店長の性格を把握した人型AIアシスタントが発注業務などコンビニ店舗運営をサポート

前号ではCGアバターを接客に活用するローソンの事例を紹介した。ローソン専属のスタッフが、店舗に設置されたモニター画面から、オンライン上で来店客に話し掛けるシステムで、その際、スタッフは自身の顔と声を、設定されたキャラクターに変換して対応する。この人型のCGはスタッフを介するが、今度は人を必要としない人型のAIがファミリーマート(ファミマ)に登場した。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

過去のデータ分析と予測から機会ロスと廃棄ロスを防ぐ

ファミマは店長業務をサポートする「人型AIアシスタント」を導入、2023年3月に1,000店舗、同年度末までに5,000店舗へ導入すると発表した。このキャラクターは、女性がレイチェル、男性がアキラと名付けられ、個店ごとの運営状況に合わせた、最適なデータを提供していく。それにより、店舗の省力化と店舗運営力の向上につなげていくとしている。なぜ今、人型AIアシスタント(以下、レイチェル)なのか。

「市場の急激な変化にともない、お客様ニーズの多様化を痛感、経営環境に大きな影響を与えている。とくに、ここ数年来の人手不足。こうした変化に対応して、店舗運営をますます効率化していくことがチェーンの課題と認識している」(ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村弘之氏)

そうした課題の一部をデジタルで解決できないものか、ファミマは親会社の伊藤忠商事からクーガー社を紹介してもらい、3社で取り組んできた。レイチェルは、クーガー社の持つ音声認識技術、ゲームAI技術、データを処理する検索技術などを搭載、店長の特性や性格などに合わせたコミュニケーションを可能としている。

店長や発注業務を担当するスタッフは、専用のタブレットを持ち、レイチェルと対話を試みる。例えば次のようなやり取りをする。

レイチェル「お疲れさまです、いつもありがとうございます、前日のデータを確認しますか」
店長「はい」
レイチェル「前日のデータを表示します、店舗全体の前年比が100%を超えました。この調子でいきましょう」

売上を大きく左右するデイリー商品に関しては……

店長「パスタの品揃えを見せて」
レイチェル「はい、品揃え確認グラフを表示します、この画面では、今週の品揃え状況が確認できます。グラフをご覧ください。紫がこのお店の平均の販売数で、黄色が廃棄数です。続いて緑は、立地の似た店舗の平均販売数を、このお店の日商に合わせて計算した基準値です。熟練のスーパーバイザー(SV)さんが考案したグラフです。安心して使ってください」

店長はレイチェルとコミュニケーションを図りながら発注数などを決めていく(発注端末は別に用意している)

レイチェルは、このような詳細なデータを、グラフを用いて分かりやすく表示する。そのデータを読み込みつつ、売場の店長、あるいはスタッフは発注数をレイチェルと一緒に調整する。

発注の際に注意すべき二つの点、すなわち機会ロスと廃棄ロスが起こらないようにレイチェルが発注ポイントへの注意を促す。こうした双方向のコミュニケーションにより、店長は、店舗運営の円滑化を図っていく。

競争意欲や学習意欲など店長の志向に合わせて提案

レイチェルのコミュニケーション能力の特徴は、一つ目に前述のような「双方向のコミュニケーション」の実現にある。毎日大量のデータを分析、確認をすることのみならず、販促計画を読み込みながら、個店に応じたアドバイスができる。

「先週のおむすびの前年販売費が150%と好調でしたね」と個店の傾向値、あるいは売れ筋の販売状況から「スパムおむすびが好調」といった細部にわたって情報提供できる。

二つ目に業務のリマインドを可能としている。レイチェルが店長に対して能動的な問い掛けができる。例えば、キャンペーンの開始時に「販促物は取り付けていますか」と語り掛けてくれる。店長は「あっ?忘れていた、すぐやるよ」といった気づきを得られる。

三つ目にレイチェルは、相手に合わせたコミュニケーションを取ることを可能としている。例えば競争意欲の強い店長に対しては、自店の立ち位置が分かる情報を提供する。重点商品に関して、地域内の自店の販売順位を、あえて提供することで、やる気(負けん気)に火をつける。

また、学習意欲の強い店長には、新しい知識につながる情報を提供する。「サンドイッチの詳細データの新着がありますよ」とレイチェルが問い掛けるなどして、データの頻度を高めていくことを可能としている。

あるいは承認欲求の強い店長には、ねぎらいの言葉を述べる。「いつも使っていただいて、ありがとうございます。これからも頑張っていきましょう」といった具合に、相手に合わせて、表現の仕方や提供する情報を変えていくようにしている。

こうした店長の性格や姿勢をつかむために、事前に会話形式のアンケートを実施した。その仮説をもとに、最初はレイチェル側でコミュニケーションを店長に合わせていき、それが適切であるかどうか見極めていく。レイチェルが新商品の説明をしたときに、反応があるかどうか、反応が薄ければ、学習意欲の比較的弱い店長として修正をかけていく。

「ひと口に店長といっても個性も姿勢も人それぞれ。経験も習熟度も異なる。店舗にはあまたの情報やデータはあるが、日々の業務が忙しく、活用せずに埋没することもある。その状態を解消するために、レイチェルが相手に合わせて、いつでも欲しい情報を、欲しいタイミングで提供することができる。これにより店長の業務をしっかりとアシスタントしていく」(中村氏)

レイチェルの導入により、店舗を指導する立場のSVの仕事は、どのように変わるのであろうか。まず、SVの一部業務の代替が可能になる。担当店舗全店に共通することは、定型化しながらレイチェルが代替、一方でSVは個店に寄り添った売場の経営指導に注力する。

中村氏は次のような効果を期待する。

「個店に指導するにあたり、SVに資料を作成する時間を、けっこう長く取らせてしまっていたと感じる。そこで、資料のデータをレイチェルがカバーできれば、SVの業務を削減できるし、先にレイチェルが店長とコミュニケーションしておけば、その後のSVが売場をどう変えていくか、より高い水準で話もできる、その意味では、2割から3割の業務を削減できると想定している」

単にSVの業務を肩代わりするだけでなく、それにより浮いた時間を、より高度な指導に充当できる。

​​AIと人間が、どう仕事を分担し生産性の向上を図るのか?

実際に人型AIアシスタント・レイチェルの開発に携わったクーガー社の代表取締役CEOの石井敦氏は、その特徴を開発の視点から次のように説明する。

もう“一人”のアシスタントのアキラ。AIは自ら学習して内容を深めていくことが可能。SVの仕事は、より高度にしていく必要がある

一つ目が「アクセスの双方向性」。既存のコンピュータは、ユーザー主体で情報を取りに行く必要がある。一方でレイチェルは問い掛けや提案を行い、これにより店長にリマインドや気付きを提供でき、自然に双方向コミュニケーションを生み出すことができる。

二つ目が「行動促進力」。文字、画像に加えて、音声、表情、動き、距離感を織り交ぜて伝達する。

「まさに人間と同じように五感に訴え掛けていく。それにより、情報の重要度や水準、緩急が伝わる。学校の先生に言われたポイントとか、友だちが近づいて話した内容は非常に印象に残ったという経験は誰でもあると思う。その結果、影響力が高まり行動促進につなげられる」(石井氏)

三つ目が「個別支援能力」。店長の習熟度であったり、志向性であったりをレイチェルが理解、その店長それぞれに合わせて個別支援をしていく。前述のように、レイチェルは店長の意欲や欲求に合わせてコミュニケーションを図ることを可能としている。

コツコツと積み上げる仕事に力を発揮する店長には、これまで続けてきたこと、積み上げたことを、レイチェルがよく理解し、上手に問い掛けてサポートしていく。

ファミマは2年前からレイチェル活用の実証実験に取り組んできた。業務の漏れをなくすことで、当該カテゴリーの2%から5%の売上増に寄与したという。当面は店舗の利益に大きく影響する、米飯やサンドイッチ、調理麺、総菜、キャンペーンの展開をテーマに店長を支援していく。

AIと人間が、どう仕事を分担して生産性の向上を図るのか、コンビニのオペレーション改革が本格化していく。

ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村 弘之氏
クーガー代表取締役CEO 石井 敦氏

「営業改装」で閉店売上ロスなく店舗年齢を若返り化

「営業改装」とはエイジスマーチャンダイジングサービスがそのノウハウを確立させた、店舗を閉店することなく営業しながらの全面改装のことである。ドラッグストア(DgS)に関していえば、出店攻勢により店舗数を増やす企業が増える中、既存店改装の重要性はますます高まっている。これを支える同社の事業をリポートする。(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

新規出店と店舗改装はDgSの成長戦略の両輪

[図表1]DgS出店・退店状況(2022年期末店舗数順)

図表1は上場DgSの店舗数、出退店状況である。4桁チェーンが6社、非上場の富士薬品グループ(店舗数1,372)を加えるとDgSには4桁(1,000店舗以上)チェーンが7社存在する。出店数も多く5社が100店以上出店、3社が純増で100店舗を超えている。DgSが出店をベースに成長してきたことは間違いない。

一方でこれだけの新規出店で店数が増えれば、顧客ニーズや買物行動の変化に合わせて改装すべき旧店も相当数存在することになり、店舗改装は新規出店と同じくらい重要な成長戦略となる。

