若い世代に向け健康志向を訴求、商業施設の中で成り立つ業態
タニタは2012年1月、東京・丸の内に同社の社員食堂のコンセプトを忠実に再現したレストラン「丸の内タニタ食堂」(43坪70席)をオープン。同店はランチタイム特化型ながら大ヒットし、FC、メニュー提供という展開を行い、現在直営1店、FC7店、メニュー提供21(2018年7月現在)という陣容になっている。
タニタカフェはこのタニタ食堂がバックボーンとなり誕生したもの。その開発の狙いと展望について株式会社タニタ食堂の取締役営業本部長、浅尾祐輔氏が解説してくれた。
「タニタ食堂はタニタの社員食堂をベースとした業態であり、広く一般のお客さまに毎日1回は食べてほしいという思いで運営していることから、日替わり定食の価格を800円台に設定。一方で野菜を200g前後使用するというメニュー構成のために原材料費が高くなる傾向があることから、フードサービスとしては利益率は高くなく、店舗立地及び客層が限定されます。そこで、タニタカフェは若い世代に向けて健康志向を訴求し、商業施設の中で成り立つ業態として開発しました」
「タニタカフェ」が商標として立ち上がったのは2014年11月、新潟県長岡市とのアライアンスで誕生した。当時は、店舗展開することを前提としていなかったが、タニタ食堂をライトな感覚にしたという点では、今回の原点となっている。
具体的に出店計画が立ち上がったのは1年半前のことで、今年の3月に本格的に展開することを発表し、オープンに至った。
コンセプトは「楽しさ」「心地よさ」といった「こころの健康づくり」のエッセンスをふんだんに取り入れたものであること。メーンターゲットは20~30代の女性。旬の有機野菜をたっぷりと使用したオリジナルメニューを提供し、「日々の暮らしの中で自然と健やかになっていく」新しいカフェの楽しみ方を提案するという。
フードメニューのテーマは「野菜不足解消」
提供するメニューは、飲食店開業・経営コンサルティング会社の株式会社オペレーションファクトリー(大阪・西区、社長/笠島明裕)と共同で開発。運営も同社と共同で行う。使用する有機食材は楽天株式会社(東京・世田谷区、会長兼社長/三木谷浩史)と提携し、同社が展開する農業サービス「Rakuten Ragri」に参画する生産者から直送された旬の有機野菜を一部使用している。
フードメニューのテーマは「野菜不足を解消しましょう」ということで、1食で1日の目標摂取野菜量350gの半分を摂ることができるものにした。カテゴリーは「和だしのフォー」9品目980円~1280円(税別、以下同)、「有機野菜のもち麦サラダボウル」3品目980円~1,280円、「一汁五菜健康プレート」1品目(月替わり)1,280円。フォーは和だしをベースに鶏肉、牛肉、豆乳をラインアップ。サラダボウルは10種類の有機野菜サラダにもち麦と総菜をトッピングして丼スタイルで提供。プレートは一汁五菜をプレートにして提供。
カロリーについてはタニタ食堂のような厳密な規定を設けていない。一様に抑え気味ではあるが700kcalを超えるものもある。カロリー表示はしていないが、従業員がお客さまから質問を受けたら答えられるようにしている。
盛付けは彩りが良くインスタ映えするもので、食味も豊かで良い印象が記憶に残る。
ドリンクメニューは「カムージー」3品目680円~750円、「ラテ」580円、「タニタフレーバーティー」480円、「タニタコーヒー」480円。カムージーとはチアシード、コンニャクゼリー、豆腐、フローズンカットフルーツなどが入った「噛む」スムージー。ラテはタニタカフェ監修のアーモンドミルク、オーガニック豆乳を使用。タニタフレーバーティーは心の健康=リラックス効果に着眼。タニタコーヒーにはコーヒーに含まれるポリフェノールの一種のクロロゲン酸が通常のコーヒーの約2倍含まれている。さらに、タニタカフェ監修 オーガニック豆乳を使用した「ソフトクリーム」500円もラインアップした。
広い客層が目的来店し1日10回転以上
現在、有楽町店ではモニター会員(先着100人)に対してポイントサービスを行っている。それは通信機能を持つタニタの活動量計「AM-150」(モニター会員価格2,000円)を会員証として、1来店につき50ポイントを付与(1日1回)、さらに次回の来店前日まで平均歩数200歩につき1ポイント付与(データ保存最長30日まで)。たまったポイントは商品と交換できる。
ポイント数の少ないものでは300ポイントのタニタコーヒープレミアムブレンドドリップバック1個、多いものでは8,000ポイントの体組成計まで、タニタカフェオリジナルのものからタニタの健康計測機器までさまざま取り揃えている。将来的には会員アプリを設けてポイント数に応じた割引なども検討しているが、現状のポイントシステムはそれに向けた実験と位置付けている。「健康総合企業」の同社らしい試みと言える。
現在、タニタカフェ有楽町店はオープンして1カ月が経過したが大繁盛を呈している。43席の同店は1日の客数が約500人で、満席率100%計算で10回転を超えている。これは顧客からの信頼性が高く、ほとんどが目的来店であること、それが当初20代~30代女性を想定していたところ広い客層に及び、お客さまの滞在時間が30分間と短いという特性によるものだ。
今後の展開は二つのパターンを想定している。一つはFC、もう一つはコラボレーション(コラボ)で展開するパターン。これは異業種とコラボしたメニュー提供店として、小売業や飲食店、セレクトショップ、スポーツジム、クリニックなどに併設する方式のものだ。既に「食堂カフェpotto×TANITA_CAFE」(3月、大阪・堺市)、「KURUTOおおぶ×TANITA CAFE」(4月、愛知・大府市)、「Gobanchi×TANITA CAFE」(6月、岩手・盛岡市)、「ASICS×TANITA CAFE」(7月、東京・丸の内)など8店舗オープンしている。これらで2022年に100店舗の展開を想定している(FC30店舗、コラボ70店舗)。
タニタカフェはこれからブラッシュアップしていくことによってタニタ食堂のもう一つの成長軸となっていくことであろう。