防災の日、敬老の日、トクホの日、ハロウィン…。企画のネタ盛りだくさんの9月、10月
毎月のプロモーションのネタに便利に使える販促企画書。2024年9月、10月のアイディアです。
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毎月のプロモーションのネタに便利に使える販促企画書。2024年8月、9月のアイディアです。
月刊マーチャンダイジング2024年6月号では「リテールメディア成否を分ける5つの重要ポイント」を特集!本稿ではイトーヨーカ堂が進めるリテールメディア戦略について紹介する。同社のリテールメディア戦略は、単なるブランドの広告ではなく、「接客の延長線」として顧客体験の向上を目指す。商品の魅力を伝える冊子「ぽちたす」やメーカーとの協業など、その取組みとは。(月刊マーチャンダイジング2024年6月号より転載)
イトーヨーカ堂が2024年3月に立ち上げた「リテールメディアプロジェクト」は、商品本部配下に設置され、商品部、販売促進部、マーケティング戦略部を横断したメンバーが所属。同社のネットスーパーを中心としたリテールメディア戦略を推進する。
書籍『小売り広告の新市場 リテールメディア』(日経BP)の著者であり、同社リテールメディアプロジェクトディレクターの望月洋志氏は、同社におけるリテールメディアの位置付けは、お客様の買物の利便性を高め、楽しさを伝えていく、いわば「接客の拡張」だと述べる。「商品開発にこだわりがあって、歴史や背景にあるストーリーを伝えるのが好き」(望月氏)という同社のカルチャーを生かしたメディアの運営を目指す。
イトーヨーカドーネットスーパーが現在推進しているリテールメディアのひとつが「ぽちたす」という冊子だ。タブロイド版、オールカラー20P、イトーヨーカドーネットスーパーの新横浜センターから出荷される商品に同梱される。月1回発行、印刷部数は約5万部。
リテールメディアにおいては、メーカー・ブランドに対し単に「広告枠を売る」のではなく、商品の良さを伝えていくことが重要との考えの下で編集されている。
2024年3月発行のvol.4を見てみると、第一特集「時短&節約 おいしい選手権!!」では、漫画家の寺崎愛さんが調理と実食リポートをする「おかずの素人気ランキングBEST20」、大容量でユニット単価が安い肉や魚を使いこなすためのレシピを紹介する「ボリュームパック激うまっ!アレンジ」などの記事が冒頭を飾る。
イトーヨーカ堂商品本部リテールメディアプロジェクトリーダーの篠塚麻友実氏は「ネットスーパーのお客様の多くは、共働き世帯や子育てされている、タイパやコスパを非常に重視する層です。このようなお客様は、時間をかけずに大量の買物をすませる必要があるため、とくにネットスーパーは、決まったものをカートに入れる、言わば“補充”的な使われ方が多くなります。
ですが、紙のメディアを通じて新しい商品を目にして頂くことで、自分が知らなかった商品への関心を喚起し、購買につなげることを目標としています」と語る。
例えば「ぽちたす」vol.4ではヤマザキパンとの取組みで、菓子パンのリベイク(トースターで再度“Re”焼く“Bake”)をテーマに記事を構成した。リベイクして熱々になったアップルパイにアイスを添える、カレーパンを半分に切ってリベイクし、レタスやベーコンを挟んでカレーパンバーガーにして食べるなど、ほんのちょっとのひと手間で、手づくり感を演出する方法を紹介。
メーカーからの商品情報を右から左へ流すのではなく、興味を持ってもらうように企画・編集をした内容といえる。価格は掲載されているものの、それを強く訴求するわけではない。
さらに、ネットスーパーのサイト上にも同じタイトルやイラストを使ったランディングページ(※)を制作。トップページから誘導動線がひかれていて、そこからの購入件数などものちの検証のために用いられている。
※LP:検索結果や広告などを経由して訪問者が最初にアクセスするページのこと。商品・サービスの注文の獲得に特化している
2023年12月からスタートした「ぽちたす」。現在多いのは「お客様に対して“認知”だけでなく、“理解”を得たい」と考えるメーカー・ブランドからの出稿相談だ。
ものづくりにしっかりと腰を据えて取り組んでいるメーカーほど、価格ではなく価値を理解してもらいたいと考える。前述した「商品にこだわる」というイトーヨーカドーのカルチャーは、お客様に対して商品のストーリーを伝えるのに親和性があり、紙の媒体の一覧性は商品に対する深い理解を促す。
篠塚氏は紙のメディアの強み以下のように語る。
《取材協力》 (株)イトーヨーカ堂
今、インターネット広告に次ぐ広告媒体としてリテールメディアが注目されている。インターネット広告でトップクラスの業績を誇るサイバーエージェントも、この新しいメディアに大きな可能性を感じている。市場開拓を進める同社に現状の取り組みや展望を取材した。(月刊マーチャンダイジング2024年6月号より転載)
従来の一般的な購買プロセスは、テレビ広告などで認知を取り、認知に基づき売場で商品に気づき、関心を持ち購買意欲をそそられ、記憶に残り、購買するといういくつもの段階を踏んでいた(図表1)。
メディアも認知を取る、関心を高める、購買へとつなげるなど、細かい役割分担が決められ、「メディアミックス」することで相乗効果を挙げ、最終的に大きな実績を残すような販売戦略が設計されていた。ところが、リテールメディアの登場で、これらに新たな形が加わる。
「リテールメディアでは、認知の獲得と購買を同じ場所でできます。ECサイトに広告が出てクーポンが付いていたら、そのまま購入する。店舗サイネージで新商品を知り、その特徴を気に入ってサイネージ前に並んでいる商品をカゴに入れるなど、認知、購買を同じ場所で両方獲得できるのが、リテールメディアの大きな特長だと思います」(藤田和司氏)。
より店舗や商品に近い場所で展開される広告は、認知から購買への時間が短く、行動変容を促しやすい独特の効果がある。一方で、予算の考え方にもこれまでとは違った見方やルールが必要だと藤田氏は語る。
「これまでメーカーは商品の世界観を練ったり、広告メディアを決めて出稿したり、認知を取るためにはマーケティング部がマーケ予算を原資に主導していました。
最終的に購買へつなげるためには営業部が小売業と商談を重ね売場を確保し店頭販促を支援するなど、営業予算を使って担当していました。リテールメディアでは認知と購買が同じ場所で連続的に起こるので、①認知と購買の検証方法、②担当部署の見直し、③予算に対する新しい考え方が必要になります」
藤田氏の語るように、リテールメディアの登場により、日本の企業の中にはリテールメディア担当の部署を設けたり、組織や予算配分を見直したりする企業も現れている。
また、マス広告やインターネット広告など従来の広告と組み合わせることで新たな活用方法や効果も見えてきている。これらを踏まえ藤田氏はリテールメディアをマス広告、インターネット広告に次ぐ「第3世代の広告メディア」であると位置づけている。
「リテールメディアの現在の状況はインターネット広告が勃興し始めた時期に似ていると思います。当時はインターネット広告という予算枠もありませんでしたし、広告媒体としての認知も今ほどなく、どの予算をインターネット広告に充てるべきか定まっていませんでした。
しかし、今では効果検証と改善で運用ができることが強みとなって、インターネット広告は広告予算の上位に位置づけられています」(藤田氏)
従来の広告とリテールメディアとをいかに効果的に組み合わせて宣伝広告のポートフォリオ(全体計画)をつくるのかは今後のメーカーのプロモーションにとっても、そしてリテールメディア発展にとっても重要になる。そのためには、リテールメディアで何を狙うのか、配信した広告が目的に対してどれほど成果を挙げたのか、効果検証の手法を考えなくてはいけない。
