イノベーションが足りないコンビニ業態、セブン−イレブン新社長が過去と決別

セブン−イレブン・ジャパンの不調を多くのメディアが報じている。アナリストも決算会見で厳しい意見を発している。その実態を他チェーンと比較しながら、再成長に向けてセブン−イレブンは何をしたいのか、トップ交代を受けて新社長が語った内容とファミリーマート、ローソンの目指す方向について記しておきたい。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2025年6月号より転載)

店舗ベースでは否めない飽和感 求められる新たな取り組み

セブン−イレブンは東日本大震災の後の2010年代、年間1,000店舗以上を増店させていた(2012〜15年度)、また2012年8月より2017年9月まで62ヵ月連続で既存店売上の前年超えを達成させている。現在のような物価高騰の影響もない状態で、規模拡大を果たしてきた。

そこからコロナ禍において、セブンは果敢な動きを見せる一方で、世の中が本格的に日常を取り戻した2024年度(2025年2月期)、店舗の売上が低調に終わっている。ファミリーマート、ローソンと比較しても見劣りのする数字が並んでいるのだ。

2024年度の既存店売上前年比を見ると、セブン−イレブンは7勝5敗と負けが込んでいるのに対して、ファミマは全勝、ローソンも全勝と好調をキープしてきた。創業から他チェーンには負けない業績を築いてきたセブン−イレブンを考えると、現状の物足りなさは否めないだろう。

[図表1]国内コンビニ事業の営業数値(2020年2月期と2025年2月期の比較)

そこで、大手3チェーンの現在の姿をより正確に記すために、2020年2月期と2025年2月期の5年間の成長を比較してみた(図表1)。

チェーン全店の売上高を増減率で見るとファミマ、ローソン、セブンの順になる。一方で店舗数(エリアフランチャイジー含む)の増加ではセブンが他を圧倒している。

ファミマの店舗数減少について簡単に記しておきたい。これには事情がある。2016年9月にファミマが主導してサークルKサンクスと経営統合した。当時(同年8月末)の店舗数はファミマが11,945店舗あり、ここにサークルKサンクスの6,295店舗を加えて18,240店舗に達した。セブン−イレブンの19,044店舗に追い付くのにあと800店舗と肉薄した。

しかし、ファミマはいたずらにセブンの店舗数を追わなかった。サークルKサンクスに不採算店や低日販店が数多くあり、スクラップ&ビルドを優先し、店舗の再配置を推進した。数ではなく、質の追求を指針にしたのだ。その結果、店舗数を減らす一方で、全店平均日販を高めた経緯がある。

この5年間の成長を店舗ベースで見ていくと飽和感は否めない。もう一段の成長を見せるには新たな取り組みが求められる。セブン−イレブンが2013年にカフェ(コンビニコーヒー)導入、他社も追随して以降、イノベーションに乏しいといわれるコンビニ業態に、大手3チェーンはどのような風を吹かせるのか。

過去の成功体験を捨て去る覚悟 従来の延長線上に成長はない

セブン&アイ・ホールディングスは4月17日、セブン−イレブン・ジャパン(以下、セブン−イレブン)の代表取締役社長に阿久津知洋氏(現執行役員)が昇格する人事を発表した(永松文彦代表取締役社長は取締役会長に退く)。同日会見に臨んだ阿久津氏、永松氏はセブン−イレブンを再び成長軌道に乗せる道筋を示した。

阿久津氏はセブン−イレブンの歴史を振り返り、次のような思いを語った。1990年までは日本経済が伸長していた時代に、“開いててよかった”というキャッチフレーズを訴求して「タイムコンビニエンス」の利便性を提供してきた。

その後、“近くて便利”に言葉を変えて、家庭の食の負の解消を求めてミールソリューションに取り組んだ。「私たちが抱えている課題として成長戦略が見えづらいといった面があります。潜在マーケットをしっかりと顕在化させて、お客様ニーズのどこに変化があったのか、改めて問い直す必要があるのです」と阿久津氏は指摘する。

SIPストア(千葉県松戸市にある実験店舗のセブン−イレブン常盤平駅前店)

