NFI定例セミナー「DX活用の業務改革・生産性向上 最新フード&ドラッグの事例研究」(2023/11/15 13:00~16:10)開催ご案内(リアル・リモート)

11月の定例セミナーは、月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木 桂一氏をゲスト講師に招き、「DX活用の業務改革と生産性向上」というテーマで講演をお願いします。また、DXを活用した業務改革の最前線を整理し、フード&ドラッグなどの注目の新業態の最新事例も紹介します。

2023年11月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。

今回は、月刊MDで連載中のリテイリングワークスの佐々木 桂一氏をゲスト講師に招き、「DX活用の業務改革と生産性向上」というテーマで講演をお願いします。

佐々木 桂一氏はダイエー出身で、ジェーソン代表取締役、大黒天物産の取締役副社長、富士薬品(セイムス)の専務取締役を歴任した人物です。

現在は、小売業の「経営」「現場」「情報システム」のすべてがわかるコンサルタントとして活躍中です。

また、DXを活用した業務改革の最前線を整理して紹介します。

さらに、フード&ドラッグなどの注目の新業態の最新事例を解説。食品のラインロビングだけでなくて、DXを活用した生産性の向上事例も解説します。

重要なテーマですので、ぜひご参加ください。

※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。

開催概要

・開催日:2023年11月15日(水)13:00~16:10(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。

・会場:エッサム神田ホール1号館6階(601)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2023年11月6日(月)

スケジュール

[第1講座]
注目の新業態の最新事例研究

[13時~14時30分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

■ 最新フード&ドラッグの事例研究
■ 注目の新業態の事例研究
■ DXを活用した業務改革と生産性向上の事例研究 その他

[第2講座]
DX活用の業務改革・生産性向上

[14時40分頃~16時10分頃]

リテイリングワークス株式会社代表取締役 佐々木 桂一氏

■ 「現場に情報を与えよ」ウォルマートの情報システム戦略
■ MD工程の可視化、データに基づいたデータドリブン経営への転換
■ データウエアハウス構築の考え方
■ 情報技術を活用した強い「組織づくり」   その他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

会場案内図

会場詳細

〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館6階(601)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1

【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分

注意事項

①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)

③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。11月10日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

我々に気づきと勇気を与えてくれる月刊MD

月刊マーチャンダイジングにゆかりのある経営者の皆様から、創刊25周年を記念してお祝いの言葉をいただきました。今回は、株式会社キリン堂ホールディングス 代表取締役社長 執行役員 寺西 豊彦氏のコメントをご紹介します!

「少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず」

思い起こせば、商業界の月刊「販売革新」の編集記者を経て、日野眞克青年は21世紀に通用する流通システムの構築を目指して、流通向け専門誌「月刊マーチャンダイジング」を創刊されました。そして今年で25周年を迎えられました。この25年間の功績に対し、心より敬服申し上げるとともにお慶び申し上げます。

創立間もないころより、多方面での勉強会や研究会でお会いすることはもちろんのこと、弊社の店舗取材にも来ていただき多くの気付きと学びをいただきました。寸暇を惜しんでのアグレッシブな取材の時の目の輝きと学ぶ姿勢がまぶしかったことを忘れることはできません。

先日もご来社いただき、これからのドラッグストアの在り方、業界の動向、売場の楽しさと可能性等のお話を伺うことができました。その後も店舗取材をいただきましたが、25年の年月が経ったことを忘れてしまうような当時の眼差しが蘇ってきました。

日野先生は月刊誌の発行と並行して、研究会や米国視察研修を企画いただき我々に気づきと勇気を与えていただいております。

また、流通業やドラッグストアを志向する同志・働く仲間のバイブルとして「マーチャンダイジングとマネジメントの教科書」を発刊いただき、思考・行動と仕事の基本や基準となり生かされております。

日野先生におかれましては、これからも激動する業界の現場=取材・インタヴューに時間を惜しまず、業界発展のためにご尽力いただくことを心よりお願い申し上げます。これからも、更に若々しく瑞瑞しくご活躍されることを祈念いたします。

25周年本当におめでとうございます。

 

セブン−イレブンが「SIPストア」をオープン。生鮮三品、冷食等を拡充、新たな利便性を追求

セブン−イレブンが「SIPストア」を2024年2月29日、千葉県松戸市に開設。既存のセブン−イレブン松戸常盤平駅前店をリニューアルした新コンセプト店舗として立ち上げた。創業以来、同一フォーマットで日本一の店舗数と売上高を誇るセブン−イレブン。しかし国内の店舗数の伸びは鈍化している。それに代わる次世代店舗として、果たしてチェーン展開できるのか注目を集めている。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年4月号より転載)

事業会社のリソースを活用して平均日販70万円をさらに伸ばす

このSIPストア(セブン−イレブン松戸常盤平駅前店)は、売場面積が88坪で、通常のセブン−イレブン(約45坪)の1.8倍、SKU数は5,300で、通常3,300の1.6倍、店舗運営に要する人時数は通常の約1.5倍と、既存店を拡充した店舗となった。

2022年8月、セブン−イレブン・ジャパン(SEJ)とイトーヨーカ堂(IY)は「SEJ・IY・パートナーシップ(通称SIP)」を結び、商品やサービスにおける相互供給、アプリを通じた相互送客などの販売促進などをテーマにシナジーの最大化を図ってきた。

さらに翌2023年3月、セブン&アイ・ホールディングス社長の井阪隆一氏は、商品や販促のみならず、シナジーを発揮するSIPストアの開発計画を発表した。

セブン−イレブンは1974年5月に1号店をオープン以来、特殊立地の小型店を除けば、基本は同一フォーマットである。それが創業から半世紀を経て、店舗面積や品揃えが異なる、新たなコンセプトを取り入れた店舗を開発すると聞いて、筆者はセブン50年目の「新フォーマット」として注目してきた。

