YouTubeを使った店頭販促の実験
第1回は、『月刊MD』6月号に掲載されているドラッグストア店頭におけるYouTube販促の事例を解説します。この販促は、昨年(2017年)11月から、資生堂が「アベンヌウォーター」というブランドで実施したものです。
アベンヌウォーターは、フランスの製薬メーカー「ピエール ファーブル社」と資生堂の合弁会社である「ピエール ファーブル ジャポン」が日本での正規代理店を務めています。
アベンヌウォーターでYouTube販促を行った目的のひとつは、新規客の獲得です。ロングセラーブランドであるアベンヌウォーターの固定客は、発売当初よりも年齢層が高くなっており、10代、20代の新規客を獲得することが課題とされていました。(固定客が高齢化しているロングセラーのブランドって結構多いんですよね)。
また、資生堂が得意とするテレビ広告は、高年齢層には効果がありますが、10代20代の若者にはあまり効かないということもYouTube販促を行った理由のひとつです。事実、私の19歳の息子も、ほとんどテレビは見ないで、YouTube、Twitterでほとんどの情報を収集しています。
販促の内容は、ドラッグストアの店頭のトップボードに、ビューティ系の人気YouTuber「かわにしみき」さんの写真を使用し、中央にDVDプレーヤーを設置、そこで「かわにしみき」さんが、アベンヌウォーターを紹介する動画を流しました。
動画もテレビ広告のようなブランドの宣伝ではなくて、富士急ハイランドに遊びに行った「かわにしみき」さんが、乾燥した肌をケアするために、さりげなくアベンヌウォーターを使って効果を伝えるというものです。ブランド目線ではなくて、使用者目線の情報発信で好感がもてます。
実施期間:2017年11月21日〜2018年2月20日
実施店舗数:首都圏中心に214店舗
設置物:トップボード(600mmワイド)、POP、商品、テスター、DVDプレイヤー
マーケテイング、営業、小売業 三位一体の販促
結果は、YouTube販促を実施した2017年12月のアベンヌウォーターの売上は前年比122%と、YouTube販促が一定の効果を上げていることがわかります。ピエール ファーブル ジャポンの担当者によれば、「YouTube販促は若年層の獲得に効果をあげていると実感しています」とのことです。
また今回の販促の良い点は、通常は縦割りで分業化しているメーカーの「マーケテイング」と「営業」の2つの組織が、企画段階から共同で会議を開き、行動し、小売業に企画を提案したことです。資生堂にとっても、マーケテイングと営業が協働した、従来にない貴重な事例だったそうです。縦割組織の弊害を突き破ることも、SNS時代のマーケテイングでは重要なポイントだと思います。
一方、昔の小売業のバイヤーは、「テレビCMの投入量」で商品や企画の採用を決定する傾向が強かった。資生堂も、小売業のバイヤーは、YouTube販促に否定的なのではと心配していたそうですが、予想以上に好意的で、積極的に多くの売場を提供してくれたそうです。小売業のバイヤーの意識も変化しているようです。いいことです。
さらに、小売業の2つの縦割組織である「商品部」と「店舗運営部」も緊密に連携して、企画の売場実現と検証に積極的に協働しました。
今回のYouTube販促は、テレビ広告のような分業販促とは異なる、メーカーの「マーケテイング」と「営業」と「小売業」の三位一体の協働販促だったわけです。もっといえば、「マーケテイング」「営業」「商品部」「店舗運営部」の四位一体の協働販促でした。
店頭をメディア化するためには、縦割組織の壁を越えた緊密な連携と、スピード感のある行動、素早い検証がなによりも重要だなと実感しました。