リモート接客最前線「RURA」の接客革新

遠隔接客システム「RURA(ルーラ)」を展開するタイムリープ社は様々な業種の業務効率化を実現し急成長を遂げている。2024年の東洋経済の「すごいベンチャー100」に選出され、業界の注目を集めている同社が今後の法改正が見込まれるOTC医薬品の遠隔販売解禁を見据え、人手不足解消と専門性の高い接客の両立をどのように目指すのか、望月代表にその戦略を聞いた。(月刊マーチャンダイジング2025年1月号より転載)

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急成長するタイムリープ社

2019年6月の設立以来、遠隔接客システム「RURA」を軸に急成長を遂げているタイムリープ社。ジャフコグループやセーフィー社、グローリー社など有力企業からの出資を受け、この資金力を背景に同社は着実な成長戦略を展開している。

特筆すべきは、創業からわずか5年で遠隔接客ソリューション市場をリードする存在に急成長した点だ。

2020年10月には東京都主催のASAC AI.Accelerator賞を受賞し、2021年3月には経済産業省主催のNEW NORMAL LABに選出。さらに2023年にはICCサミット KYOTO 2023 SaaS RISING STAR CATAPULTで3位に入賞するなど、その革新性は各方面から高い評価を受けている。

多方面における導入実績が示すRURAの汎用性

RURAの最大の特徴は、店舗の省人化を実現しながら質の高い接客体験を提供できる点にある。実際に数十店舗を4名で接客するという驚異的な実績も生み出している。この効率性は、単なる人件費削減にとどまらず、接客品質の標準化と向上にも貢献している。

複合カフェの「自遊空間」の受付、遠隔接客でお客を希望のメニューに案内する

導入実績は多岐に渡る。漫画、ビリヤードなどが一体化した複合カフェの「自遊空間」では24時間営業の安定稼働に貢献し、JR東日本「ホテルメッツ」ではフロント業務の効率化を実現。スルガ銀行では窓口業務の待ち時間削減に成功し、玉川高島屋ではインフォメーションカウンターにおいて質の高い案内を可能にした。

また立命館大学ではキャンパス案内や入試相談の効率化を実現し、観光分野ではJTBが導入し接客のセントラル化を実現している。

これらの導入事例から見えてくるのは、RURAの汎用性の高さだ。業種や用途に応じて柔軟に対応可能な設計思想により、様々な現場のニーズに対応できている。特に注目すべきは、接客品質の向上と業務効率化を両立させている点だ。

RURAの多彩な機能が実現するユーザー体験

RURAによる遠隔接客のユーザー体験のはじまりは大きく分けて二つのパターンがある。一つは顧客が自らRURAに近づき操作を開始する方法で、もう一つは遠隔スタッフが状況を判断して顧客に対して能動的に声がけを行う方法だ。

特に後者は、顧客満足度向上において大きな効果を発揮している。遠隔スタッフは、RURAに搭載されている高精度カメラを通じて来店客の表情や動きを確認し、操作に困っている、話しかけるスタッフを探している、などの状況をリアルタイムで随時把握しながら、適切なタイミングで声がけを行う。これにより、対面での接客と同等もしくはそれ以上に相手のニーズに寄り添った細やかな対応が可能になる。

遠隔接客の管理画面、複数の画面でもお客の動きを察知しやすく反応しやすく設計されている

運用管理・改善の点では、待機中の店舗状況確認から、呼び出し対応、接客、分析までの一連のプロセスをシームレスに管理することが可能だ。特に接客分析機能は、店舗やスタッフごとの接客件数や対応を可視化し改善活動に役立てることでサービス品質の向上に寄与している。具体的には、接客時間、応答速度、顧客満足度などの指標を総合的に分析し、スタッフの教育や業務改善のPDCAを回すことが可能だ。

技術面での特徴としては、高品質な映像・音声通信を実現する独自の通信プロトコルを採用し安定した接客環境を実現するとともに、多言語対応の翻訳・字幕機能(有償オプション)により、インバウンド需要への対応も可能だ。また、各種手続きをサポートする手元カメラ機能は、遠隔からの書類の確認や商品説明時に威力を発揮する。

必要に応じてアバター接客機能も提供可能だが、これまでの運用実績から、人による接客がより高い顧客満足度につながることが明らかになっているので、クライアントにはアニメーションのアバターではなく、あくまでもスタッフが顔出しで接客を推奨しているということだ。

OTC医薬品遠隔販売の法改正に向けて

このようにドラッグストア(DgS)以外の業種では確かな成果を挙げているRURAだが、DgS業界についてはどのような形で活用すべきであろうか。望月代表は政府が打ち出しているOTC医薬品の遠隔販売に関する法改正がドラッグ業界における活用の大きな転機と見ている。

2022年12月、政府のデジタル臨時行政調査会は、医薬品販売におけるデジタル技術活用の方針を示した。この方針は、深刻化する地方での薬剤師不足や、高齢化社会における医薬品アクセスの課題に対応するものだ。具体的には、販売店舗と設備、有資格者の分散配置を可能とする制度設計の検討を開始し、2024年6月までに結論を得る方針を打ち出した。

この動きを受けて2024年1月には、医薬品の販売制度に関する検討会が重要な提言をまとめた。医師会、薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会など、業界の主要なステークホルダーが参画したこの検討会では、遠隔での医薬品の説明や健康相談の実現可能性について詳細な議論が行われた。

その結果、有資格者とのオンラインによる情報提供・相談により、資格者が常駐しない店舗でのOTC薬購入が可能になるという考えが示されている。

提言内容は、薬剤師等が常駐しない店舗(受渡店舗)での医薬品の保管や受け渡しを、管理店舗の薬剤師等による遠隔管理のもとで可能とするもので、具体的には遠隔接客後に「確認証」を発行、この確認証をもとに医薬品の受け渡しを行うというものだ(図表1)。

[図表1]リモート情報提供を使ったOTC薬販売の販売イメージ

現在、詳細については継続的に議論が行われているが、遠隔による情報提供・相談を前提としたOTC販売が解禁されるのは有力視されており、解禁されれば、薬剤師、登録販売者の勤務形態や必要な設備、業務フローも変化する。

 

タイムリープ社の望月代表のインタビューを含む本記事の全文は、月刊マーチャンダイジング2025年1月号に掲載されています。

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