今週の視点

PBだらけの売場を嫌がるお客もいる!?

第75回あえて「パッケージを統一しない」というPB戦略

統一されたパッケージデザインのPB(プライベートブラント)商品開発によって、企業としてのブランディング戦略を進める小売企業が増えています。しかし、売場がPBだらけに見えることを嫌って、あえてPB商品のパッケージを統一しないPB戦略を進めている企業もいます。

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セイコーマートの菓子売場。PB商品が3分の1を占めているが、あえてパッケージデザインを統一していないので、「PBだらけの売場」という印象がない。

パッケージを統一しないセイコーマートのPB戦略

2020年は、同質競争から脱却し、「差別化」の時代が到来すると思います。差別化戦略のためにも、「看板を取っても、どの企業の店かすぐにわかる」くらいの個性を持つ必要があります。そのためにも、PB戦略を強化し、他店では取り扱いのないブランドを育成し、企業・店としてのブランディングを目指すべきです。

かつての小売業のPB開発は、NB(ナショナルブランド)メーカーのパッケージそっくりに物真似し、価格は半値といった「プライスブランド」が主流でした。しかし最近は、その小売企業の世界観を表現するような統一されたパッケージデザインを開発するPBが主流になっています。

一目でPB商品であることがわかる反面、「PBだらけの棚」を嫌がるお客も一部にはいることは確かです。最近のIYグループの棚を見ても、セブンプレミアムのパッケージが圧倒的な面積シェアを占めています(下の写真)。

一方、北海道民に圧倒的な支持を得ているコンビニの「セイコーマート」は、PBのパッケージデザインをあえて統一していません。セイコーマートは、取扱商品3,500品目のうちPB商品が1,000品目を占めています。PBの売上構成比は50%を超えており、PB比率の高い代表的な企業です(PB開発で有名なカインズでも40%)。それほどPBを強化しているのにあえて、PBのパッケージデザインを統一しないで、単品でブランディングしていく戦略です(巻頭の写真参照。セイコーマートの戦略の詳細は月刊MD2月号に掲載しています)。

アメリカのアルディもデザインが不統一

アメリカで快進撃を続ける「アルディ」も、PBの売上構成比が80%と高いにもかかわらず、パッケージデザインを統一していません。アルディは、売場面積300坪程度の小型のバラエティストアの高速出店を継続しており、売上高2兆8,000億円、店舗数は2,300店を超えています。グループ会社の「トレーダージョーズ」が、「Trader Joe’s」のブランド名でPBのパッケージロゴを統一しているのとは対照的です。

商品カテゴリーごとにPBのパッケージデザインを変更しているアルディ。

日本のドラッグストアのマツモトキヨシも、パッケージデザインを統一しないで、商品によって変更しています。しかし、有名な「マツキヨスラッシュ」をすべてのパッケージに入れることで、デザインは異なるが、マツキヨブランドであることが潜在的にわかるパッケージになっています。マツモトキヨシのPB戦略は、「PBだらけ」というデメリットを解消しながら、統一感を出すことに成功していると言えます(下の写真)。

パッケージデザインは商品によって異なるが、「マツキヨスラッシュ」が入ることで、企業ブランドとしての統一感が出る。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。