MD NEXTおすすめセミナーご紹介 | 2023年2月8日(水)「第2回 日用品/化粧品業界発展戦略セミナー」(主催:石鹸新報社)

MD NEXTからおすすめのセミナーのご紹介です。2023年2月8日(水)に開催される日用品/化粧品業界発展戦略セミナー(主催:石鹸新報社)では、日用品業界/化粧品業界におけるコロナ禍、ならびにコロナ収束後の、新しい業界構造における役割や求められる社会的責任への考え方等について、有識者の皆さまからご意見をいただきます。ぜひご参加ください。

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大によって生活者の意識、ライフスタイルが変化し、企業にとっても働き方改革の一層の推進、DXの導入加速など大きな変化をもたらしました。また、最近のエネルギー価格の高騰は家計や企業経営に大きな影響を与えています。

第2回目となる本セミナーでは、こうした業界環境の変化を踏まえ、様々な分野の有識者からご意見をいただき、業界発展戦略を考えていきます。

石鹸新報社オンラインセミナーについて

日用品/化粧品業界の専門紙として業界全体を俯瞰しながら「これからの業界発展に何が必要か」を考え、オンラインセミナーという新しい情報発信形態にチャレンジを始めます。

実施概要

開催日時 2023年2月8日(水) 13:00〜16:30
※Zoom ウェビナー形式
申し込み期間 2023年2月7日(火) 16:00まで
対象者 日用品/化粧品業界のメーカー様、卸売業様、小売業様、その他関連企業
お申込み 専用ページからお申込みください。
(定員になり次第締め切らせていただきます)
費用 10,000円(税込)
※申込完了後、お支払いについてご案内します
特別協力 株式会社プラネット
後援 一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会

内容

(1)基調提言「新型コロナを経験した業界の進むべき方向」

畑中 伸介氏
株式会社あらた 取締役会長


日用品・化粧品業界で日本最大級の卸商社・あらたは、21年前に全国各地の有力卸が歴史と伝統を一つに結集して設立。「世の中のお役に立ち続ける」という企業理念の下、サプライチェーンの好循環を目指し、改革を進め、順調に発展を遂げている。同社の畑中伸介会長が中間流通の立場からこれからの業界の発展について語る。

(2)講演「日本チェーンドラッグストア協会の活動と今後のドラッグストア業界」

田中 浩幸氏
一般社団法人 日本チェーンドラッグストア協会 事務総長


今や生活のインフラといえる存在となったドラッグストア。業界団体の日本チェーンドラッグストア協会はセルフメディケーションの推進など10兆円産業へ向け様々な活動を推進している。田中浩幸事務総長が注力している協会活動、ドラッグストアの成長戦略について有力企業の最新動向を交えて解説する。

(3)講演「我が国の訪日観光とインバウンド政策」

中山 理映子氏
独立行政法人 国際観光振興機構(日本政府観光局) 理事


ウィズコロナ、アフターコロナの国内消費に大きく影響を与える訪日観光とインバウンド消費。その目的や消費ニーズはコロナ前とは変化しており、トレンドの把握は重要だ。日本政府観光局の中山理映子理事が最新の訪日観光の状況と政府のインバウンド政策について、日用品・化粧品、流通関係者に向けて解説する。

(4)石鹸新報社からの報告

お申し込み

お申し込みはこちら
【問合せ先】株式会社石鹸新報社担当:藤岡
(E-mail)hotline@sekkenshinpo.com
(住所)大阪市北区天神橋2-2-11 阪急産業南森町ビル7階

MD NEXTおすすめセミナーご紹介 | 2022年2月9日「日用品/化粧品業界発展戦略セミナー」(主催:石鹸新報社)

MD NEXTからおすすめのセミナーのご紹介です。2月9日に開催される日用品/化粧品業界発展戦略セミナー(主催:石鹸新報社)では、日用品業界/化粧品業界におけるコロナ禍、ならびにコロナ収束後の、新しい業界構造における役割や求められる社会的責任への考え方等について、有識者の皆さまからご意見をいただきます。ぜひご参加ください。

石鹸新報社オンラインセミナーについて

日用品/化粧品業界の専門紙として業界全体を俯瞰しながら「これからの業界発展に何が必要か」を考え、オンラインセミナーという新しい情報発信形態にチャレンジを始めます。

実施概要

開催日時 2022年2月9日(水) 13:00〜16:15
※Webセミナー形式
申し込み期間 2022年2月8日(火) 16:00まで
対象者 日用品/化粧品業界のメーカー様、卸売業様、小売業様
お申込み 専用ページからお申込みください。
(定員になり次第締め切らせていただきます)
費用 10,000円(税込)
※申込完了後、お支払いについてご案内します
特別協力 株式会社プラネット

内容

(1)基調提言「コロナを経験した業界の進むべき方向」

三木田 國夫氏
(株式会社PALTAC代表取締役会長)

(2)講演「経営史の視点からの日用雑貨業界の歴史と展望」

佐々木 聡氏
(明治大学経営学部教授)

日用品業界の学問的研究を進める佐々木聡教授が経営史の視点から中間流通を担う卸売企業に焦点を当て、その歴史的な位置づけの変遷をたどる。流通の大きな変革のなかで、「流通革命」論を警鐘と受け止めた主体的な革新の動きや、流通の動態的な変化をみるときの規模・範囲・通量の経済性、垂直的統合・水平的結合などキーワードを解説。歴史的な展開を基盤に未来を切り拓く中間流通企業に期待される経営のあり方について示唆する。

(3)講演「SDGs起点の事業戦略とエシカル消費の行方」

河口 真理子氏
(立教大学特任教授/不二製油グループ本社株式会社CEO補佐/株式会社大和総研特別アドバイザー)

今、企業にはSDGsへの取り組みが社会から求められており、SDGsの目標達成を意識した事業活動が不可欠になってきた。本セミナーではSDGsの目標ゴール12「つくる責任つかう責任持続可能な消費と生産のパターンを確保する」に焦点を当て、業界企業が取り組むべき「SDGs起点の事業戦略」を中心にサステナビリティ研究・教育の専門家である河口真理子氏が解説する。

(4)石鹸新報社からの報告 [約15分]

お申し込み

お申し込みはこちら
【問合せ先】株式会社石鹸新報社担当:藤岡
(E-mail)hotline@sekkenshinpo.com
(住所)大阪市北区天神橋2-2-11阪急産業南森町ビル7階

小売アプリで既存商圏を深掘るためには、UI/UXの継続的改良を!!

今後重要性を増す小売業のアプリ。新規客獲得、固定客増加につなげるためには、どのように画面デザイン(UI=User Interface)や利用者体験(UX=User Experience)の設計をすればいいのだろうか。人気アプリのUI/UXに携った2人の専門家に聞いた。(月刊マーチャンダイジング2022年1月号より抜粋)

年代問わず増加しているスマホ、アプリ利用者

総務省が発表した「令和3年版情報通信白書」によると、スマホの世帯保有保有率は約89%、年代別のスマホ利用状況では20〜29歳の95.0%、30〜39歳の94.5%が利用、60歳以上でも81.0%が利用している。

また、民間の調査会社によれば、スマホ保有者のうちGoogleやヤフー、LINEなど主要メディアを利用する人は月間計算で98.8%に及ぶ(※1)。
(※1)ニールセンモバイルネットビュー(2019年4月)

現代は高齢者を含む大多数の人がスマホを保有し、アプリを通じて連絡を取ったり情報を得たりしている。これは日々の生活レベルで考えても納得いくことである。

一方、社会状況を見るとコロナ禍によりECの売上が大幅に拡大した。総務省の「電子取引による市場調査」によると2020年のBtoC(企業対個人)のEC市場規模は「物販系分野」で12兆2,333億円、EC化率8.08%、伸長率は21.71%と大きく成長した。

一段階ギアが上がった感のあるECだが、これに限らずクーポンの発行、商品・イベント・割引などの各種情報発進、ポイント計算、処方せん送信などあらゆる買物体験を一つのスマホアプリに凝縮させる「アプリファースト」という考えがあり、小売業がさらなる成長を遂げるためのキーワードになりつつある。

世界最大の小売業ウォルマートは米国内事業では2021年1月期、店舗数は前年より13店舗減らしているが売上は8.5%伸ばしている(図表1、2)。アプリファーストの考えをフル活用した既存店・客の深掘り、新規客獲得が成功している好事例である。

[図表1] ウォルマート米国事業店舗数
[図表2] ウォルマート米国事業業績

日本の有力DgSは出店を成長戦略の柱に据え、積極的な店舗展開を続け売上を伸ばしている。これを維持しながら同時に、商圏の深掘り、潜在需要を開拓していくためにはアプリファーストの考えに基づきアプリも店舗のひとつと見なし、集客や売上を設計していく「新しい店舗戦略」が大きなカギになるだろう。

店舗を主、アプリを従と考えるのではなく、顧客接点があり購入チャンスがある場所をすべて店舗と捉え可能性を追求していく。リアル店舗の投資金額に比べればはるかに低く改良がしやすいアプリの「店舗価値」をいかに上げていくか、そのひとつのポイントがアプリのUI/UXにある。

リアル店舗とアプリを同等の顧客接点として考える

生活者はスマホと頻繁に接触し多くの時間を費やしている。ある調査によれば15〜69歳までの生活者がスマホに接触する時間は121.2分、10年前の5倍近い時間である(※2)。リアル店舗に例えれば、商圏人口や店舗前を通過する人数が以前より格段に増えている。その人たちに「入店」してもらい快適な「買物体験」を提供するために核となる技術がアプリのUI/UXなのだ。

リアル店舗には入り口の位置決定、売場レイアウト、回遊計画(マグネット売場)、POP(情報発信)などISM(イズム/In-store Merchandising)とよばれる店づくりの技術があり、絶えずこれを見直すことが必要とされる。

アプリの世界のISMに相当するものがUI/UXと考えれば分かりやすいだろう。

図表3はリアル店舗とアプリ利用のプロセスを比較したもので、双方の各プロセスにはそのプロセスを可能な限り快適に体験させ購買まで進ませ、体験全体の満足度を高め再利用を促すという使命が課せられている。これがISMでありUI/UXなのだ。

[図表3] リアル店舗とアプリの利用プロセス比較

そしてリアル店舗が5〜6年に1度改装しISMを大幅リニューアルさせ店舗年齢を若く保つのと同様に、アプリのUI/UXも定期的にまた必要に応じて、リアル店舗よりももっと短い周期で見直し改善する必要がある。
(※2)生活者のメディア環境と情報の意識(2021年博報堂)

《新しい店舗戦略》 顧客接点があり購入チャンスがある場所は、すべて店舗
       スマホアプリは有望な店舗になり得る

1,000万人ユーザーアプリABEMA担当者が解説するUI/UXの設計法

ABEMAはサイバーエージェントが開発した動画配信のスマホアプリ、WEBサービスで「新しい未来のテレビ」を標榜している。ABEMAのスマホアプリの週間利用者(WAU)は1,000万人を超え、日本でも有数の人気アプリである。このアプリの立ち上げ時期からUI/UXを担当したUIデザイナーの鬼石氏と、現在小売向けのUXデザインに従事するUXデザイナーの佐竹氏に、アプリ価値を最大化するUI/UXの設計プロセスについて聞いた。