阿久津氏が挙げたのはコロナ禍の影響で人々の価値観や生活様式が変わったことへの対応である。“開いててよかった”や“近くて便利”に代わるような価値を提供できていない。そこで2024年2月、通称「SIPストア」(セブン−イレブン松戸常盤平駅前店)を千葉県松戸市にオープン、セブン−イレブンの未来を創造するテスト店と位置付けて、さまざまな実証実験に取り組んでいる。

例えば、ここでは店内で焼いた焼きたてのパンがあり、それを受けてチェーン本部は2025年度に焼成機を1万店以上に拡大すべく準備を進めている。また売上が大きなセブンカフェでは、紅茶を実証実験して、導入店舗の拡大を図っている。

加盟店の生産性向上が求められる中で、阿久津氏は省人化の取り組みも強化していくという。「実際に(フル)セルフレジ化を図ったり、ファストフードをセルフでお客様にお取りいただくセルフサービス化の試み、またセーフティガードシステムという従業員が安心して深夜に働けるような仕組みを取り入れています。こうした取り組みを継続して、成長戦略の他に事業継続という二つの意味合いで、セブン−イレブンは進化できるし、それが私たちに課せられた責務だと思っています」

省人化では、セブン−イレブンは今春から「次世代店舗システム」の導入を進める。永松氏はオペレーションの飛躍的改善効果を期待する。

「店舗従業員の働く時間を3分の2に減らそうと取り組んでいます。複数店を経営する加盟店が増えていますが、次世代店舗システムを稼働させると、コミュニケーションがIT化されるようになり、2店、3店を経営するオーナーさんが、他店とのやり取りを全てオンラインでできるようになります。お店を(実際に)回らなくても他店の状態を把握できる仕組みをつくっています」

チェーン本部側についても省力化を進めるとして、1人のOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー=店舗経営相談員)が担当する7店舗前後について、タブレット端末を用いたオンラインミーティングを導入することで10店ほどに増やす仕組みも実験的に進めている。

セブン−イレブンの新しいトップには、常識を疑い、周囲の反対を押し切っても、イノベーションを起こしていくリーダーシップが求められる局面もあるかもしれない。セブン−イレブンは創業時からカリスマ経営者と呼ばれるトップのもとで発展を遂げてきた。

そのカリスマ経営者自身が“過去の成功体験を捨てよ”と繰り返し語ってきた。阿久津氏は次のように考える。「これまで私たちのトップが実践してきた政策は、その時代に適した政策であり、必要であったと評価できるものです。過去のリーダーから私自身も学びを得て今日があります。そういう意味では決して過去を否定するわけではありません。ただし、現状の課題を考えてみたときに、過去の成功体験がそのまま活用できる場面は多くはありません。今の時代に適した成長戦略も、事業継続のための加盟店支援も、過去とは異なる視点で考え続けることが必要です。過去の成功体験を捨て去る覚悟を持って政策を進めたい」

従来の延長線上に新たな成長はないと決めて臨んでいく。

少子高齢化や地方過疎化など社会課題に向き合い支援する

ファミリーマートは全国1万店以上に設置したデジタルサイネージの認知度向上と利用目的の拡大により広告メディア事業を拡大させている。リテールメディア領域の関連事業会社3社の営業利益も50億円程度に成長させた。

デジタルサービスを拡大する一方で、激化しているサイバー攻撃なども考慮に入れてセキュリティプラットフォームの強化にも取り組む。

店舗支援ではタブレット上で商品発注などをフォローする人型AIを7,000店舗に導入拡大した。「本部業務や個店コンサルへのAIの活用が一気に進みました。AIの活用はファミリーマートでは既に常識になっています」(ファミリーマート代表取締役社長の細見研介氏)

他にも、ストアスタッフの勤務管理を自動作成するファミマワークシステムを導入し、店舗人件費の抑制をサポートしている。

「中期経営計画(2022〜2024年度)では、チャレンジする方のコンビニであること、また再成長の軌道に乗せること、この二つを大きな目標の柱にしてきました。新しい事業分野やデジタル活用にチャレンジすることで、コロナの難しい時期を乗り切り、次のステージに加速度を持って突入することができたと手応えを感じています」(細見氏)。

ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は2030年度に向けて、中期経営方針「ローソングループChallenge2030」を発表した。国内コンビニについては、AIを活用した発注システムによる品揃えの強化や、デリバリーのさらなる推進、人手不足対策や従業員の働きやすさ向上に向けたオペレーション削減への抜本的改革など、あらゆる分野にテクノロジーを活用していく。

その結果、日販30%アップ、店舗オペレーション30%削減、オーナー1人あたり店利益2倍、本部利益2倍をチャレンジ指標に定めている。海外事業においても、現在の2倍となる店舗数と売上高を指標に掲げて、グループとして成長を目指していく。ローソンは少子高齢化や地方過疎化など、社会課題に向き合い、誰もが安心して便利に楽しく暮らせるマチづくりをグループ一体となって進めていくという。

チェーン本部は、加盟店の売上アップとコスト削減をベースに、店舗数の増加と日販の向上に努めていく。

ドン・キホーテ流「四方よし」のリテールメディアで広がるPPIHグループの新領域

ディスカウントストア大手のドン・キホーテ(PPIHグループ)は、ここ数年リテールメディアへの取組みを進めている。同社のリテールメディア事業を担う株式会社pHmedia(ペーハーメディア)代表取締役社長の奥田薫氏と、同取締役CDO兼マーケティング企画開発部部長、小林真美氏への取材内容をもとに、その戦略と狙いを解きほぐす。(月刊マーチャンダイジング2025年6月号より抜粋)

需要創造型のテストマーケティングを提供

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リテールメディアとは、「小売業が持つ店舗・ECサイト・アプリなどの接点を広告媒体化し、広告主に販売するビジネス」を指す。米国ではウォルマートやアマゾンが本格的に参入し、小売の売上とは別に、広告収益を大きく伸ばす事例が注目されている。

一方、日本の小売企業でも、デジタル化やID-POSの普及を背景にリテールメディアを手掛け始める動きがあるが、取組み規模は業態によって様々だ。
ドン・キホーテの場合、棚で商品を展開するのはもちろんのこと、店内のサイネージやPOP、店外の懸垂幕やOOH、majicaアプリ、SNSなどを“メディア”として用い、商品販促にとどまらない施策を実施しているのが特徴だ。

ドン・キホーテのリテールメディア事業を担うpHmedia取締役CDOの小林真美氏はこう語る。

「メーカー様の広告を単に配信するだけではなく、出稿の結果どういうお客様の層にご購入頂いたのか、以前、何を購入した人が購入してくれたのかというデータ検証まで含めて、メーカー様にお返しする仕組みが大切だと考えています。それを更に発展させ、私たちは“テストマーケティング”という、商品を小規模店舗で試しに展開してデータを得るプランも提案しています。目指すのは『四方よし』の状態です。ここで四方というのは、小売側(ドンキ)、お客様、メーカー様の広域営業部、ブランド/マーケティング部を指します」

こうした考え方を、同社社長の奥田薫氏は「需要創造型のテストマーケティング」と表現する。

大手メーカーにとって、ドラッグストア(DgS)や総合スーパーと異なる新しい商品に出逢いに来ている客層を抱えるドン・キホーテで“最小限”の実売検証ができ、かつID-POSやアプリからの購入動向データを取得できるのは、ブランドやマーケティング担当にとって大きな魅力だ。

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店舗×オンライン×SNSを連動

ドン・キホーテが持つアセットは多岐にわたる。全国展開している店舗群、利用者数が多い専用アプリ「majicaアプリ」はもちろん、若年層を中心に盛り上がるSNS(とくにTikTokやInstagram)などの動画メディアにも強い。

ドン・キホーテの店頭を活用したリテールメディアの例。渋谷本店で1月から2月にかけて実施された、キットカットの展開では、同時期にmajicaアプリにも告知バナーを掲載した。

それらを広告枠として活用し、ターゲット層を絞ったキャンペーンやブランド認知拡大のプロモーションを展開している。

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《取材協力》

(右)株式会社pHmedia 代表取締役社長
奥田 薫氏
(左)株式会社pHmedia 取締役CDO兼
マーケティング企画開発部 部長
株式会社カイバラボ Kaiba Media商品開発責任者兼務
小林 真美氏