サイバーエージェント社は自社開発の店舗デジタルサイネージ「ミライネージ」の運用にあたり、まず動画を配信する店舗を商品のPOS情報を元に選定する。販促商品が売れている店を中心に配信計画を立てるということだ。店舗選定は配信後にも見直され、効果次第では変更されることもある。
効果検証に際しては、動画配信以外の条件を極力揃え、配信している店舗、していない店舗の両者の効果を比較するA/Bテストを行っている。
さらには広告効果を「売上」と「認知」それぞれで測定する新しい取り組みにも着手している。
図表2に店舗のデジタルサイネージ広告の効果に対する考え方をまとめた。
まず効果を「売上」と「認知」に分け、それぞれの増加分を見ている。売上効果については、サイネージに動画配信している期間内の販売個数の純増分と商品単価を掛けて売上増の金額を計算する。
次に認知効果については、デジタルサイネージに広告配信を行った期間に、その店舗に来店したお客様と、来店しなかったお客様にそれぞれアンケート調査を実施する。
そのアンケート結果における認知度の差から、サイネージによる認知獲得人数を推定する。認知獲得人数に平均認知獲得単価を掛ければ、認知獲得効果を金額化できる。
なお、平均認知獲得単価は、過去にYouTubeなどで動画配信をして得られた認知1件に掛かったコスト実績などを元に計算している。
認知度調査のアンケートに関しては外部の調査会社を使うか、自社アプリによるアンケート調査で実施する。自社アプリにより認知獲得人数を可視化することは今後リテールメディアにとって重要になるポイントのひとつである。
上記のような計算から、売上効果金額と認知効果金額を足すことでリテールメディアによる広告効果実績を計算する。
ミライネージ事業責任者の赤木伸之氏は次のように語る。
「この効果測定値もクリエイティブ(動画内容)を適宜差し替える、配信店舗を変えるなど広告運用を強化することで、広告出稿費用に対して採算が取れる状態は生み出せると考えています。
このような感覚を持てるのも効果を金額化しているからです。リテールメディアの効果検証で売上や認知率が何%アップしたと言われても、具体的な効果感が得られないので、サイバーエージェントではこうした計算で効果を金額にして算出し、費用対効果を見ています。
これが取り組み方の最終形とは思っておらず、メーカー様はじめ各所と議論を行い、継続的に修正・改善を行っている最中です」
ミライネージの運用チームが施策の効果を上げるために取り組んでいることは2つある。一つは施策検討の会議体制である。施策実施期間中には毎日朝一番に「日販会議」を開催、動画配信しているすべての店舗のPOSデータをチェックして対象商品の売れ行きをチェックする。その過程で特殊な売れ方をしている商品があれば、その要因を深掘りする。
例えば、ある商品で異常値とも思える程の高い売上が出た場合、それが全体的な傾向なのか、個人が大量購入したイレギュラーなケースなのかを小売や広告主との連絡などを通して解明していく。
こうした日次の振り返りで、細かく状況を把握し、1週間に1回「アクション会議」を行う。日々の施策は順調に効果を挙げているか、もしそうでなければ、テコ入れのアクション(追加、変更の施策)が決定、実行される。
こうした日次、週次の振り返りに基づく細かい運用は、インターネット広告の手法を踏襲しており、インターネット広告事業で効果にこだわってきたサイバーエージェントがリテールメディアを支援する上での大きな強みである。また、同社ではシーエー・アドバンスというオペレーション専門の子会社とも連携して膨大なデータを日次、週次で分析している。
「運用型広告は、インターネット広告の市場がここまで大きくなった要因のひとつだと思っています。私たちには運用型広告に関する豊富な知見と経験があるので、リテールメディア市場を拡大するためにも、これらの資産が生きてくると思います」(赤木氏)
会議体制に加えて、ミライネージの効果アップのために取り組んでいることが「アクション」である。これはアクション会議で協議された後、必要に応じて、実際にどのような行動を取るかという意味で、そのひとつが配信している動画の見直しである。
ひとつの商品でも複数の動画を配信しているので、それぞれの結果を見て効果を挙げているものは残し、そうでないものは新規に差し替える。こうした動画の見直しを「クリエイティブ精査」と呼んでいる。
もうひとつが、配信店舗をチェックする「インプレッション精査」である。店内サイネージの場合、施策の効果を挙げるためには、どの店舗の端末に動画配信するかが重要となり、インプレッションをうまく活用できているか、店舗ごとに精査することで全体的な効果を判断する。
とくに、大規模チェーンの場合、1,000店以上の店舗すべてに配信すると膨大なコストがかかるので、予算内で効果の出そうな店舗を選定することは施策成功のカギを握っており、インプレッション精査が効いてくる。
先述のとおり、配信前にもPOSに基づき店舗選定するが、配信中でもインプレッション精査によりチューニングを繰り返している。インターネット広告では、メディア機能として配信先の最適化アルゴリズムが存在するので、店舗メディアでも試行錯誤を重ねればそういった世界観を創りあげられるのではないかと赤木氏は語る。
リテールメディアの効果検証において、オンラインとオフライン(店舗)では異なる側面がある。オンラインのリテールメディアはデジタルで情報を集約できるので、物理的な作業も少なく、インターネット広告の運用技法が応用しやすい。
一方で、店舗メディアでは情報はデジタルで収集できても、店舗にサイネージを設置するという物理的な作業が生じる分、負荷も大きい。同社ではスタッフがサイネージの設置店舗を巡回し、動作状況を確認するという運用も行っている。
「一定のタイミングでメーカー販促物を店舗に一括配送するサービスがありますが、店舗サイネージはそれに近いのかもしれません。これまでになかった情報の届け方をする。そして、それを運用していくという新しい取り組みで、これまでになかった効果を生んでいます。デジタルツールのコンテンツは販促物と違って、設置する必要がないので作業の軽減にもなります」(藤田氏)
店舗サイネージと自社アプリ、ECサイトを連動させるという手法もある。自社アプリで配信した広告の商品を店頭サイネージで訴求すれば、購買チャンスは広がる。サイバーエージェントでは、小売業と共同で自社アプリの開発を行い、店舗サイネージと組み合わせるなどリテールメディアの枠を広げている。
また、近年ECを強化する小売業も増えており、ECと相性のよい検索連動型の広告にも可能性がある。同社ではこうした広告も用意し、全方位的にリテールメディアの可能性を追求している。
リテールメディア発展のために、これに関わる関係者が注力すべき点について聞いた。
「あくまでメディアなので、お客様にどう見て頂くかが重要です。モノを売りたいという広告の意識が前面に出ると、小売業にとっても設置場所を含めて優先順位は下がると思います。お客様にとって価値のある情報を提供するという基本スタンスの基、店舗と協働することが大切です。
メーカーの立場からは、リテールメディアの予算は、マーケティング費用、営業費用の双方だという認識が重要です。予算に対する考え方、立案、執行、担当者などこれまでと違う運用が求められます。将来的にはこういった運用体制の面で大きな差がつくのではないかと思っています。」(藤田氏)
