NFI定例セミナー「狭小商圏&コロナ時代の顧客満足度(CS)向上戦略」(2021/11/17 13:00~15:40)開催ご案内(オンライン)

11月の定例セミナーのテーマは、「狭小商圏&コロナ時代の顧客満足度(CS)向上戦略」です。『2021年度CS(顧客満足度)調査』の調査結果を分析し、CS向上のポイントを解説します。また、最新のデジタルマーケティング事例に学ぶ「固定客との絆づくり」「新規客の増やし方」についても解説します。また、エイジスリサーチ・アンド・コンサルティング社の協力のもとに実施した月刊MDの調査結果のダイジェストを分析し、狭小商圏&コロナ時代に選ばれる店になるための戦略を提言します。

2021年11月セミナーは、コロナの状況がまだ不透明なので「リモート」セミナーのみで開催します。

開催概要

・開催日:2021年11月17日(水) 13:00~15:40
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:16,500円(税込・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年11月8日(月)

スケジュール

(1)狭小商圏&コロナ時代のCS向上戦略
[13時00分~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・2021年CS調査に見るwithコロナ時代の顧客満足度向上戦略
・固定客との絆を深めるマーケティングと売り方
・新規客を増やすデジタルマーケティング
・Withコロナ時代の「接客」のポイント  他

(2)店頭調査に見る「選ばれる店の条件」
[14時40分頃~15時40分頃]

月刊MD編集長 野間口 司郎

・完全作業力が選ばれる店をつくる。開店前100%補充の重要性
・ドラッグストアのクリンリネス調査
・ドラッグストアの「化粧品」と「医薬品」の接客調査  他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

ドラスト公式アプリ、利用率が高いのは「スギ薬局」。秘訣は「クーポン施策」と「健康サポート」

新型コロナウイルスの感染拡大により、事前にクーポンやデジタルチラシなどの販促を活用し、購入する商品を決めて計画購買する人が増えています。また、CRMの強化につながる施策として、小売チェーンのアプリ活用が進んでいます。そこで今回は、ドラッグストアのアプリ活用状況を、ソフトブレーン・フィールドが、全国のアンケートモニター会員(以下、POB会員)に対して行った調査内容をご紹介します。

メーン利用者のおよそ8割がアプリを利用しているスギ薬局

今回は、ドラッグストア(以下、DgS)におけるアプリ活用を明らかにすべく、全国のPOB会員に対し、「DgSのアプリ活用に関する調査」を実施しました。

アンケートの対象者は、「普段メーン利用するDgSチェーン」が、公式アプリをリリースする「ウエルシア(855人)」「サンドラッグ(738人)」「マツモトキヨシ(659人)」「スギ薬局(628人)」「ツルハドラッグ(327人)」「ココカラファイン(277人)」「クリエイトSD(235人)」「コスモス(202人)」8チェーンのうち、いずれかであると回答した3,921人です。

※()内人数はメーン利用すると回答した人、調査期間は2021年7月7日~12日の6日間

アンケートでは、最初にアプリ活用が進んでいるチェーンを探るべく、メーン利用するDgSチェーンの公式アプリ利用経験を調査しました。

図表1は、公式アプリをリリースするDgS8チェーンのメーン利用者のうち、当該DgS公式アプリを「現在利用中である」と回答した人の割合が高い順に並べたものです。

POB会員は、日ごろからレシートを投稿してポイントを貯めることが習慣化しているためDgSアプリのポイントカードを利用する人も多く一般的な数値よりも高い傾向があることが考えられますが、調査対象の8チェーンのメーン利用者が「当該DgSチェーン公式アプリ利用中である」と回答した人の割合は、平均で5割を越えました(57.5%)。

公式アプリを「現在利用中である」と回答した人の割合がもっとも高いチェーンは、「スギ薬局(79.8%、N=628人)」で、メーン利用者のおよそ8割がアプリを現在利用しています。

8チェーン平均(57.5%)を上回ったのは、「ココカラファイン(66.1%、N=277人)」、「マツモトキヨシ(66.0%、N=659人)」、「ツルハドラッグ(63.0%、N=327人)」、「ウエルシア(62.7%、N=855人)」、「サンドラッグ(57.6%、N=738人)」の5チェーンとなりました。

一方で、8チェーン平均を下回った「クリエイトSD(43.0%、N=235人)」は、リリース時期が2019年3月と比較的新しいことが理由として考えられますが、アプリ内のポイントカードは電子マネー付で(おさいふHippo)事前に現金をチャージしておけばアプリから決済できる点や、チャージによるボーナスポイントが獲得できるメリットもあり、これから利用者を拡大していくことが予想されます。

また、「コスモス(22.3%、N=202人)」の利用率をみると、「毎日安い(Everyday Low Price)」による現金販売でポイント戦略をとらないチェーンが、アプリ利用者の獲得と利用促進を図るには、大きな課題があると思われます。

アプリ利用のきっかけは会員証/ポイントカード連携がナンバーワン

次からは、DgSメーン利用者のうち、当該チェーンの公式アプリ利用者(「現在利用中」および「利用経験があるが現在は利用なし」を含む人)の割合が高い上位5チェーン「スギ薬局(83.3%)」、「ココカラファイン(71.5%)」、「マツモトキヨシ(71.5%)」「ウエルシア(68.1%)」、「ツルハドラッグ(65.7%)」をセレクトして、どのような施策やきっかけがアプリ利用につながったのかみていきます。

※()内は、メーン利用者に占める当該DgSチェーン公式アプリ利用経験者の割合、図表はアプリ利用者の高いチェーン順、上位4回答まで抜粋。

アプリ利用のきっかけについて5チェーンの平均値は、「会員証/ポイントカード連携(45.0%)」や、「店頭での告知(41.7%)」が半数近くとなり、それに次ぐ「アプリ限定クーポン(28.5%)」や「初回特典(21.4%)」を上回りました。

チェーン別では、「ウエルシア」が、アプリ利用経験者582人のうち、「会員証/ポイントカード連携(48.6%)」がもっとも回答率が高く、その背景として、ウエルシア利用者の間で広がる“ウエル活(毎月20日にTポイントを利用して1.5倍の買い物ができるサービスを利用すること)”の広がりにより、「アプリのモバイルTカードだと付与されるポイントの倍率が高くなるから(神奈川県60代男性)」といった、アプリを活用して効率的にポイントを貯めるといった人が多くみられました。

また、「マツモトキヨシ」は、アプリ利用経験者471人のうち、およそ4割が「アプリ限定クーポン(36.1%)」と回答し、5チェーン平均値を(+7.6pt)上回りました。「毎月もらえる10%OFFクーポンのほか、クーポンが当たるくじが毎日引けて高確率で当たる(大阪府40代男性)」、「クーポンはオンラインと店頭共通で使える(東京都50代女性)」といった、マツキヨルーレットや、クーポンの使いやすさが、アプリ利用者の獲得につながっていることがわかります。

そして、今回アプリ利用率が8割を越えた「スギ薬局」は、「初回ダウンロード特典(31.0%)」で、5チェーン平均値を(9.6pt)上回りました。アプリダウン後のクーポン画面では、「10%OFFクーポン(割引・除外品を除く全品)」「100ポイントプレゼント(店内商品やアプリ掲載商品と交換できる)」といった特典のほか、購買意欲を促進するような、複数カテゴリーのクーポンがすでに配信されていました。

次に、アプリで利用する機能について5チェーンの平均値は、「クーポン(90.3%)」となり、ほとんどの人が利用していました。クーポンには、「多くの商品に適応される割引クーポン(例:一部商品を除きお好きな商品1品10%OFF)」、「特定商品の割引クーポン(例:対象のおむつ1点500円引き・10%引きなど)」、「特定商品購入でポイントがもらえる(例:対象のシャンプー1点購入ごとに150p進呈)」といった種類が、各チェーンのアプリから確認できました。

