登録販売者会会長 横山英昭氏の記者会見報告から

「濫用目的の医薬品購入は十分に抑止効果を高められる」登録販売者会 横山会長記者会見より

6月14日(金)、一般社団法人日本医薬品登録販売者会は、定期総会を開催。任期満了に伴いコスモス薬品社長の横山英昭氏を新会長に選任した。ここでは、同日開催された記者会見から、医薬品販売制度見直しを中心に横山氏の発言を紹介する。(月刊マーチャンダイジング2024年12月号より転載)

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会の名称を変更。職能団体としての位置付け強化

総会では、団体名を従来の「一般社団法人日本医薬品登録販売者協会」から「一般社団法人日本医薬品登録販売者会(略称:登録販売者会/日登会)」に変更、医師会、薬剤師会など既存の職能団体のように「資格名+会」というシンプルな名称にして、職能団体としての位置付けをより明確にした。

一般社団法人日本医薬品登録販売者会

また、記者会見冒頭、横山会長は登録販売者会の存立の意義や課題感に関して、以下の3項目を発表した。

「一般社団法人日本医薬品登録販売者会は『すべての登録販売者の資質向上、業務支援、社会的地位の向上及び登録販売者の目指す方への育成支援』を積極的に取り組む職能団体です」

「登録販売者はセルフメディケーション推進の要として、国民の皆様の健康増進のため、重要な機能を担っています」

「一方で、2024年1月12日に『とりまとめ』が公表された『医薬品の販売制度に関する検討会』並びに、2025年度薬機法改正を見据えた『厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会』の議論において、セルフメディケーション推進に逆行する法改正が検討されていることに、強い懸念を感じています」

登録販売者がセルフメディケーションを推進することを改めて強調したのと同時に、検討会の中で協議されている濫用等のおそれのある医薬品の販売の見直しが、登録販売者会としても懸念の対象であることを明らかにした。

濫用問題は登録販売者が関与して適正販売に努めるべき

[図表1]濫用等の恐れのある医薬品の販売制度に関する意見

横山会長がまず問題視するのは、「購入者の個人情報の記録と保管」。これが義務化されれば、登録販売者は当該商品の販売のたびに作業に追われ、本来の仕事である情報提供や接客が十分にできなくなることが大いに考えられ、そうなればオーバードーズ問題はさらに悪化する危険性もあると語る。

さらに、「個人情報の記録と保管にいくら努めても、他のドラッグストア(DgS)で購入すればこれを防ぐことはできない。不正使用者のアクセスを阻害する手段にはなるが、買い回りにより頻回購入の阻止に対する実効性があまりにも低いのではないか。こういう改正に対しては反対する」と続けた。

また、「『直接購入者の手に届く場所に陳列しないこと』が実施されれば、広く使われている風邪薬、鎮咳薬、鼻炎薬、解熱鎮痛剤など買いにくくなることも問題だという認識を持っている。大多数の適正利用者にものすごく不便なルールとなる。利便性を失ってはいけない」とも発言した。

こうした対策ではなく登録販売者がしっかり管理すれば、相当な抑止効果が生まれる。濫用の恐れのある医薬品の購入に関しては、氏名、年齢が分かる顔写真付きの公的身分証明書の提示は求めるが、記録保管は負担が大きすぎるという見解も示した。

[図表2]横山会長が「決意表明」として読み上げた文書

記者からの質問と回答

部会には引き続き意見を訴え続ける登録販売者不要論には明確に反対

─薬機法の改正までそれほど時間はないと思うが、登録販売者会の方針をどのように具体化するのか、アプローチ、スケジュールのイメージを知りたい。

横山 医薬品販売制度に関する検討会に、登録販売者会の理事、関係者は委員として呼ばれなかった。

これに関しては不満がある。昨年検討会は終了し、今年1月にとりまとめが発表されたが、これに関しては登録販売者会の理事として厚生労働省に意見を具申した。

示されているルール変更では登録販売者が作業に忙殺されてオーバードーズ問題はさらに大きくなるのではないかと申し上げた。医薬品医療機器制度部会は現在も審議を続けており、われわれがこの部会に呼ばれることはないが、今後も訴え続けたい。

─濫用の恐れのある医薬品の販売規制に反対して、社会的な批判を受けるというリスクは感じないか。

横山 濫用については、販売店、登録販売者だけで防げるものではないと思う。コロナ禍で濫用者が増えたという発言が検討会でもあったが、社会状況、家庭環境、さらには医薬品の教育も含めてこの問題は社会全体で取り組むべきだと思う。販売店も購入者に対してはしっかりと説明する。

しかし、販売制度を変更して1店舗では1個しか買えなくても買い回りを防ぐことは難しい。とくに東京などは近距離内にDgSが多数ある。とりまとめの内容はかける努力と効果のバランスが非常に良くない政策だと感じており、これに関しては反対している。

─オーバードーズ問題で仮に死亡者が出ると、販売規制に反対の立場を取っていることで批判を受けることにはならないか。

横山 部会の中でも(オーバードーズによる)被害に関するデータを出してほしいという意見があったが、正式なものは挙がってこない。オーバードーズという現象にはしっかり対策は取る。

しかし、オーバードーズという言葉が独り歩きをして、エピソードだけが出てきてエビデンスが具体的に出てきていない。エビデンスが出てくればわれわれも相応の対応を取るが、イメージや印象だけで規制が強化されることになるのはいかがなものかと思う。

─資格者がいる「管理店舗」があれば、周辺の「受渡店舗」では資格者がいなくても医薬品の販売ができるという考えも示されているが、これをどう思うか。

横山 管理店舗、受渡店舗ということに関して厚労省は具体的なことはまだ説明していない。

いずれにしてもルールの変更が登録販売者をないがしろにするようなものであれば反対する。今の段階では法律をどう変えるか正式なものが出ていないのでなんとも言えないが、登録販売者をないがしろにするような内容には反対する。

─検討会でテレビ電話などオンラインによる情報提供などの話も出ており、これは元々コンビニ業界からの要望だったと記憶している。遠隔販売も含めてコンビニ業界にはどう対応していくか。

横山 コンビニと対峙するとか、そういう考えはない。ただ、登録販売者をないがしろにする考えには反対する。コンビニが登録販売者を尊重するならウェルカム、登録販売者なんていなくてもいいという考えなら、それは受け入れることはできない。

─ないがしろの具体的な意味は?

横山 登録販売者はいなくてもいいという不要論につながるようなことを意味している。