図表4はUI/UXの視点も加味した上でのアプリ開発のフローである。

[図表4] アプリの開発プロセス

①まずUX担当者がクライアント企業と綿密に話して何を目指すのか=どのようなアプリ体験(UX)を実現させるか「ゴール」を共有する。クライアントが持つ自社アプリの情報や課題を引き出し、それに対してUX担当者が持つ豊富なソリューション(解決策)のアイデアを提案し方向性を定める。アプリの土台となる重要なプロセスだ。

②既存のアプリであればレビュー(ユーザーの投稿)を徹底的に見るなどして課題を洗い出す。ちなみに現在のサイバーエージェントのUI/UX設計は新規立ち上げより、既存アプリの改良の依頼の方が多いとのことである。

③の段階からUI担当者が入りワイヤーフレームと呼ばれる設計図をつくっていく(画像1)。最初は手描きで起こし、試行錯誤しながら実際の画面に近いデジタル画像へと解像度を高めていく。

[画像1] 手書きのワイヤーフレーム

④ある程度方向性が固まったら画面デザインしてエンジニアがプログラムを組みプロトタイプ(試作版)をつくり実証実験を重ねる。この段階でもスムーズに使えない機能や、使いにくいデザインなどを洗い出し何度もプロタイプをつくり直す。この過程は「スクラップ&ビルド」とも呼ばれるプロセスだ。

⑤試行錯誤を重ねて完成品となりリリースされる。しかし「スクラップ&ビルド」は完成品ができた後も続く。サイバーエージェントではアプリのUI/UX含め全事業、全業務、よりよいものを求め運用し続けることにとくにこだわっている。ABEMA では開発開始からリリースまでの1年間に200以上のプロトタイプをつくり検証を重ねた。

デジタルで閉じない実際の使用シーンを考える

UXでカギとなるポイントを佐竹氏に聞いた。

「小売業のアプリで一番大事なことは、デジタルで閉じることなくリアルな環境、使用シーンも織り込んで設計していくことです。たとえば、小売のレジ業務は決済手段の確認、ポイントカード確認、レジ袋がいるかどうかの確認など作業が増えていて普通の精算でも時間がかかります。その上アプリの利用でもどこかが詰まると余計に時間が掛かりレジ待ちの列は長くなり、お客さまはこれを嫌って利用しなくなります。複数のクーポンが出ているとき、いちいちその画面を出して使っていくと時間がかかるとか、クーポンが表示される速度が遅かったり、読み取りに時間がかかると使いにくさを感じ利用率は下がります。

こういう実際の使用シーンで起こるかもしれない条件を加味しながら設計することがポイントでしょう。

そのために、開発時のスクラップ&ビルドの過程では会議室などを模擬店舗に見立てて店頭で実際にアプリを使うとき、使いやすいか途中離脱につながる要素はないのかなどを実験しています」

UXの基本方針が定まれば実際の画面デザイン(UI)の段階に移る。リアル店舗でいえば、出店が決まったあとに出入り口の位置や売場レイアウトなどISMを設計する段階だ。

リアル店舗では入り口を端に取り、入店客の70%が通過する主通路を通し入り口から対角線上に利用頻度が高い食品売場などを置き客足を店舗奥まで誘導するなどの定石がある。アプリのUIの定石について鬼石氏に聞いた。

「小さい画面のなかで重要な場所、視線の流れなど定石は決まっています。たとえば、パソコンでは左上から横に、そして下にというように視線はZ型に流れていきます。スマホ画面ではスクロールすることで下方向に視線が流れていくので、一画面に要素を盛り込み過ぎず、興味のある要素を下方向に向かって盛り込んでいきます。

また、初期画面では一番下の左に視線が止まり、そこから右に視線が流れるので、もっとも重要なのは左下でここには多くのアプリがホームボタンを置き、その隣に次に見て欲しいボタンを順次置いていきます」

こうした基本機能の置かれる一番下の列に置かれたボタンはタブと呼ばれ、たとえば、画像2のABEMAアプリ画面の最下部、もっとも左にホームが置かれ、隣に動画の「ジャンル」、見たい動画の「検索」、視聴履歴やお気に入りの作品を登録する「マイページ」、有料会員への切り替えである「プレミア」と続く。これもユーザーの使いやすさやプレミアム会員獲得のために最適と思われるUXから導かれたデザイン(UI)である。

[画像2] スマホによる目線

また、iPhoneに代表されるように、スマホ機器は定期的にモデルチェンジがあり、画面の大きさや操作が変わるのでこれに対応することも使いやすく効果を上げるためにUIの基本となる。

さらにいえば、ダウンロード数が多いアプリ、アプリに限らず流行の動画サービスなど利用者が多いアプリ、サービスに準拠したUIを採用すれば、使い慣れている分快適なUXが実現しやすいとのことだ。変化や流行を常に捉えていなければならない。

自社アプリのUI/UXをチェックする10のポイント

ワイヤーフレームはアプリの設計図だが、利用者がどのようにアプリと接触し利用するかなど体験全体を時系列的に設計するのが「カスタマージャーニー(ジャーニー)」である。

[図表5] カスタマージャーニー(サンプル)
アプリ利用のフローを分解(使い始め〜継続/離脱まで)

図表5はその見本だが、単に開発・改良するアプリだけでなく、オフライン、オンライン含め利用者との接点全体を描き、そのなかでアプリの役割を最適化するという俯瞰的な見方もする。個別アプリに関しては、そのアプリの最初の接点、登録、クーポン利用、プッシュ通知、決済などあらゆる使用シーンを想定してそれがいかにストレスなくスムーズに行えるかをシミュレーションしていく。

ジャーニーが大枠の流れ(抽象)でワイヤーフレームは実際の機能設計(具体)と位置づけ、利用者の時間的な流れと個別機能の間、抽象と具体の間を何度も行き来して、課題を洗い出しそれを潰していく作業が続き、課題が減ってきたらプロトタイプをつくり実証実験に入るという流れだ。

それではアプリに起こる問題にはどのようなものがあるのだろう。図表6はサイバーエージェントによるアメリカと日本の小売業のアプリの評価である。図表7はその評価ポイントで、自社アプリのUI/UXをチェックする際も役立つ。図表8は改善例だ。

[図表6] 日米小売業アプリの評価
[図表7] アプリの利用プロセス別評価ポイント
[図表8] アプリトップ画面改善例

ウォルグリーンのタブは左からホーム、Prescription(処方せん)、FindCare(自社オリジナルのオンライン健康相談、診療サービス)、Shop&Saving(買物、クーポン)、Photo(写真プリント)のサービスが並び店舗のよく使う機能が凝縮されている。操作性も簡単でトップ画面のタブからほとんどのサービスは2〜3ステップでアクセスできる。

アメリカでは慢性疾患に関してリフィルと呼ばれる1年程度使える処方せんが出されアプリで処方せんを送るだけで宅配や店舗受取で薬がもらえる。規制が異なるので日本では提供できないサービスもあるがアプリのUI/UXだけを純粋に評価しても分かりやすく使いやすい(図表9)。

[図表9] ウォルグリーンのアプリ利用例
オンライン診療を選ぶと対象科目、料金案内、対応症状がワンタップでサクサク出てくる。24時間365日対応

これに対して日本の小売業のアプリは発展途上である。ある小売業アプリは登録しにくい、ECがWEBページをそのまま表示しただけで使いにくい、片手だけ(親指)で操作できないなど、相当に課題がある。とりわけ登録のしにくさは多くのアプリに共通しており、リアル店舗でいえば、ドアにカギかかかっている、ドアが開くのに時間がかかるなど、入店しにくいままでアプリが公開されているものが多いのだ。

「ユニクロのアプリは会員登録しなくても新規でダウンロードすると仮のバーコードが発行されそこにポイントがたまるようになっています。好きなタイミングで登録すれば仮アカウントのポイントが統合されます。このUXの設計にはひと手間要するのですが、煩わしい会員登録はあとでゆっくりしてもらうという利用者の立場に立った設計になっています」(鬼石氏)

「会員登録で心理的なプレッシャーになることのひとつが、位置情報の確認を許可しますかとか、プッシュ通知を受け取りますかといったように、説明やメリットを示されることなく質問ダイアログが次々に出てくるパターンです。多くの人はなぜ自分の情報を晒す必要があるのかを不安に感じて許可しません。もしくは登録をやめてしまう人もいます。

アメリカの小売アプリの多くには、位置情報の確認を許可すると、最寄りの店舗情報をお知らせするとか、登録時の確認事項の背景説明をする『オンボーディング』という機能がついていて、利用者は意味を分かった上で許可する、しないを決められるのです。こういう細かいけど、当然感じるであろうユーザー心理にまで配慮したUXの設計が日本の小売アプリでは未発達な状況です」(佐竹氏)

アプリも店舗のひとつと見なし、既存商圏、既存店の深掘りを追求する「新しい店舗戦略」の意義を理解すれば、アプリ登録しにくいという、リアル店舗で例えれば物理的に入店しづらいという状況は放置されないだろう。

この理解が進まないが故に、使いにくいから利用率が上がらない→利用されないからアプリから利益が見込めない→アプリへの投資や改良が滞る→アプリが使いづらいまま、という悪循環が起こる。

まずは、アプリ=店舗という意義を理解し、その上でUI/UXを洗練させる、リアル店舗でいう改装を行う。ここから新しい店舗戦略での真の業績追求が始まるのだ。

 

〈取材協力〉

サイバーエージェント
DXデザイン室 UXデザイナー
佐竹 裕行氏
サイバーエージェント
AI事業本部DXデザイン室室長
兼全社クリエイティブ統括室所属
鬼石 広海氏
サイバーエージェント
Al事業本部DX本部統括 経営戦略部長
藤田 和司氏

乳酸菌飲料で免疫力強化はトレンド化、ウィズコロナの消費者ニーズ

今回のテーマは、日々の体調管理や感染予防対策に毎日飲用する人も多い、「乳酸菌飲料(ドリンクタイプのヨーグルトを含む)」です。ウィズコロナが常態化する中で、消費者が乳酸菌飲料に何を求めているのか。2021年11月3日~4日に、全国のアンケートモニターを対象にアンケートを実施しました(N=3004人、平均年齢49歳、全国エリア)。

乳酸菌飲料・ヨーグルト、購入状況は「微減」

まずは、弊社が独自に収集するレシートデータから、「乳酸菌飲料」と「ヨーグルト」の購入状況をみていきます。

上図は、「飲料」カテゴリーのレシートに占める「乳酸菌飲料」の構成比と、「食品」カテゴリーのレシート枚数に占める「ヨーグルト」の構成比を、2020年1-10月、21年1-10月で比較したものです。

