スギ薬局 新宿三丁目店、インバウンドに頼らない!地域住民の生活も支える都市型ドラッグストア

都心の買物客の基本行動は、「ショートタイムショッピング(短時間での買物)」である。売場の回遊性を重視した「レイアウト計画」や、コンビニで品揃えする商品群の「ラインロビング」が、極小商圏で成立するための基本対策となる。今年1月末に開店したスギ薬局「新宿三丁目店」では、コンビニ需要を奪いながらも、「化粧品」を同社最大級の売場面積で展開し、「利便性」と「専門性」を両立したプロトタイプづくりに挑戦している。(月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

都心の極小商圏で成立するビューティ特化型店舗に挑戦

スギ薬局 新宿三丁目店は、緊急事態宣言が首都圏1都3県に発令中の2021年1月28日に開店した。開店から1ヵ月後時点の売上構成比は、化粧品が43%を占め、同店がビューティ特化型店舗の位置付けであることがわかる。

ドン・キホーテに品揃えされているようなカラーコンタクト売場を大きく展開

調剤併設型・2層構造・合計212坪であり、地上1階は「医薬品」「軽食」「飲料」「男性化粧品」「オーラルケア」「ベビー用品」、地下1階は「化粧品」「ヘアケア」「ボディケア」「日雑」などで構成されている。客数の割合は、地上1階が6割、地下1階が4割。取材した3月1日(水)昼時点では、地下では女性客、地上では通勤客・観光客が多く見られた。

〈取材協力〉

庄司亘範店長(左)、要貴大スーパーバイザー(右)

商圏内には、ココカラファイン東京新宿三丁目店、コスモス歌舞伎町一丁目店、アットコスメストアなどがある。極小商圏内で成立させるため、通勤客の「コンビニ需要」、30~40代女性の「デパートコスメ需要」に対応する商品群を積極的にラインロビングしている。

キャンメイクの売場。高価格品のデパートコスメだけでなく、低価格品であるバラエティコスメも強化している
スギ薬局のプライベートブランド(PB)「プリエクラ」のテスターを設置

既存店と大きく異なる点は、モニターの数である。同店では、大小「23台」のモニターを設置している。画像・動画で「情報発信」をする一方で、「広告媒体」として収益源の役割も担っている。新宿三丁目店は、極小商圏で成立するノウハウを蓄積するプロトタイプであると同時に、デジタルシフトの実験店でもあるといえよう。

競合店との差別化を図る化粧品の新ブランドを導入

新宿三丁目店では、スギ薬局がこれまでに組んだことのないメーカーの商品の品揃えに挑戦している。地下1階に下りると目の前の壁面には、日本最大級のコスメ通販「NOIN」をコラボ展開している。すぐ右の棚には、トレンドである「韓国コスメ」「アットコスメ」をコーナー化している。

エスカレーターを下りてすぐの壁面に、日本最大級のコスメ通販「NOIN」とのコラボ売場を展開。スギ薬局でははじめての導入となる

続きは月刊マーチャンダイジング2021年5月号にて!

薬王堂が店頭ピックアップサービスを開始。契約から半年でリリースできた背景

東北地方に322店舗を展開するドラッグストア(DgS)チェーンの薬王堂。2021年3月にスタートアップ企業10X(テンエックス)との協業で「アプリで注文・店舗受け取り」サービスをスタートした。2022年には「アプリで注文・自宅へ配送」サービスの提供開始も視野に入れる。高齢化が進む地域で模索する、新しい地域密着の形とは。(MD NEXT編集長 鹿野 恵子/月刊マーチャンダイジング2021年5月号より抜粋)

ルーラルで成長続ける独特のビジネスモデル

1978年創業の薬王堂は岩手県、宮城県を中心とした東北地方に「小商圏バラエティ型コンビニエンスドラッグストア」という業態の店舗を322店舗展開している。人口密度が低いルーラル(田舎)を中心に出店し、商圏人口は7,000人程度。医薬品にこだわらない品揃えで、食品の売上構成比率は40%以上となっている。

販促物が少ないシンプルな売場や、いつでも安いESLP(EverydaySame Low Price)の推進により、ローコストオペレーションを追求。地方の生活に寄り添うビジネスモデルを構築しているのが特徴だ。

その薬王堂が2021年3月にリリースしたのが「P!ck and」という「アプリ注文・店舗受け取り」サービスである(写真1)。お客はスマートフォンの「P!ckand」アプリで商品を選択して注文。「車上受け取り」を選択した場合は、店舗の駐車場に駐車したあと、店舗従業員が車まで商品を届ける。将来的には「レジ受け取り」も選択できるようになる予定だ。

写真1 「P!ck and」アプリのイメージ

2021年3月より岩手県内の4店舗でサービスを開始。年内にも全店舗の展開を目指す(なお、1注文につき220円〈税込み〉のサービス利用料がかかる)。

この「P!ck and」は、チェーンストアECの垂直立ち上げプラットフォーム「Stailer」を展開する株式会社10Xと薬王堂が共同で行う「ドラッグストアDX推進プロジェクト」の第1弾という位置付けだ。

10Xはこれまで「Stailer」をイトーヨーカドー(東京都)やライフ(大阪府)、フレスタ(広島県)などの食品スーパーマーケット(SM)に提供してきたスタートアップ企業。今回は初のDgS企業との協業となる。

「Stailer」は、チェーンストアを対象に、ECやドライブスルーなどの便利な顧客体験を実現するための複数のシステムをまとめたもの。お客向けのスマートフォンアプリや店舗向けのピッキング&パッキングアプリ、在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティング・システム、分析ツールといったシステムを一括して提供する。

簡単な使用感 作業ミス防止の工夫も

「P!ck and」のアプリを使ってみると、とてもシンプルな使用感である。以下に順を追って利用方法を紹介する。

①商品選択〜注文まで
お客はアプリ上の商品選択画面で、購入したい商品を選択し、受け取り日時と受け取り方法を選択する。あらかじめ支払い方法などが登録されていればあとは注文を確定するだけ。2ステップ程度で注文は完了する。

②従業員の作業
店舗従業員は、従業員向けのピッキング&パッキングアプリ(写真2)に従い、商品のピッキング&パッキングをする。商品のバーコードをスキャンしてから作業を行うことで、ミスを防止する。パッキングの際はお客にお渡しする商品の小口数をアプリに登録し、それぞれの小口用にラベルを印刷して貼付する。

写真2 従業員用のアプリ画面と作業手順

③来店〜お渡しまで
お客は店舗に到着すると、アプリから店舗従業員に向けて「店舗に到着した」旨の通知を送る。従業員はピッキング&パッキングした商品を、お客の車まで持っていってお渡しする(写真3)。

写真3 受け渡しの様子

お客に渡す商品に貼付するラベルやお客のアプリには、それぞれQRコードが発行されていて、それをカメラで読み取らないと、次の作業に進むことができない。受け渡しのミスを防ぐための工夫である。近々導入予定の新機能ではレジでの受け渡しも選択可能で、その場合は、レジでしか使えない決済方法で支払いもできる。

