値上げラッシュ!コンビニ各社のスイーツ戦略とは

値上げラッシュは我が道を歩むコンビニ業態にも無縁ではない。利便性を強みにして、決して安くはない商品を展開して半世紀。コロナ禍で変化したマーケットに当初は適応できずに苦戦してきた。新しいマーケット、そして原材料の高騰、所得の格差拡大に、コンビニの商品政策は、変わるのか、変わらないのか、先ごろのセブン−イレブンによるスイーツ全面刷新を事例に考えてみたい。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

コンビニ100円コーヒーは終焉。高級路線とセットで値上げ対応

シュークリームも、この価格まで高まった「シュー・パティシエール」172円

セブン−イレブン(以下、セブン)が6月にスイーツを全面刷新した。定番のシュークリームが172円(税込み、以下同)、豆大福151円、他にも、モンブラン345円、どらやき226円と強気の価格が並ぶ。セブンが唱えるのは「品質向上」である。折から原材料費が高騰している。セブンも、この春にサンドイッチなど基本アイテムの値上げに踏み切った。

その際、同社の青山誠一取締役執行役員商品本部長は「コストを価格に転嫁するのであれば、お客様に満足してもらえるような見直しを図っている。サンドイッチは少し低迷していたが、販売が上向き、nanacoデータからリピート率の向上も確認できた。全てがうまくいったわけではないが、商品の質を高めるリニューアルをしっかりと実施していく」と、値上げの方向性を示した。

実際に売上の4割以上を占める、おにぎりや弁当、調理麺、サンドイッチ、総菜といった「ファストフード、日配品」は、オリジナル商品がほとんどなので、他社と比較されることがない。原材料費のコストアップにより値上げが必要であれば、単に価格を上げて、お客に理解を求めるのではなく、商品の品質や製造方法を変更、すなわち“商品の質を高めるリニューアル”により、納得してもらう方法を取るとしている。

物価上昇に賃金が追い付かない現状、チェーンストア大手のイオンや西友は、プライベートブランド(PB)商品に関して「価格据置き」を宣言している(一部商品は6月末で解除)。普段の食生活を支える基本商材を値上げせず、チェーンストアとして人々の暮らしを守る使命を担っていると自負しているからであろう。

対してコンビニの役割は「利便性」の提供であり、セブン−イレブンは創業期から「開いててよかった」、2010年より「近くて便利」をキャッチフレーズにしている。「どんどん安く」は理念にない。今後、所得の二極化、格差が拡大すれば、コンビニの利用を止める層が出てくるかもしれない。それでもトレードオフして価格維持するよりも、トレードオンして価格を見直す方向性は一貫している。ただし、競争環境や広くマーケットの特性に応じて、カテゴリーごとに取り組みは違ってくる。

セブンは7月4日より、カウンターで販売するコーヒーの価格を10%~20%引き上げた。税込み100円だったコーヒーが110円に。「100円コーヒー」の俗称は使えなくなる。この価格改定は単純な値上げである。買い付けたコーヒー豆を焙煎して店舗に供給、設置したマシーンで提供するコーヒーに改善の余地は、ほとんどない。

セブンはかねてより高級豆を使用したコーヒーの実験を各地で実施してきた。筆者は2017年冬に札幌市内で「高級モカブレンド」120円を目撃しているが、その後、実証実験は各地で継続しながら本年5月24日より「高級コロンビア・スプレモブレンド」140円に統一して全国の店舗で順次発売している。

すなわち、長らくレギュラーサイズ100円だったコーヒーに、110円、もしくは140円の選択肢を用意して提供している。

コンビニのカウンターコーヒーは、コンビニ同士の競合はあっても、それ以外には競争にさらされない。例えば、ドトールコーヒーの持ち帰りはSサイズで税込み220円。コンビニの2倍の価格を設定している。コーヒーショップはイートインを基本としており、テーブルとイスを設置してスペースを確保している分、コーヒーにいわゆる「場所代」を乗せている。テイクアウトも、その価格に合わせているので、コンビニよりも割高になる。コンビニのカウンターコーヒーが価格優位性を発揮できる。

現時点(6月末)で、他のコンビニチェーンは100円コーヒーの価格を据え置いて様子見しているが、セブンの買上点数が変わらないようであれば、追随して値上げに踏み切るであろう。ファミリーマートは、既に「高級モカブレンド」税込み120円を持っているので、セブン同様に100円台前半で、選択肢を用意した値上げになるだろう。

100円だったシュークリーム、認知されるか?価格は1.7倍

コーヒーと相性の良い、冒頭のスイーツに話を戻す。セブンが6月に大型企画商品として発売したシュークリーム「シュー・パティシエール」172円など“商品の質を高めるリニューアル”を実施した。勝算はある。同社商品本部の平田哲也デイリー部ベーカリー・スイーツシニアマーチャンダイザーは「在宅時間が長くなり、スイーツを自宅で食べる頻度も増えている。外出を控えてプチ贅沢をするお客様も多い」と外部環境の変化を挙げている。

実際にセブンでも、コロナ禍前、そして外出自粛が本格化した後も、スイーツの売上は伸長してきた。しかしコロナ禍が一巡すると、徐々に陰りを見せ始める。近くて便利なセブンでスイーツを購入してきた人たちも、宅配利用や通販、ふるさと納税の返礼品など、さまざまなチャネルからスイーツを購入できるようになった。そこでセブンは立ち寄ったついでに購入するスイーツではなく、わざわざ来店して選ばれるスイーツの方向性を示した。

この「シュー・パティシエール」にも付加価値を高めている。製菓のために開発された、コクの強い卵を使用、発酵バターを加えて濃厚なカスタードに仕上げた。シュー生地は4種の小麦粉と、発酵バターを組み合わせて2層で焼き上げて、より風味の良い商品に仕立てたという。それ以前に品揃えしていた「シュー・ア・ラ・クレーム」(149円)は廃番にしている。シュークリームは、この他に、価格的には下のラインになる「ダブルクリームのカスタード&ホイップシュー」162円を持っている。