改装には、カテゴリーや部門のみを改装する部分改装と店舗全体を改装する全面改装がある。ツルハホールディングス(HD)は改装には積極的で店舗年齢(一度全面改装すると店舗年齢はゼロ歳になる)に基準を設け、これを維持することを重視している。決算資料によれば2022年5月期は既存店改装を241店舗で行っている(部分、全面の種別表記はなし)。ウエルシアHDは2022年2月期の全面改装が88店舗、クスリのアオキHDは2022年5月期、前期の総店舗数728店舗の約16%に当たる120店舗を出店、大手DgSの中ではトップクラスの出店ペースである。2023年5月期の出店は90店舗とペースを抑制し、200店舗の改装を計画している。うち約半数は本拠地である北陸3県の店舗を対象としており、出店時期が早く、加齢の進んだ店舗を本格的にテコ入れする構えである。

こうした数値からは、積極的に出店を行い成長している企業は店舗年齢に一定の基準を設け、改装も計画的に行い店舗年齢の若年維持を進めていることが分かる。また、こうした出店と改装を繰り返してきたからこそ、大手に成長したともいえる。

店舗数が増えるほどに、既存店の活性化と成長は企業の命運を握ることになり、ライフスタイルの変化が大きく、小商圏内での競争が激しい現在は特にその必要性は高い。既存店活性化の柱となる手段が店舗改装である。

店数を増やさず、デジタルと改装で成長を続けるウォルマート

[図表2]ウォルマートの米国内設備投資額の推移

図表2はウォルマートの米国内設備投資額の推移である。「Eコマース・サプライチェーン・テクノロジー」に最も多く投資しているが、「既存店改装」にも全投資額の3割程度を充てている(直近32億7,800万ドル、130円換算で約4,260億円)。新店への投資は1%台で、店舗数を増やすことが同社の成長戦略ではないことを示している。

年次報告書によると、ウォルマートの米国内の店舗数は①スーパーセンター(SuC)、②ディスカウントストア(DS)、③サムズクラブ(コストコのような会員制業態)、④NSCなどの小型業態4つの合計で、2022年1月期は前期とまったく同じ5,342店舗である。前期よりSuCを3店舗、サムズクラブを1店舗増やして、DSを4店舗減らすという小幅な内訳変更はあるものの店舗数は変わっていない。一方で、米国内事業の売上高は2022年1月期が3,932億4,700万ドル(1ドル130円換算で51兆1,122億円)で前期比6.3%増となっている。同社は出店で商圏を広げることで売上拡大するのではなく、デジタルと改装に集中的に投資して既存店、既存商圏を深掘りしていくことで売上を伸ばす段階に入っている。

長期的に見れば、人口減少問題や出店飽和などで日本の小売業もいずれその段階に入ると思われ、いまのうちからデジタルと改装のノウハウ構築に向け投資すべきである。

閉店して作業する全面改装には大きなロスが生じている

エイジスマーチャンダイジングサービスは小売業の売場づくり、改装などを支援するリテールサポート企業だが同社の業務の中で、最近注目されているのが店舗を閉めることなく、営業を続けながらの改装=「営業改装」である。

「弊社は10年以上前から、『営業改装』を提案しています。DgSは最近食品売場の拡張という部分改装のニーズが高く、その機会に他の売場も見直して店舗全体を改装するというパターンが増えています。これまで小売業の改装はメーカー、ベンダーの応援を仰ぎつつ自社スタッフと協働で店を閉め、大量の人時をかけ短期間で行うパターンが主流でした。しかし、最近、コンプライアンス問題や人員確保が難しくなっていること。店舗を閉めることで生まれる売上ロスを防ぐために、弊社の『営業改装』のニーズは高まっていると思います」(エイジスマーチャンダイジングサービス株式会社 代表取締役社長 仁田 善郎氏)

[図表3]「従来型改装」の問題点

仁田氏の発言にあるように、小売業は新店開店や既存店改装の際、取引先と自社スタッフで延べ数百人規模の混成チームをつくり、2〜3日という短期集中で作業を終わらせるパターンが多かった。そして、今もこの従来型手法は残っており、いくつかの問題をはらんでいる(図表3)。

まず、コンプライアンス問題である。大規模な取引先従業員の動員が独占禁止法で禁じられている「優先的地位の濫用」に違反するという指摘は度々なされ、これを改善するために小売業側は「応援手当」の支払いなどで対応してきた。たが、その額が適正なのかどうかなど依然グレーな部分は残る。

次に改装ノウハウ、技術などの差から生じる完全作業問題である。リテールサポートの専門企業は、工期日程、作業計画に関する「全体設計力」が洗練されている。また、商品、ゴンドラを移動させる運搬ツールであるマテハンや仮設販売用の什器など実作業を通じて開発・改良された「高機能ツール」を持っている。さらに、安全確保などの「現場管理力」、そして、経験豊富なスタッフで構成された「チーム力」など、改装作業の実務能力はもちろん、改装に関する周辺業務の処理能力は高く、完全作業の実行を基本としている。

▲チームを組んで作業割当に基づき効率よく作業

自前で改装するとこうしたノウハウ、技術に差が出るのに加え「妥協」が生まれ、完全作業のレベルが落ちやすい。小さな「まあ、いいか」はチェーン全体の大きな損失につながり、さらに完全作業が行われなければ、正確な効果検証ができないという二次問題も生じる。

そして、もっとも問題なのは、改装で店舗を閉めることで発生する機会損失(売上ロス)である。例えば、坪当たり売上高が150万円で300坪の店舗なら年商4億5,000万円、日販は約120万円、改装のために3日間閉店すれば360万円の売上ロスとなり、年間100店舗改装するなら企業全体で3億6,000万円が失われることになる。

[図表4]営業改装実施店舗の売上推移❶(DgS)改装期間 2週間の場合
[図表5]営業改装実施店舗の売上推移❷(DgS)改装期間 1週間の場合

図表4、5はエイジスマーチャンダイジングサービスが実際に「営業改装」を手掛けたDgSの売上推移である。縦軸は改装前2週間の平均売上を100とした場合の売上の変化、横軸が期間となる。赤い線で囲まれた部分が改装期間で、図表4は改装工期2週間の場合、図表5は同1週間の場合でそれぞれ複数店舗で見ている。改装前後にセールを行っているので、山と谷ができているが、注目すべきは改装期間中でも売上は80〜85%以上を維持している点である。

同社の分析によれば、300坪のDgSの場合、2週間(実質作業日数10日間)の営業改装なら売上の約95%を維持、1週間(同5日)なら約85%が維持できる。2週間の営業改装による1日の売上ロスを5%とすると、日販120万円の例を当てはめれば、120万円×10日×0.05=60万円、100店舗改装で6,000万円のロスとなり、3日間完全閉店の改装で生じる3億6,000万円と比較すると、営業改装には3億円のインパクトがある。これを改装の原資と考えれば、その他従来型改装で生まれる弊害も考え合わせても、極めて合理的な投資ではないだろうか。

小売業は、改装計画とそれに必要な投資基準を持つべきだろう。

売上ロス対策と完全作業を目的に計画的、効率的に全面改装

それでは、エイジスマーチャンダイジングサービスによる営業改装は実際にどのような工程や手法によって行われのるかを見てみよう。

[図表6]営業改装のプロセス

図表6は営業改装に関するプロセス図である。まず、小売企業の担当部署、大手企業なら開店改装部とエイジスマーチャンダイジングサービスが密に連携するパートナーシップを構築する。計画的に頻度高く改装している小売企業の中には、同社のスタッフが常駐して協働態勢をとっている企業もある。

小売企業は工事の施工業者、什器業者などを手配、もっとも人時を要して改装の完成度を左右する商品の撤去と陳列が、エイジスマーチャンダイジングサービスの担当となる。

[図表7]マスタースケジュール例
[図表8]ステップ・バイ・ステップ例
[図表9]デイ・バイ・デイ例
[図表10]作業割当表例

営業改装に当たっては、まず「マスタースケジュール」を作成(図表7)、ここには自社の作業計画だけでなく、作業前の工事の施工業者との調整なども含まれる。次に「ステップ・バイ・ステップ」(図表8)というゾーン単位の週次計画を立て、さらに「デイ・バイ・デイ」(図表9)というゴンドラ単位の日次計画に落とし込む。作業は1〜2名のチームで担当、カテゴリーによって標準人時が決まっており、これをもとにチームごとに日々の作業割当表(図表10)を作成する。

営業改装で肝となるのは、短期間に多くの売場を閉めて集中作業するのではなく、適正な期間を決め少しずつ改装作業すること。先述の通り300坪のDgSなら2週間を掛けて改装すれば売上は95%程度維持できる。図表4、5で営業改装実施店舗の売上推移を見ているが、同等の売場規模なら1週間よりも2週間を掛けた方が閉店による売上ロスは少ないのがわかる。2,000坪クラスのホームセンター(HC)なら約6週間の営業改装で90%程度の売上が維持できる。

▲[写真1]改装中カテゴリーから売れ筋商品を選んで陳列する「ローランド什器」(自社開発)

さらに、同社の営業改装では、作業する売場を完全閉鎖するのではなく、Aランクなどの売れ筋商品は移動式の仮設什器「ローランド什器」(自社開発)に陳列して販売する(写真1)。これも売上ロス対策に貢献している。

