月刊マーチャンダイジング2020年12月号のご案内

特集は、恒例、ドラッグストア顧客満足度調査。約40項目の切り口で上場14社を含む、有力ドラッグ37社、500店舗を徹底調査。ますます競争激化するドラッグストアの店舗運営状況を覆面調査により評価して企業、店舗ランキングも掲載。店舗改善のヒントに、業界水準の把握に欠かせない記事です。

<目次>

【今月の視点】

ラインロビングへの貪欲さがドラッグストアの強さである 月刊MD主幹 日野眞克

[トップインタビュー]
ツルハHD 代表取締役社長 鶴羽 順氏
ユニ・チャーム株式会社 代表取締役社長 高原 豪久

 

[企業研究]

ツルハドラッグ札幌南6条店

【特集】
顧客満足度調査2020

コロナ禍の影響を受け、清潔・衛生感覚は敏感に
「ディスタンス時代」接客願望も無意識的に高まっている

[デジタル戦略]
開発不要でネットスーパーアプリ立ち上げ、
小売業のDXを推進する「Stailer」

[小売業DX通信簿]〈アプリ編〉
各社ツールから見る、小売業デジタルシフトの実態

企業理念
ユニ・チャーム「過去を踏まえた未来戦略」

注目の戦略
サントリー酒類
「角瓶(角ハイボール缶)、トリスクラシック(トリスハイボール缶)」

[実務企画]
年末酒売場チェックリスト

業態STUDY
Withコロナで変化するコンビニ商品政策と
IT活用により実験が加速する外部との連携

〈連載〉
郡司昇のリテール・フレームワーク[第9回]
流通データ
DgSが第二の黄金期を迎えるために[第174回] 有田 英明
2021年1月・2月「 販促企画と提案ポイント」

電子版はkindleからもご購入頂けます。

月刊MD11月号 WITHコロナ時代の勝ち組企業研究、発売中 & 無料ウェビナー案内

2020年11月号の特集では、コロナ期により高い成長を見せている、ドラッグストアのゲンキー(本社福井県坂井市)と食品スーパーのオーケー(本社神奈川県横浜市)の2社を徹底分析。これからのドラッグストアの方向性、小売業の成長に何が重要かを紹介しています。

11月6日(金)14:00〜 無料ウェビナー 詳細、お申し込み

月刊マーチャンダイジング2020年11月号 目次


【今月の視点】
人口減少の「過疎地」出店は
ブルーオーシャンの立地戦略!?
月刊MD主幹 日野 眞克

【特集】
withコロナ時代の勝ち組企業研究

ゲンキー&オーケー
標準化、ローコストオペレーションへの飽くなき挑戦

Part1 ゲンキー研究
Part2 オーケー研究
オーケー、コスモス薬品、ライフ
グロサリー商品構成調査

[トップインタビュー]
ウエルシアHD 代表取締役社長 松本 忠久氏
アース製薬 代表取締役社長 川端 克宜氏

[注目店舗Close Up]
ウエルシア坂戸若葉駅東口店

[実務企画]
接客の未来b8ta

注目の新商品
第一三共ヘルスケア
「ミノン アミイノモイスト 敏感肌・エイジングケアライン」

注目のカテゴリー
大塚製薬「ウル・オス」

注目の商品戦略
アース製薬「入浴剤市場活性化策」

[注目の新業態]
C’z PRO

業態STUDY
コロナ禍がコンビニの健康志向を後押し
最小商圏で新たな客層にアプローチする

〈連載〉
郡司昇のリテール・フレームワーク[第8回]
流通データ
DgSが第二の黄金期を迎えるために[第173回]有田 英明
2020年12月・2021年1月「販促企画と提案ポイント」
編集後記

「一切れ焼肉→一人焼肉→My焼肉→Myサイズ」萬野屋の「個食焼肉進化論」

自分専用のロースターで一人で焼肉を楽しむ「一人焼肉」。一人世帯が増え、個食、孤食は広く社会でも広がりつつあるが、焼肉の世界ではコロナ禍も相まって個食焼肉が独特の進化を遂げている。その進化を主導する萬野屋の熱い挑戦を紹介する。

「焼肉ライク」が開発した「一人焼肉」には、実は先人がいた

「一人焼肉」という業態が誕生したのは20188月、東京・新橋にオープンした「焼肉ライク」とされている。「牛角」の創業者である西山知義氏が開発したもので、現在は株式会社焼肉ライクが全国に50店舗ほどを展開している。

焼肉ライクの一人焼肉はFCチェーンとして多店化することを目的に開発されたものであるが、そもそも一人焼肉とは大阪の食文化である。カウンターの上に七輪が置かれて、タレでもんだホルモンがごちゃまぜにされて皿に盛られ焼酎を飲みながら焼いて食べるというもので、筆者が20代、30代頃の大阪出張時に、ディープな食文化として楽しみにしていた。

大阪に株式会社萬野屋(まんのや)という焼肉関連の会社がある(1997年設立)、同社では「極雌(ごくめん)萬野和牛」という独自に基準を設けた和牛を流通させるなど、大衆的でかつクオリティの高い牛肉のサプライヤーであり焼肉店も大阪市内に11店舗展開している。ちなみに「極雌 萬野和牛」は優秀な血統と未経産の雌牛だけを限定し肥育期間も月齢30カ月以上の長期肥育した脂肪の融点が低い旨味の濃い赤身肉が特徴の牛肉である。

さて、一人焼肉という業態名は焼肉ライクよりも早く、この萬野屋が201712月にオープンしたJR大阪駅の商業施設「ルクア大阪バルチカ」に出店して、この業態名を付けたことが話題になった。キッチンを囲む形でカウンター席が設けられ、カウンターの中に1人前のロースターが埋め込まれている。ここで焼肉を食べる時は、二人で来た場合もそれぞれのロースターで自分の分を焼くことになる。このコンセプトを「My焼肉」と呼んだ。

このアイデアの原点は、2011年に「焼肉萬野」心斎橋店をオープンしたときに導入した「一切れ焼肉」であった。一切れ焼肉とは、焼肉の部位別の肉を一切れずつ一皿に盛り付けて提供するものだ。

同社代表の萬野和成氏よると、同店がオープンする前にあるお店に商品チェックに行った時、普通の1人前では量が多くチェックが行き届かない。そこで、店長に一切れずつ10種類くらいを盛り付けてもらい、それを食べながら店長とあれこれと会話をした。これがきっかけで「一切れ焼肉」のアイデアが生まれたという。

萬野屋ルクア大阪バルチカ店

「お客様は自分が食べたい食べ方をのぞんでいる」

その後、店長会議の席でその店長がこのようなことを報告した。

「社長が帰られてから、隣に座っていたお客さんから、私にもあんな食べさせ方をさせて欲しいと言われました。お断りするのに一苦労しました」と……

萬野氏は、「それだ!」とひらめき、「心斎橋の店は、この一切れ焼肉でいこう」と宣言した。店長のみんなは「えー!」という。それは面倒くさいからに他ならない。でも、「お客様は自分が食べたい食べ方をのぞんでいる。それを提供するのが飲食店ではないか」と。