「メーカーでマーケティングと営業がタッグを組むように、小売業では商品部とリテールメディア担当の部署との間で連携することが重要だと思います。この連携がどれだけ進むかは施策にも大きな影響を与えます。われわれをうまく使って頂き、社内研修や勉強会のような啓発活動を行っていただければ、理解が進んで成果も大きくなると思います」(赤木氏)
第3の広告メディアである「リテールメディア」が大きく発展するためには、組織や予算といった広告の基礎を成す「土台」に関するルール、慣習の見直しが不可欠である。
《取材協力》 サイバーエージェント
大手食品卸売業で泥くさい営業を積み重ねてきた筆者が、データ分析を学び、食品スーパーの豆腐売場で棚割改善の実証実験を行ったところ昨対109%の売場を実現することができました。その一連の流れを包み隠さず公開します。(執筆:今村商事株式会社 林 拓人、月刊マーチャンダイジング2024年5月号より抜粋)
筆者はもともと三菱食品の営業部門の出身で、以前は泥臭い現場でメーカーさんと小売業さんをつなぐ仕事をしてきました。使っていたのはエクセル程度で、とことんアナログな仕事です。2021年にリテール業界のDX(デジタルトランスインフォメーション)を支援する今村商事に転職。そこで筆者も自分自身でデータを取り扱えるようにと一念発起し、弊社で提供している研修プログラムを自ら受講しました。Azure Databricksというツールによる、基礎的なデータ分析方法を3日間学び、その後3ヵ月ほどかけて習得。そこで学んだことを実際に売場に適用したのが、この記事の内容です。
今回実証実験を行ったのは、スーパー細川という、大分県に2店舗、福岡県に1店舗を展開する食品スーパーです。カード会員比率が80%を超えるような、地元のお客様に愛されている地域密着型スーパーといえます。
実証実験の対象に選んだのは、豆腐売場の棚。2022年の11月から2023年2月までのID-POSデータを基に、棚割の案を筆者が作成し、2023年11月に実際の棚を変更して売上の変化を見ることにしました。データはプロのエンジニアがセットし、分析と検討は筆者が行いました。
まず見てみたのが客数のデータです(図表1、以下、図表はすべて一部加工したものです)。データをざっと見て、「店舗と月によってデータがない場所があるな」と気付きました。
また、検証対象となる2022年11月から翌2月までの数字をざっと追い、そこについては抜けがないことを確認しました。
気を抜くと、POSデータが正しく集配信されておらず、「ある期間のある店舗のデータがごっそり抜け落ちている」なんてことはよくあります。
今回の記事でデータを分析する万田店には、月間7,000人前後のお客様が来店されていることがわかります。
次に、分析対象となる豆腐が含まれる和日配部門の商品マスタを参照しました(図表2)。このデータを見ると、今回の対象となる棚で取り扱われる商品には「豆腐」だけでなく厚揚げや卵豆腐などの「加工豆腐」という複数のサブカテゴリーが含まれることがわかりました。
そこで今回は実際の棚に合わせた分析を行うために「豆腐」と「加工豆腐」を合体して「豆腐・加工豆腐」というサブカテゴリーを疑似的につくり、そちらを分析対象とすることにしました。
やっとこのタイミングで、現状把握をするために、棚割のデータを参照することにしました。ここでよくあるのが、「理屈のうえでは正しい」はずのデータ上の棚割と、実際の棚割に差異があるということです。
「棚割図どおりに棚をつくりました」と現場は行動しても、想定した棚割が実現できていなかったり、よかれと思って特定の商品を定番化している、ということは往々にしてあります。今回実証実験の舞台となったスーパー細川さんでも、同様の状況が起きていました。そこで、本当の棚の状態をデータ化するため、実際に現場に足を運び写真を撮影し、つくった棚割図が図表3右です。これで、現状を正しくデータ化することができました。
リフト値による分析
併売特徴量による分析
クラスタリング
協調フィルタリングによる分析
現場の意思をくみ取りながら棚割作成
の手順を紹介しています。
ローソンは現在、情報通信のKDDIが50%、三菱商事が50%を出資する共同経営体制を敷いている。三菱商事の子会社であったローソンだが、2024年2月にKDDIが経営参画を表明して4月より株式の公開買付を実施した。KDDIが経営に参画することでテクノロジーを強化、その結果「Real×TechConvenience(リアルテック・コンビニエンス)」としてコンビニ業態に変革を迫っていく。その3社が本年9月18日に都内で会見を開き、「未来のコンビニ」の実現に向けた具体的な取り組みを提示、その内容をリポートする。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年11月号より転載)
三菱商事、KDDI、ローソンは「未来のコンビニ」に向けた取り組みを開始する。
KDDIは2025年春をめどに本社を「TAKANAWA GATEWAY CITY」(東京・港区)に移転する。その本社のオフィスフロアと一般フロアに各々「Real×Tech LAWSON」(リアルテック・ローソン)を出店する。ここでは未来のコンビニへ向けて変革を促す、リテールテックの実験ラボを運営していく。その実証結果をもとにリアルテック・コンビニエンスの仕組みを構築し、他店舗への拡大も目指していく。
その実験ラボとなるリアルテック・ローソン1号店についてKDDI代表取締役社長CEOの髙橋誠氏は「社会課題解決のための実験場で新たなスタンダードづくりに取り組む」として、大きくは次の5つの新たなコンビニに挑戦していく。
第1に「新しいコンビニ体験」。最新デジタルの活用によるストレスの少ない店舗環境を創る。例えば「スマホレジ」。スマホを起点に店舗内でスムーズな“フリクションレス決済”を導入。さらに、スマートフォンを介した商品レコメンドを実施する。
また、AIカメラによるリコメンド機能を装備して、来店客に新しいコンビニ体験を提供する。このパーソナライズされた広告配信については、従来のマス広告から個々のお客の属性・趣味嗜好に沿った広告を掲出する新たなデジタルサイネージメディアを活用していく。
具体的にはAIを搭載したカメラにより、属性・姿勢検知をベースにした嗜好データの解析により、お客の好みに合わせた商品提案やキャンペーンなどの情報を適切なタイミングで届けて、満足度の高い買物体験を可能にしていくという。店舗側とっても、機会ロス、廃棄ロスといったコンビニ運営の課題を解決する一助につながることを期待できる。
第2に「AIロボティクスによる店舗業務支援」。国内の働き手は不足しており、特に小売業、コンビニにとって人手不足解消は喫緊の課題である。これを最新テクノロジーで解決していく。
ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏は次のような課題を挙げる。
「われわれは1日800〜1,000万人のお客様を店舗にお迎えしている。店舗運営するにあたり、やはり人手不足が最初に挙がってくる。この課題に対して2030年には店舗オペレーションを30%削減していく。そのためにも、ロボティクス化、デジタル化する、そしてお客様に最適な商品、サービスを展開していく中で、今のオペレーションを削減していく。この削減した時間を、新しい付加価値に向けたサービスを展開していく。人にしかできないことを、これからも現場レベルで考えて、お客様に提示して、実証実験を経て全店に波及させていく」。
例えば、ウォークイン飲料補充ロボットにより、ロボットによる飲料品出し作業/在庫管理を実施する。AI自動制御により作業負荷の大きい飲料品出し業務を365日24時間行う。商品ごとの販売数や在庫状況をデータとして可視化すると同時に、最適な品出しの実現と発注業務のサポートを実施する。店舗におけるオペレーションを省人化、効率化させることで、従業員は新たに創出された時間を顧客対応に充てて、サービスの向上を図ることができるというもの。