中でも「スギ薬局」は、アプリ利用経験者523人のうち、「クーポン(94.3%)」の回答率がもっとも高く、配信クーポンの種類が「特定商品の割引」が多く消費者がお得感を感じやす点や、「使いたいクーポンがレジでみつからないときがある」といった不満が挙がった中、スギ薬局のクーポンは、カテゴリー別に大きな画像でクーポンを一覧でみることが、回答率の高さにつながっていることがうかがえます。

その一方で、クーポン利用時の不満として、「ポイントカード機能とクーポンを別々に開かないとないといけない(愛知県50代男性)」といった声は、チェーン関わらずアプリ利用者から多く挙がり、会計時の操作性の向上には課題がありそうです。

他に利用する機能としては、「会員証/ポイントカード(5チェーン平均52.4%)」となり、特に「ツルハドラッグ」は、アプリ利用経験者の215人のうち、およそ6割が「会員証/ポイントカード(59.1%)」を挙げ、「ツルハのポイントカードだけではなく、楽天ポイントカードの連携もできていて、アプリを変えることなくバーコードを表示できるので便利(北海道50代男性)」といった声が多く、1つのアプリで双方のポイントがたまるメリットや、利便性が評価されていました。

また、「キャンペーン告知/参加(5チェーン平均15.4%)」においては、「プレゼントキャンペーンやモニター応募に参加する(青森県40代女性)」、「店頭ではあまり意識していないキャンペーンのお知らせが掲載されて、対象商品購入のきっかけになる(千葉県30代女性)」といった声があり、アプリからの情報の質と頻度を高めることが、コロナ禍で貴重な店頭接点を生み出し、チェーンとの関係性が深まっていることが推測できます。

「簡単で便利」の追求が継続利用の秘訣

次に、各チェーンのメーン利用者のうち、公式アプリの利用を継続していると回答した人「スギ薬局(501人)」、「マツモトキヨシ(435人)」、「ココカラファイン(183人)」、「ウエルシア(536人)」、「ツルハドラッグ(206人)」に、利用期間を調査しました。
※並びは公式アプリのリリース時期順

まず、各チェーン公式アプリのリリース時期を述べると、「スギ薬局(2014年4月)」、「マツモトキヨシ(2014年8月)」、「ココカラファイン(2016年5月)」、「ウエルシア(2016年9月)※ウエルシアHD公式アプリ」、「ツルハドラッグ(2019年11月)※ツルハHD傘下のDgSチェーン全ブランド公式アプリ」となります。ここでは、「コロナ禍で新規利用者を獲得できたか」、「長期間にわたり継続利用されているか」をポイントにみてみましょう。

まず、14年リリース「スギ薬局」と「マツモトキヨシ」における、公式アプリ「2年未満」の利用者を比較すると、「スギ薬局(62.6%)」、「マツモトキヨシ(43.7%)」となり、スギ薬局が(+18.9pt)上回りました。その理由としては、前出の初回特典やクーポン施策の他、19年リリースの株式会社Mediplatと共同で運営するトータルセルフケアサービス「スギサポ」シリーズ(※)が好調であることが挙げられます。

中でも「スギサポwalk」は、「スギサポwalkの質問回答でポイントをためている(兵庫県30代女性)」、「スギ薬局へ来店した時に、チェックインでポイントをためている(京都府50代男性)」など、アプリで来店促進にもつながる「楽しさやお得さ」を提供し、昨年8月に累計100万ダウンロードを達成するなど、コロナ禍で健康意識が高まる中で、消費者にフィットしたと言えそうです。
※スギサポシリーズは、毎日の「食べる」「歩く」などの日常行為を中心に、楽しくお得に健康をサポートし、「スギサポwalk」の他、管理栄養士が監修した食事を冷凍便で届ける「スギサポdeli」、アプリを活用して食事管理をする「スギサポeats」の3つのサービス

一方、「4年以上」の利用者を比較すると、「マツモトキヨシ(26.4%)」、「スギ薬局(11.6%)」となり、マツモトキヨシが(+14.9pt)上回り、その理由としては、早くからデジタル戦略に注力する企業としてアプリの充実度が挙げられます。まず、処方せん送信機能は、「処方せんが医院からすぐ送信でき調剤の待ち時間が短縮できる上、ポイントもついてお得(千葉県60代男性)」といった、シニア世代からのコメントが一定数みられたため、機能の使いやすさがうかがえます。他にも、アプリから「商品の店頭在庫状況や店頭価格の確認」や、店頭でアプリから「商品バーコードを読み込むと商品情報やレビュー閲覧ができる」点など、オムニチャネルの構築により、利用シーンに応じた生活に密着するアプリに進化したことが、アプリ利用者の4人に1人が、4年以上の長期間にわたり継続利用する「ロイヤルカスタマー」の育成に寄与していると考えられます。

次に、2016年リリースの「ココカラファイン」と「ウエルシア」を比較すると、「1年~4年未満」の利用者割合は、それぞれ1~2%程度しか差がなかったものの、「4年以上」の利用者は、「ココカラファイン(14.2%)」、「ウエルシア(8.8%)」となり、ココカラファインが(+5.4pt)上回り、楽しく継続利用を促す「店舗チェックインや、スクラッチなどでポイントが貯まる」などといった、コメントが書かれていました。そして、5チェーン中もっとも新しい2019年リリースの「ツルハドラッグ」は、およそ6割が「1年未満(57.3%)」となり、直近1年間での利用者を大きく伸ばしています。

今までの調査結果から、チェーンが公式アプリ活用を促進していく上で、「会員証/ポイントカードのデジタル化」は、いつも持ち歩くスマホでカードの提示やポイント確認ができるため、必要不可欠な要素であることがわかりました。また、「クーポン配信」は、顧客接点を増やす施策として効果的ですが、当たり前ながら、顧客目線での使いやすさや、ストレスフリーな操作性が重要視されます。

また、アプリ利用を辞めた人からは、「クーポン→会員証を出して、支払いはPayPayとなると、レジで時間がかかる」、「チェーンのポイントではなく、共通ポイントを貯めるようになった」といった声もありました。流動的な顧客ニーズやトレンドを察知し、機能の見直しや追加をしながら、メリットを実感できるアプリを目指すことや、「アプリはポイントカードとして、チラシやクーポンはLINEで確認」といった声もみられ、消費者が「簡単で便利」といった部分を、常に追求したデジタル戦略が、新たな顧客接点を増やす上で重要であると言えるでしょう。

参考)各DgSチェーン公式アプリについて(並びはアプリリリース順)

〇POBアンケート調査概要(平均年齢53歳、関東エリア在住者が半数)
調査期間:2021年7月7日~12日、インターネットリサーチ:公式アプリをリリースするDgSチェーン、「ウエルシア(855人)」「サンドラッグ(738人)」「マツモトキヨシ(659人)」「スギ薬局(628人)」「ツルハドラッグ(327人)」「ココカラファイン(277人)」「クリエイトSD(235人)」「コスモス(202人)」8チェーンのいずれかをメーン利用する3921人

誰でもできる「平凡」なことを徹底することは「非凡」である

時代は変わっても、大量の店舗を展開する「チェーンストア」にとって、もっとも重要な競争戦略は「基本の徹底」です。とくに、本部で決めたことを現場で徹底する「完全作業力」の高さこそが、チェーンストア組織の最大の差別化戦略です。

汚い売場からは女性の固定客が逃げる

「汚い売場は女性が逃げる」という言葉は、顧客満足度調査のミステリーショッパー(買物調査隊)のスタッフが残した格言です。本誌が組織したミステリーショッパーに、覆面で複数のドラッグストア(DgS)に買物に行ってもらったところ、その店で商品を「買わなかった理由」の第1位が、「売場が汚い、テスターが汚れていた」というクリンリネスに関する項目だったからです。小売業というのは、「基本の徹底がなによりも重要である」ということを再認識したと同時に、売場や商品が汚れていても、平気で放置している店舗があることに驚いたものです。

図表1 現場力を高める基本5原則

図表1は、店頭の現場力を高める5ヵ条を整理したものです。すべての項目は、だれにでも理解でき、だれにでも実行できる「当り前のこと」です。しかし、当り前のことを全員で、全店で、100%実行することは、とても困難なことであります。「小売業とは、誰でもできることを、誰にもできないくらい徹底する」ことが、最大の差別化戦略であるということが、今回の視点の結論です。

