物流設計の精度を高めるには「買い手に対する解像度を高める」こと

工具や部品の通販会社であるモノタロウの物流センター立ち上げを指揮し、現在株式会社CAPES代表として物流のコンサルティングを行う西尾浩紀さん。EC専業企業から実店舗を運営するチェーンストアまで幅広く物流の経験を積んできた西尾さんに、昨今の物流の動向と、これからの小売業の物流について聞いた。 (聞き手:MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年9月号より抜粋)

海外では店舗を物流拠点に位置付ける事例も

──物流と聞くと、漠然としていて捉えづらい印象もあります。最近は有店舗、無店舗が入り乱れているというのも理解を難しくしているようです。私たちは物流という観点からはどのように分類して理解すればよいのでしょうか。

西尾 いわゆる「物流」というと、一般的には最終消費者の手に届く「ラストワンマイル」とおもわれがちですが、実はその工程はチェーンのように長く、階層も深いものです。

物流を分類するときに、明らかに作業の質が違うのは、「最終消費者に届けるための機能を有する物流」か「物流センターや店舗に分配する物流」かというところです。ですから、実店舗を運営している企業の物流なのか、無店舗・通販なのか、あるいはそのハイブリッドなのか…というのが物流の種類を分類するカギになりますね。

昨今の小売業の物流トレンドとしては、実店舗を物流拠点としてどう位置付けるかが話題になっています。アメリカや中国は一歩進んでいて、店舗を在庫保管拠点として位置付け、そこから最終消費者まで商品を運ぶというような取組みも進んでいます。(※編集部注:マイクロ・フルフィルメント・センター、MFCと呼ばれる)

日本でもそのようなことに挑戦している企業もありますが、取り扱っているのがコモディティ中心で、単価が低いため、利益の大半を配送費で食いつぶしてしまうという問題があり、ビジネスとして成立させるのは非常に難しい状態です。

わかりやすくいえば、コンビニで1本100円のジュースやおにぎりをお客さまのご自宅までお届けするのに、どれぐらいの費用がかかるのか…という話で、構造的にはどう考えても赤字になってしまいます。

一方で、「〇円以上送料無料」というように、送料無料となる購入金額を設定する方法もあるんですが、「そもそもコンビニで5,000円も買うか?」という問題になってきてしまいます。

ネットスーパーのようなモデルは世界を見渡してもまだ成立しづらい状況です。とはいえ、自宅に配送を行って、成立しているモデルもあります。たとえば都心で配達を中心に規模を拡大しているカクヤスさんのように、商品単価が高いアイテムを取り扱っていて、都心で高密度に配送すればよいというモデルです。

──昨今ではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)に取り組もうとする企業も増えてきました。

西尾 弊社では小売業の物流センター設計の支援をさせていただいているのですが、物流を設計をするのに、ネットやアプリから注文された商品をどうやってお客さまに店頭でお渡しするのかということまで加味して設計をしています。ですから、必ずしもお客様のところまで届けに行くことがすべてではないということです。

人の介在とリードタイムをゼロにする潮流

──世界的に、物流の潮流というのはどういう方向に進んでいるのでしょうか。

西尾 確実に挙げられる世界的な動向は2つあります。

ひとつは商品配達までのリードタイムをゼロにしていくという流れ、もうひとつは人間の介在をゼロにしていくという流れです。

まず配達までのリードタイムをゼロにするという点です。ECでは、ここしばらく「注文翌日配送」や「受注1時間後に配送」など、注文から配送までのリードタイムをゼロに近づけるための努力が進んでいました。しかしその動きはいったん緩和されているようにもおもいます。

もちろん、お客さまに買った瞬間に手元に届けてほしいというニーズはあるものの、そこに労働力が追いつかず、コストも合わないという状況です。さらにこの数年で、「そこまではしなくてもよい」と消費者のマインドがやや変わったように感じています。とはいえ、購入してから到着まで5日、10日かかるのはちょっと長すぎるので、各社適切なリードタイムを模索している状況といえます。

もう一点が自動化の流れです。世界各国で自動化の流れは出てきていますが、全自動がいいのか、人の作業を一部残した方がいいのかという「自動化の程度」についてはまだ答えが見つかっていません。

これは私の推測ですが、Amazonは明らかに人間の介在を物流工程に残しています。物流の設計から人のよさと機械のよさをうまく使い分けようとしているのが感じ取れて、彼らは全自動となることをよしとしていないように感じます。

一方、中国の企業は「全自動の物流センターを立ち上げました!」と華々しくアピールすることも少なくありません。中国EC大手企業「京東集団(JD.com)」は、2017年に全自動倉庫の設立をリリースしました。全自動の未来が来たと、関係する企業は色めき立ったのですが、それ以降とんとそのニュースを聞かなくなりました。ある種宣伝的な位置付けで設計した物流だったのではないかとおもっています。

日本の物流自動化を妨げる「こまやかな対応」

西尾 日本の自動化はきわめて遅れている状況です。これには日本特有の「こまやかな対応」が関係しています。アメリカや中国の物流機器メーカー、物流システムメーカーは「俺たちの提供するサービス・プロダクトはこうだ。使いたいのであれば、御社の業務を仕組みに合わせるべきだ」というスタンスを崩しません。

日本は逆で、物流機器メーカー・システムメーカーは「御社では一体どのように業務を進めていらっしゃるのですか? それに全部きめ細かに対応させていただきます」というスタンスです。

結果、日本の物流の現場は、各社各様という状況に陥っています。ホームセンターであれば、カインズ、ビバホーム、ホーマックでは同じような物流作業でいいのではないか、とおもいますが、それぞれの企業がそれぞれ特殊な仕事の仕組みを持っていて、同じ物流の設計では対応できません。

自動化にとってもっとも重要なのは業務の標準化なのですが、同じXという商品を「Aというお客さまに納品するときにはこういうラベルをここに貼る」、Bというお客さまに納品するときには「違う印刷のしてあるこういうラベルを別の場所に貼る」…という個別対応が必要になってきてしまうんですね。

これまで私は、膨大な「うちの現場は特殊で、自動化に向いていないです」と、自動化を見送るケースを見てきました。

これは日本らしいといえば日本らしいのですが、日本が強みとしてきたきめ細かなサービスが、自動化やシステム化の前では足を引っ張ってしまっているわけです。自動化という局面では、日本企業は苦しんでいる状況といえます。