一方、今回のオープンに先立ち、記者会見に臨んだプロジェクトリーダーを務める山口圭介氏(セブン−イレブン・ジャパン執行役員 企画本部ラボストア企画部)によれば、考え方として「新フォーマット」ではないとする見解を述べている。

「次世代のセブン−イレブンを模索することが主旨。(既存店1店舗の)平均日販は70万円くらいだが、取り込めていないニーズがある以上、まだまだ伸びるはず。あらゆる事業会社のリソースを活用したときに、どのくらい変わるのだろうか。それを知るための手段としてSIPストアがある。SIPストア自体のフォーマットが、何らかの完成形として拡大していく主旨ではない」

山口氏によると、この取り組みで得たい成果として、一つは「全体最適」につながる検証。将来的に「あるべき大きさ」はどのくらい必要なのか、SIPストアをもとに研究開発していく。もう一つは「部分最適」情報の獲得。水平展開できる、新たな商品・売り方を見つけていく。

二つをまとめると、今後の新たなセブン−イレブンの、あるべき姿を検討していくため、通常店舗よりも売場面積を広げ、品揃えの拡大を図ったと考えてよい。

今回のSIPストアについては、普段の「食」を中心に検証するため、事業所立地とか街道立地ではなく、住宅立地を対象とした。加えてセブン−イレブンの持つ物流・商流を、そのままでは使えなかったので、新たな物流拠点から配送できる店舗を、1都3県の直営店舗の中から探した結果、松戸常盤平駅前店をリニューアルして使用することとした。

しゃぶしゃぶ用や焼肉用などの加工方法により季節感を演出

▲店内レイアウトのイメージ

店舗レイアウトを見ていく。図表中、もともと左側3分の1程度の売場面積に会議室を併設していたが、これを潰して売場に組み込んだ。また、駅の乗降客の導線となるので、店舗の左側に入り口を設けている。

店内の右側「オリジナルフレッシュフード・飲料」には、セブン−イレブンの米飯や惣菜、麺類、サンドイッチといった既存の主力部門を配置、食事と一緒に楽しむスイーツは、洋菓子、和菓子の各々チルドや常温、アイスクリームも含めてエリア化した。

今回、強みにしたのが店舗の4割くらいを占める左側の売場である。IYから集めたり、新規に投入した食品で構成している。セブンプレミアムのデリカテッセンに加えて、生鮮三品、日配品、冷凍食品、調味料、加工食品を充実させている。

カウンターでは、フライヤー(揚げ物)、おでんといった既存店で扱う商品に加えて、セブンカフェでは、デカフェ(カフェインレス)のマシーンを初めて導入、5店舗目になるセブンティー(紅茶)もマシーンを設置、また数店舗で実験している焼きたてパン、焼きたてピザも品揃えしている。

通常のセブン−イレブンと比較して、1.6倍に拡充した2,000SKUは、どのような構成になるのか。これまで全く経験のない品揃えに臨むため、IYの食品事業部から生鮮品やグロサリーのチームと連携した。さらに非食品分野では、グループのロフトやアカチャンホンポの商品を含めてラインナップしている。

アカチャンホンポの商品で売場を構成。近隣は高齢化が進むが、逆に幼児用の商品の買い場が少ないため、あえて売場を広く確保した

増えた2,000SKUの内訳は比率にすると、デイリー品・冷凍食品が33.5%、雑貨29.4%、加工食品が19.3%、菓子・アイスが15.0%、酒類が2.8%となった。

IYの食品を導入することでデイリー品・冷凍食品のSKUが大きく伸長、またロフトやアカチャンホンポの商品により、雑貨の比率も高くなった。

今日のファストフードだけでなく明日、明後日の利便性を提供

今回、新規に導入した食品の中でセブン−イレブンとの違いを際立たせているのが生鮮三品である。鮮魚と精肉の取り扱いについては、2023年3月に稼働したグループの「Peace Deli流山キッチン」を活用。ここでは生鮮品の加工やミールキットなどを製造している。

鮮魚では、食卓への出現頻度が高い魚種を選定、刺身は2点盛を中心とした品揃えの他、時短・簡単調理の漬魚も品揃えしている。精肉では、料理用途に応じた牛肉、豚肉、鶏肉を品揃え。しゃぶしゃぶ用や焼肉用などの加工方法により、売場の季節感を演出している。量目は少人数や単身世帯を意識している。

面積的には中食と内食をフォローできるので、簡単に済ませたい調理、もしくは、しっかり料理したいニーズにも応えている。例えば、今までの緊急需要に対応した調味料売場ではなく、幅を広げた品揃えで臨んでいる。野菜や肉の基本食材を扱うため、食材を指定した合わせ調味料も広く品揃えすることができた。

野菜はカレーや炒め物、煮物に使えるアイテムの他、チルドケースではカット野菜を充実させて時短ニーズに対応している

冷凍食品については既存店の80~85SKUから263SKUへ拡充させた。PB「セブンプレミアム」やIYが開発した「EASE UP」に加えて、米飯、和洋中麺類、惣菜、ペストリー、デザートなど幅広いカテゴリーをそろえている。

新規に導入した冷凍食品はPBにこだわらず、逆にNBの人気商品を積極的に導入することで、今後の自社によるPB開発に活かしていきたいとしている。

チルド商品については、大幅に売場を拡大、通路を挟む形でチルドケースを配置して、買い回りしやすいレイアウト展開に注力した。中食ニーズに対応し、大容量のカット野菜や、簡便性や保存性が高い水煮野菜を拡充するなどIYなどで取り扱う、価格訴求の強い「セブン・ザ・プライス」を拡大している。

グループ商品の展開としてアカチャンホンポと連携して液体ミルクなどのベビー用品や、産前産後にニーズのある商品を約200アイテム品揃えした。またロフトと連携して日常使いの雑貨を提案、ロフトセレクトによる、韓国コスメや入浴剤、フェースケア、ヘアケア用品など約90種類を品揃えした。