いずれの方法にしても、できるだけ非接触で、あるいは店舗の滞在時間を短く済ませることができる。コロナ禍でなるべく人と接したくないというニーズにも適合する方法だ。

契約から半年でリリース スピードの裏に在庫システムあり

「P!ck and」スタートの経緯で驚かされるのがそのスピード感だ。薬王堂と10Xが正式に契約してからサービス開始までに要したのは約半年。Stailerという既存のプラットフォームを利用しているとはいえ、驚くべき短期間でのリリースだ。

その背景には薬王堂の在庫管理システムの精度の高さがあった。薬王堂は、店舗作業の軽減のために、自動発注システムへの投資を積極的に行っていた。薬王堂 営業本部 DX推進室 マネジャーの西郷泰広さんは次のように語る。

「弊社は12、13年前から自動発注の仕組みを取り入れようとしていましたが、当時精度はそう高くなかったそうです。しかし、5年ほど前にパルタックさんの物流に切り替えてから本格的に自動発注の精度アップに注力し、現在は全商品の88〜89%を自動発注しています」

薬王堂 営業本部 DX推進室 マネジャー
西郷 泰広さん

発注精度向上前は、1店舗当り1日7、8時間かかっていた発注作業であるが、現在では1店舗1日当り30〜60分までに短縮。店舗従業員が発注にほとんど時間を割かずに済むようになっている。人口が少ないルーラルで、いかに高効率の店舗運営を続けるかを考えた末にたどり着いた施策だったといえる。そして、自動発注の前提となるのが在庫管理システムだ。薬王堂は同プロジェクト開始前には、既に全店舗のSKU単位での在庫数を1時間ごとに更新し、参照できるようなシステムを構築していたという。

10X 代表取締役CEOの矢本真丈さんは、今回のシステム立ち上げについてこう評する。

「今回のようなサービスを開始する際には、デジタル上での在庫管理システムの実現と、ピッキング・パッキングのオペレーション効率化の2つが肝になります。ピッキング・パッキングについては、これまでの開発などから弊社に知見があり、薬王堂さまをサポートしつつ、ともにテストを行い、オペレーションを構築してきました。

一方、在庫管理については、在庫を適正に管理し、ネットでも店舗でも販売できる状態をつくり上げなければなりませんが、その仕組みが整っている小売業は、現状ほとんど存在していないといえます」

10X 代表取締役CEO
矢本 真丈さん

そのため、これまでStailerの導入時には、小売業の持つ在庫管理システム上のデータを膨大な手間をかけてクリーニングし、構造化する必要があった。「ですが薬王堂さまは今回のプロジェクトスタート前から店舗で個品管理できる状態をつくっていました。データも整っていて、これまでとは逆に弊社が薬王堂さまに助けられる形になりました」

薬王堂側では西郷泰広さんを中心とする4人が同プロジェクトに参加。店舗オペレーションを把握しているメンバー、社内システムに精通しているメンバー、法務的な課題を調整するメンバーなど、社内のスペシャリストが揃った。

西郷泰広さんは、10Xに業務を依頼した経緯をこう語る。

「優秀な人たちが揃っていて、自律的に動いている企業さんと感じますし、その分スピーディにリリースができました。ドライブスルー受け取りも、10Xさんが私たちの店舗を訪れて1回目のデモで提案してくれました。当初は自社開発も検討していましたが、仮に自社で開発していたらこの半年というスピード感でリリースはできなかったとおもっています」

続きは月刊マーチャンダイジング2021年5月号にて!

  • 使いやすさを最優先 割り切ったアプリ構成
  • 売上げの3%占めるサービスを目指す
  • ラストワンマイル配送 生鮮・総菜販売にも挑戦する薬王堂のルーラル戦略とは

リアル店舗の狭小商圏化は加速 「商圏人口3,000人」時代に備えよう

月刊MDでも何度か紹介している食品強化型ドラッグストア(DgS)「ゲンキー」は、人口が減少し、高齢化率が上昇する地方都市の「過疎地」立地に、売場面積300坪の店舗を出店する経営戦略で急成長しています。ゲンキーが想定する商圏人口は7,000人~5,000人と、従来の総合小売業の商圏人口としては極めて狭小商圏立地を想定しています。

商圏人口7,000~5,000人を狙うゲンキー、薬王堂

月刊MDでも何度か紹介している食品強化型ドラッグストア(DgS)「ゲンキー」は、人口が減少し、高齢化率が上昇する地方都市の「過疎地」立地に、売場面積300坪の店舗を出店する経営戦略で急成長しています。ゲンキーが想定する商圏人口は7,000人~5,000人と、従来の総合小売業の商圏人口としては極めて狭小商圏立地を想定しています。

また、東北地域にドミナント展開する「薬王堂」も、商圏人口5,000人の過疎地の生活を支える業態を店舗展開しています。今年からはアプリを活用したBOPIS(Bye Online Pickup In Store。アプリで注文し店舗受け取り)のサービスを開始し、近い将来は客の自宅まで商品を届ける「宅配」にも挑戦する計画です。高齢化が進み、免許返納の高齢者が増加する東北の過疎地の「ラストワンマイル」を実現する宅配に取り組むことで、「狭小商圏高シェア」を目指す戦略のようです。

小売業は「立地産業」と呼ばれ、人口の増加している地域に出店するのがセオリーです。しかし、車で30分もかけて来店するような大商圏のリアル店舗は、Amazonなどのeコマースとの競争に弱いと考えられます。「コストコ」のようなAmazonにはない特別な来店目的を持つ業態以外は成立しにくくなると考えられます。

Amazonと共存できるリアル店舗は、「近くて便利」という価値を磨いた小商圏店舗だけになる日が来るかもしれません。ゲンキーや薬王堂は、あえて人口5,000~7,000人の人口減少立地に「逆張り出店」することで、残存者利益を獲得し、需要を総取りする作戦です。

5,000人~7,000人の立地でも商売を成立するためには「ラインロビング」は不可欠の戦略です。新しいカテゴリーを増やすことで「来店目的」を増やし、一人当たりの支出金額を増やすことが、狭小商圏立地で成立させるためのセオリーです。ゲンキー、薬王堂ともに生鮮食品までラインロビングし、地域の便利な店を目指そうとしています。

年1,000店の出店続けるダラー・ジェネラル


ゲンキーや薬王堂がベンチマークしているアメリカ小売業は「ダラー・ジェネラル」だそうです。ダラー・ジェネラルは、ルーラル(田舎)立地に高密度でドミナント出店し、毎年1,000店前後の新規出店を継続しています。

最近のアメリカ小売業界は、大商圏立地の「大型ショッピングモール」の大量閉店が続いています。ショッピングモールに入居している核店舗のデパートやGMSの閉店が相次ぎ、コロナ禍の中で、ショッピングモールにテナント出店するアパレルなどの専門店の倒産も相次ぎました。

一方で、ダラー・ジェネラルやアルディのような「小型の小商圏業態」の大量出店が続いています。両社とも人口の少ない立地に出店できる売場面積300坪程度の「小商圏小型ディスカウンター」です。ダラー・ジェネラルは、ほとんどの商品が10ドル以下で売られ、2020年1月末で全米45州に16,278店舗を展開。アメリカは50州なので、まだ出店していないエリアが残っており、アメリカでもっとも成長余地の大きいリアル小売企業として注目されています。