──Amazonはまだ人のよさを残そうとしているとおっしゃられましたが、なぜなのでしょうか。特殊なオペレーションに急に対応できるとか、特殊な荷姿の商品にも対応しやすいという点なのでしょうか。

西尾 たとえば判断をしながら行う検品作業は機械にはできなくて人間でなければ対応ができません。お客さまが買ったこのAという商品と、こちらのBという商品は同じものを指しているととか、箱がへこんだ商品を値引きして販売するべきか、これぐらいならそのまま出荷しても大丈夫と考えるか…だとか。現時点では、このような現場で起こる事象を機械で画一的に判断するのは難しいんです。

人間の方が状況に応じた対応をすることができるので、検品検査は人間が頑張ってやっている分野ですね。

もう一点は、波動対応のようなものです。1日に機械で処理できる荷物の分量というのは上限が決まってしまいます。ですが、ブラックフライデー&サイバーマンデーのように、受注が跳ねるタイミングがあり、それをすべて機械に対応させようとすると、オーバースペックになってしまいます。

ですが、低めに設定してしまうと、急に入荷・出荷量が跳ねたときに対応できません。この波動対応は機械が苦手な部分なので、人がそのときどきに応じて処理する必要が出てきます。

──日本特有のこまやかなサービスのせいで自動化が進んでいないとおっしゃられていましたが、それは強みといえるのでしょうか。

西尾 これは非常に難しい問題なのですが、私はそういった考えは捨てるころ合いに来ているのではないかとおもっています。現場が回せなくなってきたからです。現場でいろいろなご用聞きを続けていた結果、そのしわ寄せが個別性を生んできました。

個別性があるということは、それぞれの現場に「匠」がいるということです。

定型化しづらい作業、標準化しづらい作業を匠が抱えていたのですが、その匠がどんどん定年退職しています。標準化しておかなければ量をさばくことができません。匠を抱え込んでおければいいのですが、今後人口が減少する世の中ではそれも難しくなってくることでしょう。

ある程度作業を標準化し、人間の判断をなるべく減らすようなプロセスを構築しないと、とくに物流関連の企業は永続的に企業活動を続けていくことが難しくなってきています。人手を集めて匠の世界でやっていくのはもはや限界です。

モノタロウは「買い手に対する解像度」が高い

──西尾さんが立ち上げに関わられていたモノタロウの物流については、非常に評価が高いですね。その秘訣をご自身ではどのように分析なさっていますか。

西尾 物流は、それそのものが主役になることはないと、個人的にはおもっています。どのような販売戦略を取るのか…つまり、だれにどのようなリードタイムで、どんなふうに商品を提供するのか…という意思があり、それに合わせて設計されるべきものです。

それで、モノタロウの物流をご評価いただいているのであれば、そもそも会社としてその物流設計の前段階である「買い手に対する解像度の高さ」が理由なのではないかとおもいます。

Amazonや楽天のように、一般消費者向けのECサイトは、衝動買い的に「欲しい!」とおもって、ポチッと購入することが多いとおもいますが、モノタロウのお客さまは小さな町工場のような事業者さんがとても多いんです。

このような方々は、「この部品は摩耗するから年に1回、毎年1月に交換しよう」というように、計画的な購買をされていたり、一方で、「今日作業をしようとしたら、このパーツが足りない!」といって慌てて購入されるようなケースもあります。

企業であれば平日の日中は必ず人がいるから時間帯指定はいらないかもしれません。このような、買い手に対する理解が深く、買い手の方に対して「お客さまがこういうことを求めているなら、こんなふうに届けよう」と、販売側から展開されてくる要件を、物流でどう実現するのかを考えるのが私たちの仕事でした。

そのためには「どの配送会社にお願いしようか」「配送料はいくらぐらい?」「拠点の立地はどこ?」…などを検討します。商品も、小さなねじから物干しざおまで取り扱いますから、どこまでを自動化の対象にするのか、緻密に考えて設計する必要がありました。

モノタロウの物流は、まずお客さまを正しく理解して、その方たちに価値を提供するための物流であるという考え方が、わりと明確だったのではないかと思います。

──お客さまの解像度の高さというのは意識してそうなさっていたということでしょうか。

西尾 そうですね。私の管轄外の業務なので私の個人的な認識にはなりますが、通販の会社だからこそ、取得したお客さまのデータを活用しようと意識していたとおもいます。どのカテゴリーがどう売れているか、どんなお客さまがどの商品を購入されたかなどの分析はかなり力を入れていたのではないかと思います。

──実店舗を運営している小売業でさえ、まだそこまでデータ分析は進んでおらず、モノタロウのような解像度は得られていないと感じています。

西尾 実店舗の小売業は、ネット通販ほどお客さまのデータを取ることできませんよね。もしも、そのデータが物流設計のインプットとして存在していれば、もっと効率的なセンター運営ができるのではないかとおもいます。

たとえばペットフードとミネラルウォーターを同じリードタイムで店舗に運ぶ必要があるのか。いまは細かいお客さまの買い方、店舗での売れ方がわからないので、とにかく同じ基準で出荷し、同じリードタイムで配送するという設計になっているのではないかとおもいますが、販売のデータがわかれば、ロジスティクスの設計はもっとしやすくなるはずです。

店内物流作業はもっと減らせる

──現状の実店舗の小売業の物流に対して、西尾さんがどのように見ているかを教えてください。

西尾 店内の物流作業をもっと減らしていくことができるのではないかとおもっています。店舗の従業員の方が、もっと接客に時間を割きたくても、接客時間以上に品出しに時間がかかっている。狭いバックヤードに詰め込まれたかご車を引っ張りだしながら品出しをする…。そこをもっとスマートにできるのではないかと。

全文は 月刊MD note版にて公開中!(有料記事)
以下のリンクからご覧ください。
https://note.com/mdnext/n/nc621a7bd70cb

