接客力の向上と、省人化の推進に矛盾なし。セブン−イレブンが全国接客コンテスト開催

コロナ禍にあって、セルフレジが増え、無人コンビニも出現したコンビニ業界。会話が途絶え、店とお客とのフェーストゥフェースの関係性は薄くなった。しかし現在、人々がマスクを外して自由に会話するようになってきた。あらためてコンビニの接客はどうあるべきか。以前にも増して強化なのか、あるいは非接触を継続させ、減速モードなのか。そのひとつの解をセブン−イレブンが「接客コンテスト」の形で提示した。​​(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年8月号より転載)

生産性向上と同時に、接客、店舗価値向上に人時を振り分ける

「金の食パン、ご購入ありがとうございます」
「おいしいのよねー」
「私、パンの発注担当なので、とってもうれしいです」
「あらそうなの」
「そんなお母さんにぴったりの食パンに合う商品があるのですが、それがこちらです、じゃじゃーん、金のビーフシチューです」

こんなやり取りがステージ上で繰り広げられた。

本年6月9日、大手町三井ホール(東京都千代田区)でセブン−イレブンは「第1回接客コンテスト全国大会」を開催した。昨年10月より地区予選を開始、出場資格は本部が用意した研修の受講など、一定の条件を満たした加盟店の従業員。本部社員が講師となって店舗従業員を対象に「レジ接客研修」を実施、近年では、そうしたいくつかの研修コースを充実させるなど、加盟店における“人の定着”に向けた取り組みを強化している。地区予選には3,030人の加盟店従業員が出場、その中から22人が全国大会にノミネートされ、ステージ上で、お客様への接客を実演した。

当日は出場者22人が所属する店舗オーナー、従業員、担当OFC(SV)などが応援に駆け付けた

セブン−イレブンによると、接客コンテストは加盟店オーナーより「活躍されている従業員の皆様を評価する場を設けてほしい」といった要望がきっかけだった。折しも同社が創業50周年を迎えるにあたり掲げた“4つのビジョン”のうちのひとつが「人財」であり「多様な人財が活躍し、幸せな社会を実現する」と記している。その口火を切ったのが、同社が初めて実施する接客の全国大会である。加盟店従業員のモチベーションアップを目的として、活躍してもらうためのコンテストである。

セブン−イレブンに限らず、コンビニ業界は店舗の生産性向上が急務であり、現在は最新デジタルを用いた省力化に注力している。セルフレジやAIを用いた自動発注、ロボット活用や「アバター人財」の導入などで、店舗従業員の「人時数」削減を図っている。

その一方で、省人化した人時数を「削減」するだけではなく、接客をはじめとした、店の価値を高める仕事に人時数を振り向けてもらおうと、コンビニのチェーン本部は考えている。もちろん、従業員の人件費は加盟店の100%負担になるので、そう簡単ではないだろう。ただし、店舗の省人化は、接客の省力化ではなく、むしろ接客への意識を高めてほしいと本部は考えている。

セブン−イレブンにも、今述べた意図はあるだろうし、ちょうど新型コロナ感染症が5類相当に移行したタイミングでの「全国接客コンテスト」の開催となった。セブン−イレブンによると「省人化の取り組みを進めるとともに、従業員にとって、より働きやすい環境を整え、お客様にご利用いただきやすい店舗を目指す」としている。

お客様は82歳・女性・常連客・一人暮らし・少し足が不自由

ステージ上の接客の流れは次の通り。持ち時間は3分、内訳は「接客6大用語」1分、「接客」2分、レジ操作、および袋詰めはせず、接客応対のみ。接客の内容は「私の自慢の商品1品」を、お客に案内すること。「お客様想定」は82歳・女性・常連客・一人暮らし・少し足が不自由とした。

審査員は、選抜された従業員の加盟店オーナー22人と、セブン−イレブン側は主に役員15人の計37人。審査は公平を期すため、オーナーは自店従業員の採点はしない。審査内容は、接客6大用語、第1印象、商品の薦め方、高齢者への配慮、お客様への感謝などだ。各項目を0点〜10点で採点し合計50点満点とした。審査員ごとに順位をポイント化し、上位3人を表彰した。