それ以外にも、店内の清掃ロボット、オフィスにおけるデリバリー配送ロボットなどの導入により作業人時の削減を図り、その分を人でしかできないサービスを実現していく。
第3に「クイックコマース」。データ分析基盤をフルに活用することで、最短時間の配送を実現する。雨天時、イベント時の需要予測、配達報酬、クーポンのリアルタイム更新、配送員配備、食材手配の最適化などを分析していく。
第4に「リモート接客」。AIや有人コンシェルジュによる接客を実施していく。相談内容として、教育や学習、ヘルスケア、金融・保険、携帯電話・通信などを準備している。
第5に「リアルテックコンビニwithスタートアップ」。AI、データ、ドローン、デリバリー、ヒューマンインタフェースといった分野において、さまざまなスタートアップ企業が活躍している。そのスタートアップ企業の力を借りて、一緒にリアルテックを進めていく。
「われわれの持つGPU(画像処理装置)機能を使いながら、バーチャルの世界で、いろいろなシミュレーションをすることができる。スタートアップ企業がローソンでシミュレーションすることができ、その結果を持ってリアルの方へ動かしていく。このデジタルツイン(現実世界の情報を元に仮想空間でリアル空間を再現する技術)の環境をコンビニに創り上げ、さらに拡大してスマートシティにつなげていく」。(髙橋氏)こうした最新デジタルをコンビニに搭載しながらDXを加速させていく。
もう一つ、新たなコンビニの強化ポイントは自治体との連携である。
少子高齢化が進む日本、さらに地方においては生活インフラの維持・強化が課題になっている。
通信とテクノロジーにより、コンビニを地域の「マルチハブ」にしていく。具体的には、公共サービスの拠点、防災拠点、産業連携拠点、交通拠点にしていく。
そうした課題解決に向けて防災や交通など、リアルテック・コンビニエンスを進める中で自治体との連携を強化していく。ローソン、三菱商事、KDDIの3社は2024年9月にローソンを基軸とした防災・災害発生対処活動に関する協定を締結。災害発生時においては、被災地域のライフラインの早期復旧を図り、被災者の安心や生活支援に貢献するために相互協力を実施するとともに、平常時から防災に関する協力体制を構築していくとしている。
ここでは、KDDIの提供するStarlink通信環境(従来の衛星通信サービスに比べて大幅に高速かつ低遅延のデータ通信環境)やドローンによる周辺パトロールによる地域安全の強化、三菱商事とKDDIが事業会社を通じて提供するオンデマンド乗合交通との連携による移動支援など、地域の課題解決にも貢献しながら「ローソンタウン」の実現を目指していくとしている。
その具体的な動きとして、能登半島に「地域防災コンビニ」をつくろうと、ローソンは2024年9月に石川県と包括協定を締結。ローソンにドローンを設置したり、Starlinkを配備したり、災害時にも使用できるような、街の中にあるコンビニを目指していく。
ローソン店舗をドローン基地として活用することで、平時には高齢者・子どもの見守り、周辺パトロールなど地域の安全強化に注力、災害時には災害状況の一次確認や捜索活動の迅速化に貢献することを目指していく。
また、今治地域ではローソン店舗が「mobi(モビ)」の公式乗降スポットとして設定されている。mobiは相乗り型の新しいモビリティサービスであり、店舗駐車場の利用により利用者の安全な乗り降りと、ドライバーの休憩拠点として機能している。
また、沖縄地域では移動課題解消に貢献する「地域交通コンビニ」を推進していく。既に2024年7月にローソン店舗が停留所のAIオンデマンド交通を開始している。「これから自動運転が当たり前の時代なってくると非常に便利になる」(髙橋氏)
今回の会見に出席した三菱商事代表取締役社長の中西勝也氏は次のようなローソンの姿を描く。
「ローソンのリアルの価値にテクノロジーの価値を掛け合わせることで、リアルテックという新しい価値を生み出し、ローソンがリアルテック・コンビニエンスに進化していく」。その進化したローソンを核として地域社会とのつながりを強化し、三菱商事、KDDI、ローソンの3社の力を結集しながら、各地域における社会課題に向き合っていくと述べた。
三菱商事は原料調達や製造物流などサプライチェーンの分野に加えて、海外での幅広い事業ネットワークを活用しローソンを支援してきた。今後は加速する事業環境の変化に対応すべく、通信関連事業を基盤としたデジタルに強みを発揮するKDDIとの連携を強化し、三菱商事、KDDIの2社共同体制でローソンの変革を進めていく。
セブン−イレブンの「お店で揚げたカレーパン」が2023年の1年間で約7,700万個を販売、ギネス世界記録に認定された。カウンター内で揚げる「出来たて」を訴求するカレーパンをなぜ今、ギネス申請なのか?店内調理品に慎重だったセブンが前号の焼きたてピザに続き、「出来たて」の新たな次元を開拓する。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年10月号より転載)
セブン−イレブンが「出来たて」をコンセプトにした商品開発を強化している。「作り立て」といってもいいし、セブン−イレブンではこれを「〇〇たて」と称している。工場生産のパッケージした商品ではなく、最終工程を店内で実施して提供する商品に注力している。
ペーパードリップで一杯ずつの抽出する「淹れたて」の「セブンカフェ」(2013年9月にコーヒーマシンの全店導入完了)、専用マシンで提供するフレッシュな「混ぜたて」を訴求する「セブンカフェスムージー」(2017年に実験開始、2023年3月本格展開)、冷凍生地を店内で焼成する「焼きたて」の「お店で焼いたピザ」は、今年8月時点で首都圏、九州、北海道エリアの約200店舗で販売している(本誌連載前号に詳説)。
そして「揚げたて」では、本稿で詳説する「お店で揚げたカレーパン」や、既存の「ななチキ」「牛肉コロッケ」「からあげ棒」といったフライヤー(揚げ物)商品(2007年10月より関連商品を発売)をカウンターで提供している。
淹れたて、混ぜたて、焼きたて、揚げたてといった「出来たて」商品により、ワクワク感や特別感を訴求、集客効果につなげている。特にセブンカフェのコーヒーは1店舗1日当たり百数十杯を販売する商品に成長している。
特筆すべきは、淹れたても混ぜたても、人の手を介さない機械によって出来たてを実現、焼きたても揚げたても、時間をセットして冷凍素材を調理器具に入れるだけなので、従業員による出来上がりの「ブレ」が理論上は起こり得ないということだ。カレーパンを上手に揚げる「揚げ物名人」が生まれる素地はない。すなわちシステムにより出来たてを提供している。
この「〇〇たて」は、セブン−イレブンが先行したわけではない。むしろ他のチェーンと比較しても慎重に進めてきたといってよい。例えばセイコーマート(経営/セコマ)は店内厨房「ホットシェフ」を業界に先駆けて1994年にスタート。セコマのホームページには次のように記されている。
『始めた当初から変わらぬ思いは「出来立てはおいしい」という信念。忙しい毎日でもあたたかいお弁当やおにぎりを楽しんでもらえるよう、今日も店内のキッチンでごはんを炊いています』。
この「ホットシェフ」に対する正しい評価は、業界に先駆けたアイデアというよりも、商品を全店でブレなく提供可能とした開発力と運営力にある。北海道内1,094店舗中(7月末)、800店舗以上にキッチンを構えている。
立ち上げ当初は、全ての店舗で同じ味と仕上がりを求めたため難しいチャレンジと見られていた。しかし、実質創業者の赤尾昭彦氏(故人)が製造機器の改善や食材供給体制の整備により、商品のブレを根気強く解消して現在に至っている。
