消費者が選んだトレジョの人気PB、実食してみました

アメリカの食品スーパー「トレーダージョーズ」は、アイテム数を2,500~4,000に絞り込み、そのほとんどがPBや専売品という独特のスタイル。そこで、同社が毎年発表している「消費者が選ぶおすすめ商品2017年度版」のなかからいくつかの商品を、実際に購入・使ってみた。アメリカらしさを感じさせる商品が多く、日本での商品開発にそのまま活用することはできないかも知れないが、日本にない特徴もあるので参考にしてほしい。(月刊マーチャンダイジング 2018年8月号より転載)

17品目のおすすめ商品をお客の投票で決定

2018年1月、トレーダージョーズの 「消費者が選ぶおすすめ商品2017年度版」(https://www.traderjoes.com/digin/post/9th-customer-choice-winners)が発表された。これは実際にトレーダージョーズのお客の投票で決まるもので、バイヤーや納入業者の商品開発モチベーションを非常に高め、消費者に注目されることでそれらの商品の売上も伸びる。今回は、この17品目の中からいくつかをピックアップして月刊マーチャンダイジング編集部が実際に食べてみた。

甘しょっぱくて病みつきに!「Dark Chocolate PEANUT BUTTER CUPS」(キャンディー・チョコレート部門)

中には濃厚でねっとりしたピーナッツバターが詰まっており、さぞ甘いだろうとおもわせておいて、塩味が効いており甘じょっぱい。チョコレートのビターな風味、ピーナッツバターの甘じょっぱさが合わさり濃厚でありながら後味が重くなく、止まらなくなってしまう。やみつきになること請け合いだ。

 

濃い味とサクサク感が絶妙。「Peanut Butter Filled Pretzels」(スナック部門)

プレッツェル。表面は香ばしい香りがして、かじると強い塩辛さとほのかなピーナッツバターの甘さが広がり、濃い味とサクサクとした食感が楽しめる。中は空洞だが絶妙に含まれたピーナッツバターのおかげで少しだけ甘く、塩味を引き立てている。454gも入っているので満足感が高く、気持ち悪くなるまで食べてもまだまだある。

めくるめくチーズの味に包まれる「Spanakopita」(冷凍アペタイザー部門)

華氏400度で10分レンジで温める。容器ごと温められて、利便性は悪くない。温めていると、チーズのおいしそうな匂いが部屋中に充満する。ほうれん草の冷凍パイと書かれているが、実際に食べてみるとほぼチーズの味しかしない。柔らかくて食べやすく、冷凍パイでありながらパサパサしない。3.99ドルで12切れ入っていて、コスパもよい。レンジの温度設定を間違えるとすぐに焦げて食べられなくなってしまう、繊細な一品。

清涼感あり夏向けのナチュラルヘアケア「TEA TREE TINGLE Shampoo」(健康美容商品部門)

容器がかなり縦長にもかかわらずポンプ式のため、使い勝手には難ありか。オーガニックのボタニカルハーブを使用。ティーツリー、ミントなど清涼感のある香りが広がり、夏に向けてよさそう。スーッとした香りだが、頭皮にクール感はない。粘度は高めだが、泡立ちはよい。シャンプー後のキシキシ感はナチュラル系としては許容範囲では?コンディショナーは、3~5分マッサージしてくださいとの表示あり。洗い上がりは適度な保湿感も感じられて悪くない。5点満点で3.8点。

【ウォルグリーン・CVS・ホールフーズ・クローガー】アメリカ小売業 ヘルスケアPBの売り方4つの潮流

日本より先を行くアメリカ小売業のPB開発。特にヘルスケアの啓蒙の意識が高く、関連するプライベートブランド(PB)の商品開発や売り方は非常に参考になる部分が多い。本稿では2018年6月14日~19日まで、ニューフォーマット研究会で実施したアメリカロサンゼルスとラスベガス視察ツアーから、小売業各社のプライベートブランドの商品開発事例や売り方事例をご紹介する。(月刊マーチャンダイジング2018年8月号から転載)

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの糖尿病用品売場

米国No.1のドラッグストア(DgS)、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)。PBはヘルスケア、食品、ビューティケアが中心。同社はPBに注力する方針で、現在売上の25%程度がPBとされている。種類は豊富だ。

同社は日本にはない「糖尿病(=Diabetes)」の棚とPBをつくっており、売場での啓発活動も行っている。WBAのヘルスケアPB「Well at Walgreens」には、血糖測定計や血圧計など、測定器まで揃っている。

インシュリンの保冷ケースやメディカルIDブレスレット、血糖値測定器や血糖値測定機用の針、ケトン体試験紙までPBで展開。

食品PB「NICE」。ジャンクな菓子ではなく、健康志向の菓子を訴求している。

CVSヘルスに見るPBデプスアソートメント

CVSは、米国の最大規模のDgSチェーン2強のうちの1社。WBAに比べるとPBは少ないが、たとえば、ウイークリーピルケースだけで複数種類何色もあるなど、特定のカテゴリーではPBだけでデプスアソートメントを形成している。ポイントを絞って強化しているカテゴリーがあるようだ。

写真は、日焼け止めのPBデプスアソートメント。すべてPBである。

「うおのめ」ケア売場も、NB商品が一部交じっているがほぼPB。

ハンドサニタイザー(手用消毒ジェル)のPBも種類が豊富だ。

ホールフーズの情緒的卵訴求

アマゾンに買収されてからは比較的安価な商品も増えているホールフーズ。新業態の365はミレニアル世代がメインターゲットになっており価格も比較的安価。動物愛護の観点から、ケージフリー卵がPRされている。卵に情緒的な価値を付加した例と言える。

写真は、4種類の卵1ダースパック。上3つはケージフリープラスで、一番下はオーガニックの上にオメガ3脂肪酸入りのプレミアム卵だ。

ケージフリー卵とは従来のケージ飼いと比較して、配慮した方法で飼養された鶏由来の卵のこと。卵での情緒価値訴求は、日本ではあまり見られないあまりない要素だ。ちなみに売場ではNBの卵も豊富に扱っている。

マルチブランド展開するクローガー(ラルフス)

種類も多く売上比率で26%程度あるクローガー。店頭では健康訴求の「simple truth」がプッシュされている。トマト缶だけで複数種類のPBが並ぶ。

売場に多かったのは健康志向PB「simple truth」だが、その中でもサブブランド「simple truth organic」はニーズがあるのか競合を意識してか、とくに推しているようだ。

AIはなんでもできる魔法の杖なのか?

前回の連載でAIが発展した要因や今世界で求められていることを述べた。今回の記事では、そもそもAIとはなんなのかをもう少し掘り下げ、AIのやっていること、特に機械学習の分野について説明をし、概念レベルで正しいAIの理解をしてもらうことを目標とする。

第一回目となる前回の記事では、人工知能の概要と歴史、そして発展した要因と社会的なニーズについて述べた。今回の記事では、AIの特に機械学習やDeep Learningにおける概念的な説明を行う。

汎用人工知能と特化型人工知能

AIという言葉を聞いたときに、SF映画などに登場するような「人間のように自律的に、かつ分野を横断して柔軟に思考・決定・行動をする」といったコンピュータシステムを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。鉄腕アトムやドラえもんなどもそのような類の一つである。

これらは、「汎用人工知能」と呼ばれるもので、AIというものを最も大きな軸で分類しようとした際の方法の一つである。「汎用人工知能」が実現し、人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるという予測をしている学者もおり、実現に向けて研究を進めている。

AIを大きな軸で分類する際のもう一つが「特化型人工知能」と呼ばれるもので、これは「個別の課題やタスクに特化して能力を発揮する」ものである。現在スマートフォンで使われているSiriなどの音声認識システムや、Googleの子会社であるDeep Mindが開発し、韓国のプロ囲碁棋士「李世乭」を破った囲碁プログラムである「AlphaGo」などはその代表例である。

「データから学習する」とは何か

このように、AIは汎用人工知能と特化型人工知能の二つに分類することができるが、2018年現在、ビジネスや現実世界で実現できているのは特化型人工知能である。

特化型人工知能の分野で、現在特に活発にビジネスへの応用が進められているのが、機械学習・Deep Learningである。これらは「特定の問題を解けるように、データから学習する」といったものである。