新習慣「電動歯ブラシで仕上げみがき」提案でベビー用オーラルケアを活性化

虫歯ができないよう気をつかう親の気持ちとは裏腹に、赤ちゃんには嫌がられることが多い仕上げみがき。この仕上げみがきを手早く、しっかりと行うためのベビー用電動歯ブラシがピジョンから発売された。赤ちゃんの成長に合わせて付け替えられる2種類の歯ブラシヘッドを付属品とし、長く使える便利アイテムになっている。乳児期のオーラルケアは非常に重要であることを訴求し、将来的に丈夫な歯をつくるためのファーストステップケア用品として売場を確立し、カテゴリー拡大につなげよう。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

ベビー用オーラルケアの市場はもっと開拓できる

ベビーのオーラルケア市場規模は約55億円。歯が生える前の歯ぐきマッサージ用ブラシ、はじめての乳歯ブラシ、親が使う仕上げみがき用歯ブラシから、フッ素コート、キシリトールとフッ素が含まれたタブレットなど、多彩な商品展開がなされている。

市場としては、近年横ばいから減少傾向にあるが、大人のオーラルケアはむし歯や歯周病、口臭に対する予防意識の高まりとともに2,000億円以上の市場規模で成長しており、一般成人のオーラルケアに関する意識は高いといってよい。

そのことからも、赤ちゃんのオーラルケアを担う親に対する啓発、情報発信をうまく行っていけば、大きな潜在需要の開拓が期待できる。つまり今後は、ベビーケア用品売場内でのオーラルケア用品コーナーの確立が重要になる。

また、大人のオーラルケア市場でも、昨今では電動歯ブラシが成長を見せている。それを受けて、電動歯ブラシの機能を知った親たちが、赤ちゃんのためにより良いケアをと思い電動歯ブラシを使用するようになりつつあるとも見て取れる。単価の高いベビー用電動歯ブラシの拡売でベビーケアカテゴリー全体の収益性も向上する。

永久歯まで影響を与えるから早期からの乳歯ケアが大事

乳歯が虫歯になると口内に虫歯菌が増え、将来生えてくる永久歯も虫歯になりやすくなるという傾向がある。だからこそ、乳児のうちからのオーラルケアは非常に大切と言えるだろう。

まだ歯の生えてこない月齢4,5ヵ月頃の時期から、歯ぐきマッサージ用の仕上げ専用ブラシの使用をスタート。まずは乳歯ブラシを使って自分でお口に入れることから慣らして、専用の歯ブラシで歯ぐきのマッサージをすることで「気持ちよさ」を赤ちゃんに感じてもらい、仕上げみがきを嫌がらないように誘導していくことが大切だ。電動歯ブラシを使うことで、嫌がる仕上げみがきをスムーズに行うことができる。

ピジョンの「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」(参考価格:2,090円 / 税込 / 電池別売)は、月齢6ヵ月頃からを対象年齢とし、12ヵ月以降も利用できるよう、替えブラシを2種(6ヵ月頃から用2個、12ヵ月頃から用1個)付属品としている。お子さまの歯の成長やご機嫌に応じて使い分けのできる強弱2モードの音波振動で、汚れをしっかり落としていけるのが特長だ。

①はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ(ピンク)2,090円(税込)(セット内容:電動歯ブラシ本体1個、替えブラシ6ヵ月頃から2個、替えブラシ12ヵ月頃から1個)
②はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ(グリーン)2,090円(税込)(セット内容はピンクと同じ)
③替えブラシ12ヵ月頃から2個セット440円(税込)

また、歯ブラシのネック部分にはLEDライトが付けられており、暗くて見にくい口の奥を明るく照らしてくれる。このLEDライトは赤ちゃんの興味を引きやすく、口に歯ブラシを入れることに対する不安感も軽減してくれると期待できる。

加えて、始動して30秒経つと音と振動、光によって経過時間がわかるお知らせ機能も搭載。お口の清潔を保つためには、口内を上下左右4ブロックに分けて各30秒ずつ磨くのが目安とされているので、このお知らせ機能を活用すれば、より効果的な仕上げみがきが実現できるだろう。

積極的な情報発信でベビーオーラルケア売場を確立

ベビーケアの購入者は子ども関連の商品に加え、日用品、化粧品、食品(簡便調理食)などを必要とする世帯で消費意欲は旺盛。今後長期に渡るお付き合いが期待できる層である。ベビーケア売場の充実は長期戦略を考えて重要。その中でベビーオーラルケア売場を確立、拡充させることでカテゴリー活性化が狙える。

コーナーには、乳児期からの口腔ケアの重要さをアピールしたPOPや展示物などを設置。また、実物見本を店頭に並べ、「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」の持ちやすさ、LEDライト、ブラシ部分のやわらかさも直接実感してもらうことで、確実な購買につなげていこう。

トップボード/情報充実で理解促進親世代への問いかけによって注目を引き、「はじめての仕上げ専用電動歯ブラシ」のメリットを強くアピール
実物見本/リアル店舗の強みを生かす実際に商品を触って毛の柔らかさやLED ライトを体験すれば購買意欲は上がる(右端が実物サンプル)

重要ポイントのまとめ

  • 永久歯にも影響を与える「早期からの乳歯ケア」売場を確立
  • 嫌がる仕上げみがきには「電動歯ブラシ」が有効
  • 付加価値商品は上昇マーケット、「仕上げ専用電動歯ブラシ」にチャンスあり

高保湿化粧水「ザ ウォーター メイト」誕生 若年層の獲得でカテゴリー拡大を狙う

コーセーの技術力を結集させた高効能特化型シリーズ「ONE BY KOSÉ」。2017年うるおい改善の美容液発売を皮切りに現在4つのアイテムで肌悩みに応える。これに加えて2021年8月、高保湿の化粧水を発売。20代、30代前半の女性をメインターゲットに、若年男性まで視野に入れシリーズの裾野を広げる戦略的な新商品である。コロナ禍で常態化したマスク悩みにも対応してスキンケアカテゴリー全体の拡大が狙える。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

新規客層開拓のため市場投入された期待の新商品

ONE BY KOSÉシリーズはコロナ禍でも好調な実績を挙げており、2020年1〜12月の売上金額は前年比110%を記録※。美容液市場のシェアを見ても発売時の2017年と2020年の比較で約250%にまで成長※。短期間で多くの支持者を獲得することに成功している。悩みを特定したわかりやすい訴求、容器デザインを含めたシリーズの世界観、そして満足できる使い心地で一度使えばリピートする人が多いことが成功要因だろう。