ダメな組織ほど、商品部、店舗運営部、社長、副社長、専務—etc.から、店舗現場に対して、ありとあらゆる方向から、ありとあらゆる異なった指示が嵐のように降り注いでいます。しかも、指示を出す側は、指示を出すことで安心してしまうので、指示が実行されたかどうかは確認しないまま放置されます。店頭現場では、指示を実行しなくても叱られないということが分かると、必ず、指示を左から右に受け流すようになります。

そして、本部からの指示・命令は、現場では実行されず、「指示の屍」が累々と積み上げられていきます。実は、こういう組織ってほんとに多いと思います。つまり、小売業の店頭実現力を高めるためには、「100の指示より1の徹底」という意識をなによりも優先することが大切です。

100の指示より1の徹底を重視せよ

江戸時代の商家である三井家で、享保年間の初期に、組織のタガが緩んで業績が悪化した時期があったそうです。創業家(オーナー経営者)が業績回復のために、ありとあらゆる指示を出しましたが、一向に現場では実行されませんでした。しかし、ある番頭さん(サラリーマン経営者)が、ただひとつの指示だけを徹底するという組織改革を断行しました。

その「ただひとつの指示」というのは、当時の商家は、住み込みの丁稚奉公でしたから、全員が「門限を守る」というひとつのルールを徹底することだけでした。だれにでもできる簡単な決まりを、たったひとつだけ守ることを、番頭さんは従業員と約束した代わりに、その決まりに関しては100%妥協しないことを徹底しました。

妥協しないとは、1分でも遅れたら、門を閉めて、寒い夜に外に締め出すのは可愛そうだからと、同情して門を開けることは絶対にしないことを徹底したのです。結果として、たったひとつの決まりを、全員が守るようになることで、組織は活性化し、企業文化は変わり、業績も回復したそうです。現代にも通用する「組織改革のセオリー」が、その逸話の中にあると思います。

また、何年か前に、あるDgSの経営者が、新社長に就任した際に、「仕事が終わって帰社する時に、机の上のもの(書類や本、事務用品など)をすべて引き出しにしまって、机の上に何も置かないで帰る」という決まりだけを徹底したそうです。その経営者は、あれこれやりたいのを我慢して、図表1の「整理・整頓」の1点を全員で守り、徹底することだけに、こだわったそうです。

「机の上に何も置かないで帰る」という、だれにでもできそうな決まりも、実は全員で徹底するのは簡単なことではなくて、繰り返しいい続けて、何ヵ月もかかって、やっと徹底することができたそうです。

ところが、不思議なことにひとつのことが徹底できると、2番目、3番目の「決まり」を徹底する速度は、確実に速くなるそうです。つまり、ひとつのことを徹底することが、組織を活性化する近道だということが分かります。そういう意味で、図表1の「整理・整頓」と「クリンリネス」の徹底は、小売業がまず実行すべき基本中の基本です。

売れ筋の陳列量を全店で維持しよう

図表1の3番目の項目である「フレンドリーサービス」も重要な差別化戦略です。尾行販売やディープなカウンセリングを実施するデパートとは違って、月刊MDのメイン読者であるDgS(ドラッグストア)は、短時間の「接客」「コミュニケーション力」が重要です。さらに、清潔な身だしなみと、感じのいい挨拶を徹底することが重要です。

4番目の「鮮度管理」も小売業の基本です。生鮮食品を取り扱っていないDgSの場合、鮮度に鈍感な企業が多いようです。賞味期限切れの食品や、精米日から3ヵ月以上経過した米を店頭で発見した買物客は、黙って二度と、その店に行かなくなります。「賞味期限管理の仕組み」、「死に筋退治の仕組みづくり」も、基本の徹底のためには不可欠です。

5番目の「売れ筋の陳列量」も商品構成のもっとも大切な基本です。50坪の店だろうが、1,000坪の店だろうが、買物客から聞かれる質問の第1は、「○○はどこにあるのですか?」という質問です。

「売れ筋」や「売り筋」が1フェース陳列では、買物客が商品を見落とすことで売り逃がしが発生し、さらに店頭欠品による機会損失も膨大です。売れ筋や売り筋は、「売れる陳列量の維持」が重要であり、それが小売業の商品構成の「当り前の基本原則」なのです。

先日も、あるDgSで、有名な売れ筋商品のシリーズが5品目陳列されていましたが、すべて1フェース陳列でした。店の人に「売れ筋品目はどれか?」と確認したら、案の定、1番目の売れ筋が欠品しており、2番目の売れ筋が品薄であり、残り3品目は十分に在庫がありました。

つまり、「売れる商品は陳列量を多くする」という小学生でも理解できる簡単な原理原則を、全店で実行し、その状態を維持することは、とてつもなく難しいことなのです。誰でもできることを徹底できる組織だけが、他店との競争に勝ち、差別化できるのだと思います。つまり、真の差別化とは、奇をてらうことではなくて、当り前のことが当たり前にできる状態を継続することなのです。

[月刊MD2009年1月号の今月の視点より引用]

ドラッグストアならではの「カラダにいいPB食品」ってなんだ?月刊MD2021年9月号の見どころ紹介

皆さんこんにちは、月刊マーチャンダイジング編集長の野間口です。エンジェルスの大谷翔平選手が心の支えです。朝一でヤフーニュースで大谷選手の速報を確認します。ホームランを打っていたら動画を見ます。1日5回くらい見ることもあります。日本男児がメジャーリーグでホームラン40本打って、8勝挙げてるんですよ!!最早ヒーローアニメの世界です。子供と同学年ですが、大谷選手を本当に尊敬しています。日本の希望です。大きくなったら野球選手になりたいです。もう十分大きいのでこのまま編集者を続けます。

…さて、月刊マーチャンダイジング2021年9月号の特集は「ファンづくりの切り札 カラダにいいドラッグストアPB」です。

ドラッグストア(DgS)は2,000店を超える企業が2つ。10月にはマツキヨココカラ&カンパニーが誕生して3,000店ドラッグが出現します。これだけの店舗数(販路)があれば、規模で言えばNBに匹敵する程のPB展開が可能になり、品質、価格だけではなく、どういう「コンセプト」、「メッセージ性」を持たせるかが、お客との絆づくりに大きな影響を与えます。客数確保の切り札になり得るということです。

特集ではウエルシアHDとマツモトキヨシHD2社を取材しています。

特集①ウエルシアHD

ウエルシアHDの松本社長のインタビューも掲載。

同社では「医食同源プロジェクト」を推進、これとも連動して新PBブランド「からだWelcia」を本格始動させています。「食事を通して健康なカラダをつくりましょう」というメッセージの発信です。

PB開発チームの平均年齢28歳、若手が同社のPBづくりを牽引します。

横浜薬科大が監修した「食べるヌルねば生姜スープ」オクラ、モロヘイヤなど9種類のヌルねば食材使用

特集②マツモトキヨシHD

マツモトキヨシHDのPB食品はマザーブランドであるmatsukiyoとは別に管理栄養士、薬剤師、ビューティスペシャリストが監修したmatsukiyo LABがあります。

さらにその下に、プロテインを中心にした「アスリートライン」、低糖質商品で構成する「サステナブルロカボライン」があります(図表参照)。

2021年5月にスタートした「サステナブルロカボライン」は単なる低糖質ではなく「美味しく続けられる」というコンセプトを持たせて味にもこだわります。

同社ではPB利用者をロイヤルティ別に3層に分類して、もっともロイヤルティの高い「絆層」の割合を数値化して経営目標のひとつに入れています。

特集③ゴダイ

その他、地域密着DgSとして兵庫県姫路市本社のゴダイを取材、地域シェアを上げるための進んだ戦略をご紹介。

カテゴリー強化企画では「メンズ美容」をお届けします。

スキンケア、メイクする男性急増中、将来は化粧品のジェンダーフリー化が予想されます。つまり、現在の女性用化粧品の市場はマックスで倍増する可能性ありということです。

異常気象、異常事態の世の中ですが、心を平静に前を向いて仕事に勉学に励みましょう!