300円超えコンビニスイーツも市民権を得るのか?セブン−イレブンの「モンブラン」345円

ともあれセブンでシュークリームを購入するには税込みで162円と172円の2つの選択肢しかない。専門店と互角に戦える品質を追求すると、シュークリームは、この価格、カップケーキでは前出の「モンブラン」345円のような価格を設定せざるを得なくなる。

しかし思い起こすと、2017年3月までセブン−イレブンの主力スイーツは税込み100円の「(ミルクたっぷり)とろりんシュー」だった。商品名の通り、クリームがとろりとしており、食べなれない人は手をクリームで汚すことになる。そういう特徴も人気に拍車をかけていた。セブンは同年4月にリニューアルをかけて「THEセブンシュー」と改名、130円に値上げする。長く定番だった100円のシュークリームを消失させた。

当時の商品本部長(現セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員グループ商品戦略本部長の石橋誠一郎氏)は会見で次のように説明している。

「この商品は2001年に発売して以来、リニューアルを重ねてきた。発売当初は1日(1店舗平均)18個を売っていたが現状は半減している。それでも販売個数は高いのだが、お客様の変化に付いていけていないと考え、あらためて今のマーケットに求められている、味、品質とは何なのかを確認した。そこで2001年から継続してきたコンセプトを全く変えていく。商品名も企画も全てやめて、コンセプトを“とろりんシューやめます”とした。ゼロベースで立て直すということ。ここまでやらないと、お客様の変化に対応できない」

すなわち、売れ行きが落ちてきた商品の延命はしない。支持されないのは世の中の求める品質に対応していないからだ。必要なのは、既存の商品よりも品質を高めて、明らかにおいしい商品に仕立て上げること。他のカテゴリー全てに当てはまるとはいえないが、スイーツについては、“とろりんシュー”をやめたときから、脈々と品質の向上(およそ価格も上昇)を続けている。

今回は価格を据え置いたセブン-イレブンの「北海道十勝産小豆使用 豆大福」151円

一方で和菓子の定番である「北海道十勝産小豆使用豆大福」151円は品質を高めたものの価格を据え置いた。既存品と同様に北海道十勝産の小豆を使用、さらに「エリモショウズ」という、あんこに適した品種に変更して、うま味、風味を高めているという。

新型コロナウイルスによる意識と行動の変化により、人々の行動範囲が狭まり、人気のカフェや、遠くの洋菓子店、人が密集するデパ地下を避けて、近隣のコンビニを利用する人たちが増えていった。そうした追い風が徐々に薄れつつある今こそ、品質を高めて、客単価を高める。

世の中の値上げラッシュの中で、コンビニ、特にセブン−イレブンは危険を承知で、理念に基づいた独自の商品政策を推進している。

改廃の激しい韓国コスメに素早く対応する組織と仕組みの作り方

セルフコスメの売場づくりでは実績のある井田両国堂は近年、韓国コスメ、アジアンコスメの売場づくりを強化している。多数の韓国コスメを取扱う同社に、韓国コスメのトレンド、売場づくりのポイントについて聞いた。(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

韓国コスメ独自の機能が日本で受け入れられた

—韓国コスメが絶好調の理由について教えてください。

松本 まず、当社では、韓国コスメは、2003年頃に「BBクリーム」を第1弾として取扱いました。当時の日本での認識は「一過性の商品」だったのですが、その後、韓国コスメの低・中価格帯という特徴が日本で受け入れられるようになり、市場が拡大したという背景があります。

さらに、直近2、3年のコロナ禍という状況では、コロナ前でしたら韓国旅行に行って韓国コスメを買うことができたのですが、いまは行けないので韓国コスメの輸入が増えているという状況です。

[写真1]マスク肌荒れの増加によって人気のシカシリーズ(メイクアップソリューション則武新町店)

コロナ禍での韓国コスメの伸長は、「ツボクサ」という傷治療で使われる植物から抽出したエキス「CICA(シカ)」の人気から始まりました(写真1)。現在は、シカクリーム、シカフェイスマスクなどが発売されています。

シカは、「敏感肌の人のマスクによる肌荒れケア」という名目で発売され、日本ではかなり受け入れられました。それまで日本ではシカのコスメはなく、現在は日本でも徐々に増えてきていますが、韓国コスメのシカが一番売れているという状況です。

Z世代がSNSを通して、K-POPアイドルの真似をするなどして韓国コスメの人気を広げています。韓国のアイドルがSNSに顔写真をアップし、使っているコスメが話題になることもあります。

韓国の男性アイドルの影響もあり、BBクリーム、コンシーラー、眉毛のケアなどのメイクを使用する若い男性が増えています。メイクをする男性の増加は、韓国製だけでなく日本製のコスメでも見られる傾向です。

韓国コスメの特徴は商品開発力だと思います。もともとBBクリームは「肌の美しさを損なう傷や欠点をカバーする」という発想で開発された商品で、現在の「気になる部分に塗る」という機能が人気になりました。また、ティントリップは「唇の角質層を染めることで色が落ちにくい」というリップです。

それらは日本にはなかった発想です。そうした韓国コスメの独自の機能が日本で受け入れられてきているのだと思います。

多数の韓国コスメを取扱う井田両国堂

—小売業との取組みについて教えてください。

松本 当社では、多数の韓国コスメを取り扱っています。SKU数自体はどんどん増えてきています。

韓国では、大小合わせて1万社以上の化粧品メーカーが存在しており、新興メーカーを含め、日本進出をかなり狙っているらしいので、数年以内に、日本に来る韓国のメーカー、SKU数はさらに増えてくるだろうと思います。

[写真2]クッションファンデが人気の「ティルティル」(メイクアップソリューション則武新町店)

当社が取扱っている韓国コスメの中では、「rom&nd(ロムアンド)」「TIRTIR(ティルティル)」「VT」などが売れています。

小売業の売場を見ると韓国コスメのコーナーは確実に増えています。韓国コスメは今のところ売場の適正スペースは分かりませんが、最大限の本数は取ろうと思っています。坪数的に4本しか取れない店なら4本で展開しますし、10本以上のパターンもあります。

