オムロンヘルスケアの心電図記録による受診勧奨モデル

オムロンヘルスケアでは、自社開発商品である「心電計付き上腕式血圧計」を使って、調剤薬局、調剤薬局併設のドラッグストア(DgS)で、心電計を記録して、「心房細動」のリスク啓発と早期発見を促進する「心電図記録による受診勧奨モデル」を提唱。県の薬剤師会単位でこれを実施する事例も現れている。DgSや調剤薬局の店頭で脳梗塞の主要な原因「心房細動」に関する知識が広がり、早期発見、受診勧奨を起点にした医療連携ができれば、健康相談機能は格段に向上する。(月刊マーチャンダイジング2023年5月号より転載)

心房細動は脳梗塞の原因の20〜30%。無症状が40%で発見が難しい側面も

心臓は1分間に60〜100回の規則正しいリズムで拍動し血液を体全体に送り出している。これが速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れることを「不整脈」と言い、脈が速くなることを頻脈性不整脈(100回/分上)、遅くなることを徐脈性不整脈(60回/分以下)と言う。心房細動は頻脈性不整脈の一種だ。

心臓の規則正しい拍動は、心臓内にある「洞結節(どうけっせつ)」という場所でつくり出される電気信号によりコントロールされており、この電気信号が乱れると心房が痙攣したように細かく震え(300〜600回/分)血液をうまく全身に送り出せなくなる。

[図表1] 高血圧から心房細動、脳卒中への進行

これが心房細動という病気だ。加齢により誰にでも起こりうるが、高血圧、狭心症など心臓疾患のある人、肥満、糖尿病、喫煙習慣のある人は発症リスクが高くなる。動悸、息苦しさ、めまいなどの症状があるが、心房細動の4割は「無症状」。早期発見のためには定期的な心電図記録が有効だ。心房細動の患者数は推定100万人超、超高齢化に伴い患者数は増えると見込まれている(図表2)。

[図表2] 日本における慢性心房細動患者数の推移及び今後の予測

心房細動になると心房の中で血液がよどみ、血栓ができやすくなる。それが血流に乗って脳に飛び血管が詰まると「脳梗塞」が起こる。心房細動が原因で起こる脳梗塞は「心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)」と呼ばれ生命に関わる大きな脳梗塞になることが多く、一命を取り留めても麻痺や寝たきりなど重い後遺症が残る可能性が高い。

すべての脳梗塞のうち20〜30%は心房細動が原因で、症状のあるなしにかかわらず心房細動の人はそうでない人に比べ5倍脳梗塞になりやすい。また、心房細動患者のうち、20〜30%は心不全の合併患者で、その他、心房細動患者と非患者を比較すると、認知症の発症リスクは1.4〜1.6倍、病気死亡のリスクは1.5〜3.5倍高くなる。60%以上の心房細動患者の生活の質が落ちているというデータもある。

こうした健康的な生活に大きな負の影響をもたらす心房細動だが、記述の通り40%以上は無症状、医療機関で心電図検査をしても検査時間内に心房細動が起こらないこともあり、確定診断が難しい一面もある。早期発見のためには最終的には家庭で心電図を定期的に記録することが有効だが、心房細動に関する社会的理解が高くない現状、DgS、調剤薬局で積極的に心房細動のリスクを啓発して、必要に応じて店頭での心電図記録を推奨、受診勧奨を含む医療連携を推進することが、DgS、調剤薬局の機能を高め、健康寿命の延伸にとって大きな役割を果たす。

(上記文章の一部は、京都府立医科大学不整脈先進医療学講座講師の妹尾恵太郎氏のオムロンヘルスケア主催オンラインメディアセミナー講演を参照)

全国700の調剤薬局、DgSに心電計付き血圧計を提供する秋田県薬剤師会の取組み

オムロンヘルスケアが提唱する「心電図記録による受診勧奨モデル」とは、地域の生活者が処方せん調剤などの目的で利用する調剤薬局、調剤薬局併設のDgSと連携し、心房細動の啓発や早期発見の機会をつくることを目的とした取組み。

心電図記録を希望した人のうち、年齢や生活習慣、既往歴などから心房細動を発症する可能性が高いと思われる場合は、リスクチェックを行い店頭に設置された心電計付き上腕式血圧計で心電図を記録。チェックシート及び心電図記録、解析メッセージから心房細動の可能性を確認した場合は薬剤師が受診勧奨を行い、本人の同意があればトレーシングレポート(医療機関に提出する服薬情報提供書)を作成する。

オムロンヘルスケアでは受診勧奨モデルの実現に向け、心電計付き上腕式血圧計を全国の調剤薬局、調剤薬局併設のDgS計700軒に設置している。

[図表3] 心電図記録による受診勧奨モデル

この製品は、心電計と血圧計が一体となっており、血圧に関心・不安のある人が血圧測定と心電図記録を一緒に行い、心房細動の可能性を検知できる。心電図計の使い方は測定前にスマートフォンアプリ「OMRON connect(オムロンコネクト)」を立ち上げたスマホを本体上部のスタンドに置き、左右各2カ所の電極に指を接触させ30秒程度で記録が完了する(写真参照)。

[図表4] 心電図解析結果一覧

測定後はスマホのアプリ上に心電図と同時に「心房細動の可能性」「正常な洞調律」など6種の解析結果が出る(図表4)。心電図の記録(波形)はプリントアウトできるので、受診勧奨の際にはプリントアウトした記録を渡せば診察の参考資料として活用できる。

アプローチした人の10%以上に受診勧奨

秋田県は高齢化率が日本一高く(36.4%、2018年度総務省資料)、がんや心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病による死亡率が高い。県民の死因の約半数が、がん、心疾患、脳血管疾患となっている。

このような現状から、県では「健康寿命日本一」に向けて県民総ぐるみで健康づくり運動を展開。健康寿命の目標値を掲げ、「栄養・食生活」「身体活動・運動」「ロコモ、フレイル予防」「たばこ」といった分野で具体的な対策を立て、県民へと働きかけている。

こうした機運の中、秋田県薬剤師会が県内にある健康サポート薬局に認定された30の薬局で、オムロンヘルスケアが提唱する心房細動の心電図記録による受診勧奨モデルを実施。成果や課題をまとめ、今後の県民の健康寿命延伸へとつなげる取組みを行った。

取組みの流れとしては、図表5に示したように、処方せん調剤などの目的で来局した人に心房細動のチラシを配布し、店頭に設置した心電計付き上腕式血圧計で心房細動を測るかどうかの意向を確認。既に循環器系で定期受診している人はかかりつけ医がいることから対象外とする。測定したいという意向を示した人にはチェックシート(図表7)を記入してもらい、測定対象となったら心房細動に関する説明をして測定。その後必要に応じて受診勧奨を行う。この流れはDgSで取り組む場合も基本になる。

[図表5] 心電図解析結果一覧

実施期間は6〜8月、9〜11月の2回。全期間を通じて、1,300枚のチラシを配布し、455枚のチェックシートを回収、チラシ配布の48.6%にあたる631人が心房細動を測定し、その10.6%の67人に受診勧奨を行った(図表6)。こうした取組みを全国規模で積み重ねていけば、心房細動に関する社会的な理解と早期発見は前進していくだろう。

[図表6] 秋田県薬剤師会による心電図記録による受診勧奨の取組み結果
[図表7] 測定意向のある人に渡したチェックシート

今回の取組みを主導した秋田県薬剤師会の常務理事佐藤一実氏は、実施後の課題を薬局からの聞き取りを基にまとめているのでその一部を紹介する。

①「受診勧奨モデル」を初めて聞いたときの率直な感想
▶地域の患者に需要があるか心配だった。
▶日常業務に支障なくできるか、機器を使いこなせるかなど不安はあった。
▶薬局が「地域に貢献できる」と思う半面、医師からの理解が得られるか不安もあった。
▶健康サポート薬局として何かやりたいと考えていたときに話が来たので飛びついた。

②日常的な心電図の記録への関心は感じられたか
▶心房細動の情報を聞いた後に計測したため非常に関心が高いと感じられた。
▶血圧を測るように、普段から測っておくことが大事だと理解して頂けた方は多く、来局の度に測って行く人もいて関心は高まっている。
▶一部では定期的に測定したいと自宅に設置したとの話があり、関心があると感じられた。
▶血圧ほどの関心はないと感じている。

③説明の際に有用だった声掛けの内容や説明の工夫はあるか
▶心房細動から脳梗塞の流れを説明すると、関心が高まるようだった。
▶「脳梗塞の予防のための心電図です」といった声掛けをすると関心を持って頂けた。
▶「数分で測定できる心電計ですよ」など測定に時間がかからない旨を伝えると比較的スムーズだった。

④「受診勧奨モデル」に取り組んで良かった点は何か
▶来局者との会話のきっかけになり、その方の背景を深く知ることができたり、健康相談をして頂けることが増えた。処方せんがなくても来局して頂ける取り組みになった。
▶今回の事業を通じて心電図測定の重要性についての理解、不整脈(心房細動)が脳梗塞につながるリスクがある点について、患者の理解が深まったと思う。

心房細動に関する啓発ができた、患者との接点強化につながったという声があり、受診勧奨モデルを続けることで、健康リスクへの知見が広がり、病気の早期発見につながったことで、調剤薬局の機能が高まったことがわかる。

[キーマンインタビュー]循環器系疾病の発症ゼロを目指す。そのための受診勧奨モデル提案

オムロン ヘルスケア株式会社
国内事業統轄本部 統轄本部長 加藤 宏行氏

ここからのパートでは、心電図記録による受診勧奨モデルを提唱しているオムロンヘルスケアの国内事業統轄本部 統轄本部長 加藤宏行氏に、その背景や心房細動早期発見に関する思いなどを聞いた。

「家庭で心電図を測る」という文化を根付かせたい

─「心電図記録による受診勧奨モデル」を提唱した背景、意図などを教えてください。

加藤 私たちはこれまで、長い時間をかけて、家庭で血圧を測るという文化をグローバルで根付かせてきました。脳卒中や心不全など高血圧が原因で起こる病気の発症を「イベント」と呼んでいますが、私たちは「ゼロイベント」という大きな目標を掲げて、家庭での血圧測定、それによる高血圧症の早期発見、治療サポートなどを行ってきました。しかし、残念ながらイベントは依然減っていません。さらに何かできないかと考えたとき、脳梗塞につながり早期発見が難しい心房細動に着目して心電計付き血圧計を開発しました。

高血圧の人が心房細動になりやすいので、血圧と心電図を両方測って頂くことで早期発見してイベントを防ぐことができます。今まで病院で測っていた心電図を家庭で測る。それを新たな文化にするためにも、調剤薬局、DgSでの体験が重要です。

一方で、心房細動という病気のこと、それが脳梗塞を引き起こすことはあまり知られていません。これを調剤薬局やDgSを利用する方に知って頂くことがひとつの目的です。また、体調に違和感があっても病院で心電図を測ることはハードルが高いので、調剤薬局やDgSで簡単に測って、必要なら受診勧奨して医療機関で診て頂く。これはイベント防止に効果的ですし、家庭で心電図を測るという文化の普及にとっても大きな一歩となります。そこで、一般社団法人スマートヘルスケア協会とパートナーシップを結んで、調剤薬局、DgSに心電図記録による受診勧奨モデルを呼び掛けています。

