今週の視点

NBとSBの両方でカテゴリーシェアを高める

第91回メーカーと小売業が協働するデュアルブランド戦略が本格化する

大規模チェーンが誕生したドラッグストア(DgS)では、カテゴリーキャプテンのメーカーがDgSと共同開発したSB(ストアブランド)と、自社商品のNB(ナショナルブランド)を同時に陳列し、NBとSBの両方でカテゴリーシェアを高める「デュアルブランド戦略」が今後進みます。

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DgSの商品開発はPBよりもSBが中心

商品開発にはSB(ストアブランド)とPB(プライベートブランド)の2種類があります。SBはメーカーが製造し、パッケージは小売業のブランド名を使う商品開発のことです。製造責任はメーカーで、販売責任は小売業が持ちます。製販が共同開発するという意味で「ダブルチョップ」という通称で呼ぶこともあります。

一方、PBは小売業が生産工場に対して「仕様書発注」してモノづくりする商品開発のことです。原材料調達→生産→物流→販売までの流通工程をすべて小売業が設計する本当の意味での商品開発のことをPBといいます。SPA(製造直売小売業)である「ユニクロ」「ニトリ」「カインズ」などの商品開発をPBと呼びます。

図表1に主要DgSの売上高に占めるPB及びSB比率を掲載しましたが、DgSの商品開発の大半はメーカーと共同開発したSBが中心になります。SB・PB比率が14.9%ともっとも高い「コスモス薬品」の食品売場でコスモスオリジナル商品をチェックするとほとんどがSBです。たとえば、冷凍餃子(10個入り228円)のパッケージの裏側を見ると製造者は「味の素」です。

また、SBの冷凍うどんの製造者は「テーブルマーク」です。つまり、そのカテゴリーのトップメーカーがコスモス薬品と共同してSBを開発しているわけです。冷凍餃子のトップメーカーの味の素は、NBの冷凍餃子とSBの冷凍餃子の両方でカテゴリーシェアを高めるデュアルブランド戦略に取り組んでいることがわかります。

コスモス薬品と味の素が共同開発した冷凍餃子

大手メーカーもSB開発に意欲的!?

DgSは現在も大量出店を継続している数少ない業態です。すでに1,000店を超えたDgS企業が9社、2,000店を超えたDgSが2社もあります。コンビニの次に店舗数の多い業態がDgSなのです。大手NBメーカーにとっても、これだけの店舗数の小売業とSBを共同開発することはメリットがあります。

SBは、ブランドを育成するためのマーケティングコスト(テレビCMなど)がほとんどかかりません。そのぶん価格を安くしても、メーカーと小売業の両方が利益を分け合うことができます。また、導入店舗数が最初から決まっているので、販売予測が立てやすく、生産計画の無駄も少なくなります。

最近、大手消費財メーカーの幹部に開発について質問したところ次のように話をしてくれました。「3年前なら小売業のSBをつくることには反対でした。しかし、DgSの店舗数がこれだけ増えてくると、大手DgSと共同でSBを開発することは重要な経営戦略です。大手NBメーカーも変化対応する時期なのかもしれません」。

一方、コンビニのセブン-イレブンは、中小の食品メーカーを開拓・育成する「チームマーチャンダイジング」による商品開発(PB開発)です。セブン-イレブンの売場の棚は「セブンプレミアム」などのPBで占有されており、大手食品メーカーの商品が棚に入る余地が少なくなっています。コンビニよりも売場面積の広いDgSは、コンビニの「棚落ち商品」の受け皿になっており、メーカーとDgSのSB開発は今後さらに増えていくと思います。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。