既存店では、ダイソー商品について(ゴミ袋など)消耗品を中心に扱っているが、ここでは計量カップやピーラー、泡立て器といったキッチン商品を販売する。

山口氏は「明日の朝食用として、焼くだけでおいしく食べられる魚や、明後日の昼食に利用する冷凍食品、これらを今日の即食用のファストフードと同時に買える場を、お客様に提供していく。その際、どんな反応を得られるのか」とトップライン(売上高)伸長の期待を込める。

多様化する無人店舗のデジタル技術が都市部と過疎地、双方で利便性に貢献

米国店舗「Amazon Go」の一般公開から6年余りが経過。同店舗が提供する、売場内でマイバッグに商品を放り込み、レジ精算に従業員を必要とせず、足早に買物を済ませられる、最新デジタル技術を駆使した新しい買物体験は、日本の小売業にも少なからずの影響を与えてきた。この「無人店舗化」の技術はどこまで進んだのか。そして未来のマーケットで、どう活用されていくのか、最新事例から探る。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年3月号より転載)

スーパーマーケットの撤退が地域の食生活に深刻な影響

「無人店舗」は2018年1月に米国で一般公開された「Amazon Go」が嚆矢(初)である。無人であるだけでなく、最新デジタル技術を搭載した未来形の店舗として脚光を浴びた。この「無人店舗」を正確に記すならば「レジなし店舗」になるだろうか。利用客はスマホの専用アプリを立ち上げて入店、歩きながら店内の棚から商品を自分のマイバッグに放り込み、そのままの勢いで退店することができる。

この最新デジタル技術が日本で大きな関心を呼んだ背景には、人手不足と人件費の高騰がある。例えば、コンビニ店舗の人件費のうち、レジ精算業務に占める人件費率は3割から5割程度といわれ、ここに費やされる人時数が削減できれば、店舗経営も楽になると考えられた。経営が楽になれば、従業員の賃金水準も上がるというものだ。

そこで、コロナ禍の2020年頃から日本で拡大が進んだ無人決済店舗の立地と商圏を整理すると、次の3つがある。

(1)歩行者通行量が多いオフィス街や駅構内などの立地

この場合、近隣や同じ施設に「母店」があり、サテライト店のような位置付けにして、1つの有人店舗で、もう1つの無人店舗をカバーしていく方法を取る。現状はたばことアルコールの販売には本人確認が必要とされるので、無人店舗から有人店舗への利用を促す、または同じ施設内であれば決済時に画像モニターで確認する方法をとるなどしている。

(2)特定の人たちが利用する閉鎖立地

休憩スペースを持つ商業施設や物流施設、学校関連施設、一般企業への出店。福利厚生の一環として、施設内に「売店」を設けるところも多い。しかし、企業のコスト削減や、人手不足も相まって旧来の売店を撤退する動きもある。店舗を1人で回している企業内売店では、担当者1人が欠勤しただけで販売業務がストップするところもあり無人化のニーズが高まっていた。

(3)近年課題となっている過疎地域の立地

買物困難者の増加が問題化している。食生活を担ってきたスーパーマーケットやコンビニの撤退が見られ、商勢圏から数店舗が一挙に引き上げる例も報告されている。有人店舗では必要な利益が確保できない過疎の立地であれば、ネットスーパーや移動販売車の稼働の他にも、人件費の負担がほとんどなく、利益が出やすい無人店舗の選択肢も考える必要がある。

商圏の支持率を向上させ買物困難者にも対応する

以上が無人決済店舗の立地と商圏の大まかな分類であるが、その具体的な事例を紹介したい。

第1の「歩行者通行量が多い立地」については、ダイエーとNTTデータが2023年10月27日、横浜駅西口にウォークスルー型の店舗「CATCH&GO」を開設した。

ダイエーとNTTデータによるAmazon Goにも似た、ウォークスルー型の店舗「CATCH&GO」。入り口のゲートでQRコードをかざし、出口のゲートでは何もせずに退店できる

このウォークスルー型の無人店舗は、日本では職域の閉鎖商圏で実例があるが、本格的な路面店での営業は初めてといってよい。イオンフードスタイル横浜西口店に併設した路面店である。売場面積は約15坪とコンビニの半分から3分の1の広さ、取扱品目数が弁当、飲料、菓子など約400品目、目標客数が最大で1日1,000人を目指すとしている。

天井から35台のカメラが利用客とその動きを捕捉、手を伸ばした商品棚をカメラが捉え、手に取った商品を画像および棚に設置した重量センサーで認識する。どの利用客が何の商品を手に取ったかAIが認識しているので、利用客はその場で自身のバッグに商品を入れても構わない。

また、一度手にした商品を棚に戻しても、AIが認識するので普段の買物と同じく、棚に戻すことができる。

買物体験を時間軸でイメージすると、事前登録したアプリを起動させ、QRコードを入り口ゲートにかざして店内に入り、商品をマイバッグに放り込み、止まらずに退店すると「レジ待ち時間」は実質ゼロになる。入店から退店まで最短10秒程度で済む。精算後は購入履歴と購入履歴詳細、領収書の3点がアプリから確認できる。

オペレーションについては、ダイエーが運営するイオンフードスタイル横浜西口店の従業員が担当している。店舗併設にすることで、物流や人時の効率的な運用が叶うとともに、レジに関わる人時やレジを置くスペースの大幅な削減に貢献している。

商品登録は電子レンジくらいの大きさの機械で360度の画像(3Dスキャン)と重量を記録する。その画像と重量をJANコード(商品識別番号)にひも付け、商品を陳列する際に、どの棚にどの商品があるかを登録する。

その時点で棚割りに商品がひも付いている状況になる。棚割りは従業員のスマホから見ることができ、棚の段と列で商品名と画像、売価、在庫数を確認できる。お客が商品を棚から取ったり、戻したりすると、在庫数の増減が確認できる。

