今週の視点

低成長の平成最後の10年で驚異的に成長

第86回M&Aと高速出店で伸びたドラッグストア、10年で売上5倍の企業も

日本のドラッグストア(DgS)は、人口減少時代の平成時代の10年間で驚異的な成長を遂げました。2009年(平成21年)~2019年(平成31年)の10年間で、上場DgS14社の合計の売上高は約2.3倍も増加しています。日常生活を支える総合業態であるコンビニ、総合スーパー、ホームセンターの売上高が横ばいもしくは減少しているのに対して、平成後期の10年間で唯一成長した業態がDgSです。

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急成長続けるドラッグストアの店頭

10年間で驚異的に伸びたDgS

日本のDgSの市場規模は約7兆3,000億円(未上場企業も含む。日本チェーンドラッグストア協会調べ)。株式を上場している14社のDgSの総売上高は約5.4兆円(2019年決算)に達しています。DgSの店舗数は2万店を超えており、コンビニの5万5,620店(2019年12月末)に次いで店舗数の多い総合業態です。

新型コロナウイルスの自粛期間で外出できないので、月刊MD10月号で毎年掲載している「ドラッグストア白書」の過去10年間の数値を分析したところ、日本のDgSの驚くべき成長率が改めて明確になったので、そのダイジェストを解説します。

下の図表は、2009年~2019年の10年間で、上場DgS企業が「売上」と「店舗数」をどのくらい伸ばしたのかを一覧表にしたものです。

図表によれば、売上高トップのウエルシアHDは、なんと10年間で約4倍も売上を伸ばしています。ツルハHDも3.4倍、コスモス薬品も3.1倍の売上増加率です。中堅DgSではクスリのアオキが10年間で5倍も売上を増やしています。クスリのアオキは、2009年約494億円の売上高が、2019年には約2,500億円に達しており、驚異的な売上増加率です。

ウエルシアHDは2019年の売上高が約7,800億円、ツルハHDも約7,800億円、コスモス薬品が6,100億円と、この3社は「1兆円企業」の大台を視野に入れています。

また、経営統合を発表しているマツモトキヨシHD(約5,700億円)とココカラファイン(約4,000億円)の売上高を合計すると1兆円に迫る規模になり、近い将来にDgSの1兆円企業が誕生することになります。

M&Aと高速出店で規模を拡大

DgSはM&Aによる規模拡大が多い業態です。とくにウエルシアHD、ツルハHDは、大量出店と同時に、志を同じくするDgS企業との積極的なM&Aによって規模を拡大してきました。一方、コスモス薬品、クスリのアオキは、1年間で50~100店の高速出店によって、M&Aに頼らず規模を拡大しています。

店舗数も、この10年間で大きく伸ばしています。もっとも店舗数の多いDgS企業はツルハHDで、グループ全体で2,165店(2020年の予想値)に達しています。ウエルシアHDも2,000店、マツモトキヨシも1,700店を超えています。日本のDgS企業は、未上場の富士薬品(店名はセイムス)も加えて10社の企業の店舗数が1,000店を超えています。

いずれにしても、この10年間のDgSの大成長は、驚異的という言葉を使ってもなんら差し支えありません。平成末期の10年間、総合スーパーは閉店ラッシュでしたし、ホームセンターも市場規模は横ばいです(下の図表)。平成時代の前半に大成長したコンビニも、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップの大手4社の「純増店舗数(出店数-閉店数)」が2016年の1,679店を境に減少に転じており、2019年の純増店舗数はわすが40店です。2020年には大量閉店も発表しており、コンビニの店舗数の増加に急ブレーキがかかっています。

一方、DgSは2020年以降も、大手DgSは年間100店規模の大量出店を計画しています。そう考えると、生活必需品を取り扱う総合業態の中で、唯一DgSだけが成長しているといっても過言ではありません。

※10年間のドラッグストアの成長物語の詳細は、月刊MD7月号(6月20日発売)に掲載しています。なぜここまでの大成長が可能だったのかのポイントも解説しています。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。