「月刊MD 2022年11月号」の特集は「ドラッグストア本気のSDGs」!JACDSの活動と、東北で際立ったSDGs活動を進める薬王堂HDの取り組みを紹介します。
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他業態に先行して実施したレジ袋有料化
—JACDSのSDGs活動はどのようにスタートしたのでしょうか。
德廣 池野隆光会長(JACDS会長/ウエルシアホールディングス会長)が「尊敬される企業集団を目指す」というスローガンを掲げた2019年6月、当協会内にSDGs委員会が発足しました。本委員会では「業界全体でSDGsの推進を行う」ことをテーマとして活動しています。
具体的にはプラスチックごみなどの環境汚染問題に業界として取り組み、DgSにおける3R(詳細は後述)を検討することを掲げています。また、返品削減問題や、今後の物流問題に対する取組みも検討しています。
初代の委員長は、ココカラファイン社長(当時)の塚本厚志さんが務められ、私は副委員長として塚本さんをサポートする形で委員会の立ち上げに従事しました。2021年4月から、私が2代目委員長として活動を進めています。
塚本さんが委員長を務められていた2019年、2020年は立ち上げの時期として、レジ袋有料化の前倒し実施、環境省との3Rキャンペーンへの取組みなどを実施しました。
2019年の秋口から取り組んできたのがレジ袋有料化への対応です。
レジ袋有料化への取組みは、ほかの環境問題対策に比べると、小売業がイニシアティブをとって進めることができるものですので、正式に法改正がされる2020年7月に先駆けて同年4月からDgSでスタートできないかと議論しました。幸いにしてウエルシアさんをはじめとするイオングループさんは非常に考え方が進んでいて、いち早く賛同をいただくことができました。
また、統合前のマツモトキヨシさん、ココカラファインさんからも前向きな賛同をいただけました。大手のリーディングカンパニーさんに即決いただけたこともあり、当協会としても4月1日からレジ袋有料化をスタートしました。
当時の環境大臣は小泉進次郎さんだったのですが、いち早くレジ袋有料化を進めていたJACDSに、消費者からの反応を知りたいとヒアリングを実施されました。
食品スーパーは、お客様自身が袋詰めをするから、マイバッグに対する抵抗感も少ないように思えるのですが、コンビニのようなちょっと立ち寄って買物をするような業態ではハードルが高いのではないかと考えられていて、消費者の方のDgSでの状況に興味を持たれたのです。
トモズやマツモトキヨシさん、ココカラファインさんは、都内に小型店を展開していて、コンビニと同じような使われ方をすることも多いのですが、それでもレジ袋有料化に伴うクレームは一切起きておらず、拍子抜けというぐらいスムーズでした。
私たちが思っていた以上に消費者の皆さんの意識の方が高かったのではないかと思います。地球温暖化を防ぐため、プラスチックごみを削減する必要があることは、お客様はおおむねご理解なさっていらっしゃいます。
それを聞いて小泉環境大臣も非常に納得されたようで、リアルの現場で先行してレジ袋有料化を実施したことを非常に評価してくださいましたね。
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協会の参画前後で30%申し込み増の3Rキャンペーン
德廣 2020年度のもうひとつの大きなテーマは3Rキャンペーンへの参画でした。
環境省は2017年から3Rキャンペーンを実施しています。3Rとは「リデュース(ごみの発生抑制)」「リユース(再使用)」「リサイクル(再生利用)」のことです。
3Rをより多くの人に知ってもらうため、廃棄量の少ない詰め替え・省包装商品や、リサイクル資源を使用している商品を、キャンペーン参加店舗でお買い上げいただくと、抽選でいろいろな景品が当たるというものです。参加企業は当然該当商品をキャンペーン期間中エンドに積むなどします。
もともとココカラファインさんなどを含めた加盟企業さんたちが、この3Rキャンペーンに参画していたのですが、2020年からJACDSとしてもこの活動に応援団体として参加していくことにしました。
面白いなと感じたのが、キャンペーン終了後参加者に対して取ったアンケートに、「(当時はキャンペーンに参加していなかったはずの)会員企業の店舗で購入して申し込んだ」という回答があったことです。
どうやらお客様はDgS業界全体でやっているキャンペーンのように勘違いなさってそのような回答をされたようでした。
そこで当協会で議論する際に、「お客様にそう思っていただいたのであれば、むしろ参加企業をもっと増やして、キャンペーン実施店舗数を増やすのがいいのではないか」という話になり、協会内での参加企業を募ることにしました。
私たちが2020年度に参画を始めた1年目は前年比で178%、2年目の2021年度は同130%と大幅に参加店舗数が増えたそうです。食品スーパーなどの他業態も含めますが、2021年度にはキャンペーン全体で約1万5,000店舗が参加したと聞きます。今年はもっと増えるのではないでしょうか。2021年度のドラッグストアショーでは、3Rの啓発セミナーも実施しました。3Rキャンペーンは2022年も10月からスタートする予定です。