「乳酸菌飲料」の構成比は、<5.6%→5.4%>、「ヨーグルト」の構成比は、<10.9%→10.3%>となり、いずれも微減していることがわかります。

「買い場」はスーパー、コンビニ、次いでドラスト

市場の活性化を図るためにも、消費者が求めることとは――、アンケートでさらに深堀してみていきましょう。

まず、「直近1年間で乳酸菌飲料(ドリンクタイプのヨーグルトを含む)の購入経験がある」と回答した2426人に、購入場所を尋ねると(選択肢・複数回答)、約9割が「スーパー(89.0%)」と回答し、それに次ぐ「コンビニエンスストア(44.4%)」と「ドラッグストア(41.9%)」が4割となりました。年代が上がるにつれて「宅配(4.6%)」利用者は増加し、「60代以上」では、(6.0%、N=315人)となり、利用者からは「ヤクルトの宅配専用の商品を購入するため」、「販売店の人にすすめられ、明治R1ヨーグルトを飲んでいる」といった理由が挙がりました。

また、購入する際に重視することは、「味・飲みやすさ(71.4%)」が最も多く、「価格(71.0%)」、「機能性・期待できる効果(60.9%)」が続きました。

次に、乳酸菌飲料の飲用頻度は、2426人のうち、3割以上が「週に4回以上(32.0%)」と回答し、「週に2回~3回(21.8%)」、「月に2回~3回(25.3%)」となりました。

年代別では「60代以上」が、「毎日乳酸菌飲料を飲む人」の割合は、(27.9%)で、全体平均値を<+7.3pt>上回り、習慣化している人が多いことがわかります。

免疫力強化・整腸機能・子供ウケ商品が上位に

次からは、年代別でどういった乳酸菌飲料が飲用されているか、乳酸菌飲料の機能性に対する消費者意識を分析していきます。

「直近1年間で飲用した乳酸菌飲料」を尋ねると(選択肢・複数回答)、2426人のうち「明治プロビオヨーグルトR-1ドリンクタイプ(48.9%)」 が最も多く、理由は、「免疫力をつけたいから毎日飲用(60代以上男性)」、「コロナで免疫力をつけるために飲用(40代女性)」など、あらゆる年代で“免疫力強化”が多く挙がりました。

次に、「明治ブルガリアのむヨーグルトLB81プレーン(45.3%)」が続き、「価格も安く飲みやすい(30代女性)」、「腸内環境を整える働きがあり、美味しくて日常的に飲めるから(60代以上女性)」など、おいしさと手軽さ、特定保健用食品として許可を受ける整腸機能が支持を集めました。

また、3割を越えた「アサヒ飲料 カルピスウォーター(32.7%)」、「ヤクルト ヤクルト400(32.3%)」、「日清ヨーク ピルクル400(31.1%)」は、特に30代~40代の子育て世代から人気で、「カルピスウォーターは、子どもが好きで、特に夏時期、水分補給としても買っています。容量と価格重視(30代女性)」や、「ヤクルトやピルクルなど、子どもがよく飲む。量がちょうどよく、甘さがあるものを重視して買うことが多い(40代男性)」といった理由が挙がり、「カゴメ 植物性乳酸菌ラブレ(15.8%)」は、「ラブレのプルーン味を、鉄分を摂取するためにできる限り続けて飲んでいる(50代女性)」、「肌の保湿効果があるから(40代女性)」など、40代以上の女性の支持が高いことがわかりました。

腸内環境を整える「善玉菌」の代表として、「乳酸菌」や「ビフィズス菌」がよく知られていますが、市販の乳酸菌飲料はその機能性ごとに、含まれる善玉菌が異なります。

機能性の認知は含まず、あくまでも「聞いたことがあるか」調べると、全年代で半数以上を越えたのは、図表3で上位に挙がった乳酸菌飲料として、CMでも馴染みのある「乳酸菌 シロタ株(74.6%)」、「R-1乳酸菌(67.4%)」、「ガセリ菌SP株(60.1%)」、「LG乳酸菌(58.8%)」となりました。
※乳酸菌 シロタ株=ヤクルト400など、R-1乳酸菌=明治プロピオR-1、ガセリ菌SP株=恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト、LG乳酸菌=明治 ブルガリアのむヨーグルト

「乳酸菌を取り入れ、免疫力を強化すること」がトレンド化

年代別では、「40代~50代」では、「カゴメ 植物性乳酸菌ラブレ(50.8%※40代~50代平均値)」に含まれる「ラブレ菌」や、「キリンiMUSE」に含まれる「プラズマ乳酸菌(50.2%※40代~50代平均値)」の認知度は、全体平均値よりも高くなり、「~30代」では、「森永乳業 シールド乳酸菌タブレットやチョコレート」などに含まれる、「シールド乳酸菌(30.0%)」の認知度は3割で、平均値よりも<+6.2pt>高いことがわかりました。

最後に、既に発売されている乳酸菌飲料の機能性を並べ、「魅力的に感じる乳酸菌飲料の機能性」を尋ねると、乳酸菌飲料の期待する機能性として浸透する「腸内細菌の種類と善玉菌を増やす(68.3%)」が約7割で、「免疫力を高める(58.9%)」は、「便秘や下痢の整腸作用(48.6%)」を<+10.3pt>上回り、全年代でもニーズが高く、今までの調査結果からも「乳酸菌を取り入れ、免疫力を強化すること」がトレンド化していることがうかがえます。

また、「体脂肪を減らすのに役立つ(37.3%)」、「ストレス緩和・睡眠の質向上(31.2%)」、「肌荒れ・肌トラブルの予防に役立つ(30.3%)」などの機能性においても3割が魅力的に感じると回答し、理由としては「コロナ太りで体脂肪が気になる(50代男性)」、「コロナで仕事環境が急変しストレスを感じやすく、不眠にも悩まされている(50代男性)」、「マスクで肌荒れがひどいため(30代女性)」などのコロナ禍で顕在化する悩みが多くみられました。

それらに効果を発揮する乳酸菌飲料は既に発売されているため、売り場での提案・機能価値の理解を広め、消費者の裾野を広げるだけではなく、ウィズコロナが常態化する中で、時代に対応した新商品の投入や施策により、新たなユーザー層を獲得することが市場の活性化につながると言えるでしょう。

[調査概要]
調査期間:2021年11月3日~11月4日
インターネットリサーチ エリア:全国
調査機関:mitoriz

注目高まる冷凍食品。販路・商品拡大で半数近くが週2回以上利用

コロナ禍の巣ごもり需要やまとめ買い、テレワークのランチなど、簡便・保存性の高さから以前より需要が伸長する冷凍食品。冷凍食品の購買行動の変化、消費者が冷凍食品に求めることとは何か——ソフトブレーン・フィールド社が全国のPOB会員に対し、2021年9月に実施した「冷凍食品の利用状況に関するアンケート」結果から紐解きます。(N=2609人、普段冷凍食品を購入する人:平均年齢47歳、全国エリア)。

「冷凍食品」レシート調査 販路・商品拡大で「週2回以上利用する人」は半数近く

まずアンケートでは、「冷凍食品を購入する場所」および、「利用頻度」を、前回2018年10月結果と比較しました。

普段冷凍食品を購入すると回答した人(2018年N=2806人、2021年N=2609人)に、「冷凍食品を購入する場所」を尋ねると、主戦場は「スーパー」であり、およそ9割を占めますが(2018年89.2%、2021年94.1%)、特にコロナ禍では、冷凍食品売り場の拡大により、「ドラッグストア」が<12.8%→36.5%:+23.7pt>、PB冷凍総菜や冷凍野菜といった商品投入により、「コンビニエンスストア」は、<5.9%→26.6%:+20.7pt>と、いずれも大きく伸長しました。

コメントをみると「スーパーやコンビニで冷凍食品コーナーを覗く機会も増え、よく購入する(就業中50代女性)」店頭で商品を手に取る機会が増えた人や、「ドラッグストアで決まったものを特売の時に買うことが多い(就業中60代女性)」特売を利用してストックする人も多くことがわかりました。

また、「ネット通販」は少数派ながらも、<1.1%→6.3%:+5.2pt>」となり販売チャネルが広がっていることがわかります。「宅配の場合はスーパーに売っていない珍しい冷凍食品が多いので最近はスーパーよりも多く買っている(就業中50代女性)」といったコメントがありました。

「冷凍食品の利用頻度」は、「週2回以上利用する人」が<38.8%→49.8%:+11.0pt>と最も増加し、日常的に利用する人が増えていることがわかりました(図表2)。

利用頻度が増えたのは「外食に行けない」「自炊機会増え楽したい」から

次に、普段冷凍食品を購入すると回答した人(N=2609人)に、「コロナ感染拡大前と現在における冷凍食品を食べる頻度の変化」を尋ねると、7割が「今も感染拡大前も利用頻度は変わらない(70.7%)」と回答しましたが、2割以上が「現在のほうが利用頻度が増加した(24.9%)」と回答しました。年代別では、「20代~30代(26.0%、N=573人)」、「40代~50代(25.0%、N=1721人)」、「60代以上(21.9%、N=315人)」となり、若い人ほど「利用が増えた」と感じていることがわかりました。

そして、「現在のほうが冷凍食品の利用頻度が増加した」と回答した人(N=649人)に、「その理由(選択肢・複数回答)」を尋ねると(図表3)、「外食に行けないから(55.2%)」、「自炊機会が増え少しでも楽したい(54.7%)」といった、コロナ禍の食卓ニーズを解消する目的で利用が増えていることがわかりました。

また、「おいしくなったから(31.3%)」というように、「手頃でおいしいものが増えたから」など、味への評価を挙げるコメントが多くみられました。また、「価格が安定しているから(33.4%)」や「節約のため(25.0%)」といった、天候などによる野菜の高騰を受けにくいことや、調理時間短縮のために下ごしらえ済みの冷凍野菜を支持するといった声もありました。

次に、普段冷凍食品を購入すると回答した人(2018年N=2806人、2021年N=2609人)に「冷凍食品を利用するシーン(選択肢・複数回答)」を尋ねると、最多回答は「夕食」で<57.7%→60.6%:+2.9pt>となりましたが、「昼食<40.4%→48.1%:+7.7pt>」や「お弁当<25.3%→30.9%:5.6pt>」は、「夕食」よりも増加率が高いことがわかりました。

その理由としては、「テレワークのランチ利用」といったコメントが多く挙がり、「コロナで人混みを避けるため、ランチを買いに行かず冷凍食品中心の弁当を作るようになった(就業中50代女性)」コロナ禍で弁当を作るようになったなど、テレワーク中のランチ事情と大きく関わりがあることがコメントから伺えます。

前半の調査結果からは、コロナ禍における冷凍食品の利用状況は、外出自粛やまとめ買い、テレワークなどライフスタイルの変化により、主戦場はスーパーだけではなく、ドラッグストアやコンビニエンスストア、ネット通販など、販売チャネルや商品カテゴリーが広がり、利用頻度は「週2回以上利用する人」は半数近くとなりました。

味や質においても、消費者の評価は高く、様々な食卓ニーズを取り込み、食生活の一部となっていることがわかりました。

餃子、から揚げの購入回数アップ

フィールド・クラウドソーシング事業を展開するソフトブレーン・フィールド株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:木名瀬博)は、全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から月間1100万枚のレシートを収集する国内最大規模の(提携サイト含める)、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPointofBuyⓇ(以下、POBデータ)」を活用し、生活者の購買行動を分析しています。

