今週の視点

寡占化が急速に進んだドラッグストア

第59回10年前とは様変わりしたドラッグストアの勢力図

この10年間でドラッグストア(DgS)の勢力図はどのような変化を遂げたのでしょうか?10年前の売上ランキングと現在のランキングを比較してみます。

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上位15社の売上合計は約5.6兆円に達した

上場DgS15社の決算発表が出そろったので、図表1にまとめてみました。売上高第1位がツルハHD、僅差の第2位がウエルシアHD。この2社は8,000億円弱の売上に達し、グループで1兆円突破も視野に入っています。

第3位がコスモス薬品です。前年4位でしたが、サンドラッグを抜いて単独3位に入りました。上位2社がM&Aによって規模を拡大しているのに対して、コスモス薬品は自社の出店だけで成長しており、何年間も純増店舗数100店規模の高速出店を継続しています。

バローグループの中部薬品を含むDgS15社の売上高合計は約5.6兆円です。DgSは上位寡占化が一気に進んでいます。

10年前は40社で3.5兆円の売上高

図表2は、10年前の月刊MD2008年10月号の『ドラッグストア白書』で掲載した売上高ランキングです。未上場の企業も含めた40社のランキングを掲載しました。この40社の売上高合計は約3.5兆円です。10年前と比較して、企業数が大幅に減少し、40社対15社の比較ですが、売上高合計が1.6倍に増えています。

ちなみに、昨年の月刊MD2018年10月号の『ドラッグストア白書』 では、集約化が進み、未上場企業も含めて正確な数値が取れる企業数が減ったために、30社ランキングを掲載しています。10年前は、DgS企業が群雄割拠していたが、それが、この10年間で淘汰と集中が進んだことがわかります。

売上高ランキングも10年間で大きく変化しました。10年前の売上高第1位はマツモトキヨシHD、第2位がスギHDでした。現在は同5位、6位に順位を下げています。ココカラファインHDとの経営統合計画を進めている両社ですが、M&Aによって起死回生を図ろうとしているようです。

現在のウエルシアHDは、10年前は「グローウェルHD」という名称でした。懐かしいですね。グループ企業は、ウエルシア関東、高田薬局、寺島薬局、イレブンの企業名が入っており、この当時から積極的なM&Aを仕掛けていたことがわかります。10年前のグローウェルHDの売上高は約1,930億円なので、10年間で4倍も売上を増やしており、この10年間で驚異的な成長を遂げたことがわかります。大手DgSの中ではナンバーワンの成長率です。

中堅企業の中で、この10年間でもっとも成長した企業は、クスリのアオキです。10年前約490億円だった売上高が、2018年度決算では約2,500億円と、5倍以上の売上高成長を達成しています。また、薬王堂も10年前約375億円の売上高が、2018年に約910億円と10年で3倍近くも売上高を増やしています。

中部薬品も10年前の売上高約460億円が、2018年に約1,270億円と、こちらも約3倍も売上高を増やしています。ゲンキー(現在はGenky Drug Stores)も10年前約370億円が、2018年は約1,030億円と10年間で大きく規模を拡大しました。

10年前の売上高ランキングを見ると、この10年の間に、M&Aなどで屋号がなくなった企業がたくさんあることがわかります。群雄割拠していた戦国時代は、個性的な経営者がたくさんいて面白かったなあ。寡占化の進行は、産業として成熟していく過程では不可欠なプロセスなのでしょうが、ちょっと寂しい気もします。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。