「定番」と「非定番」の違い 知っていますか?

Withコロナ時代は、短期特価特売による「プロモーション」(非定番)よりも、「定番」売場の選びやすさが重要になります。今回は意外と知らない「定番」と「非定番」の定義について解説します。

Withコロナ時代は短時間の買物が求められる

Withコロナ時代は、消費者の購買行動が大きく変化していきます。

第1の変化は、狭い床面積の店舗に商品と人を詰め込み、効率を追求するという「日本型繁盛店」の売り方が敬遠されるようになり、EDLP(エブリデイロープライス。毎日低価格)への転換が本格的に進むことです。「短期特価販売」による集客は、開店前に行列をつくり、特定の日に来店客が集中するために、Withコロナ時代の消費者は敬遠するようになります。プロモーション(非定番)よりも「定番売場」で商品を購入する客が増えていきます。

第2の変化は、買物客の「店での滞在時間」が短くなることです。凸版印刷によるコロナ前とコロナ後のスーパーマーケットの滞在時間の調査結果によれば、買物客の滞在時間はコロナ前と比較して明らかに短くなっています。スーパーマーケットに「30分以上滞在する買物客」は、コロナ前は来店客の33.8%を占めていましたが、コロナ後の2020年12月では23.6%と大きく減少しています。一方で、「10分以内の滞在客」は、コロナ前の5.2%から、コロナ後には8.8%と増加しています。

店に長居したくない買物客にとって、「商品の発見のしやすさ」が重視されるようになり、定番売場の1商品あたりの陳列量が増えていきます。また、一度来店したのだから「まとめ買いしたい」というニーズも高まります。

つまり、Withコロナ時代の消費者は、「ショートタイムショッピング」と「ワンストップショッピング」の両方を求めるわけです。従って、コロナ前よりも「定番売場」の重要性が高まります。

「定番」は維持する売場 「非定番」は変化する売場

それでは「定番売場」の定義とは何でしょうか?図にまとめてみました。


(再掲:定番と非定番の違い)

定番売場とは13週以上の期間、商品構成グラフ(棚割の状態)を維持する売場のことです。小売業のマーチャンダイジング(MD)のサイクルは13週が基本単位です。有名な「ウォルマート」とメーカーの協働取り組みであるJBP(ジョイントビジネスプラン)のサイクルも13週です。13週で協働することを決めて、13週後に数値検証し、次の13週の仮説・実践プランを決定します。つまり、13週単位でPDCAサイクルを回すことが、JBPの基本なのです。

JBP

「定番商品」とは、13週間以上の期間、売り続ける商品のことです。商品部の最大の職務は、定番売場の売れ筋商品を品切れすることなく継続集荷することです。

一方、「非定番売場」(プロモーショナル、シーズナル)は、13週間以内に変化する売場のことであり、非定番商品とは、13週間以内に売り切る商品のことです。短期特価特売品や季節品、ホット商品などの期間限定の商品です。「エンド」や「平台」などが非定番商品を陳列する売場になります。

「定番」と「非定番」の売上構成比は8対2もしくは、7対3と、定番の売上の方が高いことが一般的です。しかし、非定番売場は、新しい発見、安さの刺激、季節の刺激などを来店客に与える重要な売場です。13週間変化しない定番だけの売場では面白くないですからね。とはいえ、短期特価特売を乱発していた時代は、非定番売場の売場づくり作業に忙殺され、定番売場を放置していたことも多かったようです。しかし、Withコロナの時代で、EDLP型の売り方が主流になると、定番売場の維持・管理の重要性が大きく高まっていきます。

商品構成グラフのカタチを維持することが重要

定番売場の棚割の状態を表したものが「商品構成グラフ」です(下の図)。商品構成グラフは、(1)プライスポイント(陳列量の最も多い売価・商品)、(2)プライスレンジ(価格帯)、(3)プライスライン(売価の種類)を決定することが出発点です。商品構成グラフは、「カテゴリー(顧客の購買行動の単位)」で作成することが基本になります。あまりグルーピングを大きくしないことがコツです。たとえば、「歯磨き」で作成するよりも、「美白歯磨き」といった小さな単位で作成した方が良いと思います。

商品構成グラフでもっと重要なことは、プライスポイントの山を13週間以上の期間にわたり維持することです。プライスポイントの商品は売れ筋なので、売れ筋の陳列量が多い状態を維持すれば、売れ筋商品が発見しやすく、Withコロナ時代のショートタイムショッピングのニーズを満たすことができます。また、プライスポイントの山を維持すれば、売れ筋が欠品する可能性が少なくなります。さらに、売れ筋の陳列量が多いので、補充作業が軽減化され、ローコストオペレーションにも貢献します。

商品構成グラフ(棚割の状態)の維持・管理という言葉をあえて使っているのは、商品構成グラフは時間の経過とともに悪く変化するからです。たとえば、売れ筋の継続集荷ができなくなり、プライスポイントの山が低くなる。新商品が後から棚に追加されて、売れ筋のフェース数が減る。在庫削減の指示を受けた店舗が「発注抑制」し、売れ筋の在庫が減る、などが原因で、商品構成グラフは悪く変化します。

商品構成グラフが悪く変化した状態を、私は「射的陳列」(下の図)と呼んでいます。定番の商品構成(棚割)は、つくることも重要ですが、カタチを13週間維持することの方が重要です。射的陳列になると、とくに売れ筋の商品が発見しにくくなり、欠品が続出し、店内作業量も増えてしまいます。売上の8割を占める定番売場の維持・管理こそが、Withコロナ時代の最大の売上・利益対策なのです。

※商品構成グラフについてはこちらの記事にも詳しく記載されているのでご一読ください。

基礎からわかる!「商品構成グラフ」のつくり方・読み方・使い方

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AutoStore、冷蔵温度帯に対応するマイクロ・フルフィルメントセンター用ソリューションを展開

ロボットを使った高密度収納・ピッキングシステムを展開するAutoStoreは、2021年3月17日、マイクロフルフィルメント向けロボティクスソリューションの開発支援のためのテストセンター「Innovation Hub」開設に関するオンライン会見を行なった。様々な温度帯に対応することで、多様化するニーズに応える。(ライター:森山和道)