後半は「レシートデータから購入状況や購入商品」、「冷凍食品に期待することやニーズ」を探ります。

最初に、普段冷凍食品を購入する人(N=2609人)に、「新型コロナ感染拡大前と現在において、購入が増えたと感じる冷凍食品はあるか」尋ねると、およそ3割が「購入が増えた冷凍食品がある(28.3%)」と回答しました。

購入が増えた冷凍食品がある人(N=738人)に、その商品を尋ねると、5割を越えたのが「餃子(61.4%)」、「からあげ・竜田揚げ(52.0%)」で、「メインにもつまみにもなる」、「昔より美味しくなって、温めるだけで十分に晩御飯のおかずになる」といったコメントが多くみられました。それに次ぐ、「チャーハン・ピラフ(46.7%)」、「パスタ(43.5%)」は、「テレワークのランチでパスタやチャーハンを食べる機会が増えたため(50代男性)」といった声が多く挙がり、在宅勤務中のランチに重宝している家庭が多いことがわかります。

また、料理用の冷凍素材を充実させるスーパーも増えており、「冷凍野菜(42.3%)」の他、「冷凍・魚などの切り身(19.5%)」、「冷凍・肉類(18.0%)」、「冷凍・果物類(17.6%)」の購入が増えたと感じる人が、およそ2割となりました。

その理由としては、「買い物の回数を減らすために、保存がきく冷凍野菜や果物、魚の切り身などが増えた(女性40代女性)」コロナ禍での買い物行動の変化や、「冷凍野菜は価格が安定し、下茹での必要がなく調理が楽。(50代女性)」「間食や朝食など、手軽な冷凍フルーツを食べるようになった(40代女性)」、料理時間の短縮や利便性、健康意識により購入するようになった人もみられました。

業態別・企業別にみる冷凍食品買い方状況

次からは、当社が独自に収集する「冷凍食品」のレシートデータから(調査期間:2021年1月~9月)購買行動を分析していきます。

業態別では、「スーパー(N=179,028枚)」・「コンビニエンスストア(N=30,360枚)」・「ドラッグストア(N=20,627枚)」の購入状況(レシート1枚あたりの平均購入個数・購入金額)と、スーパーのチェーン別では、「イオン(N=8,590枚)」、「イトーヨーカドー(N=4,227枚)」・「オーケー(11,488枚)」・「ライフ(6,225枚)」をセレクトして、購入商品をみてきましょう。

まず、上図の業態別では、「スーパー」・「コンビニエンスストア」・「ドラッグストア」の冷凍食品のレシート(2021年1月~9月平均値)から、購入状況(レシート1枚あたり:平均購入点数と平均購入単価)をみると、購入点数は<1.3~1.5個程度>、平均購入金額は、「スーパー(315円)」と「ドラッグストア(324円)」が横並びで、「コンビニエンスストア(258円)」となりました。

スーパーのチェーン別では、「平均購入金額(343円、4チェーンの平均値)」で、平均値を上回ったチェーンは「イトーヨーカドー(368円)」、「オーケー(347円)」でした。

どういった冷凍食品が購入されているか、チェーン別で詳しくみていきましょう。

上図は、「イオン」・「イトーヨーカドー」・「オーケー」・「ライフ」の冷凍食品購入レシートの冷凍食品購入レシート(2021年1月~9月平均値)におけるブランド別レシート出現率を表したものです(上位10ブランドまで)。

図表2で述べた、「新型コロナ感染拡大前と現在において、購入が増えたと感じる冷凍食品」で上位回答をとなる、餃子は「味の素ギョーザ」や「イートアンド王将餃子」、冷凍パスタや炒飯は、「日清フーズママ―」や「ニップンオーマイ」、「ニチレイ本格炒め炒飯」といった商品が、一定数購入されていることがわかります。

「イオン(トップバリュ)」、「イトーヨーカドー(セブンプレミアム)」における、10位以内のPB(プライベートブランド)商品のレシート出現率に注目すると、「トップバリュ(7.4%)」よりも、「セブンプレミアム(15.7%)」のほうが、<+8.2pt>と出現率が高く、イトーヨーカドーでは、「セブンプレミアムさぬきうどん(レシート出現率7.5%」や「セブンプレミアムハンバーグステーキ主に和風ソースの直火焼きハンバーグ(レシート出現率4.0%)」のレシート出現率が高く、NB(ナショナルブランド)商品よりも、PB商品のほうが多く購入される傾向があります。

子育て世代は大容量訴求、40代以上は本格志向の味を支持

最後に、今後冷凍食品に期待するニーズを探るべく、まずは「冷凍食品において、どういったキーワードに購買意欲がそそられるか」調査をしました(選択肢・複数回答)。

年代別でみると「20代~30代」では、子育て中のファミリー層も多く、「大容量パック(46.4%)」や、「まとめ買いセール(35.3%)」といたお得感や値ごろ感がある言葉が響き、「40代以上」になると、「家庭で専門店の味(42.6%、40代以上平均値 N=2036人)」といった、本格的な味に対する支持が高まることがわかりました。

また、どの年代においても「野菜たっぷり(33.9%、全体平均値)」は、3割以上に選ばれ、「カロリーや塩分カット(25.2%、全体平均値)」を挙げた人からは、「コロナ太りが気になる」「中性脂肪が気になるから」といった声があり、「糖質オフ(24.2%、全体平均値)」は、若年層「20代~30代(26.7%)」の支持が高いことがわりました。

他にも、「冷凍食品に対する要望」を尋ねると、「安くておいしい商品」といった声はもちろん、女性からは「冷凍野菜や肉・魚など調理用の食材を増やして欲しい」・「国産の冷凍野菜の種類を増やしてほしい」といった、日常的に冷凍食材を料理に取り入れたいという意識が感じられました。

パッケージや包装においては、「ごみができるだけ出ないような包装にしてほしい」、「冷凍野菜は、冷凍庫に沢山入るように、かさばらない包装にしてほしい」といった声があり、限りある冷凍庫の週能力を補うための「セカンド冷凍庫」のニーズが急速に高まり、従来の上開きタイプに加え、前開きタイプも普及していると言います。

コロナ禍で食に手軽さを求める傾向は今後も続き、冷凍食品の需要が伸びることが予想されます。新たな提案が商機となりそうです。

[調査概要]
調査期間:2021年9月25日~9月26日 インターネットリサーチ
エリア:全国
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

すすむドラッグストアの食品強化。主要チェーンの品揃を徹底調査!

進行する小商圏化。限られた商圏人口で客数を上げるためには食品強化は必須だ。そんな中ドラッグストア(DgS)が食品の買い場として存在感を増している。生鮮を含むフード&ドラッグという業態に進化しつつあるDgS。今回は大手DgSの食品売場を調査して食品部門の進化と課題を考察する。(月刊マーチャンダイジング2021年12月号より抜粋)

7割が調剤併設。食品強化と二正面作戦

今回の調査では首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)に出店する郊外型のウエルシア、コスモス薬品、ツルハ、クスリのアオキ、カワチ薬品、クリエイトSD、マツモトキヨシの各社、計20店舗調査した。店舗選びで調剤の有無は問うていないが結果的に20店舗中70%に当たる14店舗が調剤薬局を併設、程度に差はあるが14店舗いずれも生鮮の取扱いがあり、一ヵ所完結型のフード&ドラッグ業態が増えていることを示している。

今回は菓子、飲料類などではなく、食事の準備に利用できる食品を中心に「品揃え」「鮮度状況(見た目)」などを調査し、DgSがどの程度食品スーパー(SM)の代替ができるかといった視点で売場を見ている。ヘルスアンドビューティを主力とする、あるいは調剤薬局を併設したDgSが食品売場のレベルを上げれば「業態としての競争力」は非常に高くなり、地域シェア獲得に有利となる。

今回の調査は食品売場の充実ぶりを通して、DgSがどの程度業態としての競争力を高め進化しているかを見ているといってもよい。併せて改善ポイントも考察している。

各社の公式サイトなどで食品の取扱い店舗を事前確認し調査したが、各店舗食品売場の規模は異なるため、企業間比較は意図するところではなく合計スコアは採用していない。

調査内容は各調査、得点式の評価に加え売場の感想や意見など自由記述を設けている。青果、精肉に関しては品揃え、豊富感、見た目の鮮度、日配品は品揃えと各アイテムの品数(種類)、価格(最高と最低)、冷凍食品に関しては売場規模、必要な品揃えだったか、安さを調査した。最後に総合評価として「朝昼夕の3食を賄えるとおもったか」「食品購入を第一の目的にこのDgSを利用するか」「よく行く食品SMと比較して優れている点」をそれぞれ調査員に自由記述で回答してもらった。

[青果]各社充実する品揃え。豊富感と鮮度には課題も

青果の品揃えでは、17品目を調査、自由記述ではそのほかに品揃えのあった商品も記述してもらっている。得点はある100、ない0で見た。品目別に見ると日配の物流に乗りやすいカット野菜、モヤシの品揃えが90を超え、在庫率は高い。

トマトが80を超えるのは少し意外だがニーズの高い品目を強化していることがわかる。玉ネギ、ジャガイモ、ニンジンといった常温の保存が可能で使い勝手のよい品目の在庫率も70~75で高い。レタスが10でもっとも品揃えされていない。クリエイトSD、クスリのアオキが33.3なので、鮮度管理の難しい葉物まで店によっては販売していることがわかる。

比較的安価で腹持ちがよく朝食として食べることが多いバナナの品揃えは65.0で高い。その他果物ではリンゴ、ミカン、キウイを調査しており、常温で日持ちのよいキウイがバナナに次いで在庫率が高かった。ビタミンCや食物繊維が豊富で比較的安価なので、朝食用などとして品揃えすれば食品売場の充実に有益な商品である。

陳列の十分さ、豊富感に関しては各店舗それほど評価は高くない。限られたスペースなので数量をそれほど確保できない売場事情が改めて確認できる。それでも、モヤシ、カット野菜は比較的豊富感のある陳列になっている。鮮度、見た目の印象は概して評価は高くない。冷蔵ケースの導入や適切な見切り、廃棄など改善を要する分野だろう。各店の特徴は次のとおり。

●クリエイトSD青果の品揃え強化の戦略が明らか、立地条件によって店舗タイプ(食品売場)を変えている。
●クスリのアオキ食品SM並みの品揃えと物量。DgSのイメージを超えている。店内回遊で購買点数アップの狙いが見える。
●カワチ薬品早くから青果の取扱いをしていたが、品目と物量は絞っての展開が見える。
●ツルハ…こちらも食品取扱い強化の路線が見える。ただし、品目と物量は絞り気味。
●コスモス薬品…青果の品揃えは、絞り切っての展開、もしくはカット野菜以外は販売しない手法。効率的な戦略が見える。
●ウエルシア標準化が浸透しているので、立地による変化は少ないが、店舗によっては必要最低限の取扱い。
●マツモトキヨシもっとも従来型のDgSらしい食品売場ともいえる。公式サイトに食品取扱いの記載はあるが、主に「飲料」「菓子」がメインで冷蔵ケースも飲料のオープンケースのみであったりする。

このほか、日配、精肉、冷凍食品、総合力について、主力チェーンの状況をレポート!詳しくは、月刊マーチャンダイジング2021年12月号に!

