今週の視点

異業態同士の「地域提携」も加速か!?

第60回「サツドラHD」と「コープさっぽろ」が異業態・業務提携の協議開始

8月3日の新聞報道によれば、共に北海道をドミナントとする「サツドラHD」と、生協の「コープさっぽろ」が、包括業務提携に向けた検討及び協議開始の合意書を締結しました。同業同士のM&Aで成長してきたドラッグストア(DgS)ですが、「地域連携」という切り口で、異業態同士が提携する新しい試みとして注目されます。

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地域密着企業としての生き残りをかけた提携

前回の視点でも書きましたが、DgSは「高速出店」と「M&A」を進めることで、上位企業の寡占化が加速しました。10年前は、上位40社で約3.5兆円の売上でしたが、最新の決算数値では上位15社で約5.6兆円の売上になり、企業数の減少と上位企業集中が顕著になっています(下の図表1参照)。

令和元年になり、売上順位5位の「マツモトキヨシHD」と、6位の「スギHD」、7位の「ココカラファインの3社三つ巴の資本提携の話題が沸騰しており、M&Aによる寡占化は、今後も進むものと思われます。

一方、DgSの売上順位15位の「サツドラHD」が、同じ北海道の地域密着企業である「コープさっぽろ」と提携するというニュースは、新しい提携の切り口なのかもしれません。上場DgSの売上順位では最下位のサツドラHDの売上規模は、Dg.Sの上位企業とは大きな格差があり、同業とのM&Aよりも、地域密着型の異業態連携を選んだと思われます。

サツドラHDとコープさっぽろは、以前から共同仕入れ会社の「ニチリウグループ」に加盟しており、商品開発の共同化でも交流がありました。また、AI(人工知能)、システム開発面での情報交換でも交流があったそうです。

人口減少、少子高齢化が全国平均よりも早く進む北海道で事業展開を基盤とする両社が提携し、課題を協力して解決するのがベストと考えた結果の判断だったようです。

新たに設置する「業務提携検討会議」と、(1)商流・物流統合、(2)商品開発、(3)決済・ポイントサービス、(4)システム開発、(5)関係会社の事業統合、(6)資産有効活用、(7)地域課題解決のCSR活動の7つの部会を設置し、具体的な提携の内容わ決定する計画です。

強固なリージョナルチェーンストアをつくる

MD NEXT創刊記念の特別セミナー(2018年6月開催)で講演していただいたサツドラHDの富山浩樹社長によれば、同社の成長戦略の1つ目は「強固なリージョナル・チェーンストアづくり」、2つ目は「リージョナル・プラットフォームづくり」です。地域密着型の小売企業としてのサービスを深耕していくことを、講演でも強調していました。

時代が変わる、チェーンストアの役割も変化する

サツドラHDが5年前に設立した「リージョナルマーケティング」という子会社は、地域が輝くプラットフォームづくりというコンセプトを掲げ、地域の共通ポイントカード「EZOCA」を発行しました。EZOCAの提携先企業はこの4年間で114社(ホテル、飲食業など異業種も多数参加)、653店、発行枚数が約165万件(2018年6月時点)です。北海道の世帯カバー率は50%以上を占めています。EZOCAは、サツドラのポイントカードを中心として立ち上げたためにユーザーの72%が女性で、20代から40代の女性が50%以上を占めています。

EZOCAの挑戦でもわかるように、サツドラHDは、自社だけの取り組みではなくて、地域の異業種(ホテル、飲食業など)とも連携して、地域需要を深堀りする試みには以前から挑戦していました。今回のコープさっぽろとの異業態提携も、地域連携プラットフォームづくりの一環であると考えれば納得できます。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。