すべての本の表紙を正面に向けた陳列
アマゾン・ブックスの売場面積は100~200坪程度と、そんなに大きくありません。理論上は無限に在庫できる「ロングテール」が武器のネット販売と、取扱商品の多さを競うことは意味がありません。アマゾン・ブックスの取扱商品は、アマゾンでの評価が4.0以上(星4つ以上)の人気商品に絞り込まれています。
アマゾン・ブックスの「売り方」の第1の特徴は、すべての本が表紙を正面に向けた陳列を行っていることです。一般的な書店のように、背表紙を正面に向けた陳列方法は一切行っていません。「背表紙陳列」によって、多くの品目数を陳列することよりも、商品の探しやすさを重視した陳列であることがわかります。
第2の「売り方」の特徴は、「価格表示」がないことです。本を陳列している棚には「値札」が一切付いておらず、店内に設置してある「スキャナー」や「アマゾン・アプリ」で、本のバーコードをスキャンすると、価格が表示される仕組みになっています。
ネットとリアルの価格はまったく同じです。リアル店舗に価格表示がない理由は、アマゾンのオンライン販売が採用している、需要と供給に応じて価格が日々変動する「ダイナミックプライシング」を採用しているため、値札をつけることができないわけです。
アマゾン・アプリを使ってスキャンすると、価格がわかるだけでなくて、決済もキャッシュレス化できます。アマゾンに登録しているクレジットカードなどで、その場で決済できるわけです。
プライム会員信者を囲い込むための大きな価格差
店内に設置してあるプライスチェッカーで試しに価格を表示してみたところ、アマゾンのプライム会員向けと、一般客向けの価格差が大きくて驚きました。
この本(写真参照)は、一般客の価格が14ドル99セントに対して、アマゾン・プライム会員は8ドル99セントで購入することができます。
この連載の第6回目で「アマゾンはプライム会員信者を増やすためにホールフーズを買収した」という記事を掲載しましたが、アマゾンは年会費119ドルのプライム会員信者(固定客)を徹底的に囲い込もうとしているようです。
2018年4月中旬に行われたアマゾンの年次株主総会で公開された「ベゾスCEOから株主宛に記された手紙」の中で、アマゾン・プライムの加入者数が世界で1億人を突破したことが発表されました。「年119ドルの年会費がアマゾンの利益」と考えると、極端なことをいえばアマゾンは、リアル店舗の利益はゼロでもよいと考えているかもしれません。
ネット検索やレコメンド機能をリアルの売場で実現している
アマゾン・ブックスの第3の特徴は、「アマゾンでの検索数」「レビューの多かった本」「ほしいものランキング」「リコメンド機能(この本を買った人はこれらの本も一緒に買っています)」などのオンラインでの買物体験を、リアル店舗の陳列でも採用していることです。
「if you like」と表示された棚では、リコメンド機能を使って、この本を買った人が良く買う本を近くに関連陳列していました。「Highly Quotable」と表示された棚は、電子書籍キンドルで、もっともハイライトされた本を集めた売場です。ハイライトとは、重要な文章を蛍光ペンのようなものでマーカーできる機能のことです。つまり、ハイライトされた箇所が多い本は、重要な情報が満載されている本という意味です。キンドルのオンラインデータでなければ絶対できない陳列方法ですよね。
「Page Turners」という棚は、読み始めたら止まらないという意味で、電子書籍キンドルで読了時間の短かった本を集めた棚です。
また、アマゾン・ブックスでは、「アマゾンエコー」「キンドル」などのアマゾン商品も販売しています。また、児童書のコーナーでは、子供が座ってキンドルを読めるコーナーもあります。「本の座り読み」ではなくて、「キンドルの座り読み」なのが面白いですね。