価格個別化で利益率は向上する!DX時代の「ポイント・クーポン」戦略

これまで「どんぶり勘定」が中心だった小売業界。だがデジタルを用いれば、適切な「値付け」「値引き」を実現できるという。そんなことが実際に可能なのか?多くの先端企業で「価格の最適化」に関わる経済学者の成田悠輔氏に、サイバーエージェントAl事業本部の藤田和司氏と、同データサイエンティスト白木紀行氏が「最先端の価格決定論」を聞く。(月刊MD2021年12月号より)

価格個別化で利益率 15%以上アップしたWayfair

藤田 今回は価格の「最適化」「個別化」がテーマです。たとえばAmazonは数百人単位で経済学者を採用し、経済学を駆使し、価格政策を高度化しているといいます。(コラム参照)

価格政策によって急速に成長している小売業で、成田先生が注目している企業はほかにありますか。

成田 Amazon以降に創業したアメリカのEC企業のなかで、時価総額が数兆円まで伸びた企業のひとつ「Wayfair」の価格政策は注目すべきかとおもいます。Wayfairは、家具や寝具などの生活用品に特化したEC事業を展開している企業です(写真1)。

[写真1]Wayfairのウェブサイト。個々の商品の価格が購買履歴などによって個別化されている

この会社は、大勢の経済学者やデータサイエンティストを雇用し、顧客の過去の購買履歴に基づき「どのように価格を決定すれば最大の利益が得られるのか」を研究しています。サイトで取り扱われている商品の値段はすべて自動的に決定されていて、さらにすごいのがその商品価格が「ユーザーによって違うことがある」ということです。

つまり僕がある商品をクリックしたときと、藤田さんがクリックした場合で、過去の購入履歴などを参照して、人によって違った価格を表示する。価格のパーソナライゼーションを実現しているといえます(写真2)。

[写真2]Wayfairの個別商品画面。閲覧者の動向によって価格が変わる(写真は時間をおいてアクセスした例)

数年前にWayfairがすべての商品価格決定アルゴリズムを設計し直した際の資料があります(図表1)。もともとこの会社では商品ごとに、Amazonなどの競合サイトでの販売価格をスクレーピング(ホームページのデータを自動で抽出すること)して、その価格の下をくぐるということをやっていました。ですが、これをやっていると、より強い企業が、より安い価格を提示したら負けてしまいます。そこで価格を個別化することによって、利益率がどう変化するのかという実験をしたのです。

[図表1]Wayfairの価格の個別化実験

図表1では、縦軸が収益、横軸が日数の経過を表しています。「Day0」までは既存の価格決定の仕組みを使っていました。「Day0」以降、価格を完全に個別最適化する新しい仕組みを導入したのです。

商品をランダムに2つに分け、商品群B(青線)はそのままの価格決定の仕組みを使い、商品群A(赤線)は商品ごとに価格を最適に個別化して表示したところ、商品群AとBで20%前後収益に差が出ました。

さらに、Day30以降、商品群AとBで使用する価格決定の仕組みを逆にしました。するとちょうどきれいに赤と青がひっくり返ったというのがわかるとおもいます。ですからこの赤組と青組の差は、古い手法と新しい手法の差によるものであると推測されます。そこで、Day60以降は全体を新しい手法に変更したところ、もともとの基準から見ると全体で15~20%程度高い収益を達成しました。

藤田 価格を完全にパーソナライゼーションするとこれだけ大きなインパクトがあるんですね。「価格の個別最適化」は言葉としては昔からあるのですが、すでに実現している企業があるということに驚かされます。

WayfairはEC企業ですから、オンラインで取引が完結します。どんなお客さまがどんな情報を閲覧して、何を購入したかをデータで取得しやすいからこそ、データ分析しやすいという背景もありますよね。

成田 そうですね。ECとリアル小売業とでは、あらゆることに対するデータのたまり方が違います。それぞれの商品が、どれぐらいの価格で、どれだけ売れているのか。いつ、だれに売れたのか。在庫の状態はどうなのか。さらに商品を購入したそれぞれのお客は、どのような人たちで、何にどれぐらいお金を使う人なのか…という情報の質、そして情報の量がまったく違います。

ただ、リアル小売業でも、スマホアプリを導入することで、購入履歴やそのほかのユーザー情報がどんどん蓄積されています。リアル店舗とECの境界は、そういう意味ではどんどんあいまいになっていくのではないでしょうか。

[コラム]経済学者を大量採用するAmazonの狙い

データ経営の最先端をいくAmazon。同社が現在注力しているのが、経済学者の採用だ。経済学博士を約400名採用し、事業の中核でさまざまな分析を行い、事業の方向性を決定している。
Amazon上で販売している商品の値付け、値引き額の決定はもちろん、Amazonプライムの年会費や、同社が提供しているクラウド基盤「AWS」の値決め、口コミの掲載方法、商品の掲載順…ありとあらゆる局面で、蓄積されたデータに基づいた判断を行うのである。
このように、アメリカの企業では経済学者が事業の中核を担う流れがあり、彼らは「デジタル経済学者」や「テック経済学者」などと呼ばれている。

価格の個別化の前提と現状

藤田 私たちサイバーエージェントも小売業さまと「データをためる」ところから「データをつないで分析できるようにする」、実際に「データを活用する」ことに取り組んでいます。

このようなことが実現できるようになったのも、お店でスマホ支払いをする方や、アプリ上のポイントカードを提示するお客さまが増えているということが背景にあります。一方、店舗での実務に目を向けると、実店舗で個々のお客さまに合わせて価格を変更するのは、現実的ではありません。プライスカードを一枚一枚張り直していくわけにはいきませんから。

ですから、実店舗における価格の最適化は、お客さま一人ひとりに対して発行するクーポンや、ポイントバックという形で実施していくことになるのではないかとおもいます。

成田 おっしゃるとおりですね。これまで販促の手法には、直接の値引きや、クーポンによる値引き、ポイントバックなど、さまざまなものがありました。つまり、クーポンも、ポイントも、実店舗がそれぞれのお客さまに合わせて価格を最適化するための道具と捉えることができます。

ただ、価格の最適化は、小売業に関わる皆さんの頭の中にイメージとしては存在していても、実店舗の小売業では遅々として進展していないというのが実態ではないでしょうか。

ECをはじめとするデジタルネイティブな産業でさえ、まだまだ勘と勢いで経営判断している企業が少なくありません。国内の小売業さんでは、データに基づく価格最適化や、それを実現するためのクーポンやポイントのデザインをしっかり推し進めている企業は皆無に等しいのではないでしょうか。

DgSも数から質に潮目が変わった

藤田 たしかに、いま成田先生がおっしゃったような企業が大半なのではないでしょうか。たとえばドラッグストア(DgS)に目を向けると、この10年、20年は新規出店で売上げを伸ばしてきました。一人ひとりのお客さまに対する価格最適化よりも、1店舗でも多く出店する、あるいは企業間統合をしてマーケットシェアを上げていくということで売上と利益を伸はしてきたのが、この数十年の傾向でした。

ですが、マーケット全体が数兆円にまで成長し、トップ企業も売上1兆円に迫るという状況で、そろそろ出店して売上を伸ばすという、規模の論理は飽和状態になっていくのではないかとおもいます。ここから先の5年10年は、数よりも質の世界にシフトしていくのではないでしょうか。

私どもにもお問い合わせやご相談をいただく内容として「これまでやってきた、一律○%オフとか、決算月に毎週クーポンを打つというようなやり方を、そろそろ改めたいが、方法がわからない」というものが増えています。方向性が大きく変わりつつあります。

成田 これまでに申し上げた価格の最適化の話は、ある程度その企業のマーケットの規模が大きくないと、メリットがコストを上回らないという構造です。ですから規模が大きな企業さんから順番に取組みが進むのではないでしょうか。

10円のクーポンで80円利益が増えることも

[図表2]値引き・クーポン・ポイントの比較

藤田 そこでDgSの価格の最適化をしようとすると、おそらくクーポンやポイントバックの料率を変化させることで実現していくことになるわけですが、一方クーポン、ポイント、それぞれの施策によって、お客さまの捉え方も違っているのではないかとおもうのです。

成田 そうですね。ポイントとクーポンではまず全然反応が違います。僕たちの日常的な感覚として、ある商品が「その場で100円引きになります」といわれるのと、「これをいま買えば100ポイント分たまってそれを次の買物で使えるかもしれません」といわれるのでは、だいぶ受け取り方が違います。

理想的にはポイント、クーポンそれぞれについて、どういう人が、どれだけ反応しているのかを測り、それに基づいて一番よさそうな割引内容を細かく設定していくというのが重要になります。

クーポンに関していうと、日本ではとてつもなく効果がある場合があります。

先ほど紹介したWayfairは、全商品の価格をチューニングした大がかりな事例ですが、もう少し小さな範囲の実験結果があります。以前メルカリで行ったクーポンの効果に関する実験では、10円クーポンに投資するたびに、利益が80円ほど上がるという結果が出ました。あるクーポンを10円分発行した場合、低く見積もって80円程度利益が増え、高く見積もった場合130円程度増えるという結果でした。

メルカリは、個人間の売買のプラットフォームです。商品が売れたとき販売額の10%が手数料としてメルカリの収入になります。そこでメルカリが10円分のクーポンを発行すると、うまくいけばプラットフォームの利益が80円になって返ってくるということです。これは特定のブランドや商品にひも付かないクーポンですが、ブランドとひも付いたクーポンで実施すると、もっと効果が出る場合もあります。

クーポンには、お祭りのような意味合いもあるのだとおもいます。ですから「◎◎のクーポンが手に入ったから、あのお店に行ってみよう」というように、クーポンがきっかけで行動したり、人間関係が生まれるというような、金銭的な価値から少し離れた側面までクーポンに組み込んでいくことが重要だとおもいます。

ポイントの持つ「継続的な関係性構築」という意味合い

白木 クーポンには販促的な効果もありますが、同時に広告的な要素もありますね。広告として企業や商品を認知してもらう効果と、値引きによって集客をするという、2つの効果を期待した施策といえます。

一方、クーポンを発行することで、需要が一時的に増え、在庫のコントロールが難しくなるということを懸念される小売業さまもいらっしゃるのですが、これはデータに基づいた分析を行い、在庫を含めて総合的に管理することで改善できます。価格をどう設定し、どれぐらいのリターンのクーポンを発行すると、どれぐらい需要が増加するのかを予測し、あらかじめ在庫を確保する。これらを自動化して推進していくのが今後の方向性なのではないでしょうか。

