今週の視点

店舗数が増えるほど「徹底力」が重要

第107回店舗運営部の最大の職務は「完全作業」の実行と徹底である

店舗運営部に属する「店長」と「スーパーバイザー(エリアマネジャー)」の最大の職務(使命)は、決められたことを100%店頭で実行する「完全作業」です。しかも、店補数が増えれば増えるほど、店舗の完全作業力によって売上高が大きく変わります。

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完全作業の実行と徹底が店舗運営部の最大の職務

冒頭に示した図表1は、店長とスーパーバイザー(以下SVと略す)の「職務」(果たすべき仕事の範囲のこと)をまとめたものです。

小売業は多店舗展開する過程で組織開発を行い、分業体制を整える必要があります。とくに商品の仕入れ・調達を担当する企画担当の「商品部」と、店舗のオペレーションの実行担当である「店舗運営部」に分業化することが、チェーンストアの組織開発の第一歩です。

店長・SVは、店舗運営部に属します。店長が1店舗の責任者であるのに対して、SVは10店前後のエリアの責任者です。かつては店長兼務のSV(エリアマネジャー)も存在しましたが、多店舗化が進んだ現在は「店舗を持たないSV」が原則です。

店舗運営部が優先すべき最大の職務は、(1)「完全作業」の実行と徹底です。店長とSVは、パートさんの掃除の仕方の手順が間違っていたら、その場でお手本を示して教えるOJT(On the Job Training)教育ができなければなりません。そのためにも店長とSVは常にアップデートされる最新の「店内作業」を習得し続ける必要があります。店舗を持たないSVであっても店内作業のプロであり続けることが何よりも重要です。

店と人による「バラツキ」を少なくして、作業を平準化することも店長とSVの職務です。チェーンストアは、業績アップのもっとも優先順位の高いテーマが「平均点」の底上げであり、店長とSVが果たすべき職務です。つまり、(2)標準化の推進→不完全作業のOJT教育→人と店によるバラツキを減らすことが店長とSVが果たすべきもっとも重要な役割なのです。

また、「完全作業」の実行と徹底は、店長・SVにとっての最大の売上対策でもあります。たとえば、「開店前100%補充」を実行することによる営業時間中の店頭欠品の減少は、即、売上の増加に直結します。さらに、季節商品の早期展開を徹底することで「シーズンファーストバイ(季節商品の第1回目の購入)」を競合店よりも早く取ることができれば、季節品の機会損失を防ぐことになります。

店舗数が増えるほど店舗の完全作業力が重要

季節品の1年間の購入回数は意外に低く、たとえば年間購入回数2.3回の「日焼け止め」の売場づくりが遅れて、シーズンファーストバイを取り損なうと、売上の半分を失ったことと同じであるという意識を持つべきです。

また、チェーンストアは店数が増えれば増えるほど、一人の完全作業、1店舗の完全作業にこだわる必要があることを店長とSVは肝に銘じる必要があります。たとえば、100店チェーンで、1店舗1日の「作業人時数」を10人時減らすことに成功すると、時給1,000円換算で「10人時×1,000円×365日×100店=3億6,500万円」ものコスト削減を1年間で実現できることになります。

チェーンストアは、店舗数が増えれば増えるほど「完全作業力」が売上と営業利益に大きな影響を与えるビジネスです。製造業の「生産管理」と同様のエンジニアリング志向の考え方をする必要があります。

※店舗運営部の職務の続きは、月刊MD2021年3月号で掲載しています。店舗現場の実務記事を体系的に整理する雑誌は月刊MDだけの特徴です。ぜひご購読ください。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。