店舗は横浜駅西口から徒歩5分の多くの通行量がある立地にある。おにぎりやサンドイッチなどのワンハンズフーズ、ペットボトル飲料や菓子などの利用が見込まれる。

1、2点の買物であれば、スーパーマーケットの広い店内とレジ待ちの時間はストレスになるだろう。その点、ショートタイムショッピングが可能なコンビニが重宝されるが、CATCH&GOは併設のダイエーと同じ商品を提供するため、コンビニよりも価格は低めであり、待ち時間も基本ゼロなので差別化を図ることができる。

食品スーパーのカスミが主に事業所内に設置している無人店舗「オフィススマートショップ」(オフィスマ)。食品スーパーや移動販売車とともに商圏の深耕を図る

第2の「閉鎖立地」について、茨城県つくば市に本社を置き、食品スーパー194店舗(2023年11月末)展開するカスミは、無人店舗「オフィススマートショップ」(オフィスマ)を168ヵ所(2024年1月20日)展開している。オフィスマは企業などの事業所や工場、病院、自治体などの施設で働く職員や、学校の学生などへの身近な食への貢献を目的としている。

取り扱い品目はカスミの店舗から選定し、現状は常温ゴンドラ2台で100から120品目の設置が多いという。決済方法は、持株会社であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスのスマートフォン決済アプリ「Scan&Go ignica」によるキャッシュレス決済とし、ポイントの利用も可能としている。

商品の補充は週1回を基本に、近隣にあるカスミの店舗から配送便を走らせ、補充時に賞味期限管理や清掃などの作業も実施している。

スマートフォン決済アプリは、①事前に「スキャン&ゴー」のアプリを自身のスマホにダウンロードしてアカウント情報を登録、②店に入り店頭のQRコードでチェックインしたら、欲しい商品を手に取って、バーコードをスマホカメラにかざして読み取る、③商品の読み取りを終えたら、アプリ内の会計画面に進み、スマホ上で決済を完了させることができる、といった新しい決済手段である。

食品スーパーを母体とする品揃えの強みを活かしながら、そこに無人店舗を加えてドミナントの占有率を高めていく戦略である。

第3の過疎地域の立地について、長野県域にスーパーマーケット60店舗、外食事業6店舗を展開するアルピコグループの中核企業であるデリシアは、2023年8月4日に「デリシア蓼科SS店」をオープンしている。これはガソリンスタンドの事務所に設置した無人店舗で、幅3m、奥行き4mの面積に、弁当や菓子、飲料といった即食商品や冷凍食品、アイス、日用品など200アイテムを品揃えして、マイクロマーケットに対応している。

同社は、必要商圏人口に満たず、食品スーパーを出店できないエリアを、自社のネットスーパーや移動販売車(「とくし丸」31台、23年12月末)を稼働させている。

しかしながら、蓼科エリアの住人、別荘地の人たち、観光で訪れたお客に十分な利便性を提供できていないと考え、TOUCH TO GO社が開発した無人決済店舗システム「TTGSENSE MICRO」を採用した。

こちらは前述のダイエーの事例と同様に天井のカメラがお客の入店や動きを把握、商品の陳列棚の重量センサーによりお客と商品を紐づける。

ダイエーのようなアプリを必要としない分、退店のチェックアウトが求められ、お客がレジ前に立つと、手に取った商品を自動で画面上に提示、正しければ、交通系ICカードやクレジットカードによる決済に至る。

配送に関しては、自社が運営するネットスーパーの配送ルートに乗せて納品するため、コストを最小に抑えている。このように、実店舗とネットスーパー、移動販売、無人決済店舗といった販売チャネルにより、商圏の支持率を高めていくと同時に、買物困難者への対応もしっかりと図っていく意向である。

無人(決済)店舗は、今後もさまざまな立地と、異なるニーズに対応する形で拡大していくであろう。

ローソンが挑む1日2便とその先の「冷凍流通」

本年はいよいよ「物流2024年問題」の年になる。「働き方改革関連法」により、4月1日より運送・物流に時間外労働の上限規制が設けられる。小売業のインフラを支えるトラックドライバーの時間外労働が規制の対象になることから、コンビニ業界も物流改革を進めている。ここではローソンにおける物流体制の改革と、将来に向けた、冷凍流通による持続可能な物流ネットワークに関して解説したい。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年2月号より転載)

1日3便から2便体制へ改革 ドライバーの勤務シフトも変更

「物流2024年問題」は、コンビニ業界では最重要課題として改革を進めてきた。それは同時に、CO2排出量削減や人手不足、各種コストの上昇など、さまざまな問題に関係してくる。すなわち物流問題の解決に向けた努力が、これら諸問題の改善にもつながると認識して取り組んできた。

ローソンでは、配送する商品により、これまで3つの温度帯の配送センターから全国の店舗に商品を配送してきた。それを「物流2024年問題」への対応とCO2排出量削減、コスト抑制を目的に2023年12月から2024年3月にかけて順次、チルド・定温商品(約1,000SKU/日)について1日2便体制への移行を進めている。

既にローソンでは2005年から2018年にかけて、商品の製造や配送作業の効率化を目的に、それまで全国で1日便体制だったチルド商品(一部の米飯弁当やサンドイッチ、調理麺など)・定温商品(おにぎりや米飯弁当など)の配送を、一部エリアで段階的に2便体制に変更してきた。その結果、2023年11月時点では、大都市部を中心に約7割の店舗が3便体制であった。それを、今回の改革により全てのエリアにおいて2便体制に移行する。

[図表1]既存の3回配送イメージ

これまで3回配送エリアでは、効率的な運用を図るため「深夜+朝便」や「朝便+午後便」といった、2つの便を連続して1人のドライバーが担当する勤務シフト(リンク便)が発生していた(図表1)。

