お客様の視線の「上下」「左右」に気を付けて売場を作ろう

商品を発見しやすい、買いやすい店を作るためには「お客の視線」を理解しておかなければならない。売場作りの基礎の基礎といえる「上下の法則」と「左右の法則」を紹介する。

 棚の上下で粗利ミックスする「上下の法則」

棚の上段と下段で陳列する商品の属性を変え、棚の上下で粗利ミックスするのが「上下の法則」だ(図表1)。

まず、水平な目線から下に30度の視界の範囲内を「ゴールデンゾーン」に設定する。ゴールデンゾーンから外れた上の部分と下段部分は死角になりやすい場所だ。

ゴールデンゾーンはもっとも目につきやすく、手に取りやすい場所なので、利益率の高いいわゆる「売り筋」商品(売り込みたい商品)を陳列する。

ただし、PI値の高い「売れ筋」商品は、陳列量を多く取れば、下段に陳列しても視認性が高まり、陳列場所のマイナス面を克服できる。

また、お客が手に取ったときの重さなどを考えると、上の部分には「小さいもの・軽いもの」を陳列すべきで、「おおきいもの・重いもの」は下段に陳列すべきだろう。

写真はドラッグストア ゲンキーのパスタ売場である。最下段に突き出し陳列什器を配置し、陳列量を多くすることで、一番売り込みたい商品であるプライベートブランド(PB)が自然と目につきやすくなる。

なお、通路幅の広さとゴールデンゾーンの広さは関連している(図表2)。通路幅が狭ければ、ゴールデンゾーンも狭くなり、棚の上下は死角になる。通路幅が広ければゴールデンゾーンは広くなることも、上下の法則を考えるときに忘れてはならないポイントだ。

同じ条件なら右側が有利な「左右の法則」

同じ条件で陳列されている商品では、日本においては右側に陳列してあるものの方が有利であるという法則。

日本人は右利きが多いため、同じ棚に同じ条件で隣同士に並んでいる商品では、右側にある方が手に取りやすいからである。この法則を利用して、お客が視認しやすいトップブランド商品の右隣に、これから育成したいブランドもしくはPBが配置されている。ブランド育成をする際にはよく使われる法則である。

写真2は同じくゲンキーの菓子売場。アメリカの小売業では「コンペア&セーブ(比較してみてください)」というPOPを張り付けて、トップブランドのナショナルブランド(NB)とPBを並べて販売する手法がよく見られる。このゲンキーの売場でも、売れ筋のNBの右隣に自店のPBを陳列し、価格差をPOPでアピールしてブランドスイッチを訴えている。

[写真2]左右の法則に基づいた売場。NBのトップブランドの右隣に自社PBを展開して比較を促す

覚えておきたい!3種の売場レイアウト

自分が働く店、あるいは競合の店舗、もしくは取引先の店…どのような店舗でも、それを言い表すためには言葉が必要です。ストアコンパリゾンをする場合も、売場や商品を評価する前に、まず店舗の内部がどのような構成になっているのかを言葉で表現できるようにしておきたいもの。本稿では、店舗を表現する言葉の最も基礎となる「店内レイアウト」について解説します。

主通路を明確にすることが売上増につながる

売上は、以下の図のように分類できる。

売上を向上させるためには、お客1人当りの買上点数を増やすことが大切だ。そこで重要となるのが、売場のゾーニング計画と、レイアウト計画である。買上点数はお客の歩行距離に比例する。つまり回遊計画の基本は、お客の動線をできる限り長く設定することである。

そのために重要なことは主通路を明確にすることである。
主通路とは、お客の70%以上が自然に歩く通路のことである。

売場全体を回遊させる逆L字型

主通路設定の基本となるのが、入り口から売場の奥までまっすぐ進み、直角に曲がっていく「逆L字型」だ。


部門を横断して、売場全体を回遊させ、結果として買上点数を増やすことにつながる。

専門性を強化させるT字型レイアウト

一方、買上点数を増やすよりも、「目的の売場に行きやすい」「部門をコーナー化することで、専門性を強化したい」という場合、「T字型の主通路動線」にする場合がある。


メリットは、それぞれの部門の境界が明確になり、部門ごとの専門性を出しやすいという点である。一方、売場の一番奥の左右の通路の通過率は極端に下がるので、売場の中に死角が生まれる。また、出入り口を入ってまっすぐの主通路に島陳列を配置すると、定番とプロモーションが連動しにくいという欠点もある。

アメリカのバラエティストアが採用するI字型

「I字型の主通路動線」も専門性を強化したい場合に有効だ。


T字型と同じく部門の境界が明確になる。買上点数よりも、来店頻度を優先し、目的の売場への行きやすさを優先するアメリカのバラエティストアのような業態では、I字型の主通路動線を選択している。

I字型の場合、のA、Bのような売場の奥にPI値(買上率)が高い食品や消耗品をゾーニングすることで、売場奥の通過率を向上させることができる。

また主通路の突き当たりとなるE地点(第2マグネット)には、おもわず奥まで行きたくなるような刺激を設定することが重要だろう。

一方、C地点、D地点の縦方向の通路が死角になりやすいので、どんな商品を配置するかが、回遊性向上のポイントになる。

(参考:月刊マーチャンダイジング2021年7月号)

日機装が空気清浄機「Aeropure」の販路にドラッグストアを選んだ理由

日機装株式会社は、2021年6月10日、同社が開発した深紫外線LEDを使った循環型空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」を、ウエルシア薬局株式会社、株式会社スギ薬局のドラッグストアの店舗で販売すると発表した。(ライター:森山和道)

「Aeropure」は取り込んだ空気に対し深紫外線LEDを照射、除菌・ウイルス不活化を行ったあとに排出する仕組みをとった循環型空間除菌消臭装置。悪臭の原因物質やアレル物質を分解することもできる。