こうした「勝利の方程式」があるだけに、ユーザー数を増やせばシリーズはもちろんスキンケアカテゴリーの活性化につながる。2021年8月21日発売の「ザ ウォーターメイト」はONE BY KOSÉがこれまで十分に開拓できていなかった20代、30代前半女性の客層開拓(=ユーザー数増)をひとつの目的としている。一度ユーザーになってもらえれば、シリーズの併買をはじめ客単価アップ効果を見込める期待の新商品である。新商品の持つ特長や目的を理解して積極的な紹介活動を実行しよう。

※インテージ調べ

若年女性の持つ肌悩み マスクによる肌トラブルに対応

ザ ウォーター メイトが主要ターゲットとする20代、30代前半女性の多くはストレスや不規則な生活などで、乾燥、ニキビ、毛穴の目立ちなど10代では経験したことのない肌悩みに遭遇する。2020年からはコロナ禍によりマスク着用の習慣が定着したことで、この肌悩みがさらに増加している。

こうした悩みの多くは水分不足による肌のキメの乱れ始めから起こっている。ザ ウォーター メイトは継続的に肌のうるおいを補いキメの乱れ始めを整え、みずみずしくなめらかな肌に導いていく。

モイストパフォーマーとモイストスプレッダー

ヒアルロン酸とセラミドは保湿力の高い成分として知られ、さまざまなスキンケア商品に配合されている。ザ ウォーター メイトではこの2つの成分を合体させることで、セラミドの極小サイズ化、ヒアルロン酸のコンパクトな球状化に成功。「モイストパフォーマー」※1と名付けられたこの世界初※2の成分が肌の水分量を向上させ、長時間うるおいを持続する。

さらに角層内をうるおいで満たす「モイストスプレッダー」※3を配合。これらの複合成分がキメの乱れ始めを整える。

植物のお手入れにたとえれば、モイストパフォーマーは葉をみずみずしく育てる霧吹きの役割を果たし、モイストスプレッダーは根に対する水やりで植物の深いところから水分を葉へ供給する機能がある。このW効果がキメの乱れ始めを整える。さらに、「べたつかないのにうるおう」を実現する「ウォータリースムース処方」を採用。うるおいの持続とべたつきのない使用感が体感ができる。

※1 ヒアルロン酸 Na・セラミド NG・ステアロイルメチルタウリン Na・イソステアリン酸 PEG-8 グリセリル・コレス-10(保湿)
※2 ヒアルロン酸・セラミド複合体形成のキー成分(ヒアルロン酸 Na・セラミド NG・ステアロイルメチルタウリン Na・イソステアリン酸 PEG-8 グリセリル・コレス-10)の選択が世界初。先行技術調査及びMintel社データベース内 2021年2月 当社調べ
※3 グリセリルグルコシド、アマチャヅルエキス、グリセリン

シリーズの入口を広くして若年層が買いやすい商品設計

ザ ウォーター メイトは新規客獲得をひとつの目的としている。入口を広く取るために、まず、若年層の使用率の高い化粧水を選択、コーセーの調査によれば化粧水の使用率は20〜24歳で76.9%、25〜29歳で74.3%、30〜34歳で78.7%と非常に高い。価格は2,000円台前半に設定。ONE BY KOSÉの他アイテムの実勢価格が4,000〜5,000円であることを考えると買いやすい価格である。

この価格戦略により、高価格帯の百貨店ブランドからの流入、低価格帯の一般化粧品からのランクアップ両方が狙え(図表1)、店舗としては客単価アップが期待できる。

図表1  上下両方の価格帯から流入期待

美容液との一体販促で併買と美容液新規購入狙う

新商品の販売にあたっては、既存品でシリーズの中核的なアイテムである美容液「セラムヴェール」との一体展開を提案する。コロナ禍当初、化粧品全体の売上が不振になった時期でもセラムヴェールは落ちることなくシリーズを牽引し続けたという実績もある。ザ ウォーター メイトの基調色の薄い紫(クールパープル)はセラムヴェールの濃い紫(エナジーパープル)との連動性を考えておりカラーマーチャンダイジングとしても色による一体感、「かたまり感」で視認性アップできる。

新商品はテレビCMはじめ豊富なマーケティング活動で認知率アップを図るので、これを活用してセラムヴェールの認知も上げれば併買、美容液の新規購入も期待できる。

同社では「One minute活動」として、売場で1分間で商品を紹介、セルフ体験できる販促物や話法を用意している。サンプルも豊富に供給されるのでシリーズ・カテゴリー拡大に活用しよう。

WEB、SNSの施策も充実、WEB肌診断「One Skin Check」はリモートで肌の調子がわかり購買の入口としての実績を残している。コロナ禍で対面接客がしにくい状況にもリモートの肌診断は有効である。さらに、男性インフルエンサーも起用してジェンダーフリーを訴求する。店舗でも男性の潜在需要があることは意識しておきたい。

若年女性に支持率が高い新キャラクター今田美桜さんも起用して同世代の共感を狙う。

「世界初の成分」というニュース性のある商品をスキンケアカテゴリー拡大の起爆剤にしよう。

重要ポイントのまとめ

  • 売場に刺激をもたらす「世界初の成分」配合
  • 20代、30代前半の新規客獲得を目指す
  • セラムヴェールとの一体販売でシリーズ、カテゴリー活性化

若年層急増中!ドラッグストアで買う「園芸用品」市場の傾向と対策

ドラッグストア(DgS)の成長の歴史はラインロビングの歴史でもある。市販薬販売店(=薬局)から化粧品、雑貨、処方せん薬、ペット用品、食品とお客のニーズに合わせカテゴリーを広げることでDgSは市場を拡大させており、それは現在進行中である。総合業態としては後発であるがゆえにたぐいまれな柔軟性、拡張性を持っている。今回の企画では、コロナ禍で愛好者が増加中の園芸カテゴリーを、本格的にラインロビングする方法を考える。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

「巣ごもり需要」で市場は112.1%と拡大

[図表1] 園芸人口予測

園芸人口を見ると2020年の推計で約3,800万人(図表1)。おおまかに見て日本人の3人に1人は何らかの形で園芸を行っている。比較されることもあるペット市場を見ると、犬と猫の飼育頭数は合計で1,813万3,000頭(2020年ペットフード協会)なので、その可能性の大きさがわかる。