ダラー・ジェネラルの店舗の多くは、大型店が少ない人口1万人以下の郊外やルーラル(田舎)地域に展開されています。2019年度、975店舗の新規開店、1,024店舗を改装、100ヵ所の店舗を移転しました。これら店舗網で全米45州をカバー、人口の75%以上が店舗から半径5マイル(約8㎞)以内に住んでいる小商圏店舗です。

ダラー・ジェネラルの大きな特徴は、Amazonのようなネット通販と棲み分けできることです。「近くて便利」「10ドル以下の低価格帯」が武器なので、自宅近くのダラー・ジェネラルを利用すれば、無理にAmazonで注文して配達してもらう必要がありません。また、オンラインで注文して店舗受け取りという新しい買物体験「BOPIS」にも2019年から挑戦していますが、自宅から近いので受け取りが便利という理由で好調です。また、総合ディスカウントストアのウォルマート以上の安さを実現しており、所得格差の激しいアメリカでは、低所得者層にとって便利な業態として定着しています。

日本でも地方都市は人口減少と高齢化が進み、免許返納によって遠くの大型店よりも、近くの便利な小商圏店舗を選ぶ高齢者が増えていきます。人口減少が続く地方都市の店舗が少なくなる中で成立すれば、唯一残った便利な店舗として「残存者利益」を得ることになるでしょう。また、コンビニしかないような過疎立地であれば、300坪店舗でも地域の最大店舗です。「小さな町に大きな店をつくる」という昔からある商業経営の格言は、洋の東西を問わず共通しています。

また、アメリカ同様に日本も所得格差が開いています。ゲンキーで販売している弁当の最安値は198円ですが、こういう激安商品を好んで購入する消費者が増えていきます。とくに高齢者は年金生活者なので、ストック(資産)はあってもフロー所得は少なく、節約志向は今後も高まっていきます。

ゲンキーは、300坪型の「Rタイプ」店舗を今後3年間で272店も開店し、2023年6月期の店舗数568店、売上高2,400億円の目標を立てています。ダラー・ジェネラルのように、大量出店を計画しているわけです。ゲンキーは自動発注など店舗で考える作業を極力減らし、入社2年で店長になれる仕組み化を武器にして、レイアウトもまったく同じの「金太郎飴店舗」を量産しようとしています。

生鮮全店導入により7,000人商圏での勝ち残り図るゲンキー

人口減少、Amazonとの競争の中で、リアル店舗の狭小商圏化は加速していきます。近い将来、「商圏人口3,000人」時代に備える必要があるかもしれません。

ビー・アンド・ディー「既存の強みと標準化で、次のステージ目指す」

愛知県春日井市に本社を置く株式会社ビー・アンド・ディーは県内に68店舗を出店。売上高294億6,000万円(2020年5月期)のローカルドラッグストアだ。売場づくりの完成度には定評があり、店舗運営レベルも高い。2018年からツルハグループの一員となり、DgS激戦区愛知県での勝ち残りを図る。2019年6月、代表取締役社長に就任した上條明子氏に聞いた。(聞き手:本誌編集長 野間口 司郎/月刊マーチャンダイジング2021年4月号より抜粋の上転載)

出店エリアに合わせ地域密着を徹底追求

──愛知県は全国でも有数のDgS激戦区です。こうした環境にあってどのような店づくりを目指されているでしょうか。

上條 よくいわれる言葉ですが、地域密着型の営業を徹底する、それに尽きるとおもいます。地域密着とひと言でいってもそれを実現させるのは大変に難しいことです。当社の出店エリアである愛知県は高齢化が進んでいる地域、比較的若い方の多い地域などエリア特性はさまざまです。店舗も150坪、300坪など立地により売場面積が異なります。地域密着とは地域や店の状況に合ったコミュニケーションスタイルでお客さまとの距離をいかに縮められるかだとおもっています。

当社にはほかのDgSから転職してきた社員が多数おりますが、多くの転職者たちはB&Dドラッグストア(以下B&D)の従業員とお客さまの関係を見て驚きます。たとえば、店長の出勤スケジュールを把握しているお客さま、旅行に行ったらお土産を買って届けてくださるお客さまなどがいらっしゃいます。商品とは関係のない何気ない会話の時間を持つ、店長の異動も抑えてなるべく長い期間ひとつの店で働いてもらう。お客さまのご要望は可能な限り取り入れることなどが、このような緊密な関係づくりには重要だとおもいます。

私たちはお客さまから品揃えしてほしいというご要望があった商品は、そのときだけの取り寄せで終わるのではなく、定番化しようという考えをずっと持ってきました。たとえ、それがDgSらしい商品でない場合もです。一人のお客さまの声が地域を代表しているケースは少なくありません。

また、パート従業員の方は女性が多いので、家事や子育てを最大限応援することで長く働ける環境をつくることにも注力しています。子供さんの急な発熱や学校行事などでお休みを取らなければいけなくなったときは絶対にイヤな顔をせず、快く了承するようにと前社長のときから店舗には厳命してきました。こうした取組みを地道に続けていくことで本当の意味での地域密着型の店をつくっています。

食品の売上構成比約40% 早い時期から小商圏対応の店舗に

──部門別のざっくりとした売上構成比、標準店の売場面積など教えていただけますか。

上條 申し上げたように、店ごと、地域ごとで売場面積、売り方も違うので一概にはいえないのですが、平均すると食品が40%近く、化粧品、医薬品、日用雑貨は各20%といったところです。DgSの小商圏化を感じて食品に力を入れ始めたのも早かったですし、雑貨に特色を持たせることにも昔から注力しています。B&Dは創業者の意向や競合との差別化を図る意味でも「バラエティストア」のようなDgSを志向していましたし、現在もその路線は継続しており、食品、雑貨の品揃えを工夫することで、バラエティストア色を発揮しやすくなります。

当社の店舗はドン・キホーテのような感じがするとたまにいわれることがあります。面白い商品があるという意味では褒め言葉ですが、老若男女にさまざまな商品が選びやすいという意味ではまだまだ改善すべき点が多いとおもっています。そして、今後のB&Dにとってもっとも重視している視点は「優しさ」なんです。ちょっとした気づかいが売場に反映されてこそリアル店舗の意味はあるのだと考えています。

売場面積は昨年の全店平均で197坪。よい物件があれば300坪の店も出しますし、まだ挑戦していませんが400坪、500坪といった大型店にも挑戦していきたいです。地域に合った個性のある店をつくれる自信はあります。ただ、150坪型には150坪型のよさがあると個人的には考えています。

──調剤薬局に関してはいかがでしょう。

上條 現在、DgS併設、単独店合わせて調剤薬局を21店舗運営しています。これまで立地のいい場所にクリニックを誘致して医療モールをつくることを得意にしていました。ツルハグループに入ってノウハウを共有できることもあり、今後はDgS併設型をどんどん進めていきます。売上も大変順調です。

カウンセリング販売の基本は商品を好きになり理解すること

──今後の成長戦略でもっとも重視することは何でしょうか。

上條 接客、カウンセリングの強化を進めています。HBCは当然ですが…

続きは月刊マーチャンダイジング2021年4月号で!