AutoStoreの現状 国内サイトは40以上

オートストア・システム株式会社社長 鴨弘司氏

<a href=”https://autostoresystem.com/ja/” rel=”noopener” target=”_blank”>AutoStore</a>はノルウェー発の企業で1996年創業。専用コンテナを高密度に収納してロボットが出し入れするキューブストレージを活用したロボット倉庫型ピッキングシステムを提供している。オートストアでは空間を最大限有効活用できる収納・保管・搬送システムだとしている。会見ではまず日本法人であるオートストア・システム株式会社社長の鴨弘司氏が概要を紹介した。

AutoStoreは5つのモジュールで構成されている。

1)アルミニウムで格子状に組まれたグリッド
2)『ビン』と呼ばれるコンテナ。3種類から選択できる
3)システムの各種コントローラー
4)グリッド最上部のトラックを動き回り、ビンの上げ下げを行うロボット
5)入庫・出庫を行うステーションであるポート

AutoStoreの5つのモジュール

スループットに応じていくつかの種類があるが、必ずこの5つの標準モジュールで構成されている。

最大の特徴はスペースの効率化。通路がなく天井近くまで空間を有効活用できる。これは土地コストが高い都市部における倉庫では大きな強みとなる。鴨氏は、よく聞かれる質問として「コンテナビンを掘り起こす必要があるのではないか」という質問を受けると紹介した。これに対してAutoStoreは取ったビンを上に返すので使用頻度が高いビンが上段のほうに集まり、頻度が高くないビンは運用しているうちに下のほうに自然に集まるようにソートされる仕組みとなっている。ロボットの電気使用量が競合他社に対して低いことも売りの一つだ。

AutoStoreはもともと自社の倉庫の改善、空間を有効活用するために開発された。2005年に外販を開始し、2010年には3カ国10サイトにインストール。2012年ごろから急成長しはじめ、2020年には500システムを世界30カ国に販売している。2021年3月現在では、590を超えたシステムを販売しており、ロボットの数は22,436以上。コンテナビンの数は2,000万以上。導入業種業態は20以上。販売数が上がるに従い、知名度・信頼性ともに伸びているという。

スケールを見ると、小さいサイトではロボット3台から稼働している。平均稼働数は36で、大きいものでは300台近くが稼働している。日本では2万ビン、ロボット30台程度が平均的なシステムとなっている。

国別に見ると、一番販売数が多いのがドイツ、次がアメリカ。続いてノルウェー、日本となっている。日本ではオカムラトーヨーカネツが代理店として販売導入を行なっている。なおオートストアでは直接販売はせず、各国に代理店をおいてビジネスを行なっている。

AutoStoreの各国代理店

AutoStoreではコンテナビンに入るものであれば扱えるので、業態は選んでいない。そのため業態業種は多種多様となっているが、業種のトレンドを見ると、3PLが増え、特に直近ではアメリカでグロサリーやフードを扱うニーズが増大している。これは新型コロナウイルス禍によって加速したという。

AutoStoreの導入先業種。グロサリーやフードを扱うニーズが増大中

日本法人立ち上げは2019年。国内累計販売実績は40件以上。ニトリ、パナソニック、コープさっぽろ、トラスコ、佐川などで活用されている。国内需要は「ECトレンドを含めて強く感じており、平置き棚の既存倉庫から自動化へのシフトが加速している」とのこと。鴨氏は「新型コロナウイルス禍で人材不足や省人化ニーズが高まり、加えて感染対策が必要となっている。人を介さないオペレーションを築くために自動化は待った無しの状況にある」と語った。なお鴨氏は「国内ではグローバルの1割を取りたいと考えており、グローバルが600システムなら60台を目指すということになる」と述べた。

自動化に対しては、2020年前半は新型コロナ禍のため出足が悪かったが、後半から2021年にかけてすごい勢いで伸び始めたとのこと。日本では海外に比べて遅いが、業種に関しては、そんなにグローバルと変わりはなく「ここ数年は3PLが伸びたが、今後はリテール、特に食品小売業の伸びが高いのではないかと考えている」とのことだった。

多様な温度帯をテスト可能なAutoStore「Innovation Hub」

AutoStore 最高製品責任者 カルロス・フェルナンデス氏

続けて、AutoStore 最高製品責任者(Chief Product Officer)のCarlos Fernandez(カルロス・フェルナンデス)氏がノルウェーのKarmoy(カルモイ)に設立された「Innovation Hub」について紹介。さらにマイクロフルフィルメントによってこれからのショッピングがどう変わるか、ローカルな店舗がどう変化していくかなどを解説した。

フェルナンデス氏は「オートストアの中核は技術革新。これからもイノベーションとディスプラプションを起こしていきたい」と述べて、レッドとブラックの二つの世代のロボットと、2020年に新しく発表されたソフトウェアアーキテクチャー「Router」を紹介した。

ロボットがどう動くかのアルゴリズムを改良することで、よりダイナミックにロボットが動けるように、そしてより少ないスペースのなかでたくさんのロボットが扱えるようになり、ロボットの生産性と効率では最大40%、ロボットシステム全体のスループットを最大4倍向上させるという。

従来のアルゴリズムではロボット台数を増やしても途中でパフォーマンスが上がらなくなってしまっていたが、「Router」ではパフォーマンスが向上し続ける。ポートでのピッカーの待ち時間も短縮され、全体の生産性が上がるという。また、ロボット一台あたりの効率が高まるので、必要台数も少なくなり、初期投資や保守費用も下げられるという。なお「Router」の使用はオプションとされている。

「Innovation Hub」は本社の横にあり、中ではAutoStoreの完全なシステムがインストールされている。市場に出す前に新しいアイデアをテストして検証確認できる場所であり、外見は他と全く変わらないが「未来の食品小売業がどうなるかを示している」とフェルナンデス氏は紹介した。

「Innovation Hub」内部

「Innovation Hub」には多様な温度帯でテストできる設備が整っている。-30度から45度まで世界中の様々な温度環境、すなわち冷凍や中東地域における流通センターなど様々なテストができ、さらに多くのアプリケーションに対応できるようになるという。

「Innovation Hub」では多様な温度帯のテストができる

内部には空調システムが設計されており、ゾーンごとに様々な異なる環境条件を作り出すことができる。たとえばスーパーマーケットで買い物するときのことを想像すると、常温環境のものもあれば、牛乳や野菜が置かれている冷蔵、あるいは冷凍エリアもある。それらの様々な条件下の食料品をAutoStoreのシステムのなかに全て入れてしまうことができるのだと述べた。