コロナ禍で在宅時間が増えたことで、消費市場にさまざまな変化が起こった。アース製薬の調査によれば、園芸関連商品(家庭園芸用の培養土や芝刈り機など除く)の市場は2013年から2019年までの7年間の平均成長率は3.3%だったのに対し、2019年から新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年にかけては112.1%と2桁成長を果たしている(図表2)。

[図表2] 市場規模

野外で行うことが多いので天候に左右される市場でもあり、2018年、2019年の市場がやや縮小しているのは、記録的猛暑、大雨、台風など気象条件がマイナスに働いたことによる。

若年層に向け「身近で買う」園芸カテゴリーを

いつ園芸を始めたかという時期で見ると、もっとも多いのは10年以上前という固定層だが、8.3%が「緊急事態宣言に伴う自粛生活」から始めており、数でいえば300万人に及ぶ(図表3)。内訳を見ると20〜40代の比較的若年層が約8割を占める。

[図表3] 園芸開始時期と2020年開始者の年代別内訳

園芸用品の販売チャネルではホームセンターや園芸専門店が約9割、DgSの構成比は1割にすぎない。コロナ期に園芸を始めた若年層が「園芸用品は身近なDgSで買う」という習慣を身に付ければ、園芸は収益カテゴリーとして文字どおり開花するだろう。そういう意味ではいまが本格的なラインロビングで売場を充実させるチャンスである。

ドラッグストアの園芸・ガーデニングカテゴリーについて、詳しくは本誌2021年8月号で特集中!!

50m商圏無人販売システム「600」マンション共用部の可能性発掘

飲料、軽食、日用品といったコンビニ商品のうち、ニーズの高い上位売れ筋商品を設置場所ごとにカスタマイズ。絞られた高回転商品を品揃えして、オフィスワーカーが50m以内の移動で買物ニーズを満たせることを基本ビジネスモデルとしてきた「無人コンビニ600」。最近ではマンションの共用部分に設置する「Store 600」のニーズが拡大。それに伴い新たな可能性が広がりつつある。(月刊マーチャンダイジング2021年8月号より抜粋)

コロナ禍でもオフィス需要は堅調。AIを活用した自販機支援事業も好調

「無人コンビニ600」「Store 600」を運営する株式会社600(ろっぴゃく)は2017年創業。代表の久保渓氏は1985年生まれ。アメリカの大学でコンピュータサイエンスと政治学をダブル専攻し卒業後現地でクラウドコンピュータのホスティング会社を起業。帰国後別会社の起業を経て600は4社目の起業。

従来、オフィスニーズを中心にビジネス展開していたが、コロナ禍によるリモートワークの普及で事業にどのような変化が起こったのか。

「2020年3月頃からリモートワークが推奨され、外出自粛が要請されオフィス需要は一時的に落ちました。しかし、コロナ禍で出勤しなくては仕事ができない人がエッセンシャルワーカーを中心に一定程度おり、そうした人たちへの福利厚生をどのように維持・向上させるかが真剣に考えられるようになりました。その結果、同年夏ころからオフィスの需要も回復し、いまでも堅調に推移しています」(600代表取締役久保渓氏)

出勤しても会社付近の飲食店が休業していたり、外出を自粛したりする傾向もオフィス需要の下支えになった。

同社では小売事業のほかに、自動販売機の管理会社に自社の経験と技術力をもとに業務改善ソリューションを提供する事業も行っている。「ベンディングヒーロー」と名付けられたこの事業部門で最近需要の高いのが、ルートセールスの効率化である。

自動販売機を運営する企業を対象に、売れている自販機や商品の特定、効率的なセールスルートなど、事業の改善指標を複数設け、過去のデータをAIで機械学習したり、アルゴリズムを開発することでそれらを改善。最適化された訪問計画を立てるというサービスである。これにより無駄な訪問が減り、業務コストを39%以上カットできた事例もある。

こうした自販機のDX事業は小売事業と並んで600の柱にしたいと久保氏は語る。

マンションニーズの拡大でカスタマイズの精度上がる

写真1 Store 600
高級家具のイメージ、子供用商品が充実

最近、600が注力している事業がマンションの共有部分への筐体の設置である。「Store 600」と名付けたこの販売設備はオフィス用とは異なり高級家具をイメージ(写真1)、冷蔵機能はなく常温によるサービスとなる。オフィス用の無人コンビニ600ではクレジットカードを使ってドアを開け決済していたが、Store 600では専用アプリによりドアを開閉し、決済もアプリのQRコードを用いて行う。

商品は1個50円程度のものから3,000円程度のものまでを品揃えする。オフィス用のように、コンビニニーズの上位売れ筋商品を切り出して品揃えするのではなく、マンションの居住者属性に合わせて、子供用のおもちゃから、地方のお土産物までと多彩な商品を販売する。

「子育て世帯が多く住むファミリー用マンションではキッズルームを備えた物件もあり、子供用のおもちゃや離乳食などが売れます。子供向け商品はStore 600のひとつの柱になっています。コミュニティスペースがある場合は、少し上質なお菓子や共用設備として設置されているコーヒーサーバー用のカプセルを販売しています。コロナ禍で遠出ができないこともあり、地方の名物、お土産のような商品もよく売れています。コロナ禍でリモートワークが増えたことで共用施設としてコワーキングスペースを設けるマンションもあり、そこでは文具やオフィス用品を厚く品揃えしています」(久保氏)

マンションは立地や間取りタイプなどで居住者の属性を推定しやすく、Store 600もそれに合わせコンセプトを定め品揃えする。オフィス用でもユーザーの声を聞いて商品をカスタマイズしているが、マンション用でもユーザーからのヒアリングには力を入れている。

管理組合の理事が理想の共用スペースのアイデアを持っており、組合員からの信任も厚ければそれに沿った形でStore 600の品揃えが行われる。久保氏によれば、商品だけを置くのではなく居住者のおもいを受けて空間を快適にするための手段として、居住者と伴走するイメージで一つひとつのStore 600をつくっていくことが理想であり、物件によってはそれが実現している。

写真2 カフェスペースでのStore 600
家具、調度品ともマッチしている

オフィス用では実用性重視の品揃えだったが、Store 600では、住まいの一部として心豊かに時間を過ごし、いかに暮らしに付加価値を与えてくれるか、それが品揃えの重要な基準となり、物件ごとにその基準は異なる。

管理組合の理事経由で希望を聞くことに加え、アプリを介してのインタビューや入居者説明会の場を通じてニーズの集約に努めている。

広がる使用シーン 究極の小商圏モデル

600のビジネスモデルはオフィス用からマンション用へと用途を広げたことで質的にも変化している。以前は必要な「モノ」を販売することが主眼だったが、マンション用では家族がそして個人が豊かな時間を過ごすための手段=「コト」を売る側面が強くなった。

続きは月刊MD2021年8月号で!