データから学習するアプローチ方法は、データの与え方や問題設定に応じて様々だ。そのうちの一つが「教師あり学習」と呼ばれるものである。

教師あり学習では、AIに入力データと、そのデータから導き出すべき答えである目標ラベルをセットで与える。この入力データと目標ラベルのセットを「教師データ」と呼ぶ。例えば、顔から性別を予測する問題の場合、入力データとして人の顔写真を与え、答えとなるラベルとして男性や女性といった情報をセットで与える、といったようなものである。

機械学習やDeep Learningの分野の手法を用いる場合、このようなデータが与えられた後、入力データから目標ラベルをより精度よく出力できる手法を考え、数式とアルゴリズムで表現することが一般的だ。

使用する数式やアルゴリズムが決まったら、「データからの学習」を行う。この「データからの学習」とは、入力データから目標ラベルをより良く出力することが出来るように、このアルゴリズムと数式内における調整可能なパラメーターを修正することを指す。

 AIは魔法の杖ではない

そのため、例えば小売業において、来客人数の予測・人の性別の判別・人の年齢の推定などといった問題を解きたい場合、「データで学習していないこと」を実現することは基本的にはできない。

もちろん、様々な顔のデータで性別を予測する問題を学習させれば、新しい顔のデータが来た時に、性別を分類することはできる。しかし、「顔データから性別を学習したAI」は、同じ顔データであっても、「年齢を推定すること」はできない。また、もし入力データに日本人の顔データしかなかった場合には、日本人以外の顔データの場合には精度が低くなる可能性も含んでいる。

先述した例にあるように、一口に「顔のデータがある」と言っても、その顔のデータを使って何がやりたいか、そしてそのやりたいことに対して適切なラベルがデータに付いているか、が非常に重要である。

課題設定とデータの量・質が重要

これまで紹介してきたことが、昨今のAIブームの中心となっている機械学習、Deep Learningで出来ることの大きな枠組みである。

もちろん、これ以外にも入力データに対してラベルを付与することなく、データからその関係性を学習する「教師なし学習」と呼ばれるものや、AlphaGoなどで用いられた「強化学習」のような手法も存在する。教師なし学習で行われるものとしては、例えば店舗での購買実績をもとに顧客をカテゴライズしたり、お勧め商品をレコメンド(Recommendation)したりするものがあげられる。

これらの枠組みの中では、与えられた課題に対して、手法を決め、その手法内における調整可能なパラメーターをデータを元に修正することで、より精度が良い出力を出すように訓練する。

そのため、課題設定がそもそも既存のAIの枠組みで解くことができないようなものであったり、目的に沿う形でデータが整備されていなかったり、データ量が十分に集まっていなかったりした場合には、そもそもAIを活用することができない。よって、課題設定をうまく行い、質の良いデータを多く収集しておくことが、ビジネスにおいてAIを活用するあたってもっとも重要と言っても過言ではない。

逆に、課題設定が上手く出来ており、質の良いデータが十分にあれば、ビジネスに応用することができる。また大きなコスト削減や新たなビジネスチャンスの創出に起因するだろう。

次回は、実際に課題設定やデータの収集をうまく行い、ビジネスにおいて成功を収めた事例とそのポイントをいくつかの業界に渡って紹介する。

化粧品専門店「ULTA(アルタ)」がアマゾンと差別化し、快進撃を続ける理由

成熟している米国の小売業で、店舗数、売上ともに2桁増の企業は4社しかなく、そのうちの1社である化粧品専門店チェーンの「ULTA(アルタ)」の快進撃が続いています。毎年、定点観測していますが、年々客数が増えているように感じます。全米で974店舗(2017年時点)を展開しています。アマゾンとの差別化に成功し、快進撃を続けるアルタの特徴を解説します。

デパートコスメをセルフで自由に選べる

CLINIQUEのようなデパートブランドも入っている。

アルタが登場する以前は、アメリカの化粧品の売り方は、「セルフ販売」と「カウンセリング(対面接客)販売」の2種類に完全に分かれていました。DgS(ドラッグストア)の化粧品の売り方は、完全な「セルフ販売」です。テスターで化粧品を試すこともできない、セルフ陳列に徹しています。日本のDgSは、化粧品をテスターで試せて、ビューティ担当者が接客してくれますが、その点がアメリカと日本のDgSとの大きな違いです。

一方、アメリカでカウンセリング販売をしてくれる業態はデパートでした。DgSはセルフ販売、デパートがカウンセリング販売という棲み分けができていたわけです。

アルタは、セルフ販売とカウンセリング販売を組み合わせた売り方が特徴です。従来は、デパートでしか取扱いができなかった「CLNIQUE」「LANCOME」などのカウンセリングブランド(デパートコスメ)も取り扱っています。チェーン展開の初期の頃は、一流のデパートブランドがなかなか入らず、二流三流のブランドしか取り扱えなかったのですが、店の雰囲気もよく、接客レベルも高いことが、一流のデパートブランドからも評価され、少しずつブランドの種類が増えて現在に至っています。

デパートブランドをセルフで自由に選ぶことができる売り方が特徴。
売場の中にタッチアップコーナーが複数ある。

カウンセリング化粧品の売り方は、デパートのようなブランドごとのカウンター越しの対面接客販売とは異なり、セルフで自由に試せて、必要なときにはビューティ担当者が接客してくれる「側面接客販売」が特徴です。お願いすれば、化粧品担当者がタッチアップ(実際にメイクをして使用感とか色を確かめること)をしてくれます。

立地戦略は、都心部やフリーウェイ近くの大型SCに立地しているデパートに対して、より住宅地に近い近隣型SCに出店する戦略で成長してきました。わざわざデパートに行かなくても、自宅の近くでカウンセリング化粧品を買える便利性を武器に出店してきました。最近は、ダウンタウンの都市部にも出店しており、郊外と都市の2つの立地に展開しています。

「試せる」「接客してくれる」がリアル店舗の価値を高める

さらにアルタは、セルフ化粧品の品ぞろえも豊富です。アメリカのDgSが完全セルフ販売であるのに対して、すべての商品にテスターがあり、化粧品を試すことができます。つまり、セルフ化粧品とカウンセリング化粧品のワンストップショッピングができることも、アルタの大きな魅力です。

また、店の奥にはヘアサロンを併設しており、物販以外の来店目的もあります。ドライヤーの品ぞろえも豊富で、すべてのドライヤーに電源が入っており、風圧や使用感を試すことができます。「接客してくれる」「テスターで試せる」「ヘアサロン併設」といったリアル店舗ならではの「買物体験の質の向上」を実現することで、アマゾンと差別化し、急成長しているのです。

セルフ化粧品はすべてテスターで使用感を試すことができる。

SNSで化粧品に関するさまざまの情報を検索する女性も、最後に化粧品を購入する場所は圧倒的にリアル店舗です。SNSでいろいろ調べても、最後はテスターで試して、接客してもらって、現物を触った後に購入したいと考えるから、アルタはアマゾンと差別化することができるわけです。アマゾンでは体験できない価値を提供しているから、熱烈なファン(固定客)を増やすことに成功しています。

また近年は、自社のネット販売にも力を入れており、2017年はネット販売の売上が前年比40%も成長しました。アルタのサイトには、大量のレビューが集まり、アマゾンにも劣らない化粧品の「口コミサイト」に成長しています。また、アルタのアプリは、自撮り写真に簡単にメイク処理ができる機能もあり、ソーシャルメディアとの親和性が高く、インスタグラムなどで拡散されています。さらに、アルタのアプリでは「ロイヤルティプログラム」のポイント管理だけでなく、ヘアサロンの予約までできるようになっており、オムニチャネル化に積極的に投資していることがわかります。

アルタのスマートフォンアプリでは、化粧品をバーチャルに試用することができる。

これからリアル小売業が、アマゾンと差別化して生き残っていくためには、「ライフスタイル提案」と「ブランディング」が不可欠です。化粧という女性にとっては不可欠なライフスタイルを提案し、単なる物販にはとどまらないリアル店舗の価値創造というブランディングに成功したことで、アルタは熱烈なファンを獲得しています。