実店舗での販売は今回が初めて。従来は通常の家電ではないという価値訴求をしていたことと、生産能力面から出荷数に制限があったため、店頭販売をしていなかった。だが感染対策ニーズが高まるなか、多くの顧客から「実物を見たい」という声があがり、ドラッグストアであればシナジー効果が強いのではないかという判断で実店舗販売に至ったという。なお、今回販売を行う機種はAeropure series S 「AN-JS1」で、希望小売価格は7万円代。

「Aeropure」の実店舗での販売は初めて

ウエルシア薬局では関東近県の10店舗で6月8日から取り扱いを開始する。スギ薬局では東名阪を中心に10店舗での取り扱いを近日中にスタートする予定。設置店舗は順次拡大を予定する。店舗で受注し、後日引き渡す。年間販売目標台数は25万台程度。

取り扱い店舗一覧

深紫外線LEDを活用した循環型空間除菌消臭装置「Aeropure」

日機装 代表取締役社長 甲斐敏彦氏

日機装は石油ガス業界向け大型特殊ポンプを扱うインダストリアル事業、炭素繊維強化プラスチックによる航空宇宙事業、国内でシェア5割を超える血液透析装置を扱うメディカル事業の3つを展開する会社。血液透析装置では日本でのパイオニアとして開発に取り組んできており、海外向け販売も行っている。

日機装 代表取締役社長 甲斐敏彦氏は、2020年1月から販売している空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」について、新型コロナウイルス以前から、医療機関のニーズに応えて深紫外線LEDの除菌技術を活用した院内感染対策として開発していた製品だと紹介。「結果として感染予防対策が当たり前の社会に変化したことを実感している」と語った。

UV-Cを活用した空間除菌消臭装置「Aeropure」。2020年1月発売

日機装は青色LEDに必要な高品質結晶創製技術の発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学 天野浩教授(当時は名城大学)と、2006年から深紫外線LEDの実用化を目指して共同研究を行い、2015年に世界で初めて量産化に成功した。その後、「SumiRay(スミレイ)」のブランドで深紫外線LEDを使った水浄化装置、空間除菌消臭装置の開発を進めている。「深紫外線LEDの量産にはコストがかかり、まだ安く大量にできる状態にはなっていないが今年は安定供給が可能になった」という。

深紫外線LEDは天野教授と共同開発

紫外線は可視光よりも波長が短い100~400nmの光。波長が長いほうからUV-A、UV-B、UV-Cと分類されている。なかでも深紫外線(UV-C)は100nm~280nm波長帯域の紫外線で、エネルギーが高い。そのエネルギーを使ったDNA損傷による除菌・ウイルス不活化は以前から行われている。

日機装の深紫外線LEDは新型コロナウイルスに対しても宮崎大学との共同研究で不活化試験を実施しており、感染価が30秒照射で99.9%、1秒照射でも87.4%減少するという結果がイギリスの科学誌「Emerging Microbes & Infections」に掲載されている。変異株についても1秒で90%以上、5秒では99%以上、ウイルスを不活化でき感染価が減少するという結果が得られているという。

新型コロナウイルスに対しても不活化効果の有効性が確認されている

天野教授との共同研究は難航し、最初に光ったときには歓声が上がったという。2015年の量産化成功以来、耐久時間を向上させ、世界最高水準の性能を追求するための取り組みを続けた。「Aeropure」は2020年1月に販売したが、6万台弱を販売。だがこの量産レベルでは継続的な感染対策が必要になった今後の需要増に耐えられないため、年間25万台を製造できる体制を構築し、増産に踏みきった。

「Aeropure」シリーズ。2021年は年間25万台の販売を目指す

エビデンスに基づいた循環型除菌装置

日機装 取締役執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長 木下良彦氏

日機装 取締役執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長の木下良彦氏は、日機装の透析医療装置のほか、そのノウハウを活用したヘルスケア分野の除菌装置類を紹介。同社は特に未病・予防領域に力点を置いている。

日機装のメディカル・ヘルスケア分野での取り組み

紫外線を使った除菌には薬剤耐性菌にも効果がある点が利点だ。だが生体には有害で、特に累積すると害が大きい。木下氏は「取り扱うには紫外線の制御技術が必要であり、良い面と悪い面がある」と強調。「紫外線は高い効果を発揮する反面、健康被害の原因となる危険な光でもある」と語った。日機装は安全な使い方で確実な効果を出すことにこだわり、データに基づくエビデンスを示すことを重視していると述べ、宮崎大学との共同研究による検証結果などを紹介した。

紫外線は取り扱いに注意する必要がある

木下氏は、空間除菌装置とされる商品のなかには除菌効果が明確ではなく健康への影響が懸念されるものがあることや、深紫外線についても情報が混乱している面があると述べ、同社ではデータに基づく効果と「SumiRay(スミレイ)」ブランドをより認知させていきたいと考えていると強調。

深紫外線LEDについても従来は価格も高く出力を上げにくい欠点があったが、日機装では深紫外線の適切な使い方を探り、最初は水の除菌から始めた。水は一定容積のなかに蓄積し、満遍なく深紫外線を照射することができるためだ。中流量のものは食品工場などで、小流量のものは風呂釜などで使われているという。

そして、水の除菌の次に着目したのが空気の除菌だった。空間に直接照射することは安全面を考えてもできないし、光源からの距離が離れると反比例して効果が薄れてしまう。また影になる部分には効果が全くない。そこで2019年に光触媒フィルターと出会い、装置本体に空気を吸い込み、そのフィルターで菌やウイルスを補足し、そこに深紫外線を照射する。こうすることで安全を担保しながら除菌することができる。こうして開発されたのが「Aeropure(エアロピュア)」で、いま多くの場所で使われるようになったという。医療機関からも高い信頼を得ており、3月末現在で8500以上の医療関連施設に導入されているという。これは生産台数のおよそ半分くらいにあたる。