セイコーマートでは「炊きたて」のご飯を盛り付けた弁当、「握りたて」のおにぎりといった出来たてを提供している。セイコーマートには、商品にブレがほとんどなくても、従業員の熟練度に頼る部分が少なからずある。セブン−イレブンは弁当やおにぎりの領域には手を出さない。誰でも同じ商品を間違いなく調理できる出来たてを前提に、おいしさを追求している。
その揚げたて商品における近年のヒット作「お店で揚げたカレーパン」(税抜き149円)がギネス世界記録に認定された。2021年6月に一部エリアで販売をスタート、2023年1月から12月までの累計販売数が7,698万7,667個となり、2024年7月16日に「最も販売されている揚げたてカレーパンブランド(最新年間)(2023)(Best-selling freshly made curry breadbrand)(current)(2023)」として、ギネス世界記録に認定された。セブン−イレブンでは、初めてのギネス世界記録認定となった。
ギネス世界記録への申請には幾つかの要件がある。世界一であること、(他の誰かの)記録更新が可能なこと、標準化が可能であることなどだ。揚げたてのカレーパンを販売する専門店は数多くあるが、セブン−イレブンの店舗数2万1,592店舗(2024年7月末現在)からすれば、販売数世界一は確定した内容である。結果として、一般消費者に向けた販促効果、および加盟店への後押しになる。
年間販売数を1店舗1日当たりに換算すると10個弱になる。日販10個弱は単品として決して少なくはないがセブン−イレブンには1日100個以上「売っている店」もあり、チェーン本部としては、加盟店の努力次第では、さらに上積みが十分に可能な商品と見ているようだ。
コンビニ業態はセルフ販売であるが、セブン−イレブンのチェーン本部は、加盟店に対して、単品を売り込む「意思」に基づく売場づくりへの思いを、従業員一人一人が持つように指導している。例えば新作のスイーツに対して、日販何個、週販何個と加盟店オーナーのもとで目標を立てさせることで、担当者が陳列を工夫したり、POPを付けたり、装飾を加えたりと、あれこれ意思を持って販売に臨むことを薦めている。
特に「お店で揚げたカレーパン」については、お客に対して「ただ今、カレーパンが揚がりました〜!」と声掛けをする、あるいは、なじみのお客に対して時間をいただき、揚げたてのカレーパンの提供も可能だ。従業員の意思により、販売数量を高めることが期待できる。
誰が調理しても商品の品質にブレはないが、販売に関しては従業員の意思が大きく左右する。セブン−イレブンは、全体から見れば、その小さな「意思」の積み上げにチェーンの繁栄があると考えている。
「お店で揚げたカレーパン」は、創業期からのベンダー企業である武蔵野フーズと開発を進めてきた。カレーパンを製造するには、パンを製造する製パン設備、カレールーを製造する加熱設備、カレーの香りを閉じ込める冷凍設備の計3つの設備が必要になる。
セブン−イレブンは、それら3つの設備を1つの工場に備えたインフラを構築、セブン−イレブンの専用工場として差別化を試みている。カレールーを他の製造工場から運ぶのではなく、同じ工場内で製造することで、自社の仕様へのこだわりと、高鮮度の追求が可能になる。
「おいしい商品には技術が必要です。スパイスはおいしさのポイントになりますが、香りが飛んでしまうところに一番の課題がありました。一般的にカレーは日を置いてなじむとおいしいといわれます。確かに時間の経過で、おいしさの深みが出ます。しかしながら、カレーパンは揚げたての食感と、香りの高いスパイスが大切。それをどう表現していくかに試行錯誤しました」(セブン−イレブン・ジャパン商品本部FF・冷凍食品部シニアマーチャンダイザーの米田昭彦氏)
スパイスの香りが飛ばないように、パン工場では数少ない、しっかりとした冷凍設備を求めた。このカレーパン製造の拠点になったのは、武蔵野フーズが2005年3月に竣工した「カムス第2工場」(埼玉県比企郡嵐山町)になる。2012年5月に増築して最新設備を導入、日本最大級の大型パン工場となり、食パン、菓子パンなどを製造している。セブンプレミアムの「金の食パン」も同工場で製造している。
カレーパンは同工場をモデルに計5拠点で製造するが、同工場が全体のおよそ5〜6割を担っている。カレーパンの製造能力は1時間に約3,500個程度になるという。全店で1日21万個を販売するので、工場も各地に拠点が必要になる。
セブン−イレブンでは、カレーパンから派生した「とろけるチーズカレーパン」(176円)の販売を7月から開始。将来的には季節によりカレールーの内容を変えるなど細部にも注力していく。セブン−イレブンでは前述したように「出来たて」の切り口で商品開発の開発に挑んできた。おいしさの追求も新たな次元に入ったようである。
コンビニの客数が頭打ちである。売上は商品の値上げで前年を上回るものの、客数が増えないことには業態の成長は見込めない。そこでセブン−イレブンが次期成長戦略に位置付けているのが配送サービス「7NOW」であり、客数と売上のアップに期待している。全国展開を目前に控えた今、新たに宅配ピザをフィーチャーしている。成功する目算はあるのか。その意図を考えてみる。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年9月号より転載)
セブン−イレブンは、次期成長戦略に位置付ける配送サービス「7NOW(セブンナウ)」を2024年度中に全国展開する。2024年8月には関西2府4県、山口県、鳥取県、島根県、福島県を追加、計26都道府県で、約1万6,000店まで展開している。
7NOWの実証実験は2017年に北海道の一部エリアで「セブン−イレブンネットコンビニ」としてスタート。2022年2月には、サービス名称を「7NOW」に変更した。これまで7NOWでは、リアルタイム在庫連携を活用した約3,000アイテムの品揃えや、最短20分での配送、ドローンやロボットといった配送手段の実証実験などを経ながら進化を続けてきた。
そして全国展開が見えたタイミングで打ち出したのがピザの宅配である。店内の焼成機でつくる焼きたてのピザは、水面下で実験を進めた後、本年2月29日オープンの「SIPストア(セブン−イレブン松戸常盤平駅前店)」でメディアに公開している。このSIPストアは、既存のセブン−イレブンに新たなコンセプトを注入した店舗として注目を集めており、詳細については本誌4月号を参照していただきたいが、焼きたてのピザを、7NOWの主力商品の一つに育成する意思を表明している。
今回は、一部店舗でテスト販売中の「お店で焼いたシリーズ」を7NOWによって最短20分で配送する取り組みを進めている。そのメインとなる商材「お店で焼いたピザ」のお届けを首都圏30店舗で実施してきた。8月には首都圏と九州、北海道エリアを合わせて200店舗体制に持っていく。
商品は「マルゲリータ」780円(税込、以下同)と「照り焼きチキン」880円、この価格は店頭価格で、7NOWでのお届け商品には1〜2割程度の上乗せした金額を設定、さらに配送料110〜550円としている。大きさは宅配専門チェーンのSとMサイズの中間くらいで、およそ1〜2人分を想定している。
合わせて「お店で焼いたベーカリー」も、東北6県と茨城県、首都圏(1都3県)、東海3県、九州7県の840店舗(6月末)で実証実験している。商品はメロンパン、クロワッサン、チョコクロワッサン、カスタードデニッシュ、フィナンシェ、チョコクッキーがある。ベーカリーに使用する焼成オーブンはピザと共用できる。
そもそもなぜ「お店で焼いたピザ」なのか?