ゾーンごとに異なる環境条件を作り出せる空調システム

マイクロフルフィルメントのグローバルトレンド

オンライン食品小売業が成長し始めている

マイクロフルフィルメントのグローバルトレンドを見ると、消費者は、実店舗で買ってもオンラインで買っても同じ体験ができることを期待している。だが食品小売業分野は他に比べるとECの成長が遅い。他の商品よりも「直接、目で見て確かめた上で選びたい」という要望が強いからだ。しかし、新型コロナによって安全なかたちで商品にアクセスできることが非常に重要になった。そのため、食品についてもオンライン購入が急成長しているという。

食品小売業はニーズに応えるために従業員やパートタイマーに店頭で商品をピックさせるようになった。しかしこれではやがて、個別の需要に対応しきれなくなる。フェルナンデス氏は「現在は、消費者がマニュアル作業で商品を店舗内から集めているわけだが、未来はより経済的なかたちで消費者がマニュアル作業でやっていたことを置き換える必要がある」と指摘した。

オムニチャネルの店舗も出現し始めたが課題に直面

さらにオムニチャネルの店舗も人気だ。つまりオンラインで買って実際の商品を店舗でピックアップするというスタイルだ(※編集部注:近年ではBOPISとも呼ばれている形態)。だが、多くの店舗は、元来そういった用途を想定して設計されておらず、店舗内で注文の充足を行おうとすると高くついてしまう。店舗内のショッピング体験改善にも繋がらない。店舗において在庫を正確に把握することは難しく、欠品など多くの課題が現在の小売店にはある。つまり、オンラインの顧客は高いサービスレベルを要求するが、現在の店舗はそれを満たすことができていない。

マイクロフルフィルメントセンターには柔軟性、拡張性、信頼性が重要

そういった課題を解決するためにマイクロフルフィルメントセンターは受注において柔軟性、拡張性、信頼性が重要になる。フェルナンデス氏は「そのための最善のテクノロジーはAutoStoreだ」とし、AutoStoreは単一ポイントでの障害がネックにならず、オンサイトに人がいる必要がなく、既に設置されている580サイトでは99.6%の稼働時間を実現していると紹介した。AutoStoreによってシームレスなかたちで注文の取りまとめができ、よりよい顧客体験を実現できるという。

店舗にAutoStoreが併設される未来の店

マイクロフルフィルメントセンターが併設された未来の小売店

未来のローカルストアはどう変わるか。フェルナンデス氏は「世界は過去と同じではない。パンデミックによって買い物の仕方そのものが大きく変わろうとしている」と述べて、AutoStoreが活用される未来のアパレルショップや食品小売業などの将来像を示した。

AutoStoreを店舗に併設することで、プレミアムロケーションに出店しても設置面積は狭く、最大限の体験をもたらすことができ、最大限の在庫を持つことが可能になり、ショッピング体験を向上させられるという。またスーパーマーケットでもオンライン注文と組み合わせることで、豊富な商品の実店舗での受け取りと、既存の店舗での買いまわりを両立させられると述べた。消費者からすれば「自分にとって大切な商品は時間をかけて選ぶ。そうでないものは自動的に集められてピックアップするだけでいいということになる」。リテール業者にとっても多様なニーズに応えるための品揃えが限られた店舗容積で可能になり、最大限効率よく設置面積を活かせるようになる。

冷蔵アプリケーションは国内でも展開へ、冷凍は2022年以降に

冷蔵温度管理されたAutoStore

食品小売業にとって温度管理は非常に重要だ。数十万ドル規模の投資を行った「Innovation Hub」で開発したソリューションでは、AutoStore内にワイヤレスセンサーネットワークを作り、温度湿度を常に測定。パートナー企業や顧客にとって信頼性高いソリューションになったという。AutoStoreを使うことでより高いアイテム密度が実現でき、企業は1オーダーあたりコストを下げることができる。ダークストアも実現できるようになる。

フェルナンデス氏は常温環境、冷蔵商品、それぞれにおいてAutoStoreが稼働し、冷凍食品を扱う冷凍庫ではマニュアルで作業するといった具体例を示した。オーダーはバッチ処理を行い、オペレーターを在庫をリアルタイムに把握しながら、代用品や例外対応を行う。様々なデリバリー形態にも対応可能だという。

AutoStoreとマニュアルピックを組み合わせたマイクロフルフィルメントセンターの作業の流れ

冷蔵アプリケーションは既に国内でも提供可能。冷凍にはまだ対応できてないが製品開発中で、2022年には市場に出せる予定。なおアメリカではテキサス州とメキシコで約400店舗を展開するスーパーマーケットの「H-E-B」に既に冷蔵アプリケーションが採用されて好評だとのことだった。

冷蔵アプリケーションは米国スーパー「H-E-B」には既に導入済み

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EC、棚チェック、清掃…小売業におけるロボット活用状況[2021年版]

「Amazon Hub」の設置は新規客と来店頻度を増やす!

2020年12月8日に開店した都市型大型店舗「ココカラファイン東京新宿三丁目店」の2階にAmazon HuB(ロッカー)が設置されていました。同社の話では、「予想上に利用者が多い」ということです。来店目的をつくる新しいサービスとして注目されます。

予想よりも利用者が多いAmazon Hub(ロッカー)

ココカラファイン新宿三丁目店は、東京新宿東口からすぐの立地。隣が「紀伊国屋書店」です。4層の建物で約200坪の売場面積。1階が新しい発見のあるアンテナスペース、2階がヘルスケア、3階がメイクアップ、4階がスキンケア。ワンフロアが約50坪。上り下りのエスカレーターで移動する多層階の店舗です。

2階のエスカレーターの前に、写真のようなスペースがありました。インバウンド客向けの「荷物預かり用のロッカー」「ガチャガチャ」と並んで「Amazon Hub」を設置していました。

Amazonのサイトを見ると、ココカラファインのAmazon Hub設置店舗は約150店まで増えていました(2021年2月25日現在)。Amazonで注文した商品の受取場所をココカラファイン新宿三丁目店に設定すると、仕事帰りなどの好きな時間にロッカーで注文商品を受け取ることができるわけです。

取材した同社の担当者の話によれば、「当初に想定した以上にAmazon Hubの利用者が多いことに驚いています」ということです。Amazon Hubがリアル店舗の客数を増やすサービスとして機能していることがわかります。

Amazon利用者の衝動購買も期待できる

アメリカの大手小売業の「ウォルマート」と「ホームデポ(ホームセンター)」は、過去5年間くらいは新店をつくらず、店舗数をほとんど増やしていません。オムニチャネル化によって「新しい買物体験」を顧客に提供することでリアル店舗の売上高を大きく増やしています。