それ以来、萬野氏は社員たちにこのように訴えている。

「うちはお客様にとって価値があることをやろう。それが他の誰もやっていないものだとすればなおさらのこと」

こうして、一切れ焼肉が生まれ、それが派生する形でMy焼肉が生まれた。1人前の量も少なく単価も抑えたことによって、女性が1人でも気軽に焼肉を食べる動機を喚起させた。

 また、ルクアに出店したことが同社とって奏功したことは、「衛生管理意識の徹底」であった。担当者が営業時間中に抜き打ちで店を訪問し、冷蔵庫内の温度やドアの取っ手の菌検査、食材の重ね方など、多岐に渡るチェックを行う。そして、不合格の場合は罰金となるという。これによって同社は大きな情報と教訓を得ることができて、「萬野屋ソーシャルディタンス」という概念が生まれた。そこにコロナ禍がやってきた。

大きな資金調達によって新時代に備える

 そこで同社は経営の安定と次なる事業展開のために65,000万円の資金調達を行った。この使い道は、まず特A立地への出店に備えること。これまであり得なかった特A立地の物件情報が出てきて、家賃交渉もできるようになった。電気ロースターの能力が高くなったことから、ガスの容量や制約に関係なく出店できるようになった。

次に、ライセンス店舗の展開を進めるようになった。これまで同社店舗のFCをしたいという要望を断ってきたが、暖簾分けの仕組みを計画して行く中で、2019年の9月に天王寺の店を「焼肉ホルモン ザ・まん」にリニューアルして、これがライセンス店舗のモデルとなった。

三番目は、11月より全店舗を「Myサイズ」というコンセプトに切り替えることだ。これは、心斎橋の一切れ焼肉、ルクアのMy焼肉の延長に位置付けられている。

Myサイズに取り組むことになったポイントについて、萬野氏はこのように語ってくれた。

「これまで、焼肉の一皿は3人くらいで食べることを想定し盛り付けされていて、大抵は焼き奉行のペースで焼肉を食べていたのではないでしょうか。Myサイズとは、自分のペースで自分だけの皿で肉を焼くスタイルで、『自分一人だけのディスタンス』をキャッチフレーズとして、ポーションを小さくして価格も抑えます。客単価は現状と変わらず5,000円を想定しています」

コロナ禍がきっかけとなり焼肉店の常識を変える

一切れ焼肉を発案した時のポイントは「これまでの焼肉は店側の利便性でしか考えていなかった」ということだ。それを萬野氏は、お客は「個」で楽しむことを求めているというトレンドに気づき、これまでヒットコンセプトを展開してきた。

そしてコロナ禍では「ソーシャルディスタンス」が至るところでルール化して、人々の意識の中に、これが標準的な日常の過ごし方として定着するようになった。萬野屋でも「萬野屋ディスタンス」という概念が生まれた。

ここで萬野屋が提供してくれた新コンセプト・Myサイズの写真を紹介するが、肉や小鉢や小皿に1枚ないし数枚を盛り込んでいる。まさにグループで来店しても「個」で楽しむ究極の形と言えるのではないだろうか。

Myサイズ焼肉
Myサイズ焼肉

同社の焼肉店は9月度が前年同月比で86.5%まで回復してきたという。好調と言えるだろう。しかしながら、同社はこのままの営業を続けてコロナ禍前の状態に戻そうとしているのではない。Myサイズは焼肉店の常識の大転換である。萬野氏は「ここにコロナ禍で調達した資金を投入する」という。まさに攻めの経営であり、勇気づけられる判断である。

萬野屋代表萬野和成氏

スシロー、コロナ時代のサービスは「非接触」で完結する

コロナ禍で進化を遂げている外食企業がある。スシローもそのひとつだ。ネット、アプリからの予約、店内での座席案内、注文、会計まですべてが非接触で可能。また、温度管理された専用ロッカーは決済済みのテークアウト商品をセルフで取り出すこともできる。「非接客サービス」を進めながらホスピタリティは持ち続けるスシローの営業スタイルを紹介する。

海外にも展開、回転すし業界最大手のスシロー

この度の新型コロナウイルス(以下、コロナ)禍は、飲食業のそれぞれにあるべき方向性の気づきをもたらしている。その大まかなポイントは「店内販売以外の商売を備えること」ということではないか。テークアウト・デリバリーやECは少なくとも売上をつくることができて、これからも自社の看板商品を磨き、発信していくことの重要性を認識させた。コロナはこれからどのような影響を及ぼすか想定はできないが、ウィズ・コロナ時代の対策はそれぞれに問われていくことだ。

さて、コロナ禍での飲食業の動向を探っている中で、回転すし「スシロー」の業績回復が比較的に早いことを知った。そのポイントを調べていくと「非接触サービス」というキーワードが出てきた。これが、どうして業績回復につながっているのか語ることにしよう。

ちなみにスシローの店舗数は20208月末段階で国内556、海外35(台湾19、韓国9、香港4、シンガポール3)となっている。これは回転すし業界の中では最大の規模を誇る。株式会社スシローグルーバルホールディングス(HD)の20209月期第3四半期連結累計期間(201910月1日~2020630日)では、コロナ禍を経験していながら売上高1,5066,100万円、営業利益は861,900万円となっている。

テークアウト新商品で売上が昨年の2倍以上に

スシローグローバルHDが発表している月次情報の「スシロー全店および既存店前年同月対比実績」は次のようになっている。自粛要請が出た3月の既存店売上高は86.3%、既存店客数83.9%、既存店客単価102.8%、以下、数字の表記は同じ順番で、4月が55.6%、45.3%、122.7%、5月が81.4%、65.4%、124.5%、6月が97.9%、89.2%、109.8%となっている。7月の既存店売上高は96.5%と前年に近づいてきている。

この4月度、5月度の既存店客単価が大きく伸びている要因は、テークアウト需要が伸びたことに他ならない。その象徴的な商品が「スシロー手巻セット」1,980円(税別、一部店舗では価格が異なる)である。販売休止していたが4月に急きょ販売を再開した。

スシロー手巻きセットとは、のり、しゃり、ネタをそれぞれ個別の容器に入れて持ち帰り、自宅で手巻き寿司が楽しめるセットメニューである。4月の販売再開時には店舗にある器、ネタ、海苔、しゃりを使用した。従来の手巻セットの器は間仕切りが設けられた専用のもので、ノリのサイズもそれに合わせたものを使用していた。それを「お客さまに1日も早くテークアウト商品を提供する」ということを優先させ、従来店にあった容器を使用することで柔軟に取り組んだ。

この頃はリモート勤務する人が増えたこともあり、テークアウトの需要が飛躍的に増えた。4月度単月ではテークアウトの売上は前年の4月度実績の2倍以上に増えた。同商品のネタは「まぐろ」や「サーモン」「えび」などスシローで人気上位の10種を詰め合わせたもので、スシローの手巻きすしセットだけではなく、家庭の冷蔵庫の中にある納豆やアボカドなどを組み合わせた食べ方を楽しんだ人も多いのではないか。さらに豪華ネタを集めた「スシロー特上手巻セット」を4月末から、これが好評となり「手巻追いネタ8種セット」などを5月下旬から、さらにニーズに合わせて、しゃりがしゃり玉に形成されているの「手巻セット」を6月上旬より販売した。