心房細動の早期発見で医療機関との連携強化

─調剤薬局、DgSにとっては、心房細動の受診勧告で医療機関との連携が強まりますね。

加藤 そこが大事なところで、心房細動は自覚症状もないために発見が遅れやすい病気です。定期的に心電図を測ることで問題があれば、早めに医療機関に行って確定診断してもらう。セルフケアだけでは解決しないので、早期発見、受診という連携、プロセスが重要です。

私たちが商品開発をして、受診勧奨モデルを提唱すると医療側からの反響の大きさに驚きました。医師たちも心房細動の早期発見には関心が高かったようです。

沖縄県浦添市の病院では近隣の複数の調剤薬局に心電計付き血圧計を置いて来局者に心電図を測って異常があったら報告してほしいという要請をしました。この病院の先生は沖縄県のイベント率の高さを問題視しています。

栃木県宇都宮市の病院では近隣の大手DgSの調剤薬局に同様の呼び掛けをしています。医療側も生活者との接点が多い調剤薬局、とくにDgSへの期待は大きいのだと思います。簡単に心電図が測れるというツールがなければこうした動きにはならないと思うので、心電計付き血圧計が調剤薬局と医療機関の連携に役立っていると実感しています。不整脈に不安がある人は近所のDgSで心電図を記録して、必要があれば病院を紹介してもらう。こうしたDgSの機能、医療連携の強化につながると思います。

オムロンコネクトのデータを活用すれば、DgSの機能は高まる

─秋田県薬剤師会の取り組みについてどうお考えでしょう。

加藤 ある期間内の数字になりますが、238人が測定してそのうち2.1%にあたる5人に心房細動が発見されました。取り組んだ人たち自身もこんなに患者が見つかるのかと驚かれていたようです。5人のうち2人は30代でした。60歳以上が発症しやすいと言われていますが、この結果も本当に意外で、心電図記録の機会を若い人にまで広げることも考える必要があります。

─心電図の記録には、オムロンコネクトというアプリを使いますが、このアプリは今後活用できるとお考えですか。

加藤 オムロンコネクトを使って血圧や心電図を測ると弊社のデータベースに記録が蓄積されていきます。その活用は今後考えていきますが、DgSの専門家の方たちにデータをフィードバックするという方法はあると思います。

ユーザーの同意に基づいて日々の血圧記録を、例えばDgSの管理栄養士と共有して、食事や運動の指導に活用していただくといった取り組みも可能です。DgSのDXが進む中、家庭内のバイタルデータとシステムをつなげれば価値を生むと思います。DgSの相談機能や医療機関とのハブ機能を高めていけるような提案は商品も含めて今後も続けていきます。

NRF2023レポート「コロナ禍によるECシフトで大きく変化するアメリカ小売業」

2023年1月15日~17日、NRF(全米小売業協会)の主催により、小売業の世界的な見本市であるNRF2023-Retailʼs Big Show(NRF2023)がアメリカ・ニューヨーク市で開催された。今回のNRF2023のテーマは「Break Through(克服)」。NRF2023に参加したサイバーエージェント社の高橋篤氏とR×R Innovation Initiative代表 近藤典弘氏に取材。米国小売業の最前線を紹介する。(取材協力:サイバーエージェント、R×R Innovation Initiative)(月刊マーチャンダイジング2023年3月号より転載)

[基調講演]

2022年は歴史的にも困難な1年 大会には革新的な技術、才能が集結

ウォルマートUS社長兼CEO
NRF理事会会長 ジョン・ファーナー氏

NRF2023は、NRFの会長を務めるウォルマートUS社長兼CEOのジョン・ファーナー氏の基調講演で始まった。ファーナー氏はまず、前年11月、12月の忙しいホリデーシーズンを乗り切った参加者たちに労いと歓迎の辞を述べた。次いで、2022年は、パンデミックからの脱却、世界的サプライチェーンの課題、急激なインフレ、国際紛争など歴史的に見ても困難なことが多かった1年だと振り返り、それでも小売業は、顧客を見て顧客のための革新的な取組みをしてきた、大切なことは「最良の顧客体験の提供」であることを強調。NRF2023にも機械学習、人工知能、ロボティクスなどの「画期的なテクノロジー」、リテールリーダーという「画期的な才能」、中小、スタートアップ企業からの「画期的アイデア」が集まっているのでこれらに触れてほしいと語った。そのほか、自然災害地への救援活動、組織犯罪に関する法律の見直し要請(ロビー活動)など、NRFが組織として取り組む活動にも言及した。

会場にあるアマゾンの無人レジシステム「ジャストウォークアウト(JWO)」のコンビニ

NRFが開催する全米規模の見本市は今回で113回目となる。NRF2023の来場者数は約3万5,000人、75ヵ国からの出展があり、展示ブースの数は約1,000、セッション(講演)数175、セッションの講演者は350人を数える小売業では全米にとどまらず世界的イベントとなっている。

セッション会場のひとつ。セッションは大小含め175開催された

[リテールメディア]

コロナ禍によるEC化に伴い加速度的に普及するリテールメディア

コロナ禍をきっかけに、人との接触を避けて買物をするためECの利用率が大きく上昇した。これに対応するために小売側も物流やアプリを含むECの改善、強化に投資して、今やアメリカの買物はECを軸に回り始めていると言っても良い。

この状況は、名前や住所、過去の買物履歴といった「情報付き」の生活者がスマホ、PCを経由して買物することが一般的となり、その回数が以前と比較すると膨大になったことを意味する。

そして、この動線上に広告を打てば購買意欲があり、なおかつ絞られたターゲットに向け、届けたいメッセージを送ることができる。こうした理由で小売業が持つ、自社の買物アプリや専用サイト、関連する第三者のデジタル媒体を活用した「リテールメディア」が注目されるようになった。市場も急テンポで拡大している。

[図表1]世界のリテールメディア市場の推移

図表1、2022年の世界のリテールメディアの市場は751億ドル(1ドル130円換算/以下同、97兆5,000億円)、2021年と比較すると80.1%増、2020年からは約3倍成長している。

米国内のリテールメディア市場の圧倒的シェアを占めるAmazonは米国内だけでも年間延べ2億人以上のアマゾンプライム利用者がおり、こうしたデータへアクセスできることがAmazonのリテールメディアの強さの源泉となっている。

Amazonのリテールメディアのサービス名称は「アマゾンアドバタイジング(amazon ads)」、以下のようなサービスメニューがある。

  • スポンサープロダクト:商品検索や商品詳細ページ、ショッピングの結果など、特定のページに商品リストを表示することができる。
  • スポンサーブランド:特定ページにブランドやそのブランドの商品広告をページ横断で適切に表示する。
  • スポンサーディスプレー:Amazon内のページ及び、Amazonと提携する外部プラットフォーム内のページで広告を表示する。

ウォルマート、ターゲットなど大手小売業も続々参入

ウォルマート コネクトのロゴ

ウォルマートは近年ECを強化しており、リテールメディアにも積極的に参入している。サービス名は「ウォルマート コネクト」。リテールメディアから収益を上げるという意味において、Amazonに最も近い。調査会社コムスコア社によると、ウォルマートのオンラインショッピングのトップページであるWalmart.comには毎月1億人以上の訪問者があり、これを活用して同社ではブランドとサイト利用者との効果的なマッチングをしている。

以下は、ウォルマートコネクトで提供されるサービスの一例である。

  • 検索広告:検索結果に広告主の商品を表示する。
  • ディスプレイ:広告主がウォルマートのウェブサイト、アプリ、及び第三者のプラットフォームで広告する商品と関連しそうな視聴者へのリーチを支援する。
  • インストア:4,700店以上の店舗に設置された17万台以上の店頭テレビや店頭スクリーンを使って、広告主とリアル店舗のお客をつなぐサービス。

大手ディスカウントストア、ターゲットは売上高で米国8番目の小売企業。同社のオンラインページには毎週300万人の訪問者がおり、リテールメディアを展開している。サービス名は、かつて「ターゲットメディア」と称していたが、リテールメディア強化にあたり「ラウンデル(ROUNDEL)」と改名された。コカ・コーラ、マイクロソフト、ユニリーバ、ディズニーなど人気ブランドと提携している。

サービスの一部を紹介すると次のようになる。

  • ターゲットプロダクト広告:自社サイト内で商品検索すると、提携メーカーのブランド、商品が上位に来る。
  • ターゲットサーチ広告:ターゲットの会員がグーグル検索すると、ラウンデルの広告を経由して商品リストに誘導する。
  • ディスプレイ広告:自社のオンラインページと150以上の提携メディアに広告を掲載できる。

ここで紹介した2社以外でも、大手小売業はほぼ全社リテールメディア事業に参入している。「自社会員のECへのアクセス」という膨大な資産を有効活用しているといっていいだろう。

米国のリテールメディアの急激な成長はコロナ禍により買物方法が大きくECにシフトしたという背景がある。リアル店舗でのサイネージによる情報の提供や収集、ビーコンによるプッシュ通知からの展開といった日本が模索するリテールメディアはアメリカでもさほど発達しておらず、期待できる収入源とはなっていない。その意味で日本がリテールメディアから一定の収入を得るためには、EC化率を上げる必要がある。

また、米国のリテールメディア市場は、Amazonが圧倒的なシェアを占めており(2022年のAmazonの広告収入は約116億ドル/15兆80億円)、これをウォルマートが後方から追うという構図になっている。2022年2月の発表によれば、ウォルマートのリテールメディアでの収入は約21億ドル(2,730億円)。Amazonの売上の18%強の段階にある。

マーケットプレイスやストリーミングサービスの開始でリアル+Amazon型ビジネスへの変身を図る同社にとっては、リテールメディアは、ポテンシャルの大きな世界だと見ることもできる。

[ライブストリーミングコマース]

次世代のECのカタチライブコマース

ライブストリーミングコマースとは、動画上で演者が商品の説明、使用感などを語り、最後にその商品の購入を勧めるという販売形式である。単にライブコマースとも呼ばれる。演者を務めるのは有名人の場合もあるし、小売の店舗従業員が登場することもある。

このライブコマースがアメリカでは大きな流れになりつつある。Firework(ファイヤーワーク)やBambuser(バンブーザー)といったライブコマース専門のプラットフォーマーが事業を展開。両社は日本にも上陸している。生活者、とくに若い世代がこのアプリ(サイト)にアクセスして俳優やスポーツ選手などの有名人、あるいはその業界に精通したインフルエンサー、さらに自分で開発した商品を売りたい個人が紹介するライブ映像を視聴、その後商品を購入するという買物スタイルが急激に拡大している。

ライブコマースのプラットフォーマーBambuser社は自社サイトの中で、「ライブビデオショッピング(ライブコマース)は、フォーブス、マッキンゼー、ブルームバーグなどで『小売業の未来』と呼ばれている新たなEコマースの形。Bambuserが配信する動画の平均視聴時間は13分(サイト滞在時間は通常のオンラインショップサイトの3倍)、同社配信の購入率(コンバージョンレイト)は12.4%(SNSの1,600%高)」などのデータを紹介、可能性をうたっている。

