今週の視点

小型のハードディスカウンター(BOXストア)を実験

第48回低経費&絞り込み&激安に割り切った小型業態「トライアルBOX」に注目

スーパーセンターなどの大型店のイメージが強い「トライアルカンパニー」が最近展開を始めた「トライアルBOX」が話題になっています。開店セール時に目撃した水戸南店(茨城県)は、店内を歩けないほどの混雑ぶりでした。トライアルBOXとはどんな業態なのか? 解説してみます。

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トライアルBOX。徹底して絞り込んだ300坪型。24時間営業。

小型店の出店を増やしているトライアルカンパニー

トライアルといえば、売場面積2,000坪を超える「スーパーセンター」の印象が強い企業です。また、デジタルサイネージ、店内にスマートカメラを何百台も設置、顧客が自分で商品をスキャンしながら清算する「ウォークスルー方式」のレジ革命などの、最先端の「スマートストア」への挑戦でも注目されている企業です。

ところが近年は、300坪程度の小型店の出店も強化しています。トライアルのドラッグストア業態である「トライウェル」。さらに2018年12月に開店した、有人レジゼロの小型スーパー「トライアルクイック」、1号店は福岡県の大野城市に開店しました(詳細は月刊MD6月号で紹介)。

そして、今回紹介するのが、徹底した商品の絞り込みとローコストオペレーションを追求した「トライアルBOX」です。最近、新規出店を開始しており、関東だけでも「水戸南店」「ひたちなか店」「成田店」の3店を開店しています。

「BOXストア」とは、商品を少しでも安く売るために店づくり(居抜き出店)と店内作業の経費を掛けないことが最大の特徴です。そのために、商品を絞り込み、「ボウル(小箱)」や「ケース(箱)」「パレット」などの大きな単位で商品を運び、陳列することで店内作業を軽減しています。アメリカの「アルディ」などのハードディスカウンター(=BOXストア)は、店内にはゴンドラ(棚)もほとんどなく、平台と倉庫型のラック式の棚と、冷蔵・冷凍庫などで店舗がつくられています。日本では、1970年代にダイエーの子会社として店舗展開を始めた「Big-A(ビッグ・エー)」が、関東で約200店の店舗網を築いています。

アルディは、パレット、ケース、ボウルが補充・発注・物流の単位。パンも補充ケースのまま陳列している。

トライアルBOXも同様に、商品を絞り込んでいます。ゴンドラはありますが、最下部に車輪が付いた棚を多用しています。「移動式棚1台で1品目」の売場も多く、店内作業の軽減化に取り組んでいます。また、従来の店舗よりも平台の割合が高く、単品の陳列面積が広いことが特徴です。弁当、総菜、精肉も取り扱っていますが、インストア加工よりもアウトパック加工が主体だと思われます。売場面積は300坪程度と、トライアルのスーパーセンターと比較すると小型店です。

トライアルBOXは、物流や店内作業などの経費率を下げることで、粗利益率を低く設定し、地域一番の低価格を実現しています。たとえば、「カープラーメン一律59円」「豚小間切れ肉100g89円」「たまご10個99円」「もやし10円」「ハムカツ2枚95円」などと、驚くべき低価格を実現していました。見学した水戸南店も、安さ目当ての顧客で大繁盛していました。最近は、「価格より品質が重要」という識者が多いですが、「買物のリアルな現場」は、やはり「安さ」が一番であることがわかります。

売場面積の広いカテゴリーは、「冷凍食品」「ペット用品」「キッチン雑貨」「カー用品」でした。買上率の高い必需品を主力にしていることがわかります。

トライアルBOXの本家米国「アルディ」の特徴

トライアルがベンチマークしていると思われるアメリカのハードディスカウンター(=BOXストア)「アルディ」の業態としての特徴を以下に解説します。

「Business Insider」によれば、アメリカ小売業は、2017年に約5,000店も閉店しました。2018年は、2017年を上回る店舗が閉店しました。さらに、2019年には3月時点で、すでに4,300店舗の閉店が発表されています。閉店店舗の多くは、大型SC(ショッピングセンター)テナントとして出店している店舗です。

その一方で、店舗数を大きく増やす小売業も存在します。小型のハードディスカウンターを展開する「アルディ(Aldi)」も、2019年に大量出店を計画しています。

アルディはドイツ出身の企業で、ハードディスカウンターと呼ばれる業態を世界中に展開するグローバルリテーラーです。ハードディスカウンターとは、ウォルマートスーパーセンターなどの大型ディスカウント店のさらに下をくぐる価格帯で食品、グロサリーを提供する小型業態です。米国アルディは、西海岸の有力SMの「トレーダージョーズ」を買収し、2017年度は売上2兆5367億円、対前年比9.6%、店舗数は2084店、対前年比7.0%、全米で18位の企業規模に躍進しています。日本でも有名な「トレーダージョーズ」と「アルディ」は同じ業態なのです。

アルディの冷ケースの陳列。PDQと呼ばれるメーカーの出荷段階からセットされたケース単位で陳列している。しかも後方から補充ができる。ローコストオペレーション。

アルディの特徴は、「300坪程度の小型店舗」「品目数が少ない」「SCに入居しない単独(居抜き)出店」で初期投資を低くしています。また、絞り込み、単品大量販売(単品の陳列面積大)、インストア加工ゼロによって、従来のSM(スーパーマーケット)よりも圧倒的なローコストオペレーションを実現しています。

また、完全なEDLP業態(価格販促がゼロ)なので、売れ方の波動が少なく、旧来の「ハイ&ロー業態」よりも、作業人時のかからないオペレーションです。下記の図表で整理したアルディの業態コンセプトは、商品を徹底して絞り込み、単品大量販売を実現することです。また、取扱商品の80%がPBであることも、アルディなどのハードディスカウンターの業態としての特徴です。

リアル店舗の閉店が続くアメリカで、店舗数を大幅に増やしているハードディスカウンター(=BOXストア)は、アマゾンとも差別化できる令和時代の成長する乗り物(=業態)と、トライアルは考えているのかもしれませんね。

著者プロフィール

日野眞克
日野眞克ヒノマサカツ

株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長。月刊『マーチャンダイジング』主幹を務める。株式会社商業界の「月刊販売革新」編集記者を経て、1997年に独立し、株式会社ニュー・フォーマット研究所を設立。