また、韓国・中国・タイ・台湾などのコスメを集めた「アジアンコスメ」も、ドラッグストア(DgS)、量販店の売場は拡大しています。

コロナの影響でインバウンドがなくなったので、売上を補うという意味でも、韓国コスメ、アジアンコスメを検討する小売業は増えていると思います。

当社では、韓国コスメに限った話ではなく、日本のメーカー様とも店舗に導入する前に商談を重ねます。商談では、まず、ブランドイメージを損なわれないようにプロモーション展開について話し合い、店頭での露出を増やし、ブランドや商品の希少性をお客様に訴求し、商品の認知度を高めるという基本戦略です。

プロモーションはブランドを中心に陳列することもありますし、「プロジェクト陳列」にても実施します。

[写真3]井田両国堂が「UVケア」というテーマで提案するエンド

プロジェクト陳列では、棚割のテーマを決めて、たとえば、「UVケア」というテーマならば、様々な日焼け止めの関連商品をエンド、アウト展開で陳列し、お客様に分かりやすいように商品の機能等を訴求します(写真3)。

今年はジェルタイプ、スティックタイプ、スプレータイプのUVケアがかなり売れていまして「タイプ別」という切り口で分類することもあります。ほかには、室内、屋外、旅行などの「シーン別」で分類することもあります。お店に合った形のテーマ、切り口でプロモーションを実施して頂いております。

[写真4]「浴衣メイク」という切り口で提案するエンド。2段目は韓国コスメのティルティルのリップ

また、「浴衣メイクHow to」というテーマでは、韓国コスメも陳列しています(写真4)。当社が提案するテーマ軸のプロモーションによって、商品価値を高める戦略です。

トレンドの変化が早い韓国コスメに素早く対応できる仕組みづくり

—韓国コスメの定番化についての考えを教えてください。

松本 東京エリアの店頭を見ると、韓国コスメの定番化は主流になってきていると感じます。特に若い人はスマホに慣れており、立地による情報格差が少ないので全国で売れると思います。

もともと韓国コスメは、バラエティストアで最初に展開していたのですが、最近ではDgSでの展開もかなり増えています。

韓国コスメはトレンドの変化が早いので…。

 

続きは、月刊マーチャンダイジング2022年8月号でご覧ください!

 

コロナ禍でも2年で1.5倍増と驚異的な成長 !「韓国コスメの「売場強化戦略」

月刊マーチャンダイジング2022年7月号では「韓国コスメ」を大フィーチャー!コロナ禍で苦戦するコスメカテゴリにおいて、前年同期比を上回る実績をたたき出し続ける韓国コスメ。売りまくる店舗ではどのような展開をしているのか。大手メーカーの日本市場戦略とは!?本記事では日本市場における韓国コスメの概況をご紹介します。(月刊MD 2022年7月号から転載)

韓国コスメの日本向け輸出額は2年間で1.5倍も増加した

[図表1]韓国コスメ日本向け輸出(資料:HIS)

KOTRA(大韓貿易投資振興公社)大阪貿易館の調査によると、韓国コスメの日本向けの輸出額はコロナ禍の2020年も前年比35%増と驚異的な成長を継続している。2019年と2021年対比では1.5倍も輸出額が増加している(図表1参照)。

2021年の韓国コスメの日本向け輸出額は4億5,900万ドル(約587億円)に達している。これは化粧品輸出額がずっと1位だったフランスの日本向け輸出額と同規模に迫っている。

[図表2]2021年ECサイト(ROSEMARY)カテゴリー別人気商品ベスト5

ECサイトにおける韓国コスメのカテゴリー別の人気商品を図表2に整理した。1,000円台の価格帯の商品から3,000円台の商品もあり、価格帯の幅があることがわかる。

当初の韓国コスメは低価格帯中心であったが、近年は韓国コスメの品質も向上し、中・高価格帯の化粧品も登場している。また、品質の向上によって、韓国コスメ購入客のリピート率が大きく向上していることも近年の特徴である。

さらに、韓国コスメ独自の品質と機能を持つ新商品も登場し、韓国コスメだけの特徴がある化粧品が人気を集めている。

たとえば、「シカクリーム」は、肌の損傷改善や再生効果が期待できるクリーム。毎日使うことで、肌の再生能力が上がり、健康的な素肌を作ることができる。韓国コスメの主なシカ成分は古くから外傷治療薬としても使われていた「ツボクサエキス」。マスク肌荒れの増加などで人気だ。

「クッションファンデ」は、パウダーファンデーションとリキッドファンデーションのちょうど中間にあたる。クッションに液状ファンデーションをしみこませたコンパクト形状のファンデーション。お肌をケアしながら毛穴をカバーする「多機能ファンデーション」といわれている。

「ティント」という名前の口紅も韓国コスメが開発した新機能で人気。「tint=染める」という意味で、唇を染め上げて落ちにくいリップとして一躍脚光を浴びた。コロナ禍の最近ではマスクに色移りしにくいことから支持されている。

[図表3]韓国国内で急成長中のNEXT韓国コスメ

一方、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)大阪貿易館の調査によると、現在の韓国で急成長中のコスメカテゴリーは、「ダーマコスメティック(医薬成分化粧品)」「インナービューティ」「ヴィーガンコスメ」の3つである。これから日本でも成長が期待できる「NEXT韓国コスメ」といえよう(図表3)。

「韓国の商品が多くの日本の方に愛されているからこそ、より優秀な商品を日本の皆さんにご紹介していくのがKOTRAの役目だと思います。コロナの影響で中止されていた韓国にバイヤー様をご招待する商談会や展示会なども今年から再開しつつありますので、新たな韓国商材をご検討中でございましたらKOTRAにお声掛け下さい」(KOTRA大阪貿易館 孫 昊吉館長)。

月刊MD2022年7月号は韓国コスメの人気の背景を大特集!

是非お買い求めください!