これからの時代は、アマゾンがプライム会員の信者を囲い込もうとしているように、リアル小売業も、「固定客の囲い込み」「ファンづくり」が重要です。単なる「モノ売り」の価値しか提供できないリアル小売業は、10年後に生き残ることはできないと思います。

売場の奥はヘアサロンが全店併設されている。
ドライヤーはすべて電源が入っており、風圧や使用感を試せる。

マツキヨのPB戦略が競合と差別化できた3つのポイント

2015年リブランディングしたマツモトキヨシのプライベートブランド(PB)「matsukiyo」は、ブランディング、組織体制、デザイン、消費者ニーズ研究、どれを取っても戦略的でこだわりがあり、ヒット商品も数多く評価が高い。お客が求めているのに市場に足りない商品を見つけて開発し、ナショナルブランド(NB)メーカーの商品と共存できるように徹底的に差別化して市場拡大を目指す、三方よしも実現している。理想的なPBづくりの一例といえるであろう、マツモトキヨシの商品開発をひもとく。(月刊マーチャンダイジング2018年8月号より転載)

ブランド戦略でますます重要になるPB

以前からあるPB「MKカスタマー」、2015年より展開の「matsukiyo」、加えて独立したオリジナルブランドも複数開発しているマツモトキヨシ。PB商品数は2,000点を超え、売上構成比の10.1%をPBが占めており(2018年3月時点)、ドラッグストア(DgS)の中でもひときわPBに注力している企業といえるだろう。そんなマツモトキヨシでPB商品開発を担当する櫻井壱典氏は、PBへの認識と役割が変化してきていると語る。

「多くのPBは、まず価格訴求から始まりました。2009年ごろからプレミアム系商品が浸透したことで高品質のPBも一般化して、いまでは高品質で付加価値のある商品が求められ、PBが市民権を得たともいえます。

これまでPBは、『競合との差別化』『利益拡大』『お買い得価格での提供』『来店客数増加』といった役割を果たしてきました。これからは、それらに加えて『ユーザーニーズに応える』『コーポレートブランドのイメージ向上』『企業理念の具現化』といった、企業戦略実現の側面がますます重要になってくるでしょう」

かつてPBは、低価格最優先でブランドとしてのアピールは二の次だったかもしれないが、いまや企業のブランディング手段として商品や自社ブランドをもっとアピールするべき時代なのだという。

マツモトキヨシでは大手メーカーとの専売商品にも積極的に取り組んでおり、これらも競合との差別化や両社のコーポレートブランドのイメージ向上につながる。しかし「企業理念の具現化」までできるのは、やはりPBだろう。

企業イメージに直結するPB、重視するのはブランド力と品質管理

そういった時代の変化に対応して、マツモトキヨシでは2015年末にPBのリブランディングを決断。ブランド名を「MKカスタマー」から「matsukiyo」に変更した。matsukiyoはマツモトキヨシの愛称として広く親しまれている呼び方なので、商品が店舗を連想させやすくなり、コーポレートブランドに「近い」PBとなった。認知向上・アピールになる一方で、もし商品に問題があれば企業イメージを損ねる危険もありハイリスクハイリターンだ。

「いままで以上にブランド戦略が重要になると同時に、製造責任も大きくなりました。ですから『matsukiyo』の展開を始めてからは、ブランド力向上と品質管理の徹底を両輪で強化するために、商品開発担当とは別にそれぞれ担当者を配置しました。ブランド担当は、商品ブランドコンセプト(図表1)に合致しているかを徹底します。品質管理担当は、商品開発の各工程で品質記録を取り、何かがあったときに原因を追えるようにしています」(櫻井氏、以下同)

[図表1]マツモトキヨシグループのPB、matsukiyoのブランドコンセプト

時代の変化に合わせて戦略の舵を切り、組織体制から見直し、機能させている。「PBを目立たせるブランディング」は、組織体制が整った企業だけができる戦略ともいえるだろう。

ブランド力がないと購入検討の土俵にすら上がれない

これほどまでにPBのブランド力向上を目指すのは、同社が経営において強い危機感を持っているからだ。

「アマゾンなどのECサイトが躍進を遂げており、競合は多く小売業にとって厳しい時代です。だから、まずは購入検討の段階で、お客さまの頭の中に『マツキヨにはこんな商品があるよ』というイメージがないと勝負にもなりません。われわれはブランドコンセプトに合致した『マツキヨらしい』商品を複数開発して、マツモトキヨシという企業そのものの存在感を強めたいのです」

PBは、差別化だけでなくコーポレートブランド自体のマインドシェアを高めるために役立つのだ。コンセプトや品質など徹底的にこだわって開発するため、医薬品や化粧品は開発期間が1年から長くて2年かかることもあるという。こうした一商品の積み重ねが、良質なコーポレートブランドを形成しているのだ。

エナジードリンクに見るコンセプト反映の徹底

たとえばmatsukiyoの「EXSTRONGエナジードリンク」(写真1)には、ブランドコンセプトのひとつ「面白さ・楽しさのあるアイディア」に基づく多くのこだわりがある。まずは色だ。オレンジ色の缶に緑色の液体という組合せに驚く。メロンソーダのような色なので甘いのかとおもって飲むと、意外とスッキリした味わいでまた驚く。強炭酸でシュワシュワの強さに驚き、成分の含有量の多さにも驚く。

この驚きが、「マツキヨらしさ」を強烈に印象付けている。ブランドコンセプトにのっとってちりばめられているあらゆる驚きと楽しさは、消費者がおもわず話題にしたくなる「ツッコミポイント」となり、結果SNSやインターネット上で話題になって、大ヒットした。

競合と差別化するために、国内外約300種のエナジードリンクを研究し、ほかにないこの色・商品に行き着いたという。

「このようにとがった商品を複数集積することで、マツキヨの楽しいイメージが刻み込まれていくはずです。これは『NB商品をまねしよう』という発想では生まれてこない。むしろ、どのような商品が『マツキヨ』らしいかを大切にしています。そのためにも、他メーカーの新商品は注視しています。『マツキヨ』らしさは、お客さまの選択肢を増やすことにつながり、NBからのスイッチではなく市場拡大に貢献するはずです」

[写真1]EXSTRONGエナジードリンク

中身は緑色で、「オレンジ色の缶なのでオレンジ色の液体が出てくる」とおもっていると意表を突かれる。6月20日には、新ラインアップとして「EXSTRONGZERO ENERGY DRINK」も発売。缶はイエロー、中身はパープルだ

カテゴリーごとに最適化されたデザインへのこだわり

商品開発に当たって、デザインはとくにこだわるポイントだという。

「SNSが普及して、デザインを重視するお客さまが増えています。ですので、食品はカラフルで楽しく、健康食品はシックで部屋に置いても景観を損ねないなど、カテゴリーそれぞれにデザインへのこだわりがあります」

消費者にとってベストなデザインであることを前提に、さらに売場で目立つ配色になるよう研究する。たとえば女性向けのプロテイン「matsukiyoLAB アスリートライン」は黒くてシックなパッケージで、競合商品の中にあっても目立つ(写真2)。

[写真2]黒いパッケージのアスリートライン

マツキヨLABの新商品で、今後力を入れていきたいというアスリートライン。プロテインをしっかり摂取するという目的に絞り、美容成分などは配合せずに価格を抑えている。プロテインは比較的多く摂る必要があるため、低価格の方がリピートを得られやすいと考えられるからだ。女性の日常的な運動が増えていることと、美容と運動の関連性、そしてオリンピックによる運動機運上昇の3点を鑑みると、成長の可能性が高い分野だ

カテゴリーごとにそれぞれデザインを変えるとブランドとして統一感を損ねる恐れもあるが、matsukiyoのパッケージは「マツキヨスラッシュ」という傾斜19度のラインが全商品共通で入っている。19度とはマツモトキヨシのカタカナロゴの斜角度が由来で、知らなければそれほど意識はされない控えめさだが、ファンになると「あの商品matsukiyoだな」とひと目でわかる、絶妙なラインになっている。