上位3人が表彰された。中央が小西碧さん。入賞者へ向かって右隣りが、セブン−イレブン・ジャパン代表取締役社長の永松文彦氏

こうして22人の中で優勝を飾ったのは長岡中島7丁目店の小西碧さん。身振りや手振り、表情、声のトーン、抑揚など、活字で表現できない部分が大きいのだが、舞台で披露した接客を紹介したい。

小西さん「小林さん(お客様役)、こんにちは、そろそろいらっしゃる時間かと思ってたんですよ」
お客様(役)「ありがとう」
小西さん「毎週、お華の教室の帰りに寄って下さるから、そろそろかなあっと、私も楽しみにしてたんですよ」
お客様「私も楽しみにしているのよ」
小西さん「本当ですか、ありがとうございます、今日は来てくださってうれしいです。小林さんが、いらっしっゃったら、ぜひお薦めしたいなあと思っていた商品がございまして、お時間、大丈夫でしたら、今お持ちしてよいですか」
お客様「ぜひ、お願いしたいわ」

いきなり商品をお薦めするのではなく、来店への感謝とお客様への親しみを上手に表している。

小西さん「ありがとうございます。こちらはお弁当の中華丼なんです。召し上がったこと、ございますか」
お客様「食べたことないわ」
小西さん「そうでしたか、でしたらちょうどよかった〜。先日、いらっしゃったとき、最近足腰が痛くてとおっしゃっていたので、これから暑くなってくると、ますます台所の家事が大変かなと思って。そこで何か簡単に食べられて、栄養バランスのある商品はないかなと思っていたんですよ。この中華丼でしたら、これ一つでお肉も野菜も取れますし、ご飯ものなので食べごたえもあって、私なんか、これ一つでお腹いっぱいになれるんですよ。(中略)ご飯も下に入っていて、このままレンジに入れていただいて、ご自宅ですと500ワットで3分30秒、温めていただくだけですぐに食べられます」
お客様「それは便利ね、じゃあ一ついただこうかしら」
小西さん「ありがとうございます、早速お入れいたしますね、よろしければお店でも温められますが、すぐに召し上がりますか」
お客様「お願いしていいかしら」

お客様の足腰の悪さへの気遣い、暑くなる季節への対処、栄養バランスなど、高齢者への配慮を忘れず、お薦め商品の特徴を分かりやすく説明、お客様への感謝の気持ちもさりげなく表現している。

日本が世界に誇れる接客文化 商品と一緒にグローバル展開

今回の接客コンテストを企画したのが加盟店研修部。統括マネジャーの井口真一氏は、大会の意義を次のように説明した。

第1に、加盟店オーナーの要望。コンビニ加盟店の持続性に対して、経済産業省が疑問符を投げかけたのが2019年の春。経産省は有識者会議「新たなコンビニのあり方検討会」を立ち上げた。この年の10月、セブン−イレブンはオーナー意見交換会を実施。そこで多くの加盟店オーナーから、もっと従業員を表彰する場を設けてほしいと要望が届いた。

第2に、人不足への対応。人不足の原因は、どこにあるのかを調査した結果、既存従業員の「早期退職」にあると結論づけた。採用しても定着せずに離職することで、人不足に陥る店もある。逆に定着している店は、従業員の初期教育、リーダーの育成に力を注いでいる。本部は、初期教育とリーダー教育の強化、表彰とコンテストでモチベーションのアップを図り、定着率を高めようと考えた。

第3に、「接客」の向上。省人化が進むほど人にしかできない仕事が大切になる。その一つが、日本が世界に誇れる接客の文化。海外からの観光客にも、日本のおもてなし文化が高い評価を得ている。これからセブン−イレブンは、グローバル化を推進する上で、商品だけでなく、接客もグローバルに広げていく上で磨きを掛けていく。

