店頭実現力が低いために膨大な機会損失が発生
2019年は、「死亡数-出生数」(人口の自然減)が初めて51万人を超えました。次の10年の日本は、深刻な人口減少時代に突入します。人口減少時代は、かつてのように販促を強化すれば、売上が大きく増えるという成功体験は通用しません。これからのリアル小売業の最大の売上対策は、店頭で発生している膨大な「機会損失」をつぶすことです。
PALTACフェアで展示していた資料(図表1)によれば、メーカーの最大の悩みは「本部商談が決まっても店頭実現力が弱い」という項目でした。2018年調査よりも、2019年調査の方が「悩みの割合」が高いのは、人手不足による「不完全作業」の横行で店頭実現率が大きく低下していることを物語っています。
PALTACでは、店頭現場の悩みとして、以下の5項目を挙げています。
店頭現場の悩み
(1) 人手不足で売場づくりの時間がない
(2) 品出し作業が多すぎる
(3) 作業の標準化ができない(店による作業レベルのバラツキが大きい)
(4) 本部指示の売場が反映できない
(5) レジ応援が頻繁に発生し、作業が中断される
その結果、店頭現場では「欠品による機会ロス」「売るべき商品の未展開」「不十分な接客」によって、膨大な売上ロスを発生させています。また、「労働時間の増加」「無駄な販促物の廃棄ロスの増加」など、店頭のコスト増も、店頭現場のリアルな悩みであると、PALTACは分析しています。
商談結果を「正確」に「早く」「一斉」に実現
PALTACは、「PITシステム」(PALTAC Innovation Technology)という店頭実現率向上のための仕組みを導入し、上記の店頭現場の悩みを解決するサポートを実施しています(図表2)。PALTACでは、約300名(全営業の3割)で構成する「ラウンド営業のスペシャリスト部隊」が、店頭実現率の向上を担当します。
「メーカーから販促物と商品がバックヤードに届いていたのに、店頭に陳列されずにメーカーに返品される」いったよくある機会損失も、ラウンド営業部隊が売場陳列を完全実施します。その結果、機会損失が減るだけでなく、販促物の廃棄ロスを防ぐことができます。店頭陳列されないで捨てられる販促物の廃棄ロスは、メーカーがつくる販促物の6~7割ともいわれています。ばかばかしいですよね。
ラウンド営業部隊による店頭支援機能の特徴の第1は、商談結果を「正確」に店頭実現することです。メーカーのラウンダーの場合、店頭で自社商品の陳列量を増やしたり、有利な陳列位置に変更するなど、恣意的な店頭実現が行われることもあります。PALTACの店頭実現は、商談結果を正確に店頭実現することが最大の特徴です。これなら小売業の信頼も得られますね。
第2は、「早く」「遅れず」に店頭実現を実行することです。とくに季節商品の陳列の遅れは、致命的な機会損失を発生させます。売れる時期に売れる商品を遅れずに陳列することは、売場づくりの最重点課題です。
第3は、「一斉」「広域」に店頭実現できることです。一人のラウンド営業マンが1日4店舗の陳列作業を実行すると、1日で「300人×4店舗=1,200店舗」の広域な店舗網の店頭実現を完了することができます。
PITシステムでは、売場陳列の写真の共有の仕組みもあります。また、単に完全作業を実行するだけではなくて。MD(マーチャンダイジング)に関する知識を持つラウンド営業マンが「こういう陳列にした方が売れる」といった売り方や改善点などを小売業やPALTACの営業マンに「逆提案」する機能もあります。
「単なる作業部隊」を超えた提案ができるのも卸売業の強みですね。