 

 

敏感肌向けブランド「ミノン」、ベビーシリーズ登場

出生数が減少を続ける昨今、ベビーカテゴリーも縮小を余儀なくされている。しかし生活者のベビースキンケア意識は高まっており、高付加価値商品・低刺激性商品を求めるニーズは堅調だ。そんな中、敏感肌向けブランド「ミノン」はこの秋、ベビースキンケアアイテムのシリーズ化を発表。カテゴリーの活性化が期待される。(月刊マーチャンダイジング2022年7月号より抜粋)

専門店等に奪われているベビースキンケア市場

[図表1]ベビー用スキンケア市場規模

2020年度のベビー用スキンケアの市場規模は、約142億円(図表1)。売上構成比は洗浄剤が47%、次いで保湿剤が36%を占める。2018年ごろまではインバウンド需要や、一人当たり単価の上昇などを背景に好調に売上が推移していたものの、コロナ禍によりインバウンド需要が消失し、出生数減少も相まってここ数年は若干の縮小傾向だ。

チャネル別実績

チャネル別の売上高構成比を見ると、ドラッグストア(DgS)や薬局が45.8%を占め、次いで37.7%とベビー専門店等が続く。一般のボディケアカテゴリーに比べると、ベビーボディケアの売上は、ベビー専門店等にかなり食われている状況だ。

高まるベビーのボディケア意識 しかし現実とはギャップが

[図表2]乳幼児を持つ20〜40代の母親の子供に対するスキンケア意識調査

昨今、ベビー用スキンケアに対する生活者の意識は非常に高まっている。図表2のグラフによれば、「子供の肌はデリケートなため、スキンケアは欠かせない」という親がどの世代も5割以上を占めている。一方「子供のスキンケアは適切にできている」とする人は30%〜40%前後。理想と現実にギャップがある状態が続いている。

また最新の臨床研究では、生後1週間以内の新生児期から保湿剤を塗布することで、アトピー性皮膚炎を発症するリスクが3割以上減らせることがわかっている(※1)。早期にスキンケアをはじめることがアレルギー予防に重要であるという認識が、乳幼児を持つ親に広がってきている。

※1 2014年10月の、国立成育医療研究センターの発表による。

赤ちゃんから高齢の方まで使えるスキンケアアイテムを提供

ミノンは、間もなく発売50周年を迎える敏感肌ケアブランド。名前の由来は「Non allergic(アレルギーの原因物質)」「Non toxic(低刺激性)」「Non alkaline(弱酸性)」の3つの「ノン」だ。赤ちゃんから高齢の方まで、敏感肌に悩む全ての人に寄り添い、QOLの向上に貢献していく。

[図表3]ミノンボディケアシリーズ出荷金額推移

ミノンボディケアシリーズの出荷金額はラインナップ拡充によりこの7年間で3.5倍に拡大(図表3)。「洗う」だけではなく「塗る」「防ぐ」の3つの軸でさまざまな保湿ケアアイテムを展開している。

そんなミノンが、この秋満を持してベビー用スキンケアアイテムのシリーズ化をスタートする。

商品紹介

ミノンベビー全身シャンプー

ミノンベビー全身シャンプー

ラインナップの1点目は、肌がデリケートな赤ちゃんのための全身泡シャンプーとして人気の「ミノンベビー全身シャンプー」。販売中の商品だが、この8月以降JAN変更無しでパッケージのリニューアルを行う。

本商品は乳児の肌と同じ弱酸性。植物性アミノ酸系洗浄成分配合で、バリア機能を守りながら汚れを落とす。泡切れがよく、さっと流せるシンプル処方もポイントだ。バリア機能が低い赤ちゃんのことも考えて、極力配合成分を少なく抑える処方にこだわった。本商品は人気の雑誌「LDK」の「ベビー用品ガイド2021年」でベビーソープカテゴリーの第1位も獲得している。そのことを訴求するアテンションシールも貼付されているため、お客の注目を得ること間違いない。

ミノンベビー全身保湿ミルク

ミノンベビー全身保湿ミルク

ラインナップの2点目が、この8月に上市される新商品「ミノンベビー全身保湿ミルク」だ。肌のバリア機能を守りながら、乳児に起こりがちな肌あれを防ぐ。無香料・無着色・アレルギーの原因物質を極力カットするなど、肌へのやさしさを追求した処方になっている。また、着替え前に塗ってもべたつかない、みずみずしい潤い感もうれしい。

パッケージにはアテンションシールで「0歳から使える」と、使用可能な年齢を訴求。ミノン全身保湿剤と同じ印象のパッケージで、ミノンの他商品を使っているお客様にも目につきやすいデザインになっている。

参考価格は1,300円(税抜)と、DgSのベビーボディケアカテゴリーに貢献できる価格帯での提供となる。

高単価・高付加価値でカテゴリーに貢献

ミノンベビーシリーズの共通アイコン

今回ミノンベビーシリーズは、既存商品である「ミノンベビー全身シャンプー」のユーザーはもちろん、出産準備中のプレママ、スキンケアに不安を持つ層をターゲットに据える。これらのお客様に確実に情報を提供し、製品購入へとつなげていくために、自治体や病院などでのサンプリングプロモーションや、雑誌、ウェブメディアとのタイアップ、インフルエンサーによるネット上での拡散などのプロモーション施策を予定している。

店頭ではベビー用品売場での定番展開がおすすめだ。シリーズの3SKUを並べて展開することで、店頭露出を拡大し、視認性を高めていきたい。

[図表4]DgSチャネルにおけるベビー用石鹸アイテムの価格帯別の累計販売金額

生活者のベビースキンケアへの意識の高まりによって、高付加価値・低刺激性商品のニーズは高まっているが、依然としてDgSでは低価格帯の商品が中心で、専門チェーンやECにシェアを奪われている。一方のミノンベビー全身シャンプーは、積極的なプロモーション展開無しに、順調に売上を拡大し続けている。また図表4にあるように、実際DgSチャネルでも、2017年度と2021年度を比較すると、500円以下の商品は構成比を減らし、500円以上の商品が伸長していることがわかる。

今後、我が国においては、出生数減少のトレンドが続くため、今何かしらの手を打たないと、カテゴリーの縮小は免れない。ミノンベビーは、「高単価」「高付加価値」で、顧客満足度も高い商品だ。DgSのベビースキンケアカテゴリーの売上・収益に貢献していくことは間違いないだろう。