世界的に除菌ニーズの高まりから深紫外線の効果は知られるようになり、多くの機器が出回るようになった。だが木下氏は危険性もあることを再び強調した。消毒液や酸化性物質などを空間に噴霧するタイプについても「空気を直接除菌しようとする製品はどう考えても効果がない。一般的にはある程度の除菌成分を出さないと効果がないが、高濃度のものを空間に出し続けると人体へのリスクも高い。感染対策として推奨される換気も行うと効果は限定的になる」と語った。

空間除菌をうたう製品のなかには効果が疑問なものも

また一定波長の紫外線を放射するタイプのなかには人体に害がなくて有効だと言われているものもあるが、本当に人体に影響がないかについては累積を見る必要があるので将来の研究結果を待ちたいと述べた。そして「日機装の除菌装置は空気を吸い込み、遮蔽された装置内部でウイルスを補足して光を当てる。正しく使い方を間違えなければ効果がある。裏付けデータをお届けしながら製品をお届けすることが当社のこだわり」と強調した。

日機装では取り込んだ空気に対して遮蔽空間で紫外線照射する方式を採用

同社では今後、深紫外線LED技術を中心に、科学的な根拠に基づいた衛生環境・感染対策基準を作り、単なる感染対策技術だけではなく、より広い感染対策ソリューションを展開していく予定。日本への販売拡大のほか、海外展開も視野に入れており、中国では6月に、北米・欧州では10月発売予定となっている。「Aeropure」は循環型なので空調施設とも相性がよく、協業も進めており、除菌技術のスタンダードを狙っていく。戸建や自動車内などでの活用も視野に入れており、順次製品をラインナップしていく。木下氏は「社会インフラの様々なところにAeropureを導入し、感染対策をプロデュースしていきたい」と語った。

深紫外線LEDをベースにした感染対策製品を幅広く展開予定

地域の健康ハブステーションとしてのドラッグストアとのシナジー効果を狙う

日機装ヘルスケア事業推進部 部長 中摩貴浩氏

さらに日機装ヘルスケア事業推進部 部長の中摩貴浩氏が協業戦略と開発製品ラインナップを紹介した。日機装では三菱地所ホームと提携しており、Aeropureの技術を搭載したダクト組込型の空気清浄機製品を4月から販売しており、すでに予定販売数量を上回る受注が来ているという。このほか、多くの協業先と提携している。公共交通機関でもWILLERと協業。高速バスに搭載されている。詳細は6月末に発表される。

ドラッグストアでの販売に至った理由については、「ドラッグストアは地域の健康ハブステーションという役割を持っている。またエビデンスを重視した販売ができる点も合致すると考えた。医療現場に近い社会機能を持っていることも、ドラッグストアでの販売を選んだ理由だ」と中摩氏は語った。

地域の健康ハブステーションとしてのドラッグストアの役割を重視

今後、日機装ではニューノーマルを支えるための技術として、「SumiRay」を活用した紙表面除菌装置、公共交通機関や映画館向けにシートで除菌を行うエアバリアシート、学校、ビジネスビルなどを対象にした床面除菌自走ロボットなどを開発中だという。いずれも年内にはリリースされる。

開発中の床面除菌ロボット

PI値100超えの核商品を増やし狭小商圏高シェアを目指そう

これからのリアル店舗は、商圏人口7,000人~5,000人の狭小商圏時代に突入しようとしています。当たり前ですが、少ない商圏人口でも商売を成立させるためには、商圏内に住む多くの顧客が購入する「核商品」を意図的に増やす必要があります。核商品の目安である「PI値」とは何か? を解説します。

写真はPI値100の核商品として育成中の「コロッケ」

PI値100超えが核商品の目安

PI値とは、Purchase Index(パーチェイス・インデックス)の略です。レジ通過客数1,000人当たりの販売数量を表す数値です。「数量PI」の公式は、「一定期間の販売数量÷同一期間の店全体の客数×1,000」で計算します。

一般的にPI値100の売れ筋商品を、わが社の核商品として意識的に育成することが、狭小商圏立地で客数を増やすための肝になります。PI値100とは、レジ通過客数1,000人当たり100個売れる商品(群)のことです。つまり、およそ10人に一人が必ず購入する商品(群)のことです。PI値100の核商品が増えれば、狭小商圏に住む固定客の「来店頻度」と「買上点数」が増加し、少ない商圏人口でも客数と売上高が増加します。

売場では、PI値100超えを目指す核商品の陳列量を維持し、売場で目立たせ、欠品させないことが重要です。育成商品のPI値の推移を管理し、商品部と店舗運営部で連携しながら、計画的に核商品として育成する努力が重要です。

PI値の高い商品は第1磁石(主通路)に陳列

PI値の高い部門のことを主力部門、PI値の高い商品群のことを主力カテゴリー、PI値の高い商品のことを主力商品と言います。PI値の高い主力部門、主力カテゴリー、主力商品は「主通路(第1磁石)沿い」に陳列することが、売場レイアウトの原則です。

売場レイアウトの配置の原則は、下記の図のようにPI値の高い主力商品(部門、商品群)を主通路沿いの「外側」に配置し、PI値の低い補助商品(部門、商品群)を内側に配置することが原則です。つまり、主力外側、補助内側が基本になります。

NFI定例セミナー「ローコストと完全作業の両立戦略」(2021/07/21 13:00~16:40)開催ご案内(オンライン)

