テレビ、折込広告の「昭和メディア」が衰退している
電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、昭和、平成に圧倒的な影響力を誇ったメディアである「テレビ広告費」の衰退が加速していることがわかります。2018年のテレビ広告費は1兆9,123億円。2015年から毎年減少していることがわかります。しかも、かつてはテレビ広告費といえば「地上波テレビ」の広告費のことでしたが、近年は「衛星テレビ関連」も加えた広告費で発表することで、かろうじて広告費1位をキープしています。
一方、2018年のインターネット広告費は1兆7,589円と急増しています。2015年対比で34%も成長しており、テレビ広告費に肉薄しています。「地上波テレビ広告費」だけだと、すでにインターネット広告費が、テレビ広告費を追い抜いています。令和元年(2019年)は、衛星テレビ関連を含めた「テレビ広告費」を、インターネット広告費が追い抜く元年になるのは間違いありません。
2018 年の総広告費6兆 5,300 億円のうち、「インターネット広告費」が占める割合は全体の26.9%にまで高まっています。また、インターネット広告費1兆7,589億円から「インターネット広告制作費」を除いた「インターネット広告媒体費」は1兆4,480 億円(前年比118.6%)です。
電通の調査によると、インターネット広告媒体費の広告種別の内訳は、検索連動型広告(39.4%)とディスプレイ広告(38.9%)の2種で全体の約8割を占め、その後にビデオ(動画)広告(14.0%)が続きます。取引手法別では、運用型広告が全体の約8割を占めています(下の図表)。
広告種別の定義は以下の通りです。
・ディスプレイ広告:サイトやアプリ上の広告枠に表示する画像、テキストなどの形式の広告およびタイアップ広告。
・検索連動型広告:検索サイトに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載する広告。
・ビデオ(動画)広告:動画ファイル形式(映像・音声)の広告。
・成果報酬型広告:インターネット広告を閲覧したユーザーが、あらかじめ設定されたアクションを行った場合に、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告。
・その他のインターネット広告:上記以外のフォーマットのインターネット広告。メール広告、オーディオ(音声)広告など。
2018年の「インターネット広告媒体費」 1兆4,480億円をデバイス別に見ると、モバイル広告費が全体の70.3%(1兆181億円)となり、初めて1兆円を突破したことが特筆されます。つまり、インターネット広告費の主役はスマホ広告であり、PC広告ではないのです。
また、ビデオ(動画)広告が急成長しています。2018年のビデオ広告費は2,027億円。2019年には前年比130.8%の2,651億円へと拡大する見込みです。なかでもモバイルの動画広告の成長が著しく、前年比139.3%と全体の伸びをけん引すると、電通は予測しています。
昭和、平成バイヤーの常識が通用しない
一方、昭和、平成の小売業の商品部バイヤーにとって「打ち出の小槌」的な販促だった「折込チラシ広告費」は、2006 年の6,662 億円をピークに減少を続けています。リーマンショックの影響があった2009 年に6,000億円を割り込み5,444 億円、消費税増税の影響を受けた2014 年に4,920 億円に減少、そして、2017年は4,170億円、2018年は3,911億円と4,000億円を割り込みました。2006 年のピーク時を100 とした場合、2018年は58.7% となり、12年間で市場規模が42%とほぼ半減したことがわかります。
昭和、平成の商品部のバイヤーは、テレビ広告を大量投入する商品を仕入れて、チラシ販促で売上をつくることが、鉄壁の成功ストーリーでした。しかし、令和時代の小売業のバイヤーは、まったく異なる仕入れと販促を行わなければなりません。モバイル広告、SNSでの拡散情報に目を澄ましていなければ、令和時代の消費者の心に刺さる売れ筋を仕入れることができません。また、チラシ販促ではなくて、モバイル販促、SNS拡散対策が、販促の主役になります。
平成の後期に起こった「デバイス革命、SNS革命」は、つい最近の出来事です。デバイス革命をリードした「初代iPhone」が発売されたのは、平成19年(2007年)と、10年ちょっと前の出来事です。平成の中期には、スマホは存在すらしていませんでした。
また、SNS革命をリードした主要SNS(facebook、Twitter、YouTube、instagramなど)がサービスを開始したのは、平成22年(2010年)とつい最近の出来事です。変化の速度が速いですね。令和10年には、どんな未来が待っているのでしょうか?