成田 在庫管理も、クーポンとポイントの出し分けも、「人がどういう商品を欲しいとおもっていて、価格がどれぐらいになるとその欲しさがどれぐらい変わるのか」ということがもともとの根幹にあります。その根幹に基づいて、ポイント、クーポン、そして在庫を統合管理できる体制がつくれたら理想的です。

白木 付け加えると、価格だけではなくて、広告活動も含めて検討をしていく必要があるとおもいます。紙でもネットでも、広告が露出することにより商品の需要は変化します。メディアでの露出も含めて管理しつつ、価格もその一部として検討していくというのが、あるべき小売の販促施策の姿なのではないでしょうか。

藤田 いまはおそらく必要としていない人に割引を提供するということも少なからず起きているはずです。定価で買ってくださる人にわざわざ割引して販売する必要はありませんし、逆に大きな割引率を提示しても買ってほしい人がいるかもしれません。今後はそのような出し分けもしていく必要があります。

ポイントとクーポンの違いでいうと、クーポンには広告的な意味合いがあり、爆発的な効果を示す場合がある一方、継続的な関係性をつくるためにはポイントの方が向いているのではないかともおもいます。これからのDgSを考えていくうえで、今後どのようなチェーンを目指すかによって、ポイントとクーポンの使い分けは重要な要素になっていくでしょう。

地域に根差した店づくりを標榜するDgSであれば、「ポイントがたまるからこの店で買物をしよう」というような、お客さまとの継続的な関係づくりも狙っているはずです。難しい取組みですが、「愛着の設計」というようなものは重要になるのではないでしょうか。

成田 クーポンはカンフル剤のようなもので、ドカンと打ってその場で結果が出るイメージです。一方ポイントは短期的な効果は小さくても、長い目で見たときに、顧客と会社の関係づくりに役立つ、コミュニティづくりに役立つ、いわば「サプリをのむ」とか「整体に行く」というような意味合いもあるとおもいます。

データで分析してはいけない分野もある

成田 こういった施策を検討する際には、長い目でKPIを測ることがとても大切です。短期的な収益への貢献と、顧客の継続来店を促す施策は、相反することが少なくありません。

そういう意味で、いまのデータに基づくマーケティングにありがちなわなは「短期的な指標にとらわれすぎること」ではないかとおもいます。同時に長い目で見たときの指標も取り続けて、効果を測っていくことが重要です。

データに基づいて判断するということは、データで測れるものしか考慮に入れられないということです。20年、30年という長期で見たときの企業のブランド価値は、データで測ることはできません。そこには注意が必要です。

藤田 たしかにそうですね。短期的な結果におもねてしまうことで目的を見失ってしまうことには配慮しなければなりません。一見するとすごく非効率で無駄があるようにおもえるけれども、実は価値がある、ということはありそうですね。

成田 たとえばDgSであれば一昔前ではオーガニックや無添加系のカテゴリー、最近であれば男性向け化粧品のように、新しいカテゴリーをつくったり、生活習慣を変えること自体を目指しているような取組みでは、短期の指標にとらわれすぎるのはよくないのだろうなとおもいます。

藤田 小売業さんは、いま世の中にないものを、売場で紹介して、生活のなかの定番商品をどんどんつくる、というようなことに何十年も取り組まれています。これからは新しいものを紹介するだけではなく、生活の質を上げる体験の提供に取り組んでいくのではないか、というようなことをいまお話ししていておもいました。そのためにデータを使ったり、経済学を活用するのかもしれません。

プロジェクトの成否を決めるのは「課題の切り取り方」

藤田 自社の事業に経済学やデータサイエンスを取り入れる場合、どのようなことに苦労される企業が多いのでしょうか。

成田 一番わかりやすい難しさとしては、データを活用したいとお考えになられても、そもそもデータが存在していない企業さんが少なからずあります。データはあっても、紙やエクセルでしかないとか…。ただ、こういった困難は、時間がたてば徐々に乗り越られるものだろうともおもっています。そういう課題を乗り越えたうえで難しいとおもうのは、「課題をどう切り取るか」です。

そもそも事業会社の方は、何が課題で、何ができて、何ができないのかがわからない状態で、プロジェクトに着手せざるを得ません。ですから過剰な期待をお持ちになられていることも多い。打ち得る施策のなかで、何を変えたくて、それを変えるためのどのような道具が手元にあるのかを理解されているかどうかが重要なのではないかとおもいます。

白木 そうですね。データ分析は、そこで得られた結果が、何かの意思決定につながらないと意味がありません。「何をしたいのか」「何を変えられるのか」「その結果がどうだったら、何をどのように変えられるのか」を、事前に決めておかなければなりません。

成田 そのプロジェクトの目的とKPIにあたる指標は何なのか。それをどう変えたいのか。それを変えるために、どの指標をいじることができるのか、これが、最初の段階でかなりはっきりしていることが、プロジェクトの成否を分かちます。

藤田 プロジェクトの対象範囲が大きすぎると、利害関係者が多くなり、進みが遅くなって、ゴールにたどり着けなくなる…ということは往々にしてあります。最終的には全体最適を目指しつつ、最初は小さな範囲に集中して、成功事例をつくっていくというような進め方の方が、結果として早く、大きな成果にたどり着けるような気がします。

成田 先ほど出てきた、「価格」「ポイント」「クーポン」関連であれば、まずは「特定のこのクーポンをどうするか」だとか「このポイントキャンペーンを今後どうするか」というレベルのプロジェクトからスタートするのが現実的です。

「経験の束」に適切な価格の付く未来

藤田 小売業のアプリ活用についてはどうでしょうか。われわれは小売業さんのDXを推進するうえで、重要となるのはすべての買物体験をひとつのアプリに集約する、いわば「アプリファースト」であるという話をさせていただいています。

そして、この先データを活用していくためには、会員情報や購買履歴など、すべてのデータをアプリ経由で蓄積し、より適切なポイントバックやクーポン発行などのオファーを提供していけるようになっていかなければなりません。

小売業さんも、この1〜2年でアプリに対する考え方が大きく変わりつつあるように感じています。これまでのアプリはポイントカードの代替品で、使い勝手に関する評価も気にしないという企業さんが多かったのですが、最近は「アプリを店の顔にしたから、もっと使いやすく、見栄えよくしたい」というご相談を受けることも増えています。

白木 これまでお客さま個人に対する値引きなどの案内は、登録されているメールに個別に送るというような企業さんも多かったのですが、メールだとどうしても限定された商品だけを対象にせざるを得ません。そうではなくて、個別の割引の案内についても、顧客体験の質が高いアプリで見てもらうということが非常に重要になってくるとおもいます。

IKEAは、経済学者だけではなく、行動経済学者も雇用していて、アプリのデザインをどうすれば、購買行動がよりスムーズになるかという観点から研究を行っているようです。

 

成田 IKEAのアプリはすごいですね。自分の部屋を写真で撮影してアップロードすると、アプリ内に自分の部屋ができて、アプリ上で部屋にIKEAの家具を配置するようなことができます。さらに部屋の写真をアップするとそれに対しておすすめのコレクションを紹介してくれて、合わせていくらですという価格まで表示される。(編集部注:国内のアプリは2021年11月現在未対応)

ただ商品そのものと価格が表示されるだけではなくて、コーディネートされた商品や、それに基づく経験全体が僕たちに紹介される。その「経験の束」のようなものに最適な価格が付けられていく世界が、いろいろな産業で登場するような気がしています。

藤田 DgSのアプリも、お客さまの購買履歴や薬歴などを参考にしながら、「こういうお悩みがあるのならこのサプリがおすすめです」「こういう食べ物がいいですよ」という提案をしてくれる未来はそう遠くないようにおもいます。

成田 そうですね。DgSであれば、自分の健康状態に関する情報や、お医者さまから受けたアドバイスのような情報と、店舗からの商品提案が組み合わさっていくような将来がありそうです。

僕たちの生活についての情報がスマートウォッチをはじめとする電子機器経由で蓄積されつつあります。体重、血圧、体温…あるいは何を食べたか、睡眠状態はどうだったか…などの情報に基づいて、薬やサプリなどを提案し、未病・予防に貢献できるタイプのDgS起点の商品提案も増えていくでしょうね。

藤田 そんな世界が本当に来るといいですね。本日はありがとうございました。

 

〈取材協力〉

経済学者
成田 悠輔氏
サイバーエージェント
Al事業本部DX本部統括 経営戦略部長
藤田 和司氏
サイバーエージェント
データサイエンティスト
白木 紀行氏

新生堂薬局、カウンセリングツール「健康台帳」活用で、新業態目指す

新生堂薬局は福岡市に本社を置きドラッグストア(DgS)を53店舗、調剤薬局を87店舗展開している。1978年の創業以来、調剤事業とHBC(ヘルス&ビューティケア)のカウンセリング販売を重視している。2019年に社長に就任した水田怜氏は、「ヘルスケアステーション」構想を打ち立てその実現を目指す。この構想実現の有力な手段となるカウンセリングツールが「健康台帳」だ。(聞き手:月刊マーチャンダイジング編集長 野間口 司郎/月刊マーチャンダイジング2022年1月号より抜粋)

DgSが地域の健康支援のために果たすべき「4つの重点項目」

—水田社長が提唱する「ヘルスケアステーション」について教えてください。

水田 調剤薬局には病気治療中の方がいらっしゃいますが、DgSに来店するお客さまは基本的には病気にかかっておられない健康な方です。

しかし、その健康というのは自己判断であり、本当になんの疾患もないのかは、医療機関で診察しなければわかりません。頭痛がする、腹痛がするのでOTC医薬品を服用している方が医療機関にかかったら病気にかかっていたということもあり得ます。

病院の先生方は患者さまの非日常=病気の状態と向き合うことが仕事です。DgSは生活者の日常生活と向き合い、いかに非日常的な状態をつくらないか、それが仕事です。私はDgSの地域包括ケアシステムにおける役割は次の4つだと考えています。

(1)早期発見、(2)早期治療開始、(3)治療継続、(4)重症化予防です。

病院や調剤薬局に行く回数は限られますが、DgSは週1回、3日に1回、多い方は毎日お見えになるほど接触回数が多く、これを生かせば早期発見につなげることができます。病気を発見するのは医師の役割ですが、日常の接客のなかで異変や病気の予兆をいち早く察知して病院へ行くことを勧める「受診勧奨」はDgSの重要な役割のひとつです。そして早期発見できれば早期治療開始も実現します。

治療継続に関して、たとえば、健康診断で高血圧と判定されて受診して降圧剤を処方されたけど2週間で服薬をやめてしまう。やめてもとくに生活に支障はないし肥満でもないし、忙しくて再来院して薬を処方してもらう時間がない、といった理由で治療を離脱する人は多いのです。

高血圧では50%の患者さまが治療離脱するというデータもあります。高血圧を放置して、ある日脳梗塞で倒れるということもあるのです。DgS併設の調剤薬局が持っている薬歴や医療用医薬品の服薬情報をDgSと共有すれば、適切なカウンセリングを行うことで治療離脱は防げるのです。

