参天製薬だからこそ実現できる本質的なアイケア
—コロナ禍で生活者のデジタルデバイスの接触時間が増えていると思いますが、現在の生活者の目の健康について教えてください。
渡邉 目を酷使する人はとても増えており、生活者のアイケアニーズは高まっています。弊社調査によると、15歳~79歳までの約85%の方が、何かしらの目の不具合を感じているというデータもあります。しかしながら、そのうち実際に対処している人は半数ほどしかいないという結果になっており、より多くの生活者にアイケアの重要性を知って、対処していただくことで、QOL(生活の質)向上に繋がると考えています。
—参天製薬さんは、目薬の会社という印象ですが、どのような取り組みをされているのでしょうか。
渡邉 弊社は創業から130年以上にわたり、眼科領域に特化し、傾注しています。眼科領域の専門性、技術力を礎に、病院向けの医療用医薬品や医療機器と、薬局・ドラッグストア(DgS)で販売しているOTC医薬品などの開発、製造、販売を行っています。
日本における組織では、医療用医薬品を担う眼科事業部と、OTC医薬品を担う薬粧事業部の2つの事業部があり、互いに連携しながら患者さん・生活者起点の活動を行っています。目薬の会社という印象が強いと思いますが、眼科領域のスペシャリティーカンパニーとしての弊社の責務は、単に目薬を売るということではないと考えています。2030年とその先に向けたVisionとして「Become A Social Innovator」と掲げていますが、これは、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、2030年までに目の疾患に起因する社会的・経済的な機会損失を削減することを目指しており、私たちはまさに今、その目標に向けて取り組んでいます。
私たち薬粧事業部は、そのVisionを実現するための戦略の1つとして、生活者に向けたWellness(ウエルネス)、つまり、より良い目の状態に向けた重要性認識向上とアイケアの推進に取り組んでいきたいと考えています。
—生活者に提供するWellnessとは具体的にはどのようなことでしょうか。
渡邉 まず、生活者へ本質的なアイケアの提供を行いたいと考えています。本質的なアイケアとは、医療用医薬品の実績を活かして医学的に正しい新たな機能価値の提供を行うことです。
また、清涼感などによるスッキリとした差し心地などにより情緒的な価値を提供する製品をご提供することによって、生活者の目薬の使用に対する間口を拡げ、アイケアの裾野を拡げていきたいと考えています。
なお、最近始めた取り組みとしては、生活者が自分で目の状態をセルフチェックしたり、アイケアに関する情報提供を行うことでアイケア意識向上を図るアプリの提供があります。こういった取り組みを地道に継続することによって、生活者が自分の目について関心を持ち、正しいアイケアを行うサポートを行っていきたいと考えています。
—医療用での実績を活かして医学的に正しい本質的なアイケアを提供することができることは参天製薬さんの強みですね。
渡邉 例えば、本質的なアイケアの浸透と拡大を図るために、2020年にスイッチOTCとして「ヒアレインS」を発売しました。「ヒアレインS」は医療用と同濃度のヒアルロン酸ナトリウムを配合した目薬で、涙液の不安定化によるさまざまな目の不快症状を緩和します。不快症状の対策には、単に目に水分を加えるのみならず、目の表面に安定的に水分を保ち続けることが大切で「ヒアレインS」はその有効成分が涙液層に長くとどまり、涙液を安定させます。疲れ目、見えづらさ、乾き目などといった目の不具合は、涙液層が不安定になることによって生じる場合があるとされており、不具合の原因から改善することができる本質的なアイケアを実現できる製品だと考えています。
DgSと参天製薬との地域医療連携について
—DgS(ドラッグストア)と地域医療連携に取り組んでいる事例もあるとお聞きしましたが。
渡邉 あるDgSを訪問した際に、今は物販中心だが、将来的には地域医療の中心になりたいという想いを伺いました。
幣社でお手伝いできることは何かと考えた結果、医療用医薬品の経験と実績を活かして、生活者へ、医学的に正しい本質的なアイケアの提供を行うことで、協働できるのではないかと考えました。
1つの事例ですが、弊社で生活者のアイケア意識向上を目指して開発した、「瞳うるるスキャン」というアプリをご紹介しました。
—どのようなアプリですか?