食品構成比50% 顧客満足重視の繁盛店「B&D 長久手東浦店レポート」

2020年12月号に掲載した「顧客満足度調査2020」の店舗部門にて、500店舗中5位にランクインした「B&D 長久手東浦店」をリポートする。B&Dは、平均197坪の店舗に常時売場スタッフを多数配置し、お客が質問できる態勢を整えている。顧客満足向上に徹底的にこだわることで、地域シェアを高める経営方針である。

同店は、食品・雑貨の品揃えを工夫することでバラエティ色を演出している。他店と差別化できる品揃えにするため、ツルハグループ専売品を強化して「目的来店性」をつくっている。手の込んだPOPは読み応えがあり、担当者の創意工夫にあふれた楽しい売場である。

加藤 淳一店長

入り口外にB&Dの売れ筋である「紙製品」「スリッパ」を陳列。地域客のニーズに応える
大迫力のお菓子のプロモーション
ドラゴンボールの「フリーザ」が「フリーザーバッグ」を推奨
買上点数の多いカップ麺プロモ

[DATA]
店舗名/B&D 長久手東浦店
所在地/愛知県長久手市東浦1009
店舗面積/250坪
平均月販/約4,000万円
食品(酒込み)/構成比 約50%

続きは月刊マーチャンダイジング2021年4月号で!

チェーンストア北本エリアの乱!?コスモス、ベルク、アオキ、ウエルシア

2020年10月、コスモス薬品が埼玉県初出店を果たした北本市はドラッグストア(DgS)、食品スーパー(SM)が密集するエリアだ。この地区でDgSや食品SM各社は食品をどのように販売しているのか。調査で解き明かす。(月刊マーチャンダイジング2021年4月号より抜粋)

半径2km圏内にチェーンストアが密集

埼玉県中東部に位置する北本市。人口約6万6,000人で、中山道の宿場、鴻巣宿があった歴史ある土地柄である。北本市を南東から北西に貫く県道164号線は旧中山道として知られており、この旧中山道沿いに昨年10月出店したのが月刊マーチャンダイジングの別記事でリポートしたディスカウントドラッグコスモス北本本宿店である。(ご購入はこちらから

そしてそのコスモスを中心とする半径2km圏内に、ドラッグセイムス、クスリのアオキ、ウエルシア薬局、スギドラッグ、食品SMはベルク、とりせん、ヤオコー、いなげや、ホームセンターのカインズ…と無数のチェーンストアがひしめいているのである(図表1)。本稿では、チェーンストアにおける食品取扱いの状況を研究するため、コスモスドラッグ 北本本宿店、ならびに近隣に出店しているベルク北本 二ツ家店、クスリのアオキ 二ツ家店、ウエルシア 北本中丸店の簡便調理の棚の状況を調査。可視化することで各社の食品の売り方について検討する。

共働き世帯増に合わせて求められる時短提案

厚生労働省の調査によれば、1995年を境に共働き世帯と専業主婦世帯数は逆転。2019年には共働き世帯が1,245万世帯に対し、専業主婦世帯は575世帯になった(図表2)。

このことによる最大の変化が、それまで以上に「調理時間を短く済ませることができる材料」が好まれるようになったということだ。昨今はコロナ禍の巣ごもり生活によって調理回数が増え、調理の手間を軽減したいという声も多く聞かれるようになった。

そこで、総菜、カット野菜、冷凍食品などとともに、今後さらなる伸長が期待できるのが、素材と混ぜるだけ、あるいは混ぜて加熱するだけでメニューが完成する「簡便調味料」である。

簡便調味料の元祖といえば、味の素の「クックドゥ」だろう。クックドゥは1978年に本格的な中華料理を家庭で味わえる合わせ調味料として発売が開始され、2012年から「クックドゥきょうの大皿」シリーズとして、和食シリーズも展開。キッコーマンは追って2002年から「うちのごはん」シリーズを上市している。

2019年には後発の江崎グリコが栄養のバランスを考えた付加価値の高い総菜の素「バランス食堂」を発売。新商品も増加傾向でホットなカテゴリーといえる。そこで今回はグロサリーの中でもこの簡便調味料を各社がどのように取り扱っているのか、調査した。

時短料理派にうれしい店内レイアウト

ここからはディスカウントドラッグコスモス北本本宿店の店舗について解説する。同店では、主通路沿いに簡便調味料の棚を3尺5本で展開している(レイアウト図は月刊マーチャンダイジング2021年4月号に掲載)。このような簡便調味料カテゴリーは、これまで内側の定番ゴンドラで展開している企業が多かったが、この店舗では買物をする際には必ず前を通る、非常に目に付きやすい場所へ「大躍進の移動」を果たした。なお、主通路沿いは「第1マグネット売場」と呼ばれ、「買上率の高い商品」「客層を限定しない商品」「購買頻度の高い商品」などを陳列するのが原理原則とされている。

ちなみに、入り口方向から主通路を歩くと「簡便調味料」のあと「パスタ」「カレー」、そして第2マグネット(通路の突き当たり)の「冷凍食品」という流れになっており、ショートタイムクッキングを志向する層にとっては、この通路で買物が済む便利さがある。

棚は向かって左から右へ「中華材料→韓国料理材料→中華簡便調味料→和食簡便調味料(2本)」という順番で並ぶ。

トップシェア商品はあえてゴールデンゾーンから外す

棚2本を取っている和食簡便調味料から見てみよう。まず注目したいのが、認知度の高いキッコーマン「うちのごはん」、味の素の「きょうの大皿」がゴールデンゾーンから外されていて、ゴンドラ下部に陳列されている点だ。

ゴールデンゾーンには、後発である江崎グリコの「バランス食堂」が11SKU、19フェースで陳列されている。バランス食堂は98円と値ごろ感がある価格で低価格の印象を与えるのには最適だ。

また同様に後発で、ブランド認知が低いミツカンの「CUPCOOK」「SOUP食堂」「さっぱり〇〇の素」もゴールデンゾーンに配置。首都圏では認知度が低いイチビキの「献立らくらくシリーズ」はゴンドラ上部で横に大きく面を取って認知度を上げようとしている。正田醤油の「ラクめし」は、生肉などに和えて冷凍ストックをつくるという、これまでにない機能性を持っている商品だが、まだまだ認知度が低い。これもゴールデンゾーンの目立つ場所で販売しており、後発ブランド育成の意図が読み取れる。

中華簡便材料の棚では、シェアナンバーワンのはずの味の素「クックドゥ」のフェース数が3と他社に比べて非常に少ない。

一方で、ブランド認知度の低い「日本食研」の中華簡便材料をゴンドラ下部で12フェースにもわたり展開している。価格も「クックドゥ」より10円安い。こちらも後発ブランドと提携して育成しようという狙いがうかがえよう。