月刊マーチャンダイジング2021年9月号を是非ご購読ください。

一部記事はnoteでもご購読いただけます!

コロナ禍で激動のフードビジネスは新業態を目指す

コロナ禍による酒類提供の自粛要請や営業時間短縮のあおりを受け、苦しい局面に立たされている飲食業。帝国データバンクの調査によれば、2020年の飲食業の倒産件数は780件と過去最高で、今後も増加すると見られる。その一方、積極的にテイクアウトやデリバリーなどの新しい販売方法に挑戦する企業も登場。飲食業中心にモバイルオーダーのシステムを提供するShowcase Gigの新田剛史CEOにお話を伺う。(MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年9月号より抜粋)

「猫も杓子もBOPIS」混乱の2020年

新田氏は、この1年の変化を「猫も杓子もモバイルオーダー・BOPISといっていた1年前と比較して、いま進んでいる案件は、チェーンストアが真剣にBOPISにどう取り組むかを考えた末で導入を進めているものが多い」と総括する。

2020年春、1都3県にはじめての緊急事態宣言が発出されたころ、飲食業を中心に急速に高まったのがBOPIS(Buy Online Pickup In Store)への期待だった。モバイルオーダーを起点とした次世代店舗創出プラットフォーム「O:der Platform(オーダープラットフォーム)」を提供するShowcase Gig社にも相談や問い合わせが相次いだが、当時の問い合わせは「ただただ混乱していた」と新田氏は振り返る。

緊急事態宣言発出により、営業時間短縮が要請され、酒類提供時間も制限された。感染への不安から外食をする人も激減。企業規模も業種も異なる企業から、モバイルオーダーやデリバリーシステムを導入したいという相談が相次いだという。

アプリやインターネットを介した注文をどう処理するかにはいくつか種類がある。主なものはモバイルオーダーとデリバリーだ。

モバイルオーダーは、スマートフォンアプリやインターネットから注文をして、それをお客自身で店舗に取りに行くというもの。店舗カウンターで受け取るもの、店舗内外のロッカーで受け取るもの、店舗に入らなくても駐車場で受け取れるカーブサイドピックアップなどの種類がある。

デリバリーは、アプリやインターネット経由で受けた注文を、お客の指定する場所まで配達するもの。自社便や提携業者を通じて配送する企業もあれば、Uber EatsやWoltのようなプラットフォームを通じて受注し、ギグワーカーが配達するケースもある。

ちなみに、お客が飲食店の自席でスマートフォンやタブレットから注文をして、できた食べ物をフロアスタッフがお客の席まで届けるものをテーブルオーダーと呼ぶ。

ところが昨年4月の緊急事態宣言の際は、これらの区別も理解していないような企業から「とにかくなんとかしたい」という問い合わせが殺到した。「個店からの問い合わせも多く、前提となるモバイルオーダーの種類からご説明する状況でした」。

デジタルを活用した新業態への期待

一方で、2021年に入ってからは、デジタルをどう自社の営業に戦略的に取り込むかを考え抜いたうえで、新業態構築へ挑戦しようとする企業からの問い合わせが増えている。腰を据えてデジタルに取り組もうという企業が増えている印象だ。

そもそもコロナ禍以前から、飲食業は決して楽な業種ではなかった。材料費や人件費高騰で苦境に立つ飲食業界に追い討ちをかけたコロナ禍だったが、そのことにより業態の変化に弾みがついた。

「未来のためにきちんと予算を確保し、企業の枠組みをデジタルも活用しながら再構築し、新業態をつくっていこうとしています。やっとみんな少しずつ元気になって未来を向き始めました。これから形骸化した古いものを捨てて、未来に向かっていく時代が来るのではないかとおもっています」

新しい業態として新田氏が注目しているのが、一家ダイニングプロジェクトが運営している「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」のような「テーブルタップ+テーブルオーダー」の業態だ。

期待される新業態「テーブルタップ+テーブルオーダー」(一家ダイニングホームページより)

ラムちゃんは食べ放題中心のジンギスカン店だが、すべてのテーブルにハイボールのタップが設置されている。飲み放題を選択すれば、手元のレバーをひねるだけで、飲みたいだけハイボールを飲むことができる。

また、テーブルに貼り付けられたQRコードを自分のスマートフォンでスキャンして、表示された画面からオーダーをすることもできる。従業員を呼び止めて、注文を伝えるという手間もかからない。フロアスタッフには外国人労働者も多く、日本語でのコミュニケーションが難しいことも多い。そういった場合にも、テーブルタップ&オーダーは便利だ。

「若いお客さまたちは、オーダーをするときに、うるさい店内で大声を出して従業員さんに声を掛けたくないとおもっている方が少なくありません」。「接客は人間がやらなければならない」と考える経営者もいるが、若い世代の感覚はそれとは真逆といえる。ビジネスでもプライベートでも、チャットツールでやりとりするのが当然となった若年層は「テキストでスマートフォンからオーダー」することに対してまったく抵抗がないのである。

「テーブルタップ+テーブルオーダー」であれば、ほとんど従業員と会話をしなくても、自分のペースで好きなだけ、好きなものを飲食することができる。この業態は追随する企業も登場し始めており、飲食業界のひとつのスタンダードになり得るのではないかと新田氏はいう。

3年前倒しでデジタル化進む海外動向

日本より感染状況がひどかった海外諸国はどのような状況なのか。新田氏によれば「3年前倒しで進んだ状態」だという。

まず、アメリカでのテーブルオーダーの急速な普及だ。テーブルオーダーは2010年代中盤ごろから、中国の飲食店において爆発的なブームとなっていた。一方、チップの文化があるアメリカでは、なかなか普及が進まなかった。しかしコロナ禍によって一気に普及が進み、いまではフルサービスのレストランでもテーブルオーダーが一般的なものになったのだという。

アメリカでは複数のデリバリープラットフォームをつかう飲食店が多い (写真はイメージです)

モバイルオーダーの企業も急速に成長を遂げている。アメリカのモバイルオーダーでトップツーとなっているのが、「toast」と「SQUARE」である。2011年に創業した「toast」は、アメリカで飲食店向けのPOSシステムや管理プラットフォーム(モバイルオーダーや顧客ロイヤルティープログラム、データ分析)を提供する。

アメリカのモバイルオーダープラットフォームで急成長する「toast」
toastの管理画面

コロナを機に売上を拡大し、2020年には4億ドル(440億円)を調達。評価額は49億ドル(5,380億円)で、2021年には上場を検討している。SQUAREはもともとモバイル決済をメイン事業としていた企業だが、モバイルオーダーサービスも提供。こちらは飲食だけではなく物販、小売にも対応しているのが特徴だ。

日本に存在してない業種が「olo」のようなSaaSプラットフォーム(モバイルオーダー、デリバリー一括管理)も急成長を続けている。デリバリーを導入している飲食店で、ひっきりなしに「Uber Eats」「出前館」「Wolt」それぞれから注文が入った通知音が鳴っているという状況に遭遇したことはないだろうか。

[図表1] olo業績推移

各プラットフォームからどんどん注文が入ってしまうので、製造工程が混乱してしまった…という飲食店は多い。アメリカの飲食デリバリーにも「Grubhub」や「DoorDush」のようなさまざまなプラットフォームが存在しており、oloは飲食店向けにそれら複数プラットフォームから入ってきた注文を管理するツールを提供している。同社は2020年には売上高前年同期比194%、利益306万ドル(3億3,600万円)と急成長を続けており、2021年3月には上場を果たした。

(写真はイメージです)

業務システムと消費者向けUI/UXはまったく異なる

国内飲食業においては、後述する丸亀製麺やマクドナルド、吉野家などの店舗数4桁のチェーン店がモバイルオーダーを導入して一定の成功を収めるなど、デジタル活用の機運が高まってきている。

しかし、いざモバイルオーダーなどを取り入れようと、ロッカーを設置したり、アプリを導入してはみたものの、活用されないという悩みを抱えている企業は少なくない。

ここで配慮しなければならないのが「業務システムのUI/UX(顧客接点や顧客体験)」と、「消費者向けのUI/UX」はまったく異なるという点だ。

たとえば…

本文の続きは月刊MD note版にて!