接客コンテストは地方予選から含めると、出場者、店舗従業員を合わせて1万人以上がリアルで見学している。出場者は練習をしたり、その成果を他の従業員に教育したりするので、出場前から店の接客水準が上がっていく。その効果は実際に表れているという。接客コンテストの意義は、順位を決めることではなく、その波及効果にあるといってよい。

審査員を務めたセブン−イレブン(・ジャパン)社長の永松文彦氏は次のように語る。

「世の中がIT化であるとか、DXであるとか、いろいろと進化して省人化にもつながっていますが、人にしかできない仕事があり、それはまさに皆さんが普段からされている接客であり、そこにお客様の感動が生まれるのです」

セブン−イレブンが日本で創業する2年前の1972年6月、中小企業庁は「コンビニエンス・ストア・マニュアル」を刊行した。当時、安売りを武器にするスーパーマーケットに苦しめられていた中小の食品小売店に対して、コンビニエンスストアという近代的な小売業への啓蒙(けいもう)を始めたのだった。

米国をモデルにした、そのマニュアルの中に、そもそもコンビニとはどういう営業形態なのか、いくつか定義されているのだが最後の項目に次のような記述がある。

「顧客との関係はセルフサービス方式を採用するものの、顧客との密接な人間関係の形成が必要であり、接客精神と技術が重要な意味を持つ」

日本にコンビニが生まれて半世紀、接客は大切なテーマであり続けている。

9,500万人「ドコモdポイント会員」を活用する「運用型」のデジタル販促が新登場!

約9,500万人という日本最大級の「dポイント」の会員基盤を活用した販促キャンペーンの仕組みがスタートした。dポイントを活用したポイントバック販促は、キャンペーンに参加しそうな特定顧客へターゲティングができ、蓄積された顧客データに基づいてPDCAサイクルを回すことも可能だ。キャンペーン期間中・終了後の「広告最適化・効率化」が短いサイクルで実現できる「運用型」のポイントバック販促であることが最大の特徴である。(月刊マーチャンダイジング2023年8月号より転載)

ドコモとサイバーの合弁でPrism Partner設立

dポイントの会員基盤を使ったデジタル販促サービスを開始した「Prism Partner(プリズムパートナー)」(棚澤康之・社長)は2022年6月30日、NTTドコモとサイバーエージェントとのジョイントベンチャーとして設立された。

ドコモが持つ約9,500万人の会員データと、サイバーエージェントのデジタル広告のノウハウという2つのアセット(資産)を活用した新しい広告商品を開発・提供することを目的としてつくられた会社である。

今年の3月から「Prism Partner DSP」という名称の広告配信システムの運用を開始している。デジタル販促とデジタル広告が主要なサービス。デジタル販促に関しては、dポイントの会員基盤の顧客データを活用し、オンラインとオフラインを横断して実施できるデジタル販促サービスを提供する。

[図表1]約9,500万人のdポイントの会員を活用したデジタル販促・広告の概念図

たとえば、あるシャンプーを購入したら、dポイントでポイントバックするといったデジタル販促に取り組む(図表1)。

約9,500万人の会員数と圧倒的なdポイント利用率

[図表2]dポイント会員は約9,500万人と日本最大級

デジタル販促キャンペーンで重要なことの第1は、ポイントインセンティブの恩恵を受けられる会員数が多いことである。dポイントの会員データは、現在は約9,500万人の会員数に達している(図表2)。楽天ポイント、LINEポイントに匹敵する国内最大級のポイント経済圏である。

dポイントの会員データは、ドコモの回線を利用したユーザーの契約情報、dメニューの閲覧履歴、ドコモユーザーの位置情報、WiFiの接触情報、アンケートデータ、アプリの利用ログ、dポイントの利用履歴、d払いの決済データなどを保有している(図表2)。

デジタル販促キャンペーンで重要なことの第2は、「配信メディア」の種類の多さである。フェイスブック、インスタグラムなどの一般的なSNSだけでなく、dポイント、d払いの固定客がいるオウンドメディアに配信するので、不特定多数の通常のキャンペーンよりも投資対効果が高いことが特徴である。

