今週の視点

社会貢献型マーケティングが売れ筋をつくる

第68回環境にやさしい食品原料の「殺虫剤」「除草剤」がトレンドに

2015年9月に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標)」に関心が高まる中、地球環境にやさしい新商品が続々登場しています。そういう商品を消費者が積極的に支持するようになり、メーカーのマーケティング戦略も大きく変化しています。

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食品原料99.9%の園芸用殺虫剤「ロハピ」(アースガーデン)。

99.9%食品原料の園芸用害虫対策商品「ロハピ」

10月10日に園芸業界最大の商談会「国際ガーデンエクスポ」に行ってきました。園芸・ガーデニングの人口は確実に増えています。たとえば、「家庭園芸薬品市場」は、2013年約250億円が、2019年は約320億円(フマキラー調べ)と着実に市場が拡大しています。

市場拡大を牽引しているのは、「除草剤」「園芸用不快害虫」です。注目すべきは、草を枯らす、害虫を殺すことを目的とした商品が、地球環境にやさしい食品原料の新商品が主流になっていることです。

アース製薬の展示ブースの一押し商品は、園芸用不快害虫対策の「ロハピ」でした。ロハピとは、「ロハス+ハッピー」の略で、環境にやさしい商品であることを強調したネーミングになっています。食品原料99.9%の病害虫対策商品です。以前の殺虫剤では、たとえばトマトの収穫の1週間以上前には使用を禁止する必要がありましたが、ロハピでは収穫の前日まで安心して使用できます。

また、アースガーデンでは、「まもるくん」というキャラクターをLINE登録し、病気にかかった葉・実・花の写真をスマホで送ると、AIが病名を特定して、対策をアドバイスしてくれるサービスを開始しました。スマホで園芸相談ができる時代なのですね。

LINEで園芸相談できるサービスも開始した(アース製薬のホームページより)。

酢の力ですばやく枯らす食品原料の除草剤「ビネガーキラー」

フマキラーも、食品生まれの除草剤「ビネガーキラー」を新発売しました。食品原料のお酢を使用した、安心・安全の除草剤です。2010年の1月20日より、全国のドラッグストア、ホームセンター、スーパーで販売する計画です。除草剤は、2013年対比で市場が約165%も成長している有望市場です。

小さな子供のいる家庭では、除草剤を使うのは心配と考える人がほとんどでした。私も小さな子供がいた時代は、庭に除草剤をまくのをためらい、夏場に汗だくになって除草したことを覚えています。ビネガーキラーは、食品原料の除草剤なので、小さな子供やペットのいる家庭でも安心して使用できます。また、畑や花壇の除草にも躊躇せず使用できるのは良いですね。

お酢でできた除草剤「ビネガーキラー」(フマキラー)。

「ロハピ」「ビネガーキラー」ともに、SDGsの流れに合った、地球環境にやさしく持続可能な新商品です。最近の消費者は、商品選びをするときに、社会に貢献している商品かどうかを重視する傾向が高まっています。新しい消費の主役「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)にその傾向が顕著なようです。自然環境にやさしい殺虫剤、除草剤も、ミレニアル世代に選ばれる商品です。

また、スターバックスコーヒーが、「このコーヒー豆は、労働環境の良い農場でつくられた商品(フェアトレード)である」とシアトルのワシントン大学の売店でアピールしたところ、価格が高いフェアトレードコーヒーが爆発的に売れたそうです。これ以外にも、ピンクリボン運動を支援しているメーカーの商品を積極的に購入するなど、社会貢献のストーリーが売れ方に大きく影響を与える時代です。このトレンドを「社会貢献型マーケティング」といいます。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。