 

新田 剛史(にった たけふみ)
上智大学卒業後、東京ガールズコレクション立ち上げ期のプロデューサーとして数々のプロジェクトを手掛ける。2009年、株式会社ミクシィ入社。新規事業の責任者として「ソーシャルギフト」「ソーシャルコマース」など数々のヒットを生み出す。2012年、株式会社Showcase Gigを設立し、国内初のモバイルオーダープラットフォーム“O:der(オーダー)”を開発。

物流設計の精度を高めるには「買い手に対する解像度を高める」こと

工具や部品の通販会社であるモノタロウの物流センター立ち上げを指揮し、現在株式会社CAPES代表として物流のコンサルティングを行う西尾浩紀さん。EC専業企業から実店舗を運営するチェーンストアまで幅広く物流の経験を積んできた西尾さんに、昨今の物流の動向と、これからの小売業の物流について聞いた。 (聞き手:MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年9月号より抜粋)

海外では店舗を物流拠点に位置付ける事例も

──物流と聞くと、漠然としていて捉えづらい印象もあります。最近は有店舗、無店舗が入り乱れているというのも理解を難しくしているようです。私たちは物流という観点からはどのように分類して理解すればよいのでしょうか。

西尾 いわゆる「物流」というと、一般的には最終消費者の手に届く「ラストワンマイル」とおもわれがちですが、実はその工程はチェーンのように長く、階層も深いものです。

物流を分類するときに、明らかに作業の質が違うのは、「最終消費者に届けるための機能を有する物流」か「物流センターや店舗に分配する物流」かというところです。ですから、実店舗を運営している企業の物流なのか、無店舗・通販なのか、あるいはそのハイブリッドなのか…というのが物流の種類を分類するカギになりますね。

昨今の小売業の物流トレンドとしては、実店舗を物流拠点としてどう位置付けるかが話題になっています。アメリカや中国は一歩進んでいて、店舗を在庫保管拠点として位置付け、そこから最終消費者まで商品を運ぶというような取組みも進んでいます。(※編集部注:マイクロ・フルフィルメント・センター、MFCと呼ばれる)

日本でもそのようなことに挑戦している企業もありますが、取り扱っているのがコモディティ中心で、単価が低いため、利益の大半を配送費で食いつぶしてしまうという問題があり、ビジネスとして成立させるのは非常に難しい状態です。

わかりやすくいえば、コンビニで1本100円のジュースやおにぎりをお客さまのご自宅までお届けするのに、どれぐらいの費用がかかるのか…という話で、構造的にはどう考えても赤字になってしまいます。

一方で、「〇円以上送料無料」というように、送料無料となる購入金額を設定する方法もあるんですが、「そもそもコンビニで5,000円も買うか?」という問題になってきてしまいます。

ネットスーパーのようなモデルは世界を見渡してもまだ成立しづらい状況です。とはいえ、自宅に配送を行って、成立しているモデルもあります。たとえば都心で配達を中心に規模を拡大しているカクヤスさんのように、商品単価が高いアイテムを取り扱っていて、都心で高密度に配送すればよいというモデルです。

──昨今ではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)に取り組もうとする企業も増えてきました。

西尾 弊社では小売業の物流センター設計の支援をさせていただいているのですが、物流を設計をするのに、ネットやアプリから注文された商品をどうやってお客さまに店頭でお渡しするのかということまで加味して設計をしています。ですから、必ずしもお客様のところまで届けに行くことがすべてではないということです。

人の介在とリードタイムをゼロにする潮流

──世界的に、物流の潮流というのはどういう方向に進んでいるのでしょうか。

西尾 確実に挙げられる世界的な動向は2つあります。

ひとつは商品配達までのリードタイムをゼロにしていくという流れ、もうひとつは人間の介在をゼロにしていくという流れです。

まず配達までのリードタイムをゼロにするという点です。ECでは、ここしばらく「注文翌日配送」や「受注1時間後に配送」など、注文から配送までのリードタイムをゼロに近づけるための努力が進んでいました。しかしその動きはいったん緩和されているようにもおもいます。

もちろん、お客さまに買った瞬間に手元に届けてほしいというニーズはあるものの、そこに労働力が追いつかず、コストも合わないという状況です。さらにこの数年で、「そこまではしなくてもよい」と消費者のマインドがやや変わったように感じています。とはいえ、購入してから到着まで5日、10日かかるのはちょっと長すぎるので、各社適切なリードタイムを模索している状況といえます。

もう一点が自動化の流れです。世界各国で自動化の流れは出てきていますが、全自動がいいのか、人の作業を一部残した方がいいのかという「自動化の程度」についてはまだ答えが見つかっていません。

これは私の推測ですが、Amazonは明らかに人間の介在を物流工程に残しています。物流の設計から人のよさと機械のよさをうまく使い分けようとしているのが感じ取れて、彼らは全自動となることをよしとしていないように感じます。

一方、中国の企業は「全自動の物流センターを立ち上げました!」と華々しくアピールすることも少なくありません。中国EC大手企業「京東集団(JD.com)」は、2017年に全自動倉庫の設立をリリースしました。全自動の未来が来たと、関係する企業は色めき立ったのですが、それ以降とんとそのニュースを聞かなくなりました。ある種宣伝的な位置付けで設計した物流だったのではないかとおもっています。

日本の物流自動化を妨げる「こまやかな対応」

西尾 日本の自動化はきわめて遅れている状況です。これには日本特有の「こまやかな対応」が関係しています。アメリカや中国の物流機器メーカー、物流システムメーカーは「俺たちの提供するサービス・プロダクトはこうだ。使いたいのであれば、御社の業務を仕組みに合わせるべきだ」というスタンスを崩しません。

日本は逆で、物流機器メーカー・システムメーカーは「御社では一体どのように業務を進めていらっしゃるのですか? それに全部きめ細かに対応させていただきます」というスタンスです。

結果、日本の物流の現場は、各社各様という状況に陥っています。ホームセンターであれば、カインズ、ビバホーム、ホーマックでは同じような物流作業でいいのではないか、とおもいますが、それぞれの企業がそれぞれ特殊な仕事の仕組みを持っていて、同じ物流の設計では対応できません。

自動化にとってもっとも重要なのは業務の標準化なのですが、同じXという商品を「Aというお客さまに納品するときにはこういうラベルをここに貼る」、Bというお客さまに納品するときには「違う印刷のしてあるこういうラベルを別の場所に貼る」…という個別対応が必要になってきてしまうんですね。

これまで私は、膨大な「うちの現場は特殊で、自動化に向いていないです」と、自動化を見送るケースを見てきました。

これは日本らしいといえば日本らしいのですが、日本が強みとしてきたきめ細かなサービスが、自動化やシステム化の前では足を引っ張ってしまっているわけです。自動化という局面では、日本企業は苦しんでいる状況といえます。

──Amazonはまだ人のよさを残そうとしているとおっしゃられましたが、なぜなのでしょうか。特殊なオペレーションに急に対応できるとか、特殊な荷姿の商品にも対応しやすいという点なのでしょうか。

西尾 たとえば判断をしながら行う検品作業は機械にはできなくて人間でなければ対応ができません。お客さまが買ったこのAという商品と、こちらのBという商品は同じものを指しているととか、箱がへこんだ商品を値引きして販売するべきか、これぐらいならそのまま出荷しても大丈夫と考えるか…だとか。現時点では、このような現場で起こる事象を機械で画一的に判断するのは難しいんです。

人間の方が状況に応じた対応をすることができるので、検品検査は人間が頑張ってやっている分野ですね。

もう一点は、波動対応のようなものです。1日に機械で処理できる荷物の分量というのは上限が決まってしまいます。ですが、ブラックフライデー&サイバーマンデーのように、受注が跳ねるタイミングがあり、それをすべて機械に対応させようとすると、オーバースペックになってしまいます。

ですが、低めに設定してしまうと、急に入荷・出荷量が跳ねたときに対応できません。この波動対応は機械が苦手な部分なので、人がそのときどきに応じて処理する必要が出てきます。