自社のアプリを使ってもらって「オンラインで注文して店舗受け取り」「オンラインで注文して自宅へ配達」「オンラインで注文した商品を店舗で返品」「店舗のショールーム化」などの新しい買物の選択肢を増やすことで、新店を増やさないでも既存店の売上高を増やして成長しています。

ココカラファイン新宿三丁目店の1階入り口付近では、「通販専用商品」を陳列し、触って確かめられるショールームのスペースになっています。

「オンラインで注文して店舗受取り」、アメリカではBOPIS(Buy Online Pickup In Store)と呼ばれる新しい買物体験によるリアル店舗の売上増の効果が高いようです。配送料の高いアメリカでは、60%以上の顧客は自宅への配達よりもBOPISを選ぶそうです。BOPISを目的にリアル店舗に来店することで客数が増えます。しかも、BOPISを目的に来店した人の70%近くは、他の商品も購入して帰るという調査結果もあり、リアル店舗の「買上点数」を増やす効果もあるわけです。

Amazon Hubも同様に、リアル店舗の来店目的を増やすサービスです。アメリカの小売業でAmazon Hubを設置している店舗は、「受け取り」だけでなくて、「返品ボックス」を設置しています。「購入したけどイメージと違うので返品したい」という要望は、返品大国のアメリカでは多く、Amazonの返品ボックスもリアル店舗の来店目的を増やす重要なサービスになっているわけです。

アメリカの「コールズ」という郊外型デパートの店内にAmazon Hubを設置した店舗では、未設置店舗よりも「新規客」が多いという調査結果が出ました。つまり、コールズを今までまったく利用したことがない人が、Amazon Hubで商品を受け取ったついでにコールズで商品を購入した結果、新規客が増える結果につながったようです。Amazon Hubは、「来店頻度」を増やすと同時に、「新規客」を増やす効果も期待できるわけです。

ココカラファイン東京新宿三丁目店。店舗の詳細リポートは月刊MD5月号(4月20日発行)に掲載予定です。

リテールテインメント志向する「ウエルシア」の手書きPOP研究

「ものを言わない販売員」と言われるPOP。お客の目を止め足を止め、商品の価値をアプローチし、プラス1品を誘発する役割などがある。さらに手書きPOPを書くことによって担当者が商品知識を覚え、全スタッフに商品知識を伝える役割もある。ウエルシアは以前から手書きPOPを重視し、選びやすく買いやすい売場づくりにこだわってきた。熟練のPOPづくりの秘訣を、300坪型繁盛店「ウエルシア立川柏町店」従業員の皆さんに伺う。(月刊マーチャンダイジング2021年3月号より編集の上転載)

おすすめ商品に手書きPOPを付ける共通認識

――ウエルシアも2,000店を超え、店舗ごとの標準化が難しくなっていると思いますが、店舗格差を少なくするには?

POPのレベルに個人差はあります。しかしウエルシア全体でおすすめの商品にはPOPを付けるという共通認識は持っています。店舗ごとに質も量も満足とはいかないまでも極力手書きを付けようという意識は皆持っています。(中村淳樹エリアマネジャー)

入口すぐの場所には、処方せんの受付ボードが高いPOPで隠れないように、POPの高さを低くするようにルール化されている
他店の上手なPOPをエリアで共有している

高付加価値・高品質商品に優先的に

Q POPの効果はありますか?

メーカーのPOPや本部からのPOPも大事ですが、手書きPOPは明らかに効果があります。視覚に入ることで明らかに目を止め足を止める効果が上がります。

目線の高さに説明POP、セット販売を強化

Q すべての商品に手書きPOPはなかなか付けられない中で、手書きPOPをつける売場の優先順位はありますか?

特にいわゆるファーストチョイス=高付加価値・高品質商品には手書きPOPを付けることを意識しています。お客様の足を止めて興味を持ってもらうために、ファーストチョイス商品には手書きPOPを付けて差別化し、それ以外の商品には商品名と値段のPOPを付けます。

ハンドクリームのエンド。ゴールデンゾーンのファーストチョイス(高付加価値・高品質商品)が目立つ
疲れ目、かすみ目の目薬のエンド。上段に高付加価値品、下段に量販品を陳列

Q POPを付けるルールはありますか?

時間と手間と費用対効果を意識して、お客様に価値を訴求したい商品中心にPOPを付けることは意識しています。まずは遠目を意識してカテゴリーの用途機能は高い位置に付け、POPも比較的大きくし、お客様の目と足を引っ張るよう工夫しています。そして売場に立ち止まった時にファーストチョイス商品に目が止まり、商品の用途機能・品質特徴をしっかり伝えられる工夫もしています。(石井智晴店長)

胃腸薬のプロモーション、症状別の展開がわかりやすい
「乙類焼酎」「甲類焼酎」が分かれていて分かりやすい酒売場

POPのコンプライアンスの重要性

Q POPを付ける際の注意点は?

第一にコンプライアンスです。化粧品でいうと…。

豊富な店頭POPの写真盛りだくさん!
続きは月刊マーチャンダイジング 2021年3月号にて!

店長からSVにステップアップするために必要な5つのスキル

月刊マーチャンダイジング2021年3月号は特集「店長・スーパーバイザーの教科書」を掲載しています。そこで、1980年代の株式会社ツルハに入社し、スーパーバイザー(SV)、部長を経て、2020年8月 関東店舗運営本部長に就任、総勢20名のSVを率いる半澤剛本部長に、「SVに求められるスキル」とは何かを伺いました。(月刊マーチャンダイジング2021年3月号より編集の上転載)

SVは担当地域の店を統括する経営者

半澤 店長がSVになるために必要なスキルは以下です。

①「現場」と「数値」の両方が分かること。
②完全作業を徹底させる3原則(報告・連絡・相談)を徹底していること。
③小売業の基本5原則の理解と実行(整理・整頓・清潔・清掃・躾)ができていること。
④顧客が買いたい売れ筋商品が、探しやすく店頭欠品のない状態で維持できていること。
⑤商売の原点を理解し実行していること。

――御社におけるSVの役割について教えてください。

半澤 私がSVをやっていた2003年当時はマニュアルがなく、毎日失敗しながら覚えていきました。(1)少ない経費で営業利益を上げる、(2)店のデコボコをなくす、(3)本部と店のパイプ役、(4)本部の指示の徹底といったヒト・モノ・カネすべての管理が当時の職務でした。