第1に7NOWの売れ筋の動向が理由にある。セブン−イレブンによると、7NOWの売れ筋単品トップ20を見ると、揚げ物が多く含まれているという。アメリカンドッグ、コロッケ、ななチキ、からあげ棒、揚げ鶏といった商品が上位にあり、店内で揚げた、いわゆる“アツアツ”の商品への要望が高いと認識している。そこで今回、「店内で焼く」という結論に至った。
第2の理由は7NOWの全国展開というタイミングにある。
商品開発を担当したセブン−イレブン・ジャパン商品本部次世代商品開発シニアマーチャンダイザーの赤松稔也氏は次のような経緯を語る。
「セブン−イレブンは、2008年にカウンター調理(フライヤー)商品の販売を開始、2013年に淹れたてのセブンカフェを導入、そして今回2024年に本格的なピザの開発が可能となり、この焼きたての象徴であるピザを、7NOWでお届けできるタイミングで打って出たいと考えました。」
恐らく7NOWの全国展開が完了した後、大掛かりな販促を掛けていくであろう。その際の象徴的な商品がマーケットでもなじみのあるピザなのである。
第3の理由に協力ベンダーの育成がある。ピザの供給はセブンプレミアムゴールド「金のマルゲリータ」(冷凍)と同じメーカーが担っている。このメーカーは、セブン−イレブン専用の工場を稼働させて、セブン−イレブンに商品を供給している。こうしたベンダーの協力があって「お店で焼いたピザ」を実現させている。
「金のマルゲリータ」は、家庭でのレンジアップを前提にした、パリッとした薄い生地を採用している。一方で「お店で焼いたピザ」は焼成後の時間を考慮して、もっちりとした食感を残した。多少冷めても、おいしく食べられる仕上がりにしている。お客がどのような環境で口に運ぶのかを今後も注視しながら改良を加えていくという。
第4の理由にデリバリーピザのマーケットにある。
日本の外食産業において、近代的なデリバリーサービスは、米国ドミノ・ピザ社とエリアフランチャイズ契約を締結し、1985年9月に日本法人(ワイ・ヒガコーポレーション)が始めたピザの宅配である。それまでは、そば店や中華料理店、寿司店による「出前」はあったが、デリバリーを「専門」とする近代的なサービスはなかった。店内の飲食が提供の基本にあり、出前はその「ついで」に位置付けられていた。
日本のドミノ・ピザは業界常識を打ち破り、デリバリーサービスを基本にした商品とサービス、システム開発を日本の特性に合わせて組んでいった。その後、ドミノ・ピザの成功を契機に、さまざまな業種でデリバリーサービスが生まれていった。セブン−イレブンは、デリバリーサービスの歴史をつくった象徴的な商品「ピザ」に挑戦する。
ピザ宅配の上位3チェーンである、ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハットを合わせると店舗数は約2,000。拠点数から見るとセブン−イレブンの21,566店舗(6月末)の10分の1以下である。セブン−イレブンは宅配専門チェーンと比較しても、はるかに商圏は小さい。「宅配ピザ」の未開拓地に新たなマーケットを築くこともできる。
あるいは上位3チェーンの宅配エリアであっても、宅配ピザをオーダーした経験のない人は多い。一方で7NOWであれば、他の商品の“ついでに”試してみるきっかけにもなる。ピザの市場は子どもから大人まで幅広い。7NOWの利用が多い20代から40代の女性にもマッチする。7NOWとも非常に相性が良いのだ。
7NOWがピザに取り組む上で強みになるのが、店舗で品揃えしている約3,000アイテムの中の商品を一緒にお届けできること。アイスクリーム、冷凍食品、人によっては欠かせないお酒、ドリンク、日用品までピザと一緒に持っていける。
セブン−イレブンが仮に全店規模で「焼きたてのピザ」を提供し、成功していくと、他のコンビニチェーンにも波及していくであろう。
実際に7NOWは、どのようなお客に利用してもらっているのか。実店舗の利用客層は、男性女性がほぼ半々、年代は40代、50代が多い。一方の7NOWは女性比率が65%、年代別では仕事や子育てで忙しい20代、30代、40代が多いことを特徴としている。
7NOWの利用の買われ方の特徴として、客単価が店頭販売の平均752円に対して、7NOWが約3倍の2,234円。買上点数が店頭販売の平均3.22点に対して、7NOWが約2.7倍の8.57点となり、まとめ買いの傾向をつかんでいる。
一方で、7NOWは加盟店の従業員が商品をピックアップする。そのためチェーン本部は「使いやすさ」に対して最大限に注力する。
店舗専用端末の特徴として第1に商品が探しやすいこと。カテゴリー順にピックアップすべき商品が表示されているため、従業員の動きに無駄が生じない。第2に端末に表示された画像の商品をスキャンするだけなので間違いがない。第3に上記端末による商品スキャンにより自動的に店の売上と連携が完了する。
「人手不足の状況下で、本当にこのサービスは、お店に浸透していくのかといった声も(加盟店から)最初はありました。ところが実際に7NOWを導入いただいた後では、こんなに簡単に操作できるんだったら支障はないと好評です」(セブン−イレブン・ジャパン企画本部ラストワンマイル推進部マネジャーの由井大輔氏)
今後も店舗の負担を1秒でも縮めるべく、システムは常に更新していく考えである。
ウーバーイーツは、7NOWのアプリから注文を得たセブン−イレブンの商品を、ウーバーイーツの配達員が届ける「UberDirect(ウーバーダイレクト)」を実施している。これは、取引先企業の自社サイトやアプリで販売する商品を、ウーバーイーツの配達ネットワークを活用することで配達できるサービスである。
セブン−イレブンは、これを7NOWに試験的に導入、ウーバーダイレクトの対応店舗を増加させてきた。セブン−イレブンは、提携する配送業者やウーバーイーツのような配達プラットフォームを複数活用することで、配送エリアを拡大。需要が高まったときのマッチングを、ほぼ100%にしている。それも全国展開を可能とした大きな要素といえるだろう。
Uber Eats Japan(以下、ウーバーイーツ)は、新たなサービス「ピック・パック・ペイ」(以下、PPP)を、イオングループが首都圏で展開する「まいばすけっと」に導入。ウーバーイーツの配達員が従業員に代わり、ピック作業から会計まで行うサービスを、日本で初めて導入する。2024年6月から「まいばすけっと」20店舗でスタートし、2024年12月末までに1,000店での展開を目指していく。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年8月号より転載)
ウーバーイーツについては2019年8月よりコンビニ大手のローソンが導入、レストランメニューの配達メインであったサービスを、いち早く小売業で実現、本年6月23日時点で6,000店舗を突破するなど、徐々に拡大させている。その一方で、少人数で運営する店舗にとって、ピック作業は負荷が大きく、導入が難しい店舗も多く、課題の一つとなってきた。
そこで今回、「まいばすけっと」が取り入れたのが配達員にピック作業から会計までをお任せする方式である。PPPを導入した配達の流れを簡単に説明する。
ウーバーイーツ専用のアプリを起動した配達員は注文者からのリクエストが入るまで待機し、「まいばすけっと」へのリクエストを受け取ると店舗へ向かう。通常であれば飲食店の調理品や、小売店の袋詰めされた商品を受け取り、注文者の住所に向かう。