[図表2]配送2回に改善したイメージ

こうした3便体制を4月1日以降の法令順守で維持できるのか、ローソンではリスクを回避するためにも、全店1日2便配送体制の実施に舵を切った(図表2)。

ドライ(加工食品など)・冷凍商品の配送についても効率化を図るべく、2024年4月から順次、センターごとの状況に合わせた配送ダイヤの2パターン化を実施する。

現状、ドライ・冷凍商品の配送ダイヤは週5回(月・火・木・金・土)に全てを固定して実施していた。曜日ごとに物量や営業店舗数に大きな波動がある場合でも、配送ダイヤは1つに固定してきた。見直す必要があれば四半期ごとに実施していたという。店舗にとっても、日によって荷受け時間が変わらないため、定時定例の業務としてシフトが組みやすいメリットがあった。

しかしながら、今後は現在の固定の配送ダイヤを変更、センターごとの状況に合わせたダイヤを2パターン用意する。例えば「物量の多い曜日(火・金)」と「少ない曜日(月・木・土)」の2パターンに分けるなどしていく。

その結果、両パターンの納品にプラスマイナス60分以内の時間差が生じることになるものの、センターの実態に応じて2つのダイヤの使い分けが可能となり、CO2の削減や配送車両の削減(センターにより1~2台)、ドライバーの拘束時間の削減につなげることを可能にしていく。この2つのパターンは、全国共通ではなく配送センターごとに最適なパターンで運用、どのようなパターンにするかは、現在検討中としている。

ドライバーの店着時間調整は不要 「早着フリー」により効率改善

チルド・定温商品の発注・納品の頻度が減るということは、店舗側にとっては、より精度の高い発注が求められる。そこでローソンでは、2024年3月より順次、チルド商品・定温商品のうち、米飯、調理パン、調理麺、デザートなどの消費期限の短い商品に関して、店舗での発注システムを刷新していく。

もともと2015年よりAIを活用したセミオート発注を導入しているが、今回はより精度の高いAIの活用により、個店の顧客、商圏に合わせた発注数や品揃え、値引きのタイミングと数量を推奨していく。この新発注支援システムと前述の2便配送化により、さまざまな側面から効率・効果増につなげて店舗収益の向上を目指していく。

その他の取り組みとして、ローソンでは2021年より物流効率の向上を目指して、常温・冷凍の配送ルートについて、AIを活用したダイヤグラムの最適化を行った。群馬県から順次スタートし、現在では東北・関東・中部・近畿・中四国に拡大している。これにより、CO2排出量を約5%削減すると共に、物流コストも約6%の削減につなげている。2022年には配送センターの一部について移転・統合を実行。今後も一定周期で最適センター網をシミュレーションした上でセンターの再編を図っていく。

こうした最新デジタルによる効率化を躊躇なく進める一方で、予測不能のものや、人の手による誤差は、許容していく姿勢を示している。2010年頃から常温の「新商品発注」について、初回納品分のみ8日前に発注する仕組み(それ以前は通常商品と同じように発注)としている。新商品については、初回の発注量の推測が困難なため、8日前の発注により、欠品の回避・食品ロスの大幅削減・物流面での効率化につなげている。

また2019年から全温度帯で店舗到着設定時間よりも、早く到着することを可とする「早着フリー」を運用している。それ以前は予定時刻通りに納品するために、ドライバーは早く到着しないように時間調整などを行うケースがあったが「早着フリー」により、大幅な効率化につなげている。

ローソンに限らず、コンビニチェーン本部は加盟店の負荷に対して、大きな配慮を図っている。しかしながら、環境問題や社会問題に対して、大きな負荷にならなければ、加盟店も一定程度、譲歩する必要が求められるのであろう。

おにぎりを「先兵」に実証実験。冷凍流通が効率とロスを改善

2024年問題の次は2040年問題だ。大都市圏の人口は大きく減らない代わりに、都市部から遠い地方においては深刻な過疎化に直面する。

最も小さな商圏で営業が可能なコンビニにおいても、ドミナント(商勢圏)を築くだけの人口を確保できなければエリアごと「撤退」もあり得る。それは買物困難者を生むことになり、社会のインフラと呼ばれるコンビニにとっては回避したい将来である。

そこでローソンでは将来を見据えて、2022年11月にオープンしたSDGsに関する実証実験店「グリーンローソン」(東京・豊島区)にて「冷凍流通」への取り組みに着手してきた。そこではチルド弁当も、定温弁当もいっさい置かずに冷凍弁当と(店内で調理する)厨房弁当のみを販売するといった実験をした。

通常の定温弁当やおにぎりは製造後、店舗に配送、販売するまで10時間から20時間を要してしまう。この時間の制約が、製造、配送、ドミナントの制約条件になる。ローソンでは、この制約を、商品の鮮度劣化を長時間起こさない「冷凍流通」により解消しようとしている。

例えば、弁当、おにぎり、調理パン、調理麺を冷凍流通に置き換えれば、1日2便配送体制を1回以下に抑えることができ、ベンダーも計画生産ができるようになる。仮に納品された冷凍食品を、店舗で解凍して販売するにしても、出荷から店着までの鮮度が保たれるので、フードロス削減にも大きく寄与する。

しかしながら、グリーンローソンにおいては冷凍弁当の売上が芳しくなかった。定温弁当と変わらない「おいしさ」であるにも関わらず、お客の手が商品に伸びなかった。作り手側の意図が十分に伝わらなかったのだ。

そこでローソンでは「冷凍おにぎり」6アイテムを2023年8月22日から3ヵ月間、東京11店舗、福島10店舗で実験的に販売した。新しいスタイルとして「温めて食べるおにぎり」を提案、冷凍おにぎりにより、冷凍商品の即食行動拡大に努めている。このおにぎりを「先兵にした」実証実験は「お客様に想定通りご好評いただいた。今後も、冷凍食品のメリットを生かした仕様の冷凍おにぎりの開発なども含めて検討していく」(ローソン広報)と手応えを得ている。