単発のキャンペーンから継続型のキャンペーンへ

dポイントの会員データを活用したデジタル販促の最大の特徴は、キャンペーンに参加しそうな顧客のターゲティングができることである。

「dポイント販促は、不特定多数にばらまく販促ではなくて、キャンペーンに参加しやすい顧客ターゲットを絞ることができます。ターゲティングができるキャンペーンの配信システムは他にないので、より効率的なデジタル販促が実現できると思います」(Prism Partner棚澤康之・社長)。

Prism Partnerは、膨大なdポイントの会員データを活用して、広告を使った認知から、実際の購買、さらにはリピート、ファン化するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)までの一気通貫のマーケティングを行うことができる。

また、ほとんどのポイントバック販促は「1回完結」であるが、顧客データ(キャンペーン参加者データ)が蓄積されることもdポイント販促の大きな特徴である。蓄積型で何回もキャンペーンを実施すると購買データが蓄積される。そのデータを利活用できるので、デジタル販促投資の効率化が実現できる。

たとえば、キャンペーン終了後に、キャンペーンに参加した顧客にリピートを促す施策が打てる。また、キャンペーンに参加していない潜在顧客に対してアプローチできる。さらに、ID-POSと連携している一部の小売業とは、キャンペーン参加者以外のデータも分析できるので、新規に近いユーザーに対してアプローチができる。

いずれにしても無駄打ちが少なくて、より効果的な1to1マーケティングが実現できる。蓄積されるデータは、キャンペーンへの参加実績、決済データ、さらには位置データを活用した顧客の行動データも蓄積できる。蓄積された購買データを活用したマーケティングへの利活用は、他のポイントバックキャンペーンにはない大きな特徴である。

「メーカーさんにとってのメリットは4つです。第1は、ポイントのインセンティブの経済圏の規模が大きいことです。第2は、小売店でのポイントの利用率の高さです。第3は、配信メディアの種類の多さです。dポイントは、この3点に関して非常に優れていると思います」(Prism Partner 高倉 将平・営業部長)。

第4は「効率化」である。デジタル販促の打ちっぱなしではなくて、本来のデジタル広告のようにPDCAサイクルを短期間で回して運用できることが重要であると高倉氏は強調する。

[図表3]dポイント活用のCP(キャンペーン)運用による効率化

キャンペーン単位で検証するのではなくて、リアルタイム、デイリー、ウイークリー単位で実績を見ながら効果を見て、配信広告のクリエイティブ(配信内容)を差し替えるなど、キャンペーン(CP)の投資対効果を最大限に高めるように運用できる(図表3)。

また、キャンペーン終了後の継続的なCRM施策によって、顧客の固定客化と新規客の開拓を進められることは、単発のポイントバックキャンペーンとの大きな違いである。データを蓄積し、CRM施策を継続することができるわけだ。

さらに、dポイント販促の効果を最大化するためには、小売業のIDPOSデータとドコモのデータを常時接続し、dポイントのさまざまなデータと小売業のID-POSを連動させることが重要である。ドコモのデータとID-POSを連携させると、今回のキャンペーンによって今まで自店を利用したことがなかった新規客を何人獲得できたかどうかがわかる。これは、小売業にとっては大きなメリットになると思う。

また、メーカーにとっても、今まで自社ブランドを購入していなかった「新規客を取りたい」「離反している人に試してもらいたい」というブランドマーケティングに運用できることも、単発のキャンペーンとの大きな違いである。

【お問い合わせ先】(株)Prism Partner
〒100-6109東京都千代田区永田町2丁目11-1山王パークタワー9F
お問い合わせメールアドレス:contact@prismpartner.co.jp

 

〈取材協力〉

株式会社Prism Partner
代表取締役社長
棚澤 康之氏
株式会社Prism Partner
営業部長
高倉 将平氏
サイバーエージェント
DX本部 統括
藤田 和司氏