しかしPPPの場合は、ピック作業から会計までを、配達者自身が店の従業員に代わって行う。この一連の作業を配達員が希望しない場合は、最初の段階でリクエストを拒否することもできる。この後は通常と同様、注文者の住所に向かい、商品を受け渡し、配達を完了させる。
商品の価格は店頭価格に上乗せした金額を注文者に表示する。さらに店舗からの距離や時間、時間帯、天候などで変動するウーバーイーツが定める配達料が加算される。こうした価格設定は、セブン-イレブンが推進する「7NOW(セブンナウ)」と同様である。この新しいサービスのPPPを導入するに当たりウーバーイーツは、配達者による店内作業がスムーズに行われるように、以下の機能を追加した。
①商品(約3,000品目)のバーコードをアプリで読み取り、正しい商品かどうか確認する機能
②商品欠品の際、代替商品を注文者とアプリ上で確認できるチャット機能
③配達者が決済時に使用する、PPP支払い専用のデジタルカード
④PPPの開始をサポートする配達パートナー向け案内機能
⑤店内の商品位置をアプリ上で確認できる商品棚情報連携機能
①は、誤った商品をピックしないように、類似商品をスキャンした場合に、商品の間違いを指摘する機能を搭載。再度、正しい商品を読み込むようにアプリ上で指示が出る。
②は、注文者のオーダー画面と店舗の在庫が連携するものの、厳密にはリアルタイムの連携ではなく、リクエストを受けた後に、配達者が欠品を知るケースもある。その際、代替商品を注文者とチャットで確認できる機能を付けている。
また、注文者がオーダーをする際に、Aが欠品の際は代替商品Bでよいかを事前に登録する機能も加えており、注文者と配達者の互いのストレスを軽減させている。
③について補足すると、配達者は売場でピックする際に、商品のバーコードを読み取る作業、続いて売場のセルフレジ(セルフ優先で、それがなければ有人レジ)で、商品バーコードをかざし、PPP支払い専用のデジタルカードで精算する。
すなわち、バーコードの読み込みが1オーダーにつき2回発生する。課題として、イオングループの食品売場で一部導入しているスマホレジのように、1度のスキャンで精算まで完了するシステムへの移行も、ウーバーイーツ、「まいばすけっと」、イオンの3者での取り組みが必要であろう。
④は、新しい機能なので、配達者へオペレーションの周知徹底を図る必要がある。
⑤は、配達員のストレス緩和に影響は大きい。配達員は男性が多く、コンビニは使い慣れしていても、小型スーパーの「まいばすけっと」に、多くの配達員はなじみが薄い。商品を探す手間を軽減する必要な機能といえる。
ウーバーイーツジャパンは今年8周年を迎える。Uber Eats Japanグロサリー・リテール事業代表のユリア・ブロヴキナ氏によると、同社の取扱高は前年比2ケタの成長を継続しているという。また、2019年に立ち上げたグロサリー・リテール事業は、スーパーマーケット、コンビニ、ドラッグストアと取り引きをして、2023年度に前年比180%を達成、最も成長しているサービスの一つだという。
「PPPが、高齢者や自由に外出できない方々にも食料品をお届けできる食料品アクセス問題の解決の一助になればと思っています。特に人員不足に悩む店舗を念頭に、これまで以上にウーバーイーツのオンラインデリバリーを利用いただけることを期待しています。全国に10万人を擁するウーバーイーツ配達パートナーにとって、PPPは報酬機会が増えることを意味します。すなわち、お客様、加盟店、配達パートナーにとってwin-win-win、いわば三方良しのサービスといえるのです」(ユリア・ブロヴキナ氏)
一方、PPPを導入する「まいばすけっと」に関して、イオンDX推進担当の菓子豊文氏は次のような意義を語る。
「イオンでは、『イオン生活圏の創造』と『デジタルシフトの加速と進化』を中期経営計画に掲げ、その一環としてデジタル売上の拡大を進めています。今回、クイックコマース分野での取り組みも加速させ、今後はグループトータルアプリ『iAEON』とも連携を図り、店舗・デジタルが融合されたシームレスな体験をお客様に提供します」
現在、イオングループでは、イオンネットスーパー「おうちでイオン」やオンラインマーケット「Green Baens(グリーンビーンズ)」などに取り組んでいる。
しかしながら、イオングループのEコマースの売上高構成比が10%に届いていない事業会社が多い。イオンリテールの食品売上で10%を超えた程度であり、グループとして20%はEコマースで確保しないと将来的に厳しくなるという危機感を抱いている。
今回のPPPはクイックコマースに位置付けられる。例えば急に体調を崩して買物に出られない利用者に対して、「まいばすけっと」から生鮮品や日配品を即座に提供できる。クイックコマースの利点である。一方で、計画的な商品の購入であれば「おうちでイオン」、東京都内の広い範囲であれば「グリーンビーンズ」といった選択肢を提案している。
「こうした取り組みが複層的に重なり、つながり合うことで、地域の生活者を起点として商品・サービスなどをシームレスに提供して『イオン生活圏の創造』を実現していきます」(菓子氏)
チェーンストアが実現する生活の豊かさは、買物における選択肢の多さとつながっている。価格帯や品種、品目、立地、コンビニ以降は時間帯が加わり、近年はEコマースへと広がり、リアルとネットをシームレスにつなげる“生活圏の創造”をイオンは推進している。
今回、PPPを導入した「まいばすけっと」は2005年に創業して以来、1,154店舗(6月26日時点)を展開、東京、神奈川を中心に2021年に千葉県と埼玉県に進出を果たしている。店舗面積は40坪〜80坪、3,500アイテムをそろえている。生鮮品と加工食品の構成比の高さから小型スーパーに分類されるが、営業時間が朝7時から24時までの店舗が多く、おにぎり、米飯弁当、サンドイッチ、調理麺を扱うことからコンビニ的な使われ方をしている。
2024年2月期の売上高は2,578億1,900万円(対前期比115.8%)、営業利益74億8,600万円(同396.5%)となり、売上高、営業利益ともに過去最高を出している。イオン取締役兼代表執行役社長の吉田昭夫氏は次のように評価する。
「『まいばすけっと』は、居住地からの至近性と、継続的に行ってきたオペレーションの最適化、そしてPB『ベストプライス』の安さから提供価値を高めている。今後は開発体制をさらに強化して出店を加速、首都圏でのシェアアップを早めていく」
平均日販は筆者推計64万8,000円(2024年2月期)、セブン−イレブンの69万1,000円(同)に迫る勢いで伸長している。「まいばすけっと」がPPPでどれだけ上乗せできるか、開発体制の強化とともに都市生活者のクイックコマース市場に訴えていく。
ミニストップ創業以来の「ファストフード」と「コンビニエンス」を融合したコンボストアを展開しているが、コロナ禍を経た現在の環境変化や多様なニーズに応えるため、さまざまなチャレンジを集めた「ニューコンボストア」(ミニストップ神田錦町1丁目店)をオープンした。ミニストップによる次世代のコンビニづくりの全容をリポートする。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)