将来的に冷凍弁当に拡大したとすれば、現状の1店舗あたり定温25アイテム、厨房弁当5アイテム、1日2回以上の配送を、冷凍/冷凍解凍弁当を30アイテム、厨房弁当10アイテム、1日1回以下の配送に改革することができる。

冷凍流通により、お客が求める必要な機能、品揃えをしっかりと維持しながら、フードロスを削減し、買物困難エリアの店舗網を維持していきたいとしている。

ファミリーマートがファッションショーを開催!コンビニ衣料で全身コーディネートに挑戦

コンビニで果たしておしゃれな衣料は売れるのか。コンビニ半世紀の歴史の中で、どのチェーンにおいても、本格的に取り扱ってこなかったファッション分野に対して、ファミリーマートはオリジナルブランド「コンビニエンスウェア」を全国展開している。そのブランドを用いたファッションショーを11月30日、国立代々木競技場の第二体育館内で開催した。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2024年1月号より転載)

ダイバーシティを感じるモデルをファッションショーで登用

ファッションショーには、写真以外にも、高齢の女性、車椅子の方、子どもを連れた母親など、お客を選ばないコンビニらしく、さまざまな人たちが登場、ファミリーマートの(発売予定も含めた)コンビニエンスウェアを着こなしている

ファミリーマートは2021年よりコンビニエンスウェアを全国展開している。その開発コンセプトによると、ファッションデザイナーの落合宏理氏を起用して、緊急時の利用として品揃えされているコンビニ衣料品に対して、デザインや素材にこだわり、普段から着たくなるような商品展開により、コンビニ衣料品の新たなスタイルを目指すとしている。

今回のファッションショーは、ファミリーマート初の試みとして開催した大型イベント「ファミフェス」の目玉イベントとして行われた。開催に際してファミリーマート代表取締役社長の細見研介氏はファミフェスの意義を次のように述べた。

「ポストコロナを迎えて、普通の生活を取り戻した喜びを分かち合う機運が日本中で湧き上がっている。この喜びを皆で分かち合い、お客様に感謝の気持ちを届ける思いで、コンビニが(大会場を借り切って)実施する前代未聞のフェスを企画、将来に向けてチャレンジをお披露目したい。われわれはチャレンジする方のコンビニを標榜している。このフェスをファミリーマートによる挑戦の新たな1ページとしたい」

また、ファミフェスの総監督であり、コンビニエンスウェアのクリエイティブディレクターでもある落合氏は開催前に次のような思いを語った。

「さまざまな方が利用するファミリーマートのイベントだからこそ、会場の全員が同じ視点で、ランウェイのショーを楽しんでいただける、そんな思いを込めて(会場に)円形のリアルな店舗をつくった。総勢100名以上が出演する中で、多様性のある、ダイバーシティを感じるようなモデルの方々をキャスティングした。新しいライフスタイルの提案だけでなく、加盟店の皆さまと一緒に、新しい価値をつくり上げる機会にしていきたい」

コンビニエンスウエアの開発に携わってきたファミリーマート執行役員商品本部本部長の島田奈奈氏はコンビニの品揃えに変革を促していく。

「コンビニエンスウェアはファミリーマートのチャレンジの象徴。今回はショートパンツ、ジョガーパンツ、チノパンまでお披露目する。これにより、私たちのコンビニエンスウェアは全身コーディネートができるブランドを目指していく。」

ファミフェスの開催を皮切りに新しい時代のコンビニ像を創る

コンビニの競争環境を見ると、人口が減り、店数が増える中で商圏は狭小化している。

「コンビニは手軽であることや、緊急時の需要だけではなく、本当に欲しい“選好品”が求められる傾向がある」(広報)とファミリーマートはマーケットを分析している。同じコンビニのミニストップも、これからのコンビニは便利で使い勝手が良いだけでなく、お客様にわざわざ選んで店に来てもらうデスティネーションストアを目指すべきとして、それを実現する商品開発に取り組んでいる。

もちろんコンビニの生命線である、米飯弁当や調理パン、調理麺、惣菜などの強化が必須に違いないが、ファミリーマートは、それを非食品、とりわけ衣料品に目を向けて、この間の商品開発を強化してきた。

ファミリーマートは、これまでのコンビニ商圏の常識にとらわれ過ぎず、“こんなことあったら嬉しい”と思える商品やサ―ビスをどんどん生み出していくことを“ファミマのチャレンジ”と定義して推奨している。

コンビニの衣料といえば、ビジネスホテルの多いエリアで売れる傾向にある。出張時に着替えの用意を忘れたり、急な宿泊が必要になった際に買いそろえる下着といった位置づけであった。そのため、商品に求める基準は、そこそこの品質で、決して高くもなく(安くもない)価格ラインが主であった。

ファミリーマートのコンビニエンスウェアで最初にヒットしたのがラインソックスやショートソックス。無地が多いコンビニの靴下の中で、ちょっとしたデザインが支持された

こうした、いわば無風状態を創業以来続けてきたコンビニ衣料に対して、ファミリーマートはメスを入れたのだ。推進したのは(前出の)細見研介氏である。細見氏は親会社の伊藤忠商事出身で、アパレル部門で実績を上げてきた。衣料品の開発とブランド構築に精通した人物である。

属人的な話に聞こえるが、2002年から2013年までファミリーマートの社長を務めた上田準二氏も、伊藤忠商事出身で、同社の畜産部門で培った知識と人脈により「ファミチキ」の開発に尽力して、同商品を看板メニューに育成している。こうした成功事例も、コンビニエンスウェアの開発に多少なりとも影響はあるだろう。

コンビニも他の小売業と同様に、実店舗の販売だけでなく、Eコマースによる市場も視野に入れていくであろう。現状のコンビニ加盟店が、コーディネートできる分だけ衣料品の在庫を持ち、陳列して、販売するイメージは持ちにくい。将来を見据えた取り組みと捉えた方がよいかもしれない。

