今週の視点

売りにくい商品を育成する力を持とう

第41回アルフレッサヘルスケア勝木尚社長が力説「DgSを元気にする処方箋」

ヘルスケアの大手卸売業「アルフレッサヘルスケア株式会社」の勝木尚社長は、テレビCMの入った「売りやすい商品」を安売りするだけでは、DgS(ドラッグストア)の継続的な成長は望めないと力説します。効果効能に優れた、本当に客のためになる「売りにくい商品」を育成する力を養うことが、DgSの継続的な成長のためには不可欠だと強調しています。(以下の文章は2019年3月17日のインタビューのタイジェスト版を、筆者が大幅に意訳して掲載しています。インタビューの全文は月刊マーチャンダイジング5月号で掲載します)。

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売りにくい高機能商品を育成し、売って感謝される喜びを体験しよう

これからの日本は、本格的な人口減少時代に突入し、売上は減ることはあっても大きく増えることは期待できません。やみくもに規模の拡大だけを追求する時代は終焉すると思います。たとえば、将来、売上が10%落ちても、粗利益は維持できるような店を、DgS(ドラッグストア)の皆様と協働してつくっていきたいと思います。

そのためには、高機能商品の「売り切る力」を育成し、マージンミックスによって粗利益を改善していくことが重要です。現在のDgSさんは、テレビCMが入った「売りやすい商品」を売るのは得意ですが、高機能高単価の売りにくい商品を店頭で育てる力が弱くなっているように感じます。労働人口の減少で人件費が上昇し、売場の人員が少なくなっていることも「売る力」が低下している原因のひとつです。

しかし、DgSで働く喜びは、現場で働くスタッフの皆さんが、自信をもって推奨した商品を売って、地域の顧客に感謝されることだと思います。たとえば、高血圧の大敵の塩を体外に排出する効果のある当社の専売品「しおナイン」のような、売りにくい商品を育てることで、「売って感謝される喜び」を、DgSの現場スタッフさんに、もっと体験してもらいたいと思います。

アルフレッサヘルスケアでは、THMW(トータル・ヘルスケア・マーチャンダイジング・ホールセラー)というコンセプトで、MD(マーチャンダイジング)機能を強化した卸売業を目指しています。卸売業は、金融機能や物流機能では差別化できにくくなっています。価格・リベート交渉一辺倒の「価格商談」から脱却し、MD機能を強化し、「売り方」を開発・提案することが、アルフレッサヘルスケアの役割だと考えています。

アルフレッサヘルスケア株式会社勝木尚社長

専売品のマージンミックスで将来も元気なDgSでいてほしい

MD強化の中でも、アルフレッサヘルスケアは、(1)エビデンスがしっかりしていて、(2)季節性がなくて、(3)粗利益が確保できて、(4)簡単に真似のできない「専売品」の開拓と開発に力を入れています。その専売品の多くは、テレビCMを打つほどの規模ではなくて、知る人ぞ知るという埋もれた商品がほとんどです。その自信をもって薦められる専売品を発掘・育成することは、社会貢献にもなるし、DgSさんの継続的な成長にも貢献すると思います。

しかし、ある専売品メーカーの経営者と名刺交換して、「ぜひ取引をしてもらえませんか?」とお願いしたところ、その社長から「取引先はどこですか?」と聞かれたので、「薬局・薬店・ドラッグストアです」と答えたところ、その社長から「安売りと返品の業界ですね」と即答されてショックを受けたことがありました。もちろん、競合対策としての安売りはあると思いますが、売りやすい商品だけを売って、「売りにくい商品は返品すればいい」という商売では、専売品を育成することはできないと思います。

DgSさんだけが販売チャネルだった時代は過去のものです。たとえば、大手食品メーカーの健康食品の中で、DgSなどのリアル店舗で販売しないで、インターネット販売だけで何十億のブランドに成長した事例は増えています。インターネットの方が「売りにくい商品」の価値を伝えやすいのであれば、DgSなどのリアル店舗の価値は相対的に低下していきます。

DgSさんが、価格とリベートの話しかしなくて、安易に返品し、高機能商品を育成してくれないのであれば、「もう仕入れてもらわなくて結構です。インターネットで売ります」とDgSに見切りをつけるメーカーが登場するかもしれません。「良い商品を自信をもって販売・育成し、顧客に感謝される」という、DgSの商売の原点に回帰すべきだと思います。

アルフレッサヘルスケアは、売上の98%はDgSさんとの取引に特化しています。ネット販売との取引はほとんどありません。われわれの願いは、専売品の販売などでマージンミックスを行い、いつまでも元気なDgS業界であってほしいということです。

[談・文責/編集部]

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。