フードビジネス・アップデート

ひとり焼肉の進化が止まらない

第32回焼肉ライク新アイデア続々投入、発想力があればコロナ禍も怖くない!

ひとり焼肉で外食界に新境地を切り開いた焼肉ライク。わずか3年で海外を含め60店舗まで拡大し、その人気ぶりが分かる。コロナ禍においても、次々に新規アイデアを繰り出し焼肉イノベーションは止まらない。

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3年で急成長した焼肉ライク

2018829日に東京・新橋に1号店がオープンした「焼肉ライク」は、フードサービス業界に「アイデアの力」というものを改めて気付かせてくれた。

焼肉とは、これまでハレの日需要が色濃い業種であったが、焼肉ライクはそれを客単価1,350円というポピュラープライスに落とし込み、提供時間を3分以内に短縮化したことによって利便性が一段と増した。これまでの一般的な焼肉店で、ひとりで焼肉を食べるのとは趣が異なり、堂々と店に入ることができる。そこで、これまでひとりで焼肉店に行きたいと思いながら躊躇していた女性にその利用動機を開放した。

1号店がオープンしてから早2年半となる焼肉ライクは現在、国内50店舗(うちFC45店舗)、海外10店舗(202127日付)となっている。フードサービス業界はコロナ禍第三波によって大きな影響を被っているが、「焼肉ライク」はそれに全くひるむことなく、次々と新しい試みを展開している。その在り様を紹介しよう。

まず「環境に配慮している」ことを訴求

焼肉ライクの営業状況は2020年の年初からじわりじわりとコロナ禍の影響を受けるようになり、出店場所での違いはあるが、特に4月、5月は前年同月比で60%となった。営業は要請に従い時間短縮営業を行った。

同社代表の有村壮央(もりひさ)氏は「焼肉ライクそのものの認知度が低かった」と語り、これらを打開するために、店の間口を広げることが重要であるという方針に立ち、ここから新たな需要や顧客層を取り入れていこうと動いていった。

最初にアピールしたことは「環境に配慮している」ということ。従業員の検温と手洗いの徹底から、飛沫防止のためにアクリル板の仕切りを設定している等々、さまざま原則的な内容に加えて「客席全体の空気が2分30秒で入れ替わる」ことを随所で告知した。

そして「今こそ!!ひとり焼肉」キャンペーンとなった。「ひとりで換気の環境が整った焼肉ライクで安心して食事をしてください」ということを次々とアピールしていった。

ほぼ毎月のペースで新商品・新企画を投入

(1)526日(緊急事態宣言が解除された翌日)から、一番人気の「タン・カルビ・ハラミ」を通常価格の1,480円(税抜)から200円引きのキャンペーンを展開。「緊急事態宣言が解除されてから一番食べたい外食が焼肉」という調査会社のアンケート結果からひらめいた企画。

(2)5月から、テークアウト・デリバリーを保健所に新たに申請して、客席の一部をキッチンに変更できる店で行っている。商品はテークアウトで500円、デリバリーは800円程度。一般的に焼肉弁当は1,500円となっている中でとてもよく売れていて、平均して売上の10%を確保しているという。

(3)810日から、外出自粛やテレワークによって運動不足等による「コロナ太り」が気になる人に向けて、ご飯を外してたっぷりのチョレギサラダに変えて、これにミスジとハラミをセットにした「赤身肉とチョレギセット150g(キムチ、スープ付き)」1,150(税別)を販売。さらに、「この商品を女性一人でも焼肉を楽しんでいただきたい」という趣旨で「WoMonday(ウーマンデー)」と称し毎週月曜日に1,000円で提供。

(4)915日から、「学割ライク」を販売。これは「バラカルビセット100g&ちょいたしカレー」のメニューを「ご飯食べ放題」にして、通常価格710円のものを学生証提示によって500円(税別)で提供。

(5)10月1日から1130日まで、ご飯・キムチ・スープがおかわり自由になる「メガ盛りパウンダーセット、無限ご飯キャンペーン」1,540(税別、以下同)を行った。パウンダーとはお肉が450gということ(3001080円もある)。

(6)1123日から、「松阪牛50g」500(税別)を6万食限定で発売。これは、コロナ禍で行き場を失った和牛を焼肉ライクで販売することによって、お客様には和牛のおいしさをお得に味わっていただいて、生産者応援につなげたいと考えて行ったものだ。

(7)1214日から、「フェイクミート」を全店で販売。1023日から渋谷店で先行販売して、徐々に取り扱う店を増やす。商品は「NEXTカルビ50g」290円(税別、以下同)、「NEXTはらみ50g」310円。

「フェイクミート」とは大豆や小麦、エンドウ豆などを主原料として作った肉の代替食品のことで、主にヴィーガン(絶対菜食主義者)や健康に気遣う人が求める食べ物である。これをメニュー化したことによって、これまで焼肉ライクを利用していなかったヴィーガンや、健康を意識している人が来店している状況を見て、有村氏は「フェイクミートの市場は広がり、縮むことはない」なという手応えを感じているという。

20時営業終了に従い、朝営業を1時間前倒し

さて、1月7日より2回目となる緊急事態宣言が発出されて、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県エリアの飲食店では20時までの時短営業(酒類の提供は19時まで)を要請されている(緊急事態宣言は、その後他府県に拡大)。

(8)112日から、上記の動向に対応して、朝の営業開始時間を11時から10時に1時間前倒しして、10時から11時までの新商品として「朝焼肉セット」500(税別)の販売を一都三県の店で順次導入。「朝焼肉」の内容は、バラカルビ100ℊ、ごはん(お替りサービス)、スープ、味海苔付きで、さらに生玉子かキムチを選ぶことができる。

(9)115日から、フェイクミートのデリバリー専用の弁当を約半数の店舗で提供。「ソイ焼肉弁当」サラダ無し1080円(税込、以下同)、「ソイ焼肉サラダ」1290円など4種類と、トッピング「ソイ焼肉カルビ50g」410円というラインアップである。

10128日から、「焼肉ライクバーガー」を渋谷宇田川町店で販売(テイクアウト・デリバリー)。商品は「小盛」350円(税込、以下同)、「並盛」420円、「大盛」620円、「ザ・タワー」1,050円。反響を見ながら取扱い店舗を拡大予定。

1129日(肉の日)から、「メガハラパウンダーセット」(塩ガリバタハラミ&バラカルビ&イベリコ豚)3001,280円(税別、以下同)/4501,740円、ごはん・キムチ・スープが食べ放題。昨年10月1日から1130日開催し好評を博した「1ポンド肉×無限ごはん」をシリーズ化していく。

ざっとこのような状況である。この勢いはまだ続くことであろう。このように戦う姿勢を持ち続けることが、客数、売上を維持・向上させて、人材獲得といったサスティナブルな経営体質を強くしてことであろう。

著者プロフィール

千葉哲幸
千葉哲幸チバテツユキ

1982年早稲田大学教育学部卒業。柴田書店入社。「月刊ホテル旅館」「月刊食堂」に在籍。1993年商業界に入社。「飲食店経営」編集長を10年間務める。2014年7月に独立。フードフォーラムの屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース・セミナー活動を展開。さまざまな媒体で情報発信を行い、フードサービス業界にかかわる人々の交流を深める活動を推進している。