7月の定例セミナーのテーマは、「ローコストと完全作業の仕組みづくり」です。売上高が大きく増えない時代の最大の売上対策は、完全作業によって売場でのチャンスロスを減らすことです。一方、狭小商圏で成り立つために精肉、青果などの食品カテゴリーのラインロビングが加速しています。その結果、店内作業量が大きく増加しており、ローコストで完全作業を実現する仕組みづくりがとても重要です。今回は、「完全作業の仕組みづくり」の方向性と事例を紹介します。

2021年7月セミナーは、コロナの状況がまだ不透明なので「リモート」セミナーのみで開催します。

開催概要

・開催日:2021年7月21日(水) 13:00~16:40
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年7月12日(月)

スケジュール

(1)機会損失を防ぐ完全作業の仕組みづくり
[13時00分~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・店頭ロスの種類と対策
・レジ作業、補充作業軽減化の事例研究
・ローコストと機会損失の両立戦略
・接客のオートメーション化  他

(2)食品ローコスト小型業態に学ぶローコスト運営の極意
[14時40分頃~15時40分頃]

エイジスリテイルサポート研究所(株) 三浦 美浩 所長

・最新食品スーパーのローコストオペレーション研究
・食品小型ディスカウント店に学ぶ→「パレッテ」(日本型アルディ)、「ビッグ・エー」(ボックスストア)
・ローコストオペレーションの基本戦略  他

(3)ラストワンマイル(宅配)で成功する「スーパーサンシ」の研究
[15時50分頃~16時40分頃]

月刊マーチャンダイジング編集長 野間口 司郎

・自社でラストワンマイルを実現する仕組み
・「届ける」ことによる地域密着と固定客化の効果検証
・狭小商圏モデルは「ラストワンマイル」の克服がポイント  他

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

小売業のコスト管理の基本「分配率」を知っていますか?

小売企業の中堅幹部は、本業の儲けである「営業利益」の達成が最大の数値目標になります。そのためには、売上高を増やすだけではなくて、販管費(経費)=コストをコントロールすることが重要です。

分配率は粗利益に占める利益と経費の割合

小売業のコスト管理の基本が「分配率管理」です。冒頭の図表1に示したように、分配率とは粗利益(売上ではありません)に占める利益と経費の割合を表したものです。分配率管理で重要なことは、まず最初に、粗利益の中から「営業利益」を確保することです。

粗利益に占める営業利益(もしくは経常利益)の割合のことを「利潤分配率」と言います。利潤分配率の目安は20%です。つまり、粗利益の2割を営業利益として最初に計上し、残りの8割を経費として配分するわけです。経費分配率の中でもっとも割合の多い経費は人件費であり、それを「労働分配率」と表現します。労働分配率の目安は、粗利益の3分の1強です。

労働分配率を計算する際は、給与だけではなくて「役員報酬」、「福利厚生費」「退職金の積み立て費用」「訓練費用」などの給与以外の労働コストをすべて含めて計算することが重要です。労働分配率以外にも、「不動産分配率」「販促分配率」が主要なコストです。コストコントロールで重要なことは、それぞれの分配率の目標を決めて、その範囲内でコストを管理することです。

販促分配率が低いコスモス薬品

※月刊MD2021年2月号記事から引用

図表2は、上場企業であるコスモス薬品の財務諸表をベースに「分配率」を計算したものです。粗利益(=売上総利益)に占める経費(販売費一般管理費)の割合は78.4%(経費分配率)となっています。つまり、利潤分配率(粗利益に占める営業利益の割合)は21.6%と計算できます(2020年5月末決算)。

利潤分配率の目安が20%なので、コスモスや薬品はより多くの営業利益を確保しています。コスモス薬品の店名は「ディスカウントドラッグコスモス」と安売り店であると堂々と表現していますが、利益配分は高いことがわかります。安売りで儲けが少ない従来のディスカウンターとは収益構造が異なると言っていいでしょう。

一方、コスモス薬品の労働分配率は38.0%と決して低くありません。小売企業としては平均賃金が高いと推測できます。低賃金で安売りを仕掛けるディスカウンターとは報酬面でも異なることがわかります。

特筆すべきは、コスモス薬品の「販促分配率」が3.2%と極めて低いことです。販促分配率の目安は5~7%なので、コスモス薬品の販促費用の低さが目立ちます。販促分配率の低さは、EDLP(エブリデーロープライス。常時低価格)政策の結果だと思われます。

売価を上げ下げして、売れ方(需要)の波動をつくる「ハイ&ロー」の価格政策よりも、売価が一定で売れ方の波動も少ないEDLP政策の方がオペレーションコストが低く、販促にかかる経費も非常に少ないことがわかります。コスモス薬品の販促分配率の低さを見ると、EDLPはEDLC(エブリデーローコスト)であることが改めて実感できます。

コスモス薬品の販管費率(売上に占める販売費一般管理費の割合)は15.5%(2021年5月末決算)とローコスト経営を実践しています。ちなみにマツモトキヨシの販管費率は25.7%ですから、10%以上の差があります。その驚異的なローコスト経営の理由のひとつが、EDLP政策による販促分配率の低さなのです。

大人用おむつを売るための3つのポイント

大人用おむつの市場はこの20年で2.5倍以上に成長している。しかし、ドラッグストア(DgS)の従業員は介護経験もなく商品への理解が不十分というケースが多い。ユニ・チャームではこのロスを埋め、正しい商品が消費者に届くよう、大人用おむつの商品理解とカウンセリングの手法を長年にわたり開発、改善し続けている。(月刊マーチャンダイジング2021年6月号より抜粋)