〈取材協力〉

600代表取締役社長
久保 渓氏

これからのリアル小売業は固定客との長期的な商売が重要

人口減少、高齢化によって、「狭小商圏化」が進むリアル小売業の商売は大きく転換していきます。そのパラダイムシフトのビフォーアフターを解説します。

(×)浮動客をかき集める (○)固定客を増やす

図表1は、これからの「リアル小売業」のビフォーアフターをまとめたものです。第1の変化は、「狭小商圏化」が加速することです。車で30分もかけて来店するような大商圏のリアル店舗は、Amazonなどのeコマースとの競争には弱いと思います。「コストコ」のようなAmazonにはない特別な来店目的を持つ業態以外は、大商圏立地の店舗は成立しにくくなるでしょう。

Amazonと共存できるリアル店舗は、「近くて便利」という価値を磨いた狭小商圏店舗だけになる日が来るかもしれません。現在、ドラッグストア(DgS)の商圏人口は1万人を切っていますが、引き続き大量出店を計画しているDgS企業は、人口7,000~5,000人という狭小商圏立地への出店も計画しはじめています。

7,000~5,000人の狭小商圏立地でも商売を成立するためには「ラインロビング」が不可欠の戦略です。新しいカテゴリーを増やすことで「来店目的」を増やし、一人当たりの支出金額を増やすことが、狭小商圏で成立させるためのセオリーです。最近のDgSは、精肉、青果などの生鮮食品までラインロビングする事例が増えています。

第2の変化は、浮動客を広域からかき集めるような販促が廃れて、商圏内に住み、繰り返し来店してくれる「固定客」を増やすことが最重点の売上対策になることです。これからのリアル店舗にとってもっとも重要視すべき数値は「年間購入金額」です。一般的に1店舗で1年間に6万円以上支出してくれる客をロイヤルカスタマー(固定客)と定義しますが、いかに狭小商圏内に住む年間購入金額の高い固定客を増やし、その店を信頼して通い続けてくれる「生涯顧客」を増やすことが、これからのリアル店舗にとってはもっとも重要な経営戦略に変わっていきます。

第3の変化は、開店前に行列をつくるような「短期特価特売(ハイ&ロー)」の売り方が廃れて、価格と「売れ方」の波動をつくらない「EDLP(毎日低価格)」の売り方が主流になることです。

狭小商圏の商売は「正直な商売」であるべき

狭小商圏時代に固定客に信頼される店づくりは、広域商圏時代の商売よりも難しいと思います。広域商圏時代は、企業が儲かる商品を押し売りして、顧客を怒らせても、次から次に新規客が増えていました。しかし、限られた商圏の固定客の繰り返し来店で成立する商売は、より正直な商売でなければなりません。不誠実な商売をすれば、地域の固定客は離れていき、二度と戻ってこなくなります。

商業界の創始者である倉本長治氏の「商売十訓」の巻頭は「損得よりも善悪が先」という言葉です。正直な商売こそ長期的な繁栄の「王道」であるという原点に戻ることが、これからのリアル店舗には求められます。逆に、押し売り販売は「覇道」であり、長期的には衰退の道をたどるという歴史の教訓を学ぶべきです。

DgSという業態は、「推奨販売力」が強いことが、業態として成長した大きな理由のひとつでした。しかし、狭小商圏時代には、過度な「推奨品の押し売り販売」は、固定客を減らす原因になるので注意が必要です。利益率の高い推奨品を販売することが目的ではなくて、狭小商圏に住む「なじみの固定客」に親身に寄り添って問題解決することが、接客販売の基本であるという原点に立ちかえるべきです。

そのためには、図表1で示した「商品軸、ブランド軸のMD」から「顧客軸のMD」に転換することが第4の変化です。たとえば、化粧品の推奨品が毎月のように変わる推奨販売は、商品ありきの商売であり、覇道経営です。顧客軸のMD(マーチャンダイジング)とは、女性の固定客の「肌悩み」に長期的に寄り添って、問題解決力のある接客によって長期的に信頼してくれる「生涯顧客」を増やすことです。

医薬品の接客販売に関しても、値入率の高い推奨品を無条件で押し売りするような接客は、地域の固定客に見透かされて、その店からの離反につながる可能性があります。あくまでも、地域の患者さんの健康状態や顧客属性、購買データに基づいた、その患者さんにとってもっとも適切な商品を個別に推奨する接客力が、狭小商圏時代にはますます重要になります。

長期的に信頼される固定客を増やすためには、図表1の「マスマーケティング」から「One to Oneマーケティング」への転換が重要になります。かつてのチェーンストアのように「不特定多数」の客に、同じ売り方、同じ販促、同じ接客を行うのではなくて、「特定少数」の客に、よりパーソナルな売り方・販促・接客を行うことが、狭小商圏時代のリアル小売業には求められます。これが第5の変化です。

※この記事は月刊MD2021年6月号の記事『今月の視点』を再編集したものです。

営業時間内、集客だけのビジネスでは勝てない!月刊MD 2021年8月号見どころ紹介

皆さんこんにちは、月刊マーチャンダイジング編集長の野間口です。 東京オリンピック2020、開会式直前のゴタゴタ、バッハの話は校長先生の話(長い!)色々ありましたが、蓋を開ければ日本選手は大活躍、勝っても負けてもカラダを張って競技に人生を捧げているアスリートの偉大さに感動する日々です。私も仕事に人生を捧げるぞ!金メダルは読者の支持だ!月刊MDを読んでください!皆さんは私のバッハだ!よく分からなくなったので8月号の紹介に移ります。

