300坪程度の売場面積で3,000品目程度に絞り込む
アルディはドイツ出身の企業で、ハードディスカウンターと呼ばれる業態を世界中に展開するグローバルリテーラーです。ハードディスカウンターとは、ウォルマートスーパーセンターなどの大型ディスカウント店のさらに下をくぐる価格帯で食品、グロサリーを提供する小型フォーマットです。
米国アルディは、西海岸の有力スーパーマーケットであるトレーダージョーズを買収し、2017年度は売上2兆5367億円、対前年比9.6%、店舗数は2084店、対前年比7.0%、全米で18位の企業規模に躍進しています。
ディスカウント色の強いアルディに対して、「店内POP」や「試食サービス」などのエンターテイメント性の強いトレジョーとでは、異なる業態のように見えますが、業態コンセプトの多くは共通していますので、以下に整理してみましょう。
大きすぎない小型店を居抜き物件に出店し、初期投資を低くしています。また、絞り込み、単品大量販売(単品の陳列面積大)、インストア加工ゼロによって、従来のSM(スーパーマーケット)よりも圧倒的なローコストオペレーションを実現しています。また、完全なEDLP業態(価格販促がゼロ)なので、売れ方の波動が少なく、旧来の「ハイ&ロー業態」よりも、作業人時のかからないオペレーションです。
「よりよいものをより安く」を単品大量販売で実現している
洋の東西を問わず、商売繁盛の原理原則は、「よりよいものをより安く」を実現することです。しかし、この概念は実は矛盾しています。「よりよいもの」を単純に追求すれば原価が高くなり、「よりよいものをより高く」になります。
一方、「より安く」を単純に追求すれば、品質が低下し、「よくないものをより安く」になってしまいます。この矛盾する概念を解決する唯一の方法論は、「単品大量販売」です。単品で大量に販売するから、品質を高めながら、売価を下げることができるのです。
チェーンストアが多店舗展開する最大の目的は、大量の店舗数を展開することで、単品大量販売し、「よりよいものをより安く」を実現し、消費者の暮らしに貢献することです。
図表1で整理したアルディとトレジョーの業態コンセプトは、商品を徹底して絞り込み、単品大量販売を実現しようとしていることがわかります。トレジョーの「チャールスショー」というオリジナルワイン[SB(ストアブランド)]は、単品大量販売することで、一定以上の品質を維持しながら、2ドル99セントと驚くほどの低価格を実現しています。
2017年のトレジョーの企業年商130億ドル(推定)を店舗数(467店)で割り算すると、1店当たりの年商は約30億円にもなります。わずか300坪の売場面積で、3000~4000品目に絞り込まれた店舗で、1店舗30億円も売るのだから、いかに単品の売上規模が大きいかがわかります。
トレジョーのコンセプトは、「オーガニック食品を手ごろな価格で提供すること」ですから、まさに単品大量販売によって、「よりよいものをより安く」を実現していることがわかります。しかも、PB、SBのオリジナル商品の比率が90%なので、アマゾンともウォルマートとも完全に差別化できています。
トレジョーを見るたびに、「品揃えの豊富さ」と「品目数の多さ」はまったく無関係であるという原則を再確認させてくれます。
「商品をたくさん揃えましたから自由に選んでください」という売り方は、消費者にとっては選びにくい、不親切な売場なのだと思います。