができますか?
会社・
店への理解
(3)私は、会社の理念や店の目標を理解している
(4)上司は、会社/店の方針や決定事項をタイムリーに伝達している
(5)店の計画達成や課題解決に向けて、店の全員が協力して取り組んでいる
(6)店の計画達成や課題解決に向けて、本部/上司からの支援が常にある
顧客・社会 (7)店は近隣の地域や社会に貢献している
(8)店は、仕事のやりやすさや業績を意識するだけでなく、お客様に合った商品・サービスを提供している
(9)店の商品・サービスを友人、知人に自信をもってお勧めできる
(10)お客様は、店が提供する商品・サービスに満足している
業務知識・
スキル
(11)仕事を通じ、自分の長所や個性が発揮できている
(12)割り当てられた仕事については、上司やお店の仲間から信頼され任せてもらっている
(13)以前の自分と比較し、成長できている
(14)店には手順書やマニュアルなどが整備されており、仕事をスムーズにこなすのに役立っている
(15)本部/店はスキルアップのための研修や勉強会などを提供してくれる
(16)上司は優れたスキルや知識を持っており、部下を的確に指導している
(17)自分は、店の仕事をするのに十分なスキルや知識を持っている
人間関係 (18)私は仲間(上司や部下等)が仕事上で困っていたら、積極的にサポートをしている
(19)周囲(上司や店の仲間)に期待されている
(20)上司とは定期的に仕事内容や将来のキャリアについて話す(または面談する)機会がある
(21)上司は一方的に指示するだけでなく、自分の提案や意見も聞いてくれる
(22)私は部下(業務上の指示をする社員、パート・アルバイト等を含む)と定期的に仕事内容や将来のキャリアについて話すようにしている
(23)私は正社員、パート・アルバイトを問わずお店のすべての部下(業務上の指示をする社員、パート・アルバイト等を含む)に対して公平に接している
(24)私は部下(業務上の指示をする社員、パート・アルバイト等を含む)に対し、一方的に指示するだけでなく本人の意見も聞くようにしている
処遇 (25)自分の能力・仕事内容に見合った給料である
(26)給料は公平に決定されている
(27)上司から、仕事において良かった点、至らない点、今後努力すべき点などについてのフィードバックを定期的に受けている
就労環境 (28)店は明るく活気がある
(29)店は働きやすい環境(仕事場の適度な広さ、休憩室の有無、安全衛生面等)や設備(仕事やサービスで使う器具、空調設備等)が整備されている
(30)仕事量は自分の能力と比較し、適切である
(31)休暇や勤務シフトを決定する際、希望を考慮してもらえる
(32)サービス残業を強要されることはない
(33)お店でハラスメント(セクハラ・パワハラ)は発生していないし、発生したことを聞いたことがない

総合満足度の最低評価で1をつけた従業員が1割もいた

今回のES調査の結果では、「全体の調査結果」だけを紹介します。月刊マーチャンダイジングの特集では、正社員、非正規社員、薬剤師の3階層ごとの傾向も分析していますが、長くなるのでMD NEXTでは割愛します。

3つの階層すべてを含めた全体の調査結果では、総合満足度は10段階評価で平均は5.20、標準偏差は2.52となり、比較的バラつきが大きくなる結果となりました(図表4)。「5」と回答した人の割合が一番高く21.5%、最高の「10」(大いに勧められる)と回答した人が6.7%である一方で、最低の「1」(全く勧められない)と回答した人が10.0%もいたことは大きな経営課題です。これは、現在働いている従業員の中で、「当社/当店で働くことを友人、知人に全く勧められない」という回答者が相当割合いることを示しています。彼らのESを向上することは、顧客満足と業績向上に直結する重要な経営課題です。

次回は、ESを向上し、従業員の定着率を高めるためには、どんな項目を優先的に改善すべきか? 「ESポートフォリオ」という分析方法を紹介します。

図表4 総合満足度回答割合

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。