ローランド什器以外にも営業改装で使用するツール類を写真2〜4で紹介している。

売上をなるべく落とさないこと、完全作業が実行されることを目的として、エイジスマーチャンダイジングサービスでは、図表6〜10で示したような細かな計画を立て進捗管理を行い、作業には各種専用ツールを駆使している。

▲[写真2]店舗の棚割データを登録すれば、JANコードをスキャンするだけでその商品をどこに陳列するばよいかが分かる「陳列用端末」
▲[写真3]どんな什器にも適用できるゴンドラ移動用の装置「ゴンドラスケーター」(自社開発)
▲[写真4]棚から商品を効率よく撤去する「バンカー台車」(自社開発)
▲[写真5]解体されたゴンドラの棚板や支柱などを入れて移動する「長尺パーツ用台車」(自社開発)

既存店の変化対応には宝の山が埋まっている

「日本では春と秋の棚替えや期末の一斉棚卸しのように短期集中型の売場作業が多いと思います。このやり方にはいい面もあるのですが、メーカー、小売本部側の都合という側面もあり、お客様や現場スタッフにとって必ずしも好都合なことだけではありません。改装にも同じことが言え従来の短期集中作業には課題が多くあるように思います。私たちが提案している『営業改装』は従来型の課題をクリアして、なおかつ今でも現場の声を生かして進化を続けています。

お客様の志向は目まぐるしく変わりますし、競合環境も変わります。既存店の売場はお客様や商圏の変化に対応することで、売上が上がる宝の山です。それを発掘するための手法が『営業改装』ですので、ぜひこれをご活用頂きたいです」(仁田氏)。

新規出店の勢いが止まらないDgSだが、これまでの歴史を見ても出店投資の償却が終わり利益の出ている古い店舗の改装を怠った企業はどこかで停滞を経験している。チェーンストアにとって、新規出店の原資は既存店の成長であり、この成長が止まれば、既存店の不調→新店投資の原資不足→出店鈍化→企業全体の成長鈍化(マイナス成長)→既存店活性化の原資不足→既存店の不調という負のスパイラルに陥いる。こうした事態にならないためにも、また新規出店と既存店改装を両輪に成長を続けるためにも、効率的な全面改装は重要である。

    • <エイジスマーチャンダイジングサービス>

    • 本社 千葉市花見川区幕張町3-7727-1
    • 代表 代表取締役社長 仁田善郎
    • 問い合わせ 043-213-2006

https://www.ajis.jp/contact/service/

 

〈取材協力〉

エイジスマーチャンダイジングサービス
代表取締役社長
仁田 善郎氏

CGアバターが接客、カウンター人員ゼロ。コンビニ業態の継続性を図る「グリーンローソン」

ローソンは2022年11月28日(月)に、CGアバターやDX活用による人件費の抑制、また食品ロス削減、プラスチック削減などの環境負荷軽減、さらに「ゴーストレストラン」設置による売上の上積みを目的とした、「グリーンローソン」を東京都豊島区にオープンにした。「20を超えるサステナブルな施策を集約した」(ローソン広報)という実験店舗の全貌を紹介したい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

グリーンローソンを実験場に既存店に新規取り組みを導入

本誌2022年11月号でローソンが進める「アバター接客」を紹介した。店舗とは別の場所にいる従業員が、お客とオンライン上で接客する取り組みで、従業員はカメラに向かって、身振りを交えて話をするが、姿形はCGアニメ、声も自分とは異なる設定で、お客の「お困り事」を解決したり、新商品の販促を試みたりする。

これはCGアバターと呼ばれる技術で、例えば高齢の男性が、セルフレジの使い方を案内する際、若い女性のCGアバターに設定もできる。目的は従業員の年齢や性別を隠すことではない。各種の実験から「実在の人物」よりも「CGアバター」の方が、話しかけやすいという効果があり、お客が受け入れやすいメリットがあるからだ。

コスト的には、1人のCGアバターが、数店舗を掛け持ちできるで、人件費の抑制になり、極端な例を挙げれば、時差の異なる海外の従業員が接客をすれば、昼の業務で対応しつつ、一方の店舗へは深夜のサービスも可能にできる。

さまざまな可能性を持つCGアバターだが、ローソンは、そうした最新デジタル技術を含めた、「未来に向けたサステナブルな店舗」を、東京・大塚に開設した。実験的な面が強く、現状は多店舗化を計画していないが、ここをラボラトリー(実験場)に見立てて、お客の支持のある取り組みについては、既存店への導入を図っていく。

商圏が狭小化して競争が厳しくなった。コンビニ既存店の客数が伸び悩む中、新たな集客の武器を持つ必要がある。加えて、上昇を続ける人件費の抑制は喫緊の課題である。それらの解決に向けた実験場といえる。

「いらっしゃいませ、ようこそ」アバターがフレンドリーに挨拶

ウエルカムアバターが、入り口でお客を出迎える

アバターの活用に関しては、24時間最適なサービスを提供しつつ、店舗従業員の人時抑制にもつなげられる。社会的な意義としては、さまざまな制約にとらわれず、就業機会の拡大がある。

就業場所への時間や距離、条件としての年齢、介護や育児で外出しづらい、あるいは身体的なハンディキャップがあるなどの障害や制約を回避して、「誰もがいきいきと働くことができる“全員参加型社会”の実現を目指す」(ローソン社長 竹増 貞治氏)としている。

グリーンローソンではCGアバターの画面を4カ所に設置している。1つ目は「セルフレジサポートアバター」で、操作の仕方に迷うお客に説明をする。タッチパネルの画像は、設置したカメラによりアバターも共有できるので、次はどこをタッチして精算を進めていくのか、音声で案内できる。

たばこ、アルコール類は、運転免許証を指定の機器に置いてもらい、アバターが年齢確認して販売する。店舗は無人ではないので、何かトラブルがあれば店舗に常駐する販売員が対応に当たる。

グリーンローソンが画期的なのは、3台のレジを全て無人化したこと。基本的な操作説明をアバターが担当して、レジのセルフ化を促している。一般的にコンビニのレジ業務は、店舗従業員の3割~4割の人時数を必要としている。

近年のセルフレジ化により、この比率は下降傾向にあるが、グリーンローソンでは、必要なときのみアバターが対応するため、レジ業務の人時数の大幅な削減を可能としている。

2つ目は「ウエルカムアバター」の店舗「外側」。「いらっしゃいませ、ようこそ」といったフレンドリーな挨拶をする。3つ目は同じく「ウエルカムアバター」の店舗「内側」。グリーンローソンのコンセプトや具体的な取り組み、販促を実施する。4つ目は「商品お薦めアバター」。オープン時はチルドデザートの什器の上で、“イチ推し商品”の紹介などを実施していた。

ローソンはホームページ上などで、本年9月にアバターを公募、現在、主婦をしている人、ローソン経験者・VTuber・身体的な理由から接客業を諦めていた人など、10代~60代の幅広い年齢層から約400人の応募があり、グリーンローソンでは約30人をアバターオペレーターとして採用している。

30人は、いわばアバター第1期生として、これから拡大させていくアバター接客要員として活動の場を広げていく。アバター従業員には、当初は東京と大阪のローソンが用意した就業場所で、(深夜を除く)一定時間に交代で勤務し、その後は在宅勤務も可能にしていく。

ローソンは、グリーンローソン導入後の検証を実施した後、2023年度中に東京と大阪のローソンの計10店舗に拡大、2025年度には、約1,000人のアバターを育成して全国のローソン店舗で展開していく。遠隔による深夜防犯、専門家へのオンライン相談、地方特産品の遠隔販売など新たな取り組みも検討していく。

クオールと組んで処方せん薬受け取りロッカー設置

グリーンローソンでは、フードロス削減に向けた大胆な取り組みも実施している。“冷凍”と“オーダーを受けてから作る店内調理”とで米飯弁当の廃棄ゼロを目指している。通常のローソン店舗で販売している「チルド米飯弁当」や「常温米飯弁当」は品揃えせず、ここで新たに発売する冷凍弁当7品と、店内厨房でつくる弁当のみを販売する。米飯弁当の廃棄ゼロを目標にしていく。

ガラスの奥は店内厨房、その横にモバイルオーダーを促す動画を流している

店内で調理する「まちかど厨房」(ローソン約8,000店舗に設置済み)の一部メニューについては、オーダーを受けてからつくる「できたてモバイルオーダー」を導入。このモバイルオーダーについては、通常ローソン店舗で販売していない“ゴーストレストラン”の専門店メニューも用意している。

これはスンドゥブとチョイ飯セット(税込999円)といった、専門性が強く、単価も高い商品が対象で、デリバリーにも対応している。厨房では店内がピークとなるランチタイムの前に集中して店内で販売する商品を製造する。一方のゴーストレストランのオーダーは、ランチ時間帯になるため、厨房の作業時間が異なり、生産性も向上が図られるという。

前述のアバターを活用したセルフレジや、モバイルオーダーなど新しいシステムを導入すると、どうしても慣れ親しんだ従来の接客環境を好むお客の離反を招くリスクもある。従業員の姿が見えない店舗は寒々しく感じるお客も多いだろう。

そこでローソンは、会計はセルフレジをメインとしつつも、店舗従業員については、買物に迷ったお客のサポートや、気持ちよく買物できる売場づくりを優先していく。セルフレジの利用方法については、アバター接客だけでなく、店舗従業員がサポートしていく。レジの近くにはローソンでは初めてとなるサービスカウンターを設置、収納代行やチケット購入など、セルフレジで精算できないサービスに対応していく。