急きょ販売を再開した「スシロー手巻セット」がテークアウト売上げを押し上げた

アプリを充実、「自動土産ロッカー」も設置

さて、ここからがスシローの「非接触サービス」である。

まず、従来から行っているのは「自動案内」。お客が専用システムでチェックインすると、機械がお客を席まで案内してくれるもので、席は店内アナウンスで教えてくれる。待ち時間が発生する場合は、システムの近くにあるモニターに順番が表示される。

「自動案内」と「セルフレジ」によってお客の誘導から精算までスムーズにしている

さらに「セルフレジ」。お客が食事を終えて、席で会計をした後に渡される会計札(QRコード)をレジにかざすことによって無人で支払いができる。レジでスタッフを待つことがなく、人との対面を減らすことができるために、支払いをスムーズに済ますことができる。

非接触、無人で会計できるセルフレジ

4月に入りテークアウトが活発化したことを前述したが、これを支えたものはデジタルの活用を進展させたことだ。同店ではテークアウトのオーダーをスマホアプリやインターネットからできるようになっているが、この4月にこれまで以上に簡単かつ便利に使えるようリニューアルした。インターネット・アプリでは受け取る待ち時間が一目で分かるようになっていて、受取日の店舗の空き状況を確認できるようになっている。また、店舗でも受け取り時間を指定できるために、受取をスムーズに行うことができる。

その画像が①トップページ、②店舗選択、③受取日を選択、④商品を選択の一連である。また、お客がスシローアプリで予約して、店頭で受付をすると、プッシュ通知機能で連絡があるので待ち時間が近づくまでは駐車場の車の中で待つこともできる。

4月にリニューアルした「ネット注文サイト」の流れ

さらに店舗の中に「自動土産ロッカー」を導入している店舗もある。これは、温度管理機能が整ったロッカーを使用しているもので、①お客が「店内で予約」「電話ないしFAXで予約」もしくは「スマホアプリ・ネットで予約」すると、お客にQRコードが発行され、そのQRコードをかざすことによってロッカーから商品を取り出すというもの。アプリやネットで予約すると事前に支払いをすますことができと、メールでQRコードが届くので、指定された時間に店舗に行き人に接することなく商品を受け取ることができる。このロッカーは昨前に兵庫県の店舗ではじめて導入しているが、今年のコロナ禍でSNS上で大いに話題となった。

「自動土産ロッカー」によって人と接することなくテークアウトできる

 スシローの店舗に入ると、他の回転すしの店にはない空気感がある。それは「テーマパーク」である。店の空間は広く、客席では高校生のグループから、三世代家族まで思い思いに回転すしを楽しんでいる。イレギュラーなことがない限りに従業員と会話をすることはないが、従業員はお客が回転すしを楽しむためのフォローに尽くしていることは十二分に伝わっている。スシローの「非接触サービス」とは、顧客満足をもたらす技法といってよいのではないか。

「こまめな掃除で家中除菌」 「新しい生活様式」に合わせた新カテゴリー提案

新型コロナウイルスの感染拡大で社会のあり方や生活習慣が変わりつつある。こうした変化を捉え、家中をこまめに除菌掃除する新たなニーズに可能性がある。シートクリーナーを活用した掃除用品の販売強化である。見えない菌を除去して清潔な家庭を維持することで、生活者の健康維持に貢献。 同時に小売業にとっては大きな需要開拓のチャンスだ。

コロナ禍で 特需商品、仮需商品が出現

2019年12月中国で発生した「新型コロナウイルス」は2020年1月、日本でも感染者が確認され社会に大きな影響を与えている。

図表1は新型コロナウイルス感染に伴う週ごとの市場トレンドである(購買金額の前年比)。日本で初の感染者が確認された翌々週にあたる1月27日の週からマスク、ウェットティッシュの特需が始まり一気に店頭が品薄状態になった。紙製品がなくなるという「デマ」が拡散した2月24日の週からは生活者が買いだめに走り生理用品、ベビーおむつなどの需要が急上昇している(仮需要)。仮需は商品供給が追いついたこともあり次第に落ち着くが、マスク、ウェットティッシュは継続的に異常値ともいえる高い数値を維持している。

このトレンドにあり、注目すべきは使い捨て住居用シートクリーナーである。特需の起こった週から堅調に推移し、仮需のタイミングでピークを迎えるが、その後の伸長率も順調に推移している。商品供給も安定しており、店頭での提案次第では、今後さらなる成長が期待できるカテゴリーである。

シートクリーナーは 年間約258億円市場 

図表2はシートクリーナー市場の金額推移である。年末大掃除シーズンで市場は拡大しているが、新型コロナが感染拡大した2020年2月以降は堅調に市場は拡大。2020年2~5月の市場成長率の平均値はシートクリーナー全体で130.4%、フロア134.1%、ハンディ117.7%となっており、衛生意識の高まりを背景にフロアが牽引してシートクリーナー市場を拡大させているのが分かる。直近の成長トレンドから見て、消費財メーカー大手のユニ・チャームでは2020年の住居用シートクリーナー市場の金額規模は258億円、前年比119%を見込んでおり、今後大きな成長が期待できるカテゴリーである。こまめな掃除習慣が定着しようとしている今、除菌をキーワードにした提案でさらなる市場活性化が可能だろう。

コロナ禍で生まれる 「家中除菌」の新習慣

厚生労働省は5月4日に「新しい生活 様 式 」を公表 、新型コロナウイルスの感染 リスクがある中 、感染予防のための望ましい生活方法を提示した(図表3 )。マスク着用 、3密回避 、手指洗いなどが示されているが、これらに加えて「こまめな 掃除で家中除菌の新習慣」を提案することで、掃除用品の大きな需要開拓が期待できる。住居内にはドアノブ 、照明スイッチ、家具・テーブルなど見えない菌が付着してい る場所は多い。その中でも床は面積が広い分、菌が付着する可能性も高い。これにいかに気づいてもらえるかが提案成功のポイントだ。

高まる清潔意識。床の除菌ニーズは開拓できる

ユニ・チャームの調査によれば、約79%の人がコロナ前と比較して除菌意識は高まったと回答している。具体的な行動としては「ドアノブや電気のスイッチ、階段の手すりを除菌シートで拭くようになった」「キッチン回りをアルコール除菌する頻度が上がった」「食卓をこまめに除菌シートなどで拭くようになった」などが挙がっている。

