今週の視点

新しい買物体験「BOPIS」が普及

第101回「Amazon Hub」の設置は新規客と来店頻度を増やす!

2020年12月8日に開店した都市型大型店舗「ココカラファイン東京新宿三丁目店」の2階にAmazon HuB(ロッカー)が設置されていました。同社の話では、「予想上に利用者が多い」ということです。来店目的をつくる新しいサービスとして注目されます。

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予想よりも利用者が多いAmazon Hub(ロッカー)

ココカラファイン新宿三丁目店は、東京新宿東口からすぐの立地。隣が「紀伊国屋書店」です。4層の建物で約200坪の売場面積。1階が新しい発見のあるアンテナスペース、2階がヘルスケア、3階がメイクアップ、4階がスキンケア。ワンフロアが約50坪。上り下りのエスカレーターで移動する多層階の店舗です。

2階のエスカレーターの前に、写真のようなスペースがありました。インバウンド客向けの「荷物預かり用のロッカー」「ガチャガチャ」と並んで「Amazon Hub」を設置していました。

Amazonのサイトを見ると、ココカラファインのAmazon Hub設置店舗は約150店まで増えていました(2021年2月25日現在)。Amazonで注文した商品の受取場所をココカラファイン新宿三丁目店に設定すると、仕事帰りなどの好きな時間にロッカーで注文商品を受け取ることができるわけです。

取材した同社の担当者の話によれば、「当初に想定した以上にAmazon Hubの利用者が多いことに驚いています」ということです。Amazon Hubがリアル店舗の客数を増やすサービスとして機能していることがわかります。

Amazon利用者の衝動購買も期待できる

アメリカの大手小売業の「ウォルマート」と「ホームデポ(ホームセンター)」は、過去5年間くらいは新店をつくらず、店舗数をほとんど増やしていません。オムニチャネル化によって「新しい買物体験」を顧客に提供することでリアル店舗の売上高を大きく増やしています。

自社のアプリを使ってもらって「オンラインで注文して店舗受け取り」「オンラインで注文して自宅へ配達」「オンラインで注文した商品を店舗で返品」「店舗のショールーム化」などの新しい買物の選択肢を増やすことで、新店を増やさないでも既存店の売上高を増やして成長しています。

ココカラファイン新宿三丁目店の1階入り口付近では、「通販専用商品」を陳列し、触って確かめられるショールームのスペースになっています。

「オンラインで注文して店舗受取り」、アメリカではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)と呼ばれる新しい買物体験によるリアル店舗の売上増の効果が高いようです。配送料の高いアメリカでは、60%以上の顧客は自宅への配達よりもBOPISを選ぶそうです。BOPISを目的にリアル店舗に来店することで客数が増えます。しかも、BOPISを目的に来店した人の70%近くは、他の商品も購入して帰るという調査結果もあり、リアル店舗の「買上点数」を増やす効果もあるわけです。

Amazon Hubも同様に、リアル店舗の来店目的を増やすサービスです。アメリカの小売業でAmazon Hubを設置している店舗は、「受け取り」だけでなくて、「返品ボックス」を設置しています。「購入したけどイメージと違うので返品したい」という要望は、返品大国のアメリカでは多く、Amazonの返品ボックスもリアル店舗の来店目的を増やす重要なサービスになっているわけです。

アメリカの「コールズ」という郊外型デパートの店内にAmazon Hubを設置した店舗では、未設置店舗よりも「新規客」が多いという調査結果が出ました。つまり、コールズを今までまったく利用したことがない人が、Amazon Hubで商品を受け取ったついでにコールズで商品を購入した結果、新規客が増える結果につながったようです。Amazon Hubは、「来店頻度」を増やすと同時に、「新規客」を増やす効果も期待できるわけです。

ココカラファイン東京新宿三丁目店。店舗の詳細リポートは月刊MD5月号(4月20日発行)に掲載予定です。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。