EC商品やレンタル商品、処方せん薬をセルフで受け取れるボックスを店内に設置、来店の機会を増やしている

この店舗が初めてではないが、お客自身のスマホで商品バーコードを読み取り決済する「ローソンスマホレジ」、EC商品やレンタル商品の発送と返却、返品サービスがセルフでできる「スマリ」や「はこぽす」の設置、処方せん医薬品を調剤薬局の営業時間外に受け取れるロッカーも設置している(運営はクオールホールディングス)。ローソンが近年に手掛けた新たな取り組みも、ここに集結させた感がある。

お客がロボットの前に立ったり、商品を手に取ったりしたときに、ロボットは「とってもおいしいよ」などとコメントを発する

グリーンローソンの半ば「挑戦」は、既存店への導入に時間を要する試みもある。しかし同時に、コンビニ業態にとって、手を打つべき課題も山積しており、その一つ一つの突破を目指したグリーンローソンの取り組みと出店の意義は大きいといえる。

[店舗概要]

店舗名 グリーンローソン(ローソン北大塚一丁目店)
所在地 東京都豊島区北大塚1-13-4
オープン日 2022年11月28日(月)13時 ※リニューアルオープン
売場面積 214㎡(約65坪)
営業時間 24時間
主な取り扱い商品 冷凍弁当、おにぎり、調理パン、ベーカリー、デザート、ファストフーズ、まちかど厨房、飲料、酒類、日用品など約4200種類(11/28現在)

完全復活に向かうコンビニ大手3チェーン。変わるニーズに、売場、商品、販促で対応

コンビニ3チェーンが上期(第2四半期)実績を発表、既存店の売上、客数、客単価ともに、おおむね回復の傾向を示した(記事内図表1)。特にセブン−イレブン(ジャパン)は、既存店の売上がコロナ禍前の19年度と比較しても1.1%(客数▲11.0%、客単価13.5%)上回る結果となった。大手3チェーンの上半期の取り組みと下半期の施策をお伝えしたい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

イトーヨーカ堂との連携を強化、食卓ニーズをさらに深めるセブン

[図表1]2022年度上期(3月~8月)既存店前年比

上期期間中(3月~8月)に関しては、まん延防止等重点措置が3月21日に終了、その後、夏にかけて感染者が急増するも、重篤化のリスクが少ないと判断した若い世代の動きが活発化、政府や自治体の行動制限緩和も影響して、「人の出」は2019年の水準に戻りつつあった。

そうした外的要因が既存店に好影響を与えたが、コンビニ各社も人の動きを上手に活かして、集客を試みている。本連載で繰り返し指摘したが、コンビニ業態の売上の多くが「人の移動」により成立する。A地点からB地点に向かう最中、もしくは外出先であるC地点で立ち寄ってもらう。ただし、コンビニ各社は、「人の出」を待つだけでなく、品揃えの変更や積極的な仕掛けにより、利用動機を強くさせてきた。

セブン−イレブンは、主力のPB「セブンプレミアム」を、2007年の発売以降はカテゴリーとアイテムを拡充してきたが、今年度はアイテム数を絞り込んだ上で、今年に入り順次リニューアルを実施した。その結果、セブンプレミアムの主菜分類売上前年比は、8月に前年をクリアし、粗利率もプラス0.4%改善した。

近年はイトーヨーカ堂との連携も重視している。創業当時(1974年)のセブン−イレブンは、イトーヨーカ堂とは一線を画し、人材を求めなかったことで知られている。新しい業態に、スーパーマーケットの過去の成功体験を必要とせず、むしろ足を引っ張ると考えていたからだ。鈴木敏文氏は外部からの人材を登用して、セブン−イレブンの発展を牽引した。

現在のグループトップ(セブン&アイ・ホールディングス社長)を務める井阪隆一氏は、そうした流れを修正して、グループの強みを活かす形で食品強化に乗り出した。

イトーヨーカ堂の商品とサービス、販売促進、店舗オペレーション、物流・調達の面で連携を強化するSIP(SEJ・IY・Partnership)を発足、今後は両社の持続的成長に向けて取り組みを進めていくとしている。

その理由は、コンビニは「即食ニーズ」に対応して「コンビニ向け商品」を品揃えしてきた。もちろん、今後も継続強化の方針だが、それだけでは環境の変化に対応できないと考えた。即食ニーズだけではなく「食卓ニーズ」、コンビニ向け商品だけではなく、「スーパーマーケット向け商品」も、コンビニに求められていく(図表2)。高齢化により人々の活動範囲が狭まり、近隣の1ヵ所で買物を済ます「ワンストップショッピング」も後押ししている。

[図表2]セブン−イレブンのフードコンテンツ強化の方向

そうした変化を、前述したPBのセブンプレミアムが対応し、イトーヨーカ堂のノウハウが活かされていく。コロナ禍により、人々の意識や行動が大きく変化したマーケットに対して、フードコンテンツを今後どのようにしていくのか。井阪氏は第2四半期の決算会見で次のように語っている。

「従来は即食性が高いおにぎり、お弁当などの商品を目的として使われてきたコンビニでしたが、少子高齢化や働く女性の増加、世帯数の減少、単身世帯の増加などの社会構造変化により、2009年になって、近くて便利をコンセプトにした、食卓で召し上がっていただける商品の開発と品揃えを強化してきました。その中で、冷凍食品やパウチ総菜など、さまざまな商品が生まれました。

その結果、そのような商品群の売上構成比は当初は1日当たり5%だったものが、現在は10%を超えるまで拡大しています。直近2年では、さらにお客様ニーズの多様化が進み、コンビニで生鮮食品や家庭用品の品揃えが求められます。このような家庭での利用頻度が高い食品を成長させたのが、(PBの)セブンプレミアムだと認識しています」

新ブランド「ファミマル」打ち出すファミマ。セブンとの競争意識を前面に

ファミリーマートは昨年10月にブランド統一したPB「ファミマル」が好調に推移した。下期(10月4日)には全国紙に「ありがとう。最高のお客さまと、最高のライバルに。」と題して、2021年11月から本年8月まで既存店前年比の数字が「最強のライバル」に勝ち続けることができたと広告では綴っている。

既存店前年比は自社内の比較なので“勝ち続ける”といった表現が適切かどうかは議論の余地があるが、セブン−イレブンとおいしさを競うという意味であれば、一般消費者に向けて、コンビニの努力が伝わり、業界全体のプラスのイメージになるだろう。

本年2月には旧ブランド(「お母さん食堂」など)から全ての商品がファミマルへの切り替えが終了した。PBの日商前年比において、毎月(10ヵ月)連続で100%超えを記録した。

またファミリーマートとしても既存店日商売上前年比でも、同期間において10ヵ月連続100%超えを記録。ファミリーマートでは、これが既存店前年比の牽引にも貢献していると見て、前述の新聞広告に至っている。

ファミマルの好調要因として、ファミリーマート商品本部商品業務部ファミマルブランドマネージャーの柘植幹子氏は次のように語る。

「(それ以前は)商品のおいしさが十分に伝わりきれていませんでした。特に中食分野の、おむすび、お弁当が打ち出しによって好調に推移しています。ファミマルブランドを販売して一番強く感じたのは、商品の良さを伝える重要性。パッケージを変えて、商品の良さを伝える際に、訴求ポイントのどこにあるのかを明確にしてきました」

コンビニのPBは品質、価格ともに切磋琢磨、商品カテゴリーや売場レイアウトも大胆に変更しながら、アフターコロナも売上の拡大を図っていく。

ローソンは「できたて」で勝負。店内厨房1万店設置へ

ローソンは、本年6月からキャンペーン「ハッピー・ローソン・プロジェクト(ハピろー!)」を打っている。「ハピろー!」をキャッチフレーズに、(松山ケンイチをローソン店長に据えた)テレビCMなど、あらゆるメディアを駆使してキャンペーンを打った。その効果もあってか、客単価は横ばいながらも客数は大きく増やしている。

ローソン「まちかど厨房」の商品。店内調理は差別化の武器にはなるが、オペレーションが計画性を持って実施されないと人件費のムダが生じてしまう。その点は慎重に導入を進めている

店舗改装の積極的な実施も売上に寄与した。上期1,240店舗を改装し、コロナ禍以降の改装は合計5,500店舗を達成。「からあげクン」をはじめとするファストフードをお客に自由に取ってもらうセルフサービス什器を導入、また冷凍食品の拡充にともなう冷凍ケースの設置を進めてきた。

ローソンが、セブン−イレブンやファミリーマートと決定的な差別化と位置付ける店内調理機能「まちかど厨房」の導入店舗は、上期に9,000店舗を超えて、残り5,000店舗になった。この5,000店舗については、ハード的にどうしても導入できない店舗もある。その場合は、隣の店舗から「横持ち」するなどの方式を採用して拡大を図っている。店舗で作ったできたての弁当や総菜を、しっかりと訴求していく。そうした商品があることを、お客に伝えるキャンペーンも実施していく。

「(大手)コンビニの中ではローソンだけが外食品質に対抗し得るハードを持ち合わせています。ここは、お客様にそのおいしさと利便性をアピールしながら、垣根のなくなった競争の中で、ローソンの地位をしっかりと築いていきます」(ローソン社長 竹増貞信氏 上期決算会見にて)