現在は、店舗数が2,000店舗を超え、分業体制が確立されました。現在のSV最大の役割は、経営者の「意思と意図」を現場に落としこむための「総責任者」という位置づけです。

基本的にSVの担当エリアの店舗数は10~12店舗です。OJTによって、現場での不完全作業を指摘し、その場で自らが手本を示して「作業の標準化」を推進します。店舗格差をなくし「標準化」することがSVの最大の職務です。

2003年当時は、ツルハの新しい商勢圏である山梨県エリアのSVを担当していました。店長兼任ではなく、店は持たずにSVとして活動していました。3年で黒字を目指すため、チラシを4回から1回に減らす経費削減も実行しました。常に売価について考えていたわけです。数値を管理する「経営感覚」は、今のSVにも絶対に必要なスキルです。

SVの適正能力は「リーダーシップ」

──SVの数値管理はどのように定義されていますか。

半澤 売上・粗利・利益の目標をすべて達成することです。達成する気がないなら、やってはいけない職務だと思います。現場仕事が中心の店長と異なり、SVは8割がた「数字」で評価されます(人時売上高は最低1万7,000円、粗利は5,000円が目安)。目標を担当エリアの店長、部下と一緒に「共有」して達成していくわけです。

つまり、10~12店舗の店長を同じ方向に向かせる力がSVには必要です。SVと店長は違います。優秀な店長が、SVになれば優秀とは限りません。

1店舗のスペシャリストよりも、人を引っぱっていける「リーダーシップ」や「マネジメント」の能力がSVには重要なのです。

OJTによる練習の徹底が担当エリアを底上げする

──SVは具体的にはどのようにして10~12店舗のデコボコをなくす「標準化」するのですか?

半澤 よくある話ですが、10店舗あるので手がかからない「いい店」に訪店したがるんですよね。本来は逆で…。

続きは月刊マーチャンダイジング 2021年3月号にて!

株式会社ツルハ 関東店舗運営本部長
半澤 剛氏

ロピア「精肉」の強みは牛肉の「部位の種類の豊富さ」と「ボリューム」

ドラッグストア業界で売上高構成比が増加を続けている食品部門。しかし、いまだ「単に並べて販売している」だけの領域から出ていない企業も多い。業態としての歴史の長い食品スーパーの売場から学ぶべきものは多いはずだ。本企画では、月刊「食品商業」誌の元編集長である筆者が、注目の食品スーパーの新店をストアコンパリゾンし、色気のある売場づくりのヒントを探る。(エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦 美浩/月刊マーチャンダイジング2021年2月号より編集の上転載)

楽しく、感動を目指し突出した人気を誇る

TBSラジオの番組内企画「スーパー総選挙」で2019年、オーケー、ライフ、ヤオコーに次いで第4位に入ったのが今回紹介する株式会社ロピア(高木勇輔社長)である。上位3社のオーケー(123店/2020年3月末)、ライフ(275店/2020年4月末)、ヤオコー(178店/2020年3月末)が100店以上の店舗網を有するのに対し、ロピアの店舗数は56店舗(2020年12月)と半分以下。この店舗数で上位に匹敵するポイントを稼ぐのだから、その人気の高さは突出している(ちなみに得票は3位・ヤオコーが658票に対し、ロピアは591票と拮抗)。

ロピアの創業は1971年、精肉専門店「肉の宝屋」として神奈川県で誕生した。その後、1996年には社名を「ユータカラヤ」に変更し、その後「新鮮大売ユータカラヤ」を出店、さらに新業態の「ロピア」を開店し、2011年には社名を「ロピア」に再変更している。2012年には大型SC、ららぽーとTOKYO-BAY(千葉県船橋市)にテナント出店し大成功、ここから快進撃が始まる。

店舗網は神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県の関東と、2020年9月から出店開始し現地で大反響を起こした大阪府、兵庫県の3店舗を加え、2020年12月現在で56店舗で、年商は1,595億円(2020年2月期)である。

ロピアの企業名、店舗名は「ロープライスのユートピア」の略。「食生活♥♥(ラブラブ)ロピア」をモットーに、「ユートピア=楽しく感動していつも行きたいところ」を目指すとしている(同社HPより)。

ではその「楽しく感動」は、どのような背景で生まれているのか。ストコンで探ってみよう。

部位のバラエティとボリューム 「2つの驚き」の牛肉が強み

今回視察したのは、西武池袋線の小手指(こてさし)駅から約1km離れた島忠・ホームズ所沢店にテナント出店した店舗である。小手指駅前にはセブン&アイ系のSM、ヨークフーズと西友の大型店があり、競争状況は厳しいエリアだ。

ロピア 所沢島忠ホームズ店は2019年10月に増床オープンしたホームセンター内の1階にテナント出店した。SC全体では1万4,000㎡になり約2倍の売場面積になった

2016年に開店したホームズ所沢店は2019年10月に売場を約2倍に拡大してリニューアルオープン、商業施設の面積は4,242坪だ。この間、島忠へのテナント出店が相次いでいるロピアは、駅から少し離れた国道沿いのこの商業施設への集客力の中核を担っている。

ロピアの人気の秘密は、精肉専門店出身ということからの「肉の強み」にほかならない。売場は野菜・果物、鮮魚、精肉と続き、肉売場は奥の壁面沿いにスペースを確保されている。食品中心のSMで、肉は大変重要な商材である。たとえば、総務省の家計調査の消費支出(全国・2人以上世帯)で見ると、この重要さがよくわかる(図表1)。

生鮮食品の中で1ヵ月の購買頻度(100世帯当り)がもっとも多いのが生鮮野菜の3,839回(1世帯当り38.3回とほぼ毎日)。これは野菜が肉料理、魚料理いずれにも使用される「共通食材」である点から当然だ。次に高いのが生鮮肉で、生鮮肉は購入頻度が月間1,232回で、うち豚肉586回、鶏肉347回、加えて加工肉(ハム・ソーセージ)の459回と肉関連では高い。生鮮魚介(生の丸魚、切り身、貝類)は月の購入が717回で、生鮮肉+加工肉の半分以下の購買頻度でしかない。

金額でいうと生鮮肉は生鮮魚介の約2倍の6,447円で、加工肉を加えると8,000円近い。とくに牛肉は月190回(1世帯当り2回以下)でしかないのに、支出金額は1,771円と額が大きく、「ごちそう」であることがわかる。