ライブコマースは中国ではすでに市場が成熟期に入っており、調査会社コアサイトリサーチ社によると、2017年から2019年にかけて20倍に成長。同社では米国のライブコマースの市場は2023年末までに317億ドル(41兆2,100万円)に達し、2021年の約3倍の規模になると予測している。

大手各社も取組始めたライブコマース

ウォルマートをはじめとする小売業もライブコマースに取り組んでおり、自社サイト内に専用ページを解説している。写真1はウォルマートのライブコマースサービス「Walmart Live」のページ。ビューティ、エンターテイメントと並んでアソシエートライブ(自社従業員のライブ動画)のコーナーもある。

[写真1]ウォルマートの「Live」のページ。アーカイブでも見られるが、臨場感を重視してライブ配信が基本、今後の予定では配信時間がついている

アメリカはインフレの影響で賃金も上昇し、人件費も高騰している。人手不足も深刻で店舗従業員の数は減っている。こうした状況でライブコマースは「接客のDX化」と捉えることもできる。リアルの接客なら1人でこなせる回数は限られているが、ライブコマースなら同時に1対n(複数)の接客が可能になる。

店舗従業員が登場するライブコンテンツも豊富にある

小売発信のライブコマースに期待されるもうひとつの効果は、「買物体験の補完、充実化」である。ECの比重が大きくなると、店舗での買物体験が不足し、ロイヤルティの低下が懸念される。そこで、店舗従業員がスタジオや自社店舗から、ライブ動画で商品を説明し購入を勧める。この「人感」、「臨場感」によって顧客との絆を深めようということで、各社自社従業員によるコンテンツを増やす傾向にある。

冒頭延べたように、米国での買物がECに大きくシフトされており、この現象からリテールメディア、ライブコマースが大きく成長しつつある。そして、それらがまた買物シーンや店舗の役割を変えようとしている。店舗がECのためのフルフィルメントセンターになり、ライブコマースのためのスタジオにもなる。その先にはメタバースのような世界で、疑似リアル店舗を体験しながらECで購入する、そんな時代も見えている。

[リテールクライム対策]

万引、組織的な窃盗で大きな被害が出ている

NRFの調査によると、2021年の小売業の盗難による被害金額は945億ドル(12兆2,850億円)に及び、2020年の908億ドルから4.0ポイント上昇した。

カリフォルニアでは2014年、住民投票で「Proposition47」という州法が承認された。これによると950ドルまでの暴力を伴わない窃盗なら軽犯罪として処理され、数時間から数日の拘束だけで収監されないケースが多いというもの。刑務所のコスト削減と更生に重きをおいたというのが法の趣旨だが、950ドルまでなら窃盗が黙認されることになり、当然窃盗犯罪が多発するようになった。

サンフランシスコのウォルグリーンは2021年、あまりに多発する万引、窃盗のために5店舗以上を閉鎖。他の小売業でも同様の事態が起こっている。また、ノースカロライナのホームデポでは2022年10月、万引を止めようとした従業員が突き飛ばされて転倒、死亡するという事件も起こっている。

さらに深刻化しているのは、ORC(Organized Retail Crime)という組織化された集団窃盗である。これは転売を目的に集団で店を襲い商品を持ち出すという犯罪。白昼堂々と行われることも多い。万引、ORCに対応するために小売では私設の警備員を雇う企業が増えた。

ORC対策のセッション会場

NRF2023でもORCに対抗するためのセッションが設けられ、カリフォルニアの州法の是正を含む、連邦規模での対策を議会に働きかけるとしている。

 

〈取材協力〉

R×R Innovation Initiative
代表
近藤 典弘氏
サイバーエージェント
インターネット広告事業本部
販促革命センター 統括
高橋 篤氏
サイバーエージェント
Al事業本部DX本部統括 経営戦略部長
藤田 和司氏

園芸用品購入者は客単価2.5倍。その理由とは!?

コロナ禍の「巣ごもり需要」で園芸愛好者は増え3,000万人を突破している。この傾向は一定程度定着し、市場も伸長が続く。さらに、園芸用品購入者はドラッグストア(DgS)の店舗にとって優良顧客であるというデータもある。この有望カテゴリーの拡大方法を考える。(※SOOドラッグデータ2022年1月~12月)(月刊マーチャンダイジング2023年3月号より転載)

店舗貢献度の高い園芸用品購入者

フラワーギフト売場での花と園芸用品の一体売場

園芸用品を購入している人は、店舗平均と比較して、客単価で2.5倍、買上点数で2.6倍、購入頻度(買物回数)で2.2倍というデータがある(図表1~3)。

[図表1]園芸購入者の客単価
[図表2]園芸購入者の買上点数
[図表3]園芸購入者の購入頻度(買物回数)

客単価、買上点数においては、おむつ、ミルクなど必要な消耗品が多く、世帯的にも食品、消耗品の出費が多いベビー用品購入者が高いが、園芸用品購入者はそれを上回っている。購入頻度(買物回数)では、日用雑貨部門の中では1位である。

それだけ、園芸用品購入者は店舗にとってロイヤルカスタマーであり、このカテゴリーを強化することで、優良固定客の育成を図れることを示している。

[図表4]家庭園芸人口予測

図表4は家庭園芸人口の予測の推移である。2017年から2,000万人台で推移していたが、コロナ禍の始まった2020年には3,000万人を大きく突破。2022年は若干前年より減少したが、それでも約3,381万人とコロナ禍後の大幅増大をキープしている。

[図表5]家庭園芸薬品市場推移

これに伴い家庭用園芸薬品市場も拡大、2020年は前年比11.6%増の492億円となり2022年の見込みでは505億円となっている(図表5)。優良固定客との接点となるカテゴリーは拡大しており、新規客を獲得するチャンスも大きくなっているといえる。

除草剤から入り品揃え拡大 我慢しながらカテゴリーを育成

園芸カテゴリーは、売場面積の広いホームセンター(HC)で購入することが多いが、近年郊外型のDgSでも園芸を扱い成功させている店舗が増えている。

「DgSで園芸カテゴリーを根付かせるために必要なことは、この店舗で園芸用品が買えることをお客様に認知して頂くことです。まず使用頻度も高く、掃除の概念とも近い除草剤から始め、それを売り続けることで認知を上げ、そこから対植物の商材へとつなげていく、活力剤などで売り個数を上げ、肥料、園芸用殺虫剤、土、スコップと品揃えを増やしていくというプロセスでカテゴリーが伸びていきます。ただし、一定の時間はかかるので、すぐに売上が上がらないから売場を縮めるということでは収益性のある園芸カテゴリーは育ちません。我慢も大切になります」(フマキラーマーケティング部部長 菅谷洋介氏)

一定の品揃えをして基礎ができたDgSの園芸カテゴリーがさらに成長するために重要な要素は何か。フマキラーでは「成功体験」をキーワードに挙げる。入門者にも、植物を枯らさない、きれいな花を咲かせる、野菜の実をよく付けるなどの成功体験を味わってもらうために、なるべく手軽で簡単に効果の出る商材の提供が重要になる。1シーズン園芸をやって成功体験を味わうことが次の年にもつながり、カテゴリーの固定客になり、店舗の優良固定客にもなっていく。

SNSを使って成功体験を共有 園芸への愛着を深める

フマキラーではSNSアプリ「グリーンスナップ」を使って成功体験の共有を図っている。グリーンスナップは、名前の分からない植物を写真に撮って送れば名前を教えてくれる機能などがあるアプリで、基本的には園芸愛好家たちが植物の写真をアップして交流できるアプリである。

[写真1]グリーンスナップに投稿された写真

カダンブランドの花でパンジーの一種であるボニータを親子で育てましょうといった趣旨で「親子でボニータ」のタグを立てて投稿を募った。これに賛同した愛好家たちが次々に写真を投稿(写真1)、1月中旬現在で600枚以上の写真が投稿されている。

「成功体験は人それぞれで『花が咲いた』だけではなく、その先にある、『親子で一緒に花の手入れをした』、『子供が水やりを楽しんでいる』など心の充足感、コト体験こそが成功の中身だと思います。こういう成功体験は企業から発信することはできないので、ユーザーの方自ら成功を感じてそれを共有するという仕組みをつくっています。単純に自分たちの咲かせた花を見てもらいたいという欲求も結構強いと思います」(菅谷氏)。

こうした、生活が豊かになるような成功体験を重ねれば根強い園芸愛好家になり、頻繁に園芸用品を購入することにつながる。

花と用品の一体的売場でカテゴリートライアルを増やす

先述のとおり同社では、カダンブランドからオリジナルの花を販売している。2021年には花、種苗の世界的なブランドの国内販売権を持つFSブルーム社を100%子会社化、見た目も鮮やかでオリジナリティのある花を市場に提供している。

[写真2]ゼラニウム売場での花と園芸用品の一体陳列

こうした特徴のある花と園芸用品を一体的に販売する売場提案も行っている(写真2)。これにより、関連購買が進むことに加え、まず花の購入から園芸愛好家になり用品も購入するというカテゴリートライアル(新規獲得)が可能になる。花から新規を取るためには、カダンやFSブルーム社が提供する他にはない目をひく花のデザイン性が効いてくる。

植物は究極の生鮮商品とも言え管理は決して容易ではない。カテゴリー育成には我慢も必要だ。しかし、客単価が平均の2.5倍という店舗貢献性や市場の成長性、心が豊かになってお客のQOL(生活の質)を上げることなどを考えると挑戦する価値のあるカテゴリーである。

ドラッグストア食品強化時代 定刻100%補充が、顧客満足と従業員満足を上げる

商品補充は店舗運営の起点になる重要な作業である。しかし、最近のドラッグストア(DgS)は食品の扱いが増えたこともあり、開店しても品出しが終わらず、通路には段ボールや折りコンが放置されているケースが目に付く。開店後、品出し未完了の時間が続けば続くほどにチャンスロスは大きくなり、顧客満足も下がる。こうした問題の改善を図るのがエイジスマーチャンダイジングサービスの「集中補充サービス」である。(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

顧客満足を低下させる「午前の売場問題」

2021年のDgSの数は2万1,725店舗(日本チェーンドラッグストア協会調べ)。日本の人口をこの店舗数で割ると単純人口約5,800人に1店舗DgSがあることになり、商圏は狭く(商圏人口は少なく)、競争は激しくなっている。

小商圏で客数確保のためには来店頻度を上げる必要があり、DgS、とくに郊外立地店は食品強化をせざるを得ない状況だ。青果、精肉の品揃えをする店も一般的になっている。このような傾向は、図表1に示したDgSの食品売上高構成比にも表れている。

[図表1]2022年度DgSの食品売上構成比上位7企業

食品の品揃えが充実するのに伴い変化しているのは、午前中の客数の増加だ。パン、カップ麺、弁当などの昼食商材や牛乳、卵、納豆などDgSが意識的に安値で販売する「集客商品」を目的購入するために午前中来店するお客は増えている。

一方で、食品の扱い量を増やすことで、品出し・補充の負荷が増大、「店舗全体の補充作業が午後までかかる」、「長時間、通路に段ボールや折りコンが放置され、買物、買い回りがスムーズにできない」、「前出し作業が追いつかず、売場の豊富感が損なわれる」などの問題が発生している。多くのDgSで食品強化により重要になっている「午前の売場」に大きな問題が生じているのだ。