ローソンが2020年度から導入を始めた「無印良品」も本格的な強化方針を打ち出している。竹増氏は次のような疑問を呈している。

「ローソンの社員の中で自社のおにぎりを食べた経験のない人はいないと思います。ところが、靴下はどうでしょうか。自ら進んでローソンの靴下をはきたい、ローソンの歯ブラシで歯を磨きたい、ローソンの化粧品を使いたい、といった積極的な理由に変えていきたい。無印良品をローソンでなければ購入できないPBに落とし込んでいきます」

わざわざローソンを目指して買物に来てもらえる商品カテゴリーを目指していくとしている。

調剤DX成功の秘訣は「LINE調剤ミニアプリ」活用にあり

調剤DXを推進する企業が増えているが、調剤アプリが使われていないことが最大の経営課題である。調剤アプリの利用率を高めて来局回数を増やし、調剤のロイヤルカスタマーを育成するための具体策を提言する。(取材協力:サイバーエージェント)(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

調剤アプリの大半は実際には使われていない

調剤DXの大きな課題は、さまざまな調剤薬局やドラッグストア(DgS)が「お薬手帳アプリ」や「調剤の配送アプリ」を導入しているが、ほとんど使われていないことである。

たとえば、全国展開している医療機関向けのオンライン診療、オンライン服薬指導のアプリがあるが、コロナ禍の発熱外来の利用を除くと、通常の医療で使っているユーザーは全国で5,000人程度であり、ほとんど使われていないのが実態である。

DgSでも「お薬手帳アプリ」の全店導入を進めている企業もあるが、ほとんど使われておらず、その効果もよくわからない。調剤DXは、どのデジタルツールを導入するかを決めることよりも、実際に使ってもらう運用のノウハウを構築することの方が重要である。

また、DgSにおける調剤事業は、「わが企業、わが店が調剤をやっている」ということを地域住民に認知させることがもっとも優先順位が高い。業界にいると、DgSが面分業で処方せんを受け付けていることは誰でも知っていると思いがちである。

しかし、実際には、地域住民の多くは、病院前の門前薬局で処方せんを出さなければならないと思っている。

業界関係者であれば、ウエルシアが調剤事業を展開していることは常識であるが、実際にはウエルシアで調剤をやっていることを知らない地域住民は多い。

今年の前半にウエルシアがコロナの抗原検査を実施したところ、「おたくの店は調剤も出しているんだ」と初めて気づいた地域の患者が多かったという。ウエルシアの抗原検査の最大の効果は、「調剤の新規客」が大きく増えたことだという(本誌・2022年6月号のウエルシアの記事より引用)。

[写真1]DgSの店舗サイネージで調剤の受付番号を表示すると、調剤の認知率が高まり、調剤の新規客が増える(参考写真。本文とは関係ありません)

また、調剤の受付番号をDgSの店内サイネージで表示している事例が増えているが(写真1参照)、このサイネージの最大の目的も「わが店で調剤を受け取れますよ」ということを認知させることである。

つまり調剤DXのテーマは、(1)アプリを使ってもらうことと、(2)調剤サービスの認知率を高めることの2点である。

自社アプリよりもLINEの顧客接点が多い

[図表1]アプリよりもLINE利用者のほうが、「使われやすい」

図表1は、自社の「お薬手帳アプリ」と「LINE」の処方せん獲得枚数の比較である。この企業は、自社の「お薬手帳アプリ」を導入していたが、お薬手帳アプリ経由の処方せん獲得枚数が、図表1のように非常に低いままだった。つまり、アプリがほとんど使われていなかったわけである。

お薬手帳や調剤の配送のアプリがあるので「ダウンロードしてください」と告知しても誰も使わない。いろいろなアプリが多すぎることが課題である。

そこで、LINE公式アカウントの中に「調剤機能(薬急便)」を導入したところ、新たにアプリをダウンロードする手間が省けて、デジタル顧客接点が大きく増えた結果、LINE経由の処方せん獲得枚数が大きく増えた。

LINEを調剤のデジタル顧客接点の入口にした方が、図表1のように処方せん獲得枚数が何十倍も多いことが実証されている。

図表1の事例とは異なるが、LINE公式アカウント内に調剤機能(薬急便)を導入している画面を紹介する(図表2)。

[図表2]サツドラのLINE公式アカウントへの導入事例

図表2の一番左側は、サツドラのLINE公式アカウントのトップ画面である。画面の下のスペースに調剤機能(薬急便)のバナーが固定して掲載されている。

LINE公式アカウントを開いた顧客の多くが目に触れるように設計されている。こういう設計のことをリッチメニュー(LINEのトーク画面に固定で表示されているメニュー機能)というそうだ。

LINEに友達登録すれば、調剤機能(薬急便)を簡単に利用できる。調剤機能のリッチメニューをトップ画面に固定することで、「お薬手帳アプリ」をいちいち開く必要がないので使いやすい。

また、アプリトップ画面のリッチメニューに調剤機能を固定化することで、初めて調剤をやっていることに気付く顧客も多い。

トップ画面の下のバナーをクリックすると、図表2の中央の薬急便の登録画面に移行し、登録が完了すると、右の店舗選択のページに移行する。その後、処方せんをLINEのカメラ機能で撮影して、選択店舗に送信すると、調剤の完了時間が返信される。また、薬急便は「調剤の即日配送」の機能を強化している。

LINEユーザーは来局回数と応需病院数が多い

[図表3]LINEユーザーと非LINEユーザーでの利用傾向の違い

図表3は、「LINEユーザー」と「非LINEユーザー」の調剤薬局の利用傾向を比較したものである。2022年4月から9月までの半年間の調査であるが、図表3の右側のLINEユーザーは、非LINEユーザーよりも来局回数が多いことがわかる。半年間で2回以上来局した患者が1.5倍も多い。また、半年間で3回、4回と来局した患者が、非LINEユーザーと比較して極めて多いこともわかる。

DgSの調剤事業は、「1年間で再来局を1回増やせれば勝ち」といわれている。全世代平均の来局回数が年4回なので、それが1回増えて5回になると、処方せん枚数が20%も増えたことと同じである。来局頻度の低い調剤薬局では、来局回数が1回増えることのインパクトは大きい。

DgSの決算を見ると、調剤売上は伸びているが、新規出店で伸びているだけで、既存店の調剤売上は減少している事例もあり、既存の調剤薬局のテコ入れは重要な経営課題である。LINEを調剤のデジタル顧客接点の入口にすれば、調剤薬局への来局回数を確実に増やしてくれるので、既存店の活性化策としても有効である。

もうひとつは、LINEユーザーは応需元の医療機関の数が多いことである。2ヵ所以上の医療機関から応需する割合は、非LINEユーザーと比べて約3.5倍も多い。LINEを使うことでDgSの調剤薬局の利用体験が便利になるので、従来は病院前の調剤薬局に散らばっていた処方せんをDgSに集約した結果、応需元の医療機関が増えて行くわけである。

つまり、LINEを調剤の顧客接点にすると、(1)来局回数が大きく増えて、(2)医療機関の数も大きく増える。

デジタル顧客接点をなるべく広く取る

[図表4]すべての顧客接点からデジタル接点(LINEなど)につなげる

図表4は、調剤の顧客接点を整理したものである。一番上の「対面での処方せんを受け取り」に来局した患者さんに対しては、LINEのお友達登録を勧めることがもっとも重要な顧客接点である。「LINEに登録すると、フォローアップのメッセージがあなたに届くので、会員になると便利ですよ」と説明する。帰宅後もちゃんと面倒見てくれるなら、調剤窓口を集約化しよう、という流れをつくることが重要。

薬を受け取った後に「体調いかがですか?」というフォローアップをプッシュ通知すると、サイバーエージェントの仕組みだと、回答率が6割くらいある。従来の調剤薬局は、そんなフォローアップはなかったので、「良い薬局だ」とロイヤリティが高まる傾向が強いという。

図表4の「来店時に店舗サイネージを視聴している調剤の未利用客」に対しては、視聴率の高い入口のサイネージで「調剤をやっている」ことを繰り返し主張することが重要。現在、店舗サイネージに商品広告を掲載するDgSが増えているが、単価の高い調剤利用客を増やすことに店舗サイネージを活用した方が、投資対効果は高いと思う。

「DgSには来店するが調剤薬局を利用していない人」に対しては、図表2のように、公式アプリやLINE公式アカウントで調剤サービスの便利性をアピールすることが重要である。

図表4の真ん中の緑色のゾーンは、Google検索のような一般的なブラウザから調剤サービスに入ってくる新規客との顧客接点である。専用アプリがほとんど使われていないので、顧客接点はなるべく多くあった方がいい。ブラウザ検索→オンライン服薬指導のバナー(図表4のイラスト)という動線も重要である。ブラウザ検索で来局する患者は、まったくの新規客である。

図表4の一番下の青色のゾーンは、「コロナ・インフルエンザの検査キット販売」「お薬配送サービスの告知」から調剤サービスに入ってくる顧客接点である。この入口も新規客である。