ローソンの無印良品に対して、ファミマは自社開発でデザイン向上

一方で副次的効果への期待もある。衣料品の拡充による、ファミリーマートのイメージ強化、他の商品カテゴリーのデザイン向上などが挙げられる。ファミフェスでは、コンビニエンスウェアをモチーフにした落合氏がデザインする新カテゴリー「文具」を発表した。

コクヨの持つベーシックな文具を、新たに落合氏のデザインにより、ファミリーマートのPB(プライベートブランド)として販売していく

「技術力のある(文具メーカーの)コクヨが、落合氏のデザインにより、色、形、心地よい機能を備えた、コンビニエンスウエアと同じコンセプトを持った文具を開発した。ファミリーマートがコンビニエンスウエアで目指している、間に合わせの商品ではなく、選んで買っていただける商品を、新しい文具においても同様に推進していく」(島田氏)

コンビニで購入する文具について、従来は機能性にしかお客の期待はなかった。ここにデザイン性を付加して目的買いを促していく。

もう一つは「ファミフェスデザインプロジェクト」の発足。今回のファミフェスに参加した日本のメーカーの人気商品を、落合氏のデザインプロデュースにより、ファミリーマート限定商品として発売していく。なじみのある商品を、デザインを変える形で展開することで、お客との新しいコミュニケーションを図っていくとしている。

昭和の時代に使用していたファミリーマートのロゴとブランドデザインをTシャツに使用した

最後に補足すると、ファミリーマートは、かつて同じセゾングループにあった「無印良品」を雑貨や衣料で品揃えしていた。それを2019年1月に契約を打ち切り撤収、代わってローソンが2020年6月より無印良品を導入している。ローソンの無印良品に対して、ファミリーマートは自社開発でデザイン性の向上を図っていく戦略である。

長らく手が付けられていなかったコンビニ衣料が、消費者が好むブランドの一角を担えるのか、デスティネーションストアを目指して、ファミリーマートを含めたコンビニチェーン各社が、新たなカテゴリーで、従来の常識を破るべく、チャレンジを続けていく。

セブン−イレブンの「街づくり戦略」と「SIPストア」のコンセプトとは

セブン&アイ・ホールディングスは2023年10月31日実施したグループの事業戦略に関する会見で、「食」の強みを軸とした国内外コンビニエンスストア事業の成長戦略、さらにグローバルリテールグループへの道筋を示した。中でも筆者が注目したのが、長く「踊り場」にある国内コンビニ事業をどのように拡大させるのか、その取り組みである。セブン−イレブン・ジャパン代表取締役社長の永松文彦氏の話を中心に解説したい。(構成・文/流通ジャーナリスト 梅澤 聡)(月刊マーチャンダイジング2023年12月号より転載)

“ドミナント戦略”の言い方を今は“街づくり戦略”に変更

コンビニの成長率を示す最も重要な指標が店舗数である。コンビニ業界全体では2020年、2021年あたりで頭打ちの状態である。セブン−イレブンにおける店舗数の増加は、子会社のセブン−イレブン・沖縄を含めて、2020年2月期が前期比40店舗増、2021年169店舗増、2022年120店舗増、2023年47店舗増、2024年2月期の計画が50店舗増と増加している。

しかしながら、東日本大震災の後に年間1,000店舗前後の増加を続けた時代からすると「微増」となる。

「コロナ禍の3年間は店舗開発業務が進まなかった。人と人とが直接お会いして、(丁寧に)説明して出店が決まるので(それが難しかった)。本年より出店開発担当者の増員を図っていく」(永松氏)

確かにコロナ禍は、既存店の存続に重点を置き、店舗開発業務の推進は難しかった。ただし、店舗開発は、それ以前から抑制してきた。2019年6月より経済産業省が主宰する有識者会議「新たなコンビニのあり方検討会」がスタート、コンビニ加盟店の「持続性」に疑問が投げかけられた。今は新店開発ではなく、既存店の営業利益に注力すべしとチェーン本部は提言されている。加盟店とチェーン本部の共存共栄が大原則であるはずなのに、そのバランスを欠き、無理な店舗開発が行われた。

そこで現在、あらためて出店に関して開発担当者を増員、強化していく根拠として示したのが、セブン−イレブンのシェアが高いエリアは日販が高く、逆に低いエリアほどシェアも低いとする実態である。

[図表1] 出店を強化するエリアの判断基準

図表1は、横軸がセブン−イレブンのシェア、縦軸に平均日販を示している。人口当たりの店舗数が多いエリアほど個店の売上が高いという結果が出ている。

セブン−イレブンは創業当初より「ドミナント戦略(高密度集中出店)」をとってきた。一定地域のシェアを高め、効率の良い店舗展開を推進する一方で、この戦略が加盟店との軋轢を生んできた。利益の低い加盟店があるにもかかわらず、近隣に別のオーナーが経営するセブン−イレブンが出店、さらに経営が圧迫されたと訴えるところも一部にはあった。たとえ近隣であっても、導線が違う、商圏が異なるといった理由もあったであろう。

「すべてはお客様の立場で」がセブン−イレブンの原則であるが、それが行き過ぎると加盟店に犠牲を強いることになる。加盟店同士のカニバリ(売上の奪い合い)についての懸念に永松氏は次のように答える。

「既存の地域で出店に対する問題は起きていない。逆に2号店を経営したいという声が非常に多く(加盟店から)出ており、要望に応えきれていない状況にある。この(カニバリの)問題は、かなり払拭されていると思う。例えばの話だが、福島県はセブン−イレブン1店舗当たりの人口が4,000人を切っており、売上は都道府県別でかなり上位に入ってきている。既に出店が進んでいるシェアが高いエリアについても、スクラップ&ビルドにより活性化を図っていく」