重要ポイントのまとめ

  • 早期のスキンケア開始がアレルギー予防に重要という認識が広まる
  • ミノンベビーシリーズは「全身シャンプー」「全身保湿ミルク」を展開
  • カテゴリー活性化のために高単価・高付加価値市場の創出を

生活者のより良い目の状態に向けた重要性認識向上とアイケア推進に取り組む

昨今、子供から大人までデジタルデバイスに接する時間は増加しており、生活者の目を取り巻く環境は厳しくなっている。一方で、生活者のOTC目薬使用率は30%程度と決して高くはない水準である。参天製薬では、生活者のQOL向上のため、アイケアの重要性の啓発や、目の不調に対処するためのさまざまな取り組みを行っている。今回はその取り組みについて、参天製薬の渡邉事業部長に話を聞いた。(聞き手/月刊MD主幹 日野 眞克)(月刊マーチャンダイジング2022年7月号より抜粋)

参天製薬だからこそ実現できる本質的なアイケア

—コロナ禍で生活者のデジタルデバイスの接触時間が増えていると思いますが、現在の生活者の目の健康について教えてください。

渡邉 目を酷使する人はとても増えており、生活者のアイケアニーズは高まっています。弊社調査によると、15歳~79歳までの約85%の方が、何かしらの目の不具合を感じているというデータもあります。しかしながら、そのうち実際に対処している人は半数ほどしかいないという結果になっており、より多くの生活者にアイケアの重要性を知って、対処していただくことで、QOL(生活の質)向上に繋がると考えています。

—参天製薬さんは、目薬の会社という印象ですが、どのような取り組みをされているのでしょうか。

渡邉 弊社は創業から130年以上にわたり、眼科領域に特化し、傾注しています。眼科領域の専門性、技術力を礎に、病院向けの医療用医薬品や医療機器と、薬局・ドラッグストア(DgS)で販売しているOTC医薬品などの開発、製造、販売を行っています。

日本における組織では、医療用医薬品を担う眼科事業部と、OTC医薬品を担う薬粧事業部の2つの事業部があり、互いに連携しながら患者さん・生活者起点の活動を行っています。目薬の会社という印象が強いと思いますが、眼科領域のスペシャリティーカンパニーとしての弊社の責務は、単に目薬を売るということではないと考えています。2030年とその先に向けたVisionとして「Become A Social Innovator」と掲げていますが、これは、世界中の技術や組織・人材をつなぎ、2030年までに目の疾患に起因する社会的・経済的な機会損失を削減することを目指しており、私たちはまさに今、その目標に向けて取り組んでいます。

私たち薬粧事業部は、そのVisionを実現するための戦略の1つとして、生活者に向けたWellness(ウエルネス)、つまり、より良い目の状態に向けた重要性認識向上とアイケアの推進に取り組んでいきたいと考えています。

—生活者に提供するWellnessとは具体的にはどのようなことでしょうか。

渡邉 まず、生活者へ本質的なアイケアの提供を行いたいと考えています。本質的なアイケアとは、医療用医薬品の実績を活かして医学的に正しい新たな機能価値の提供を行うことです。

また、清涼感などによるスッキリとした差し心地などにより情緒的な価値を提供する製品をご提供することによって、生活者の目薬の使用に対する間口を拡げ、アイケアの裾野を拡げていきたいと考えています。

なお、最近始めた取り組みとしては、生活者が自分で目の状態をセルフチェックしたり、アイケアに関する情報提供を行うことでアイケア意識向上を図るアプリの提供があります。こういった取り組みを地道に継続することによって、生活者が自分の目について関心を持ち、正しいアイケアを行うサポートを行っていきたいと考えています。

—医療用での実績を活かして医学的に正しい本質的なアイケアを提供することができることは参天製薬さんの強みですね。

渡邉 例えば、本質的なアイケアの浸透と拡大を図るために、2020年にスイッチOTCとして「ヒアレインS」を発売しました。「ヒアレインS」は医療用と同濃度のヒアルロン酸ナトリウムを配合した目薬で、涙液の不安定化によるさまざまな目の不快症状を緩和します。不快症状の対策には、単に目に水分を加えるのみならず、目の表面に安定的に水分を保ち続けることが大切で「ヒアレインS」はその有効成分が涙液層に長くとどまり、涙液を安定させます。疲れ目、見えづらさ、乾き目などといった目の不具合は、涙液層が不安定になることによって生じる場合があるとされており、不具合の原因から改善することができる本質的なアイケアを実現できる製品だと考えています。

DgSと参天製薬との地域医療連携について

—DgS(ドラッグストア)と地域医療連携に取り組んでいる事例もあるとお聞きしましたが。

渡邉 あるDgSを訪問した際に、今は物販中心だが、将来的には地域医療の中心になりたいという想いを伺いました。

幣社でお手伝いできることは何かと考えた結果、医療用医薬品の経験と実績を活かして、生活者へ、医学的に正しい本質的なアイケアの提供を行うことで、協働できるのではないかと考えました。

1つの事例ですが、弊社で生活者のアイケア意識向上を目指して開発した、「瞳うるるスキャン」というアプリをご紹介しました。

—どのようなアプリですか?

渡邉 このアプリの機能は大きく3つあります。まずは、セルフチェック機能です。チャット形式で自覚症状とリスクをチェックし、AI技術を活用した上で、眼表面に映り込んだ画像の解析からうるおい不足の箇所を表示します。総合結果として「瞳のうるおい度」高・中・低を判定します。これにより、生活者が自分の目の状態を知ることができます。

2つ目は、結果に対する対処法の提示です。セルフチェック結果に基づいて、眼科での診療やおすすめのOTC目薬、簡単にできるケアなどの対処法をご紹介します。

3つ目は、涙に関する情報コンテンツで目の不具合と関係する涙の役割等の情報を提供することです。

目の不調は感じているけれどアイケアをしていない生活者が、DgSの店頭で「瞳うるるスキャン」のPOPなどに出会って、目をセルフチェックし、実際に眼科を受診したり、OTC目薬を購入したという事例を聞いています。