──日本特有のこまやかなサービスのせいで自動化が進んでいないとおっしゃられていましたが、それは強みといえるのでしょうか。

西尾 これは非常に難しい問題なのですが、私はそういった考えは捨てるころ合いに来ているのではないかとおもっています。現場が回せなくなってきたからです。現場でいろいろなご用聞きを続けていた結果、そのしわ寄せが個別性を生んできました。

個別性があるということは、それぞれの現場に「匠」がいるということです。

定型化しづらい作業、標準化しづらい作業を匠が抱えていたのですが、その匠がどんどん定年退職しています。標準化しておかなければ量をさばくことができません。匠を抱え込んでおければいいのですが、今後人口が減少する世の中ではそれも難しくなってくることでしょう。

ある程度作業を標準化し、人間の判断をなるべく減らすようなプロセスを構築しないと、とくに物流関連の企業は永続的に企業活動を続けていくことが難しくなってきています。人手を集めて匠の世界でやっていくのはもはや限界です。

モノタロウは「買い手に対する解像度」が高い

──西尾さんが立ち上げに関わられていたモノタロウの物流については、非常に評価が高いですね。その秘訣をご自身ではどのように分析なさっていますか。

西尾 物流は、それそのものが主役になることはないと、個人的にはおもっています。どのような販売戦略を取るのか…つまり、だれにどのようなリードタイムで、どんなふうに商品を提供するのか…という意思があり、それに合わせて設計されるべきものです。

それで、モノタロウの物流をご評価いただいているのであれば、そもそも会社としてその物流設計の前段階である「買い手に対する解像度の高さ」が理由なのではないかとおもいます。

Amazonや楽天のように、一般消費者向けのECサイトは、衝動買い的に「欲しい!」とおもって、ポチッと購入することが多いとおもいますが、モノタロウのお客さまは小さな町工場のような事業者さんがとても多いんです。

このような方々は、「この部品は摩耗するから年に1回、毎年1月に交換しよう」というように、計画的な購買をされていたり、一方で、「今日作業をしようとしたら、このパーツが足りない!」といって慌てて購入されるようなケースもあります。

企業であれば平日の日中は必ず人がいるから時間帯指定はいらないかもしれません。このような、買い手に対する理解が深く、買い手の方に対して「お客さまがこういうことを求めているなら、こんなふうに届けよう」と、販売側から展開されてくる要件を、物流でどう実現するのかを考えるのが私たちの仕事でした。

そのためには「どの配送会社にお願いしようか」「配送料はいくらぐらい?」「拠点の立地はどこ?」…などを検討します。商品も、小さなねじから物干しざおまで取り扱いますから、どこまでを自動化の対象にするのか、緻密に考えて設計する必要がありました。

モノタロウの物流は、まずお客さまを正しく理解して、その方たちに価値を提供するための物流であるという考え方が、わりと明確だったのではないかと思います。

──お客さまの解像度の高さというのは意識してそうなさっていたということでしょうか。

西尾 そうですね。私の管轄外の業務なので私の個人的な認識にはなりますが、通販の会社だからこそ、取得したお客さまのデータを活用しようと意識していたとおもいます。どのカテゴリーがどう売れているか、どんなお客さまがどの商品を購入されたかなどの分析はかなり力を入れていたのではないかと思います。

──実店舗を運営している小売業でさえ、まだそこまでデータ分析は進んでおらず、モノタロウのような解像度は得られていないと感じています。

西尾 実店舗の小売業は、ネット通販ほどお客さまのデータを取ることできませんよね。もしも、そのデータが物流設計のインプットとして存在していれば、もっと効率的なセンター運営ができるのではないかとおもいます。

たとえばペットフードとミネラルウォーターを同じリードタイムで店舗に運ぶ必要があるのか。いまは細かいお客さまの買い方、店舗での売れ方がわからないので、とにかく同じ基準で出荷し、同じリードタイムで配送するという設計になっているのではないかとおもいますが、販売のデータがわかれば、ロジスティクスの設計はもっとしやすくなるはずです。

店内物流作業はもっと減らせる

──現状の実店舗の小売業の物流に対して、西尾さんがどのように見ているかを教えてください。

西尾 店内の物流作業をもっと減らしていくことができるのではないかとおもっています。店舗の従業員の方が、もっと接客に時間を割きたくても、接客時間以上に品出しに時間がかかっている。狭いバックヤードに詰め込まれたかご車を引っ張りだしながら品出しをする…。そこをもっとスマートにできるのではないかと。

全文は 月刊MD note版にて公開中!(有料記事)
以下のリンクからご覧ください。
https://note.com/mdnext/n/nc621a7bd70cb

新習慣「電動歯ブラシで仕上げみがき」提案でベビー用オーラルケアを活性化

虫歯ができないよう気をつかう親の気持ちとは裏腹に、赤ちゃんには嫌がられることが多い仕上げみがき。この仕上げみがきを手早く、しっかりと行うためのベビー用電動歯ブラシがピジョンから発売された。赤ちゃんの成長に合わせて付け替えられる2種類の歯ブラシヘッドを付属品とし、長く使える便利アイテムになっている。乳児期のオーラルケアは非常に重要であることを訴求し、将来的に丈夫な歯をつくるためのファーストステップケア用品として売場を確立し、カテゴリー拡大につなげよう。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

ベビー用オーラルケアの市場はもっと開拓できる

ベビーのオーラルケア市場規模は約55億円。歯が生える前の歯ぐきマッサージ用ブラシ、はじめての乳歯ブラシ、親が使う仕上げみがき用歯ブラシから、フッ素コート、キシリトールとフッ素が含まれたタブレットなど、多彩な商品展開がなされている。

市場としては、近年横ばいから減少傾向にあるが、大人のオーラルケアはむし歯や歯周病、口臭に対する予防意識の高まりとともに2,000億円以上の市場規模で成長しており、一般成人のオーラルケアに関する意識は高いといってよい。

そのことからも、赤ちゃんのオーラルケアを担う親に対する啓発、情報発信をうまく行っていけば、大きな潜在需要の開拓が期待できる。つまり今後は、ベビーケア用品売場内でのオーラルケア用品コーナーの確立が重要になる。

また、大人のオーラルケア市場でも、昨今では電動歯ブラシが成長を見せている。それを受けて、電動歯ブラシの機能を知った親たちが、赤ちゃんのためにより良いケアをと思い電動歯ブラシを使用するようになりつつあるとも見て取れる。単価の高いベビー用電動歯ブラシの拡売でベビーケアカテゴリー全体の収益性も向上する。

永久歯まで影響を与えるから早期からの乳歯ケアが大事

乳歯が虫歯になると口内に虫歯菌が増え、将来生えてくる永久歯も虫歯になりやすくなるという傾向がある。だからこそ、乳児のうちからのオーラルケアは非常に大切と言えるだろう。

まだ歯の生えてこない月齢4,5ヵ月頃の時期から、歯ぐきマッサージ用の仕上げ専用ブラシの使用をスタート。まずは乳歯ブラシを使って自分でお口に入れることから慣らして、専用の歯ブラシで歯ぐきのマッサージをすることで「気持ちよさ」を赤ちゃんに感じてもらい、仕上げみがきを嫌がらないように誘導していくことが大切だ。電動歯ブラシを使うことで、嫌がる仕上げみがきをスムーズに行うことができる。

ピジョンの「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」(参考価格:2,090円 / 税込 / 電池別売)は、月齢6ヵ月頃からを対象年齢とし、12ヵ月以降も利用できるよう、替えブラシを2種(6ヵ月頃から用2個、12ヵ月頃から用1個)付属品としている。お子さまの歯の成長やご機嫌に応じて使い分けのできる強弱2モードの音波振動で、汚れをしっかり落としていけるのが特長だ。

①はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ(ピンク)2,090円(税込)(セット内容:電動歯ブラシ本体1個、替えブラシ6ヵ月頃から2個、替えブラシ12ヵ月頃から1個)
②はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ(グリーン)2,090円(税込)(セット内容はピンクと同じ)
③替えブラシ12ヵ月頃から2個セット440円(税込)