早期発見→早期治療開始→治療継続をサポートすることで、結果として重症化が防げます。

[図表1]「ヘルスケアステーション」と「健康台帳」の関係
重症化は本人のQOL(生活の質)が損なわれるだけでなく、医療費の増大にもつながります。4つの役割に関して相談を受け、支援できる場所がヘルスケアステーションだと位置付けています。この機能を確立することで、地域のなかで、医療機関や介護施設などのハブ(中継点)になり、地域包括ケアシステムを進める。生活者、患者さんの健康を支援しながら医療費抑制にも貢献する、こういう構想を打ち立てています。調剤薬局併設のDgSで医療機関として機能する業態を「ヘルスケアステーション」と位置付け、この言葉は商標登録も申請中で、新生堂薬局の次世代の形となります。

カウンセリング履歴をデータ化一人のお客をチームでサポート

—経営方針発表会でヘルスケアのカウンセリングツールを開発したというお話をされました。

水田 2020年3月、新生堂薬局のデータマネジメントを担当する子会社「Newromics」を立ち上げ、Newromicsと外部のマーケティングコンサルティング企業MMIさまと共同でヘルスケアカウンセリングのプラットフォーム「健康台帳」を開発しました。現在、2022年3月の全店導入を目指して3店舗で実際に使ってみて、改良を加える実証実験を行っています。

健康台帳はヘルスケアに関するお客さまの購買履歴、カウンセリング履歴、販売員の応対履歴が記録できる「顧客台帳」とOTC医薬品、健康食品、その他ヘルスケア商材の詳細な商品情報が検索できる「商品台帳」の機能を併せ持ったツールです(健康台帳の機能説明は下記【「健康台帳」の基本機能紹介】参照)。

お客さまの相談を受けるにあたって、理想は昔のような一対一の接客ですが、企業規模が大きくなると、一店舗のお客さまも従業員も増えていますし、営業時間も長くなっています。

また従業員の異動もあり、一人のお客さまを一人の従業員が永続的に担当するのは難しく、複数人で切れ目なく担当する態勢が不可欠です。健康台帳では会員カード情報と連携して、お客さまの年齢、性別などの基本的な情報、都度都度のカウンセリング内容、どの商品をお勧めしたを記録することができ、前回接客したかを従業員が不在でもほかの従業員が台帳を見ながら、継続的に整合性をもって接客、健康サポートができるのです。

アレルギーや既往症といった基本的なことを相談を受けるたびに聞くこともありません。データはクラウドに保存されるので従業員がお客さまの情報を共有しており、他店で相談しても安心です。

私の母方の祖母は自分の娘が新生堂薬局に嫁いでいるのに化粧品を別のお店でずっと買い続けていました。私がその化粧品なら新生堂薬局にも売っているといっても、「あの人が全部知ってるから」という理由で店を替えることはありませんでした。健康台帳を使えばこれと同じような信頼関係を店や新生堂薬局全体で築くことができます。「あの人」から、「あの店」が全部知っているからという関係をつくれるとおもいます。

—お客さまは人につくといわれますが、それがチームでお客さまを受け渡ししながら見ていくという態勢になることに不安はないでしょうか。

水田 化粧品で健康台帳と同じように顧客台帳と商品台帳が一体化したカウンセリングシステムを使っていますが、まったく問題なくチームによってお客さまとの信頼関係を築けています。実証実験の段階でも健康台帳ではチーム態勢がうまくいっており、そこは自信を持っています。

それと同時に、若いスタッフを含む複数のスタッフがお客さまの健康を支援することが大きな効果を生むとおもっています。

私の知人で糖尿病を克服した人がいますが、その陰には栄養士の徹底した支援があったそうです。食事メニューや運動を提案して、一緒に頑張りましょう!と応援してもらったので血糖値を下げることができたそうです。

これと同じように何か健康の悩みがあった場合、健康台帳を中心に複数のスタッフが課題やゴールを共有しながら「一緒に頑張りましょう!」という態勢をつくっていける、ここにチームプレーならではの効果も生まれるとおもいます。こうした効果も健康台帳の強みのひとつです。

販売履歴、カウンセリング履歴、販売員応対履歴に沿って商品紹介

—商品台帳の機能の特徴はなんでしょう。

水田 現状は、商品がたくさんありすぎてどれを選べばいいかわからない状況です。同じ効能効果でもブランドが複数あり、違いを説明するのが難しい。PBとNBで何が違うかもわかりにくい。こうしたなか、お客さまの健康状態や日々の生活をカウンセリングを通して記録してデータ化する、そのデータに合わせて商品を案内できるのが健康台帳です。

健康台帳にはOTCだけでなくサプリの情報も入っています。OTCと飲み合わせが禁じられているサプリも結構あるので、顧客台帳に何を服用しているかという情報があればリスクを避けられます。

将来的には医療用医薬品との情報連携も必要でしょう。病院で処方される医療用医薬品との併用が禁じられているOTCもあるので、健康台帳に医療用医薬品のデータを入れれば安全性が高まります。

—カウンセリングを通して日々の生活が見えてくれば、案内できる商品にも幅が出てきますね。

水田 そのとおりです。たとえばお客さまから「膝が痛い」という相談を受けると、通常、鎮痛剤や外用鎮痛消炎剤をご案内するのですが、接客のなかで知った「登山が趣味」というお客さま情報がデータ化されていれば、それを見たスタッフは鎮痛剤や外用鎮痛消炎剤のご案内に加えて、痛みが取れたらサポーターをして登山に挑戦しましょうとか、プロテインを飲んで膝まわりの筋肉をつけましょうとか、提案が広がるのです。

WHO(世界保健機関)は「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」といっています。いい換えれば、健康とはマイナスがゼロになるだけでなく、ゼロからプラスにすることだと定義づけていて、新生堂薬局でも同じスタンスです。ですから、登山が趣味で膝が痛いお客さまにとって痛みを取ることだけではなく、プラスお友達と一緒に登山に行けることが精神的、社会的にも良好な「真の健康」なのです。

健康台帳では、カウンセリング内容、お客さま情報をデータ化することで、真の健康を実現させる商品をご提案できます。そういうサポートをするためには、お客さまにどういうバックグランドやビジョンがあるかを聞いて健康台帳に記録しデータ化することが大事なのです。こうしたデータは地域包括ケアシステムのなかで医療機関と連携するとき、本人承諾のうえでドクターに渡すと非常に有効な情報になり、生活者と幅広く接するDgS独自のポジションもつくれます。

「潜在患者」の発見から重症化予防まで

—医療連携に関して健康台帳はどのような役割を発揮するでしょう。

水田 理想は診療や処方内容などの患者情報と健康台帳の情報が連携して、個人に関する疾病、健康状態のデータを一元的に管理することですが、患者情報の共有のハードルは非常に高いとおもいます。これはもちろん目指しますが、お客さま各自が健康台帳の情報を新生堂のスマホアプリの中に入れて、新生堂薬局で受診勧奨を受け医療機関に行った際、これを提示して診察の参考にしてもらう。こうした仕組みは現実的ですし、計画していることです。食事や飲酒、睡眠や趣味、どのようなOTC、サプリを飲んでいるか、こうした生活・健康情報はドクターの診察には参考になります。病院でこうした幅広い情報を聞き出すのは時間的にも難しいことでしょう。ドクターに直接いいにくいこともありますし。

医療機関で健康台帳を診察の参考にしてもらい、処方せんが出れば新生堂薬局でそれを受ける。こうした循環で総合的にお客さま、患者さまの健康をサポートできます。

いま新規患者さまには必ず服薬後フォローをしているので、もし何らかの理由で服薬をやめてしまったということがわかれば、その情報を健康台帳に入れればDgSで接客するときに、カウンセリングして治療再開につなげることもできます。

—健康台帳を使って、購買履歴、カウンセリング履歴といったデータを参考にすれば、受診勧奨のレベルが大変高くなりますね。

水田 いまでも接客のなかで受診勧奨していますが、多くの場合これは自分たちの手に負えないというときです。また、そういう時期はお客さま自身もそろそろ病院に行かないとまずいだろうとおもっているタイミングでもあります。

健康台帳で女性のお客さまが生理期間中に限らずいつも同じ鎮痛剤を毎日のように服薬しているということがわかった場合、婦人病の可能性が非常に高いわけです。私たちは受診していないが病気にかかっているかもしれない人のことを「潜在患者」と呼んでいますが、健康台帳は潜在患者を見つけるのに優れた機能があります。健康台帳で潜在患者を見つけて受診勧奨して、その後の早期発見・早期治療開始・治療継続・重症化予防につなげる。ここに医療との重要な連携があります。

「潜在患者」向けにオンライン健康相談で啓発活動

水田 婦人病に加えて、胃薬、便秘薬、咳止めを継続的、大量に服用している方は、胃薬→胃がんなど胃の疾患、便秘薬→大腸がんなど腸の疾患、咳止め→呼吸器疾患などの潜在患者の可能性があります。

こうした潜在患者の数が多いとおもわれる領域に関して、専門医を講師に招いてオンラインの健康相談会をする予定です。健康台帳にデータがたまってくれば、どの領域に潜在患者が存在するかを分析することもできるので地域の健康維持増進に貢献することができるでしょう。

婦人病では既に潜在患者が多いことはわかっているので、専門の医療機関と連携を進めています。

—その先には健康台帳を使ってオンライン診療も計画されていますか。

水田 店舗でも受診勧奨するのですが、一番いいのは店舗の端末でオンライン健康相談を実施し、相談結果に基づき医師から具体的に病院を勧められることです。

一般の生活者の方は受診勧奨を受けてもどの病院に行けば適切な診察を受けられるのかわからないことが多いでしょう。

病院とのオンライン健康相談の連携で潜在患者の発見、適切な医療機関のご紹介が可能になります。受診時には健康台帳の生活・健康情報を役立ててもらう。

処方せんは新生堂薬局が受けて、総合的に一人の患者さまの健康を管理する。

[図表2]「ヘルスケアステーション」構想
これが健康台帳を使ったヘルスケアステーションの具体的な事業構想ですが、このサービスが普及した地域にお住まいの方は健康的なくらしが維持できると考えています。

健康台帳はヘルスケアステーションづくりの中心的なサービスですが、同時に事業として独立させ、他企業への有償での提供も考えています。このカウンセリングプラットフォームが普及すれば、健康寿命の延伸、医療費抑制といった社会的な課題解決にも貢献できると信じています。

—本日はありがとうございました。

〈取材協力〉

新生堂薬局代表取締役社長
兼CEO 兼COO 兼CHO
水田 怜氏

「健康台帳」の基本機能紹介

ここでは、新生堂薬局が新業態づくりの中核的なツールとしてMMIと共同開発した「健康台帳」の基本機能を紹介する。ポイントは基本的な健康状態、購買履歴、カウンセリング履歴など健康に関するさまざまな個人の属性をデータ化し、それに基づいた商品検索ができる点にある。

《ログイン画面》
《メインメニュー》
《最新情報》
《 健康情報 》
《応対履歴》
《紹介商品履歴》
《健康相談・商品検索トップ画面》
《薬の種類で検索》
《部位と症状で検索》
《悩みや目的で検索》