このように食品SMにおいて野菜と肉が購買頻度、購入金額のいずれにおいても重要なのである(ちなみにDgSで扱う石けん類・化粧品などボディ関連が3.7回・4,010円、ラップ、柔軟剤など家事用消耗品が8.0回・1,953円となっている)。

とくにロピアの精肉売場の人気の理由は「牛肉の強み」にある。

ロピアは店ごとの品揃えや売価は、それぞれの店の各部門の責任者であるチーフが決める。たとえば所沢店の場合、平日は交雑(こうざつ)種(乳用牛であるホルスタイン種の雌牛と黒毛和牛の雄牛を掛け合わせた比較的安価な国産牛)と輸入牛を中心に販売している。

交雑種は「みなもと牛」という4等級(肉質は上から2番目のランク)を扱うが、精肉専門店出身ということで丸ごと一頭買いで仕入れ、自社加工ができ多彩な部位と、低価格が両立できている(通常のSMは「パーツ」という精肉メーカーが部位ごとに加工しパックして、納品する形態が多いため、人気部位を自由に買うことは容易でない)。焼き肉などでおいしい希少部位の「みすじ」なども100g500円前後で販売している(調査は2020年12月初旬)。

輸入牛はアメリカ産のアンガス種の熟成肉を販売。たとえば「アンガス牛・牛肩ロースステーキ肉」は100g189円と「豚肉以下」価格。大きさは25cm超で厚さは1.5cm程度。1枚361gで682円(税抜き)なので食べ盛りの子供は大喜びだ。ロピアの牛肉は自社加工なので、焼き肉店ぐらいでしか食べられないような珍しい部位も選べるし、値ごろ価格で提供できる。輸入牛なども100g単価が安いので思い切って厚く、大きくカットして販売できる。

米国産のプレミアムアンガス牛・熟成肉は100g189円の安さ。大きさは25㎝超で厚さは約1.5㎝と厚い。たとえばバーベキューなどでこれを焼いたら子供たちは大喜びするだろう

購買頻度は低いが、金額は高くなる「ごちそう」の牛肉を、部位のバラエティと、見た目のボリュームの「2つの驚き」で販売する、これがロピアの牛肉の強みだ。2020年12月8日〜14日のチラシでも生鮮のトップは牛肉。週半ばの火曜日の98円、水曜日の198円から、週末の398円、498円へと部位をランクアップさせてごちそう感を醸成、土日は低価格の牛肉も交えて、こだわりと安さの両面作戦を採用する。

12月初旬のチラシは上段のトップの商品が牛肉。火曜日から98円、198円、298円とランクアップして週末の金曜日は398円、土・日曜日は498円、458円の「ごちそう」部位を販売する

「大容量」「バンドル販売」で安さと驚きのイメージを訴求する売場

ロピアは青果、鮮魚、精肉、総菜などの店舗の各部門を事業部という形態で分離、独立させている。既述したが仕入れ、品揃え、売価も各店・各部門のチーフが決定し、各店舗の各部門が独立した運営を行っている。

各部門には個人商店のように屋号が付けられており、たとえば「肉のロピア」「八百物屋 あづま」「日本橋魚萬」「Meat Deli 肉の十八番」などの看板が店内に掲げられている。

ロピアの売り方の特徴は、同一商品を2個、3個とまとめて売るバンドル販売(束売り)である。自社製造の加工肉に関してもバンドルを多用しており…。

続きは月刊マーチャンダイジング2021年2月号で!

駅前250坪超の進化形「matsukiyo LAB市川駅南口店」レポート

matsukiyo LABは、薬剤師、管理栄養士、ビューティスペシャリストの専門スタッフが美容と健康を総合的にサポートする専門性の高い業態で、2015年9月に千葉県松戸市に1号店をオープン。現在、26店舗を出店しており(2020年12月末)、市川駅南口店は2020年10月30日オープンの最新店である。美容と健康関連商品の充実はもちろんのこと、食品、日用雑貨の品揃えも豊富で、新たな可能性を追求した店舗である。(月刊マーチャンダイジング2021年2月号より抜粋)

自社開発の電子台帳を使って接客履歴を記録

店舗はJR総武線市川駅前に立地している。市川駅から東京駅まではJR総武線快速で20分。商圏内には東京へ通勤・通学する人も多い。

入り口は歩道に面した場所と駅ビルに面した場所の2ヵ所あり、後者からの入店客が約7割を占める。駅直結という立地特性から入り口付近には飲料や菓子、朝食として簡単に食べられる食品などを品揃え、コンビニや駅売店的なニーズに応えている。

駅前立地なのでレジ付近には、ガム、あめ、菓子、飲料などを販売

matsukiyo LAB業態では、「HEALTH CARE Lounge」(処方せん受け付け、ヘルスチェック)」、「SUPPLEMENT Bar」(サプリメント、健康カウンセリング)、「BEAUTYCARE Studio」(化粧品カウンセリング)、この3つの機能を持つことが条件となっている。

市川駅南口店は地上1階、地下1階の2層で、売場面積は地下1階、1階合わせて約260坪。駅前立地が多いmatsukiyo LABでは2018年11月にオープンした妙典駅前店と並んで最大レベルである(妙典駅前店は1層)。この広さを生かしてHBC(ヘルス&ビューティケア)の深い品揃えと同時に、地下では食品、日用品を幅広く揃えている。

壁面には制度化粧品を陳列。 店内は木調のフロア、 明るい照明で商品を演出
マツモトキヨシグループでの専売品、化粧下地「プリマヴィスタ」のトーンアップ(明るい発色)商品

化粧品売場は壁面に制度化粧品を陳列し、中面にはセルフ商品を展開。コロナ禍でニーズが高まる目元メイクはとくに品揃えを強化している。若年層のニーズに応えるために、バラエティストアなどで扱うブランド「excel(エクセル)」、人気韓国コスメ「espoir(エスポア)」や、「マジョリカマジョルカ」「キャンメイク」「セザンヌ」など特徴ある商品、ブランドを取り揃えている。

中面に配置されたセルフ化粧品売場には「エクセル」などバラエティストアなどで扱うブランドを品揃え
espoir、CLIOなど人気韓国コスメを集めた棚
テスターの備品も充実

ビューティコンサルタント(BC)はすべて自社スタッフ。matsukiyo LABでは電子台帳を採用しており、メーカー、ブランド問わず接客、サンプリングの履歴は保存され、次回のカウンセリングに生かされる。また、管理栄養士が使う電子台帳の記録と化粧品の記録は相互に閲覧可能で、管理栄養士が肌悩みに合ったサプリを紹介することもある。

カウンセリングカウンターには肌チェック機を設置、肌の状況を定期的に見ることで必要なケアや商品の案内ができ、継続来店を促進できる。

化粧品のカウンセリングカウンター、背面にはPBの「THE RETINOTIME」を陳列
肌チェック機、肌状態を測定することで、継続的な来店、カウンセリングができる

日配、冷凍食品、酒類は郊外型以上、豊富な品揃え

地下にはヘアケア、ボディケアなどのトイレタリーを含む日用雑貨と食品売場を配置している。階段を下りて最初の壁面は男性化粧品売場。3尺8本の棚があり…。

続きは月刊マーチャンダイジング2021年2月号で!