店舗レポ|クリニック、薬局、介護サービスを集積。ツルハ運営の「ダ・ヴィンチモール」全貌

札幌駅から徒歩10分の立地に、3層式の医療モールの「ダ・ヴィンチモール」がオープンした。ダ・ヴィンチモールのビルを借りてツルハが展開している。1階が「ツルハドラッグ北6条店」。同フロアには「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」が開局した。
(月刊マーチャンダイジング2025年6月号より抜粋)

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駅前立地の医療モールがオープン

札幌駅から徒歩10分の立地に、3層式の医療モールの「ダ・ヴィンチモール」がオープンした。ダ・ヴィンチモールのビルを借りてツルハが展開している。

医療モールの「ダ・ヴィンチモール」に共同出店したツルハ。1階には「ツルハドラッグ北6条店」、「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」がオープン。2階には「ツルハN6薬局」がオープンした

1階が「ツルハドラッグ北6条店」。同フロアには「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」が開局した。1階は調剤併設型DgSのフォーマットである(図表1)。

[図表1]1階のDgS、調剤薬局のレイアウト

同ビルの2階では「ツルハN6薬局」が開局した。同フロアには形成外科・内科・循環器内科・消化器科の「ソリス札幌クリニック(4月21日開業)」、また、「あお内科・内視鏡クリニック(5月7日開業)」が開業している(図表2)。リハビリ施設の「チャレンジドジム(自立訓練専門施設)」「メディカルフィットネス(指定運動療法施設)」も5月1日に開業した。

[図表2]2階のクリニック、調剤薬局のレイアウト(1~3はクリニック)

同ビルの3階では高度医療クリニックを展開しており、2025年4月3日時点で「札幌すがわら皮フ科」「札幌さとみ乳腺クリニック」が開業している。痛み専門の「ペインクリニック」も開業予定。クリニックは3階だけでも最多で9院入居できる(図表3)。

[図表3]3階のクリニックのレイアウト(1~9はクリニック)

同ビルの真横には「カレス記念病院」が隣接しており、処方せん枚数の増加が期待できる。

駅前にSMがないので総菜、生鮮、冷凍食品を強化した

[図表4]ツルハドラッグ北6条店の売場レイアウト(約390坪)

ダ・ヴィンチモール1階の「ツルハドラッグ北6条店」の開店は2025年3月27日。売場面積は390坪で、ツルハの標準タイプの300坪型よりも大きい。

[写真1]地元の業者から仕入れた総菜・お弁当を実験的に導入している。駅前周辺にSMがないため、新しい商品群として総菜・お弁当をラインロビングしている。現在、総菜・お弁当は廃棄ロスを防ぐため16時以降は、時間帯に合わせ2割引きから半額にして基本的に売り切っている
[写真2]外部業者と提携する「コンセッショナリー方式」ではあるが、精肉、青果はSM並みの売場面積である。既存店の売れている店舗をベースにした売場を展開している。青果はバナナとイチゴがとくに売れている
[写真3]地域客、通勤客などに人気のパンコーナー

同店の駅前周辺にはスーパーマーケット(SM)がないので、食品を強化して利便性を高めており、総菜・お弁当(写真1)、精肉・青果(写真2)、パン(写真3)を導入している。

[写真4]地域客に大人気のサンドイッチを導入。営業開始時間が早い店舗なので、朝早くから通勤客が多く購入しているという

また、開店後、地域客に大人気のサンドイッチを導入し、大好評だという(写真4)。

地域の「生活ストア」として位置付けており、店舗から車で3分圏内で19万人の商圏人口を想定している。単身世帯が増加している商圏なので、

 

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《取材協力》

株式会社ツルハ 北海道第一店舗運営部 部長
医薬品登録販売者
坂口 貴志氏
株式会社ツルハ 調剤運営本部
第一調剤運営部 部長 薬剤師
寺澤 亮氏
株式会社ツルハ 調剤運営本部
第一調剤運営部 スーパーバイザー 薬剤師
工藤 剛裕氏

[店舗概要]