「調剤やっています」と告知してもあまり反応しない調剤の未利用者も、「検査キットあります」「お薬を配送します」というと反応して、調剤の新規客になるケースが多い。

とくに、コロナの第7波以降では「お薬の即日配送」がキラーコンテンツになっている。調剤のデジタル接点強化として、調剤の配送は非常に重要である。

また、インフルエンザも、患者が自分で検査キットを買って、オンライン診療で確定診断して、調剤薬局で薬をもらうという流れを、国が推し進めることが決定している。医療がパンクしないためにも、オンライン服薬指導で調剤の配送までやるという流れは加速すると思う。

お薬の配送は、地域で料金が異なるので限定的な店舗しかできない問題点があるが、サイバーエージェントの仕組みだと、管理画面を提供して配送業者の比較ができるので、その地域で早くて安い業者を選ぶことができる。

 

〈取材協力〉

株式会社MG-DX
代表取締役社長
堂前 紀郎氏
サイバーエージェント
DX本部 統括
藤田 和司氏

2023年の経営課題は「狭小商圏時代対応」。客数・売上対策の打ち手10

リアル小売業の商圏は、小さく狭くなっています。この原稿では、2023年年始の提言として、限られた商圏人口の中で、売上と客数を増やすための10の対策を整理します。大商圏時代のMDとは大きく異なることがわかると思います。(月刊マーチャンダイジング 主幹 日野眞克)

「月刊MD note版」では毎月「日野眞克の視点」を連載。ドラッグストア経営における経営のヒントを教示します。是非ご購読ください!
>>「 月刊MD note版」
https://note.com/mdnext/m/m2dfeab8b6f27

広域集客よりも来店頻度を増やす

リアル小売業が狭小商圏化している理由は2つあります。ひとつは、オーバーストアです。日本の人口をドラッグストアの総店舗数で割り算すると、ドラッグストア1店当たりの商圏人口は7,000人を切っており、狭小商圏化が加速しています。

もうひとつの理由は、ECでの買物の普及です。自宅から出て店に到着するまでに、車であれ徒歩であれ30分以上かかる買物は、ECの買物の方が便利です。特に日用品やビールなどの必需品の買物は、「近くて便利」な店でなければECに奪われて、どんどん狭小商圏化していきます。

リアル店舗の狭小商圏化が進む中で、客数と売上を増やすための10の対策を図表1に整理しました。第1は、広域商圏から集客するのではなくて、限られた商圏に住む固定客の「来店頻度」を増やすことです。広域商圏時代は、来店1回当たりの買物金額を増やすことが重視されましたが、狭小商圏時代は「年間買物金額」という考え方が重要です。たとえば、1回の買物で1品しか買わなくても、365日毎日来店してくれる顧客は、重要なロイヤルカスタマーだからです。

来店頻度を増やすためには、新しい品群や品種を増やす「ラインロビング」に取り組むことが基本対策です。ラインロビングによって「買物目的」が増えれば、必然的に来店頻度は増えます。ドラッグストアが「青果」や「精肉」をラインロビングすることを邪道だと揶揄する人もいますが、PI値(買上率)の高い青果・精肉をラインロビングすることは、狭小商圏で客数を増やすための基本対策なのです。

アソートメントで新定番を創造する

また、新しい市場やカテゴリーをつくることで需要創造することも重要です。

写真1は、さまざま売場に分散していた商品を、「糖質コントロール」という生活テーマで再編集した売場です。分散していた時には見逃されていた商品も、生活テーマでまとめることで気づきが生まれて、商品によっては3倍も販売数量が伸びたそうです。生活テーマで商品を再編集する「アソートメント」は、さまざまな商品を取り扱う小売業と卸売業だけが消費者のために提供できる代表的な技術です。アソートメントによる「需要創造」は、狭小商圏時代にはとても重要になると思います。

[写真1]糖質コントロール(左)とフェムテック(右)の新定番づくり。

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客層を広げることが狭小商圏では重要

狭小商圏で客数を増やすためのもうひとつの基本対策は、「客層を広げる」ことです。

最初は「性別を広げる」ことが重要です。同一商圏の男女の人口比が5対5と仮定すると、その店舗で少ない性別を増やすことが客層を広げることです。ドラッグストアであれば、女性客の比率が圧倒的に高いので、男性客を増やすことが最重点の客数対策になります。男性の固定客率の高い「酒類」を強化し、一人暮らしの男性のための「簡便食品」を品揃えすることも、客層を広げることにつながります。一方、男性客の多いコンビニは、女性客を増やすことが重点対策になります。

第2は「年齢層」を広げることです。非食品の中てPI値(買上率)の高い「オーラルケア」は、老若男女を問わず購入するので年齢層が広く、しかも消耗品なので頻繁に来店してくれます。オーラルケアは、狭小商圏で客数を増やすための戦略カテゴリーといっていいでしょう。

第3は、「価格帯の幅」を広げることです。従来のチェーンストア理論では、「商品構成グラフの左寄せ」という言葉があるように、なるべく価格帯は狭くて、左側の低価格帯に商品を絞ることが重要と言われてきました。しかし、狭小商圏時代に商品構成の左寄せをやりすぎると、狭小商圏に住む客を限定することになります。特定の住居エリアにさまざまな所得層の人が住む日本では、ある程度の価格帯の幅が必要です。とくに、「中・高価格帯の売れ筋を育成する」ことは、狭小商圏時代のMDでは重要だと思います。

最後は「季節を広げる」ことです。最近は、代表的な季節品である入浴剤、殺虫剤、日焼け止めなどの販売期間が延びており、「年間定番化」している季節品も増えています。季節を広げることも、狭小商圏時代のMDには不可欠の戦略になります。

「月刊MD note版」では毎月「日野眞克の視点」を連載。ドラッグストア経営における経営のヒントを教示します。是非ご購読ください!
>>「 月刊MD note版」
https://note.com/mdnext/m/m2dfeab8b6f27

売上金額年間最高だが、購入頻度は5位の12月。一度の来店での買上点数、購入金額アップに努めよう

年末はドラッグストア(DgS)の売上がもっとも上がる月である。しかし、12月をID-POS(顧客属性付きPOSデータ)で分析すると、他の月よりも下回っている数値もある。年末の購買行動をID-POSで分析した上で可能性のある商品や商品群、売り方をID-POS分析の第一人者、奥島晶子氏に解説してもらった。(調査・作表・解説/JBtoB代表取締役社長 奥島 晶子)(構成・文/月刊マーチャンダイジング編集部)(月刊マーチャンダイジング2022年11月号より転載)

「月刊MD 2022年11月号」の特集は「〈カテゴリー別〉年末売場 強化大作戦」!。クリスマスや正月の準備、ボーナス時期でもある「書き入れ時」の12月をどう乗り越えるか?カテゴリー別に市場や売れ方の動向、強化すべき商品、売場づくりの工夫などを紹介します!
>> 月刊MD2022年11月号 Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0BJTQ4PH5/
>> 総合感冒薬  https://note.com/mdnext/n/nf8b31bfcab94
>> 入浴剤 https://note.com/mdnext/n/nb17bda03b41d

併買促進、高単価品の販売が年末商戦には重要

[図表1]月別サマリー(2年間平均)

図表1はパネル店舗における月別の購入人数、売上金額などの数値をまとめたサマリーである。図表2図表1の数値の月別の順位を示している。今回の特集で売場強化すべきとした12月を見ると、売上金額は12ヵ月の中でもっとも高く年末がDgSの稼ぎ時なことに間違いない。しかし来店頻度は年間で5位にとどまっている。

[図表2]月別サマリー順位

頻繁に来店頂くから売上が高いのではなく、売価の高い商品の購入(図表2・平均売価1位)と買上点数の多さ(同・買上点数1位)により、客単価/回が高い(同・客単価/回1位)ことで結果として売上が高いのである。

このことから、(1)カウンセリング化粧品など高単価品を積極的に売る、(2)掃除や自宅パーティなど同じ場所や同じ機会で使う商品群は同じ売場、あるいは近接した売場で販売するなどして、一度の買物で買い忘れなく、併買を促す売場作り=「買上点数向上」が重要になる。

この後、キーワード別に年末12月に季節指数が上がる商品を紹介するので、併買されやすい商品は何か、また気付きを提供することで売れる商品は何か、といった視点で参考にしてほしい。高単価、併買(買上点数アップ)は12月の売場強化に重要な要素である。

ちなみに来店頻度は8月がもっとも高く、次いで7月となっている。これは暑さから軽飲料や熱中症対策品などを購入するお客様が増えることがその理由。売上金額でも8月は2位、7月は3位となっている。夏場は飲料を買いに立ち寄ったお客様に単価の高い商品を購入頂くことが売上につながる。

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12月の季節指数、乾燥、寒さ対策、お出かけ関連の品目が上位に

[図表3]週別、季節指数上位品目

図表3は年間A・Bランク※1の非食品の季節指数上位15品目である。各品目の横にある数字が季節指数(当該月の売上構成比÷年間の売上構成比)。調査データより抜粋して、11月の最終週、12月全週、1月第1・第2週の期間で見ている。
※1 A・Bランク:年間の累計売上構成比が70%までの売れ筋商品がAランク、70〜90%がBランク、90%未満がCランク

ハンドクリームは安定して上位に入っていて指数も2前後の数値を維持。季節プロモーションでは乾燥対策は欠かせない。

11月の最終週から12月3週にかけてフェースパウダーが1位、2位に入るが、これは主にカネボウのミラノコレクションの影響。毎年9月ころから予約活動は始まるので、高単価商品の販売に向け早期に動きだすことで年末売上を積み増すことができる。

12月に入るとリップカラー(口紅)も上位に出てくる。コロナ禍で大打撃を被った品目だが、クリスマスや忘年会など催事シーズンには売上が上がる。KATEのヒット商品で市場が活性化していること、コロナ禍関連の行動制限が取られないことから今年は一層期待できる。

12月の2週から使い捨てカイロが1位に来るが、春夏との落差で指数は上がる。12月の2週から4週にかけて上位に出てくるPOSAとはコンビニなどでもよく見かけるアップル、アマゾン、ニンテンドーなどが発行するプリペイドカード。クリスマスなどのギフト需要と思われる。概して乾燥、寒さ対策、お出掛け、ギフトなどの関連品目が、指数では上がる。

年末上昇・年始急落商品は売場拡大・縮小に要注意

次ページの図表4-1、4-2は年末需要の高まるキーワード別の品目だ。冒頭12月は購入頻度は高くないので買上点数アップが重要になると解説したが、キーワードは商品群をグルーピングするテーマにもなっているので、定番あるいはプロモーションで各キーワードの売場をしっかりつくり、併買促進、高単価商品の販売推進の参考にしよう。

続きは月刊マーチャンダイジング 2022年11月号で!