ミニストップは、コンビニ大手3チェーンの次に来る中堅チェーンに位置付けられる。店舗数は国内1,856店舗(2024年2月末、以下同)、国内チェーン全店売上高は2,830億3,400万円。セブン−イレブンの国内2万1,535店舗と比較すると店舗数は10分の1以下であり、イオンを親会社に持つコンビニとしては、物足りないことは確かである。
セブン−イレブンの1号店は1974年5月、本年で半世紀を迎えた。一方のミニストップは1980年7月にジャスコ(現イオン)を母体にスタート、このときセブン−イレブンは既に1,000店舗を突破しており、「同じフォーマットで勝負するには出遅れた」と判断、別のフォーマットを模索する中で「コンボストア」を開発した。コンボとは組み合わせを意味し、ミニストップは「コンビニ+ファストフード(FF)」の新しい店づくりで他チェーンと差別化を試みた。
当時の資料を見ると、1号店のミニストップ大倉山店(横浜市・港北区)は、コンビニの売場とFFの売場を明確に分けて、レジを別々にして設置して運営していた。FFの売場には客席を設けて、ポークハムサンド(200円)、チキンサンド(250円)などを提供していた。
確かに「出来たて」の提供により、おいしさで優位性を発揮したかもしれない。買物だけではなく、店内飲食の利用動機も取り込めた。その一方で、設備投資の大きさ、作業人員の多さ、厨房を含めた店舗面積の広さなどが重しとなった。従業員教育にも時間を要して、出店速度も他チェーンに後れをとった。
その後、FFの売場やイートインを徐々に縮小して、規模的には大手3チェーンと大差のないレベルに落ち着かせている。それでも厨房設備はしっかりと残して、他チェーンでは提供できない商品を数多く提供してきた。
中でも、「ハロハロ」シリーズなど店内で製造するコールドスイーツは人気で、7月、8月の夏休み期間には、順番待ちの子どもたちが店内にあふれかえる様子は、夏のコンビニ風物詩といわれるまでになった。
寡占化が進んだコンビニ業態にあって、現在でもミニストップが一定のポジションでチェーン展開できている理由は、このようなコンボストアのフォーマットに依るところが大きいといえる。
ミニストップは、2023年度より「ニューコンボストアモデル」の確立に向けて、商品改革やオペレーション改革を推進している。
「お客様のニーズや生活スタイル、価値観の変化が急速に進む今、提供価値の定義も進化させなければならない。コンボストアを構成する2つの要素、FFとCVSのそれぞれを磨き上げ、魅力的にしていくことが、ニューコンボストアの取り組みであり、この提供価値を引き上げることで社会課題の解決につなげていく」(ミニストップ 藤本明裕 代表取締役社長)
2023年度には、先行モデル店舗にて成果を実証した売場づくりや取り組みを「成功カセット」と呼んで、既存店への導入を推進している。ラーメンや菓子・スナック、ホビーなどの雑貨をはじめとする計76の成功カセットで売上を押し上げたという。
さらに、今期2024年度には、これまで新規事業として取り組んできた、Eコマースやクイックコマース、アプリや職域事業(オフィスに設置するミニコンビニ)の機能を統合させてOMOを実現していく。
そうした新たな売場づくりや「成功カセット」を集約させた直営のフラッグシップ店舗「ミニストップ神田錦町1丁目店」(東京・千代田区)を2024年5月20日に既存店をリニューアルオープンしている。ここで実現された売場を、立地特性、商圏特性に応じて既存のミニストップへ導入を図っていく。
この神田錦町1丁目店の特徴を大きく分類すると4つある。
第1にFFの世界観。具体的には、入り口正面にFF専用のカウンターを配置したこと。ここではキオスク端末を設置、モバイルオーダーにも対応、フルセルフで簡単に注文を受けられるようにした。出来たての商品を直接お客に渡す「対面提供」にこだわっている。売場全体の省人化を進める一方で、有人スペースとしての価値を高めていく。
第2に専門店品質のFF。「創業から45年間、培ってきたノウハウを結集して、出来たての商品を専門店品質でスピーディーに提供する。全粒粉といった素材へのこだわり、野菜をふんだんに使用するなど、おいしさに健康の価値を加えていく。商品価値の訴求や提供方法も一新して、ミニストップが目指すFFの世界感を体験いただく」(藤本社長)
商品内容については、ツーオーダー(注文を受けてから作る)で提供する「ホットドッグ」(199円税抜き、以下同)を主食の核商品とした。ドッグパンは北米産主体のフランスパン専用粉とオリジナルブレンドの強力粉を使用し、国内工場で生産。そこに、あらびきポーク100%のソーセージを挟んでいる。
カウンターコーヒーは、加圧設定により多様な味が可能なエスプレッソマシンで提供。カフェラテはエスプレッソマシンで抽出。また周辺がオフィス街であるため、大人数向けポットサービスも用意している。
ミニストップはソフトクリーム専門店「MINI SOF(ミニソフ)」を展開しているが、そこで人気のスイーツドリンク「シェイクソフト」(いちご、マンゴー、バナナ、各540円)を主力商品として訴求、お客がシェイクする回数により食感が変わるといった楽しさを提供している。
また野菜を多く含んだサラダラップ(390円)、カンパーニュ(490円)、野菜のポタージュ(熊本県産にんじん、北海道産たまねぎ、各250円)などで健康を訴求している。
第3の特徴はコンビニ売場における「ワンストップショッピング」と「ショートタイムショッピング」。
既存店の品揃えと比較して、スーパーマーケット型の商材を拡充、お値打ち価格で訴求する。キャッシュレス化、フルセルフ化を通じて、新たなコンビニとしてのワンストップかつショートタイムのショッピングを提供していく。
「今の時代のコンビニは、即食需要だけではなく、暮らしの品を拡充して、お手軽価格で提供することでワンストップショッピングが求められている。買い回りしやすさを重視したレイアウトと、キャッシュレス対応、フルセルフレジ導入によるショートタイムショッピングも実現している」(藤本社長)
お手軽価格については、イオングループのPB「トップバリュ」商品を既存店の1.5倍にあたる1,000アイテム以上を導入、神田錦町1丁目店の全3,500アイテムのうち構成比で3割以上と品揃えを拡大している。
スーパーマーケット型の品揃えに関しては、農産70アイテム、畜産30、水産20の生鮮計120アイテムとした。畜産と水産はグループ企業「イオンフードサプライ」のプロセスセンターを活用、農産についてはグループと取引のある青果卸しから仕入れている。
第4にOMOの実現。ミニストップアプリ(160万ダウンロード、4月末時点)を媒介に、リアル店舗とデジタルを融合させていく。アプリでは購買分析からクーポンを配信、プレミアム会員にはロイヤルティプログラムを実施している。
Eコマースは、商品の自宅での受け取り、あるいは店頭での受け取りなどを可能にして、店外には留め置きロッカーも設置している。店舗から商品をお届けするクイックコマースは、これまで取り扱って来なかった即食カテゴリーの拡充の他、品切れを防止するオペレーション体制の確立を進めている。
コンビニ各社はミニストップに限らず、次世代の業態の在り方を模索、改革を進めているところである。セブン−イレブンも未来志向店舗「SIPストア」をオープンしている。各社はコロナ禍で加速した人々の意識と行動の変容にスピードを持って対応していく。