▲折りコンや段ボールが通路に放置され、買物しにくい状況は、多くのDgSの午前の売場に見られ、大きなチャンスロスを起こしている

こうした「午前の売場問題」は顧客満足に負の影響を与え、客離れの原因につながる。本誌が行った顧客満足度調査(2022年12月号)によれば、顧客満足に大きな影響を与えるトップ5の要素として、一ヵ所ですべての買物を済ませる「ワンストップショッピング」(1位)と「短時間ショッピング」(4位)が挙がっており、「午前の売場問題」はこのいずれの要素をも阻害する要因になり、顧客満足の低下に通じる。

さらに、品出し作業の終わりが見えない。品出し作業中にレジ応援に呼ばれる、顧客対応もこなさなければいけないなど、「午前の売場問題」は従業員満足を下げ、離職や店長就任忌避といった問題にまで発展するケースが実際に起こっている。こちらも深刻な課題だ。

品出し・補充作業はマルチタスクからシングルタスクへ

顧客満足、従業員満足双方を妨げる「午前の売場問題」改善のため、エイジスマーチャンダイジングサービスでは品出し・補充を請け負う「集中補充サービス」を提供している。

[図表2]品出し・補充をマルチタスク化することの課題

同社では、必ず発生し店舗作業の中では大きな人時を要する品出し・補充作業を、他の作業と同時並行的に行う「マルチタスク」として自社従業員に割り当てることが問題の原因につながると分析。これを通常業務から切り出し、専任スタッフが計画的、効率的に担当する単一作業=「シングルタスク」化したほうが、顧客満足、従業員満足を上げられるとして「集中補充サービス」を開発、ブラッシュアップしている。

以下キーワードごとに、「集中補充サービス」の具体的な内容を見てみよう。

品出し・補充コスト最適化

小売業が自社従業員を品出し・補充に割り当てる場合、当日入荷量と最適な人時をマッチングさせることは難しい。店舗レベルの作業割当には限界があり、「だいたいの」入荷量と「だいたいの」人時を合わせシフトを組むが、その結果品出し・補充が午前で終わらない。あるいは、予定よりも早く終わって人時が余るということが頻繁に起こる。

エイジスマーチャンダイジングサービスでは、納品スケジュール、過去の納品実績データを小売業と共有し、日次で確度の高い納品量、作業量を推定。これを基に自社の過去データなどと照合し的確な人時を割り出し、派遣する人数、作業時間を決める。コストを最適化し、人件費のムダ、設定した人時で作業が終わらないといった問題を解消する。

[図表3]品出し・補充作業の変動費化

定刻100%補充

集中補充サービスでは、「あらかじめ取決めた定刻内に補充を完遂すること」を完全作業と定義付け、これを着実に達成する。

業務にあたっては、まず、小売業の担当者と打合せ、納品スケジュール、物量、入荷時の分類などのデータを共有する。これに基づき必要人時を決定。300坪のDgSなら3人程度が担当。物量や開店時間に応じて午前5〜7時から作業開始、人時を調整する。食品を含む受託した部門、カテゴリーのすべての品出しを取決めた定刻までに完了させる。万一時間までに終わらないときは、時間延長、応援部隊の派遣などによって最速でカバーし作業完了させる。

BIツールによる作業管理

エイジスマーチャンダイジングサービスでは「作業管理BIツール」という作業管理システムを使って集中補充作業をリアルタイムで管理している。

▲「作業管理BIツール」の店舗別、日別詳細の画面。売上、利益も共有し、集中補充作業との関連を探ったり、生産性の検証などを行い、業務改善に生かし、小売業の売上改善を支援する。

各現場で責任者がiPadを持ち、スタッフの到着、作業の開始、終了時間などをこれに打ち込む。万一店舗に納品がない、天候などの影響で納品が遅れているなどのイレギュラーな事案があればこれもiPad上で報告、報告を受けた同社の管理センターの担当者が適宜対応を取り現場に指示する。

基本、早朝補充では小売の従業員は立ち会わないので、こうしたサポートシステムにより現場をリアルタイムで管理、サポートしている。さらに、作業時間、イレギュラー発生、その他のリポートがシステム上に記録されるので、エイジスマーチャンダイジングサービスと小売業の担当者が定期的に振り返ることで、早朝補充の課題や改善材料を発見する機会にもなる。

集中補充導入店は年間2,362万円売上増

[図表4]集中補充の人時売上高、人時生産性への効果

図表4は集中補充の導入成果である。郊外型を主力とするDgSチェーンで1年間集中補充サービスを導入にした結果、同一チェーンの未導入店舗20店舗と比較すると、人時売上高で900円、人時生産性で320円の差が付き、1店舗あたりの年間の売上高で見ると約2,362万円、粗利益高にして約840万円、導入店の方が高かった(図表5)。

[図表5]集中補充の売上・利益インパクト

※図表4、5ともに集中補充サービスを実際に導入したDgSチェーンの1年間のデータ

これは、開店時(定刻内)に補充が完了し全商品が買えるというお客にとっては「当たり前の態勢」が売上に与えるインパクトの大きさを物語っている。同時に、補充作業を外注することで自社従業員はレジや接客といった本来業務にあたることが可能になり、商品の回転がよくなることも示している。

裏を返せば、開店しても棚前に作業中の補充スタッフがいたり、段ボールや折りコンが放置されることで、「売場が物理的にブロックされ商品を買えない」。従業員が補充作業に取られ、「レジ待ち時間が長引く」、「接客が不十分になる」といったことで、売上にして1店舗当たり年間2,362万円ものチャンスロスが起こっているとも言える。

開店前に品出し・補充を完了し、売場の埋蔵金を発掘する。これを店舗レベルのオペレーションで達成することは難しい。人員の確保、納品回数の改善、補充しやすい単位に分類された納品など、本部が仕組みをつくらなければ、現場は品出し・補充に苦労しながら、他の業務もこなさければならないという苦境に立たされる。エイジスマーチャンダイジングサービスの「集中補充サービス」は、仕組みづくりの有力な選択肢のひとつになる。

集中補充に関するお問い合わせ

エイジスマーチャンダイジングサービス 営業本部
0120-982-449(9:00〜17:30)

コロナ禍で成長した米国小売業はデジタル投資で「買物体験」を変えた

月刊マーチャンダイジング note版では、コロナ禍で大きな変貌を遂げたアメリカ小売・流通業のポイントを整理しました。近い将来、日本でも起こる変化としてご購読ください!(企画・執筆/エレガント・ソサエティ 若林哲史)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

「月刊MD note版」では「アメリカ流通業レポート 2022」を特集!DXによってコロナ禍で躍進した有力チェーンストアの戦略を分析します。
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低価格志向が顕著に

2022年は、2年以上にわたり人々の生活を大きく変えたコロナ・パンデミックの終焉の始まりとなる明るい年と期待されたが、2月24日にはロシアによるウクライナ侵略戦争が始まり、4月以降はインフレが急速に悪化した。

2022年3月には消費者物価指数が+8%、6月には+9%を超えてピークと思われたが、9月に入っても+8.2%と高止まりしている。

特に食費の支出額は全体で+11.2%、外食を除くと+13%の上昇となり生活を圧迫している。失業率は9月で3.5%と低く、所得も伸びているが、物価上昇率がそれを上回っており、世帯収入が低い人達の大きな負担となっている。

インフレがさらに悪化した3月頃からは、世帯間の所得の差による違いが表れ始めた。生活必需品の価格上昇は特に所得の低い世帯への影響が大きくなった。NBより割安なPBや代替品の購入、購入の先送り、買物頻度を減らすなどの行動が見られるようになった。

家電、家具、家庭雑貨などのカテゴリーの需要は冷え込んでおり、「ベッド・バス&ビヨンド」などのように、事業継続が危ぶまれる企業も出始めている。

店頭ピックアップが急伸

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一方、パンデミックにより、EC・オンラインによる買物は、通常の買物の選択肢のひとつとして定着した。そんな中、多くの大手小売業はリアル店舗とECを融合させ顧客に切れ目のないサービスを提供するオムニチャネル化のためのテクノロジーや、商品の受け渡し方法の多様化のための設備投資を積極的に行っている。

一方、EC市場の半分近くのシェアを持つアマゾンは、リアル店舗の展開を拡大している。2022年には、コンビニエンス・ストアの「アマゾン・ゴー」、グローサリー・ストアの「アマゾン・フレッシュ」、アパレルの「アマゾン・スタイル」、傘下の「ホールフーズ・マーケット」の店舗網を拡張し、9月末までに600店を超えるリアル店舗を展開している。

コロナ禍でオンライン注文→店舗ピックアップ、もしくは即日配達のニーズが急増した

これは、リアル小売業の店頭ピックアップ・サービスの成長に対抗する戦略だとみられる。オンラインで店舗と同じ価格で購入し、配達を待たずに店頭でピックアップできる便利さが消費者に受けている。

エコシステムの構築

パンデミックを機に、顧客がいつでもどこでも、どの様な方法でも欲しいものを購入でき、オンラインとオフラインを融合させることで、これまで以上に満足度の高い顧客体験を届けるオムニチャネル機能を備えた小売業が成長している。

またECにより収集/集積した消費行動の情報をベースに、顧客が求める金融、ヘルスケアなど様々なサービスを提供する小売業が増えている。

小売業を中心とした協業、分業および連携によるエコ・システム※の構築が進んでいる。アマゾンがプライム会員を中心に構築したエコ・システムを後追いで小売各社が模倣しているわけだ。

スマホをユーザー・インターフェース(顧客との接点)とする小売業アプリの活用も増えている。アプリは商品の検索、注文、返品そしてユーザーによる商品レビューから、小売業とのコミュニケーションなど幅広く利用されている。

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EC売上高が成長

2020年3月頃から感染者が増えはじめ食品小売業界とEC業界を除いて、小売の売上が急速に落ち込んだ。一方、スーパーマーケット、ディスカウント・ストア、ドラッグ・ストアやホームセンターなど生活必需品を販売する小売業は、コロナ特需で大きく売上を伸ばした。

他にも配達業、清掃業、ドライブ・イン式の映画館、酒販店、グルメ食品のケータリング、ゲーム専門店、フィットネス器具の販売業、造園業、家屋の修理を行う業者、子供の家庭教師、中古車販売、セラピストや家具店などもパンデミックの恩恵を受けた。

最も成長したのはEC業界で、デジタル・コマース360によると、2020年EC市場は前年比44%も成長し、小売市場の21.3%を占めた。

2020年後半になると状況は少しずつ落ち着き、コロナ過の新たな生活環境に対応したライフ・スタイルが定着し始めた。レストランのテイクアウトと宅配、小売店ではオンラインで注文した商品を駐車場でピックアップするカーブサイド・ピックアップの利用者が増え、多くの小売業が電子コマースで顧客が求める機能を拡充した。

また、チェーン展開する小売業が一部の店舗を小規模の「フルフィルメント・センター」(出荷のための梱包を行う物流倉庫)として活用するところも増えた。

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サービス消費が増えた

2021年に入るとショッピング・モールが再開されてアパレル店などの需要が復活、5月には小売売上が前年比で53.7%も増加、その後も2桁代の伸びが続いた。食品小売業界では買い溜めが多かった前年に比べて売上は減少したが、住宅市場が好調に推移したことにより大型家電や家具の需要が急増した。