店舗名 「ツルハドラッグ北6条店」「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」「ツルハN6薬局」
所在地 北海道札幌市東区北6条東3-1-1ダ・ヴィンチモール1階「ツルハドラッグ北6条店」、「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」、2階「ツルハN6薬局」
営業時間 ツルハドラッグ北6条店」8:00~23:00「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」平日8:30~20:00、土曜日9:00~18:00「ツルハN6薬局」 月〜土曜日8:30~18:00
開店日 「ツルハドラッグ北6条店」2025年3月27日「調剤薬局ツルハドラッグ北6条店」2025年4月1日「ツルハN6薬局」2025年4月1日
総従業員数 DgS20人、1階の調剤薬局13人、2階の調剤薬局6人

食品スーパーの歴史と曲がり角に差しかかった現況

いよいよ流通業界の再編が始まった。食分野の“主役”であったGMS、SMなどの“スーパー”勢力の隆盛の歴史と、衰退しつつある現状を公的数値、協会団体の統計などを用い解き明かしていく。(エイジスリテイルサポート研究所 所長 三浦 美浩)(月刊マーチャンダイジング2025年5月号より抜粋)

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部門や品揃え、投資、人手 「足し算」続けたSMの歴史

[図表1]2024年スーパーの類型別店舗数

全国スーパーマーケット協会が公表した最新の『2025年版スーパーマーケット白書』(以下『白書』)によれば、2024年の食料品を扱うSMは全国に2万3,039店舗、企業数は856社で総販売額25.4兆円、総従業員数は109万人である(図表1)。

売上規模はDgSの8.9兆円(総店舗数1万9,664店舗)、コンビニの12.2兆円(5万5,988店舗)よりも大きい(経済産業省「商業動態統計」2024年)。SMはDgSの販売額の2.9倍、まさに食品を中心に扱う“最大フォーマット”である。

SMの多くは戦前からの青果商、鮮魚商、精肉商、乾物商などの「業種店」が出発点で経営の特徴は“軽投資・低価格・高回転”だ。店は数坪で戸板一枚を売場にしレジもなく、金銭は吊り下げたかごでのやりとりだった。冷蔵設備もなく低価格で当日売り切り、売り切れごめんのため、当然に商品回転率は高かった。

戦後の1953年、アメリカのPX(軍の購買部)を参考に、紀ノ國屋がはじめてレジスターを導入したSMを開店、さらに1957年から始まった主婦の店運動で各地にSMが広がった。そのSMの歴史は、かつての業種店の“不”を解消する取組みだ。

SMが取り組んできたことは、以下の6点に分類できる。

①部門を加え続けて総合化
②セルフサービス方式を採用
③衛生管理と鮮度管理を徹底
④インストア加工とカンバン方式、SKUを拡大
⑤多品目品揃えと少量・多頻度の配送、品出し
⑥決済方法多様化、ポイントカード

以下では、それぞれについて説明をしていこう。

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ゲンキー 藤永賢一氏 「最後の砦として踏ん張るためには低損益分岐点しかない」

食品スーパーマーケット(SM)が「軽量」な店舗で戦線を拡大する一方、ドラッグストア(DgS)もその便利さや低価格さが評価され、食品販売における主要プ㆑イヤーの一角を担おうとしている。急先鋒に立つのが北陸・中部に454店舗(2025年3月現在)を展開するDgS「ゲンキー」(本社:福井県坂井市)だ。同社は完全に標準化された300坪の小商圏ローコスト型フォーマット「R店」において、エブリデーロープライス(EDLP)で、野菜・肉などの生鮮、総菜までを含めた食品を販売。売上構成比率の69%は食品が占め、2040年には1万店舗という目標を掲げる。同社代表取締役社長の藤永賢一氏に、食品販売戦略を聞く。
(聞き手・まとめ/編集部 鹿野 恵子)(月刊マーチャンダイジング2025年5月号より抜粋)

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「徹底」には社長が寝ても覚めても考えること

[図表1]レギュラー店の特徴

─2024年6月期決算では、食品の売上構成比率が69%とほぼ70%に迫る勢いです。経営戦略の中で、食品部門をどのように位置付けていらっしゃいますか。

藤永 総務省が毎年更新している家計支出調査と照らし合わせて、生活必需品分野における食品の構成比と店内の売上構成比を揃えることで、小商圏に挑もうと考えています。

小商圏フォーマットでは、同じ人が繰り返し来店することで商売が成立します。そして、そのお客様の家で、1ヵ月に野菜に何円、総菜に何円、パンに何円使います…というところが店内の売上構成比と合っていると、「自分にピッタリのお店」と感じて頂ける。そこがずれていると、中・大商圏に戻らなければならなくなるだろうというのが、大前提です。