原理原則に忠実にPBを育成する

コスモスのグロサリー売場といえばプライベートブランド(PB)のON365であるが、簡便調味料の棚では麻婆豆腐と回鍋肉、鶏ガラスープの3品を展開。ON365の麻婆豆腐は辛口と甘口の2種類で各128円。トップブランドの丸美屋の麻婆豆腐158円と比較して30円安い。プライスカードの価格表示は、ON365のものだけ赤い文字を使っていて、視認性が高い。

なおON365の麻婆豆腐を製造しているのは永谷園で、同社はこの簡便調理棚においてはほかに、チャーハンの素や麻婆春雨、チャプチェ、ガツンとスタミナ食堂など、飛び飛びではあるがシェアを高めている。麻婆豆腐は他小売業でも永谷園が製造しているPBが多く、自社ブランドの認知を高めるよりも、小売業と提携して各社のPBを製造することで、カテゴリーでのシェアを取りにいく戦略をとっているようだ。

ON365の「国産鶏がらスープ」はトップブランド味の素の商品の右隣りにフェース数を多く、低価格で展開をしている。これは左右の法則というチェーンストアの原理原則を適用した陳列だ。日本人は右利きが多いため、同じ棚に隣同士に並んでいる商品では、右側にある方が手に取りやすいため有利だ。

この法則を利用して、ショッパーが視認しやすいトップブランド商品の右隣に、これから育成するブランドもしくはPBを配置する。ブランド育成をする際にはよく使われる法則である。このことからも同社が原理原則に非常に忠実に売場づくりをしていることがよくわかる。

また簡便調味料と中華調味料が一緒に売られていたり、あまりほかでは見ない韓国料理の素材を多めに取り揃えているのも興味深い。

プライスカードに付いたキャッチコピーの秀逸さ

コスモスの簡便調味料の売場で際立っていたのが、プライスカードのほとんどに、キャッチコピーがついているという点だ。「〇分でできる」「フライパンだけでできる」「冷凍肉と組み合わせる」「キャベツと〇〇でできる」など。時間や素材、道具について、ポイントを簡潔な文章でまとめており、商品のメリットがわかりやすい。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年4月号でご覧ください。
(コスモス、ベルク、アオキ、ウエルシアのストコンレポートが掲載されています)

NFI定例セミナー「狭小商圏時代の『新業態開発』最前線」(2021/05/19 13:00~16:00)開催ご案内(リモートのみに変更となりました)

2021年5月のニューフォーマット研究会定例セミナーは、「新業態開発最前線」をテーマに「リアル」と「リモート」の同時開催。より狭小商圏で成立させるため、新カテゴリーのラインロビングに挑戦する事例が増えています。300坪型が主流だったドラッグストアが600坪に挑戦する事例も増加。最前線の事例を解説します。また、店舗のICT活用研究所の郡司昇氏を特別講師にお招きし、「リアル小売業のDX最前線」について解説してもらいます。

※2021年4月26日更新

緊急事態宣言の発令を受けまして会場での実施を中止し、Zoomセミナーのみへ変更となりました。会場でのセミナーをご検討頂いていた皆様には、このようなご案内となり誠に申し訳ございません。

開催概要

・開催日:2021年5月19日(水) 13:00~16:00
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:リアルとzoomによるリモートセミナー
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年5月10日(月)

スケジュール

(1)新業態のラインロビング&売場づくり
[13時00分~14時頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・狭小商圏時代のマーチャンダイジング戦略
・新業態のラインロビング戦略
・新業態の売場レイアウト分析  他

(2)リアル店舗の「価値づくり」戦略
[14時10分頃~14時50分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・リアル店舗の価値とは何か?
・接客強化と販促のパーソナル化
・調剤併設型ローカルドラッグストア好調の理由  他

(3)特別講座・リアル小売業のDX最前線
[15時頃~16時頃]

店舗のICT活用研究所 郡司 昇氏

・リアル小売業のDX成功のポイント
・Withコロナ時代のデジタルシフトの事例研究
・新しい買物体験と1to1マーケティング  他

※最近、埼玉県の北本市にコスモス薬品の500坪が開店して話題になっています。ウエルシア、セイムス、スギ薬局、クスリのアオキとも競合しています。リアルセミナーにご参加の方は店舗見学をして帰られることをお薦めします。

 

注意事項

・今回のセミナーはZoomを利用したリモートセミナーです。
Zoomの具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

申込み受付は終了しました。

「値入率」と「粗利益率」ってどう違うの?

値入率と粗利益率の違いを知らない人は意外と多いようです。今回は、その違いを解説します。

値入率とはロス前の売買差益率

値入率は、以下の公式で計算します。

値入率=値入高(売価-仕入れ原価)÷売価(販売価格)×100

たとえば、仕入れ原価が50円で売価(販売価格)が100円の商品の値入率は50%になります。小売業の組織では、商品部の商品の採用基準のひとつが値入率の高さです。値入率50%は儲かる商品と考えて仕入れて、全店に配荷(はいか)することも多いようです。

また、小売業の商品部がPB(プライベートブランド)を開発する目的のひとつも値入率の高さです。「相乗積」(下記図)の考え方では、値入率の高いPBの売上構成比が高まれば、企業全体の粗利益率の改善に結びつくと考えているからです。しかし、値入率の高いPBを全店配荷しても、必ずしも粗利益率が高くなるとは限りません。

なぜなら値入率は、ロス(不明ロス、値下げロス、廃棄ロス)がまったくないことを前提とした「売買差益率」だからです。

値入率が50%(儲けが半分)のPBを全店配荷しても、店頭で売れなくて不良在庫化した結果、PBを値下げし、廃棄すれば、粗利益率は大きく低下します。小売業のPBが失敗するのは、商品開発担当者の「高値入率主義」が原因であることが大半です。PB開発担当者は値入率の高いPBの販売状況、在庫状況にも責任を負う必要があります。

粗利益率とはロス後の売買差益率

一方、粗(荒)利益率は、以下の公式で求められます。

粗利益率=粗利益高(売上高-売上原価)÷売上高

粗利益率を確定させるために必要な「売上原価」は、以下の公式で求められます。

売上原価=期首原価棚卸高+期中原価仕入れ高-期末原価棚卸高

つまり、粗利益率(高)は、期中と期末で正確な棚卸作業を行って在庫確定した「ロス後の数値」ということになります。つまり、正確な在庫、正確な粗利益率、さらには正確な営業利益率を確定するために、もっとも重要な作業は棚卸作業なのです。棚卸のいい加減な企業は、すべての数値がいい加減になります。正しい数値管理の出発点が、正しい棚卸作業です。

読者の皆さんが「棚卸作業」の重要性を部下に説明するときには、上記の公式を使って解説してあげると分かりやすいと思います。

ロス後に在庫確定した後のPBの粗利益率が50%であれば、「相乗積」(粗利ミックス)の計算式によれば、企業全体の粗利益率の改善に大きく貢献します。粗利益率50%のPB(プライベートブランド)の売上構成比を高めれば、企業全体の粗利益率がどのくらい改善するかのシミュレーションを以下に図解します。

 

利益の設計図「相乗積」で読み解く小売業の経営方針

「定番」と「非定番」の違い 知っていますか?