また、歯ブラシのネック部分にはLEDライトが付けられており、暗くて見にくい口の奥を明るく照らしてくれる。このLEDライトは赤ちゃんの興味を引きやすく、口に歯ブラシを入れることに対する不安感も軽減してくれると期待できる。

加えて、始動して30秒経つと音と振動、光によって経過時間がわかるお知らせ機能も搭載。お口の清潔を保つためには、口内を上下左右4ブロックに分けて各30秒ずつ磨くのが目安とされているので、このお知らせ機能を活用すれば、より効果的な仕上げみがきが実現できるだろう。

積極的な情報発信でベビーオーラルケア売場を確立

ベビーケアの購入者は子ども関連の商品に加え、日用品、化粧品、食品(簡便調理食)などを必要とする世帯で消費意欲は旺盛。今後長期に渡るお付き合いが期待できる層である。ベビーケア売場の充実は長期戦略を考えて重要。その中でベビーオーラルケア売場を確立、拡充させることでカテゴリー活性化が狙える。

コーナーには、乳児期からの口腔ケアの重要さをアピールしたPOPや展示物などを設置。また、実物見本を店頭に並べ、「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」の持ちやすさ、LEDライト、ブラシ部分のやわらかさも直接実感してもらうことで、確実な購買につなげていこう。

トップボード/情報充実で理解促進親世代への問いかけによって注目を引き、「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」のメリットを強くアピール
実物見本/リアル店舗の強みを生かす実際に商品を触って毛の柔らかさやLED ライトを体験すれば購買意欲は上がる(右端が実物サンプル)

重要ポイントのまとめ

  • 永久歯にも影響を与える「早期からの乳歯ケア」売場を確立
  • 嫌がる仕上げみがきには「電動歯ブラシ」が有効
  • 付加価値商品は上昇マーケット、「仕上げ専用電動歯ブラシ」にチャンスあり

高保湿化粧水「ザ ウォーター メイト」誕生 若年層の獲得でカテゴリー拡大を狙う

コーセーの技術力を結集させた高効能特化型シリーズ「ONE BY KOSÉ」。2017年うるおい改善の美容液発売を皮切りに現在4つのアイテムで肌悩みに応える。これに加えて2021年8月、高保湿の化粧水を発売。20代、30代前半の女性をメインターゲットに、若年男性まで視野に入れシリーズの裾野を広げる戦略的な新商品である。コロナ禍で常態化したマスク悩みにも対応してスキンケアカテゴリー全体の拡大が狙える。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

新規客層開拓のため市場投入された期待の新商品

ONE BY KOSÉシリーズはコロナ禍でも好調な実績を挙げており、2020年1〜12月の売上金額は前年比110%を記録※。美容液市場のシェアを見ても発売時の2017年と2020年の比較で約250%にまで成長※。短期間で多くの支持者を獲得することに成功している。悩みを特定したわかりやすい訴求、容器デザインを含めたシリーズの世界観、そして満足できる使い心地で一度使えばリピートする人が多いことが成功要因だろう。

こうした「勝利の方程式」があるだけに、ユーザー数を増やせばシリーズはもちろんスキンケアカテゴリーの活性化につながる。2021年8月21日発売の「ザ ウォーターメイト」はONE BY KOSÉがこれまで十分に開拓できていなかった20代、30代前半女性の客層開拓(=ユーザー数増)をひとつの目的としている。一度ユーザーになってもらえれば、シリーズの併買をはじめ客単価アップ効果を見込める期待の新商品である。新商品の持つ特長や目的を理解して積極的な紹介活動を実行しよう。

※インテージ調べ

若年女性の持つ肌悩み マスクによる肌トラブルに対応

ザ ウォーター メイトが主要ターゲットとする20代、30代前半女性の多くはストレスや不規則な生活などで、乾燥、ニキビ、毛穴の目立ちなど10代では経験したことのない肌悩みに遭遇する。2020年からはコロナ禍によりマスク着用の習慣が定着したことで、この肌悩みがさらに増加している。

こうした悩みの多くは水分不足による肌のキメの乱れ始めから起こっている。ザ ウォーター メイトは継続的に肌のうるおいを補いキメの乱れ始めを整え、みずみずしくなめらかな肌に導いていく。

モイストパフォーマーとモイストスプレッダー

ヒアルロン酸とセラミドは保湿力の高い成分として知られ、さまざまなスキンケア商品に配合されている。ザ ウォーター メイトではこの2つの成分を合体させることで、セラミドの極小サイズ化、ヒアルロン酸のコンパクトな球状化に成功。「モイストパフォーマー」※1と名付けられたこの世界初※2の成分が肌の水分量を向上させ、長時間うるおいを持続する。

さらに角層内をうるおいで満たす「モイストスプレッダー」※3を配合。これらの複合成分がキメの乱れ始めを整える。

植物のお手入れにたとえれば、モイストパフォーマーは葉をみずみずしく育てる霧吹きの役割を果たし、モイストスプレッダーは根に対する水やりで植物の深いところから水分を葉へ供給する機能がある。このW効果がキメの乱れ始めを整える。さらに、「べたつかないのにうるおう」を実現する「ウォータリースムース処方」を採用。うるおいの持続とべたつきのない使用感が体感ができる。

※1 ヒアルロン酸 Na・セラミド NG・ステアロイルメチルタウリン Na・イソステアリン酸 PEG-8 グリセリル・コレス-10(保湿)
※2 ヒアルロン酸・セラミド複合体形成のキー成分(ヒアルロン酸 Na・セラミド NG・ステアロイルメチルタウリン Na・イソステアリン酸 PEG-8 グリセリル・コレス-10)の選択が世界初。先行技術調査及びMintel社データベース内 2021年2月 当社調べ
※3 グリセリルグルコシド、アマチャヅルエキス、グリセリン

シリーズの入口を広くして若年層が買いやすい商品設計

ザ ウォーター メイトは新規客獲得をひとつの目的としている。入口を広く取るために、まず、若年層の使用率の高い化粧水を選択、コーセーの調査によれば化粧水の使用率は20〜24歳で76.9%、25〜29歳で74.3%、30〜34歳で78.7%と非常に高い。価格は2,000円台前半に設定。ONE BY KOSÉの他アイテムの実勢価格が4,000〜5,000円であることを考えると買いやすい価格である。

この価格戦略により、高価格帯の百貨店ブランドからの流入、低価格帯の一般化粧品からのランクアップ両方が狙え(図表1)、店舗としては客単価アップが期待できる。

図表1  上下両方の価格帯から流入期待

美容液との一体販促で併買と美容液新規購入狙う

新商品の販売にあたっては、既存品でシリーズの中核的なアイテムである美容液「セラムヴェール」との一体展開を提案する。コロナ禍当初、化粧品全体の売上が不振になった時期でもセラムヴェールは落ちることなくシリーズを牽引し続けたという実績もある。ザ ウォーター メイトの基調色の薄い紫(クールパープル)はセラムヴェールの濃い紫(エナジーパープル)との連動性を考えておりカラーマーチャンダイジングとしても色による一体感、「かたまり感」で視認性アップできる。

新商品はテレビCMはじめ豊富なマーケティング活動で認知率アップを図るので、これを活用してセラムヴェールの認知も上げれば併買、美容液の新規購入も期待できる。

同社では「One minute活動」として、売場で1分間で商品を紹介、セルフ体験できる販促物や話法を用意している。サンプルも豊富に供給されるのでシリーズ・カテゴリー拡大に活用しよう。

WEB、SNSの施策も充実、WEB肌診断「One Skin Check」はリモートで肌の調子がわかり購買の入口としての実績を残している。コロナ禍で対面接客がしにくい状況にもリモートの肌診断は有効である。さらに、男性インフルエンサーも起用してジェンダーフリーを訴求する。店舗でも男性の潜在需要があることは意識しておきたい。