消費者の購買傾向は住宅関連商品、フィットネス器具、キッチン用品からアパレル関連に移行、カジュアルウェアに加えて、事務所勤務に戻り始めた人達によって、スーツなどのフォーマル・ウェアの需要が伸びた。

また、健康美容のカテゴリーでは、在宅勤務ではあまり必要なかった化粧品を中心に需要が回復した。学校への登校も再開されたため、2021年の新学期用の学習用品や衣料品のバック・ツー・スクール・セールも好調に推移した。

2022年に入ってからも前年に始まった「リベンジ消費」が続き衰えていない。しかし消費は前年の商品消費からサービス消費へと移行、旅行や外食への需要が急増する一方で、家具、家庭雑貨、家電、スポーツ用品は低迷した。

デジタル投資が加速した

コロナ禍で成長した小売業は、積極的なデジタルやデータ投資、EC企業の買収やテクノロジーに必要な人材投資を積極的に行っていることが共通した特徴である。

ウォルマートはパンデミック前の2016年にEC企業の「ジェット・コム」を33億ドルで買収した。創業者のマーク・ローリーは、その後ウォルマートのテクノロジー部門を率いてオムニチャネル企業としての土台をつくることに大きく貢献した。

その後もヘイニードル、シューバイ、ムースジャー、モッドクローズ、ボノボス、インドのフリップカート、スレッドアップなど20社近くのIT企業を買収している。それらの企業の多くはその後譲渡されているが、ウォルマートのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に大きく貢献したことは疑いようのない事実だ。

利用客の間で人気の高いグローサリー・ピックアップや「ウォルマート+」のサブスクリプション(定額)・モデルも、これらのEC企業買収の成果と言える。

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フルフィルメント・センターに投資

上記に加えてウォルマートは人材投資を増やし、大学の奨学金制度や社内トレーニングを強化、消費者の行動変化に俊敏に対応できる組織を構築している。

ターゲットは、オンラインで購入した商品を配送する「シップト」を2017年末に買収し、コロナ過でEC売上を大きく伸ばした。利用客の所得水準が相対的に高いターゲットは、食品をはじめ生活必需品の幅広い品揃えでワン・ストップ・ショッピングができる店として、既存の顧客よりもさらに所得の高い富裕層の新規顧客を獲得した。過去2年間に売上を30%以上伸ばし、今年に入ってからも客単価や客数を伸ばしている。

オンラインで注文した商品をその日のうちに店頭や駐車場でピックアップできるサービスや、シップトによる即日配達は利用者の間で利便性の高いサービスとして高い評価を得ている。

大手スーパーマーケットのクローガーは、パートナーシップを活用した戦略により業績を伸ばした。2018年には、イギリスのオンライン・スーパー「オカド」と提携し、全米でオカドのロボットを駆使したフルフィルメント・センターの建設を行っている。

これまでに11ヵ所が稼働しており、店舗を展開していない地域でも、フルフィルメント能力を活かしたオンライン注文・グローサリーの配達サービスを提供している。

これから成長する企業は、「エコ・システム※」と、顧客満足のための「プラットフォーム」を確立した企業である。

この2つを実現するためには、自社の顧客が誰であるかを正確に見極め、彼らの財布のシェアだけでなくて、生活のシェア獲得を目指すことが必要になる。

つまり顧客満足は、これまでのように商品やサービスの提供だけでなく、顧客が健康で幸せに暮らせるように、製品やサービスを総合的に連携させることが重要になる。

※エコ・システム ビジネスにおいては、企業間でパートナーシップを結び、それぞれの企業が持つ技術や知識などの強みを生かし、共存共栄を図る仕組みのこと。

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実証試験を終え、次々に実用化される無人店舗

無人店舗は目覚ましい勢いで進化を続けている。今回は、サイバーエージェントグループ、株式会社CA無人店舗取締役平川義修氏が、2022年春、夏に視察した海外の無人店舗のうちのいくつかをベンダー(開発業者)ごとに紹介、合わせて日本での導入のポイントなどを考える。(取材協力:サイバーエージェント)(月刊マーチャンダイジング2023年1月号より転載)

商圏設定、品揃え、データ活用など戦略に合わせベンダー選択&協働

Amazonが無人店舗「Amazon Go」をアメリカワシントン州シアトルに出店したのは2018年1月。Amazon登録者が専用アプリを立ち上げるとQRコードが表示され、それを入り口でスキャンして入店、もしくはクレジットカードを差し込んで入店(買物客の特定)。店内で買物客が棚から商品を取ると天井に設置されたAIカメラと棚の重量センサーがそれを捕捉して商品と購入者を特定。指定のゲートから店を出ると数分後に電子レシートがスマホに送られてくるというのがその仕組みである。

このシステムはレジ精算なく、ただ店を出るだけという意味で、Just Walk Out(JWO)と名付けられ、現在Amazonは自社店舗だけでなく、JWOの外販も行っている。

1号店は20坪ほどの売場に約1,500SKUが在庫されたコンビニタイプの店舗だったが、改良を続け600坪の同社傘下の自然派食品スーパー、ホールフーズでもこのシステムを採用している。

JWOが起点になり、世界各地のスタートアップ企業が無人店舗のシステム開発に取り組み、現在では「スタジアムの売店に適したシステム」、「店内行動の分析に特化したシステム」など、各社目的や利用機会を考えた特徴あるシステム開発へとフェーズは進んでいる。今後日本の小売業は得意分野に応じてベンダーを選び、自社の成長戦略と一体的に無人店舗システムを採り入れていくことになるだろう。

ポイントは無人店舗とは、単に人のいない店舗を意味するのではなく、レジなしにすることで、快適な短時間買物体験で固定客を増やす、さらには、不要になったレジ従業員を他の業務にあてる、カメラやセンサーで店内データを取って固定客育成や販促、店舗運営改善に活用するなど、技術を自社の成長戦略の有力手段として位置づけることにある。目的や予算に応じて複数のベンダーと組むことも一般的になっているのでその視点も重要だ。

以下、平川氏が視察した無人店舗のシステムと、どのような戦略に活用できるかを合わせて紹介する。

JWO採用 600坪食品スーパー

[写真1]JWOで運営する600坪のホールフーズ(ワシントンDC)

ワシントンDCにあるJWO採用のホールフーズは600坪の売場面積に約5,000台のAIカメラを設置してレジなし店舗を実現(写真1)。

セミセルフレジ併用だが、レジはパーティションの後ろにありJWOが推奨されている格好。

アマゾンはホールフーズの他にも自社が運営する食品スーパーアマゾンフレッシュを40店舗以上出店しており、店舗では精算機能のあるカートでレジなし買物が可能。オンライン注文にも対応し複数店舗でJWOを導入している。

レジなしのスムーズな買物体験で固定客を増やす。加えて、レジ人時をECの出荷要員に振り分け、リアル+ECで商圏(アマゾン経済圏)拡大を図っている。無人店舗と成長戦略が一体化している好事例である。

ACCEL ROBOTICS社 Valet Market

集合住宅内出店、エリアに配送拠点 都市計画と一体化も見込む

視察したのはサンディエゴ市中心部から3〜4kmの都市部立地のマンション内に出店するアクセルロボティクス社が運営するバレットマーケットという店舗。売場面積は20坪程度で、食品や日用品、医薬品など生活に必要なものは一通り揃っており、店舗内在庫は、住民の買い足しや買い忘れなどのニーズに対応している。マンション外からの入店、住民以外の買物も可能。

[写真2]バレットマーケット店内(サンディエゴ都市部)
[写真3]生鮮食品など生活必需品を品揃え

ゲートからQRコードで入店し、レジなしでアプリ精算。マンション住人であればアプリで注文することで部屋まで配達してもらえる。2〜3km離れた場所に店舗兼配送拠点になるダークストアがあり、無人店舗に在庫のない商品や品切れの商品はその店までスタッフが取りに行くことで品揃えを拡張。こういった配送作業や補充などのために、従業員が3人常駐している。マンション住人と顔なじみになるため安心して部屋までの配達を頼める。

[写真4]マンション住人向け配達サービスの告知

利用者(アプリ会員)が何をいつ、どれくらい購入したかのデータを活用することで、個人のニーズにあったムダのない精度の高い品揃えが可能になる。このマンションは700世帯、1,100人が居住しており、この商圏人数(1,000~1,500人)で十分成り立つビジネスモデルを確立している。それだけ、頻度高く住民に利用されていることになる。

アクセルロボティクス社は元々ロボット開発の会社で、将来的には、マンションやオフィスといった特定コミュニティ内の店舗とダークストア間の配送を自動運転でつなぐスマートシティ構想もある。

[図表1]アクセルロボティクス社バレットマーケットのビジネスモデル

データ活用で個人のニーズを把握し品揃えに反映、無人店舗で在庫できないものはダークストアを使って住居まで配達、こうしたone to one対応の強化でコミュニティ内の買物シェアを最大化しようとする戦略は興味深い。都市部だけでなく、郊外を商圏とする日本の小売業、ドラッグストア(DgS)にも応用できる(図表2、3参照)。

[図表2]日本の都市部立地のDgSへの応用例
[図表3]日本の郊外立地DgSへの応用例

《適した戦略》

  • 店内データ分析強化
  • サテライト店舗出店

AVA retail社

既存の監視カメラにAIカメラを追加 レジなし精算から店内分析まで可能

アバリテール社は2014年創業とスタートアップ企業としては老舗の部類に入り技術も蓄積されている。同社は「実現可能なコスト」にこだわり、既存の監視カメラに新規のカメラを追加することで、レジなし精算ができる。

天井の高さにもよるが、200坪程度の売場でも80台のカメラで対応可能。これを坪当たりのカメラ台数で計算すると0.4台となり、先に紹介したワシントンDCのJWO型ホールフーズ(8.3台)の20分の1だ。

低コストだが映像分析の技術は高い。お客の鼻の向きを分析することで売場に設置された複数のデジタルサイネージのうち何を見ているかが分かる。さらに基本的な表情を読み取ることで商品への好感度も推測可能。

また、同社の強みはカメラ、センサー、アプリなどを駆使して様々な顧客行動を分析し、それを店舗改善に生かすところにある。分析するデータとしては、「任意の時点での店内客数」「直帰(買わずに退店)率」「顧客がよく通る動線」「顧客ごと商品ごとの滞留時間」「顧客をもっとも長く滞留させた商品、同もっとも短い商品」「顧客ヒートマップ」「商品ヒートマップ」などがあり、これらの数値を組み合わせ約80種類のデータをダッシュボードで見られるシステムを開発している(写真5)。

[写真5]店内行動分析の結果をダッシュボードでチェックできる

POSだけではわからないデータを分析することで売場レイアウト、棚割、ポテンシャルのある商品の陳列位置などの改善ができる。こうした分析を少ないカメラ台数、比較的低予算でできるところが大きな強みとなっている。初期導入コストを抑えたい小売業に適したシステムである。