図表4では3つの変化から、シートクリーナー市場拡大の可能性を見ている。まず、新型コロナウイルスの感染拡大により平日、休日の在宅時間は増えている(環境変化)。

次に、感染予防の観点から清潔意識は高まり、在宅時間の長時間化と合わせ住居掃除の意欲も高まっている(意識変化)。

さらに、シートクリーナーの使用率、使用枚数は拡大しており環境、意識の変化で実態も変化している。いまこそ市場拡大のチャンスなのだ。

しかし、床の除菌を積極的に意識している人はまだ少なく、「いわれてみると気になる」という意識レベルの人が多い。毎日掃除習慣の定着、シートクリーナーの使用率アップを追い風に、素足で過ごす時間が増え、菌の移動リスクが高まる夏に床除菌の必要性をアピールすれば、ニーズ開拓の可能性が高まる。

売場ゾーニング見直し提案


住居用掃除売場の一般的なゾーニングはトイレ用30%、浴室用40%、洗面用5%、リビング25%となっていることが多い。今後除菌ニーズが高まり“家中除菌”の新習慣が定着すれば、床掃除を中心にリビング用の売場構成比を30%に上げるといった見直しも必要になる。

夜は居酒屋、昼はかき氷専門店。二つの顔でコロナ危機脱出

コロナ禍の影響で苦境に立たされている飲食店は多い。テイクアウト、デリバリーで挽回する店舗、企業も増えているが、新しいビジネスモデルを打ち出し苦境を乗り越えようとする企業もある。居酒屋チェーンのKUURAKU GROUPは、日中はかき氷専門店として営業、新たなニーズ開拓に乗り出している。

居酒屋が編み出した二毛作営業

同じ店舗で、異なる時間帯にそれぞれ別の商売をすることを「二毛作」という。居酒屋の場合、営業が夜に集中することから、日中の時間帯に生産性を上げることは重要なポイントとなる。そこで、ランチ営業で売上をつくろうと考えるのだが、夜のメンバーがそれを担うとすると体力的にきつくなる。ならば、物販か、労働負荷が少ない営業を行うということが考えられるのではないか。

これからのウィズコロナ時代は、ソーシャルディスタンスが常識となることから、飲食店ではかつてのように「席を詰め込む」ということができない。それだけに、居酒屋の二毛作は営業政策としてこれから特に重要になっていく。その素晴らしいヒントが、今回の事例だ。

「今年も酷暑になる」でひらめいたこと

東京・千葉で居酒屋等の飲食店を17店舗展開しているKUURAKU GROUPでは、銀座店、町屋店、北千住店、本八幡店の4店舗で、日中を活用して「かき氷専門店」を営業している。従来の居酒屋営業では営業時間外である。この「かき氷専門店」は独自の店として位置付け、ファサードにオリジナルの青い暖簾を下げ、たくさんの風鈴を飾り付けて、居酒屋営業とは全く異なるイメージをつくり上げている。530日にオープンした北千住店を皮切りに順次オープンしていき、営業時間は12時から1630分の4時間30分となっている。

これらの4店舗のうち特に下町の3店舗はウェーティングができるほどの好調ぶりで、営業を開始して以来1カ月たたずに4店舗合計で4000杯を販売した。「かき氷専門店」の営業は10月頃までと想定している。

KUURAKU GROUPの「かき氷専門店」で注目されるポイントとして、まず、店舗が路面店であること。初期投資、ランニングコストが低いこと。そして労働負荷が低いことが挙げられる。

同社代表の福原裕一氏によると、「かき氷専門店」営業のヒントはこのようなことだ。

「コロナ禍で多くの飲食店ではテイクアウト・デリバリーを行ないましたが、これはレッドオーシャンで、ここに人件費をかけて行うのではなく、『お店』という資源を活かして何か新しいことができないかと考えた」

「当社の海外事業であるスリランカの店舗でかき氷の営業を試みたことがあり、ウィズコロナの中で、『今年も酷暑になる』『みなマスクを着けて過ごしている』ことから『かき氷』がひらめいた」

路面に面した場所でテイクアウト販売を行う

同業者に向けたライセンス販売を画策

同社の4店舗が秀逸なことは、「居酒屋がかき氷を売っている」というイメージを払拭して、「かき氷専門店」に徹底していることだ。ファサードの暖簾は既製品ではなくオリジナルのデザインを施したもので、ファサードの上にはたくさんの風鈴を付けて涼感を演出している。

商品は、まず「期間限定商品」の「まるごとメロン」「まるごとメロンミルク」が目を引く。メロンの果肉を小さなボール状にくり抜いて、かき氷を盛り込んで側面にそのボール状のメロンを張り付けている。涼感と共にとてもインスタ映えする商品だ。メロンは1日6~10食程度を用意しているとのことだが、この商品はほとんど売り切れになるという。

価格は銀座店の「かき氷大吉」を例にとると、前述のメロンがそれぞれ1,280円と1,350円、このほか「いちご」880円、「いちごミルク」950円、「マンゴー」880円、「マンゴーミルク」950円、「宇治金時(わらび餅入り)」950円、「宇治金時(同)」1,050円となっている。他の3店は「かき氷大吉」よりも低めとなっている。

テイクアウトの商品に「まるごとメロン」はなく、「いちご」「マンゴー」「宇治金時」がイートインの商品よりもポーションを小さくし、2割安程度で販売している。

氷は「純氷」(じゅんぴょう)を使用。これは水をろ過することで純度を高くし、ゆっくりと凍らせているもの。この氷はそれぞれの製氷業者でつくられていて、製氷業者が異なっていてもクオリティは共通している。

これらの取組みは1店舗あたり初期投資が20万円ではじめたことであるが、現状の営業ペースで8月度は4店舗で1,000万円の売上が想定されている。ランニングコストとしては「かき氷の原価」「人件費」ということから4店舗で300万円の利益を見込んでいるという。

同社としてはこのノウハウを「日本唯一無二のかき氷専門店チェーン」の構想につなげたい構えだ。さらに、この間培ったノウハウを生かし「かき氷専門店」のライセンス販売を展開していきたい意向。労働負荷が低いことから、居酒屋営業店舗の新しい働き方として提案していきたいとしている。

期間限定の「まるごとメロンミルク」1,350円
メニュー大きく4つに絞り込まれている

コロナ禍の渦中で進むさまざまなチャレンジ

さて、KUURAKUではこのコロナ禍にあって「かき氷専門店」以外にもさまざまなチャレンジを行っている。

まず、この3月から「KUURAKU GROUP公式アプリ」を設けて利用者にたくさんの特典や利便性を付与している。この利用者は6月末に4,600人を超えて、急速に増えて続けている。

DXDigtal TransformationITの浸透を活用する)としてEC(通信販売)を新規に事業化、さらにモバイルオーダー、キャッシュレス決済、デリバリーサービス、Googleマイビジネスを活用するようになった。

ECでは、同社の高級店である比内鶏専門店「銀座かしわ」で、冷凍の親子丼セット、つくねなどのミールキットの拡販に努めている。

キャッシュレス決済ではアジア系の100種のペイメントシステムに対応できる「Take Me Pay」を導入し、最終的には世界1,000種のペイメントシステムに対応できるようにする。