ECサイトとの差別化に「商品を持ち帰る楽しさ」を

実店舗での買物には必然的に「持ち帰る」作業が発生する。とくにトイレットペーパーのような大きな商品は、持って帰る労力を要し、人目も気になる商品ゆえにECサイトに分があるかもしれない。ここに着目したmatsukiyoのトイレットペーパーは、写真4のようなデザインで「家に持ち帰る楽しみ」を追求したという。差別化が難しいトイレットペーパーに、デザインによる情緒的価値を加えたアイデア商品だ。

[写真3]持って帰る楽しみを生むトイレットペーパー

まるで買い物袋を持っているかのように、ラジカセを担いでいるように見え、「持ち方」を楽しめる。機能的価値での訴求が中心となりがちなトイレットペーパーを、情緒的価値で差別化した。ペントアワードなど数々の世界的なデザイン賞を受賞している

医薬品のパッケージ統一でお客も販売員もわかりやすい

医薬品PBは、わかりやすいデザインにこだわっているという。写真5を見ると、決められた位置に決められた情報が書かれてフォーマット化されていることがわかる。このおかげで薬剤師や登録販売者は案内しやすく、お客の前でも迷わずに済む。お客が不安になってしまうことを防げるのだ。医薬品PBにおいてパッケージデザインをフォーマット化しているのは、日本では「マツキヨ」だけだという。

もちろんお客にとっても用法や効果・効能などを見比べやすいだろう。お客と販売員との円滑なコミュニケーションをデザインが促進しており、現場の負荷軽減にまで貢献する。デザインも重要な機能である。

これらのPB商品はフランチャイズ契約企業からも高い評価を得ており差別化の強みとなっているようだ。

[写真4]フォーマットが統一された医薬品パッケージ

matsukiyoの医薬品にはいろいろなサイズ・形の箱があるが、左上にロゴ、右上に容量、中央に症状、右下に薬のはたらき、といった具合に、どこにどの情報が表記されているかが共通で決まっている。ブランドコンセプトのうち、「選びやすさ、使いやすさ、わかりやすさを追求したパッケージ開発と商品情報の表記」が強く反映されている

ニッチな市場を開拓して育てることができるのがPB

PBは、NB商品には難しい「新しい市場を開拓する」役割も持っている。

「『ユーザーニーズに応える』ことは、PBのもっとも重要な役割だと考えています。お客さまの趣味嗜好は多様化しているうえに、『だれもが使っているような大衆化された商品は使いたくない』というニーズも高まっています。しかしそんなニッチな商品開発は、メジャーなマスブランドでは実現できないでしょう。つまり、市場にはスキマがあるはずなのです。PBはそこを埋めることができます。弊社オリジナルブランドのアルジェランは、まだオーガニックシャンプーが一般的になる前の2012年から発売しましたが、当時この市場はいまよりも小さかった。それでも、オーガニックなものをお手頃価格で使いたいというニーズはたしかにありました。いまでは市場も広がり、むしろNBメーカーさまがあとから出している状況ではないでしょうか。われわれ小売はお客さまに近いので、ニッチなニーズも捉えやすい。PBの未来は明るいとおもっています」

商品企画、ニーズ探しはお客の購買行動から

消費者ニーズを見つけるという点で、お客に近い小売はメーカーにまねできない力を持っている。とくに、丁寧なカウンセリングによるお客の悩み相談、要望に応えられることはDgS独自の強みだ。マツモトキヨシでも、各店舗の顧客情報を本部にフィードバックする体制が整っており、商品企画だけでなく品質管理とブランド管理強化にも役立てているという。

またマツモトキヨシの場合はオムニチャネル化が進んでおり、実店舗とネット両方の買物行動をキャッチアップできる。さらに店舗ごとに棚割を細分化させているため、エリア別・棚割別の分析も得意だ。そのうえ、独自の意識調査やクラスター分析を行うなど、生活者の研究にも努めている。

多方面からお客の理解に努め、PB開発やその他戦略に役立てている。お客を理解する体制が全方面で揃っており、かつそのデータを持て余すことなく生かしているところに、マツモトキヨシの抜きんでた強さがありそうだ。

タニタ食堂ライト版?商業施設に進出する「タニタカフェ」

「健康総合企業」の株式会社タニタ(東京・板橋区、社長/谷田千里)は、「こころの健康づくり」をコンセプトとした「タニタカフェ有楽町店」を6月6日、JR有楽町駅構内のルミネストリートの一角にオープンした。同社が飲食事業に参入したきっかけは同社の社員食堂にある。「タニタの社員食堂の定食は1食あたり500kcaℓ前後、塩分3ℊ以下で、それを毎日継続して食べるとからだが変わる」ということがにわかに話題に上った。それを書籍にしたレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房刊)は2010年2月に発行され、続編を含め累計発行部数542万部という出版界ではまれな超ベストセラーとなっている。

若い世代に向け健康志向を訴求、商業施設の中で成り立つ業態

タニタは2012年1月、東京・丸の内に同社の社員食堂のコンセプトを忠実に再現したレストラン「丸の内タニタ食堂」(43坪70席)をオープン。同店はランチタイム特化型ながら大ヒットし、FC、メニュー提供という展開を行い、現在直営1店、FC7店、メニュー提供21(2018年7月現在)という陣容になっている。

タニタカフェはこのタニタ食堂がバックボーンとなり誕生したもの。その開発の狙いと展望について株式会社タニタ食堂の取締役営業本部長、浅尾祐輔氏が解説してくれた。

「タニタ食堂はタニタの社員食堂をベースとした業態であり、広く一般のお客さまに毎日1回は食べてほしいという思いで運営していることから、日替わり定食の価格を800円台に設定。一方で野菜を200g前後使用するというメニュー構成のために原材料費が高くなる傾向があることから、フードサービスとしては利益率は高くなく、店舗立地及び客層が限定されます。そこで、タニタカフェは若い世代に向けて健康志向を訴求し、商業施設の中で成り立つ業態として開発しました」

「タニタカフェ」が商標として立ち上がったのは2014年11月、新潟県長岡市とのアライアンスで誕生した。当時は、店舗展開することを前提としていなかったが、タニタ食堂をライトな感覚にしたという点では、今回の原点となっている。

具体的に出店計画が立ち上がったのは1年半前のことで、今年の3月に本格的に展開することを発表し、オープンに至った。

コンセプトは「楽しさ」「心地よさ」といった「こころの健康づくり」のエッセンスをふんだんに取り入れたものであること。メーンターゲットは20~30代の女性。旬の有機野菜をたっぷりと使用したオリジナルメニューを提供し、「日々の暮らしの中で自然と健やかになっていく」新しいカフェの楽しみ方を提案するという。

「ぷりぷり海老豆乳マヨソースのもち麦サラダボウル」1080円(税別)

フードメニューのテーマは「野菜不足解消」

提供するメニューは、飲食店開業・経営コンサルティング会社の株式会社オペレーションファクトリー(大阪・西区、社長/笠島明裕)と共同で開発。運営も同社と共同で行う。使用する有機食材は楽天株式会社(東京・世田谷区、会長兼社長/三木谷浩史)と提携し、同社が展開する農業サービス「Rakuten Ragri」に参画する生産者から直送された旬の有機野菜を一部使用している。

フードメニューのテーマは「野菜不足を解消しましょう」ということで、1食で1日の目標摂取野菜量350gの半分を摂ることができるものにした。カテゴリーは「和だしのフォー」9品目980円~1280円(税別、以下同)、「有機野菜のもち麦サラダボウル」3品目980円~1,280円、「一汁五菜健康プレート」1品目(月替わり)1,280円。フォーは和だしをベースに鶏肉、牛肉、豆乳をラインアップ。サラダボウルは10種類の有機野菜サラダにもち麦と総菜をトッピングして丼スタイルで提供。プレートは一汁五菜をプレートにして提供。

カロリーについてはタニタ食堂のような厳密な規定を設けていない。一様に抑え気味ではあるが700kcalを超えるものもある。カロリー表示はしていないが、従業員がお客さまから質問を受けたら答えられるようにしている。