地域の健康支援拠点になるためのカウンセリングツール

株式会社マーケティングメソドロジーアンドイノベーション(MMI)
薬剤師 CMO ヘルスケアマーケティング事業部長
中村 恵子氏

DgSには薬剤師や登録販売者、管理栄養士などの専門家がいますが、多くの店舗の現状を見ると、次々と新商品が発売されるなか、ヘルスケア売場で専門家が常に正確な商品情報に基づいてカウンセリングするのは難しそうだなと感じていました。

また、専門家であっても記憶には限界があるので、お客さま一人ひとりの健康情報を把握したうえでの正しいカウンセリングのお手伝いをしたいともおもっていました。

こうしたおもいから「健康台帳」では、「正確な商品情報と顧客情報に基づく『正しいカウンセリング』の実現」を目指しました。「健康台帳」を利用することで、どの店舗のどのスタッフでもお客さまの健康相談に対する正しいカウンセリングができ、お客さまに寄り添った健康相談、お客さま情報に基づく適切な商品を提案できるようにします。経験の浅い新人スタッフでも健康相談ができるように設計しています。

「健康台帳」を活用して、DgSや併設する調剤薬局が「健康サポート薬局」「かかりつけ薬局」として、受診勧奨などの機能を強化し医療連携することで地域医療における地位を確立します。

具体的には、OTC医薬品は気軽に購入できる分、セルフで購入し続けて、病気に気付かず対処療法的に長期にわたり服用するケースもあります。こうしたお客さまを健康台帳では「潜在患者」と位置付け、データを基に受診勧奨することも重視しています。これにより、重症化を防ぎ地域の生活者の健康を守ることができるのです。DgSが地域で重要な健康サポート拠点になるために「健康台帳」をご活用していただきたいとおもっています。

現場を知り、デジタルに精通した新生堂薬局の2人のキーマンにインタビュー

AIマーケティング室 室長兼DX推進室マネジャー 畑島 大志氏
人財戦略部 係長 永田 光司郎氏

人と商品をつなげるいままでになかったツール

永田氏は新生堂薬局DgS部門の教育担当の責任者、集合研修を行うほか研修用の動画を多数手掛けている。医薬品登録販売者の資格を持ち、OTC医薬品はもちろんのこと医療用医薬品や疾病に関する幅広い知識を持っている。健康台帳の開発にも加わっており、永田氏によれば「カウンセリングの流れや考え方は自分の頭の中をそのまま移した」とのことである。

「商品検索のツールはたくさんあって、多くのDgSに導入されていますが、活用されずに店の片隅に眠っていることが多いです。その理由はただ単に商品情報が出てくるだけで、その程度なら知っているし、ネットで検索すればわかることなので利用価値を見いだせないからです。健康台帳はお客さまの情報に基づいた商品が検索できるので、商品と人をつなげることができます。いままでになかったカウンセリングツールに仕上がっています」(永田氏)

将来的には新生堂アプリの中に健康台帳情報を入れたい

畑島氏は長年店長として勤務する傍ら個人でプログラムを書き、データ分析、AIの業務活用について研究を行っていた。これが水田社長の目に留まり、現職に任命された。現場、分析者、エンジニアの立場から開発に携わっている。

「カウンセリング内容、お客さまデータがたまっていくことには大きな意味があります。将来的には新生堂薬局アプリの中に健康台帳を入れる計画で、これが実現すれば、お客さまがスマホで自分のデータを見ることができる。さらに健康台帳を通じてお客さまに何かを伝えるといったコミュニケーション機能を付ければ、デジタルによる健康管理機能が上がります。

その先には、ハードルは高いのですが、医療機関の情報とつなげることが理想です。

ヘルスケアステーションはデジタルの力なくして実現し得ないので、地域の拠点間で可能な限りデータ共有することがカギになります。

健康台帳は他社に使ってもらうことも考えてデザインしていて、この技術を採用した会社がある地域の方が健康になれることはよいことだと考えています。また、私は技術革新によって人が幸せになれることは大変美しいことだとおもっていて、そのためには自社のノウハウをオープンにして切磋琢磨することも必要だと考えています」

カウンセリング内容の記録でお客さまとの関係が多角化

新生堂薬局 昇町店
平山成世店長

健康台帳の実証実験店のひとつである昇町店では、店長ほか約10人の登録販売者がこれを使っている。平山店長に、実際に使ってみた感想やこれをどのように生かしたいのかを聞いた。

「スタッフの間では、カウンセリング内容を記録できるのがいいという声が多く挙がっています。これまでカウンセリングはその場限りで終わっていましたが、談笑のなかに次につながる大切な話題が潜んでいることもあります。

健康台帳ではそれを残すことができ、スタッフ全員でそれを追うことができるのでお客さまとの関係が多角的になりました。

ご家族のデータもあるので、経験の浅い人でも話題の切り口を見つけることができます。先日湿布の案内をしたとき、はがれにくい湿布が欲しいといわれ、ご希望に合った商品を販売しました。これを記録したので、次回このお客さまを接客するときはこのデータが生きるとおもいます」

通常、健康台帳は売場で立って使うが、カウンセリングスペースで使うこともある

新生堂の事例も紹介!オンラインセミナーを開催します。

NFI定例セミナー「カテゴリー&定番強化の教科書」(2022/3/16 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)

3月の定例セミナーのテーマは、「カテゴリー&定番強化の教科書」です。コロナによってリアル店舗は「ショートタイムショッピング」と「ワンストップショッピング」の両立が不可欠になります。従って、これからは「プロモーション」よりも、短時間で商品をたくさん購入できるような「定番売場の強化」と「定番売場管理」が重要になります。今回は定番強化の設計図である「商品構成」と「商品分類」の原理原則を解説します。

2022年3月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。

「単品商談」から「カテゴリー商談」への転換も重要ですので、カテゴリー強化のための製配販の協働戦略についても解説します。
また、同質競争から「差別化の時代」へ突入しており、差別化の武器である「PB開発&専売品強化」の最新事例を紹介し、店頭でPBや専売品を育成する「売り方」の事例も紹介します。

※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。

開催概要

・開催日:2022年3月16日(水)13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※受付時間より前にお越しいただいた場合、お時間までお待ちいただく可能性がございます
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい
※セミナー開催中の途中入場はお断りします

開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・会場:エッサム神田ホール1号館9階
秋葉原ではございません。案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとzoomによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2022年3月7日(月)

スケジュール

[第1講座]カテゴリー強化の設計図(1)—商品構成グラフ
[13時~14時頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

■ 商品構成グラフ(棚割の状態)の原理原則
■ 商品構成グラフ比較
■ 単品商談からカテゴリー商談へ  他

[第2講座] カテゴリー強化の設計図(2)-商品分類
[14時10分頃~15時10分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

■ ショートタイムとワンストップを両立させる「商品分類」と「売場レイアウト」
■ 「商品軸」から「顧客軸」のアソートメントの原則  他

[第3講座] 差別化の武器「PB開発&専売品強化」の最前線
[15時20分頃~16時10分頃]

月刊MD編集長 野間口 司郎

■ 主要小売業のPB開発、専売品開発の最前線
■ 店頭での売り方開発、需要創造の原則  他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

会場案内図

会場詳細

〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館9階(901)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1

【アクセス】
・JRでお越しの方 神田駅東口より徒歩1分
・東京メトロ銀座線でお越しの方 神田駅3番出口より徒歩0分

注意事項

・参加時に入力する名前は他の参加者には表示されません。
今後のご案内重複防止の為、フルネームでのご入力をお願いします。
・通信状況などで接続が切れた場合でも、同じURLから再入室することができます。
・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。
・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。
(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)
・seminar@gekkan-md.comからのメールを受信できるようにご調整お願いします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

4/20「DXキーマンが語るドラッグストア未来予想図」セミナー開催

次の5年間は、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって企業を変革することが、リアル小売業の最大の経営課題です。今回のセミナーは、ドラッグストア企業のDXのキーマンに登壇いただき、各社が考える「DXの現在地と未来予想図」を講演していただくセミナーです。このセミナーは、ドラッグストア及びリアル小売企業のDXの正しい発展に貢献することが目的です。ぜひ多くの皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

・開催日:2022年4月20日(水)10:20~16:50(会場受付開始:9:30)
※セミナー開始の5分前にはリアルもリモートもご着席&入室をお願いします。
※開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・会場:サイバーエージェント渋谷本社ホール(定員150名)
・実施方法:会場ならびにzoomによるリモートセミナー
(zoomセミナーアクセス方法はお申込み者様にご案内いたします)
・料金:10,000円(税別・1名様)
・申し込み締め切り:2022年4月11日(月)
・主催:株式会社ニュー・フォーマット研究所 月刊マーチャンダイジング
・後援:株式会社サイバーエージェント

【特報!】
ご来場の方には、月刊マーチャンダイジングで好評連載中の「リアル小売業DXの強化書」の小冊子を配布させていただくことになりました!余裕のある座席配置で、感染対策万全の会場での受講を是非ご検討ください。

スケジュール

[10時20分~10時30分]開会の挨拶と趣旨説明

NFI代表取締役 日野 眞克

[10時30分~11時30分頃]マツキヨココカラ&カンパニーのDX戦略(仮)

松田 崇氏
株式会社マツキヨココカラ&カンパニー執行役員グループ営業企画統括営業戦略室営業戦略専任部長

[11時30分~12時20分頃]昼食

※混雑時を避けた時間設定です

[12時25分頃~13時25分頃]スギHDのDX戦略(仮)※

森永 和也氏
株式会社スギ薬局 取締役DX戦略本部本部長

[13時35分~14時35分頃]ツルハHDのDX未来予想図(仮)※

小橋 義浩氏
株式会社ツルハホールディングス執行役員 経営戦略本部長兼情報システム本部長兼事業推進部長

[14時45分頃~15時45分頃]ローカルドラッグストアが挑む地域一番のヘルスケアステーション

水田 怜氏
株式会社新生堂薬局 代表取締役社長兼CEO兼COO兼CHO

[15時55分頃~16時40分頃] DXを推進するための組織開発、パートナー戦略(仮)

藤田 和司氏
株式会社サイバーエージェント AI事業本部 DX本部統括

[16時40分頃~16時50分頃] 終了のご挨拶

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

※印の講演につきまして、事前の告知と一部登壇順が変更になりました。ご了承ください。

会場案内図

渋谷駅から渋谷スクランブルスクエアまで

渋谷スクランブルスクエア17階 オフィスエントランス

◆渋谷スクランブルスクエア17階にて、受付担当がセキュリティカードをお渡しいたします。その後、セキュリティゲートを通過し、エレベーターにて21階セミナールームへお越しください。

お車でお越しの場合

注意事項

・参加時に入力する名前は他の参加者には表示されません。今後のご案内重複防止の為、フルネームでのご入力をお願いします。
・通信状況などで接続が切れた場合でも、同じURLから再入室することができます。
・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。
・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)
・seminar@gekkan-md.com、no-reply@zoom.usからのメールを受信できるようにご調整お願いします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

申込受付は終了いたしました。ありがとうございます。
申し込みフォーム