[図表4]アバリテール社システム導入イメージ

《適した戦略》

  • 店内データ分析強化
  • 低コストで早期導入・差別化

STANDARD AI社 CIRCLE K

既存店に低コストで導入可能 従業員の動き、店の仕組みを変える

視察したのは、スタンダードエイアイ社の自動チェックアウトシステムを導入した、アメリカアリゾナ州フェニックスで営業するコンビニ、サークルK。

この店舗の大きな特徴は入店ゲートがないこと。店内を回遊して任意のタイミングでQRコードやアプリ入りのスマホをリーダーにかざしてチェックイン、買物が終わって店を出ると電子レシートが届く。ゲートがあることで入店しづらくなる心理的障害を解消している。ゲートがない分万引きリスクも高まるが、チェックインなしで商品をピックアップして退店した場合には従業員にアラートが出る。

[写真6]店舗のオペレーション・指示出しを自動化。従業員向けのスマホアプリに指示を飛ばし、誰が実施したかなどを管理可能

また、複数の高精度AIカメラが人物だけでなく商品も個別に識別することで、売り切れや棚の乱れを認知、店舗従業員にアラートが出る。それに対応すると評価ポイントがつくというゲーム感覚で売場を常に良好な状態に保つ作業管理システムも兼ね備えている。

既存店にこのシステムを導入する場合、AIカメラを設置するだけで、棚の入れ替えやレイアウト変更の必要がないので低コストで済むのも大きな特徴。

《適した戦略》

  • 低コストで早期導入・差別化

AiFi社 ALDI

カメラのみ設置でレジなし精算 高齢の買物客がスムーズに利用

[写真7]天井のカメラのみで商品、購入者特定

アイファイ社は2016年アメリカカリフォルニア州で創業。カメラ設置だけ、棚の重量センサーなどなしで商品を特定、アプリ利用でレジなし精算ができる。そのため導入コストを低く抑えられる。アメリカ、イギリス、スペイン、中国など世界各地の小売にシステムを提供している。

視察したのはイギリスグリニッジ郊外で営業する食品スーパー、アルディ。中心部から離れた郊外立地の200坪程度の店舗。高齢者のお客が多かったが問題なくスムーズに買物。高齢社会の日本でも十分一般化できることを伺わせている。生鮮品揃え300坪程度の一般的な郊外型DgSにも適用できると思われる。

《適した戦略》

  • 低コストで早期導入・差別化

ZIPPIN社 スタジアム売店

ハーフタイム、通勤時など 混雑する特定時間に対応

[写真8]ニューヨークNBAのスタジアム内にある自動精算の売店

ジッピン社開発のシステムはスタジアム、駅、空港など特定の時間帯に買物客が集中するという店舗に特化。比較的小型店でレジ待ち時間をなくすことも強みとしている。

これまでに50店舗を出店、1平方フィートあたりの売上を10%〜50%向上させ、お客のレジ待ち時間を延べ14万時間節約したと発表している。2022年には200店舗に導入拡大。

《適した戦略》

  • 来店客集中時のチャンスロス解消

オンライン接客による、新規サービス定着促進、接客販売強化

省力化&接客強化/①お困り事対応

●サイバーエージェント社が提供するサービス例
接客のデジタル化:チャットボット、アバター接客など

サイバーエージェント社が提供するサービス例

セルフレジ、スマートカート(カート設置の機器で商品スキャンしレジなし会計)など新規サービスを開発し導入しても使い方がわからないため中々定着しないというケースが多々見られる。無人店舗導入時にも起こり得ることだ。当初は人を付けて説明していても長期間それを続けるのはコスト的にも難しい。

こうした事態への対応として、サイバーエージェントではオンライン接客のソリューションを用意している。サイネージ提供に加え、沖縄に1,000人規模の自社コールセンターがあり、これに対応。新規サービスの説明の他、ビューティケア、ヘルスケアのカウンセリングにも活用できる。

【無人店舗・オンライン接客に関するお問い合わせ】 ca_mujin@cyberagent.co.jp 050-5212-7036

 

〈取材協力〉

株式会社CA 無人店舗 取締役
平川 義修氏

脱コロナ禍で見えてきたコンビニ業態の新たな3つの稼ぎ方

コンビニチェーン本部、および加盟店は売上・利益ともに回復基調にある。コロナ禍に関しては2022年3月21日にまん延防止等重点措置が終了、同年7月、8月には第7波が到来、過去最大の感染者数を記録するものの行動制限の要請はなく、人の移動で売上が伸びるコンビニ業態にとって、望ましい環境が各社の業績を後押しした。ここでは脱コロナ禍で見えてきた新たな稼ぎ方を主にセブン−イレブンに見ていく。
(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年3月号より転載)

店舗数前期比はセブンは増加 ファミマとローソンは減少に

既存店の売上高前年比を第3四半期累計(2022年3~11月)で見ていくと、セブン−イレブン・ジャパン(以下、セブン−イレブン)103.4%、ファミリーマート104.3%、ローソン102.9%と前年クリア、その内訳でも大手3チェーンは客数、客単価ともに前年をクリアしている。

コロナ禍の初期は大きく減少した客数に対して、まとめ買い需要を喚起して客単価を向上、売上高を維持するかしないかの瀬戸際の攻防であったが、今期は客数の改善を図っている。

既存店売上高前年比は、フランチャイズビジネスにとって、加盟店はもとより、チェーン本部が最も気にする数字であるが、ここを伸長させないと、ドミナントの拡大に赤信号が灯る。既存店が落ち込んでいては、周囲に店数を増やすどころではなくなっていく。

第3四半期末の国内店舗数を見ていくと、セブン−イレブンが21,342店舗(前年比142店の増加)なのに対して、ファミリーマートが16,544店舗(前年比46店の減少)、ローソンが14,628店舗(前年比69店の減少)となった。

ファミリーマート、ローソンともに、既存店の売上と利益の増加を、新店開発に優先して取り組んでいることが分かる。本来であれば、新店開発と既存店の活性化は車の両輪であり、同時に進めていく必要があるが、この3年におよぶコロナ禍が、そのバランスを狂わせたといってよい。

名店監修と大掛かりなフェアで米飯弁当は800円超えに突入

セブン−イレブンは、コロナ禍において、小商圏化が加速し、個店ごとにお客ニーズの違いが顕在化していると認識、そのため、お客に対して、わざわざ自店に来店してもらう目的来店性を高める政策を取ってきた。セブン−イレブンが把握するデータにおいても、1人のお客が利用するセブン−イレブンの店舗数が少なくなり、同じ店舗に来店する傾向が強いことが判明している。

単純に考えれば、例えば自宅とオフィスと取引先の何社かを行きつ戻りつしていたオフィスワーカーの出社日数が週5から週3に減って、取引先との商談の半分がオンラインに切り替われば、コンビニへ行く「機会」は自然と減少していくであろう。

そこで、セブン−イレブンは、たまたま立ち寄ってもらうのではなく、目的来店性を高め、店舗を活性化させ、来店頻度を向上させようと考えた。

その施策の1つ目が「高付加価値商品の品揃え拡充」、2つ目が「取り扱いアイテム数増加を図る売場レイアウトの変更」、三つ目が「イベント感を出す販売促進」である。これらを融合させた取り組みを継続的して実施してきたという。

一つ目の高付加価値商品とは、プライベートブランド(PB)のセブンプレミアムの中でも「金」の付く商品を指す。金のビーフシチュー(496円/税込み、以下同)、北海道産小麦の金の生食パン4枚入(375円)、金のマルゲリータ1枚入(537円)など多岐の品種にわたる。

この高付加価値商品を含むセブンプレミアムのリニューアルを推進している。2021年度にアイテム数を絞り込み、2022年度は約1,200アイテムのリニューアルを進めて、11月末時点で933のアイテムで実施している。

セブン−イレブンは2022年1月から毎月、大掛かりなフェアを実施。旅行やイベント参加を控える利用者に2022年度のメインテーマである「ワクワク感」を訴求している(画像はセブン-イレブン公式Twitterより)

この高付加価値商品に加わった、もう一つのテーマが2022年1月から毎月実施している各種フェアである。毎回の企画に応じて高付加価値商品を投入、商品開発と販促を連動させた取り組みを推進している。例えば、2023年1月15日より実施した北海道フェア「北海道グルメ旅」では、「Suage監修チキンと野菜のスープカレー」(810円)といった既存の商品と比較して、差別化を試みながら、強気の価格を打ち出している。

セブン−イレブンの北海道フェアで投入した「Suage監修チキンと野菜のスープカレー」810円と「いそのかづお監修札幌ブラック醤油ラーメン」594円。強気の価格設定でコンビニ弁当の底上げを図る

米飯弁当については500円以下がコンビニの常識的な価格といわれてきた。それが近年では600円を超える商品が出始めている。単なる新商品として800円超えは難易度が高いが、スープカレーのように、名店監修と北海道フェアによる高付加価値により訴求している。

コンビニ店舗の販管費が上昇、アルバイト従業員の時給を上げていかないと、この先、コロナ禍以前のような人手不足に陥ることは目に見えている。高付加価値、高粗利に徐々にシフトしていく方向性であろう。

こうした高付加価値商品の品揃え拡充の成果は表れており、「粗利率については、原材料価格が高騰する環境下、デイリーメーカー様と協力し、フェアで提供する商品開発や、セブンプレミアムの訴求強化など、価値と価格のバランスをとった商品をご提供することにより、3Qは+0.3%と大きく伸長することが出来ました」(セブン&アイ・ホールディングス2023年2月期決算説明会より)と説明している。

2つ目の店舗活性化策は「アイテム数増加を図るレイアウトの変更」。商圏が狭くなっているのだから、1人のお客のニーズに幅広く対応する必要がある。常温商品を対象に(特殊店舗を除き)約90アイテムを拡充している。

3つ目が「イベント感を出す販売促進」。前述したフェアの連続開催である。9月は「関西グルメ巡り」、10月は「秋の味覚だより」、11月は「熱狂!麺フェス」、12月は「洋風グルメフェア」「年末弁当フェア」を実施した。来期(2023年度)はメインのフェアに加えて、地域ごとの特色を活かした「ご当地フェア」のような販促策で地域活性化を図っていく。

セブン−イレブンはフェアによる販促活動には従来は消極的であった。企画モノよりも一品一品の商品の磨き込み、それを知ってもらうために、例えば、おにぎり100円セールなどを実施してきた。しかし、広く、薄く、セールで値引きして粗利を削るのではなく、会員獲得と販促効果の高いアプリ会員に向けたセールを推進している。

その一方で、店頭販促やメディアを動員した大掛かりな連続フェアを実施して、来店動機を高めて、さらに高付加価値商品に手を伸ばしてもらい、客単価の底上げを同時に取り組んでいく。

他にも、セブン−イレブンの成長戦略の目玉になる「7NOW」も計画通りに進めている。これはデリバリ―のマーケットに対応する取り組みで、スマートフォンで注文された商品を最短30分で指定の場所に届けるサービスである。

2022年11月末までに1,401店舗で展開、12月末には2,000店舗を超えて、期末(2月末)には5000店舗に拡大させる計画である。店舗オペレーションの改善と配送ネットワークの整備を進めながら、2024年度には予定通り、全国展開する意向である。

ローソンは「Uber Eats」によるOTC医薬品を86店舗で配達

ファミリーマートは、本誌連載で紹介した「人型AIアシスタントによる店長業務サポートの導入」や、無人決済システム導入店の関西初出店などによる省人化と省力化、店舗運営力向上により、加盟店利益向上を図っていく。他にも、精算カウンターの上部に取り付けるデジタルサイネージは、2023年度中に設置店舗を1万店へ拡大する方針を示している。

