今週の視点

オンラインとリアルの融合が進む

第58回ライフとアマゾンが提携し最短2時間の宅配サービスを年内に開始

2019年5月30日、大手食品スーパーのライフコーポレーション(大都市圏を中心に計273店舗展開)は生鮮食品のオンライン販売でアマゾンジャパン(Amazon Japan)と提携すると発表しました。2019年中に東京都内の店舗で「アマゾン・プライムナウ」(最短2時間で商品を宅配するサービス)を導入する予定です。オンラインとリアルの融合が一気に進みそうな勢いです。

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ホールフーズマーケットでは、アマゾンプライム会員に対し、店内の商品を最短2時間で宅配するプライムナウのサービスを強化している。

ライフ店内の商品を最短2時間で届ける

今回の仕組みは以下です。プライムナウ会員のお客が、アマゾンのポータルサイトからライフの商品を注文。ライフの担当者が店内で商品をピックアップし、梱包した後、プライムナウの配送担当者が店舗に商品を取りに来て、最短2時間でお客に配送。決済はアマゾンの仕組みを活用し、アマゾンに登録されたクレジットカードのみの決済となっています。

生鮮食品、惣菜、冷凍・冷蔵食品、飲料、酒、日用品、コスメ・美容用品、ベビー用品、ペット用品まで、注文から最短2時間で届けるサービスを計画しています。また、ライフの商品だけでなくて、アマゾンの売れ筋商品も注文できます。

ライフのメリットは、その店舗の商圏外に住んでいる消費者に商品を届けることができるので、商圏の拡大と売上増が期待できるという点です。とくに車を持たない世帯の多い東京都区内の消費者にとっては便利なサービスといえます。また、「店に行かないでも生鮮食品を購入できる」という便利性の向上も、売上増に貢献すると思います。

アマゾンのメリットは、ライフで取り扱っている生鮮食品や総菜を最短2時間で届けることができるようになり、アマゾンの生鮮食品の品揃えを充実できることです。

アマゾンが買収したアメリカのスーパーマーケット「ホールフーズ」。プライムナウの宅配サービスを強化し、オンラインとリアルの融合を図る。

ホールフーズの仕組みを写真で見てみよう

今回の提携の仕組みは、アマゾンが買収した「ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)」で行っている「プライムナウ」のサービスとほぼ同じ仕組みです。

下の写真のように、専門の担当者がお客の注文に応じて、店内を回って商品をピックアップします。その後、写真の専用台で注文商品を梱包し、写真右の一時保管場所に置き、配達の担当者が商品を取りに来て、注文客の自宅に届ける仕組みです。

冷蔵が必要な食品に関しては、下の写真のような冷蔵ケースに一時保管します。また、冷凍食品は、店の外に冷凍庫があり、その中に保管していました。一時保管スペースに大量の商品が並べられており、ホールフーズのプライムナウの人気を感じます。

これからの時代は、オンラインとリアルのどちらかだけでは生き残れなくなります。オンラインとリアルを融合して、より便利な「買物体験」を提供する競争が始まっています。

しかし、今回のライフとアマゾンの提携で気になることは、「注文」も「決済」もアマゾンのシステムを活用することです。アマゾンは基本的に「データ非公開」の企業なので、「販売データ」「顧客データ」「決済データ」もすべてアマゾンに握られるということは、アマゾンにすべて牛耳られることにはならないですかね? ちょっと心配です。

要冷蔵食品を保管する冷蔵庫。
冷凍食品を保管する冷凍庫。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。