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具体的なアクションを重視。とにかく「やってみる」
—次々と具体的な施策を実行されていますね。
德廣 はい。環境の話ですから、全社足並みが揃うまで待つのは得策ではありません。できることから着手するのが重要です。私たち小売業は店頭という現場を持っています。
規模は大小ありますが、委員会で何かやることを決めたら、まずは期限を決めて実行することを重視しています。何かトラブルが起きれば、そこから改善していけばいいのです。
3Rキャンペーンも、2020年度はマツモトキヨシ、ココカラファイン、ウエルシア、トモズのSDGs推進委員会メンバーの4社でまずそれぞれが個別に企業として参加し、結果が出たのでJACDSで横展開して、協会としての参加企業を増やしてきました。
参加に間に合わなかった企業さんも、何か悪意があるわけではなく、オペレーションの徹底が難しいなど企業ごとの理由があるのだと思います。そういう企業さんに対しては、時間をかけて準備していただいて、また次の機会には参加しましょうというようなスタンスで、徐々に増やしている感じです。
—業界全体をリードするという意味では、業界団体には非常に存在意義がありますね。
德廣 そうですね。ですから私たちも「みんなが揃わないからやらない」というスタンスではなくて、「やってみよう」という話が少しでも出たら、挑戦するという考えでやっています。
協会が強制力を持ってやるというのではありません。そもそもSDGsの話は、主体性を持ってやらないと根付きません。やれと言われてやることではないと思います。
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JACDS関与でメーカー横断キャンペーンが実現
—今年度の活動について教えてください。
德廣 引き続き環境省3Rキャンペーンを応援団体として支援するのはもちろん、「サーキュラーエコノミープロジェクト(CEP)」と「食品ロス削減啓発キャンペーン」も実施してきました。
CEPは、販売した商品の空き容器を店頭で回収する共通のプラットフォームを構築する取組みです。
2021年10月からJACDSのSDGs推進委員会メンバーだけではなく、花王さん、P&Gさん、ユニリーバさん、ライオンさんなどの主要日用品メーカーさんにもお声掛けして推進協議会を組織し、検討を進めてきました。2022年6月から半年間は、横浜市内の31店舗で日用品の空き容器の店頭回収実証実験を実施しています。
この取組みは、実はもともとユニリーバさんからJACDSへの回収ボックス設置を通じた協同での取り組み提案があったことがきっかけです。当協会から他のメーカーさんに案内し、業界全体の取り組みとして進めてきました。
これまでメーカーさんが主導でやっていたときは、小売業の賛同が得られず、店頭への回収ボックス設置がなかなか進まなかったようなのですが、当協会を通じて進めたことで、早々に実証実験の実現に至ることができました。
まだ結果の数字は出ていないのですが、今後の展開は実証実験終了後の12月以降に議論して決めていきたいと考えています。
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SDGsに取り組むこと=「お客様に選ばれること」
德廣 本年度のもうひとつのテーマが「食品ロスの削減啓発キャンペーン」です。2021年10月から12月まで、食品を扱うすべての店舗で、①消費期限が短い商品に対する「てまえどり」の啓発を行ったり、②返品ルールの変更による返品削減に挑戦したりしています。
「てまえどり(陳列された商品を賞味期限の短い前の方から購入していただくこと)」に関しては、もともとコンビニさんが取り組まれていたので、二番煎じだという声もあったのですが、少しでも良いことであればまねして業界として取り組むべきと考えました。返品ルールの変更に関しては、ルールが緩い企業があると、そこだけに古い商品が集中してしまう可能性があります。業界全体でどのように調整していくかを検討している状況です。
食品ロスについては、食品の取扱いが多い加盟店さんの賛同も得られると、一気に話が進むと思います。
—これは話が広がれば非常に大きな取組みになりますね。
德廣 そうなんです。DgSだけでやるのがいいのか、行政を巻き込むのがいいのか、スーパーマーケット業界と連動するのがいいのか…。まだ決め切れてはいないのですが、DgSでの食品の取扱いが非常に大きくなってきていますので、我々もその分責任が発生してきていると認識しています。
—返品削減にも取り組まれていると伺いました。
德廣 はい。まだ協会としての具体的な取組みにはつながっていませんが、食品ロスに限らず、DgSには他業態と比較すると返品率が高いという課題があると考えています。
—もともと商慣習として返品が許容されているという背景もあります。
德廣 しかし返品は、返品のためにトラックが走り排気ガスを排出し、メーカーさんは返品を焼却しなければならず、何ひとつ環境にとって良いこと…」
〈取材協力〉