AI、ロボット化で省人化・無人化が一気に進む
今年、小売・流通業でもっとも話題になったことが、新しいテクノロジーを活用した「生産性革命」です。労働人口の減少は深刻で、すでに小売・流通業の現場では、「人が集まらない」「採用コストが増加している」「定着率の低さに悩んでいる」という、悲鳴にも似た声が聞こえてきます。
しかし、これからのリアル店舗の生産性向上は、単純な「人減らし」ではダメなことがわかりました。アマゾン対策としてリアル店舗の価値を高めるためにも、顧客との接点は人間が丁寧に保ちながら、接客を強化する必要があります。
一方、顧客接点以外の単純作業は、徹底的に省人化・無人化を進めるべきです。顧客接点は有人化、それ以外は無人化の二面作戦が、これからの小売・流通業の生産性向上のロードマップになります。
顧客接点以外で省人化・無人化すべきものの代表が「物流センター」です。この連載の第9回(7月30日配信)で紹介した「PALTACの次世代型物流システム」は、この連載でもっとも読まれた記事です。それだけ関心の高いテーマなのだと思います。
PALTACの「ピース物流」は、「摘み取り方式」と呼ばれる方法で、オリコンを搭載したカートを人間が動かして、在庫商品の場所に移動し、そこでピースピッキング(商品をオリコンに入れる)する方法でした。
今回、「RDC新潟」で導入した「MUPPS(マップス)」は、人間は所定の位置から動かず、商品が動くことでピースピッキングを行う方法です。ピースピッキングの作業の大半を占めていた「歩く」「探す」という作業がなくなり、ピースピッキングの生産性は2倍に向上したそうです。
PALTACでは、さらに無人化を進め、現在は人が行っている「商品をオリコンに詰め替える作業」のロボット化も近く実現する予定です。今後は、人が行う作業量と、ロボットが行う作業量が逆転し、どんどん無人化が進みます。
物流センターのロボット化が進むと、ロボットは疲れないので24時間稼働が可能になり、生産性が飛躍的に向上します。現在、人手不足の影響で、24時間稼働の物流センターはほとんどないようです。
また、物流センターの立地選定も、従来は「働く人が集まる立地」に限定されていましたが、ロボット化が進むと、無人の荒野のような立地にも物流センターをつくることができるようになります。
煩雑なレジ作業の軽減化も待ったなし
現在、日本の小売業のレジ作業は、クーポン処理などの対応に追われて極めて煩雑です。もっとも重要な顧客接点であるレジ応対が、作業の煩雑さに追われて、笑顔のない、不親切な対応しかできないと、その店の顧客満足度は低下します。レジ作業の単純化・省力化は、CS向上のためにも重要です。
九州の「新生堂薬局」は10月15日、九州初となるドラッグストアの「キャッシュレス店舗」を開店しました。「電子マネー」(新生堂薬局の会員カード、nanako、WAON)、「スマホ決済」(楽天Edy、Apple Pay、PayPayなど)、「交通系IC」(Suika、nimoka、SUGOKAなど)が使える店舗です。現金決済はゼロで、すべてキャッシュレス決済の実験店です。
現金が使えないので、利用者の戸惑いはありますが、レジ作業量が軽減した分、レジ担当者と顧客の会話時間が増えたそうです。キャッシュレス化によって、「顧客と店の良い関係が構築できるメリットがある」と店長は感想を述べてくれました。
下の写真は、アメリカのスーパーマーケット「セーフウエイ(SAFEWAY)」(Kroger傘下)で実験中の「Scan Bag Go」です。店内に設置されているハンディスキャナを使って、顧客が自分で商品をスキャンし、最後に無人レジで一括清算する仕組みです。
また、この店の会員カードを持っている顧客(ロイヤルカスタマー)は、このハンドスキャナの中で清算することもできます。顧客は、レジを通らないで買物を完了することができます。顧客のレジ待ちストレスが大きく軽減されますね。