参入余地のない成熟市場でも必ず「新業態」は誕生する

2018年6月にスタートしたMD NEXTに連載してきた「今週の視点」の第100回目の原稿です。今週の原稿は、流通専門のジャーナリストという仕事を30年以上も継続してきた筆者が目撃してきた小売企業の「イノベーションのジレンマ」と「栄枯盛衰」について述べたいと思います。

オーバーストア時代に成長したドラッグストア

[イノベーション(革新)のジレンマとは、業態(ビジネスモデル)が通用する期間は20~30年。既存業態が絶好調の時に新しいイノベーションに挑戦しなければ、次の時代には衰退してしまう、というサイクルを図式化したもの]

日米の小売業の30数年の栄枯盛衰の歴史を振り返ると、その時代に絶好調のビジネスモデルが通用する期間は20年程度です。いつの時代にも、必ず新しい革新者が登場して、画期的な新業態を開発し、主役の交代劇が繰り返されてきました。現在、「ドラッグストアは大手5社しか生き残れない」とも言われていますが、本当でしょうか?

1990年代前半からわずか30年の期間で驚異的な成長を遂げたドラッグストアという業態の成長物語をまとめた『ドラッグストア拡大史』(イースト新書)という本が、2月10日に発売になりました。ドラッグストアという新しい業態の歴史をまとめた本は他にないので、ぜひご購読ください。ドラッグストアのことを知る入門書として最適の一冊です。

ドラッグストアが成長を開始した1990年代前半は、すでに全国津々浦々に近代的な業態が大量出店していた「オーバーストア時代」です。多くの小売企業がチェーン展開を始めた昭和時代のように、個人商店しかなかった「店不足時代」とは大きく異なります。

1990年代前半は、後発のドラッグストアが成長する余地などないように感じたものです。しかし、ドラッグストアは「店不足」「右肩下がり」の時代に、後発でありながら驚異的な成長を遂げています。「なぜドラッグストアだけが成長できたのか?」についてはドラッグストア拡大史を読んでもらえば理由がよくわかります。

そして、1990年代の後半には、昭和時代の小売業の王様だった総合スーパーの長崎屋、マイカル、ダイエーなどが経営破綻しています。まるで小売業の主役が交代するかのように、ドラッグストアの急成長が始まったわけです。

筆者が20歳代の頃に、正式な書名は忘れましたが、『日本の小売業は6社しか生き残れない』という本が発売されてよく売れていました。6社というのは、ダイエー、ジャスコ、イトーヨーカ堂、西友、マイカル、ユニーの総合スーパー(日本型GMS)のことです。戦後に急成長した巨大企業である総合スーパーこそが、日本の小売業の近代化、そして国盗り物語のゴールであり、他の小売企業はすべて大手6社の傘下に入ると、真顔で力説する人も大勢いました。

しかし、ご存知のように、ダイエー、マイカルは経営破綻し、西友はウォルマートの子会社になり、ユニーはドン・キホーテの傘下に入りました。つまり、日本の小売業は6社しか生き残れないのではなくて、「日本の大手小売業6社のうち2社しか生き残れなかった」というのが正解だったわけです。

変化対応できなければどんな大企業も滅びる

現在のドラッグストアは、1兆円企業を視野に入れた企業が数社も登場しています。ドラッグストア国盗り物語の歴史をたどると、地方予選を経て、準決勝が終わり、いよいよ決勝戦(最終決戦)の舞台に来たと感じる人も多いようです。数社の大手ドラッグストアしか生き残れないと感じている人が多いことも事実です。

しかし本当にもうこれがゴールなのでしょうか?商業の栄枯盛衰の歴史を素直に分析すると、次の10年も間違いなく主役の交代が起きると考えた方が必然であるように思えます。

全盛期を迎えた業態(ビジネスモデル)が通用する期間は20~30年です。変化に対応できなければ、どんな巨大な企業も滅びるという歴史は何度も繰り返されています。「今度だけは繰り返さない」という確率の方が低いことは、歴史が教えてくれます。

アメリカの経済学者である(故)クレイトン・クリステンセンの名著『イノベーションのジレンマ』によれば、ビジネスモデルが通用する期間は20年程度で、もっとも儲かっている時期に新しいビジネスモデルに挑戦しなければ、必ず衰退の道をたどると書かれています。しかし多くの企業は、儲かっている時期に、儲からない新しい挑戦をやりたがらないのです。

しかし、長く続く企業は、既存のビジネスモデルが絶好調の時期に、必ず新しいビジネスモデルに挑戦していると書かれています。写真フイルム大手の「コダック」が倒産し、同業の「富士フイルム」がビジネスモデルを乗り換えて生き残っているのは、まさにイノベーションのジレンマの典型的な事例です。

ドラッグストアの次の10年も、現在の規模の大きさよりも、「変化対応力」によって勝敗が分かれると思います。

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コロナストレス対応や休暇助成金も新設、妊娠中の従業員のための制度

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)禍の収束が見えないなか、前回は「雇用シェア」をはじめとした最新の主なコロナ対応制度について押さえました。今回は特に、出産を控える従業員自身、そうした従業員の方とともに働く人々や事業主が知っておきたい、働く妊婦さんのための制度についてまとめます(2021年1月25日執筆時点)。

母体保護に必要な労働時間の削減や業務配慮

コロナ特例措置をご紹介する前に、平時の制度について押さえておきます。まず、基本となるのは、妊娠・出産する女性の身体を守る(労働基準法上は「母性保護」と言います)ための規定です。次表のように、産休制度をはじめ、職務内容、労働時間に関する制限があります。

