「成功体験」の実感が園芸を伸ばし、優良顧客を増やす

園芸用品購入者は客単価2.5倍。その理由とは!?

コロナ禍の「巣ごもり需要」で園芸愛好者は増え3,000万人を突破している。この傾向は一定程度定着し、市場も伸長が続く。さらに、園芸用品購入者はドラッグストア(DgS)の店舗にとって優良顧客であるというデータもある。この有望カテゴリーの拡大方法を考える。(※SOOドラッグデータ2022年1月~12月)(月刊マーチャンダイジング2023年3月号より転載)

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店舗貢献度の高い園芸用品購入者

フラワーギフト売場での花と園芸用品の一体売場

園芸用品を購入している人は、店舗平均と比較して、客単価で2.5倍、買上点数で2.6倍、購入頻度(買物回数)で2.2倍というデータがある(図表1~3)。

[図表1]園芸購入者の客単価
[図表2]園芸購入者の買上点数
[図表3]園芸購入者の購入頻度(買物回数)

客単価、買上点数においては、おむつ、ミルクなど必要な消耗品が多く、世帯的にも食品、消耗品の出費が多いベビー用品購入者が高いが、園芸用品購入者はそれを上回っている。購入頻度(買物回数)では、日用雑貨部門の中では1位である。

それだけ、園芸用品購入者は店舗にとってロイヤルカスタマーであり、このカテゴリーを強化することで、優良固定客の育成を図れることを示している。

[図表4]家庭園芸人口予測

図表4は家庭園芸人口の予測の推移である。2017年から2,000万人台で推移していたが、コロナ禍の始まった2020年には3,000万人を大きく突破。2022年は若干前年より減少したが、それでも約3,381万人とコロナ禍後の大幅増大をキープしている。

[図表5]家庭園芸薬品市場推移

これに伴い家庭用園芸薬品市場も拡大、2020年は前年比11.6%増の492億円となり2022年の見込みでは505億円となっている(図表5)。優良固定客との接点となるカテゴリーは拡大しており、新規客を獲得するチャンスも大きくなっているといえる。

除草剤から入り品揃え拡大 我慢しながらカテゴリーを育成

園芸カテゴリーは、売場面積の広いホームセンター(HC)で購入することが多いが、近年郊外型のDgSでも園芸を扱い成功させている店舗が増えている。

「DgSで園芸カテゴリーを根付かせるために必要なことは、この店舗で園芸用品が買えることをお客様に認知して頂くことです。まず使用頻度も高く、掃除の概念とも近い除草剤から始め、それを売り続けることで認知を上げ、そこから対植物の商材へとつなげていく、活力剤などで売り個数を上げ、肥料、園芸用殺虫剤、土、スコップと品揃えを増やしていくというプロセスでカテゴリーが伸びていきます。ただし、一定の時間はかかるので、すぐに売上が上がらないから売場を縮めるということでは収益性のある園芸カテゴリーは育ちません。我慢も大切になります」(フマキラーマーケティング部部長 菅谷洋介氏)

一定の品揃えをして基礎ができたDgSの園芸カテゴリーがさらに成長するために重要な要素は何か。フマキラーでは「成功体験」をキーワードに挙げる。入門者にも、植物を枯らさない、きれいな花を咲かせる、野菜の実をよく付けるなどの成功体験を味わってもらうために、なるべく手軽で簡単に効果の出る商材の提供が重要になる。1シーズン園芸をやって成功体験を味わうことが次の年にもつながり、カテゴリーの固定客になり、店舗の優良固定客にもなっていく。

SNSを使って成功体験を共有 園芸への愛着を深める

フマキラーではSNSアプリ「グリーンスナップ」を使って成功体験の共有を図っている。グリーンスナップは、名前の分からない植物を写真に撮って送れば名前を教えてくれる機能などがあるアプリで、基本的には園芸愛好家たちが植物の写真をアップして交流できるアプリである。

[写真1]グリーンスナップに投稿された写真

カダンブランドの花でパンジーの一種であるボニータを親子で育てましょうといった趣旨で「親子でボニータ」のタグを立てて投稿を募った。これに賛同した愛好家たちが次々に写真を投稿(写真1)、1月中旬現在で600枚以上の写真が投稿されている。

「成功体験は人それぞれで『花が咲いた』だけではなく、その先にある、『親子で一緒に花の手入れをした』、『子供が水やりを楽しんでいる』など心の充足感、コト体験こそが成功の中身だと思います。こういう成功体験は企業から発信することはできないので、ユーザーの方自ら成功を感じてそれを共有するという仕組みをつくっています。単純に自分たちの咲かせた花を見てもらいたいという欲求も結構強いと思います」(菅谷氏)。

こうした、生活が豊かになるような成功体験を重ねれば根強い園芸愛好家になり、頻繁に園芸用品を購入することにつながる。

花と用品の一体的売場でカテゴリートライアルを増やす

先述のとおり同社では、カダンブランドからオリジナルの花を販売している。2021年には花、種苗の世界的なブランドの国内販売権を持つFSブルーム社を100%子会社化、見た目も鮮やかでオリジナリティのある花を市場に提供している。

[写真2]ゼラニウム売場での花と園芸用品の一体陳列

こうした特徴のある花と園芸用品を一体的に販売する売場提案も行っている(写真2)。これにより、関連購買が進むことに加え、まず花の購入から園芸愛好家になり用品も購入するというカテゴリートライアル(新規獲得)が可能になる。花から新規を取るためには、カダンやFSブルーム社が提供する他にはない目をひく花のデザイン性が効いてくる。

植物は究極の生鮮商品とも言え管理は決して容易ではない。カテゴリー育成には我慢も必要だ。しかし、客単価が平均の2.5倍という店舗貢献性や市場の成長性、心が豊かになってお客のQOL(生活の質)を上げることなどを考えると挑戦する価値のあるカテゴリーである。