さらにオーダーしてから決済するまでをこなすオーダリングシステムの「Take Me Order」を導入してデリバリーで活用していく予定だ。

また、新規事業として「キッチンカー」をはじめた。キッチンカーでお客さまにより近づくことによって、お客さまとの会話から生まれる発想などを取り入れ、次のビジネスにつなげていきたいとしている。現状は取引先である精肉工場の敷地内と都内のオフィスビル街で販売している。今後はホームセンターと提携するなどして、販売場所を確保していく計画だ。

当然ながら、このコロナ禍の渦中にチャレンジを重ねているのはKUURAKUに限ったことではない。飲食業界では、いずれ近いうちに「コロナ禍の中でどのようなことをしていたか」ということの成果が如実に表れることになるであろう。

銀座店の「かき氷大吉」は17時以降は「博多屋大吉」となる

塚田農場のエー・ピーカンパニー、生き残りに「ファン深掘り作戦」選ぶ

不特定多数を相手にするのではなく、そのブランドの支持者=ファンを対象にニーズを深掘りしていく戦略がファンマーケティングだ。居酒屋チェーン「塚田農場」を手掛けるエー・ピーカンパニーは、これまで培ってきた独創的なビジネスモデルを背景に、これからの成長戦略として、ファンマーケティング構想を描いている。

「クオリティの高い食材」を開拓する企業文化

「塚田農場」という居酒屋チェーンがある。店舗数は現在約120店舗、「みやざき地頭鶏(じとっこ)」をはじめとした地鶏を主力商品としていて、客単価4,000円前後の業態である。展開しているのは株式会社エー・ピーカンパニー(本社/東京都豊島区、代表/米山久)。会社全体では総店舗数約200店、年商約230億円である。

居酒屋業界は新型コロナウイルスの影響で各社一様に大変業績を落としているが、エー・ピーカンパニー(以下、AP)も同様だ。同社の決算は3月で、今期が走り出した4月2日より全店休業し、6月1日から全店の営業を再開した。いきなり2ヵ月間、売上がほとんどない状態を過ごしたことになる。

筆者は5月末に代表の米山久氏に近況を伺う機会を得た。コロナ禍での「コスト圧縮」をはじめ「雇用継続」などさまざま言及されたが、「次なる施策」として掲げた「APファンマーケティング構想」に、これからのフードサービス業のあるべき姿を感じた。

APのことを語る場合はまず、同社の「生販直結モデル」を説明しておく必要がある。

エー・ピーカンパニーが独自に作り出した「生販直結モデル」のスキーム

同社の成長を牽引したブランドは冒頭で述べた「塚田農場」である。これは2003年の当時、代表の米山氏が「ありきたりじゃない新・外食」を追求している過程で、宮崎県日南市の地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」と巡り合ったことに端を発する。

この地鶏は増体率が高く、食味に適度な歯ごたえがあって旨味があることが大きな特徴だ。これを主要食材に育てていくために、現地の生産者と協調して生産拠点をつくり、この鶏肉を東京はじめとした居酒屋「塚田農場」に届けるという仕組みをつくった。このモデルは鮮魚分野でも開拓した。そして、「食のあるべき姿を追求する」というミッションを打ち立て、食品の生産(1次産業)から流通(2次産業)、販売(3次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の6次産業化ビジネスモデルを展開するようになった。

このようにAPの最大の特徴は「クオリティの高い食材」である。これを当初からぶれずに行ってきたことによって、「塚田農場」や「四十八漁場」をはじめとしたブランドには根強いファンが存在している。

『PR TIMES』というニュースリリース配信サービスがあって、企業が発信する動向を把握するときに「PR TIMES 〇〇」と企業名を打ち込むと、その企業のニュースリリースがざっと出てくる。そこで、APの動向が気になり検索してみた。すると、矢継ぎ早にニュースリリースが配信されていて、主に中食分野に力を入れている様子が伝わってきた。

弁当事業の成長が新しいマーケットを切り拓く

同社のリリースを時系列で紹介するとこうなる。

・3月31日:「店舗休業」4月2日から、営業再開日は4月10日、15日、21日(エリアで異なる)
・4月9日:「食品を宅配」。「Oisix」と共同で一般に販売、4月15日から
・4月11日:営業開始日を、4月10日、15日、21日からであったものを5月15日に延期
・4月13日:「コロナ禍休業による余剰食材を販売」、一次産業支援のD2C(Direct to Consumer)事業を4月14日から本格始動
・4月23日:「おうち塚田農場 家飲み便」(おつまみの通信販売)、4月23日受注スタート
・4月27日:「海の味覚、日本酒を通信販売」。鮮魚居酒屋「四十八漁場」で取り扱う予定だった食材を通販
・5月7日:「オンライン焼酎蔵見学ツアー」を実施、5月7日から
・5月13日:「トライアル営業実施」、5月15日からの営業開始日を、6月1日からを目途に変更
・5月15日:通信販売によって、「地鶏を100店舗使用分の16%」を販売したことを報告
・5月20日:「医療従事者に弁当を無償提供」。5,000食を目標にクラウドファンディングを開始
・5月21日:「『家飲み便』を拡大」、都心限定だったものを本州26都道府県に拡大、5月22日から
・5月27日:当社ブランド営業再開、6月1日から
・6月4日:「新しい飲食店の営業形態」追求の次なる打ち手は食堂業態!当社各種ブランドの〝おいしい″を集めた「つかだ食堂」を立ち上げる。5月15日にパイロット運営運営をスタート(渋谷南口店)

4月13日より「食材の通販」がはじまり、中食へと拡充していった
5月7日に「オンライン酒蔵見学ツアー」を実施

コロナ禍によって飲食業の多くが「テイクアウト」「デリバリー」を手掛けるようになったが、APでは2014年7月に新規事業として宅配弁当の「おべんとラボ」を立ち上げ、2015年7月1日に塚田農場プラスという商号で法人化している。それが2020年3月期連結決算の売上高230億円のうち約20億円を占めるほどに成長した。ニュースリリースの中の、4月23日「おつまみ通信販売開始」、5月20日「医療従事者に弁当を無償提供」、5月21日の「『家飲み便』を拡大」は、この塚田農場プラスが担っている。

APの店舗の本領は「クオリティの高い食材」であると前述したが、これまでの店舗展開を支えてきたものは、これらを高く評価する「APファン」に他ならない。弁当事業が5年余りで20億円に成長しているのは、これらに支えられているからであろう。

これらは「APファンマーケティング構想」の序章に相当するようだ。これからはリアル店舗がAPのファンのリアルコミュニティとなっていき、さまざまなサービスを生み出すきっかけとなっていくことであろう。

全業態の食材をシャッフルした定食店

さて、前述のニュースリリースの最後に「つかだ食堂」のことが紹介されている。それによると、APの「塚田農場」をはじめとした多岐にわたる業態の垣根を越えて、APがあつらえることができる全食材から、旬や生産状況によって紹介したいものを選別して提供する業態という。簡単にいうと、「APが独自に調達したこだわりの食材を使用した定食店」である。ランチタイム11時30分~15時、ディナータイム16時~22時でランチタイムからお酒を飲むことができる。