盛付けは彩りが良くインスタ映えするもので、食味も豊かで良い印象が記憶に残る。

「ぷりぷり海老豆乳マヨソースのもち麦サラダボウル」1080円(税別)
「黒毛和牛しゃぶしゃぶと焼ねぎのフォー」1280円(税別)
「一汁五菜健康プレート」1280円(税別)

ドリンクメニューは「カムージー」3品目680円~750円、「ラテ」580円、「タニタフレーバーティー」480円、「タニタコーヒー」480円。カムージーとはチアシード、コンニャクゼリー、豆腐、フローズンカットフルーツなどが入った「噛む」スムージー。ラテはタニタカフェ監修のアーモンドミルク、オーガニック豆乳を使用。タニタフレーバーティーは心の健康=リラックス効果に着眼。タニタコーヒーにはコーヒーに含まれるポリフェノールの一種のクロロゲン酸が通常のコーヒーの約2倍含まれている。さらに、タニタカフェ監修 オーガニック豆乳を使用した「ソフトクリーム」500円もラインアップした。

3種類のカムージー 680円〜750円(税別)
「ソフトクリーム」500円(税別)

広い客層が目的来店し1日10回転以上

現在、有楽町店ではモニター会員(先着100人)に対してポイントサービスを行っている。それは通信機能を持つタニタの活動量計「AM-150」(モニター会員価格2,000円)を会員証として、1来店につき50ポイントを付与(1日1回)、さらに次回の来店前日まで平均歩数200歩につき1ポイント付与(データ保存最長30日まで)。たまったポイントは商品と交換できる。

ポイント数の少ないものでは300ポイントのタニタコーヒープレミアムブレンドドリップバック1個、多いものでは8,000ポイントの体組成計まで、タニタカフェオリジナルのものからタニタの健康計測機器までさまざま取り揃えている。将来的には会員アプリを設けてポイント数に応じた割引なども検討しているが、現状のポイントシステムはそれに向けた実験と位置付けている。「健康総合企業」の同社らしい試みと言える。

現在、タニタカフェ有楽町店はオープンして1カ月が経過したが大繁盛を呈している。43席の同店は1日の客数が約500人で、満席率100%計算で10回転を超えている。これは顧客からの信頼性が高く、ほとんどが目的来店であること、それが当初20代~30代女性を想定していたところ広い客層に及び、お客さまの滞在時間が30分間と短いという特性によるものだ。

今後の展開は二つのパターンを想定している。一つはFC、もう一つはコラボレーション(コラボ)で展開するパターン。これは異業種とコラボしたメニュー提供店として、小売業や飲食店、セレクトショップ、スポーツジム、クリニックなどに併設する方式のものだ。既に「食堂カフェpotto×TANITA_CAFE」(3月、大阪・堺市)、「KURUTOおおぶ×TANITA CAFE」(4月、愛知・大府市)、「Gobanchi×TANITA CAFE」(6月、岩手・盛岡市)、「ASICS×TANITA CAFE」(7月、東京・丸の内)など8店舗オープンしている。これらで2022年に100店舗の展開を想定している(FC30店舗、コラボ70店舗)。

タニタカフェはこれからブラッシュアップしていくことによってタニタ食堂のもう一つの成長軸となっていくことであろう。

【ダイソー・ドンキ・ファミマ・イオン】SNSで人気のPB、共通項は「コスパ」と「驚き」

Twitter、Instagram、Facebook…近年、生活者の大部分が日常的に触れるようになったSNS。SNS上で話題となり、爆発的に多数の人々に取り上げられた商品が、売場で急激に売上を伸ばすケースも多いようです。ここでは、月刊マーチャンダイジング編集部がインターネットをパトロールし、最近SNSで取り上げられたプライベートブランド(PB)や注目を集めたPBを調査。独断と偏見でご紹介します。(月刊マーチャンダイジング2018年8月号より転載)

「プチブロック」(ダイソー)

キッズも大人もハマる人続出 第二弾登場のコスパ最強おもちゃ

元ネタは、大人向けの世界最小級ブロック「ナノブロック」とおもわれる。ダイソーのほかにも、セリアは「マイクロブロック」、キャンドゥは「ミニブロ」の名前でそれぞれ発売。100均ならではの圧倒的なコストパフォーマンスが特徴で、実際に組み立ててみると、インスタ映えする「カワイイ」ビジュアルでなかなかのクオリティ。「インテリアにもいい」「コンプしたくなる」「子供が毎日遊んでいる」などの声が見受けられた。

2018年春ころにシリーズ第二弾を発売。子供にはショベルカーや消防車などのはたらく車シリーズが人気。インコやフラミンゴなどの動物のほか、ウエディング需要に対応した新郎・新婦、ケーキなども。「#プチブロック」をのぞくと、凝りに凝った大作のオリジナルフィギュア作品を見ることもできる。おもちゃ好き、子育てママ、インスタ女子、100均ファンなど特定の層ではあるが、息の長い盛り上がりを見せている。

所要時間は30分~1時間で「少し難しい」ところがミソか
価格 108円(税込み)
発売日 ※2017年初頭?
内容量 1体分
製造者
参照サイト Twitter、Instagram、まとめサイト
関連ハッシュタグ #プチブロック,#ダイソー

ACTIVE GEAR「ブルートゥーススピーカー」(ドン・キホーテ)

アウトドアに最適、高音質に驚き!ワイヤレスブルートゥーススピーカー


iPhoneや音楽機器などに入った音楽を、車の中やキャンプなどのお出掛けシーンで流したい…そんなときに便利なのが、ワイヤレスで機器同士を接続することができるブルートゥース対応スピーカーだ。ドン・キホーテのスポーツ系ファッション・雑貨PBライン「アクティブギア」は、アウトドアで使えるデジタルガジェット(携帯型電子機器)カテゴリーまでカバーしている。なかでも、2014年ころに発売されたブルートゥーススピーカーは、YouTuberが取り上げたことで注目度を高め、その後音楽好きの間でもその音質のよさとコスパが評価され、ジワジワと人気が拡大。シリーズ累計約20万台のヒット商品となっている。価格は1,980円~。全天候型の防水タイプもラインアップ。軽量でカラビナ(フック)付き、カラーバリエーションも豊富だ。

ジェネリック家電などが売上を伸ばし、昨年度のPB売上構成比は11%にまで拡大しているドンキ。「あなどれない」PBに、注目度も高まっている。

価格 1,980円~(税込み)
発売日 2014年~
内容量 1個
製造者
参照サイト Twitter、まとめサイト
関連ハッシュタグ #ドンキ

ファミマベーカリー「チョコミントパンケーキ」(ファミリーマート)

チョコミン党も当惑!?「衝撃的な味」で話題沸騰

菓子やアイス、飲料メーカーがこぞってチョコミント味の商品を発売している2018年。これまでもある程度固い地盤を築いてきた感のあるチョコミント好きの人々も、改めて「チョコミン党」というキャッチーなネーミングでくくられ、スポットを浴びている。

このチョコミントブームのさなか、ファミリーマートが発売したのがチョコミント味のパンケーキだ。以前も、スライム肉まんで青色の着色料を用いた食品を発売したことのあるファミマらしい、ネタ方向に振り切った商品。味に関しては「歯磨き粉」「湿布の味」「途中で何を食べているかわからなくなる」、率直に「マズイ」などネガティブな意見が多いが、逆に買わずにはいられない気持ちを刺激して、ネット上で話題となった。

ファミマは、ほかにもチョコミント味の「メロンパン」「フラッペ」を発売。限定商品と合わせて、チョコミン党をターゲットに攻勢をかける。

パンケーキを開いて見たところ。中央にミントクリーム、その周りにチョコクリーム。
価格 138円(税込み)
発売日 2018年6月5日
内容量 2枚(1枚当り194Kcal)
製造者 敷島製パン
参照サイト Togetter(Twitterまとめ)64245view/2chまとめサイト
関連ハッシュタグ #チョコミント,#チョコミン党,#チョコミン党過激派,#ファミマ

HÓME CÓODY「そのままレンジ保存容器」(イオン)

フタをしたままレンジOK フチなしの洗いやすさも◎

主婦をはじめ、料理をする人にとって欠かせないのが保存容器だ。こだわりによってホーロー製のもの、耐熱ガラス製のものなどを使い分けるケースも多々あるが、割れにくく気軽に使えるプラスチック製も1セットは持っておきたいもの。