こういった、DgSと連携した取り組みを通じて、継続的にアイケアをしようと思う人が増えていけば、地域生活者のQOLは向上すると考えています(写真1参照)。

[写真1]瞳うるるスキャンのアプリを告知する店頭POP

薬剤師のカウンセリングでロイヤルカスタマーを育成

[図表1]ヒアレインS使用チェックシート

渡邉 医学的に正しい本質的なアイケアを実現できる製品「ヒアレインS」は、生活者のQOL向上とともに、薬剤師と生活者の関係を深めてくれる目薬だと思います。要指導医薬品であるため、薬剤師はチェックシートを活用しながら生活者にカウンセリングを行い、必要な場合は眼科への受診勧奨も行っていただく必要があります。

[写真2]ヒアレインS

薬剤師がきちんとカウンセリングしていただくと、患者さんの満足度もリピート率も非常に高まることがわかっています。DgSのロイヤルカスタマーを育成していくためには、薬剤師の役割が非常に重要であり、生活者がより最適な目薬を選び満足していただくためにも、私たちは薬剤師へ情報提供を行っていくことが大切であると考えています。

冒頭で、弊社は単に目薬を販売するだけの会社ではないとお伝えしましたが、私たちは、生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことでQOLを向上させていくことを目指していきたいです。

「ウェルウォッシュアイ」は点眼型洗眼薬の新市場を創造

[写真3]ウェルウォッシュアイ

渡邉 また、衛生的に、目の洗浄ケアができる製品として2021年に発売した「ウェルウォッシュアイ」が、これまでになかった「点眼型洗眼薬」として、生活者のみなさまからご支持頂いています。

目にほこりや花粉、メイク汚れなどの異物が入ったとき、水道水で洗ったり、こすったりされる方も多くいらっしゃるかと思います。しかし、これらの行為は目の表面を傷付けたり、細菌感染など、さまざまなリスクがあり、正しい対処法であるとは言えません。

「ウェルウォッシュアイ」は、エビデンスに基づく確かな製品価値はもちろんのこと、持ち運びができて、いつでもどこでも、気になったその瞬間に目を洗うことができる製品です。そのような新しい価値が生活者に受け入れられ、購入者は、過去1年間に目薬や洗眼薬を購入していなかった方が半数程度であるということも分かっています。つまり、従来のカップ型洗眼薬からシェアを奪うということではなく、まったく新しいお客様を獲得できていることになります。

ほこり、まつげ、メイク汚れ、花粉など、いつでもどこでも目を洗えることは、生活者には朗報だと思いますし、さらに、コンタクトレンズの上からでも目が洗えるため、メイクを落とさなくても、気軽に使用できることが評価されています。そして、すでに点眼型洗眼薬で目を洗うことが習慣化されているユーザーも多くおられます。これからも、「ウェルウォッシュアイ」で新しく正しい目洗い習慣を生活者に提案することで、新市場を創造するとともに生活者への本質的なアイケアの浸透を目指したいと考えています。

—「花粉症対策」のアプリも開発されましたね。

渡邉 「かゆみダス」という花粉症による目のかゆみへの対策をサポートするためのアプリを開発しました。

このアプリは、花粉症シーズンに合わせて予測される気象状況から、かゆみなど目の症状の注意レベルとその対策、お薬の使用時間をプッシュ通知でお知らせするなどの機能実装した医師監修のアプリです。花粉の飛散状況は毎日異なりますし、春のスギ花粉だけでなく、イネやブタクサなど年間を通じて花粉は飛んでいます。地域ごとの花粉飛散状況を毎日お知らせし、適切な対処法や予防法をお知らせするとともに、アプリに症状なども記録することができるため、日々の症状について医師に伝える際に役立てているという声も伺っています。

アイケアの重要性を知っていただき、アイケアの人口を増やすことが重要

—今後の展開について教えてください。

渡邉 生活者の目薬使用率は30%程度と言われています。この数値は、1年間に1回でも目薬を使用した人の割合なので、目薬を定期使用している人はもっと少ないと思います。

生活者の目に関する悩みに寄り添い、生活者のより良い目の状態に向けたアイケアの推進をおこなうことで、生活者のQOL向上に貢献し、結果的に目薬の使用率と市場の拡大を推進していきたいと考えています。

また、生活者のアイケアの裾野を広げるため、継続的にさまざまな商品開発やアイケア啓発を行っていきたいと思います。将来的には、生活者の本質的なアイケア課題解決につながるセルフケアソリューションとしてのサービスを展開できると良いと考えています。

弊社の特徴である、アイケアを軸に、眼科事業部と、生活者向けの薬粧事業部が力を合わせて情報発信を行い、生活者のウェルネスの追求を通じて、目に関する社会課題の解決に向けて取り組んでいきたいです。

 

〈取材協力〉

参天製薬株式会社
薬粧事業部 事業部長
渡邉 整功氏

地域のニーズに応え韓国コスメを「大型書店」でインショップ展開

大阪市に本社を置くオー・エンターテイメントは食品スーパー大手のオークワ(本社・和歌山市)のグループ企業で、予備校、フィットネスクラブ、シネコン、レンタルソフト、書店など多様な領域で事業を展開している。その傘下のひとつである「WAY書店」は書籍売場を中心に店内にはレンタルソフト、文具雑貨が同居するマルチフォーマットである。韓国コスメ売場は文具雑貨コーナーの一角に設けられ予想以上の売上を挙げている。(月刊マーチャンダイジング2022年8月号より抜粋)

韓国コスメを「大型書店」でインショップ展開

[写真1]WAY書店外観(田辺東山店)

専門書を読みたいときは大阪の書店まで足を運ばなければいけない。何とか和歌山県内ですべての書籍ニーズに応えられないか。そんな思いから地元有力企業であるオークワを中心に創業されたのが「WAY書店」である。WAY事業部として和歌山、大阪、奈良、三重、兵庫の各府県のロードサイド、インショップで合計29店舗を出店する(文具雑貨専門店5店舗、カフェ1店舗を含む)。