「月刊MD 2022年11月号」の特集は「〈カテゴリー別〉年末売場 強化大作戦」!。クリスマスや正月の準備、ボーナス時期でもある「書き入れ時」の12月をどう乗り越えるか?カテゴリー別に市場や売れ方の動向、強化すべき商品、売場づくりの工夫などを紹介します!
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〈取材協力〉

JBtoB代表取締役社長
奥島 晶子氏

ローソンの「アバター」VSファミマの「AIロボット」

コンビニ店舗の生産性向上は大きな課題である。トップライン(売上)を上げるか、コストを下げるかだが、大手コンビニチェーンは、その2つを同時に実現させるため、最新デジタルを用いた取組みを強化している。その新たな取組みが、ローソンのアバターとファミリーマートのAIロボットである。この2つは、コンビニ店舗運営の、何をどう変えていくのか、リポートする。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年11月号より転載)

2025年度にアバター従事者を1,000人規模で育成、活用する

ローソンは、アバター事業を手掛けるAVITA(アビータ)社と、リアル店舗における新しい接客サービスを推進するために協業を開始した。アバターの活用により、時間や場所、年齢や性別、「様々な障害」に制約されない新たな働き方を、非接触により実現していく。

コロナ禍により、人々の意識と行動が変わり、コンビニに求められるニーズも以前とは異なっている。少子高齢化による人口減少と人手不足、人件費の上昇も店舗経営にとって深刻な問題である。そうした課題を解決する要素のひとつとしてアバターに期待をかける。

具体的には、本年11月末に都内にオープン予定の未来型店舗「グリーンローソン」にAVITAのアバター接客サービス「AVACOM」を導入する。オンラインで聞き、話し、動く、従業員のキャラクターが、お客に向けて精算のサポートや新商品の説明、エンターテインメントの提供など、新しいコミュニケーションを実施していく。

AVITA代表取締役CEOの石黒浩氏(左)とローソン代表取締役社長の竹増貞信氏

アバター導入に際して、アバターワーカーを一般から公募、10~30人を採用、合格者は指定の研修を受講した後「グリーンローソン」のアバターとして勤務する。

今後は、導入後の検証を実施、2023年度中に東京都・大阪府のローソンの10店舗に拡大して、新しくアバターワーカー50人を育成、2025年度には、全国のローソン店舗に向けて1,000人の育成を目指していくとしている。アバター技術の活用により、1人が同時に複数店舗で勤務することが可能になる。将来的には遠隔による深夜防犯、専門家へのオンライン相談、地方特産品の遠隔販売などの活用も検討していく。

高齢者、障がい者などだれもが自在に参加できる社会の実現

今回、技術を提供しているAVITA代表取締役CEOの石黒浩氏は、自律型ロボットとロボットアバター(遠隔操作型ロボット)の研究、開発を手掛けてきた。しかしながら、ロボットやハードウエアで市場を拡大することは非常に困難である。

そこで石黒氏は、まずはCGアバターを使って働くためのアプリケーションを開発、このCGアバターで市場を開拓した後に、ロボットアバターを展開していくのが現実的な順序であると考えて、今回のローソンと協業するに至ったとしている。

「高齢者、障がい者を含むだれもが、多数のアバターを用いれば、身体的能力や認知能力、知覚能力を拡張しながら、常人を超えた能力により、様々な活動に自在に参加できるようになる。

いつでも、どこでも、仕事や学習ができ、通勤、通学は最小限にして、自由な時間を十分とれるような世界を実現したいと考えている」(石黒氏)

このアバターは、石黒氏によれば、私たちが実在する「実世界」と、SNSやメタバースといった「仮想世界」との両方の良さを持ち合わせているという。実世界で、私たちは生身の身体、一人の自分として働いている。この実世界のメリットは、そこに経済活動が生まれていること。ただし、デメリットとして、失敗すると取り返しがつかない面もある。

一方の仮想世界は、ひとつの世界で居心地が悪くなれば、違う世界で活動できるメリットがある。ただし、この仮想世界は、中で閉じられているため、経済活動が行われていないデメリットがある。この両方のメリットを合わせるのが「仮想化実世界」のアバターであり、チャレンジであるという。

「(アバターは)実世界で好きな自分になって働けるし、様々な可能性を追求できる。この仮想化実世界を、日本から世界に向けて発信していきたい」(石黒氏)

ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は「アバターを通じて人とのつながりを持ち、だれもが活躍できる“温かい未来”を実現していく」として、店舗運営に関する新たな可能性を挙げている。

ひとつ目は「多様な働き方」。ローソンで勤務経験のある外国人が、帰国したあとでも、機会があればアバターとして働くことも可能である。極端な例では、日本から見て地球の裏側に住む人が、昼間にローソンの夜勤として参加することも可能になる。

2つ目は「オンライン相談」。複数店舗に対しての勤務が可能になり、オンライン診療や非対面による健康相談・カウンセリングもできるようになる(ただし現状、OTC医薬品は、店舗にリアルの登録販売者がいないと売れない)など。人手不足を解消する一助となる。

3つ目は「地域貢献」。ローソンは各地で移動販売車を稼働させており、そこでは主に高齢者の方たちをサポートしている。そこにアバターを同乗させれば、「御用聞き」などにより地域の課題解決にチャレンジできる。

4つ目は「エンタメ活用」。VTuber(バーチャル・ユーチューバー)による「1日店長」といった催しも考えられる。「単なる冷たいデジタル化ではなく、人の温かみのあるロボティクスを目指している。明るく楽しい全員参加型の社会、その真ん中にローソンがあって、皆が集まってくる社会。そういう思いを持って、この事業にチャレンジしていく」(竹増氏)

冷蔵庫の厳しい補充作業をロボットが24時間代行する

ファミリーマートは「AIロボット」を2022年8月より導入開始、今年度中に約30店舗、2024年度中に計300店舗まで拡大する。コンビニ店舗で本格的なロボットが稼働するのは業界初になる。

売場から見た作業中のAIロボット。売れる順番から適正な量を補充していくので、機会ロスは人の手よりも非常に少ないと予測される

ファミマのAIロボットは飲料補充業務を24時間連続で人に代わって実行する。その効果だが、背面から飲料を補充するプレハブ型冷蔵庫のウォークインでは、人が作業に集中していても、レジにお客の列ができると、呼び出されてレジ業務に入ることが求められる。店舗によっては、行ったり来たりの作業性の悪さも指摘されている。

しかしながら、AIロボットの導入により、こうした非効率性が解消できるようになる。

もうひとつの効果は、職場環境の改善である。ウォークインは、常に5度から7度くらいに保たれており、その寒さの中で長時間の品出し作業は、身体にある程度の負荷がかかる。そうした従業員への負荷をAIロボットが軽減する。単に省力化・省人化に効果があるだけでなく、店内作業の中から身体的な負荷の大きな業務が代行されることになる。

今回導入したAIロボットは1日最大で1,000本の商品を並べることができる。ウォークインの壁面の補充棚から飲料を取り出し、売場に陳列されている冷蔵ケースの背面から1本ずつ送り込んでいく。AIロボットの土台はレール上になっており、横移動しながら必要な商品を随時陳列していく。

このAIロボットは補充する本数に関して、単品ごとに、どの時間にどれだけ売れるかの販売データを共有し、それをアップデートしている。ある商品を一定時間に何個陳列しないと欠品するといった情報を、AIが毎回自動的に認知して情報を更新している。売れる商品を時間帯ごとに割り出して、売れる順番で商品を陳列している。

仮に、これを人が陳列すると、左から右へといった順番に作業が進められる。補充忘れのないように「位置」を起点とした作業になるが、AIロボットは販売データを基に、売れる順番から補充するので、もっとも売れている商品が常に並んでいる状態をつくっているという。販売データは個店ごとに認識するほか、季節による変動指数も入力している。

ファミマは、AIロボットに加えて店舗作業分析システムも併せて導入している。店舗従業員は位置情報の発信機を装着、店内各所に設置された受信機が位置データを認識する。それにより各時間帯における作業時間の可視化と分析が可能であり、店舗業務の一部をAIロボットが担うことを前提とした最適なワークスケジュールと人員配置を進めていくとしている。

ピーク時は人時が不足していたり、逆にそれ以外の時間に無駄があったりする。そうした凹凸を見える化することで作業の平準化が可能となり、どの作業をAIロボット化、あるいは別の方法により自動化するのかを検討する一助になるという。

本年10月に各都道府県の最低賃金が過去最高の水準で引き上げられている。時給の設定に余裕のないコンビニ店舗にとって、店内作業の効率化、生産性の向上は喫緊の課題である。ローソン、そしてファミマは最新デジタルを駆使して、新たな店舗運営を模索している。

オンライン接客の顧客満足度はリアルの対面接客を超えた!?