筆者は6月11日の12時ごろに池袋北口店で「チキン南蛮定食」900円(税込)を食べた。「商品力の高い定食店ができた」という印象だ。もっと早く新業態としてリリースしていればよかったのではと思った。現状、オープンしたばかりで、また空中階にあることからお客はまばらだが、やがて人気を博すことになるだろう。それを支えるのもAPのファンである。

「APファンマーケティング構想」のスキームは、これからのフードサービス業の定説となっていくのではないだろうか。

三茶のフードサービス界をリードする飲食店経営「和音人」が見せた、コロナ危機との戦い方

コロナ禍の中で飲食店はどう戦おうとしているのか。立ち向かいフードサービスの「新しいこと」をつかもうとしている若い人々の事例をご紹介する。

三軒茶屋にドミナントを築き、社員の夢をかなえる姿勢

東京・三軒茶屋にドミナントで7店舗展開している株式会社和音人(わいんびと、本社/東京都世田谷区、代表/狩野高光)という飲食企業がある。三軒茶屋で創業した「焼鳥 月山」は20156月にオープン。以来、5年間でこのような陣容を築き上げているのは、代表の強い信念が社員共々共有化されているからではないか。

参考までに、facebookで同社代表、狩野高光氏の「takamitsu kano」ないしは同社執行役員の「齋藤太一」を検索すると、狩野氏はフードサービス業界の次代を担う存在であること、この会社の社員がどれほど代表のことが大好きか、そしてどれほどチャレンジ精神にあふれているか、ということが如実に伝わってくる。

ちなみに狩野氏は19871月生まれだから33歳。飲食業で独立する道を一貫して歩み28歳で独立した。

創業時の信念は大きく二つ。まず、代表の狩野氏は「街として成熟度の高いところ」で起業することを考え、中野、学芸大学などの候補も挙げた中から「三軒茶屋」を選んだ。そして、「ランチェスター戦略にある局地戦で戦っていき、ドミナント展開をすることで地域のシェアを獲得しようと考えた」と言う。

「三軒茶屋は結構飲食店の移り変わりがあり、また3店舗以上を展開している店がないことから、当社のような路線が勝てるのではないか。とにかく、店舗数においても年商においても3年間で三軒茶屋の地域一番店となることを目標にした」

こうして、和音人は三軒茶屋における現在の地位を築き上げた。

次に「社員の夢を一つずつかなえていくこと」。創業の店のコンセプトは「山形」に由来するが、それは立ち上げメンバーの一人である齋藤氏の夢を尊重したからだ。齋藤氏は山形県西川町大井沢の出身で、父が現地の町おこしで活躍している。齋藤氏は父の活動を応援したいという想いがあり、狩野氏も創業店のコンセプトをその町を盛り上げていく趣旨のものにした。立ち上げメンバーは店がオープンする1年半前から、現地の酪農家、農家、酒蔵などさまざまなところと交流して食材を仕入れるルートをつくった。

和音人の店は料理のクオリティが高いと同時に客単価も高い。7店舗の中に餃子の店があり客単価3,500円だが、他の店はどれも5,0008,000円のレベルになっている。その理由を狩野氏はこう語る。

「日本の外食の価格は安い。どの店も現状のものから1,000円、2,000円は引き上げるべきだ。私はこのようなところから日本の外食の地位向上を図っていきたい」

店のQSC(品質・サービス・清潔さ)を高度に保てば、三軒茶屋の地元やその周辺には、それをきちんと評価する顧客が存在する。これらの富裕層は旧来型の飲食店にはないQSCを欲していたようだ。

今日、三軒茶屋はフードサービスのワンダーランドだ。実に個性的な店が密集して競い合っている。そして客単価は5,000円あたりになるが、不満は残らない。そのような環境は和音人がリーダーとなって醸し出されたようだ。

「焼鳥 月山」がオープンした当時の客単価は6,000円だが、2015年当時の三軒茶屋ではこの客単価は空白マーケットで、ブルーオーシャンの中で営業したという。その後、三軒茶屋に新規参入するところは類似の客単価でQSCのレベルの高いところが増えていった。

「緊急事態発生」後、新事業に俊敏に取り組む

そこでコロナ禍である。

和音人では今年に入り1~3月の業績は前年を上回っていたが、4月に入ると通常の3割以下に減少するようになった。

政府は47日に「緊急事態宣言」を発出した。それを受けて、和音人では9日より7店舗中6店舗の営業を自粛した。ここからの同社の行動は俊敏であった。

それは、以下のようなものだ。

(1)410日より、7店舗中6店舗はイートイン営業を休止しテイクアウト営業に切り替え、無添加・無化調(化学調味料)の食事を提供。

デリバリーは業者ではなく社員が行った。地域密着で育ってきたことから地域との結びつきを大切にした。メニューは軽食、サイドメニューの類の500円、弁当の類の1,000円、オードブル3,000円~、和音人セレクトの日本酒やオリジナルのクラフトサワーなど。開始してから1日80100食を販売した。

(2)ECサイト(通販)を立ち上げ、オリジナル商品を「和音人 月山 STORE」というサイトで発信。

商品のコンセプトは「山形」である。まず「おうちde 芋煮」「おうち de 餃子」(1,700円)を開発、また「山形斉藤の千日和牛」という和音人のブランド牛(1000日飼育の黒毛和牛の雌)を部位別にラインアップ。また、和音人のアンテナショップでも販売しているオリジナル商品を逐次品目に加え、開始して1週間で40万円を売り上げた。

ECサイト(通販)の「おうちde芋煮」1700円

(3)「社長をタダで貸します」――代表の狩野氏が、他社の社員の勉強会に講師として出講。

営業を自粛している中で、この期間中に研修をしたいという会社の要望に応えて、狩野氏が勉強会を行う。ちなみに、427日の場合、ホテル業界の会社よりオファーがあり、「みんなの知らない危ない食べ物の話」「最強の組織を作る人創り」などをテーマにzoom60人に向けて講演を行った。

「社長貸します」で4月27日にzoomで60人に向けて研修を行った、人物は和音人代表の狩野高光氏(facebookより)

(4)オンライン飲み会「zoom de BAR」を開催。

410日から、不定期ながら週に3回程度のペースで開催。三軒茶屋のバーから狩野氏を始めとした3人が司会を務め、参加者と盛り上がる。参加者は和音人の顧客、関係者の友人、知人など。東京だけではなく、海外諸国など多岐に及んでいる。

421日は「スラムダンクの勝利学に学ぶ」をトークテーマとして10人程度が参加し1時間程度行った。この日、筆者も参加した。飲み会の席で、「目標設定の重要性」「共通目標を理解することがチームワークの原点」「あきらめたら、そこで試合終了」という、スラムダンクの中にあふれるチームづくりのポイントを引き合いにして盛り上がった。笑いの絶えない時間であったが、「コロナ禍に勝とう」という共感があった。

「zoom de BAR」の様子、4月21日の場合「スラムダンク」をテーマに行なった

zoom de BAR」を進行している合間には、和音人のECサイトの内容を紹介している。

さて、和音人では5月6日にデリバリーを終了し、57日から逐次店舗営業を再開している。営業時間は15時~20時(ドリンクは19L.O.)、テイクアウトも継続する。久しぶりにお客さまと直に接した狩野氏のfacebookには、「人と実際に会うのはzoomとは全然違う。嬉しくて熱いものがこみ上げてきた」という趣旨のことが述べてられていた。