[写真2]WAY書店内「Pen Terrace」で韓国コスメを展開

WAY書店は300坪~最大1,000坪の売場面積があり、5~7割が書店スペース、残り3~5割をCD/DVDの販売・レンタルと文具雑貨売場が占める。一部の文具雑貨売場は「Pen Terrace(ペンテラス)」という屋号で独立運営、地域に合わせ店ごとに品揃えを変えており現在5店舗を出店、Pen Terrace全店と、その他の店舗を合わせWAY書店全体で現在13店舗に「韓国コスメ売場」がある。

[写真3]CICA(シカ)シリーズの売場。CICAとは「肌再生」や「肌の損傷回復」が期待できる成分で韓国コスメの新定番になっている。マスクやクリームなど多彩なアイテムを揃える

「CD/DVDの販売・レンタルは、サブスクサービスの台頭などで厳しい状況にあります。将来を見据えこの売場を縮小、もしくは撤退し他の売場を拡張する改装を各店舗で進めており韓国コスメの導入もその一環です。WAY書店は和歌山、奈良、三重のルーラル立地の店舗も多く、地域住民の方にどういうニーズがあるかヒアリング調査をしていました。その中で聞いたのが韓国コスメが好きで(和歌山県)田辺市から大阪市の天王寺まで1時間半ほどかけて買物に行くという声でした。大手通販サイトでは品揃えに満足できない、注文してから到着までに時間がかかりすぎるという問題もあり、それなら韓国コスメの売場をつくってこの問題を解決すれば地域の方のご支持が得られるのではないかということで導入を決めました。2020年コロナ禍の最中でしたが田辺東山店がその1号店となりました」(株式会社オー・エンターテイメント 執行役員WAY事業部長兼新規部門開発担当 橋本敏樹氏)。

導入後、予想どおり地域住民には喜ばれ、特に若い女性が売場で涙を流しそうなほど歓喜している場面に遭遇したのが有城氏にとっては印象的だったという。

[写真4]MISSHA(ミシャ)のアイシャドウ「グリッタープリズムシャドウマーブル」など新商品、話題の商品はプロモーションコーナーで展開

韓国コスメ売場は各店の状況により7~20坪と様々だが毎月一定の売上があり利益貢献している。立地により客層は異なるが中心となるのは30代、40代女性。性年齢は既存客と大きな違いがなくても趣味志向の違う新規客を呼び込む効果を挙げている。売れ筋はロムアンドなどメジャーなブランドが主流だが、品揃えでは課題も見えている。

[写真5]シートマスク売場。人気のCICA成分入りを最上段に、細かい機能、成分別の多彩な商品が並ぶ
[写真6]通路のテーブルで話題商品、新商品をプロモ陳列

「田辺東山店の場合、20坪で500SKUほどを展開し導入の初月は約300万円の売上があり、予想以上の数字でした。その後は初月ほどの売上はありませんが堅調な動きを見せています。商圏が狭くリピーターが多いのはいいことなのですが、リピーターに頼りすぎ新規客を呼べるような新しいブランド、商品の導入が遅れている点は改善しなければいけません。流行の移り変わりが早い世界なので卸さんとも連携して商品の入れ替えを図っていきたいと思っています」(同WAY事業部文具・雑貨バイヤー販促・マーケティングプロジェクトリーダー有城昌之氏)

[写真7]肌温度を下げる機能を持ったスキンケア商品「グラシアルウォーターサンクッション」など話題商品をプロモ展開
[写真8]peach Cは韓国のインフルエンサーがプロデュースした新しいコスメブランド。2018年の誕生だが売れ筋として育っている

韓国コスメの人気を支える要因のひとつに韓国ドラマやK-POP、アイドル、食品など韓国文化の根強い人気がある。WAY書店では映像ソフトや雑貨で韓国発のものも扱っており、これらの商品を総合的に捉え店舗全体の活性化を図る。その中にあって韓国コスメの導入は、地域ニーズに応えると同時に新たな客層を開拓するという効果につながっている。

田舎立地ほど効果を挙げやすいSNSマーケティング

オー・エンターテイメントに韓国コスメを供給をしているのが、株式会社ケイラボである(同社詳細は本誌2022年7月号参照)。同社は韓国コスメの製造委託から卸、マーケティングまでを手掛けており、WAY書店での商品導入に際してもインスタグラム(インスタ)を使った広告活動を行い、これが売場の早期立ち上げ(集客、利益貢献)に効果を発揮した。

まず、インスタ広告の基本から紹介しよう。全体の仕組みとしては、特定の画像や動画をインスタユーザーに向けて配信するものだが、アカウント開始時に登録した性年齢、フォローしているアカウント、どのような投稿に対して「いいね!」を押したかなどユーザーに関するデータを基に細かく配信対象を絞ること(ターゲティング)ができる。インスタと同じメタ社が運営するフェイスブックの情報とも連携しているので、インスタと同時にフェイスブックを利用しているユーザーに関しては、ここで収集された情報もターゲティングの際の元データとして活用される。

インスタ広告には、いくつかのターゲティングの種類があるが、例えば「利用者属性ターゲティング」では、「地域(市区町村レベル)」「年齢」「性別」「言語」「属性(学歴、仕事、ファイナンス、子供がいるなど)」といった絞り込みの条件があり、「インタレストターゲティング」では、「興味関心(スポーツや健康、ビジネスなど)」「行動(旅行、記念日、スマホ利用状況など)」などの条件がある。これらの条件に沿って配信対象を絞り込むことで、より効果が期待できる相手に無駄なく情報を配信できるのだ。

[写真9]インスタ広告に使った投稿画像

ケイラボがWAY書店田辺東山店で行ったインスタ広告を見てみよう。

続きは、月刊マーチャンダイジング 2022年8月号で!