ローソンは、店内調理サービス「まちかど厨房」の導入店舗を11月末までに8,970店舗に拡大。5月からはローソン店舗への「無印良品」の本格導入を開始した。店内調理サービスは、唐揚げなどのカウンターフーズを除いて、セブン−イレブンもファミリーマートも実施していない。

ローソンは店内調理機能の導入に大きく舵を切り、上位2チェーンと差別化を試みる

ローソンは大手3チェーンの中で、明らかに違う道へ進んだといってよい。店内で調理すれば加盟店の「人時数」は増える。売上や粗利の改善がそれを上回ればよいわけで、きめ細かな店内オペレーションが一層求められることになる。

また、ローソンは「Uber Eats(ウーバーイーツ)」を含む4社のフードデリバリーサービスの導入を11月末までに45都道府県3,556店舗に拡大した。

セブン−イレブンが時間を掛けて自前でシステムを構築する一方、ローソンは外部のサービスを活用することで早期の全国展開を(2県を除き)実現している。

「Uber Eats」では、OTC医薬品の取り扱いを16都道府県の86店舗で実施、早くから医薬品の販売に意欲的であったローソンにとって、こうした新サービスの導入が奏功する結果となった。大手3チェーンは、こうした新たな「稼ぎ方」を推進している。

店長の性格を把握した人型AIアシスタントが発注業務などコンビニ店舗運営をサポート

前号ではCGアバターを接客に活用するローソンの事例を紹介した。ローソン専属のスタッフが、店舗に設置されたモニター画面から、オンライン上で来店客に話し掛けるシステムで、その際、スタッフは自身の顔と声を、設定されたキャラクターに変換して対応する。この人型のCGはスタッフを介するが、今度は人を必要としない人型のAIがファミリーマート(ファミマ)に登場した。(構成・文/流通ジャーナリスト、月刊コンビニ編集委員 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年2月号より転載)

過去のデータ分析と予測から機会ロスと廃棄ロスを防ぐ

ファミマは店長業務をサポートする「人型AIアシスタント」を導入、2023年3月に1,000店舗、同年度末までに5,000店舗へ導入すると発表した。このキャラクターは、女性がレイチェル、男性がアキラと名付けられ、個店ごとの運営状況に合わせた、最適なデータを提供していく。それにより、店舗の省力化と店舗運営力の向上につなげていくとしている。なぜ今、人型AIアシスタント(以下、レイチェル)なのか。

「市場の急激な変化にともない、お客様ニーズの多様化を痛感、経営環境に大きな影響を与えている。とくに、ここ数年来の人手不足。こうした変化に対応して、店舗運営をますます効率化していくことがチェーンの課題と認識している」(ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村弘之氏)

そうした課題の一部をデジタルで解決できないものか、ファミマは親会社の伊藤忠商事からクーガー社を紹介してもらい、3社で取り組んできた。レイチェルは、クーガー社の持つ音声認識技術、ゲームAI技術、データを処理する検索技術などを搭載、店長の特性や性格などに合わせたコミュニケーションを可能としている。

店長や発注業務を担当するスタッフは、専用のタブレットを持ち、レイチェルと対話を試みる。例えば次のようなやり取りをする。

レイチェル「お疲れさまです、いつもありがとうございます、前日のデータを確認しますか」
店長「はい」
レイチェル「前日のデータを表示します、店舗全体の前年比が100%を超えました。この調子でいきましょう」

売上を大きく左右するデイリー商品に関しては……

店長「パスタの品揃えを見せて」
レイチェル「はい、品揃え確認グラフを表示します、この画面では、今週の品揃え状況が確認できます。グラフをご覧ください。紫がこのお店の平均の販売数で、黄色が廃棄数です。続いて緑は、立地の似た店舗の平均販売数を、このお店の日商に合わせて計算した基準値です。熟練のスーパーバイザー(SV)さんが考案したグラフです。安心して使ってください」

店長はレイチェルとコミュニケーションを図りながら発注数などを決めていく(発注端末は別に用意している)

レイチェルは、このような詳細なデータを、グラフを用いて分かりやすく表示する。そのデータを読み込みつつ、売場の店長、あるいはスタッフは発注数をレイチェルと一緒に調整する。

発注の際に注意すべき二つの点、すなわち機会ロスと廃棄ロスが起こらないようにレイチェルが発注ポイントへの注意を促す。こうした双方向のコミュニケーションにより、店長は、店舗運営の円滑化を図っていく。

競争意欲や学習意欲など店長の志向に合わせて提案

レイチェルのコミュニケーション能力の特徴は、一つ目に前述のような「双方向のコミュニケーション」の実現にある。毎日大量のデータを分析、確認をすることのみならず、販促計画を読み込みながら、個店に応じたアドバイスができる。

「先週のおむすびの前年販売費が150%と好調でしたね」と個店の傾向値、あるいは売れ筋の販売状況から「スパムおむすびが好調」といった細部にわたって情報提供できる。

二つ目に業務のリマインドを可能としている。レイチェルが店長に対して能動的な問い掛けができる。例えば、キャンペーンの開始時に「販促物は取り付けていますか」と語り掛けてくれる。店長は「あっ?忘れていた、すぐやるよ」といった気づきを得られる。

三つ目にレイチェルは、相手に合わせたコミュニケーションを取ることを可能としている。例えば競争意欲の強い店長に対しては、自店の立ち位置が分かる情報を提供する。重点商品に関して、地域内の自店の販売順位を、あえて提供することで、やる気(負けん気)に火をつける。

また、学習意欲の強い店長には、新しい知識につながる情報を提供する。「サンドイッチの詳細データの新着がありますよ」とレイチェルが問い掛けるなどして、データの頻度を高めていくことを可能としている。

あるいは承認欲求の強い店長には、ねぎらいの言葉を述べる。「いつも使っていただいて、ありがとうございます。これからも頑張っていきましょう」といった具合に、相手に合わせて、表現の仕方や提供する情報を変えていくようにしている。

こうした店長の性格や姿勢をつかむために、事前に会話形式のアンケートを実施した。その仮説をもとに、最初はレイチェル側でコミュニケーションを店長に合わせていき、それが適切であるかどうか見極めていく。レイチェルが新商品の説明をしたときに、反応があるかどうか、反応が薄ければ、学習意欲の比較的弱い店長として修正をかけていく。

「ひと口に店長といっても個性も姿勢も人それぞれ。経験も習熟度も異なる。店舗にはあまたの情報やデータはあるが、日々の業務が忙しく、活用せずに埋没することもある。その状態を解消するために、レイチェルが相手に合わせて、いつでも欲しい情報を、欲しいタイミングで提供することができる。これにより店長の業務をしっかりとアシスタントしていく」(中村氏)

レイチェルの導入により、店舗を指導する立場のSVの仕事は、どのように変わるのであろうか。まず、SVの一部業務の代替が可能になる。担当店舗全店に共通することは、定型化しながらレイチェルが代替、一方でSVは個店に寄り添った売場の経営指導に注力する。

中村氏は次のような効果を期待する。

「個店に指導するにあたり、SVに資料を作成する時間を、けっこう長く取らせてしまっていたと感じる。そこで、資料のデータをレイチェルがカバーできれば、SVの業務を削減できるし、先にレイチェルが店長とコミュニケーションしておけば、その後のSVが売場をどう変えていくか、より高い水準で話もできる、その意味では、2割から3割の業務を削減できると想定している」

単にSVの業務を肩代わりするだけでなく、それにより浮いた時間を、より高度な指導に充当できる。

​​AIと人間が、どう仕事を分担し生産性の向上を図るのか?

実際に人型AIアシスタント・レイチェルの開発に携わったクーガー社の代表取締役CEOの石井敦氏は、その特徴を開発の視点から次のように説明する。

もう“一人”のアシスタントのアキラ。AIは自ら学習して内容を深めていくことが可能。SVの仕事は、より高度にしていく必要がある

一つ目が「アクセスの双方向性」。既存のコンピュータは、ユーザー主体で情報を取りに行く必要がある。一方でレイチェルは問い掛けや提案を行い、これにより店長にリマインドや気付きを提供でき、自然に双方向コミュニケーションを生み出すことができる。

二つ目が「行動促進力」。文字、画像に加えて、音声、表情、動き、距離感を織り交ぜて伝達する。

「まさに人間と同じように五感に訴え掛けていく。それにより、情報の重要度や水準、緩急が伝わる。学校の先生に言われたポイントとか、友だちが近づいて話した内容は非常に印象に残ったという経験は誰でもあると思う。その結果、影響力が高まり行動促進につなげられる」(石井氏)

三つ目が「個別支援能力」。店長の習熟度であったり、志向性であったりをレイチェルが理解、その店長それぞれに合わせて個別支援をしていく。前述のように、レイチェルは店長の意欲や欲求に合わせてコミュニケーションを図ることを可能としている。

コツコツと積み上げる仕事に力を発揮する店長には、これまで続けてきたこと、積み上げたことを、レイチェルがよく理解し、上手に問い掛けてサポートしていく。

ファミマは2年前からレイチェル活用の実証実験に取り組んできた。業務の漏れをなくすことで、当該カテゴリーの2%から5%の売上増に寄与したという。当面は店舗の利益に大きく影響する、米飯やサンドイッチ、調理麺、総菜、キャンペーンの展開をテーマに店長を支援していく。

AIと人間が、どう仕事を分担して生産性の向上を図るのか、コンビニのオペレーション改革が本格化していく。

ファミリーマート執行役員 店舗業務企画本部長 中村 弘之氏
クーガー代表取締役CEO 石井 敦氏

「営業改装」で閉店売上ロスなく店舗年齢を若返り化

「営業改装」とはエイジスマーチャンダイジングサービスがそのノウハウを確立させた、店舗を閉店することなく営業しながらの全面改装のことである。ドラッグストア(DgS)に関していえば、出店攻勢により店舗数を増やす企業が増える中、既存店改装の重要性はますます高まっている。これを支える同社の事業をリポートする。(月刊マーチャンダイジング2022年12月号より転載)

新規出店と店舗改装はDgSの成長戦略の両輪

[図表1]DgS出店・退店状況(2022年期末店舗数順)

図表1は上場DgSの店舗数、出退店状況である。4桁チェーンが6社、非上場の富士薬品グループ(店舗数1,372)を加えるとDgSには4桁(1,000店舗以上)チェーンが7社存在する。出店数も多く5社が100店以上出店、3社が純増で100店舗を超えている。DgSが出店をベースに成長してきたことは間違いない。

一方でこれだけの新規出店で店数が増えれば、顧客ニーズや買物行動の変化に合わせて改装すべき旧店も相当数存在することになり、店舗改装は新規出店と同じくらい重要な成長戦略となる。

改装には、カテゴリーや部門のみを改装する部分改装と店舗全体を改装する全面改装がある。ツルハホールディングス(HD)は改装には積極的で店舗年齢(一度全面改装すると店舗年齢はゼロ歳になる)に基準を設け、これを維持することを重視している。決算資料によれば2022年5月期は既存店改装を241店舗で行っている(部分、全面の種別表記はなし)。ウエルシアHDは2022年2月期の全面改装が88店舗、クスリのアオキHDは2022年5月期、前期の総店舗数728店舗の約16%に当たる120店舗を出店、大手DgSの中ではトップクラスの出店ペースである。2023年5月期の出店は90店舗とペースを抑制し、200店舗の改装を計画している。うち約半数は本拠地である北陸3県の店舗を対象としており、出店時期が早く、加齢の進んだ店舗を本格的にテコ入れする構えである。