この商品は、イオンのPB「トップバリュ」の日用品・生活雑貨ブランドHÓME CÓODYにラインアップされている。もっとも優れている点は、ネーミングもそのものズバリ「フタをしたままレンジが使える」こと。材質問わず、ほとんどの保存容器のフタは、レンジ加熱時は外す必要がある。そのたびにいちいちラップをかけるストレスからフリーになれるのがこの商品。デザインはシンプルで、フタには溝もなく洗いやすい。サイズもいろいろ。Mは4個入りで価格も税込み213円。Instagramなどで画像とともに口コミで拡散され、人気の出ている商品だ。

2018年1月に正方形サイズが登場し、再び注目を集めるきっかけとなった。写真は従来の角形M。
価格 213円(税込み)
発売日 2014年~
内容量 4個
製造者 イオン株式会社
参照サイト Instagram、まとめサイト
関連ハッシュタグ #homecoody,#ホームコーディ,#ホワイトインテリア,#シンプルホーム

ピースピッキング生産性が2倍になったPALTACの次世代型物流システム

労働人口の減少は、日本社会の深刻な課題です。労働力不足を解決するための「省力化・省人化」の挑戦が、さまざまな分野で進んでいます。AIとロボット技術を駆使した省人化によって、物流センターの庫内作業の生産性を2倍に向上したPALTACの最新物流センター「RDC新潟」を視察してきました。

顧客接点は有人で行い、単純作業は省人化を進める

無人レジの導入を進めていたウォルマートが、今年5月に「無人レジシステム(スキャン&ゴー)の導入を中止」という発表をしました。中止の理由は、無人レジシステムの導入でレジ人員を減らしても、生産性の向上には結びつかず、一方で、「顧客満足」の大幅な低下を招いたからです。

顧客との接点である売場を省人化しすぎると、リアル店舗の顧客満足は低下してしまいます。無人店舗で買物をするくらいなら、ネットで買物した方が便利ですし、リアル店舗にわざわざ行く理由がなくなってしまいます。

リアル店舗は、ネット販売では体験できない「接客してくれる」「試せる」「試食できる」「話せる」といった、人を介したリアルな買物体験の質を向上させることが、ネット販売との差別化につながります。顧客接点である買物体験(売場)には人手をかける一方で、物流センター、バックヤード作業、補充・発注作業などの顧客接点以外の作業の「省人化・省力化」はどんどん進むでしょう。

株式会社PALTAC(本社・大阪市、二宮邦夫社長)は2018年8月より、AIとロボットの最新技術を駆使した最新物流センター「RDC新潟」を稼働させます。AI(人工知能)とロボット技術などの最新テクノロジーと物流ノウハウを融合させた独自開発の次世代型物流システム「SPAID(Super Productivity Advanced Innovative Distribution)」を導入する第1号の物流センターです。

人が動かないで商品が動く、最新ピースピッキング

RDC新潟の最大の特徴は、「MUPPS(Multitaskcrane Piece Picking System)」と呼ぶ「ピースピッキング」の仕組みを根底から変革したシステムを導入したことです。

物流の単位は、コストのかからない順番で「パレット物流」「ケース物流」「ピース物流」に分類できます。ピース物流は、わざわざケースをばらして、ピース(1個)単位でピッキングするわけですから、当然、人手とコストがかかります。日本はアメリカほど店舗面積が大きくなく、また、PALTACの物流センターの取扱商品は、低回転の非食品が中心なので、必然的に「ピース物流」が主体になります。

従来のPALTACの「ピース物流」は、「摘み取り方式」と呼ばれる方法で、オリコンを搭載したカートを人間が動かして、在庫商品の場所に移動し、そこでピースピッキング(商品をオリコンに入れる)する方法でした。

今回PALTACが新開発した「MUPPS(マップス)」は、人間は所定の位置から動かず、商品が動くことでピースピッキングを行う方法です。ピースピッキングの作業の大半を占めていた「歩く」「探す」という作業がなくなり、ピースピッキングの生産性は2倍に向上したそうです。

メーカーから納品されたケースの商品を保管トレー(緑色)に詰め替える。保管トレーは、「トレー自動倉庫」に格納される。当然、人は歩かないですべての作業が完了する。
自動倉庫に格納された保管トレーが高速で移動する世界初のマルチタスククレーンシステム。1時間に1万トレー以上の仕分能力を持つ。
保管トレー(緑色)からピックトレー(青色)に詰め替えた後に、手元に搬送されたピックトレーの商品を店別のオリコンに詰める作業でピースピッキングは完了。人は動かない、商品だけが動く。

単品を詰めるピースピッキングも。ロボット化の実現を目指す

もうひとつの新技術が、「目(カメラ)」と「脳(AI)」を搭載した「AIケースピッキングロボット」です。ロボットが段ボールのデザインと形状を記憶するので、従来のピッキングロボットのような同じ動作の繰り返しではなくて、ランダムに置かれた段ボールを自動識別して、同じ種類のケースを選んで出庫します。メーカーから納品された段ボールケースが格納された「パレット自動倉庫」からの出庫作業の完全自動化を実現しました。1時間に600ケースを出庫でき、世界最速のスピードだそうです。

ロボットのピッキング作業を見学しましたが、ものすごいスピードでした。ロボットの良い点は、24時間稼働できること。当然、ピッキングの生産性は飛躍的に向上します。

PALTACは、「AIケースピッキングロボット」の技術を応用して、商品そのものをオリコンに入れる「ピースピッキング作業のロボット化」にも挑戦します。早ければ、2019年冬に開業予定の「RDC杉戸(埼玉県)」で、ピースピッキングのロボット化が実現できるそうです。映画ターミネーターで見た「未来」がもうすぐそこまで来ています。

AIケースピッキングロボット

Amazonは顧客満足だけを追求し独走する21世紀の「宗教」だ

Amazonの2017年12月期決算は前年比30.7%増の1,778億ドル(約19兆5,580億円)、営業利益が同1.9%減の41億ドル(約4,510億円)でした。その成長は止まらず、Amazonによって起こる業界の混乱を指す「アマゾンエフェクト」なる言葉も登場するに至ります。日に日に存在感を強めるAmazonとはいったい何者なのでしょうか。いまさら人には聞けないAmazonのサービスの全体像を解説します。(月刊マーチャンダイジング2018年8月号より転載/文:MD NEXT編集部)

「地球上でもっとも大きな書店」目指し誕生

Amazon.com, Inc. (アマゾン・ドット・コム)は、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルに本拠を構えるECサイト、Webサービス会社です。Amazonは1995年にネット書店としてサービスをスタート。「地球上でもっとも大きな書店」というキャッチコピーを掲げ、インターネットの成長とともに、事業規模を拡大し続けました。1997年にはNASDAQに上場。しかし創業から7年間はずっと赤字続きでした。同社は、売上高や利益の最大化ではなく、フリーキャッシュフローの最大化を目的に掲げており、成長事業への投資を惜しまなかったのがその理由です。

あらゆるものをラインアップする小売事業

Amazonはさまざまなビジネスを展開しています。書店をきっかけにスタートしたAmazonですが、いまではEC事業としては、書籍はもちろん、日用雑貨から食品、家電に至るまでありとあらゆるものを販売しています。

Amazonの特徴は、在庫を持つ小売業を運営するだけでなく、「マーケットプレイス」も運営しているということです。これは2000年の秋からスタートした仕組みで、日本では「出品サービス」という名称で提供されています。

Amazonの商品リストの中に、Amazon以外の売り手(出品者)を掲載し、お客はAmazonから購入するか、出品者から購入するかを選択することができます。Amazonの方が値段が高かったなどの理由で、Amazon以外の出品者からお客が商品を購入した場合、Amazonは出品者から手数料を受け取るというものです。販売手数料は商品代金の総額(配送料、包装料を含む)に商品カテゴリーごとの料率を掛けたもので、たとえば食品・飲料は10%です。

出品者側はフルフィルメント byAmazonというサービスを利用し、Amazonの物流拠点に在庫を置くことで、商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでをAmazonに代行してもらうこともできます。こちらは1点当り数百円の配送代行手数料と、商品サイズと在庫日数により算出される在庫保管手数料が必要になります。