消費者は、生活必需品分野のうち70数%を食品に使っています。ですから我々も食品の構成比が70%を超えるのは当然のことと言えます。

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─小商圏に対応するための戦略部門という位置付けですね。御社がDgSの中での差別化要素としてあえて「食品」を選ばれた経緯を教えてください。

藤永 私たちが食品を取り扱い始めたのは25年前になります。当時私たちは福井県で27店舗を展開していましたが、カワチ薬品のお店を見てこのやり方は県外でも通用するのではないかと思いました。

それで、150坪から900坪に転換しようとして、カワチさんのように4割は食品を置こうと思ってスタートし、それがうまくいったわけです。

その後、女性の社会進出が増えてショートタイムショッピングへの要望が強くなり、300坪の店舗を開発しましたが、食品をやめるという選択肢はありませんでした。店舗面積は3分の1になりましたが、アイテム数は1万6,000SKUから1万2,000SKUと3割しか減らしていません。価格帯の高いアイテムはどんどんやめて、低価格のもの、生活必需品、消耗品だけのお店にしていきました。

─それがいまの食品につながってきたのですね。

藤永 はい。いまでは300坪型の1号店が9年目になりました。その間により小商圏化してきて、食品の構成比率は45%から70%まで増えました。

8年前にはじめて生鮮の導入に取り組んだときには「フード&ドラッグ」という名前をお店の看板に付けました。当時、アメリカのコンビネーションストアの看板には大体「フード&ドラッグ」と書かれていて、それをまねしたのがスタートです。ここ3年ほどで、フード&ドラッグという名前は全国的に聞かれるようになりました。

─食品の構成比率が増えるに伴い、生鮮比率も上昇しています。DgSが青果、精肉を取り扱うのは高難易度かと思いますが、御社ではどのように取り組まれたのでしょうか。

 

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《取材協力》

ゲンキー株式会社
代表取締役社長
藤永 賢一氏

ディスカウント×エンタメで攻める「クルベ北入曽店」レポート

軽量級の食品スーパーマーケット(SM)の急先鋒が「ベルク」が展開する「クルベ」だ。2023年に立ち上げたディスカウント型の新業態で、EDLP(Every Day Low Price)方式、つまり特売に頼らず毎日安く商品を提供する手法を採用。商品は絞り込み、作業や「すべきこと」を減らすことによって、EDLC(Every Day Low Cost)、ひいてはEDLPを実現しようとしている。
(月刊マーチャンダイジング2025年5月号より抜粋)

大胆な絞り込みと作業の削減

クルベはベルクの本拠地である北関東エリアを中心に展開。2025年3月現在、群馬県と埼玉県に合計3店舗を展開する。

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1号店の「クルベ江木店」は群馬県高崎市に所在し、旧ベルク江木店を業態転換する形でオープン。続いて2号店「クルベ竜舞店」が群馬県太田市にて2024年2月にオープンしている。そして2025年2月には、埼玉県狭山市に同業態としては初の新築店舗となる「クルベ北入曽店」が開業した。

クルベの売場は、毎日の食材や生活必需品をできるだけ安くまとめ買いしたいお客に向けて構成されており、品揃えや作業をドラスティックに減らしているのが特徴だ。

例えば青果売場であれば、基本的に1品種1品目で大量陳列が中心。既存のSMのように、細かい品揃えをして売るのではなく、安さと視認性の高さ、また品出し回数の削減を重視していると推測される。精肉も平冷ケースに大容量の商品を圧倒的な量で展開し、ユニットプライスの低価格をアピール。豆腐も平冷ケースで大量に陳列。豆腐は壁面で展開するという思い込みを排除した売場といえる。

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[店舗概要]

店舗名 クルベ北入曽店
所在地 埼玉県狭山市入間川3141-1
営業時間 10:00〜21:00
売場面積 670坪