苦境にある時には誰もがこのように言う。「今できることをやろう」と。和音人はこの間これに全力で取り組んでいる。特に、前述の4つの施策は、フードサービス業にとってこれから必要な能力になるのではないかと思っている。

独自の給与システムで売上予算は前年比80%。それでも儲かる超繁盛「もつ焼き居酒屋」

新型コロナウイルスによって飲食業は大きな影響を被っている。多くは「中食」に活路を見出そうしているが、これが定着することで飲食店の存在感は変化していくことであろう。それは「地域密着」であり、「重層的な販売機能を持つ」ということだ。さて、ここでは損益分岐点を引き下げることによって、平時から高い「生産性」「顧客満足」「従業員満足」を実現している事例を紹介しよう。

38坪で月商約1,300万円の超繁盛店

東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県にもつ焼き居酒屋「串屋横丁」が約50店舗展開している。「頑固おやじが営む個人店」のような店で2等立地、3等立地にありながら平時はいつも繁盛風景が見られている。看板商品のスーパーホルモンロール」はピンポン玉のようなホルモンボールが串に通されて1本130円(税別)、他の商品もフレッシュで価格が低く、客単価は2,2002,300円前後となっている。

同チェーンを展開しているのは千葉県茂原市に本拠を置くドリーマーズ株式会社(代表/中村正利)。「串屋横丁」のほかに、肉料理の「小松屋」を2店舗展開している。

「串屋横丁」約50店舗のうち直営は18店舗、このほかは加盟店だがみな同社の卒業生である。各店舗の繁盛ぶりを見ると商売を営む人は誰しも加盟店になりたいと思うであろう。中国地方の地方都市で居酒屋を営む経営者を「串屋横丁」の中で一番売っている店の門前仲町店にご案内したことがある。同店は38坪で月商1,200万~1,300万円、これだけ売ると利益は430万~440万円となっている。しかしながら「串屋横丁」の展開姿勢は一貫していて、エリアは千葉県茂原市の工場から配送できる範囲であること、そして、オーナーは直営店の卒業生であることで一貫している。こうして店を運営するマインドとクオリティは高度に保たれている。そこでその経営者はFC加盟を丁重に断られたという。

ドリーマーズ代表の中村正利氏は19689月生まれ。ドリーマーズを創業し「串屋横丁」を軌道に乗せるまでの人生は多岐にわたっている。ドリーマーズの前はIT企業を営んでいたが2001年に事実上の倒産状態となる。2003年に起死回生の事業となる「串屋横丁」を立ち上げ、4年間で4,000万円の借金を完済し、以来「串屋横丁」独自の仕組みをつくり上げた。

写真手前、看板商品の「スーパーホルモンロール」は1本100g130円(税別)
オープンは16時で18時を回るとこのような満席状態となる(3月25日撮影)

地域の固定客を徹底深掘り

これまで最も力を注いだものは「理念教育により高いモチベーションを持ったチームづくり」、続いて「トレンドに左右されない業態づくり」ということだ。業態寿命という言葉とは無縁の「もつ焼き居酒屋」を徹底的に磨き上げて個人店にもチェーン店にも負けないクオリティをつくり上げることに力を傾けた。

2011年の東日本大震災の時に「串屋横丁」チェーンの売上が激減した。そこで、安定して利益を確保できる仕組みづくりに挑んで以下のようなことを成し遂げた。

① 主要食材のホルモンは屠畜場の組合員となり、養豚業者から直接仕入れることで中間マージンを劇的に削減。

② 本部のある千葉県茂原市に工場をつくり「串屋横丁」50店舗全店の仕込みを行い、店舗では仕込みをしないようした。工場の人員は製造部20人、配送部6人、受注部1人で2627人の体制。店舗で仕込みをすることに換算すると1店舗当たり0.5人となる。店舗で仕込みを行うと1店舗当たり3人が必要となるが、「串屋横丁」の全体で毎日130人の人員削減を実現し、年間の人件費では25,000万円以上を削減していることになる。

③ 「もつ焼き居酒屋」としての業態を専門特化することで、厨房面積を小さくし、坪当たり席数を大幅に増やした。前述の門前仲町店では38坪で約100席となっている。

④ リピーター対策として「ドリンクパスポート」というカードを作成。これは5回店舗を利用すれば毎日1杯無料でお酒が飲めるというもの。これによって広告宣伝費を全廃した。

また、宴会需要や団体需要には重きを置いていない。大切にしているマーケットは、その街に住んでいたり、その街で仕事をしている人々だ。これらに高い商品力と「ドリンクパスポート」が手伝ってどの店もほとんどがリピーターによって支えられている。

損益分岐点を下げる「仕組み」をつくる

さらに、非常識と思えるような給与制度をつくり上げた。

まず、店長の給与制度。固定給は月24万円である。しかし、これに歩合給制度が加わる。店長が受け持つ店の規模(席数など)によって歩合の条件は決まってくる。

一番大きな店は歩合給が80万円、一番小さい店の場合45万円程度。一番大きな店の店長は固定給+歩合給に残業代などがついて月の給料は110万円程度、一方の店長は75万円程度になる。

店長には異動がなく、日報もない。営業に差支えがなければ店に出勤するのは何時でもいい。ただし店長としての業務を全うしないと解任となる。

各店舗には店長を目指す人がたくさんいる。固定給は店長よりも高く設定されて年間340~350万円。これに加えて会社が決めた利益目標をクリアすると毎月10万円が給付される。さらに残業代が加わって年収500万円程度になる。

人件費を売上に合わせて変動させることで、予算組を「前年の80%」という仕組みをつくった。外的要因で店の売上が下がっても本部の利益は確保できて、また店長・店長候補の高いモチベーションによって売上は前年を保つことができている。

効率的でショーアップされた厨房をつくり、客席数も増やしている

経営理念は「全ての経費はお客様のために」

「串屋横丁」のモデルは「老舗繁盛店」である。これらの店は販促をしない、メニュー変更をしない、お客さまアンケートを取らない。「店の実権を店が握り、お客さまに左右されない店が、長く営業を続けることができる秘訣」と中村氏は確信している。

「メニューを増やす、キャンぺーンを行うということは全て経費です。このようなことをやらないことが正しい経営。『スーパーホルモンロールを食べたくなったから串屋横丁に行こう!』というお客さまが安心してやって来られるように、常に店を磨いているのです」

「全ての経費はお客さまのために」――これがドリーマーズの経営方針である。

これによって、「無駄なことの全てはお客さまのためにならない」という考え方に至っている。イベント、ルール、組織、中間管理職等々、例えばスパーバイザーが店舗を回って歩くということも無駄なものと考えている。そこで、評価制度や組織を撤廃した。それは、「当社の社員を評価するのはお客さまです。お客さまの『良かったよ』という評価が『売上』に結び付いてくる」(中村氏)と考えているからだ。