 

〈取材協力〉

株式会社オー・エンターテイメント
執行役員WAY事業部長兼
新規部門開発担当
橋本 敏樹氏
株式会社オー・エンターテイメント
WAY事業部文具・雑貨バイヤー販促・
マーケティングプロジェクトリーダー
有城 昌之氏

2022年春夏は「予防軸」の虫ケアアイテムで新規顧客を獲得しよう

コロナ禍の反動減にもかかわらず、底堅い需要に支えられ堅調な成長を続ける虫ケアカテゴリー。しかし近く予想される世帯数減少局面においてそのままの売り方を維持していると縮小傾向に陥ることは想像に難くない。アース製薬はそれらの課題を「予防軸の高付加価値アイテムの投入」「新規顧客の獲得」という2つの戦略で乗り越えていく。

コロナ禍の反動ありつつ成長基調の虫ケアカテゴリー

[図表1]虫ケア用品の市場規模と構成比

虫ケア用品の市場規模は、コロナ禍の2020年に1,306億円まで伸長したが、2021年は反動で前年比97%の1,270億円にとどまった。しかしCAGR(年平均成長率)を見ると虫ケア用品全体で1.8%と変わらず成長傾向であり、なかでも伸長しているのが、ゴキブリやダニなどの不快害虫用虫ケア用品だ(図表1)。コロナ禍によって在宅の時間が増え、これまで気にならなかった自宅のダニ、コバエなど不快害虫が気になるようになったのがその理由の一つと考えられる。

世帯数減・気候の影響若年層購入率の課題

現状では拡大基調を示す虫ケア市場だが、3つの課題に直面している。

①人口減・世帯数減による売上減

今後日本経済が直面するのが人口ならびに世帯数の減少である。虫ケア用品も、現在と同じ販売施策を維持するだけでは、売上・利益ともにシュリンクしていくことは間違いない。

②気候の影響で実績が左右される

[図表2]虫ケア用品の販売金額と気温の推移

当然のことながら、虫ケア用品の売れ方は気候の影響を受けやすい(図表2)。夏の長雨や気温低下が見られる年は、実績が低迷することがしばしばである。気候の影響を受けにくいカテゴリー育成が急務とされている。

③若年層の購入率が低い

[図表3]虫ケア用品世代別購入率・人数構成比

虫ケア用品の世代別購入率・人数構成比を見ると、50代、60代の購入が多い一方で、30代、40代は来店人数のわりに購入率が低く、世代間に大きなギャップがあることがわかる(図表3)。30代、40代の新規使用者の獲得が課題といえる。

高付加価値・高単価シフトとエントリー層獲戦略を提案

アース製薬はこれらの課題の解決策として「高付加価値、高単価の商品提案」「若年層の新規顧客の獲得」という戦略を提案する。既存カテゴリーの育成を続けるのはもちろん、新規購入者(カテゴリーエントリー)を獲得し、平均単価を上げていく取り組みだ。虫ケア用品のサブカテゴリー別平均単価推移を見てみると、すべてのサブカテゴリーで平均単価が上昇傾向にある。そこに共通するキーワードが「長期間用」「予防」「高機能」である。特に「予防軸」の商品は気象変動の影響を受けにくく、安定した売上・粗利の確保にもつながる。この軸を掘り下げていくことで、まだまだ虫ケア用品市場は拡大の余地があるはずだ。

世界初の新規作用性有効成分採用

アース製薬が2022年の春夏に向けて打ち出した期待の新商品の一つが「ゼロデナイト」だ。ワンプッシュ式スプレーとくん煙剤の2種類の剤型を展開し、いずれも1度の使用で1年間ムカデ、コバエ、アリなどの不快害虫を駆除する。

[図表4]汎用不快害虫機能面の購入時重視点

アース製薬の調査によれば、虫ケア用品購入時に重視する機能として、速効性や効果の信頼性はもちろんのこと「効果が長く続くこと」「虫を予防できること」などを挙げる人が多い(図表4)。そこで開発された「持続ニーズ」を狙う高付加価値商品がゼロデナイトなのだ。

ゼロデナイトには50年ぶりの新規作用性有効成分「テネベナール」が日本で初めて家庭用製品として採用されている。忌避性がなく、害虫が十分に薬剤に接触するため高い効果が期待できる。また、長期の残効性があり、幅広い害虫に対してすぐれた効果を示す。また安全性が高く、環境毒性が低いことも特長だ。

メーカー希望小売価格2,980円(税抜き)とカテゴリー貢献度も高い。

「蚊とり」をリニューアル若年層に訴求する

もう一つの新商品が置き型虫よけの「マモルーム」(蚊用、ダニ用)だ。ノーマットの蚊とりは、中高年齢層の購入率が高いものの、若年層の購入率は低いという弱みがあった。そこでアース製薬はこれまでの「蚊とり」のイメージとは異なる「虫よけ」という予防軸で新ブランド「マモルーム」を提案。若年層の取り込みを目指す。

液体状のカートリッジを設置したマモルームを稼働させると、超マイクロ粒子が部屋に広がり、蚊の侵入をブロック、蚊を速効退治したり(蚊用)、ダニアレル物質の生成を抑制し、ダニを除去しやすくする(ダニ用)。

「マモルーム」こだわりの形状

また容器形状にもこだわっており、狭い空間にも挿せるスイングプラグや小さなお子さまのイタズラ防止ボトルカバーの採用で、お部屋のインテリアにもマッチする仕様となっている。

これまでの「蚊とり」を別ブランド化することで若年層に向けて訴求していく。

発売直後から好評な滑り出し見せる「ゼロデナイト」

「ゼロデナイト1プッシュ式スプレー」は2022年2月の発売以降非常に好調な滑り出しを見せており、不快害虫用のカテゴリー全体で見ても、予防軸の新商品が上乗せされることで、既存の商品を含め出荷量が120%アップ(2022年3月末時点)している。高付加価値化・高単価が市場に受け入れられていることがわかる結果となった。

[写真]店頭演出用ボードの一例

不快害虫を絶対目にしたくないと考えるお客は、少し値段が張っても効果が得られる商品を求める。しかも1年間効果が持続するとあれば、喜んで購入するだろう。アース製薬では、店頭での視認性を高める各種演出ボードを用意している(写真)。店頭で積極的に本商品の価値を伝えていってほしい。

重要ポイントのまとめ

  • 「予防」アイテムは気候に左右されずに売れる
  • 「ゼロデナイト」は1度の使用で1年間害虫を駆除する高付加価値アイテム
  • 「マモルーム」は虫よけの新しい切り口で若年層に訴求する