大人用おむつ市場「重度」は減少 「中度」と「軽度」で市場二分

全人口に占める高齢者(65歳以上)の人口割合を高齢化率というが、この数値は2000年の17.4%から2020年は28.9%と21年間で11.5ポイント上昇している(内閣府調べ)。これに伴い、大人用おむつの市場も拡大(図表1)、2020年は1,247億円に達している。

大人用おむつは、寝て過ごすことが多い、座れる、立てる、歩けるなど日常生活能力(ADL/Activities of Daily Living)に合わせ商品が開発・販売されており、ADL別では能力の高い順に「軽度」「中度」「重度」と区分される(以下図表)

2001~2010年の10年間は寝て過ごすことが多い人を主な対象とした重度の構成比が大きかったもののその割合は低下傾向にあった(図表2)。

同じく中度も低下する一方で、女性の尿もれを含む軽度は構成比を上げている。2011年から2020年までの10年間で重度は18.1%にまで縮小、残りを中度と軽度が二分するような市場構造になっている。

背景には寝たきりを避け、なるべく身体を動かすような介護方針が社会的に進んだこと、それに合わせた大人用おむつ(パンツタイプ)の開発や販売強化がある。また、軽い尿もれに対する意識が高まったことも軽度市場を押し上げている。

withコロナ時代に合わせた新売場の提案

図表3はユニ・チャームが長年提唱し続けているADL別売場である。カウンセリングでも使用者のADLを確認することが、適切な商品と使用者をマッチングさせる基本となる。

図表にあるように同社の売場づくりでは、自立している人(軽度)には「外出意欲促進」、トイレが使える人(中度)には「自立排泄支援」、寝て過ごすことが多い人(重度)には「離床促進・夜間良眠」と、現状に合わせた商品を案内するだけではなく、身体状況の改善、尊厳の維持、QOL(生活の質)向上など、使用者の生活をより前向きにする提案が込められている。

カウンセリングのなかで、こうしたメッセージを伝えることもショッパーにとっては有意義なことでロイヤル化にもつながる。「軽度の方は、なるべく外出することで体力もつくし、認知能力の維持にもつながります」といった言葉はお客の心理的な満足度を高めるだろう。

2021年の上期からは、従来のADL別売場から一歩進んでwithコロナの状況に配慮した売場を提案。代理購買者が中心のため、わかりやすいブランド別ADL売場を基本に、コロナ禍で来店頻度を抑えまとめ買いをする人が増えたので、①大容量パックの品揃え、売れ筋商品のフェースを増やして、②欠品ロス対策を強化している。

さらに、パンツ用パッド、テープ用パッドの売場を明確に分離することで誤使用を防ぎ、③パッドを販売促進する、などが新売場の主なポイントである。

パッドの販売促進はカテゴリー拡大のカギ

新売場3番目のポイントである尿とりパッドの販売促進に関して、この施策はカテゴリー拡大の大きなカギになる。尿とりパッドとはおむつの内側にあてる用品で、「内側のおむつ」ともいわれる(写真1)。

尿とりパッドを使えば、「交換が楽」「経済的に安価で済む」というメリットが生まれるのと同時に、店舗にとっては併買が進むという利点もある。尿とりパッドに関する認知や正しい使い方の理解は大人用おむつの適切な利用には重要な要素だが、現実には理解は十分に進んでいない。

「当社の調査によれば、パンツタイプ専用の尿とりパッドを使っている割合はわずか23%なのに対し、テープタイプ専用尿とりパッドを使っている方は48%と、明らかに使用方法を誤っており、これを正すような売場づくり、カウンセリングが重要です」(Home Health Care推進部長 辨野方一氏)

尿とりパッドを使った大人用おむつの使い方としては、中度であればパンツ用尿とりパッド、重度にはテープ専用のパッドを併用するのが適切な使用方法となる。パンツ用、テープ用それぞれ専用のパッドがあることを理解するのが基本。カウンセリングのキーフレーズは「交換が楽になって、外側のおむつの交換回数も減らせます」「費用が安く済みます」などである。

大人用おむつのカウンセリングは優良顧客育成につながる

ユニ・チャームが行ったカメラを用いたショッパー調査によれば、大人用おむつの購入者はほかのカテゴリーの購入者と比較して売場滞在時間が長いことがわかっている(図表4)。

また、ID-POSのデータによればシニア層になるほど利用店舗数は少なくなる傾向があり、いい換えれば高齢者ほど店舗ロイヤルティーは高い。さらに、必然的ではあるが、大人用おむつの購入者は中度、重度になるほどに本人以外の代理購買者であることが多い。

これらの事実を整理すると、大人用おむつの購入者は…

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年6月号で!

〈取材協力〉 ユニ・チャーム株式会社 Home Health Care推進部長 辨野 方一(べんの まさかず)氏

カインズ「楽カジ」に学ぶ、日用雑貨売場の作り方

2020年夏、カインズが首都圏初出店した新業態「Style Factory」。200坪の小型店で日用雑貨を中心に取り扱う。本業態は売場をいくつかのテーマで商品をくくっているのが特徴だが、そのテーマのひとつとして掲げるのが「楽カジ」だ。「KITCHEN」「LAUNDRY」「CLEAN」の3つの切り口で、お客の生活をサポートする「楽カジ」。同社が長年にわたり開発し続けてきた楽カジ商品開発の裏側と、その特徴的な「売り方」について伺う。(月刊マーチャンダイジング2021年6月号より抜粋)

家事の工程・回数・時間を30%削減

「楽カジ」はカインズが提案する生活雑貨のコンセプトだ。くらしの大半を占める家事を、調理(KITCHEN)、洗濯(LAUNDRY)、掃除(CLEAN)の3つの軸に分類し、それぞれの工程や回数、時間を約30%削減するという約束を掲げ商品を取り揃える。「楽カジ」によって削減できた家事の時間で、自分らしさや楽しみを新たに生み出し、「くらしを家事から変えていく」ことを提案するという。