サイバーエージェントは2022年、「住友不動産」「再春館製薬所」「資生堂ワタシプラス」にオンライン接客ツール「リモてなし」の提供を開始した。リアルの対面接客と遜色のない接客体験を実現している。オンライン接客の最前線をリポートする。(取材協力:サイバーエージェント)(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

コロナ禍で進んだオンライン接客

コロナの影響で対面での接客が困難な状況もあり、オンライン接客が急速に進んでいる。ホテルのフロント業務のオンライン接客、セルフレジのオンラインでの接客サポートなどが代表的である。

サイバーエージェントは2022年3月より、住友不動産の新築分譲マンション販売において、オンライン接客ツール「リモてなし」の試験提供を開始した。

住友不動産では2022年6月より不動産業界において、先駆けてオンライン接客での不動産販売を開始した。内見から成約、引き渡しまでのすべての過程をオンライン化する、「リモートマンション販売」をすすめている。

導入当初はマンションをオンラインで販売するという前例がほぼなかったため、オンラインが故の気軽さ・手軽さなどから成約率が低くなるのではと考えられていたが、オンライン接客に移行しても、モデルルームがある前とマンションの成約率は変わらなかったそうだ。最近は、メタバース(仮想空間)で内見できるシステム導入を行うなど、今後も新築分譲マンションの非対面型販売を強化していく意向だ。

同様に2022年7月より、再春館製薬所にも「リモてなし」の提供を開始した。再春館製薬所は、電話での接客だけではなく、商品を体感してもらうためのオンラインセミナーを2020年ころから強化していた。

ところが、セミナー運営には予約ページや参加者リストの作成、案内メールなどの運営管理に膨大な時間がかかっていた。

「リモてなし」を導入することによって、業務フローの無駄を省き、オンラインセミナーの業務時間を30%も削減した。

また、オンラインセミナーで接点のあった顧客の6ヵ月以内の購買率が8%向上し、オンラインカウンセリングやセミナーを受けたことがない顧客と比較して顧客単価も上がる結果となった。

サイバーエージェントによれば、リアルの対面接客と、オンライン接客の効果はほとんど遜色がなくて、オンライン接客の方が「顧客の体験価値」(CX)が高い場合もあるそうだ。

現場の問題点を抽出し企業ごとにカスタマイズ

2022年12月からは、資生堂のECサイトである「ワタシプラス」のWebカウンセリングサービス「Online Beauty by ワタシプラス」向けにも、オンライン接客の「リモてなし」の提供を開始した。

資生堂の2021年12月期におけるEC売上高は、3,500億円規模に達しており、成長率は前期比20%超。連結売上高に占めるEC売上の割合は34%と拡大している(連結売上高は前期比12.4%増の1兆352億円)。

サイバーエージェントのリモテなしの最大の特徴は、それぞれの企業ごとにオンライン接客を「カスタマイズ」することである。オンライン接客の汎用ツールを販売するITのスタートアップ企業が、あまりやりたがらない個別企業ごとにカスタマイズできることを最大の強みとしている。

オンライン接客に関しては、汎用ツールを活用するよりも、企業ごとのニーズに合わせてカスタマイズすることが重要と考えている。

資生堂ワタシプラスに関しても、オンライン接客のツールの導入だけでなくて、業務システムを協働して構築するような取り組みを重視している。そのためには、現場の問題点の抽出から始めて、改善プラン、実際にシステムを開発するところまでを一気通貫で取り組んでいる。

「現場のニーズとかけ離れたシステムはうまくいかないので、現場の細かい実態把握や問題解決をお手伝いしながら、最適の業務システムとオンライン接客を実現することを大切にしています。オンライン接客事業のミッションは、チャットポッドなどの機械に接客を置き換えるのではなくて、人間が本来できる接客に集中できるようなお手伝いをすることだと考えています」(サイバーエージェントオンライン接客事業責任者 堀内直人さん)。

資生堂ワタシプラスのオンライン接客の仕組み

[図表1]資生堂ワタシプラス×リモてなしの全体スキーム

図表1は「資生堂ワタシプラス」と「リモてなし」の全体スキームの概念図である。オンライン接客の予約から、お客様の購買履歴や商品情報基盤に基づいた実際のオンライン接客、接客終了後のフォローアップまでの業務システム全体が設計されていることがわかる。

[図表2]ワタシプラス×リモてなしの管理画面例

図表2の画面は、資生堂ワタシプラスのオンライン接客の間に、「肌悩み」に関するアンケート調査を促し、その回答をリアルタイムに確認できる機能が付いた管理画面である(図表2の右側)。これまで一般的には、新規の顧客に対して、オンライン接客の前に問診票のようなメールを送ることが多かったが、回答率が低くなってしまうという課題があった。

しかし、図表2の管理画面があることで、新規客の肌悩みのアンケートが簡単に確認できるうえ、回答に応じて接客を行えるようになった。

また、接客後のアンケートに関しても、一般的にはメール等で終了後に回答を促すことが多かったが、リモてなしでは感想を入力した後に退出してもらうように設計することで、回答率を100%に近い高水準に高めている。こういう機能も、実際の接客の現場に入ることによって、改めて必要だとわかった機能である。

図表2の中央の画面は、顧客の「接客履歴」や「購買履歴」が参照できる管理画面である。オンライン接客を予約したタイミングで、顧客情報のデータベースと突合するようになっている。

また、その顧客に興味があると思われる商品データを取り込んでいるので、管理画面上で「この顧客にはこの商品をお薦めすべきだ」という商品提案ができるようになっている。「過去にこういう接客をした」「こういう商品を買ったロイヤルカスタマー」だということが接客前にわかる。

そのため、「そろそろこの商品が切れるのでは?」「プラス1品の組み合わせはこれがいいですよ」という提案をスムーズに行うことができるので、客単価のアップにもつながる。

店頭の接客と違った対応が必要になるオンラインでの接客に習熟した資生堂のPBP(パーソナル・ビューティ・パートナー)もいるが、接客記録を録画できるので、新人のPBPの接客のアーカイブをトレーナーが参照して、YouTubeのように「何分何秒のこの発言は良かったね」といったコメントを残すような教育のフォローアップもできる。

新規客の最大の入口 LINEとの連携強化

資生堂のワタシプラス×リモてなしは、LINEとの連携を強化しており、LINEが「オンライン接客」の入口になっている。

とくに、新規客の流入チャネルとして、特に伸びているSNSがLINEであり、新規客の獲得には最適のSNSである。LINEを入口に流入してきた新規客に良い接客体験を提供することで、固定客につなげていく良い循環になる(図表1)。

ワタシプラスの画面に、LINEのリッチメニュー(トーク画面下部に固定で表示されるメニュー機能)を表示して新規客の入口とする(図表2)。

そして、資生堂のメンバーシップサービス「Beauty key」の会員IDと「資生堂ワタシプラス」LINE公式アカウントのIDを連携すれば、LINE上で簡単にオンライン接客が予約できる。接客時間などの返信も、顧客にLINEで返ってくる。

さらに、接客が終わった後に、「おすすめ商品はこちらです」と言うメッセージと商品画像をLINEで送信できる(図表3)。

[図表3]新規客の入口としてのLINEとの連携を強化

従来のオンライン接客だと、「どの商品を提案したのか?」と迷うことも多く、おすすめ商品のフォローアップに多くの時間を要していた。

しかし、オンライン接客で提案した商品を記録し、LINEのメッセージと連携・送信できる機能を使うことで、接客終了後のフォローアップが非常に簡単になった。

[図表4]接客終了後のフォローアップもLINEで対応

オンライン接客中に購入に至らなかったとしても、「やはりこれ良かったから購入しよう」となったときに、LINEで商品画像付きのメッセージが残っており、そこをクリックすれば、簡単に商品をオンラインショップで購入できる。また、オンライン接客で提案した商品の「事後購入率」などもトラッキングできる。

サイバーエージェントは今後、小売業の店頭にオンライン接客のスペースを設置して、小売業の化粧品担当者やメーカーの接客担当者とつなぐオンライン接客の実験も進めていく計画である。

[図表5]リモてなしの管理画面

リアルの対面接客とオンライン接客の「接客体験」はほとんど遜色のないレベルにまで達している。しかも、接客内容のログが記録できる、提案商品のフォローアップを自動送信できる、化粧品担当者が不在時にも遠隔接客できるといった機能は、リアルの対面接客を超えているともいえよう。

 

〈取材協力〉

サイバーエージェント
オンライン接客事業部 責任者
堀内 直人氏
サイバーエージェント
DX本部 統括
藤田 和司氏