事業主には症状に応じた措置が義務付けられている

そして、男女雇用機会均等法には、妊娠中の女性の身体を守りつつその能力を十分発揮することを目的とした「母性健康管理」の規定などが設けられています。主な内容をまとめたのが次表です。

なお、健康検査(表中No.1)の回数は、標準的な妊婦検診に合わせた回数になっていますが、医師などが指示した場合、その必要な時間を確保する必要があります。

また、指導事項の実施(表中No.2)に関する措置の1つ、「通勤緩和」は、在宅勤務も含まれます。そして、始業・終業の時間の移動、フレックスタイム制度の導入や、時短を取り入れるなども選択肢の1つです。

こうした対策を通じて(つわりの悪化や流・早産につながるおそれがある)ラッシュの苦痛を妊婦がうけないようにする必要があります。

そして、医師の指導に対し適切な措置を実施するために、「母性健康管理指導事項連絡カード(通称、母健連絡カード)」を利用することが推奨されています。

母性健康管理指導事項連絡カードの一部

「コロナ感染ストレス」も対象、休暇助成金が新設

そしてコロナ禍の特別措置として、措置対象の症状に「コロナへの感染のおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響がある」場合が加わりました。

医師の指導の例として「感染のおそれが低い作業への転換又は出勤の制限(在宅勤務・休業)」が挙げられています。

休業を支援するための助成金も設けられました(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金)。

これは通常の年次有給休暇とは「別に」、休業が必要とされた妊娠中の女性が取得できる有給(年次有給休暇で支給する賃金相当額の6割以上)の休暇を整備し、この休暇を合計して5日以上取得させた事業主に対して給付する助成金です。

対象労働者1人当たりの金額は、休暇計5日以上20日未満は25万円、以降20日ごとに15万円加算(上限額:100万円)です。

1つ目のコロナ感染ストレスへの対応に関する特別措置が、2021年1月末→2022年4月末日まで、2つ目の助成金制度は2021年1月末→2021年3月末に延長されることが、2020年12月に決まりました。

また、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において、コロナへの感染について、ストレスを感じたり、通勤や働き方で悩む妊婦の方を対象に、「母性健康管理措置等に係る特別相談窓口」を設け、相談に対応しています。この相談窓口の開設期間についても、2022年1月末まで延長されました。

個人の体調に合わせた働き方ができる職場づくりを

さて、平時でもコロナ措置でも、前述のように法律措置で義務化しているのは、「医師の指導があった場合」が原則となっていますが、そうでない場合も従業員の申し出に応じて配慮するのが望ましいことはもちろんです。

筆者の経験上からも、妊娠中は異常な状態(病気・著しい症状がある)と診断が下されなくても「つらい」と感じるケースがあるからです。特に、つわりをはじめ、妊娠に伴う体調不良はとても個人差があります。実際、ほぼつらさを感じず出産直前まで通常通り働いていたという人から、つわりや体調不良で以前と同じ勤務状況が耐えられないことをきっかけに、退職してしまったという人までいます。

なお、厚生労働省の発表(2020年12月)によると、2020年4月以降の妊娠届出数は昨年割れを続けており(下図)、特に5月は17.6%減でした。コロナ禍のなか、妊娠・出産に不安を感じる人の多さがわかる数字です。

▲出典:厚生労働省・令和2年度の妊娠届出数の状況について

妊娠・出産への不安に拍車をかけるコロナ禍のなか、出産を控える従業員が体調に合わせた働き方ができるように、職場全体で配慮いただき、助成金も活用していただければと思います。

妊娠中の従業員に関するコロナ対応特別措置・助成金の詳細や最新情報は「職場における妊娠中の女性労働者等への配慮について」をチェックしてください。

NFI定例セミナー「Withコロナ時代の商品構成と商品分類」(2021/03/17 13:00~16:10)開催ご案内(オンライン)

3月の定例セミナーのテーマは、「Withコロナ時代の商品構成と商品分類」です。Withコロナ時代の売り方は、密を招く「短期特価特売」が廃れていきます。必然的にプロモよりも「定番売場」の強化が重要になります。そのためには陳列量にメリハリのある「商品構成グラフ」を維持することが買いやすく選びやすい定番売場の条件になります。改めて商品構成グラフの原則と実例を学びましょう。また、ワンストップショッピングを実現する「商品分類」と「売場レイアウト」の原則も解説します。

開催概要

・開催日:2021年3月17日(水) 13:00~16:10
開始時間は運営の都合で若干ずれることがある旨をご了承ください。
・実施方法:zoomによるオンラインセミナー
(アクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:1万5,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2021年3月8日(月)

スケジュール

(1)ショートタイムショッピングを実現する商品構成&分類
(2)ワンストップショッピングを実現する商品構成&分類
[13時00分~14時10分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

・商品構成グラフの原則と作成方法
・良い商品構成、悪い商品構成のグラフ比較
・Withコロナ時代は品目の「絞り込み」が進む
・買上点数を増やす商品分類と売場レイアウトの原則  他

(3)「非接触接客」時代の「POP広告」の原理原則&実例集
[14時20分頃~15時頃]

月刊『マーチャンダイジング』編集部

・リアル店舗の価値を高めるPOP広告の原則
・お客に価値が伝わるPOP広告の実例紹介
・推奨品・重点商品のPOP作成は商品理解の重要な機会  他

(4)特別講座・ドラッグストア「食品売場」の課題と強化策
[15時10分頃~16時10分頃]

エイジスリテイルサポート研究所(株) 三浦 美浩所長

・今注目すべき、強いスーパーマーケットの売場づくりに学ぶ
・ドラッグストアの食品売場の課題
・ドラッグストアの食品売場の強化策  他

注意事項

・今回のセミナーはzoomを利用して実施します。具体的な接続手順、URLなどは、受講者様にお送りいたします。あらかじめ https://zoom.us/ にアクセスできるパソコンをご用意ください。スマートフォンでも受講できますが、パワーポイントのスライドを画面に共有して進めますので、なるべくパソコンでの受講をおすすめしております。

・セミナー終了後10日間はアーカイブされた録画を閲覧することが可能です。
閲覧のためのURLは、セミナー終了後にご案内いたします。

・企業様によって、Zoomへのアクセスができないという場合がございます。
Zoomへの接続については、受講企業様にてご対応くださいますようお願い申し上げます。(弊社にてサポートは致しかねますのでご了承ください)。また、受講者様側の都合で当日受講できなかった場合も返金は致しかねますのでご了承ください。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

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