「楽カジ」コンセプト誕生の背景について、同社で長年商品開発を担当し、「立つほうき」や折り畳める物干し「パタラン」をはじめとする数々のヒットアイテムを生み出した、商品本部ライフスタイル事業部 オフィス・家庭用品部部長代理の清水政良さんはこう語る。

「小売業はメーカーと違ってお客さまとの最後の接点であり、お客さまの声を生かした商品を開発することができるのが強み。弊社も当初は、既存の商品を海外製造に切り替え、価格優位性を出すことを主眼に置いた商品開発を行っていましたが、そこからお客さまの視点を入れたオリジナル商品の開発へと変更するのは当然の流れでした」

カインズ 商品本部ライフスタイル事業部
オフィス・家庭用品部部長代理
清水 政良さん

カインズはホームセンター(HC)業態として、工具や木材からインテリア用品、グリーン、生活雑貨、ペット用品、食品など幅広いカテゴリーを取り扱う。共通しているのは「DIY」の精神だ。そしてDIYを提案できるのはHCならでは。ただ単にDIYをおすすめするだけではなく、くらし全体をDIYして、その中でも家事を楽しくしたり、時間を縮めるという提案が、楽カジのコンセプトの背景にある。

「家事を楽にして、浮いた時間で自分らしい時間を過ごしていただく。その結果、DIYでお部屋を自分らしくカスタムしてもらったり、グリーンを育ててもらったり…。家事そのもののやり方を、もっと自分らしくしていただくこともできるかもしれません」

そして開発者自身もいち生活者として、日々の料理や洗濯、掃除などの家事に関わり、その生活の中で「これって面倒だよな」「こうだったらいいのにな」という気付きを一つひとつ形にしていったのが楽カジアイテムの源流にあるという。

同社ではさまざまな商品を開発しているが、「楽カジというコンセプトに合っているかどうか」という点については、外せない大前提だという。時短をうたう商品の集積は、ともすると「アイデア雑貨売場」のようになりかねないが、具体的に工程や回数、時間を約30%削減ができなければ「楽カジ」を名乗ることを認めないという社内的なラインを明言することで、統一感を出すことに成功している。

「新商品の開発も行いますが、既存商品のブラッシュアップも欠かさずに行っています。たとえば20枚入りの商品を、毎日使う商品という観点で30枚入りに変更するとか、スポンジ置きの新商品に合わせて、既存のスポンジの形を変えるなど、商品開発には終わりがありません」と清水さんは語る。

カインズが楽カジという商標を登録したのは2014年。長年の積み重ねがあり、ラインアップされるアイテム数も豊富だ。

「はじめは点と点だったものが、線になり、最近ではちょっとした面になって、その面を“楽カジ”として提案できるようになりました」

2020年11月に発売されてから爆発的なヒットとなっている「まな板シート」。調理時のまな板洗いの面倒くささをなくす。

不満・不便の解消で既存商品の倍売れる

「これまでたくさんの商品を開発してきましたが、圧倒的にお客さまの支持を得られるのは生活の不便や不満を解消するためのアイテムです。ちょっとした改善で大幅に販売数が伸びたものもあります」

日常生活の不便解消を考えて開発したのが、ベストセラーとなった「パタラン」だ。「パタラン」はアルミの折り畳みランドリーラックで、大量の洗濯物を干すことができ、軽量で簡単に小さく畳んで収納できるのが特徴。

人気の「洗濯家具」パタラン

価格は7,980円からとそう安価ではないが、発売当初から爆発的な人気で、発売から6年たついまなおベストセラーとして売れ続けている。この商品の開発のきっかけは店頭での接客だった。

「店頭で室内用の物干しが欲しいとおっしゃるお客さまに接客をする機会があったのですが結局購入まで至りませんでした。何がネックなのかと尋ねたところ、(既存の商品は)組み立てるのが怖い。出しっぱなしにするのも嫌だ。簡単に収納できるといいのだけど、とおっしゃられた。そこから、たくさん干せて簡単に畳めるものがあれば売れるのでは?とおもいました」

別の製品の開発の際、メーカーにこのような商品をアルミでつくれないかと軽い気持ちで相談してみたところ試作品があがってきた。試しに新店で実験的に300個販売したところ、メディアに取り上げられたこともあり、あっという間に売り切れてしまったという。そう安い商品でもなかったので、はじめはさまざまな意見があったが、即増産へとかじを切った。

パタランはその後強度を上げたり、デザインのバリエーションを増やすなどのマイナーチェンジを続け、いまなお売れ続けている。家事を楽にしながら、素材や見た目を重視し、インテリアとしても見られるような洗濯用品をカインズでは「洗濯家具」と呼んでいる。

当たり前の不満や不便を掘り起こす

もうひとつ商品開発に関するエピソードをご紹介しよう。ほうきの定番売場を棚割り変更した際の話だ。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年6月号に!

