今週の視点

調剤市場はドラッグストア市場より大きい

第87回市場規模7.5兆!ドラッグストアの次の成長の鍵を握るのは調剤だ

前回の連載で述べたように、過去10年間で驚異的な成長を遂げたドラッグストア(DgS)ですが、現在のDgSの市場規模よりも「調剤」の市場規模の方が大きい。店舗数の飽和点が近づいてるDgSの次の10年の成長は、調剤市場の攻略が鍵を握っているといっていいでしょう。

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DgS市場は7.3兆円 調剤市場は7.5兆円

これからのDgSの成長を考える上で「調剤部門」は今後、非常に重要な役割を果たすと思います。スギHD、ウエルシアHDは、DgSのチェーン展開を開始した当初から、「調剤併設型DgS」にこだわってきました。「調剤のないDgSなどDgSではない」とまで言い切っていました。

厚労省のまとめでは、調剤の市場規模は約7.5兆円(2018年)、DgSの市場規模が約7.3兆円(同)なので、それを上回る規模です。ちなみに「一般医薬品(OTC薬)」の市場規模は7,000億円前後と推定されており、調剤と一般医薬品(OTC薬)では市場規模が10倍も違います。

図表はクリックで拡大できます。

上記の図表は、DgSを含む調剤薬局の売上高ランキングです。DgS、調剤薬局チェーン双方調剤事業のみの売上高を掲載しています(一部除く)。決算時期のズレもありますが、DgS業態で売上高1位(2020年4月時点)のウエルシアHDが全体の3位に、スギHDが5位に入っており、いずれも調剤売上が1,000億円を超えています。2021年に経営統合を予定しているマツモトキヨシHDとココカラファインを合計すると約1,100億円となり、調剤薬局の競争のなかでもDgSはキープレイヤーになっています。

ちなみに10年前の2009年(平成21年)当時、調剤薬局チェーントップの「アインファーマシーズ(現アインHD)」の調剤売上高が約1,010億円に対して、DgSトップの「ツルハHD」の調剤売上高が約188億円でした。つまり10年前は、調剤薬局チェーンと比較してDgSの調剤売上高は1桁少なかったのです。しかし、この10年間の大量出店・規模拡大によって、調剤薬局チェーンに匹敵する調剤売上高に達していることがわかります。

調剤薬局は個人薬局主体で上位寡占化が進んでいない

また、日本の調剤事業は、DgSのように大手の寡占化が進んでいません。調剤市場の大半は「個人薬局」で占められています。図表に示した18企業の調剤売上高の合計は約1兆6,850億円、調剤市場7.5兆円の22%に過ぎません。DgSの上場企業14社の売上高合計が約5兆5,000億円で、DgS市場の73%を占めて寡占化しているのとは対照的です。

現在は調剤を取り扱っていない食品強化型DgSのコスモス薬品は、決算発表の記者会見のたびに、面分業(門前薬局以外の医薬分業)が進み、薬剤師の採用が現在よりも容易になれば調剤事業に進出すると明言しています。現在は一般医薬品しか取り扱っていないが、機が熟せば調剤薬にも参入すると宣言しているわけです。

ビジネスの観点で考えれば、現在の「DgS市場約7.3兆円」と同規模の「調剤市場約7.5兆円」(2018年)がそこに存在しているわけです。しかも調剤産業は、個人薬局主体で近代化が進んでいない産業です。今後10年間のDgSの成長に「調剤」が大きな役割を果たすことは間違いないと思います。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。