Withコロナ時代は、短期特価特売による「プロモーション」(非定番)よりも、「定番」売場の選びやすさが重要になります。今回は意外と知らない「定番」と「非定番」の定義について解説します。

Withコロナ時代は短時間の買物が求められる

Withコロナ時代は、消費者の購買行動が大きく変化していきます。

第1の変化は、狭い床面積の店舗に商品と人を詰め込み、効率を追求するという「日本型繁盛店」の売り方が敬遠されるようになり、EDLP(エブリデイロープライス。毎日低価格)への転換が本格的に進むことです。「短期特価販売」による集客は、開店前に行列をつくり、特定の日に来店客が集中するために、Withコロナ時代の消費者は敬遠するようになります。プロモーション(非定番)よりも「定番売場」で商品を購入する客が増えていきます。

第2の変化は、買物客の「店での滞在時間」が短くなることです。凸版印刷によるコロナ前とコロナ後のスーパーマーケットの滞在時間の調査結果によれば、買物客の滞在時間はコロナ前と比較して明らかに短くなっています。スーパーマーケットに「30分以上滞在する買物客」は、コロナ前は来店客の33.8%を占めていましたが、コロナ後の2020年12月では23.6%と大きく減少しています。一方で、「10分以内の滞在客」は、コロナ前の5.2%から、コロナ後には8.8%と増加しています。

店に長居したくない買物客にとって、「商品の発見のしやすさ」が重視されるようになり、定番売場の1商品あたりの陳列量が増えていきます。また、一度来店したのだから「まとめ買いしたい」というニーズも高まります。

つまり、Withコロナ時代の消費者は、「ショートタイムショッピング」と「ワンストップショッピング」の両方を求めるわけです。従って、コロナ前よりも「定番売場」の重要性が高まります。

「定番」は維持する売場 「非定番」は変化する売場

それでは「定番売場」の定義とは何でしょうか?図にまとめてみました。


(再掲:定番と非定番の違い)

定番売場とは13週以上の期間、商品構成グラフ(棚割の状態)を維持する売場のことです。小売業のマーチャンダイジング(MD)のサイクルは13週が基本単位です。有名な「ウォルマート」とメーカーの協働取り組みであるJBP(ジョイントビジネスプラン)のサイクルも13週です。13週で協働することを決めて、13週後に数値検証し、次の13週の仮説・実践プランを決定します。つまり、13週単位でPDCAサイクルを回すことが、JBPの基本なのです。

JBP

「定番商品」とは、13週間以上の期間、売り続ける商品のことです。商品部の最大の職務は、定番売場の売れ筋商品を品切れすることなく継続集荷することです。

一方、「非定番売場」(プロモーショナル、シーズナル)は、13週間以内に変化する売場のことであり、非定番商品とは、13週間以内に売り切る商品のことです。短期特価特売品や季節品、ホット商品などの期間限定の商品です。「エンド」や「平台」などが非定番商品を陳列する売場になります。

「定番」と「非定番」の売上構成比は8対2もしくは、7対3と、定番の売上の方が高いことが一般的です。しかし、非定番売場は、新しい発見、安さの刺激、季節の刺激などを来店客に与える重要な売場です。13週間変化しない定番だけの売場では面白くないですからね。とはいえ、短期特価特売を乱発していた時代は、非定番売場の売場づくり作業に忙殺され、定番売場を放置していたことも多かったようです。しかし、Withコロナの時代で、EDLP型の売り方が主流になると、定番売場の維持・管理の重要性が大きく高まっていきます。

商品構成グラフのカタチを維持することが重要

定番売場の棚割の状態を表したものが「商品構成グラフ」です(下の図)。商品構成グラフは、(1)プライスポイント(陳列量の最も多い売価・商品)、(2)プライスレンジ(価格帯)、(3)プライスライン(売価の種類)を決定することが出発点です。商品構成グラフは、「カテゴリー(顧客の購買行動の単位)」で作成することが基本になります。あまりグルーピングを大きくしないことがコツです。たとえば、「歯磨き」で作成するよりも、「美白歯磨き」といった小さな単位で作成した方が良いと思います。

商品構成グラフでもっと重要なことは、プライスポイントの山を13週間以上の期間にわたり維持することです。プライスポイントの商品は売れ筋なので、売れ筋の陳列量が多い状態を維持すれば、売れ筋商品が発見しやすく、Withコロナ時代のショートタイムショッピングのニーズを満たすことができます。また、プライスポイントの山を維持すれば、売れ筋が欠品する可能性が少なくなります。さらに、売れ筋の陳列量が多いので、補充作業が軽減化され、ローコストオペレーションにも貢献します。

商品構成グラフ(棚割の状態)の維持・管理という言葉をあえて使っているのは、商品構成グラフは時間の経過とともに悪く変化するからです。たとえば、売れ筋の継続集荷ができなくなり、プライスポイントの山が低くなる。新商品が後から棚に追加されて、売れ筋のフェース数が減る。在庫削減の指示を受けた店舗が「発注抑制」し、売れ筋の在庫が減る、などが原因で、商品構成グラフは悪く変化します。

商品構成グラフが悪く変化した状態を、私は「射的陳列」(下の図)と呼んでいます。定番の商品構成(棚割)は、つくることも重要ですが、カタチを13週間維持することの方が重要です。射的陳列になると、とくに売れ筋の商品が発見しにくくなり、欠品が続出し、店内作業量も増えてしまいます。売上の8割を占める定番売場の維持・管理こそが、Withコロナ時代の最大の売上・利益対策なのです。

※商品構成グラフについてはこちらの記事にも詳しく記載されているのでご一読ください。

基礎からわかる!「商品構成グラフ」のつくり方・読み方・使い方

※好評発売中の『ドラッグストア拡大史』が発売1か月で増刷されました。まだ読んでない方はぜひご購入ください。

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AutoStore、冷蔵温度帯に対応するマイクロ・フルフィルメントセンター用ソリューションを展開

ロボットを使った高密度収納・ピッキングシステムを展開するAutoStoreは、2021年3月17日、マイクロフルフィルメント向けロボティクスソリューションの開発支援のためのテストセンター「Innovation Hub」開設に関するオンライン会見を行なった。様々な温度帯に対応することで、多様化するニーズに応える。(ライター:森山和道)

AutoStoreの現状 国内サイトは40以上

オートストア・システム株式会社社長 鴨弘司氏

<a href=”https://autostoresystem.com/ja/” rel=”noopener” target=”_blank”>AutoStore</a>はノルウェー発の企業で1996年創業。専用コンテナを高密度に収納してロボットが出し入れするキューブストレージを活用したロボット倉庫型ピッキングシステムを提供している。オートストアでは空間を最大限有効活用できる収納・保管・搬送システムだとしている。会見ではまず日本法人であるオートストア・システム株式会社社長の鴨弘司氏が概要を紹介した。

AutoStoreは5つのモジュールで構成されている。

1)アルミニウムで格子状に組まれたグリッド
2)『ビン』と呼ばれるコンテナ。3種類から選択できる
3)システムの各種コントローラー
4)グリッド最上部のトラックを動き回り、ビンの上げ下げを行うロボット
5)入庫・出庫を行うステーションであるポート

