今週の視点

ドラッグストア『顧客満足度調査』2020【陳列・演出編】

第96回「陳列」の満足度は「杏林堂薬局」1位 「ウエルシアHD」2位

月刊マーチャンダイジング(MD)の人気企画である『ドラッグストア(DgS)の顧客満足度調査』の中から、「陳列・演出」に関する調査員の「顧客満足度」と「バラツキ」を抜き出して掲載しました。陳列の満足度の高いドラッグストアはどこなのでしょうか?

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満足度とバラツキの両方を問題にする

毎年、月刊MD12月号(11月20日発行)で特集する『ドラッグストア(DgS)の顧客満足度調査』。毎年ランキングを発表するので、ものすごく関心が高く、DgS企業からの問合せも多い総力特集です。ランキングを付けることが目的ではないと毎回お断りしているのですが、顧客満足度の低いDgS企業は、ショックが大きいようです。

ときには、「そんなに当社の顧客満足度が低いはずがない。調査方法に問題があるのではないか」というお叱りの言葉をいただくこともあります。なるべく客観的な評価になるように毎年調査方法をブラッシュアップしています。本当は「多少は忖度してくれよ」と心の中で呟きながらも、「100%忖度なし」で調査結果をありのまま発表しています。

今年はDgS企業37社500店舗を近隣に住む主婦のミステリーショッパーが調査して、さまざまな設問を評価して採点します。接客、レジ応対、クリンリネスなどの総合力で顧客満足度を採点しています。この原稿では、さまざまな調査項目の中で、「陳列・演出」に関する項目だけを抜き出して、DgSの上位企業の「満足度」と「バラつき」をまとめたのが以下の図表です。

(集計・分析:ウィルベース)

満足度は3点満点の評価であり、得点の高い企業の陳列・演出の満足度が高いといえます。さらに、多店舗展開するチェーンストアの顧客満足度を調査する場合に重視しているのは、店舗間の「バラツキ」です。1企業10~20店舗を調査しており、店によるバラつきが少ないことが顧客満足度の高いチェーンだと考えているからです。バラつきは、図表の下段の数値です。この数値は「標準偏差」といい、数値が低い方が店舗間のバラつきの少ないチェーンです。

調査員のコメントに見る優秀企業の陳列方法

顧客満足度調査の「陳列・演出編」の満足度の第1位はツルハグループの「杏林堂薬局」です。第2位が「ウエルシアHD」です。第3位が「マツモトキヨシ」、第4位が「クスリのアオキ」、第5位が「富士薬品グループ(ドラッグセイムス)です。月刊MDの顧客満足度調査で堂々の第1位だった「コスモス薬品」の陳列・演出の評価は、決して高くないことがわかります。

一方、バラつきの少ないチェーンの第1位も杏林堂薬局です。杏林堂薬局は、陳列に関する満足度が高く、店舗間のバラつきも非常に少ないチェーンです。バラつきが2番目に少ないチェーンが「クスリのアオキ」、第3位が「富士薬品(ドラッグセイムス)」です。

以下に、陳列満足度の高かった企業に関する調査員のコメントを掲載します。売場改善の参考にしていただければ幸いです。

◇第1位 杏林堂薬局

「目薬の売場に、悩みに応じたPOPが貼ってあった」
「洗顔料の売り場にニキビ対策のコーナーがあった」
「今一番必要とされているものや、季節で重要なものが入口付近に展開されていて、興味をそそられた」

◇第2位 ウエルシアHD

「化粧品売場で店舗作成のPOPが商品特長をあらわしていて、かわいらしく目を引いた」
「売り出したい商品や、季節の商品が入り口側に並べられており、季節感が出ていておすすめが分かりやすい」(多数)
「新製品の特徴がわかりやすく書かれていた」

◇第3位 マツモトキヨシ

「デンタルケア用品売場は、悩み別分類(ホワイトニング、歯肉炎など)を示す大きなPOPが什器上部に設置してあった」
「QRコードのクーポンが付いている商品があった」
「化粧品売場は什器が低めで商品が取りやすく、全体的に見つけやすかった」

◇第4位 クスリのアオキ

「お買い得品のプライスカードの色が違うため、目につきやすく、手に取りやすい」
「歯磨き粉の棚は横並びに並べられていて見やすく、商品を選びやすかった」
「入り口付近の島で大きく特売品を販売し、各コーナーのエンドあたりに特売品を配置してあった」

◇第5位 富士薬品グループ(ドラッグセイムス)

「医薬品のコーナーで、風邪薬や鼻炎薬や咳止め等に、他社同士の比較のアピールがあった」
「歯磨き粉コーナーは、美白や歯周病など、目的によって土台の色を変える工夫があった」
「効能を知らせる販促物などがあり、分かりやすかった」

◇その他のフリーコメント

「手描きのPOPが多い、面白い、わかりやすい、工夫されている、ついつい手にとってしまう」(多数)
「化粧品コーナーに工夫がある」
「薬売場のPOPなどは他社より親切だと思った」「欠品している商品のスペースをそのままにすることなく陳列を工夫し手に取りやすく見やすいようにしてあり好感が持てた」
「一般の化粧品の列にそれぞれ一箇所縦に鏡、テスター、コットン、ペーパー、ダストボックスがわかりやすく並んでいた」

まとめ

杏林堂薬局とウエルシアは、以前から店頭の陳列・演出に力を入れており、その努力が調査員に正当に評価されているようでした。また、withコロナ時代では「非接触」の情報発信の重要性が増しており、「手書きPOP」を評価するフリーコメントが例年よりも多かったのも今年の特徴です。

※月刊MD12月号で『ドラッグストア顧客満足度調査2020』のすべてが掲載されています。Kindleでも購入できますので、興味のある方はぜひご購入ください。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。