ストック需要・簡便性ニーズで好調の大型ペットボトル・スティック飲料分析

今回は、POBデータの飲み物カテゴリーから、「お茶系飲料(日本茶・麦茶・中国茶・その他茶飲料などのペットボトル・紙パック)」、「コーヒー(レギュラー・インスタントなど)」の商品カテゴリーをセレクトして、新型コロナ感染拡大前(2019年)と新型コロナ感染拡大後(2020年)における、購買行動の変化を分析しました。

お茶系飲料46円、コーヒー157円購入単価アップ

上図は、「お茶系飲料」「コーヒー」におけるレシート1枚あたりの購入状況を2019年と2020年で比較したものです。平均購入個数に変化はほとんどみられませんでしたが、平均購入金額は「お茶系飲料」が、195円から241円に増加し(46円アップ)、「コーヒー」は、311円から468円に(157円アップ)に大きく増加していていることがわかります。

「清涼飲料」、「野菜ジュース」、「炭酸飲料」など、他の飲み物カテゴリーにおいても、30円~40円程度増加していました。

飲料メーカー各社が大型ペットボトルの製品の値上げを発表したのは、2019年4月であったため、その要因を探るべく、全国のPOB会員を対象とした「飲み物の購買行動に関するアンケート(2021年3月18日~19日、N=2015人、平均年齢53歳)」を実施しました。

その結果、コロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたことで、「自宅でお茶、コーヒーを飲む頻度が増えた」、「家族と共用するため、容量の少ない飲料よりも大容量のものを買うになった」といった声が多く挙がりました。他にも、新しい買い物様式の浸透により、密を避けるために特売やセールの機会が減少していることも、単価アップの要因として考えられることが推測されます。

また、お茶系飲料市場を牽引する緑茶飲料においては、2020年のオリンピック開催にともなう和文化への注目から、各メーカー緑茶市場の成長を予測し、同年の3月以降、「お~いお茶(伊藤園)」、「綾鷹(コカ・コーラ)」、「生茶(キリン)」、「伊右衛門(サントリー)」の4大緑茶ブランドのリニューアルが続きました。

その効果が消費者の購買行動にどう変化を与えたのか、次からは4大緑茶ブランドを例に、主力商品が同時期にリニューアルを実施した場合の消費者の購買行動を分析しました。

外出自粛・在宅勤務の影響で伸長したコーヒー市場

次からは、「コーヒー」における購買行動の変化を分析します。

「コーヒー」におけるレシート1枚あたりの平均購入金額を2019年と2020年で比較すると、「コーヒー<311円→468円:157円アップ>」と抜きんでており、「今までカフェでお茶をしていたが、自宅で過ごす時間が増え、ドリップ式のコーヒーを数種類購入するようになった」、「コーヒー豆も大容量タイプをストックするようになった」といった声がありました。

2020年は、新型コロナの影響で外出自粛や在宅勤務が広がったことにより、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーだけではなく、スティック飲料においては、350億円の市場規模が予想されるほど注目されています。他にも店頭では、ポーションやカプセルコーヒーマシーンに対応したカプセルなど、様々な用途や嗜好に対応した商品を手軽に購入することができます。

67.7%がスティックタイプ飲料を自宅に在庫

次からは、POB会員アンケートから、主にスティック飲料に着目し調査を進めます。

まず、スティック、ポーション、カプセルタイプの飲料を自宅に保有しているか尋ねると、およそ7割が「ある(67.7%)」と回答しました。その種類は(N=1364人)、最多回答は、「2種類(29.0%)」でしたが、半数近くが「3種類以上ある(46.0%)」と回答しました。

コメントからは、「レギュラーコーヒー、インスタントコーヒー、カフェオレスティックなど、コーヒーのラインナップを充実させている」、「在宅勤務中は、簡単に飲めるポーションやスティックのコーヒーなどを休憩時間に飲んでいる」など、複数の種類をストックし、仕事中やリラックスタイムなど、シーンに合わせて飲み分けをしていることがわかります。

また、豊富な種類から自分の好みにあった商品を見つけることができるため、2人に1人が「自分専用のものがある(48.8%)」と回答し、パーソナル化が進んでいることがわかりました。

ネスカフェ エクセラにみる、スティックタイプコーヒーのバラエティー

最後に、様々な商品のラインナップがあるコーヒーブランド「ネスカフェ エクセラ(ネスレ日本)」のレシートから、商品タイプ別の構成比を分析しました。注目のスティックはどれだけ購入されていたのでしょうか。

上図は、2020年の「ネスカフェ エクセラ」ブランドの購入レシート(N=10,282枚)の商品別の構成比を表したものです。主力は「ネスカフェ エクセラ(47.0%)」や「ネスカフェ エクセラ 詰め替え(11.3%)」などの、瓶や袋タイプがおよそ6割を占めています。

注目すべきは、スティックの構成比です。「ネスカフェ エクセラ ふわラテ(18.3%)」「ふわラテ ハーフ&ハーフ(6.6%)」、「ネスカフェ エクセラ スティック(4.5%)」、「ふわラテ まったり深い味(3.7%)」で(計33.1%)3割を越え、現代人のニーズ・コロナ後のライフスタイルの変化に応える飲料として、広く受け入れられていることがわかります。「カフェ気分を味わうために飲むようになった」など、家庭で簡単に本格的な味が再現できるところも魅力につながっているようです。

今回の調査結果から、新型コロナの感染拡大による飲み物の購買行動の変化として、在宅時間が増えたことにより、家族でシェアして飲むために、複数カテゴリーの大型ペットボトル購入機会の増加だけではなく、コーヒーの飲用シーンの増加にもつながり、イエナカ消費にあった購入が拡大していることがわかりました。

中でもコーヒーにおいては、レギュラーコーヒーやインスタントだけではなく、スティックなど、様々な製品から、仕事中やリラックスタイムなど、様々なシーンや嗜好に合わせて、自分好みのものを楽しんでいることがコメントからうかがえます。

また、新しい買い物様式の浸透により、「買い物に行く回数が減り、いろいろな種類の飲み物を買い置きをするようになった」といった声も多く、身近な場所で購入できる飲み物においても、ストックする傾向があるようです。自宅での飲用・ストックのしやすさだけではなく、持ち運びニーズにも対応しているスティックは、密を避けるためにキャンプなど、屋外でのレジャーが人気を集めていることから、さらに市場の拡大が予想されるでしょう。

 