こうした数値からは、積極的に出店を行い成長している企業は店舗年齢に一定の基準を設け、改装も計画的に行い店舗年齢の若年維持を進めていることが分かる。また、こうした出店と改装を繰り返してきたからこそ、大手に成長したともいえる。

店舗数が増えるほどに、既存店の活性化と成長は企業の命運を握ることになり、ライフスタイルの変化が大きく、小商圏内での競争が激しい現在は特にその必要性は高い。既存店活性化の柱となる手段が店舗改装である。

店数を増やさず、デジタルと改装で成長を続けるウォルマート

[図表2]ウォルマートの米国内設備投資額の推移

図表2はウォルマートの米国内設備投資額の推移である。「Eコマース・サプライチェーン・テクノロジー」に最も多く投資しているが、「既存店改装」にも全投資額の3割程度を充てている(直近32億7,800万ドル、130円換算で約4,260億円)。新店への投資は1%台で、店舗数を増やすことが同社の成長戦略ではないことを示している。

年次報告書によると、ウォルマートの米国内の店舗数は①スーパーセンター(SuC)、②ディスカウントストア(DS)、③サムズクラブ(コストコのような会員制業態)、④NSCなどの小型業態4つの合計で、2022年1月期は前期とまったく同じ5,342店舗である。前期よりSuCを3店舗、サムズクラブを1店舗増やして、DSを4店舗減らすという小幅な内訳変更はあるものの店舗数は変わっていない。一方で、米国内事業の売上高は2022年1月期が3,932億4,700万ドル(1ドル130円換算で51兆1,122億円)で前期比6.3%増となっている。同社は出店で商圏を広げることで売上拡大するのではなく、デジタルと改装に集中的に投資して既存店、既存商圏を深掘りしていくことで売上を伸ばす段階に入っている。

長期的に見れば、人口減少問題や出店飽和などで日本の小売業もいずれその段階に入ると思われ、いまのうちからデジタルと改装のノウハウ構築に向け投資すべきである。

閉店して作業する全面改装には大きなロスが生じている

エイジスマーチャンダイジングサービスは小売業の売場づくり、改装などを支援するリテールサポート企業だが同社の業務の中で、最近注目されているのが店舗を閉めることなく、営業を続けながらの改装=「営業改装」である。

「弊社は10年以上前から、『営業改装』を提案しています。DgSは最近食品売場の拡張という部分改装のニーズが高く、その機会に他の売場も見直して店舗全体を改装するというパターンが増えています。これまで小売業の改装はメーカー、ベンダーの応援を仰ぎつつ自社スタッフと協働で店を閉め、大量の人時をかけ短期間で行うパターンが主流でした。しかし、最近、コンプライアンス問題や人員確保が難しくなっていること。店舗を閉めることで生まれる売上ロスを防ぐために、弊社の『営業改装』のニーズは高まっていると思います」(エイジスマーチャンダイジングサービス株式会社 代表取締役社長 仁田 善郎氏)

[図表3]「従来型改装」の問題点

仁田氏の発言にあるように、小売業は新店開店や既存店改装の際、取引先と自社スタッフで延べ数百人規模の混成チームをつくり、2〜3日という短期集中で作業を終わらせるパターンが多かった。そして、今もこの従来型手法は残っており、いくつかの問題をはらんでいる(図表3)。

まず、コンプライアンス問題である。大規模な取引先従業員の動員が独占禁止法で禁じられている「優先的地位の濫用」に違反するという指摘は度々なされ、これを改善するために小売業側は「応援手当」の支払いなどで対応してきた。たが、その額が適正なのかどうかなど依然グレーな部分は残る。

次に改装ノウハウ、技術などの差から生じる完全作業問題である。リテールサポートの専門企業は、工期日程、作業計画に関する「全体設計力」が洗練されている。また、商品、ゴンドラを移動させる運搬ツールであるマテハンや仮設販売用の什器など実作業を通じて開発・改良された「高機能ツール」を持っている。さらに、安全確保などの「現場管理力」、そして、経験豊富なスタッフで構成された「チーム力」など、改装作業の実務能力はもちろん、改装に関する周辺業務の処理能力は高く、完全作業の実行を基本としている。

▲チームを組んで作業割当に基づき効率よく作業

自前で改装するとこうしたノウハウ、技術に差が出るのに加え「妥協」が生まれ、完全作業のレベルが落ちやすい。小さな「まあ、いいか」はチェーン全体の大きな損失につながり、さらに完全作業が行われなければ、正確な効果検証ができないという二次問題も生じる。

そして、もっとも問題なのは、改装で店舗を閉めることで発生する機会損失(売上ロス)である。例えば、坪当たり売上高が150万円で300坪の店舗なら年商4億5,000万円、日販は約120万円、改装のために3日間閉店すれば360万円の売上ロスとなり、年間100店舗改装するなら企業全体で3億6,000万円が失われることになる。

[図表4]営業改装実施店舗の売上推移❶(DgS)改装期間 2週間の場合
[図表5]営業改装実施店舗の売上推移❷(DgS)改装期間 1週間の場合

図表4、5はエイジスマーチャンダイジングサービスが実際に「営業改装」を手掛けたDgSの売上推移である。縦軸は改装前2週間の平均売上を100とした場合の売上の変化、横軸が期間となる。赤い線で囲まれた部分が改装期間で、図表4は改装工期2週間の場合、図表5は同1週間の場合でそれぞれ複数店舗で見ている。改装前後にセールを行っているので、山と谷ができているが、注目すべきは改装期間中でも売上は80〜85%以上を維持している点である。

同社の分析によれば、300坪のDgSの場合、2週間(実質作業日数10日間)の営業改装なら売上の約95%を維持、1週間(同5日)なら約85%が維持できる。2週間の営業改装による1日の売上ロスを5%とすると、日販120万円の例を当てはめれば、120万円×10日×0.05=60万円、100店舗改装で6,000万円のロスとなり、3日間完全閉店の改装で生じる3億6,000万円と比較すると、営業改装には3億円のインパクトがある。これを改装の原資と考えれば、その他従来型改装で生まれる弊害も考え合わせても、極めて合理的な投資ではないだろうか。

小売業は、改装計画とそれに必要な投資基準を持つべきだろう。

売上ロス対策と完全作業を目的に計画的、効率的に全面改装

それでは、エイジスマーチャンダイジングサービスによる営業改装は実際にどのような工程や手法によって行われのるかを見てみよう。

[図表6]営業改装のプロセス

図表6は営業改装に関するプロセス図である。まず、小売企業の担当部署、大手企業なら開店改装部とエイジスマーチャンダイジングサービスが密に連携するパートナーシップを構築する。計画的に頻度高く改装している小売企業の中には、同社のスタッフが常駐して協働態勢をとっている企業もある。

小売企業は工事の施工業者、什器業者などを手配、もっとも人時を要して改装の完成度を左右する商品の撤去と陳列が、エイジスマーチャンダイジングサービスの担当となる。

[図表7]マスタースケジュール例
[図表8]ステップ・バイ・ステップ例
[図表9]デイ・バイ・デイ例
[図表10]作業割当表例

営業改装に当たっては、まず「マスタースケジュール」を作成(図表7)、ここには自社の作業計画だけでなく、作業前の工事の施工業者との調整なども含まれる。次に「ステップ・バイ・ステップ」(図表8)というゾーン単位の週次計画を立て、さらに「デイ・バイ・デイ」(図表9)というゴンドラ単位の日次計画に落とし込む。作業は1〜2名のチームで担当、カテゴリーによって標準人時が決まっており、これをもとにチームごとに日々の作業割当表(図表10)を作成する。

営業改装で肝となるのは、短期間に多くの売場を閉めて集中作業するのではなく、適正な期間を決め少しずつ改装作業すること。先述の通り300坪のDgSなら2週間を掛けて改装すれば売上は95%程度維持できる。図表4、5で営業改装実施店舗の売上推移を見ているが、同等の売場規模なら1週間よりも2週間を掛けた方が閉店による売上ロスは少ないのがわかる。2,000坪クラスのホームセンター(HC)なら約6週間の営業改装で90%程度の売上が維持できる。

▲[写真1]改装中カテゴリーから売れ筋商品を選んで陳列する「ローランド什器」(自社開発)

さらに、同社の営業改装では、作業する売場を完全閉鎖するのではなく、Aランクなどの売れ筋商品は移動式の仮設什器「ローランド什器」(自社開発)に陳列して販売する(写真1)。これも売上ロス対策に貢献している。

ローランド什器以外にも営業改装で使用するツール類を写真2〜4で紹介している。

売上をなるべく落とさないこと、完全作業が実行されることを目的として、エイジスマーチャンダイジングサービスでは、図表6〜10で示したような細かな計画を立て進捗管理を行い、作業には各種専用ツールを駆使している。

▲[写真2]店舗の棚割データを登録すれば、JANコードをスキャンするだけでその商品をどこに陳列するばよいかが分かる「陳列用端末」
▲[写真3]どんな什器にも適用できるゴンドラ移動用の装置「ゴンドラスケーター」(自社開発)
▲[写真4]棚から商品を効率よく撤去する「バンカー台車」(自社開発)
▲[写真5]解体されたゴンドラの棚板や支柱などを入れて移動する「長尺パーツ用台車」(自社開発)

既存店の変化対応には宝の山が埋まっている

「日本では春と秋の棚替えや期末の一斉棚卸しのように短期集中型の売場作業が多いと思います。このやり方にはいい面もあるのですが、メーカー、小売本部側の都合という側面もあり、お客様や現場スタッフにとって必ずしも好都合なことだけではありません。改装にも同じことが言え従来の短期集中作業には課題が多くあるように思います。私たちが提案している『営業改装』は従来型の課題をクリアして、なおかつ今でも現場の声を生かして進化を続けています。

お客様の志向は目まぐるしく変わりますし、競合環境も変わります。既存店の売場はお客様や商圏の変化に対応することで、売上が上がる宝の山です。それを発掘するための手法が『営業改装』ですので、ぜひこれをご活用頂きたいです」(仁田氏)。

新規出店の勢いが止まらないDgSだが、これまでの歴史を見ても出店投資の償却が終わり利益の出ている古い店舗の改装を怠った企業はどこかで停滞を経験している。チェーンストアにとって、新規出店の原資は既存店の成長であり、この成長が止まれば、既存店の不調→新店投資の原資不足→出店鈍化→企業全体の成長鈍化(マイナス成長)→既存店活性化の原資不足→既存店の不調という負のスパイラルに陥いる。こうした事態にならないためにも、また新規出店と既存店改装を両輪に成長を続けるためにも、効率的な全面改装は重要である。

    • <エイジスマーチャンダイジングサービス>

    • 本社 千葉市花見川区幕張町3-7727-1
    • 代表 代表取締役社長 仁田善郎
    • 問い合わせ 043-213-2006

https://www.ajis.jp/contact/service/

 

〈取材協力〉

エイジスマーチャンダイジングサービス
代表取締役社長
仁田 善郎氏