特集①スーパーサンシ

日本は人口減少で地方は人がどんどん減っています。都市部もオーバーストアでひとつの地域を複数の店舗が取り合う時代が来ています。ドラッグストアに関していえば、日本の人口を総店舗数で割ると7,000人強という小商圏化が進行中です。

こうした状況の中、宅配(ラストワンマイル)によって商圏の深掘りができないか。ネットスーパーで成功している、三重県鈴鹿市に本社を置くローカルチェーン「スーパーサンシ」の事例を通して考えます。

店舗、固定客という資産をベースに、宅配利用会員を開拓して商圏を広げ、深掘りする。取材対応の高倉氏はネットスーパーの商圏を「制空権」と表現し、一度制空権を押さえれば崩されない「先手総取り論」を具体的に語ってくれました。

小商圏を勝ち抜くには、営業時間内、集客という既存モデルにプラスαが必要なことが実感できます。

バックヤードに設けられた宅配用のピッキングスペース(宅配デポ)
スーパーサンシの自前宅配トラック

特集②ダラージェネラル

アメリカのディスカウントストア(DS)、ダラージェネラルをリポート。全米に1万7,000店以上を出店し、世帯数1,500未満でも成立する小商圏深掘りのモデル企業です。

田舎(ルーラル)で他社が出ても採算が取れないエリアが総取りできます。収益性も高く全商品の75%が5ドル(550円)以下というDSながら営業利益はなんと10.5%。新業態なども紹介しています。

ダラージェネラルの新業態「pop shelf」(やや高級路線)

特集③パレッテとビッグエー

イオンの新DS業態「パレッテ」と「ビッグエー」を、三浦美浩氏が店舗クリニック(訪問リポート)。DSの商圏の攻め方、ローコストオペレーションを詳細にリポートします。

トップインタビューには、ツルハの八幡政浩社長が登場。宅配への取り組み、デジタルシフトなどの戦略を語ってくださいました。新店も紹介しています。

その他有意義な情報満載。オリンピック観戦で頭を休めたら月刊MDで業界の動向を勉強しましょう!

ウォルトを使った宅配サービスを告知するポスター

 

 

NFI定例セミナー「ドラッグストア白書[最新版]『決算分析』『経営戦略&業態戦略』の深堀り解説」(2021/09/15 13:00~15:20)開催ご案内(オンライン)

9月の定例セミナーのテーマは3つ。①『ドラッグストア拡大史』でまとめたドラッグストア成長の30年史の解説、②上場ドラッグストアの最新決算分析、③ドラッグストア経営者(大手、中堅)の次の10年の「経営戦略」と「業態開発戦略」を深堀り。日野眞克のワンマンセミナーです。

2021年9月セミナーは、コロナの状況がまだ不透明なので「リモート」セミナーのみで開催します。

開催概要

・開催日:2021年9月15日(水) 13:00~15:20
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:16,500円(税込・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年9月6日(月)

スケジュール

(1)ドラッグストア30年史
[13時00分~14時10分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・なぜドラッグストアは急成長したのか?
・第1次ドラッグストア成長時代
・第2次、第3次ドラッグストア成長時代
・企業別の業態開発の特徴  他

(2)ドラッグストア最新決算分析
(3)大手&中堅各社の経営戦略、業態戦略
[14時20分頃~15時20分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・数値で見るドラッグストアの特徴
・売上高、収益性、安全性、成長性分析[PL、BS完全分析]
・大手&中堅DgSの次の10年の経営戦略、業態戦略  他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

エシカル消費の促進のカギ握る「実行しやすさ」「手軽さ」

今回は、POB(※)会員に「エシカル消費に関する意識調査(N=10403人、2021年6月1日~4日実施)」を実施しました。SDGs(持続可能な開発目標)の浸透を背景に、「エシカル消費」というキーワードが注目を集めています。昨年7月のレジ袋有料化から1年が経過し、大手の飲食業界やファッション業界でも「持続可能」をコンセプトとしたエシカル商品をよく目にするようになりました。最初にアンケートでは、「エシカル消費」の認知度を調査しました。

消費者の24.5%が認知している「エシカル消費」

「エシカル消費を知っているか」尋ねると、10403人のうち、およそ8割が「知らない(75.5%)」と回答し、「聞いたことがある(19.0%)」、「意味を知っている(5.5%)」と合わせて、認知度はおよそ3割(24.5%)でした。

エシカル消費とは、エシカル(Ethical)は英語で「倫理的な」「道徳的な」という意味をもつ言葉で、環境や人権に対して十分配慮された商品やサービスを選択・購入することをあらわします。消費行動を通して、社会課題を解決する動きや、あらゆる方面に向けた消費による影響を包括的に捉えたエシカル消費は、SDGsが浸透したように、今後認知が広がっていくことが予想されます。

次に、(設問でエシカル消費の意味を説明した上で)普段の生活の中で、「エシカル消費」を意識することはあるか尋ねると、10,403人のうちおよそ3割が「意識する(28.2%)」と回答しました。

年代別でみると、60代以上では「意識する(31.4%、N=1692人)」と回答した人の割合がもっとも多く、年代が上がるにつれて、意識の高まりを感じる結果となりました。

「フードロス削減・防止」「ごみを出さない」などの行動が首位

では、どのような「エシカル消費」を意識した行動をしているか、エシカル消費を意識する2,938人を対象に選択肢で尋ねました(複数回答)。

「エシカル消費」を意識した行動は、多くの人が「フードロス削減・防止(73.0%)」、「ごみをできるだけ出さない・減らす(69.6%)」を挙げました。

「食品は食べきれる分だけ購入し、食べきる、生ごみを出さない」、「シャンプーや洗剤など、詰め替え用商品がある商品を購入しプラスチックごみを出さない」など、身近なところから意識して行動していることがわかりました。

また、「エコ商品を選ぶ(55.7%)」、「地産地消(42.8%)」が半数近くとなり、「パッケージをみて地球や環境にやさしい商品か確認して選ぶ」、「どの地域でも地産地消に貢献できるため、継続しやすいと思う」といった意見もあり、上位回答は、実行のしやすさ・手軽さなどが理由で、選ばれていることがわかります。