(※POBデータ…ソフトブレーン・フィールドによる、 全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から独自に収集する、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ(以下、POBデータ)」。リアル消費者購買理由データベースとしては国内最大規模の月間300万枚のレシートを収集したもの(提携サイト含める))。

[調査概要]
・POBアンケート N=2015人
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター
調査日時:2021年3月18日~19日
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

・POBデータ分析は図表内に調査概要を記載。
①お茶系飲料とコーヒーの購入状況(レシート1枚あたり購入単価)
③「ネスカフェ エクセラ」ブランドレシート全体に占める商品別構成比

リアル店舗は「遊び場」だ!「オーサムストア」最大級の旗艦店が渋谷にオープン

デザイン性の高い生活雑貨を低価格で提供する「オーサムストア」(運営:レプレゼント)。全国に60店舗を展開する同チェーンが、2021年3月12日、「オーサムストア トーキョー」をオープンした。今後拡大を目指す同社の商品をフルラインアップした注目のグローバル旗艦店舗だ。(MD NEXT編集長 鹿野恵子/月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

デザイン性高い生活雑貨をEDLPで展開

東京屈指の繁華街、渋谷センター街の奥にオープンした「オーサムストアトーキョー」は、1982年創業のレプレゼントが運営する低価格生活雑貨店「オーサムストア」のグローバル旗艦店だ。売場面積は1階約83坪、2階約114坪、計200坪弱と同業態都内最大級。ニューヨークを彷彿とさせる内装の店内に、約5,000SKUの生活雑貨を展開する。

1階の内装はニューヨークの実在する地下鉄駅をイメージ

まず店舗の全体像を紹介しよう。人通りが多いセンター街に面した1階、入店してすぐのコーナーには、「デイリーオーサムプライス」というキャッチコピーの下、EDLP(エブリデーロープライス)のお値打ちアイテムを集積。オープン時にはおしゃれなデザインのボックスティッシュ(5パック)が298円で展開されていた。

店頭では「オーサムプライス」というタイトルで低価格の商品を訴求。写真はロットが大きいため「念願かなって」開発となったオリジナルの国産ティッシュペーパー。5パックで298円

オーサムストア トーキョーでは限定・先行アイテムを積極的に取り扱う予定だが、このアイテムもそのひとつ。別コーナーには台所用品と重曹、セスキ、クエン酸、オキシウォッシュ(酸素性漂白剤)を各98円で取り揃える。ユーモラスでおしゃれなパッケージは、これまで掃除にこれら消耗品を使ったことがないお客も手に取ってみたくなるような雰囲気だ。

台所まわりの生活用品も「オーサムプライス」でくくり店頭で訴求。98円で購入できる重曹やセスキは、これらの消耗品を使ったことがないお客の入門に最適。パッケージのビジュアルもユニーク

1階奥の平台で大きく展開されていたのはお弁当用品コーナー。「オーサムライフ スプリング」と題し、弁当箱、おかず用のケースなどお弁当用のおしゃれなアイテムを、自宅などでのお花見提案と関連付けた。季節を訴求したプロモーションを目立つ場所に展開することで、売場に新鮮な印象を与える。

お弁当用品を「オーサムライフ スプリング」としてくくって提案。季節を感じさせる売場に

ビンテージ加工が施されたアメリカ風家具も陳列。ただしこれらは店舗に在庫を持たず、オンライン限定での販売となっている。コロナ禍を背景に好調な販売を続けるスマートフォンの三脚やLEDライト、クリップホルダーなどのガジェット類は、100円ショップなど他業態でも販売されているが、オーサムストアらしいセンスあふれるパッケージで差別化を図った。

コロナ禍がスマートフォンアクセサリーの人気を後押し。他業態でも販売されている商品だが、オリジナル性の高いパッケージでつい手に取ってしまう

なんとなく行く店から目的買いの店への転換を志向

写真手前がフィットネス用品、奥がインテリア用品の集積。いずれも安価で手軽にエントリーすることができる

2階にはマグネット効果を見込み、キッチン用品やフィットネス関連など目的性の高い商品や、インテリア用品など「おうち時間を楽しむ」アイテムを展開。オーサムストアといえば、ニューヨークの倉庫をイメージした武骨な内装が特徴的だが、こちらの店舗のキッチン用品売場は床や棚にウッドを取り入れ、ナチュラルな雰囲気。

今後より強化していく台所用品売場。これまでアイアンとモルタルという武骨な印象の売場を志向していたが、こちらはウッディで少しやわらかい雰囲気
コーヒー関連の商材と焼き菓子用のケースをクロスで展開。コーヒーでいえばステンレスのコーヒードリッパーからコーヒーメーカーまでひととおりの用具が揃う
新商品の軽量磁器は見た目は高品質ながら驚くほど軽量

「今後、長期にわたりお客さまに支持していただくためにも、(バラエティ雑貨だけでなく)生活雑貨、なかでもキッチン雑貨に注力していきたい」と、レプレゼント取締役運営部部長の堀口周作さんは語る。

「現時点でのオーサムストアは、“なんとなく遊びに行ってみたら面白い商品があって購入する”という位置付けの店。これからはそうではなくて“〇〇を買いにオーサムストアに行こう”という目的買いの店に移行していなければなりません。そのためにも今後はカテゴリーを広げるよりも、カテゴリー内の商品をより深めていくという方向にシフトしていきたいとおもっています」

取締役 運営部部長
堀口 周作氏
 

現在オーサムストアのメイン客層は20代後半〜40代の既婚女性。そこで低価格のコスメやアクセサリー、文具など、若い客層が手に取りやすいカテゴリーを大きく打ち出すことで…

同社のSNS活用法など、続きは月刊マーチャンダイジング 2021年5月号で!