今週の視点

ウイルスとの戦いで「人生観」と「消費感」が変わる

第82回ポストコロナ社会でお客様は神様ではなくなる!?

思った以上に長期化しそうな新型コロナウイルスとの戦争ですが、コロナ戦争の戦中・戦後の世界はどう変わるのでしょうか? 生活者の「人生観」と「消費感」が劇的に変化していくような気がします。ポストコロナ時代はどんな社会なのでしょうか?

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ポストコロナ社会はぜいたく品が売れなくなる

新型コロナウイルスの影響で、生活者の「買い方(購買行動)」は、大きく変化していくと予測できます。変化対応業である小売・流通業は、「買い方」が変われば「売り方」も変えなければなりません。その購買行動の変化を整理したものが冒頭に掲載した図表です。

「お客様は神様」「お客様は常に正しい」「For the Customer」という言葉は、洋の東西を問わず小売業にとっての不変の格言でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で、「お客様は決して神様ではない」という意識が一般的になると思います。

私もドラッグストアのレジで、「なんでマスクがないんだ」と怒鳴り散らす中年男性を目撃しました。そのレジの女性は泣いていました。また、トイレットペーパーが品切れした時期に、高齢者がドラッグストアの開店前に並び、「ここで買ったら、次は〇〇スーパーに買いに行く」と買い占めを話し合う光景を見て、「こんなに人生経験を積み重ねてきたのに、自分さえよければいいのか」とがっかりしました。

緊急事態には人間の本性が出ます。東日本大震災のときにも、高齢者がペットボトルの水を買い占めているのを見て、「ペットボトルの水は未来のある赤ちゃんや若者に回せ、先の短い高齢者は水道水を飲め」と悪態をついたものです。

モンスター・クレイマーに襲われた経験によって、ポストコロナ社会では「お客のいうことを100%聞くことが正義ではない」という価値観が定着していくと思います。過度なストレスに見舞われた現場スタッフを守るためにも、「お客様は神様」という古い価値観を現場に押し付けるのではなくて、具体的なクレーム対応をもう一度明文化することが重要だと思います。

ポストコロナ社会の変化の第2は、「節約志向が高まり、ぜいたく品は売れなくなる」ことです。生活必需品を取り扱うスーパーマーケットやドラッグストアの売上と客数は大きく増えていますが、客単価は下がっています。不要不急の需要ではないぜいたく品の消費が敬遠される傾向は、コロナ後の社会でも定着すると思います。「いつ収入がなくなるかわからない」という恐怖心は、消費者の財布の紐を固く締めます。低価格志向は間違いなく強まります。

買物時間を短縮する店舗ピックアップが増える

MD NEXTでも何度か紹介した「BOPIS(Buy Online Pickup in Store)」がポストコロナ社会では普及すると思います。BOPISとは、ネットで商品を注文し、店舗で商品を受け取るサービスのことです。「三密」を避けることが習慣化した消費者にとって、短時間で買物が完結するBOPISの購買行動を好む傾向は高まることでしょう。

ポストコロナ社会の変化の第4は、「店内作業の省人化が進む」ことです。モンスター・クレーマーに悩まされる小売業の現場勤務を敬遠する人材は増えていき、小売現場の人手不足は深刻になります。新しいテクノロジーを活用した店内作業の省人化・無人化が一気に進むでしょう。ポストコロナ社会では、「無人レジ」が当たり前の社会になるかもしれません。

購買行動の変化の第5は、「接客・商談のリモート化・オートメーション化」が一気に進むことです。先日も、あるドラッグストアの商品部長が、Zoom商談について以下のような感想を述べていました。

(※注:Zoomはアメリカに本社を置くZoom Video Communicationsが提供するオンライン会議サービス。簡単にインストールでき、高画質の会議を開催できることで人気になっている)

「現在は対面商談が禁止なので、Zoomで商談しています。Zoomを使ってわかったことは、対面の商談となんら変わらない内容のある商談ができることです」

ポストコロナ社会は、オンライン商談が一般化していくと思います。月刊MDの編集部も、直近の取材はすべて「オンライン取材」です。MD NEXT編集長の鹿野恵子と、月刊MD編集長の野間口司朗は、すでにプロの「ズーマー」です。

また、タッチアップが基本の「化粧品の接客」についても、タブレットを活用した「リモート接客」のような仕組みが一気に普及するかもしれません。

オンラインセミナー開催のお知らせ

新型コロナウイルスの感染拡大を引き金に、業務量の急激な増加や頻発する品切れ、問い合わせ対応など、大きな変化にさらされる小売業。そこでこの度MD NEXT運営元のニューフォーマット研究所では、緊急オンラインセミナーを開催することになりました。この状況をどう読み解き、乗り越えていくべきか、月刊マーチャンダイジング主幹の日野眞克と店舗のICT研究所代表の郡司昇が提言します。以下の画像からお申込みください。

 

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。