若年女性に支持率が高い新キャラクター今田美桜さんも起用して同世代の共感を狙う。

「世界初の成分」というニュース性のある商品をスキンケアカテゴリー拡大の起爆剤にしよう。

重要ポイントのまとめ

  • 売場に刺激をもたらす「世界初の成分」配合
  • 20代、30代前半の新規客獲得を目指す
  • セラムヴェールとの一体販売でシリーズ、カテゴリー活性化

若年層急増中!ドラッグストアで買う「園芸用品」市場の傾向と対策

ドラッグストア(DgS)の成長の歴史はラインロビングの歴史でもある。市販薬販売店(=薬局)から化粧品、雑貨、処方せん薬、ペット用品、食品とお客のニーズに合わせカテゴリーを広げることでDgSは市場を拡大させており、それは現在進行中である。総合業態としては後発であるがゆえにたぐいまれな柔軟性、拡張性を持っている。今回の企画では、コロナ禍で愛好者が増加中の園芸カテゴリーを、本格的にラインロビングする方法を考える。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

「巣ごもり需要」で市場は112.1%と拡大

[図表1] 園芸人口予測

園芸人口を見ると2020年の推計で約3,800万人(図表1)。おおまかに見て日本人の3人に1人は何らかの形で園芸を行っている。比較されることもあるペット市場を見ると、犬と猫の飼育頭数は合計で1,813万3,000頭(2020年ペットフード協会)なので、その可能性の大きさがわかる。

コロナ禍で在宅時間が増えたことで、消費市場にさまざまな変化が起こった。アース製薬の調査によれば、園芸関連商品(家庭園芸用の培養土や芝刈り機など除く)の市場は2013年から2019年までの7年間の平均成長率は3.3%だったのに対し、2019年から新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年にかけては112.1%と2桁成長を果たしている(図表2)。

[図表2] 市場規模

野外で行うことが多いので天候に左右される市場でもあり、2018年、2019年の市場がやや縮小しているのは、記録的猛暑、大雨、台風など気象条件がマイナスに働いたことによる。

若年層に向け「身近で買う」園芸カテゴリーを

いつ園芸を始めたかという時期で見ると、もっとも多いのは10年以上前という固定層だが、8.3%が「緊急事態宣言に伴う自粛生活」から始めており、数でいえば300万人に及ぶ(図表3)。内訳を見ると20〜40代の比較的若年層が約8割を占める。

[図表3] 園芸開始時期と2020年開始者の年代別内訳

園芸用品の販売チャネルではホームセンターや園芸専門店が約9割、DgSの構成比は1割にすぎない。コロナ期に園芸を始めた若年層が「園芸用品は身近なDgSで買う」という習慣を身に付ければ、園芸は収益カテゴリーとして文字どおり開花するだろう。そういう意味ではいまが本格的なラインロビングで売場を充実させるチャンスである。

ドラッグストアの園芸・ガーデニングカテゴリーについて、詳しくは本誌2021年8月号で特集中!!

50m商圏無人販売システム「600」マンション共用部の可能性発掘

飲料、軽食、日用品といったコンビニ商品のうち、ニーズの高い上位売れ筋商品を設置場所ごとにカスタマイズ。絞られた高回転商品を品揃えして、オフィスワーカーが50m以内の移動で買物ニーズを満たせることを基本ビジネスモデルとしてきた「無人コンビニ600」。最近ではマンションの共用部分に設置する「Store 600」のニーズが拡大。それに伴い新たな可能性が広がりつつある。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

コロナ禍でもオフィス需要は堅調。AIを活用した自販機支援事業も好調

「無人コンビニ600」「Store 600」を運営する株式会社600(ろっぴゃく)は2017年創業。代表の久保渓氏は1985年生まれ。アメリカの大学でコンピュータサイエンスと政治学をダブル専攻し卒業後現地でクラウドコンピュータのホスティング会社を起業。帰国後別会社の起業を経て600は4社目の起業。

従来、オフィスニーズを中心にビジネス展開していたが、コロナ禍によるリモートワークの普及で事業にどのような変化が起こったのか。

「2020年3月頃からリモートワークが推奨され、外出自粛が要請されオフィス需要は一時的に落ちました。しかし、コロナ禍で出勤しなくては仕事ができない人がエッセンシャルワーカーを中心に一定程度おり、そうした人たちへの福利厚生をどのように維持・向上させるかが真剣に考えられるようになりました。その結果、同年夏ころからオフィスの需要も回復し、いまでも堅調に推移しています」(600代表取締役久保渓氏)

出勤しても会社付近の飲食店が休業していたり、外出を自粛したりする傾向もオフィス需要の下支えになった。

同社では小売事業のほかに、自動販売機の管理会社に自社の経験と技術力をもとに業務改善ソリューションを提供する事業も行っている。「ベンディングヒーロー」と名付けられたこの事業部門で最近需要の高いのが、ルートセールスの効率化である。

自動販売機を運営する企業を対象に、売れている自販機や商品の特定、効率的なセールスルートなど、事業の改善指標を複数設け、過去のデータをAIで機械学習したり、アルゴリズムを開発することでそれらを改善。最適化された訪問計画を立てるというサービスである。これにより無駄な訪問が減り、業務コストを39%以上カットできた事例もある。

こうした自販機のDX事業は小売事業と並んで600の柱にしたいと久保氏は語る。

マンションニーズの拡大でカスタマイズの精度上がる

写真1 Store 600
高級家具のイメージ、子供用商品が充実

最近、600が注力している事業がマンションの共有部分への筐体の設置である。「Store 600」と名付けたこの販売設備はオフィス用とは異なり高級家具をイメージ(写真1)、冷蔵機能はなく常温によるサービスとなる。オフィス用の無人コンビニ600ではクレジットカードを使ってドアを開け決済していたが、Store 600では専用アプリによりドアを開閉し、決済もアプリのQRコードを用いて行う。

商品は1個50円程度のものから3,000円程度のものまでを品揃えする。オフィス用のように、コンビニニーズの上位売れ筋商品を切り出して品揃えするのではなく、マンションの居住者属性に合わせて、子供用のおもちゃから、地方のお土産物までと多彩な商品を販売する。

「子育て世帯が多く住むファミリー用マンションではキッズルームを備えた物件もあり、子供用のおもちゃや離乳食などが売れます。子供向け商品はStore 600のひとつの柱になっています。コミュニティスペースがある場合は、少し上質なお菓子や共用設備として設置されているコーヒーサーバー用のカプセルを販売しています。コロナ禍で遠出ができないこともあり、地方の名物、お土産のような商品もよく売れています。コロナ禍でリモートワークが増えたことで共用施設としてコワーキングスペースを設けるマンションもあり、そこでは文具やオフィス用品を厚く品揃えしています」(久保氏)

マンションは立地や間取りタイプなどで居住者の属性を推定しやすく、Store 600もそれに合わせコンセプトを定め品揃えする。オフィス用でもユーザーの声を聞いて商品をカスタマイズしているが、マンション用でもユーザーからのヒアリングには力を入れている。

管理組合の理事が理想の共用スペースのアイデアを持っており、組合員からの信任も厚ければそれに沿った形でStore 600の品揃えが行われる。久保氏によれば、商品だけを置くのではなく居住者のおもいを受けて空間を快適にするための手段として、居住者と伴走するイメージで一つひとつのStore 600をつくっていくことが理想であり、物件によってはそれが実現している。

写真2 カフェスペースでのStore 600
家具、調度品ともマッチしている

オフィス用では実用性重視の品揃えだったが、Store 600では、住まいの一部として心豊かに時間を過ごし、いかに暮らしに付加価値を与えてくれるか、それが品揃えの重要な基準となり、物件ごとにその基準は異なる。

管理組合の理事経由で希望を聞くことに加え、アプリを介してのインタビューや入居者説明会の場を通じてニーズの集約に努めている。

広がる使用シーン 究極の小商圏モデル

600のビジネスモデルはオフィス用からマンション用へと用途を広げたことで質的にも変化している。以前は必要な「モノ」を販売することが主眼だったが、マンション用では家族がそして個人が豊かな時間を過ごすための手段=「コト」を売る側面が強くなった。

続きは月刊MD2021年8月号で!

〈取材協力〉

600代表取締役社長
久保 渓氏