AutoStoreの5つのモジュール

スループットに応じていくつかの種類があるが、必ずこの5つの標準モジュールで構成されている。

最大の特徴はスペースの効率化。通路がなく天井近くまで空間を有効活用できる。これは土地コストが高い都市部における倉庫では大きな強みとなる。鴨氏は、よく聞かれる質問として「コンテナビンを掘り起こす必要があるのではないか」という質問を受けると紹介した。これに対してAutoStoreは取ったビンを上に返すので使用頻度が高いビンが上段のほうに集まり、頻度が高くないビンは運用しているうちに下のほうに自然に集まるようにソートされる仕組みとなっている。ロボットの電気使用量が競合他社に対して低いことも売りの一つだ。

AutoStoreはもともと自社の倉庫の改善、空間を有効活用するために開発された。2005年に外販を開始し、2010年には3カ国10サイトにインストール。2012年ごろから急成長しはじめ、2020年には500システムを世界30カ国に販売している。2021年3月現在では、590を超えたシステムを販売しており、ロボットの数は22,436以上。コンテナビンの数は2,000万以上。導入業種業態は20以上。販売数が上がるに従い、知名度・信頼性ともに伸びているという。

スケールを見ると、小さいサイトではロボット3台から稼働している。平均稼働数は36で、大きいものでは300台近くが稼働している。日本では2万ビン、ロボット30台程度が平均的なシステムとなっている。

国別に見ると、一番販売数が多いのがドイツ、次がアメリカ。続いてノルウェー、日本となっている。日本ではオカムラトーヨーカネツが代理店として販売導入を行なっている。なおオートストアでは直接販売はせず、各国に代理店をおいてビジネスを行なっている。

AutoStoreの各国代理店

AutoStoreではコンテナビンに入るものであれば扱えるので、業態は選んでいない。そのため業態業種は多種多様となっているが、業種のトレンドを見ると、3PLが増え、特に直近ではアメリカでグロサリーやフードを扱うニーズが増大している。これは新型コロナウイルス禍によって加速したという。

AutoStoreの導入先業種。グロサリーやフードを扱うニーズが増大中

日本法人立ち上げは2019年。国内累計販売実績は40件以上。ニトリ、パナソニック、コープさっぽろ、トラスコ、佐川などで活用されている。国内需要は「ECトレンドを含めて強く感じており、平置き棚の既存倉庫から自動化へのシフトが加速している」とのこと。鴨氏は「新型コロナウイルス禍で人材不足や省人化ニーズが高まり、加えて感染対策が必要となっている。人を介さないオペレーションを築くために自動化は待った無しの状況にある」と語った。なお鴨氏は「国内ではグローバルの1割を取りたいと考えており、グローバルが600システムなら60台を目指すということになる」と述べた。

自動化に対しては、2020年前半は新型コロナ禍のため出足が悪かったが、後半から2021年にかけてすごい勢いで伸び始めたとのこと。日本では海外に比べて遅いが、業種に関しては、そんなにグローバルと変わりはなく「ここ数年は3PLが伸びたが、今後はリテール、特に食品小売業の伸びが高いのではないかと考えている」とのことだった。

多様な温度帯をテスト可能なAutoStore「Innovation Hub」

AutoStore 最高製品責任者 カルロス・フェルナンデス氏

続けて、AutoStore 最高製品責任者(Chief Product Officer)のCarlos Fernandez(カルロス・フェルナンデス)氏がノルウェーのKarmoy(カルモイ)に設立された「Innovation Hub」について紹介。さらにマイクロフルフィルメントによってこれからのショッピングがどう変わるか、ローカルな店舗がどう変化していくかなどを解説した。

フェルナンデス氏は「オートストアの中核は技術革新。これからもイノベーションとディスプラプションを起こしていきたい」と述べて、レッドとブラックの二つの世代のロボットと、2020年に新しく発表されたソフトウェアアーキテクチャー「Router」を紹介した。

ロボットがどう動くかのアルゴリズムを改良することで、よりダイナミックにロボットが動けるように、そしてより少ないスペースのなかでたくさんのロボットが扱えるようになり、ロボットの生産性と効率では最大40%、ロボットシステム全体のスループットを最大4倍向上させるという。

従来のアルゴリズムではロボット台数を増やしても途中でパフォーマンスが上がらなくなってしまっていたが、「Router」ではパフォーマンスが向上し続ける。ポートでのピッカーの待ち時間も短縮され、全体の生産性が上がるという。また、ロボット一台あたりの効率が高まるので、必要台数も少なくなり、初期投資や保守費用も下げられるという。なお「Router」の使用はオプションとされている。

「Innovation Hub」は本社の横にあり、中ではAutoStoreの完全なシステムがインストールされている。市場に出す前に新しいアイデアをテストして検証確認できる場所であり、外見は他と全く変わらないが「未来の食品小売業がどうなるかを示している」とフェルナンデス氏は紹介した。

「Innovation Hub」内部

「Innovation Hub」には多様な温度帯でテストできる設備が整っている。-30度から45度まで世界中の様々な温度環境、すなわち冷凍や中東地域における流通センターなど様々なテストができ、さらに多くのアプリケーションに対応できるようになるという。

「Innovation Hub」では多様な温度帯のテストができる

内部には空調システムが設計されており、ゾーンごとに様々な異なる環境条件を作り出すことができる。たとえばスーパーマーケットで買い物するときのことを想像すると、常温環境のものもあれば、牛乳や野菜が置かれている冷蔵、あるいは冷凍エリアもある。それらの様々な条件下の食料品をAutoStoreのシステムのなかに全て入れてしまうことができるのだと述べた。

ゾーンごとに異なる環境条件を作り出せる空調システム

マイクロフルフィルメントのグローバルトレンド

オンライン食品小売業が成長し始めている

マイクロフルフィルメントのグローバルトレンドを見ると、消費者は、実店舗で買ってもオンラインで買っても同じ体験ができることを期待している。だが食品小売業分野は他に比べるとECの成長が遅い。他の商品よりも「直接、目で見て確かめた上で選びたい」という要望が強いからだ。しかし、新型コロナによって安全なかたちで商品にアクセスできることが非常に重要になった。そのため、食品についてもオンライン購入が急成長しているという。

食品小売業はニーズに応えるために従業員やパートタイマーに店頭で商品をピックさせるようになった。しかしこれではやがて、個別の需要に対応しきれなくなる。フェルナンデス氏は「現在は、消費者がマニュアル作業で商品を店舗内から集めているわけだが、未来はより経済的なかたちで消費者がマニュアル作業でやっていたことを置き換える必要がある」と指摘した。

オムニチャネルの店舗も出現し始めたが課題に直面

さらにオムニチャネルの店舗も人気だ。つまりオンラインで買って実際の商品を店舗でピックアップするというスタイルだ(※編集部注:近年ではBOPISとも呼ばれている形態)。だが、多くの店舗は、元来そういった用途を想定して設計されておらず、店舗内で注文の充足を行おうとすると高くついてしまう。店舗内のショッピング体験改善にも繋がらない。店舗において在庫を正確に把握することは難しく、欠品など多くの課題が現在の小売店にはある。つまり、オンラインの顧客は高いサービスレベルを要求するが、現在の店舗はそれを満たすことができていない。