2017年のアニュアルリポートによれば、ワールドワイドのAmazonにおいて、半分以上の売上が出品者によるものだということです。2017年には、30万以上のアメリカの中小企業がAmazonで販売をスタートしたといいます。

本質は「インターネット上の商品台帳」

このマーケットプレイスという業態からわかるように、Amazonの本質は「すべての商品を網羅したインターネット上の商品台帳」であり、さまざまな売り手が集う「プラットフォーム事業」であるということができるでしょう。商品台帳はオープンになっていて、さまざまな出品者が商品を登録することができます。Amazonの基本機能は、この商品台帳になるべく多くの商品を掲載し、リコメンド機能を使うことで「買い手が想定していなかったような商品」や「買い忘れていた商品」などをお勧めしてさらなる購買につなげるというものです。

このように、自社だけに小売事業を閉じないことで、Amazonはありとあらゆる商品を取り扱いながら、在庫を持つ必要がないという状況をつくり出しました。そして、もし自社が在庫して販売するに値する商品を見つけたら、自社で在庫を持って販売するというスタンスを取っています。

Amazonといえば「ロングテール」(少量が長期間売れ続けること)という言葉で評されることが一時期はやりました。これも、商品全部を在庫しているわけではなくて、さまざまな出品者が集うプラットフォームだからこそ実現できた「売り方」ということができます。

ビジネスの根幹を支えるPrime会費

またAmazonの小売ビジネスのもうひとつの大きなポイントは、会員制のビジネスであるという点です。Amazonの大きな収入の柱のひとつが、Prime会員の会費であるといわれています。Prime会員になると、お急ぎ便の利用が無料になり、後述するAmazon Prime Videoなどのさまざまなデジタルコンテンツも利用することができます。日本での年会費は3,900円(税込み)となっています(2018年6月現在)。

Amazon Prime Videoは無料で見られる映画も多い

ヘビーユーザーにとってはそれほど高い値段ではありません。2017年度のAmazonアニュアルリポートによれば、全世界で1億人がプライム会員として会費を支払っているとのことです。なお、アメリカでは月12.99ドル、年額99ドルとなっており、この会費は徐々に値上がりしています。この会費収益を基盤として、安価な商品価格や、使い勝手のよいユーザーインターフェースの開発などに力を入れているのです。

コンテンツの閲覧方法を次々に革新

Amazonはコンテンツ事業にも力を入れています。その筆頭がAmazon Prime Videoです。Prime Videoは、映画や動画が見放題のサービスで、NetflixやHuluのようなサブスクリプション型の動画配信サービスと競っている状況です。2017年には、3,000以上のビデオの配信権利を確保し、映画製作者やその他の権利保有者にロイヤルティーを1,800万ドル以上も支払いました。

オリジナルのコンテンツ制作にも積極的です。日本では婚活サバイバルドキュメンタリーの「バチェラー・ジャパン」や密室笑わせ合いサバイバルの「ドキュメンタル」などがCMでおなじみでしょう。Amazon Prime Videoを使うと、最新映画も数百円でレンタルできるため、レンタルDVDショップなどにとっては驚異的な競合といえます。

Amazon Prime Videoが映画や動画の閲覧方法を改革したとすると、書籍を読むという体験を大きく変えたのが「Kindle」による電子書籍の購入・閲覧革命です。電子書籍リーダーの「Kindle」を使えば、書店に赴かなくても本を購入できますし、かさばる書籍の保管場所も必要ありません。もちろんPCやタブレット、スマートフォンでもKindleの書籍は閲覧することができます。

購入体験のイノベーション

Amazonの特徴のひとつが、コンテンツや商品をお客に届けるために最適なデバイスを開発し安価に提供しながら、目的の商品・コンテンツの販売を拡大していくという点です。Kindleは電子書籍リーダーですが、家庭でテレビにつないで、テレビの大画面でPrime Videoをはじめとするコンテンツを見ることができる「FireTV」は4,980円(Fire TV Stick)、同じくAmazonが販売している7インチディスプレータブレット「Fire 7 8GB」は執筆時では5,980円と他のデバイスも非常に安価に提供されています。

そういう意味では、昨年日本で発売されたスマートスピーカーの「Amazon Echo」も、最終的にはAmazonでの商品やコンテンツ購入を増やすためのツールということができるでしょう。Echoは、音声で操作できるスマートスピーカーです。「アレクサ、〇〇をして」と話し掛けるだけで、音楽の再生、天気やニュースの読み上げ、アラームのセットなど、さまざまな機能を利用することができます。

スマートスピーカーのAmazon Echoは居間にいても 買物ができる体験を提供する

このEchoと、Amazonのアカウントを紐付ければ、「アレクサ、おむつを注文して」などと呼び掛けるだけで、Amazonでいつも購入しているおむつの注文をすることができます。もはや買物をする場所は店ではなく居間なのです。購入体験のイノベーションということができるでしょう。

2016年に日本でもサービスを開始したAmazon Dash Buttonも同じく購入体験のイノベーションということができます。Amazon DashButtonは、ワンプッシュでお気に入りの商品を簡単に注文できるボタンです。2018年6月時点で150種類以上が販売されています。ボタンを押すだけで、登録されたスマートフォンに接続し、自動的にAmazonに商品が注文されます。

お客にとっては飲料や日用雑貨などのボタンを用意しておけば、家庭の在庫が切れたときにボタンひとつで補充することができ非常に便利です。また、このボタンを家庭に設置できたメーカーにとっても、ブランドスイッチを阻止し、リピート購入が期待できるというメリットがあります。

ほかにも、注文から最短4時間で生鮮食品を配送するAmazon Fresh、注文から最短1時間以内に商品を配送するAmazon Prime Nowなどのサービスが日本国内で展開されています。海外ではセルフサービスで宅配便を受け取ることができるAmazonlockerや、オンラインで注文した商品を店舗でピックアップする拠点のAmazonFresh Pickupなども展開されていて、ありとあらゆる方法での購買体験を実験、実践しているということがわかるでしょう。

AmazonFresh Pickup
Amazon Locker

急成長する企業を支えるAWS

AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)はAmazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスです。簡単に説明すると、会社の業務で使うコンピュータやシステムを、インターネット上で必要なときに必要な量だけ使用することができるサービスといえます。

これまでは業務に必要なシステムをつくる際には、サーバと呼ばれるコンピュータを購入し、それを置く専用の場所やそこに接続するためのネットワークなどを、導入企業がいちいち用意しなければなりませんでした。物理的なコンピュータには業務の処理量に限界があります。

たとえばECサイトで取り扱っている商品が急にテレビに取り上げられて注文が殺到した場合など、処理量の限界を超えてしまい、ECサイトが稼働を停止してしまうようなことも多々ありました。クラウドのよいところは、必要に応じて自由にリソースを増やすことができるので、急にアクセス数が増えたときは、自動で規模を大きくすることができます(これをスケーラビリティといいます)。

AWSは、Amazonが急成長するときに、コンピュータのリソースを迅速に用意するために構築された仕組みです。この「自社の痛みを解消するため」につくったサービスを、周辺の開発企業に提供したところ非常に好評だったため、2006年に社外向けに事業化されたという経緯があります。このAWSという基盤を利用したことで、民泊大手のAirbnbや、Dropboxなどの企業は急成長を遂げることができました。

資本力に関係なく、最新のITの仕組みを使うことができるのも、AWSの大きな特徴です。売上高数兆円の企業と同じ仕組みを、中小企業でも安価に利用することができるというのは、システムを開発する側にとっても革新的なものでした。(※https://logmi.jp/33928

Amazon GOのプラットフォームが普及する?