ほかにも、「コロナ禍で売上げが減少した商品などを購入してフードロス削減に協力する」、「コロナで買い物の回数を減らし、必要な物だけ購入するようになりロスが削減できていると思う」など、コロナ禍がきっかけとなり、消費意識や行動の変化を感じられるコメントが一定数ありました。また、「エコや社会貢献を意識している企業の製品を選ぶ」といった声もあり、企業側にもエシカル消費への対応が今まで以上に求められていることを感じました。

[調査概要]
POBアンケート N=10403人
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター
調査日時:2021年6月1日~4日
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

※POBデータ:フィールド・クラウドソーシング事業を展開するソフトブレーン・フィールド株式会社が、全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から独自に収集する、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データ」。

ラベルレス飲料、販路広がるも「購入あり」が2割にとどまる理由

飲料メーカー各社が、ラベルのない「ラベルレス」のペットボトル飲料の販売を拡充させ、売上が好調だといいます。消費者は廃棄時にラベルを剥がす手間が省くことができ、メーカーはプラスチック樹脂量の使用量を減らせることからSDGs(持続可能な開発目標)にも合致し、ニーズが高まっています。そこで今回は、POB会員に「ラベルレス飲料に関するアンケート調査(N=3033人、2021年5月12日~14日実施)」を実施しました。ラベルレス飲料の認知や購入行動の実態に迫ります。

ペットボトル購入ユーザーでは認知率50%超

最初にアンケートでは、ラベルレス飲料の認知度を「普段ペットボトルを購入する」と回答した人(N=2,015人)、「普段ペットボトル飲料を購入しない」と回答した人(N=1,018人)における比較調査しました。

ラベルレス飲料の認知度は、「普段ペットボトルを購入する」と回答した人(N=2,015人)のうち、半数以上が「知っている(53.0%)」と回答し、「普段ペットボトル飲料を購入しない」と回答した人(N=1,018人)においても、およそ3割が「知っている(33.6%)」と回答していたことから、「ラベルレス飲料」の認知度や注目の高さがうかがえました。

「購入する機会がない」、「商品をみたことがない」

次からは、ラベルレス飲料の購入状況を調査しました。

まず、ラベルレス飲料の購入経験を尋ねると、3,033人のうち、およそ2割が「購入経験あり(21.7%)」と回答し、前述では認知度の高さがうかがえる結果でありながらも、購入率は2割にとどまりました。

その理由としては、店頭で「ラベルあり」で販売されるペットボトル飲料が主流の中で、「ラベルレス商品を購入する機会がない」、「商品をみたことがない」といったコメントがありました。

実際に購入経験がある人(N=437人:複数回答)の購入理由は、4割以上が「ラベルを剥がす手間が省ける(40.9%)」が最多回答となり、それに次ぐ「目新しさ(28.2%)」、「日頃からエコを意識(22.8%)」が、「安かった(26.7%)」という価格よりも上回り、購入回数は、「リピート購入している(51.1%)」と回答した人が、「1回のみ購入(48.5%)」と回答した人を、2.6pt上回りました。

購入チャネルは半数以上がコンビニ

次に、ラベルレス飲料の購入チャネルを尋ねると(N=437人、ラベルレス飲料の購入経験がある人:複数回答)、半数以上が「コンビニエンスストア(53.0%)」と回答し、「スーパー(35.9%)」、「ネット(26.5%)」、「ドラッグストア(7.7%)」が続きました。

ラベルレス飲料は、法律で義務づけられている原材料表示を個々のボトルでは省き、代わりに飲料が入っている段ボール箱に一括表示するため、「箱売り」が原則で、インターネット通販での取り扱いが主流になっていましたが、最近では、原材料などの法定表示を記載した首掛け式ラベルや、小面積のタックシールなどに貼付することにより、店頭での単品販売が可能となり、徐々に流通し始めています。そのため、今回の調査ではネット購入よりも、コンビニエンスストアやスーパーの店頭販売が上回ったことが考えられます。

次からは、ラベルレス飲料の購入意欲を調査していきます。

まず、購入を希望する同一商品(価格・成分・容量など)のペットボトル飲料が「ラベルあり」「ラベルレス」で販売していた場合、どちらを購入するか尋ねたところ、3,033人のうち、6割以上が「ラベルレス飲料を購入したい(62.3%)」と回答し、「ラベルありを購入したい(37.7%)」を、24.6pt上回りました。

そして、「ラベルレス飲料を購入したい」と回答した理由を尋ねると(N=1,890人、複数回答)、「無駄が少ない・ごみが減らせる(76.8%)」、「ラベルを剥がして捨てる手間が省ける(63.9%)」が上位回答となり、各社ボトルのデザイン性にもこだわりがあるようですが、「おしゃれ・デザインがよいから(4.1%)」にとどまりました。

一方で、「ラベルありを購入したい(37.7%)」と回答した人の理由を尋ねると、(N=1,143人、複数回答)、ラベルがあったほうが「何の飲料かわかりやすい(76.3%)」が7割で、「メーカーやブランドがわかりやすい(40.2%)」、「原材料などの内容がわかりやすい(32.7%)」が続きました。コメントでは、ラベルあり/なしに関わらず、結局安いほうを選ぶといったコメントが一定数みられたほうか、「ストックして置いておく際に、何の商品かわからなくなる事があるから、ラベルがあった方を選んでいる」といった声もありました。

今回の調査結果から、ラベルレス飲料の販売好調の理由として、「イエナカ」時間増加にともなう、生活者の不便・不満の解消につながったことや、ケース売りのネット販売から、身近で購入しやすい店頭販売に販路が拡大し、消費者への認知や購買が広がる動きがあることがわかりました。

現在はブランドが確立している既存商品のラベルレス飲料が発売されていますが、新商品のラベルレス飲料や、ラベルをみて商品を選ぶ人、高齢者の方など、ラベルレスでもわかるような工夫や販促が、定番化にあたり今後の課題と言えそうです。

[調査概要]
POBアンケート N=3033人
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター
調査日時:2021年5月12日~14日
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

※POBデータ:フィールド・クラウドソーシング事業を展開するソフトブレーン・フィールド株式会社が、全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から独自に収集する、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データのこと。