マイクロフルフィルメントセンターには柔軟性、拡張性、信頼性が重要

そういった課題を解決するためにマイクロフルフィルメントセンターは受注において柔軟性、拡張性、信頼性が重要になる。フェルナンデス氏は「そのための最善のテクノロジーはAutoStoreだ」とし、AutoStoreは単一ポイントでの障害がネックにならず、オンサイトに人がいる必要がなく、既に設置されている580サイトでは99.6%の稼働時間を実現していると紹介した。AutoStoreによってシームレスなかたちで注文の取りまとめができ、よりよい顧客体験を実現できるという。

店舗にAutoStoreが併設される未来の店

マイクロフルフィルメントセンターが併設された未来の小売店

未来のローカルストアはどう変わるか。フェルナンデス氏は「世界は過去と同じではない。パンデミックによって買い物の仕方そのものが大きく変わろうとしている」と述べて、AutoStoreが活用される未来のアパレルショップや食品小売業などの将来像を示した。

AutoStoreを店舗に併設することで、プレミアムロケーションに出店しても設置面積は狭く、最大限の体験をもたらすことができ、最大限の在庫を持つことが可能になり、ショッピング体験を向上させられるという。またスーパーマーケットでもオンライン注文と組み合わせることで、豊富な商品の実店舗での受け取りと、既存の店舗での買いまわりを両立させられると述べた。消費者からすれば「自分にとって大切な商品は時間をかけて選ぶ。そうでないものは自動的に集められてピックアップするだけでいいということになる」。リテール業者にとっても多様なニーズに応えるための品揃えが限られた店舗容積で可能になり、最大限効率よく設置面積を活かせるようになる。

冷蔵アプリケーションは国内でも展開へ、冷凍は2022年以降に

冷蔵温度管理されたAutoStore

食品小売業にとって温度管理は非常に重要だ。数十万ドル規模の投資を行った「Innovation Hub」で開発したソリューションでは、AutoStore内にワイヤレスセンサーネットワークを作り、温度湿度を常に測定。パートナー企業や顧客にとって信頼性高いソリューションになったという。AutoStoreを使うことでより高いアイテム密度が実現でき、企業は1オーダーあたりコストを下げることができる。ダークストアも実現できるようになる。

フェルナンデス氏は常温環境、冷蔵商品、それぞれにおいてAutoStoreが稼働し、冷凍食品を扱う冷凍庫ではマニュアルで作業するといった具体例を示した。オーダーはバッチ処理を行い、オペレーターを在庫をリアルタイムに把握しながら、代用品や例外対応を行う。様々なデリバリー形態にも対応可能だという。

AutoStoreとマニュアルピックを組み合わせたマイクロフルフィルメントセンターの作業の流れ

冷蔵アプリケーションは既に国内でも提供可能。冷凍にはまだ対応できてないが製品開発中で、2022年には市場に出せる予定。なおアメリカではテキサス州とメキシコで約400店舗を展開するスーパーマーケットの「H-E-B」に既に冷蔵アプリケーションが採用されて好評だとのことだった。

冷蔵アプリケーションは米国スーパー「H-E-B」には既に導入済み

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EC、棚チェック、清掃…小売業におけるロボット活用状況[2021年版]

「Amazon Hub」の設置は新規客と来店頻度を増やす!

2020年12月8日に開店した都市型大型店舗「ココカラファイン東京新宿三丁目店」の2階にAmazon HuB(ロッカー)が設置されていました。同社の話では、「予想上に利用者が多い」ということです。来店目的をつくる新しいサービスとして注目されます。

予想よりも利用者が多いAmazon Hub(ロッカー)

ココカラファイン新宿三丁目店は、東京新宿東口からすぐの立地。隣が「紀伊国屋書店」です。4層の建物で約200坪の売場面積。1階が新しい発見のあるアンテナスペース、2階がヘルスケア、3階がメイクアップ、4階がスキンケア。ワンフロアが約50坪。上り下りのエスカレーターで移動する多層階の店舗です。

2階のエスカレーターの前に、写真のようなスペースがありました。インバウンド客向けの「荷物預かり用のロッカー」「ガチャガチャ」と並んで「Amazon Hub」を設置していました。

Amazonのサイトを見ると、ココカラファインのAmazon Hub設置店舗は約150店まで増えていました(2021年2月25日現在)。Amazonで注文した商品の受取場所をココカラファイン新宿三丁目店に設定すると、仕事帰りなどの好きな時間にロッカーで注文商品を受け取ることができるわけです。

取材した同社の担当者の話によれば、「当初に想定した以上にAmazon Hubの利用者が多いことに驚いています」ということです。Amazon Hubがリアル店舗の客数を増やすサービスとして機能していることがわかります。

Amazon利用者の衝動購買も期待できる

アメリカの大手小売業の「ウォルマート」と「ホームデポ(ホームセンター)」は、過去5年間くらいは新店をつくらず、店舗数をほとんど増やしていません。オムニチャネル化によって「新しい買物体験」を顧客に提供することでリアル店舗の売上高を大きく増やしています。

自社のアプリを使ってもらって「オンラインで注文して店舗受け取り」「オンラインで注文して自宅へ配達」「オンラインで注文した商品を店舗で返品」「店舗のショールーム化」などの新しい買物の選択肢を増やすことで、新店を増やさないでも既存店の売上高を増やして成長しています。

ココカラファイン新宿三丁目店の1階入り口付近では、「通販専用商品」を陳列し、触って確かめられるショールームのスペースになっています。

「オンラインで注文して店舗受取り」、アメリカではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)と呼ばれる新しい買物体験によるリアル店舗の売上増の効果が高いようです。配送料の高いアメリカでは、60%以上の顧客は自宅への配達よりもBOPISを選ぶそうです。BOPISを目的にリアル店舗に来店することで客数が増えます。しかも、BOPISを目的に来店した人の70%近くは、他の商品も購入して帰るという調査結果もあり、リアル店舗の「買上点数」を増やす効果もあるわけです。

Amazon Hubも同様に、リアル店舗の来店目的を増やすサービスです。アメリカの小売業でAmazon Hubを設置している店舗は、「受け取り」だけでなくて、「返品ボックス」を設置しています。「購入したけどイメージと違うので返品したい」という要望は、返品大国のアメリカでは多く、Amazonの返品ボックスもリアル店舗の来店目的を増やす重要なサービスになっているわけです。

アメリカの「コールズ」という郊外型デパートの店内にAmazon Hubを設置した店舗では、未設置店舗よりも「新規客」が多いという調査結果が出ました。つまり、コールズを今までまったく利用したことがない人が、Amazon Hubで商品を受け取ったついでにコールズで商品を購入した結果、新規客が増える結果につながったようです。Amazon Hubは、「来店頻度」を増やすと同時に、「新規客」を増やす効果も期待できるわけです。

ココカラファイン東京新宿三丁目店。店舗の詳細リポートは月刊MD5月号(4月20日発行)に掲載予定です。