今週の視点

コロナ時代は定番の「商品構成グラフ」管理が重要

第102回「定番」と「非定番」の違い 知っていますか?

Withコロナ時代は、短期特価特売による「プロモーション」(非定番)よりも、「定番」売場の選びやすさが重要になります。今回は意外と知らない「定番」と「非定番」の定義について解説します。

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Withコロナ時代は短時間の買物が求められる

Withコロナ時代は、消費者の購買行動が大きく変化していきます。

第1の変化は、狭い床面積の店舗に商品と人を詰め込み、効率を追求するという「日本型繁盛店」の売り方が敬遠されるようになり、EDLP(エブリデイロープライス。毎日低価格)への転換が本格的に進むことです。「短期特価販売」による集客は、開店前に行列をつくり、特定の日に来店客が集中するために、Withコロナ時代の消費者は敬遠するようになります。プロモーション(非定番)よりも「定番売場」で商品を購入する客が増えていきます。

第2の変化は、買物客の「店での滞在時間」が短くなることです。凸版印刷によるコロナ前とコロナ後のスーパーマーケットの滞在時間の調査結果によれば、買物客の滞在時間はコロナ前と比較して明らかに短くなっています。スーパーマーケットに「30分以上滞在する買物客」は、コロナ前は来店客の33.8%を占めていましたが、コロナ後の2020年12月では23.6%と大きく減少しています。一方で、「10分以内の滞在客」は、コロナ前の5.2%から、コロナ後には8.8%と増加しています。

店に長居したくない買物客にとって、「商品の発見のしやすさ」が重視されるようになり、定番売場の1商品あたりの陳列量が増えていきます。また、一度来店したのだから「まとめ買いしたい」というニーズも高まります。

つまり、Withコロナ時代の消費者は、「ショートタイムショッピング」と「ワンストップショッピング」の両方を求めるわけです。従って、コロナ前よりも「定番売場」の重要性が高まります。

「定番」は維持する売場 「非定番」は変化する売場

それでは「定番売場」の定義とは何でしょうか?図にまとめてみました。


(再掲:定番と非定番の違い)

定番売場とは13週以上の期間、商品構成グラフ(棚割の状態)を維持する売場のことです。小売業のマーチャンダイジング(MD)のサイクルは13週が基本単位です。有名な「ウォルマート」とメーカーの協働取り組みであるJBP(ジョイントビジネスプラン)のサイクルも13週です。13週で協働することを決めて、13週後に数値検証し、次の13週の仮説・実践プランを決定します。つまり、13週単位でPDCAサイクルを回すことが、JBPの基本なのです。

JBP

「定番商品」とは、13週間以上の期間、売り続ける商品のことです。商品部の最大の職務は、定番売場の売れ筋商品を品切れすることなく継続集荷することです。

一方、「非定番売場」(プロモーショナル、シーズナル)は、13週間以内に変化する売場のことであり、非定番商品とは、13週間以内に売り切る商品のことです。短期特価特売品や季節品、ホット商品などの期間限定の商品です。「エンド」や「平台」などが非定番商品を陳列する売場になります。

「定番」と「非定番」の売上構成比は8対2もしくは、7対3と、定番の売上の方が高いことが一般的です。しかし、非定番売場は、新しい発見、安さの刺激、季節の刺激などを来店客に与える重要な売場です。13週間変化しない定番だけの売場では面白くないですからね。とはいえ、短期特価特売を乱発していた時代は、非定番売場の売場づくり作業に忙殺され、定番売場を放置していたことも多かったようです。しかし、Withコロナの時代で、EDLP型の売り方が主流になると、定番売場の維持・管理の重要性が大きく高まっていきます。

商品構成グラフのカタチを維持することが重要

定番売場の棚割の状態を表したものが「商品構成グラフ」です(下の図)。商品構成グラフは、(1)プライスポイント(陳列量の最も多い売価・商品)、(2)プライスレンジ(価格帯)、(3)プライスライン(売価の種類)を決定することが出発点です。商品構成グラフは、「カテゴリー(顧客の購買行動の単位)」で作成することが基本になります。あまりグルーピングを大きくしないことがコツです。たとえば、「歯磨き」で作成するよりも、「美白歯磨き」といった小さな単位で作成した方が良いと思います。

商品構成グラフでもっと重要なことは、プライスポイントの山を13週間以上の期間にわたり維持することです。プライスポイントの商品は売れ筋なので、売れ筋の陳列量が多い状態を維持すれば、売れ筋商品が発見しやすく、Withコロナ時代のショートタイムショッピングのニーズを満たすことができます。また、プライスポイントの山を維持すれば、売れ筋が欠品する可能性が少なくなります。さらに、売れ筋の陳列量が多いので、補充作業が軽減化され、ローコストオペレーションにも貢献します。

商品構成グラフ(棚割の状態)の維持・管理という言葉をあえて使っているのは、商品構成グラフは時間の経過とともに悪く変化するからです。たとえば、売れ筋の継続集荷ができなくなり、プライスポイントの山が低くなる。新商品が後から棚に追加されて、売れ筋のフェース数が減る。在庫削減の指示を受けた店舗が「発注抑制」し、売れ筋の在庫が減る、などが原因で、商品構成グラフは悪く変化します。

商品構成グラフが悪く変化した状態を、私は「射的陳列」(下の図)と呼んでいます。定番の商品構成(棚割)は、つくることも重要ですが、カタチを13週間維持することの方が重要です。射的陳列になると、とくに売れ筋の商品が発見しにくくなり、欠品が続出し、店内作業量も増えてしまいます。売上の8割を占める定番売場の維持・管理こそが、Withコロナ時代の最大の売上・利益対策なのです。

※商品構成グラフについてはこちらの記事にも詳しく記載されているのでご一読ください。

基礎からわかる!「商品構成グラフ」のつくり方・読み方・使い方

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著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。