渡邉 このアプリの機能は大きく3つあります。まずは、セルフチェック機能です。チャット形式で自覚症状とリスクをチェックし、AI技術を活用した上で、眼表面に映り込んだ画像の解析からうるおい不足の箇所を表示します。総合結果として「瞳のうるおい度」高・中・低を判定します。これにより、生活者が自分の目の状態を知ることができます。
2つ目は、結果に対する対処法の提示です。セルフチェック結果に基づいて、眼科での診療やおすすめのOTC目薬、簡単にできるケアなどの対処法をご紹介します。
3つ目は、涙に関する情報コンテンツで目の不具合と関係する涙の役割等の情報を提供することです。
目の不調は感じているけれどアイケアをしていない生活者が、DgSの店頭で「瞳うるるスキャン」のPOPなどに出会って、目をセルフチェックし、実際に眼科を受診したり、OTC目薬を購入したという事例を聞いています。
こういった、DgSと連携した取り組みを通じて、継続的にアイケアをしようと思う人が増えていけば、地域生活者のQOLは向上すると考えています(写真1参照)。
薬剤師のカウンセリングでロイヤルカスタマーを育成
渡邉 医学的に正しい本質的なアイケアを実現できる製品「ヒアレインS」は、生活者のQOL向上とともに、薬剤師と生活者の関係を深めてくれる目薬だと思います。要指導医薬品であるため、薬剤師はチェックシートを活用しながら生活者にカウンセリングを行い、必要な場合は眼科への受診勧奨も行っていただく必要があります。
薬剤師がきちんとカウンセリングしていただくと、患者さんの満足度もリピート率も非常に高まることがわかっています。DgSのロイヤルカスタマーを育成していくためには、薬剤師の役割が非常に重要であり、生活者がより最適な目薬を選び満足していただくためにも、私たちは薬剤師へ情報提供を行っていくことが大切であると考えています。
冒頭で、弊社は単に目薬を販売するだけの会社ではないとお伝えしましたが、私たちは、生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことでQOLを向上させていくことを目指していきたいです。
「ウェルウォッシュアイ」は点眼型洗眼薬の新市場を創造
渡邉 また、衛生的に、目の洗浄ケアができる製品として2021年に発売した「ウェルウォッシュアイ」が、これまでになかった「点眼型洗眼薬」として、生活者のみなさまからご支持頂いています。
目にほこりや花粉、メイク汚れなどの異物が入ったとき、水道水で洗ったり、こすったりされる方も多くいらっしゃるかと思います。しかし、これらの行為は目の表面を傷付けたり、細菌感染など、さまざまなリスクがあり、正しい対処法であるとは言えません。
「ウェルウォッシュアイ」は、エビデンスに基づく確かな製品価値はもちろんのこと、持ち運びができて、いつでもどこでも、気になったその瞬間に目を洗うことができる製品です。そのような新しい価値が生活者に受け入れられ、購入者は、過去1年間に目薬や洗眼薬を購入していなかった方が半数程度であるということも分かっています。つまり、従来のカップ型洗眼薬からシェアを奪うということではなく、まったく新しいお客様を獲得できていることになります。
ほこり、まつげ、メイク汚れ、花粉など、いつでもどこでも目を洗えることは、生活者には朗報だと思いますし、さらに、コンタクトレンズの上からでも目が洗えるため、メイクを落とさなくても、気軽に使用できることが評価されています。そして、すでに点眼型洗眼薬で目を洗うことが習慣化されているユーザーも多くおられます。これからも、「ウェルウォッシュアイ」で新しく正しい目洗い習慣を生活者に提案することで、新市場を創造するとともに生活者への本質的なアイケアの浸透を目指したいと考えています。
—「花粉症対策」のアプリも開発されましたね。
渡邉 「かゆみダス」という花粉症による目のかゆみへの対策をサポートするためのアプリを開発しました。
このアプリは、花粉症シーズンに合わせて予測される気象状況から、かゆみなど目の症状の注意レベルとその対策、お薬の使用時間をプッシュ通知でお知らせするなどの機能実装した医師監修のアプリです。花粉の飛散状況は毎日異なりますし、春のスギ花粉だけでなく、イネやブタクサなど年間を通じて花粉は飛んでいます。地域ごとの花粉飛散状況を毎日お知らせし、適切な対処法や予防法をお知らせするとともに、アプリに症状なども記録することができるため、日々の症状について医師に伝える際に役立てているという声も伺っています。
アイケアの重要性を知っていただき、アイケアの人口を増やすことが重要
—今後の展開について教えてください。
渡邉 生活者の目薬使用率は30%程度と言われています。この数値は、1年間に1回でも目薬を使用した人の割合なので、目薬を定期使用している人はもっと少ないと思います。
生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことで、生活者のQOL向上に貢献し、結果的に目薬の使用率と市場の拡大を推進していきたいと考えています。
また、生活者のアイケアの裾野を広げるため、継続的にさまざまな商品開発やアイケア啓発を行っていきたいと思います。将来的には、生活者の本質的なアイケア課題解決につながるセルフケアソリューションとしてのサービスを展開できると良いと考えています。
弊社の特徴である、アイケアを軸に、眼科事業部と、生活者向けの薬粧事業部が力を合わせて情報発信を行い、生活者のウェルネスの追求を通じて、目に関する社会課題の解決に向けて取り組んでいきたいです。
〈取材協力〉