料理をあまりしない「単独世帯」の増加によって、おかず、つまみ、総菜などの「中食」売場を強化し、SM(スーパーマーケット)の夕食市場を奪おうとしているコンビニ(写真はファミリーマート)。
人口構造が大きく変わる2025年問題に備えよう
日本では、2025年に、2015年対比で約445万人も人口が減少します。一方、65歳以上の人口は約262万人も増加し、高齢化率が高まります。人口減少時代の変化の第1は、「高齢者の人口がマジョリティ」になることです。人口減少&人口構造が大きく変わる「2025年問題」は、流通業に関わる者にとっては深刻な問題です。
人口減少時代は、従来の「売り方」の延長線では、間違いなく売上が減少します。それを解決するための重点対策は、地域の人口構成に対応した「マイクロマーケティング」を実践することです。そのためには、従来の47都道府県といった大雑把な単位ではなくて、全国1,628の市区町村という小さな単位の人口構造を調査し、その人口構造に合わせて「棚割」を変化させることが大切です。
たとえば高齢化率の高い県であっても、市区町村別に見ると、若年層や子育て世代が多く住む地域は存在します。当然、高齢化率の高い市区町村とは、棚割が違っていて当然です。
もうひとつのマイクロマーケティングは、市区町村別の「地域の売れ筋」を確実に品揃えすることです。同じ東北でも、仙台市の売れ筋商品と、高齢化率の高い「村」の売れ筋商品は異なります。
人口減少時代におけるマイクロマーケティングとは、市区町村という小さな単位の地域ニーズにきめ細かく対応することで、「機会損失」を減らす活動のことです。人口減少時代は、機会損失対策こそ、最大の売上対策です。
「ファミリー世帯」が減り「単独世帯」が消費の中心になる
人口減少時代の2番目の変化は、「単独世帯が消費の中心」になることです。図で示したように、すでに2015年の調査でも、「単独世帯」の世帯構成比が32.6%ともっとも多い世帯になっています。結婚しない若者、独居老人の増加によって、この単独世帯の増加はさらに加速します。かつては、夫婦と子供からなる「ファミリー世帯」が消費の中心でしたが、これからの消費の中心は、間違いなく単独世帯になります。
単独世帯が増加することで、「SM(スーパーマーケット)で食材を一から買って料理する市場」が減少し、総菜やデリなどの「中食」市場が大きく成長します。最近のSMの新店では、中食市場の成長に対応して、入口すぐの場所に「総菜」を配置する店も増えています。
また、冒頭の写真のように、コンビニは、調理しない「単独世帯」の増加に対応して、夕食のおかず、つまみ、総菜などの「中食」売場を強化し、SMの夕食市場を奪おうとしています。
マスブランドが減りスモールマス市場が拡大する
また、単独世帯が消費の中心になることで、消費のパーソナル化はさらに進むと思います。1品で高いシェアを獲得する「マスブランド」の市場が減り、「スモールマス」の市場が増えるでしょう。
写真の米国のビール売場では、かつては最大の面積を確保していた「バドワイザー」などのマスブランドの陳列量が大きく減少し、「IPA(ホップの多い苦みの強いビール)」「エールビール」などのスモールマス商品が売場の大半を占めています。
専業主婦が減り働く女性が増える
人口減少時代の第3の変化は、「専業主婦」が減り、「働く女性」が消費の中心になることです。図で示したように、45~49歳の労働率が78.0%、50~54歳の労働率も76.4%と高く、もはや専業主婦は化石のような存在なのかもしれませんね。
働く女性が増加することで、健康や美容に気をつかう女性は増えるでしょうから、いつまでも「美しくいたい」「健康でいたい」という人間の根源的な欲求に対応した、HBC(ヘルス&ビューティ・ケア)の市場はこれからも拡大していくでしょう。
また、時間のある専業主婦のための販促である期間限定の「ハイ&ロー販促」が減り、いつ行っても公平な価格で買える「EDLP(エブリデーロープライス)」が売り方の主流になっていくでしょう。
小売業は「変化対応業」です。「人口減少&人口構造」の未曾有の大変化に果敢に対応して、来るべき未来を切り拓いてもらいたいものです。