2018年1月にリリースされたAmazonGOは小売関係者以外にも大きな話題となりました。飲料や食品が販売されている店内には数百台ものカメラが設置されていて、お客の購買行動を確認しています。入口のゲートでスマートフォンアプリのバーコードをスキャンすることでカメラに映った映像と個人のAmazonアカウントを紐付け、商品を持って店舗の外に出るとAmazonのアカウントから自動で決済がされるという流れです。

技術の粋を極めたこの店舗に、衝撃を受けた方も少なくはないでしょう。2017年にはアメリカのスーパーマーケットチェーン、WholeFoods Marketを137億ドルで買収し、リアル店舗への進出を進めているAmazon。EC企業である同社は、なぜここまでリアル店舗に近づいてきているのでしょうか。

ひとつ予測できるのは、Amazonがリテールテクノロジーのプラットフォームをつくろうとしている点です。Amazonマーケットプレイスのように、Amazon GOで使われている技術を小売企業やメーカーに提供し、手数料等を得るという業態が予想できます。つまりAmazon GOの技術を使ったドラッグストアやコンビニエンスストアが続々店舗数を増やすという未来です。

Amazon GOは決済体験を革新する

そのときに注意したいのが、もしAmazon GOのプラットフォームがマーケットプレイスと同じ構造で提供されるのであれば、それを利用して得られた顧客の購買情報はAmazonが独占し、そのプラットフォームを利用する小売業やメーカーにはほとんど与えられない可能性が高いということです。

さらに、もしその企業が展開するビジネスが有望とおもわれれば、Amazonが独自にその業態の運営に乗り出すことも考えられます。トイザらスは2017年9月、米連邦破産法11条の適用を申請して破綻しました。その原因のひとつが2000年のAmazonとの提携であるともいわれています。

この破綻に関しては以下のような報道がなされています。

………………引用………………

(略)世間がドットコムバブルに沸いた2000年、アマゾンとトイザらスは10年契約を結んだ。これはアマゾン上でトイザらスが唯一の玩具の販売業者となる契約で、トイザらスの公式サイトをクリックするとアマゾン内のトイザらス専用ページに飛ぶ仕掛けになっていた。

この取り組みは当初、アマゾンとトイザらスの両社にメリットをもたらすと見られていた。しかし、アマゾンはその後、トイザらスが十分な商品を確保できていないことを理由に、他の玩具業者らをサイトに招き入れ始めた。

トイザらスは2004年にアマゾンを提訴し、10年契約を終了させた。そして2006年に自社サイトを立ち上げた。しかし、その後のトイザらスの動きは遅すぎた。(略)
https://forbesjapan.com/articles/detail/17781

………………………………………

また、今後は国内外でもAmazonGO方式の決済を提供するサービス事業者など登場することが予想されます。Amazonのプラットフォームにのるのか、他社の提供するそれを利用するのか、あるいは自社で開発するのか、はたまた利用しないのか…、小売事業者は今後難しい判断を求められるでしょう。

Amazonの恐ろしい点はAWSで稼いだ利益を使って、小売事業の利便性の高さや、原価割れするほどの安価な価格を実現している点です。彼らは顧客の購買データを持つことがなによりもメリットであると考えているのです。

巨大化するビジネスに付きまとう闇の側面

小売業にイノベーションを次々と起こすAmazon。しかし一方で、巨大化する同社のビジネスには闇も付きまといます。なりふり構わず顧客のことだけを見て、競合を駆逐し、その後一気に値上げをする…共存共栄なのか、独占/寡占への道なのか、独自の道をAmazonはひた走ります。

Amazonに関わる人たちの労働環境も問題視されています。とくにAmazonのビジネスを支える配送業界は、Amazonのおかげで革新が進む一方で、疲弊もしていて、日本では2013年に佐川急便が完全撤退をしたり、2017年にはヤマトが当日配送サービスから撤退しています。

1995年、Amazonのスタート時に掲げられたミッション・ステートメントは、“ to be Earth,s most customer centriccompany, where customers canfind and discover anything theymight want to buy online, andendeavors to offer its customersthe lowest possible prices.”
だったそうです。(※https://www.amazon.jobs/en/working/workingamazon

「地球上でもっとも顧客中心の会社になること。お客さまがオンラインで買いたいとおもったものをなんでも見つけることができる場所になること。可能な限り商品を安価な値段で販売すること」

…なりふり構わずその理想を実現するために邁進するAmazon。もしかするとAmazonは、この3つのミッションステートメント、すなわちドグマ(教義)を実現するため「だけ」に存在している、21世紀の「宗教」なのかもしれません。

SNSでバズってヒットしたマツキヨのPB「エナジードリンク」

現在、すべての小売業の最大の経営テーマは、いかにアマゾンと差別化できるかです。そして最大のアマゾン対策は、アマゾンでは取り扱いのないPB(プライベートブランド)を強化することです。とはいっても、デザインはNB(ナショナルブランド)のパクリで、価格は半値といった従来の「パチモノPB」ではなくて、その小売業の世界観を明確にした本当のブランディングを行わなければなりません。今週は、PBのリブランディングが成功した「マツモトキヨシ」の事例を紹介します。

これからのPB開発は定期的なリブランディングが不可欠

従来の商慣行を破壊するモンスターであるアマゾンに対抗するためには、わざわざ時間とコストをかけてリアル店舗に行く理由を明確にしなければなりません。そのためには、店舗をブランディングする必要があります。

ドラッグストアであれば、看板を外せばどの店だか分からない無個性の「業態」ではなくて、その小売業独特の世界観をもった個性的な「個態」を創造していかなければなりません。また、アマゾンでは取り扱いのないPB(プライベートブランド)を強化することも、店舗のブランディングには不可欠です。そのPBがあるから、その店にわざわざ行くというくらいのブランド力のあるPBを創造していくことが大切です。

そのためには、「つくりっぱなしのPB」ではなくて、2年くらいの期間で常にPBの品質やデザインを見直し、リブランディングをしていく必要があります。

チェーンストアの最大のブランドである店舗は、古い既存店を計画的に改装し、店舗の平均年齢を5年程度に若く保つことがセオリーです。それと同様に、PBも定期的なリブランディングをする必要があります。「店舗」も「PB」も磨き続けなければ陳腐化し、競争力を失ってしまいます。

マツモトキヨシは、2015年末にPBのリブランディングを決断しました。ブランド名を「MKカスタマー」から「matsukiyo」に変更したのです。これまでのPBは、『競合との差別化』『利益拡大』『お買い得価格での提供』『来店客数増加』といった役割を果たしてきました。しかし、これからは、それらに加えて『ユーザーニーズに応える』『コーポレートブランドのイメージ向上』『企業理念の具現化』といった、企業戦略の実現、つまり「ブランディング」の側面がますます重要になってくると考えたからだそうです。マツキヨのPB商品数は2,000点を超え、売上構成比の10.1%をPBが占めています(2018年6月時点)。

「マツキヨスラッシュ」がPB全体の統一感をつくる

それらのマツキヨのPBの中で最近大ヒットした商品が「エナジードリンク」です。カフェインが従来品の1.5倍入っており、インパクトは抜群。しかもレッドブル289円に対して、PBは150円とお手頃価格です。

マツキヨは、PBのエナジードリンクの販促のためにSNSを効果的に活用しました。ブランドコンセプトのひとつである「面白さ・楽しさのあるアイデア」に基づいて、オレンジ色の缶に緑色の液体という組合せに驚かされます。メロンソーダのような色なので甘いのかとおもって飲むと、意外とスッキリした味わいでまた驚かされ、ガス圧の強いシュワシュワ感に驚かされ、成分の含有量(コスパ)にも驚かされる…という意外性がSNSで拡散されて大ヒットしました。

マツキヨによると、早稲田大学エナジードリンク研究会が、SNSで「これは魔剤だ。すごい」という表現を使い始め、そこからバズって売上が10倍に急増したといいます。メガブランドが育ちにくく、「スモールマス」のブランドが乱立する時代は、テレビよりもコストパフォーマンスの高いSNSの活用で、ブランド認知度を上げることが大切なようです。

また、PBのブランド名「matsukiyo」の「y」の角度(19度)を「マツキヨスラッシュ」と呼び、すべてのPBのパッケージにデザインされており、さりげないアクセントですが、PB全体に統一感があるのも面白いですね。

エナジードリンクとデザインはまったく異なるが、「マツキヨスラッシュ」がPB全体の統一感をつくっている。

月刊マーチャンダイジング2018年8月号やMD NEXTでは、より詳しい内容の記事を掲載の予定です。