「Green Tea & Vegetable First」でコンセプトを強調
「伊右衛⾨サロン」は、「お茶は⽣活⽂化をデザインする」「カフェを通じて新しいライフスタイルを提案していく」という思いや意志のもとで前出3社の共同開発によって誕生。1号店が2008年6⽉に京都・烏丸三条にオープンし、カフェ・カンパニーがサントリーから業務委託される形で運営。2019年に福寿園およびサントリーから「伊右衛⾨」ブランドの飲⾷展開に関するライセンスを取得し、この3月京都・東⼭に「伊右衛⾨サロンアトリエ 京都」として移転・リニューアルオープンした。この度の東京・渋谷ヒカリエ店は同業態の2号店となる。
カフェ・カンパニーではかねてより“Well-Being”(健康で安心なこと)というミッションを掲げて、そのもとで「フタバフルーツパーラー」「発酵居酒屋5 / 発酵7」等のブランドを展開している。「伊右衛門サロン」も同じく、ブランドが立ち上がった当時からの志を受け継ぎながら、「Green Tea First」(緑茶第一)、「Sustainable」(持続可能な)、「Artisanship 」(職人技)という3つのキーワードを掲げてオープンした。ここを⽪切りに国内外に展開することを予定している。
「伊右衛⾨サロン」という店名には緑茶の専門性とそれによって連想される農産物のイメージが託されていて、同店の楽しみ方として「Green Tea & Vegetable First」をうたっている。具体的には緑茶にふくまれる「テアニン」摂取や、野菜を第一にしたフードメニューを組み立てて、バランスが取れた⾷事を提案している。
緑茶へのこだわりは「久⼭町研究」が背景にある。これは福岡市に隣接した糟屋郡「久⼭町」と九州⼤学が、1961 年から久⼭町住⺠を対象に⽣活習慣病の疫学調査を実施しているもの。その研究結果の⼀つに、緑茶に含まれる旨味成分「テアニン」摂取が糖尿病の発症に対して保護的に働く結果が得られている。同店の「Green Tea First」は、これが背景となっている。
フードメニューは肉、魚があるが、メニューブックに「ベジタリアンの方はスタッフにご相談ください」とある。スイーツはグルテンフリーで、おはぎのご飯は玄米を使用、ケーキのスポンジやパンケーキは米粉を使用している。
これらで食に禁忌を持つ人やインバウンドの食の多様性のニーズに応えることが可能で、「カフェ」の業態づくりを得意とするカフェ・カンパニーにとってもテーマ性が明確であるであると同時にニーズの広がりが想定される業態となっている。
「おばんざいバー」でフードメニューの脇を固める
メニュー構成について、以下に特徴的なものを紹介しよう。
まず、フードメニュー。これは料理家のSHIORI⽒プロデュースにより、“朝・昼・夜問わず、「お茶」と共に滋味溢れる⾷材を堪能することができる⾷事メニュー”をコンセプトにして組み立てられた。ディナーメニューのメインは、晩ごはんセットがついた「和牛と彩り野菜の蒸し寿司」2,780円(税別、以下同)、「五目蒸し寿司」2,480円、「鮭と焼きとうもろこし釜炊きご飯」2,480円などがある。
晩ごはんセットとは生野菜や野菜の総菜を約8種類ラインアップした「おばんざいバー」(サイズによって価格が異なる)と⼀晩かけて抽出した「⽔出し茶」などが自由に選べる「日本茶バー」がついていて、「Green Tea & Vegetable First」のコンセプトどおりの構成となっている。これらのメインはアラカルトとしても注文できる(「和牛と彩り野菜の蒸し寿司」の場合、1,750円)。
この他に「本日の肉料理」(ご飯、味噌汁、お茶ふりかけ付/おばんざいバー:レギュラーサイズ1,980円、ラージサイズ2,180円)、「魚の西京焼き」(同/レギュラー1,880円、ラージ2,080円)などの糖質やカロリーを抑えたごはん・お味噌汁がセットになった定⾷スタイルのメニューもある。
「おばんざいバー」の単品はレギュラーサイズ800円、ラージサイズ1,100円。この他「伊右衛⾨ハウスサラダ」900円、「真鯛のカルパッチョ」1,200円、「山椒唐揚げ&チップス」950円など、おつまみとしても楽しむことができるアイテムもラインアップしている。
ランチメニューは、「おばんざいバー」と「日本茶バー」がついた定食セットで1,480円、1,580円、1,680円などがラインアップされている。
ビーガン・スイーツで利用客のすそ野を開拓
次に、ティーメニューとスイーツニューについて。
前述の「日本茶バー」(単品では540円)に加えて、「Worldʻs 50 Best Sommeliers」にも選出されたソムリエの梁世柱(ヤンセジュ)⽒を中⼼に結成されたティーメニュー開発チームによるソフトドリンク・アルコール共に「お茶」を軸に開発されたバラエティ豊かなティーメニューをラインアップ。抹茶・煎茶・ほうじ茶などの本来のお茶に加えて、フルーツやハーブを使ったビネガードリンク「Shrub(シュラブ) 」と「お茶」を組み合わせたカクテルや、野菜や果物とのコンビネーションを表現したメニューをラインアップ、それぞれ600円から800円代で構成している。
「伊右衛⾨サロン」で提供するスイーツは全て、カフェ・カンパニー専属のエグゼクティブ・ビーガン・パティシエである岡⽥春⽣⽒によるもの。卵や⽜乳などの動物性⾷材を⼀切使⽤しない100%植物性のビーガン・スイーツをラインアップしている。ケーキのスポンジやパンケーキは米粉を使用。「おはぎ」をモダンにアレンジした「cohagi(コハギ)」のご飯は玄米であり、パフェ、パンケーキ、ティラミス、かき氷などの全てに「お茶」を使用している。
これらのアイテムはティータイムのスイーツの強烈なコンテンツとなっている。
コハギは「伊右衛門サロンのビーガンおやつワゴン5種盛り(抹茶1杯付)」2,200円、「伊右衛門サロンのビーガンおやつの宝石箱12種盛り((抹茶1杯付)」4,200円がある他、1,150円と1,250円の三種盛りもある。かき氷は「伊右衛門かき氷」ほうじ茶が1,250円、抹茶が1,450円。「ほうじ茶豆乳ティラミスパフェ」1,350円、「宇治抹茶豆乳ティラミスパフェ」1,550円も、緑茶に対しての見識が深い「伊右衛門サロン」ならではのアレンジが加わっている。
さらに、アルコールもビール、ハイボール、チャワリ(茶割り)、日本酒、梅酒、ワイン、スパークリングという具合に基本を押さえたバラエティをラインアップしている。
「緑茶」から連想するコアな客層は「中高年女性」となりそうだが、日本の飲料文化を象徴するコンテンツであることからインバウンドが増加傾向にある中で、訪日外国人客には印象深く伝わることであろう。また、ベジタリアンやビーガン、グルテンフリーに配慮したメニュー設計は食の多様性が顕在化している中で大いに歓迎される。
「伊右衛⾨サロン」の営業時間は 11時~23時30分(⽇曜日のみ11時~23時)となっている。「緑茶」の専門性を軸にして、食の多様性に十全に応えることが可能で、かつお客さまの来店動機別に緻密に創出されたメニューを見ていて、「カフェ」を極めてきたカフェ・カンパニーのノウハウの豊かさを大いに実感している。