韓国コスメ独自の機能が日本で受け入れられた
—韓国コスメが絶好調の理由について教えてください。
松本 まず、当社では、韓国コスメは、2003年頃に「BBクリーム」を第1弾として取扱いました。当時の日本での認識は「一過性の商品」だったのですが、その後、韓国コスメの低・中価格帯という特徴が日本で受け入れられるようになり、市場が拡大したという背景があります。
さらに、直近2、3年のコロナ禍という状況では、コロナ前でしたら韓国旅行に行って韓国コスメを買うことができたのですが、いまは行けないので韓国コスメの輸入が増えているという状況です。
コロナ禍での韓国コスメの伸長は、「ツボクサ」という傷治療で使われる植物から抽出したエキス「CICA(シカ)」の人気から始まりました(写真1)。現在は、シカクリーム、シカフェイスマスクなどが発売されています。
シカは、「敏感肌の人のマスクによる肌荒れケア」という名目で発売され、日本ではかなり受け入れられました。それまで日本ではシカのコスメはなく、現在は日本でも徐々に増えてきていますが、韓国コスメのシカが一番売れているという状況です。
Z世代がSNSを通して、K-POPアイドルの真似をするなどして韓国コスメの人気を広げています。韓国のアイドルがSNSに顔写真をアップし、使っているコスメが話題になることもあります。
韓国の男性アイドルの影響もあり、BBクリーム、コンシーラー、眉毛のケアなどのメイクを使用する若い男性が増えています。メイクをする男性の増加は、韓国製だけでなく日本製のコスメでも見られる傾向です。
韓国コスメの特徴は商品開発力だと思います。もともとBBクリームは「肌の美しさを損なう傷や欠点をカバーする」という発想で開発された商品で、現在の「気になる部分に塗る」という機能が人気になりました。また、ティントリップは「唇の角質層を染めることで色が落ちにくい」というリップです。
それらは日本にはなかった発想です。そうした韓国コスメの独自の機能が日本で受け入れられてきているのだと思います。
多数の韓国コスメを取扱う井田両国堂
—小売業との取組みについて教えてください。
松本 当社では、多数の韓国コスメを取り扱っています。SKU数自体はどんどん増えてきています。
韓国では、大小合わせて1万社以上の化粧品メーカーが存在しており、新興メーカーを含め、日本進出をかなり狙っているらしいので、数年以内に、日本に来る韓国のメーカー、SKU数はさらに増えてくるだろうと思います。
当社が取扱っている韓国コスメの中では、「rom&nd(ロムアンド)」「TIRTIR(ティルティル)」「VT」などが売れています。
小売業の売場を見ると韓国コスメのコーナーは確実に増えています。韓国コスメは今のところ売場の適正スペースは分かりませんが、最大限の本数は取ろうと思っています。坪数的に4本しか取れない店なら4本で展開しますし、10本以上のパターンもあります。
また、韓国・中国・タイ・台湾などのコスメを集めた「アジアンコスメ」も、ドラッグストア(DgS)、量販店の売場は拡大しています。
コロナの影響でインバウンドがなくなったので、売上を補うという意味でも、韓国コスメ、アジアンコスメを検討する小売業は増えていると思います。
当社では、韓国コスメに限った話ではなく、日本のメーカー様とも店舗に導入する前に商談を重ねます。商談では、まず、ブランドイメージを損なわれないようにプロモーション展開について話し合い、店頭での露出を増やし、ブランドや商品の希少性をお客様に訴求し、商品の認知度を高めるという基本戦略です。
プロモーションはブランドを中心に陳列することもありますし、「プロジェクト陳列」にても実施します。
プロジェクト陳列では、棚割のテーマを決めて、たとえば、「UVケア」というテーマならば、様々な日焼け止めの関連商品をエンド、アウト展開で陳列し、お客様に分かりやすいように商品の機能等を訴求します(写真3)。
今年はジェルタイプ、スティックタイプ、スプレータイプのUVケアがかなり売れていまして「タイプ別」という切り口で分類することもあります。ほかには、室内、屋外、旅行などの「シーン別」で分類することもあります。お店に合った形のテーマ、切り口でプロモーションを実施して頂いております。
また、「浴衣メイクHow to」というテーマでは、韓国コスメも陳列しています(写真4)。当社が提案するテーマ軸のプロモーションによって、商品価値を高める戦略です。
トレンドの変化が早い韓国コスメに素早く対応できる仕組みづくり
—韓国コスメの定番化についての考えを教えてください。
松本 東京エリアの店頭を見ると、韓国コスメの定番化は主流になってきていると感じます。特に若い人はスマホに慣れており、立地による情報格差が少ないので全国で売れると思います。
もともと韓国コスメは、バラエティストアで最初に展開していたのですが、最近ではDgSでの展開もかなり増えています。
韓国コスメはトレンドの変化が早いので…。
続きは、月刊マーチャンダイジング2022年8月号でご覧ください!