こうして「地域密着」であり「顧客を尊重する」という経営姿勢が強く発信されている。

ドリーマーズ株式会社、代表取締役の中村正利氏

銘柄で注文は受けない。料理との相性でお酒を提案…新スタイルの日本酒バル

日本酒好きには好みの銘柄やごひいきの蔵元などがある。日本酒をウリにする店なら当然、各地の銘柄を集め品揃えの豊富さで勝負するのが常道だろう。しかし、あくまで料理、それも西洋料理とのマッチングだけで日本酒を提供するバールが東京門前仲町にある。

日本酒をノーブランドで売る

日本酒を売る飲食店は「銘柄」の品揃えをアピールしている。最近の人気銘柄の筆頭に挙げられるのは「獺祭」である。2015年に本社蔵を大幅につくり変えたことによって、幻の銘酒がいつでもどこでも飲むことができる不動の人気銘柄になっている。このほか「久保田」「八海山」「写楽」「而今」といった人気銘柄をそろえていると、日本酒好きにとっては訪問リストに載せておきたい店となる。

だから、日本酒の品揃えはお客さまを引き付けるための重要なファクターだ。突出した人気銘柄の入手が難しくなれば、それを補うためのダークホースを探し出して、自店のスターに育て上げていく。

こんな具合に、日本酒好きが高じると「銘柄」に行き着くということが常識だと思っていたが、銘柄に全くこだわらず「お客さまの好みの味わい」「料理とのマッチング」で提供して繁盛しているバルを体験した。立地は東京・門前仲町、富岡八幡宮の参道を横に入った路面店である。

門前仲町は浅草ほどの賑わいはないが、門前町としての風情がある。私用で門前仲町を訪ねる機会が多いのだが、近年つくり込みが巧みな飲食店が増えている。1月の末に富岡八幡宮の裏道を歩いていて、その店「KARASU」を見つけた。店頭はウッディなデザインで店名の文字が小さくデザインされていてセンスの良さを感じた。

店は916席で15時から24時の営業。コンセプトは「日本酒と西洋料理のマッチング」だという。カウンターの中に約50種類のメニューが書かれた黒板があり、「シチリアで食べたポテトサラダ」600円、「地中海風よだれどり」1,000円、「カツオのブルーチーズカツレツ」1,400円というキャッチーなメニュー名が載せてあり、どのような内容なのか思わず聞いてみたくなる。

オーナーの赤井健太郎氏は19893月生まれ、20歳で六本木にバーを展開する会社にバーテンダーとして入社。それ以来、社長に「将来飲食業で独立したい」とアピールしていたところ21歳で店長を任された。赤井氏はそれに応えるべく一生懸命に仕事に取り組みマネジメントを学んだ。同社のほか、三軒茶屋のオーセンティックバーで働くなど独立するための修業を8年間積んだ。この過程で、「自分の店では日本酒を発信しよう」という目標が定まっていった。

フードメニューのネーミングは、どれもどのような内容なのか興味を引くものになっている

稀な異国の料理体験をメニューに活かす

六本木の会社にはユニークな制度があった。それは、1年に1度、2週間の有給休暇を取得できて、海外旅行に行かせること。そのために10万円が支給された。そこで赤井氏は当初、仕事に関連するスコットランドやイタリアに行っていたが、だんだんと訪ねるきっかけが稀な異国に憧れるようになり、旧ユーゴスラビアやチュニジアに行った。この経験が、現在の「KARASU」のメニューづくりに活かされているという。

たとえば、チュニジアの国民的調味料に「ハリッサ」がある。これはパプリカをベースに複数のスパイスとオリーブオイルを混ぜてつくるもので、中華料理に例えると豆板醤のようなものだ。これを自家製でつくり、現在のメニューに使用している。最初につくったのは「地中海風よだれどり」、低温調理した鶏の胸肉にハリッサを合わせたものだ。

KARASU」をオープンしたのは20184月。自分の店は代々木上原あたりに出店しようと思っていたが、仲介業者より現在の物件を紹介された。赤井氏はそれまで東京の東エリアを訪ねたことがなかったが、ここを見た時に店のイメージがすぐに湧いてきたことから、即決した。

狭い店であるが、日本酒の一升瓶がたくさん目立つ。赤井氏に尋ねると「7080本」という。果たして、916席の店で7080本の日本酒が回転するものだろうかと不思議に思った。日本酒は一度栓を抜くと、劣化が早く進む。劣化するとすっぱい味になり、おいしい飲み物ではなくなる。

「日本酒をアピールする店」とはそういう理由も加わって人気銘柄に限定して揃えているわけだが、「KARASU」ではそれとは全く異なる売り方をしている。それは、冒頭で述べた「お客さまの好みの味わいで売る」「料理とのマッチングで売る」ということだ。日本酒のバラエティ豊富なバルとして成立しているポイントはここにある。

同店の日本酒のメニューにはこう書かれている。

「味わいのボリュームはライト?しっかり?」

「香りはフルーティ?華やか?穏やか?」

「温度は冷酒?燗?常温?」

「または料理に合わせておまかせ」

日本酒のお品書きではお客さまの好みを尋ねている
常温で保存されている日本酒。徳利の数も豊富
カウンターの中もリーチインクーラーの中もさまざまな一升瓶が並ぶ

日本酒を売る主導権を店側が握る

このような提案をしている理由について、赤井氏はこう語る。

「日本酒とは食中酒として楽しむものだと思います。何を食べているかということで日本酒を選ぶことが日本酒の醍醐味です。日本酒をより楽しんでもらうために、お客さまからいま食べている料理に合う日本酒をくださいと、言ってもらえるようにしている」

「飲み物はビールのほかに日本酒しか置いていないから、一般的な店よりも日本酒の回転が速いのでは」

つまり、日本酒を「お客さまの好みの味わいで売る」「料理とのマッチングで売る」ということは、商品をお客さまの都合に合わせるのではなく、店側が主導権を握って提供するということだ。オーナーが店の料理にマッチする日本酒の個性に傾注することによって、お客さまにとっては感動的なマッチングとなり、記憶に残る店となり常連となる。事実同店は、いつも近隣に住む30代~40代の富裕な層で満席だ。常連客同士の仲がとてもよい。みな同店の魅力にひかれて「サードプレイス」のようになっているのだろう。

赤井氏はこれから「外食の仕事にこだわらない」ないという。それは、「当店に来て、料理と日本酒のマッチングを楽しんだ人が、自宅で当店のような楽しみ方をしてもらいたい」という発想から始まり、ゆくゆくは「中食よりもクオリティの高い飲食店のおつまみと、それに合う日本酒をセットにして宅配業者に届けてもらう」というビジネスだ。

これは「日本酒と西洋料理のマッチング」という「KARASU」のブランディングによって広がることだ。飲食店がブランディングに成功すると、その商品は別の場所でも楽しむことができる。筆者は今家で「スターバックスコーヒー」のドリップタイプで淹れたコーヒーを飲みながら原稿を書いているが、「KARASU」の顧客にはこのようなタイプの商品も歓迎されることであろう。