シニア世代の買物の特徴「近」「多品種」「特定」「午前中」
日本の高齢化率(65歳以上人口)は、2017年10月時点で27.7%に達しています。県別に見ると、もっとも高齢化率の高いのは秋田県の35.6%、2番目が島根県の33.6%です。東北6県は、宮城県を除く5県はすべて高齢化率が30%を超えています。また、今から7年後には全国平均の高齢化率が30%を超えます。
日本の人口構造のマジョリティになった「シニア世代」の買物の特徴を分析し、シニア世代を固定客化することが非常に重要です。
シニア世代の買物の特徴を整理すると、第1は、(1)移動距離が短いことです。遠くの店ではなくて、近くの店を選択するようになります。小売業の「狭小商圏化」は加速するでしょう。
第2は、(2)ワンストップショッピングのニーズが高まることです。高齢化率が進み、人口減少が進む立地においては、高齢者の免許返納も進み、「買物難民」が増えます。「巡回バス」や「車の乗り合い」で来店する高齢者にとっては、頻繁に来店できないので、来店したついでに多くの必需品を関連購買したいというワンストップニーズが高まります。高齢化率の高い立地の店は、「多品種の品揃え」でワンストップショッピングでき、しかも近いことが選ばれる店の条件になります。さらに、「高齢者の自宅に届ける宅配」も不可欠のサービスになるでしょう。
一方、SM(スーパーマーケット)のID-POSの5年間の経年変化を分析すると、たとえば、58歳の顧客が5年たって63歳になると、冷凍魚、冷凍食品、パウチ総菜などの「単独世帯」対応の商品の買上率が高まると同時に、トイレットペーパーや衣料洗剤などの「消耗雑貨」の買上率が高まるそうです(ジェイビートゥビー社調査)。
つまり、従来は、衣料洗剤やシャンプーなどの日用雑貨はDgS(ドラッグストア)で購入し、食品はSMで購入していた顧客の「買い回り傾向」が低下し、食品と同時に日用雑貨もSMで購入するワンストップショッピング志向が高まるという意味です。
シニアの来店ピークは「午前中」朝の接客で固定客化する
第3は、(3)特定の店舗を選ぶ傾向が強いことです。図表1は、各世代がDgSを何店補程度利用しているかを調査したものです。図表1によれば、前期シニア層の利用店舗数は1.76店、後期では1.48店といずれも2店を切っています。1店舗のみを利用する後期シニア層は70%に達しており、大多数のシニアは自分が決めた1店舗で買物している実態がわかります。高齢者の多い立地では、シニアに選ばれる店が一人勝ちする傾向が高まると思われます。
また、シニア世代の固定客(ロイヤルカスタマー)は、一般客の売れ筋とは異なる「シニアの売れ筋」を定期購入していることが多いのです。ABC分析によるとCランク商品の「死に筋」だからと単純にカットすることは、「シニアの固定客」を失うことになります。データ分析では死に筋であっても、高齢者の「リピート率」の高い商品はカットしないで、売場に残すという配慮が必要になります。
第4は、(4)シニア層の来店時間は圧倒的に「午前中」だということです。一般的に小売業のピークタイムは15時以降であり、客数の少ない午前中には、人員を減らしたり、補充作業に専念する稼働計画を組んでいる店が多いと思われます。しかし、シニア層の来店のピークタイムは圧倒的に、「開店直後の午前中」です。
客数が少ない午前中に、医薬品や化粧品の接客人員を敢えて配置することで、シニア層と「悩みの相談」などのコミュニケーションが取れ、シニア層に選ばれる店になれるかもしれませんね。