今後、出店を強化していく地域として、青森県、秋田県、岩手県、富山県、石川県、福井県、島根県、鳥取県、香川県、愛媛県、高知県、徳島県の12県を挙げている。東北、北陸、山陰、四国といった比較的、人口密度の低い地域に重点を置いている。こうした地域への出店を、2024年度、2025年度と加速させていく。

「新店を出す際は、周囲の既存店と一緒に販売促進のチラシなど手を打ち、地域全体で売上を高めるようにしている。かつて“ドミナント戦略”という言い方をしていたが、今は“街づくり戦略”に変えている。新店を出す目的だけではなく、街全体がどうしたら良くなるのか、そのため出店に際しては、近隣の店舗のスクラップ&ビルドも同時に進めており出店を重ねることに問題はない」(永松氏)

スイーツ、刺身、味付け肉などコンビニに向く冷凍食品を開発

こうした店舗数の拡大は商品戦略が下支えしている。コロナ禍で消費者が感染リスクを減らすため「遠くのスーパーより近くのコンビニで買物」の意識が一部で高まった。そうしたニーズに応えて、コンビニ業界は「中食」の惣菜、冷凍食品、カット野菜を拡充して、これまでの「即食性」だけでなく、ストック型の商品にも力を入れ始めた。

セブン−イレブンは、過去15年間で冷凍食品の売上を15倍に成長させた。現在はグループ会社であるイトーヨーカ堂(IY)の強みを取り入れて商品開発に活かしている。

セブン−イレブンは、米飯弁当などを開発するデイリーメーカーのノウハウ、調理技術、製造能力を提供。IYも長年培ってきた商品開発の技術により、冷凍食品の開発を強固にしていく。IYが育成してきた冷凍食品ブランド「EASE UP(イーズアップ)」は、セブン−イレブンの店舗に品揃えされている。

商品の拡充と同時に、セブン−イレブンは新たな冷凍設備の導入を進めている。狭小店舗には(タテの扉が付いた)中島冷凍什器(テスト実施)を取り入れて、冷食の品揃えのアイテム数を増やしていく。この什器は標準店舗にも導入して新たな品揃えを増やしていく。以前は壁側の冷凍什器だけで品揃えしてきたが、次に平型の冷凍什器を増設、さらに今後は中島に(タテの扉が付いた)冷凍什器を設置する。

セブン−イレブンは、2008年に焼き餃子、五目炒飯、エビピラフといった1人用の冷凍食品を100円(税別)で販売した。特に焼き餃子は、5個入りの分量と100円という価格設定が単身者に丁度よく、後にセブン−イレブンは2008年を「冷食元年」と呼んでいる。

この100円商品の「価格訴求」で一定の支持を得た。次にパスタやカップ炒飯で「利便性追求」、そしてセブンプレミアムゴールドの「金のマルゲリータ」などで「品質追求」、また、食卓のおかずや酒のつまみになる「おかづまみ」シリーズを充実するなど、コンビニにふさわしい冷凍食品を投入してきた。

現在、スイーツ、ミールキット、刺身、味付け肉の開発を進めている。他に野菜や果実、肉・魚素材にもチャレンジしていくとしている。

ミニスーパーをつくる気はない。SIPストアの開発コンセプト

店舗開発の「数」でいえば、当面はごくわずかだが、セブン−イレブンは「SIPストア」の開発を進めている。「SIP」とは、セブン−イレブンのSとIYのI、パートナーシップのPの略称でコンビニとスーパーを組み合わせた新型店舗を意味する。

[図表2] SIPストアの業態的な位置付け

セブン−イレブンは約40坪の売場面積で2,500SKUの品揃え、対してIYは約300坪以上、2万SKUと大きい。新型店舗は、その中間よりやや小さい売場を作っていく(図表2)。

「コンビニとスーパーを合わせた店舗だが、従来からあるミニスーパーとは全く違った概念でつくっていく。(既存のスーパーのような)薄利多売ではなく、あくまでも価値ある商品を売っていく」(永松氏)

セブン−イレブン・ジャパン取締役執行役員商品本部長の青山誠一氏も本年9月24日の商品政策に関する会見で「単に生鮮食品を置いたミニスーパーをつくる気がないことを改めて言っておきたい」と発言している。

どうしても比較されるのが、首都圏で1,000店舗以上を出店するイオン系の「まいばすけっと」である。既に先行する「まいばすけっと」に追従しない意思の表れであろう。

品揃えは既にセブン−イレブン9,000店舗で扱う(もともとIYが開発した)「顔が見える野菜」を筆頭に、冷凍食品、プレミアム商品、セブン・ザ・プライスなどを導入していく。1号店は2023年度中に首都圏で開設する計画である。

永松氏はSIPストア開発の意図を次のように語る。

「少子高齢化、人口減少で人流は減少していく。かつての街道立地は売上が高く、駅前や住宅はそうでもなかったが、今はそれが逆転した。業態の在り方、お店の使われ方は変化している。今のお客様は短時間で買物が出来るお店を求めている。われわれのアドバンテージは(2010年に出したキーワード)『近くて便利』なこと、それを、さらに進化させたのがSIPストアになる」

永松氏によると、SIPストアを2,000~3,000と増やしていくことよりも、既存店をSIP型に変えていくことが非常に大きな取り組みだという。売場面積を物理的に広げられない場合には、高さを変えたり什器を変えたりして、品揃えのアイテム数を増やしていくという。現在「SIPストアプロジェクト」を推進、セブン−イレブンとIYから、それぞれメンバーを出して日々議論をしているという。

振り返れば、2019年4月の決算会見で、セブン&アイ・ホールディングス代表取締役社長の井阪隆一氏はセブン−イレブンについて「意思のある踊り場をつくる」と事業再構築の必要性を語った。果たして踊り場からの脱却は実現するのか。

見て体験できるアジア最大級のドラッグストアの祭典。第23回JAPANドラッグストアショーレポート

8月18日(金)〜20日(日)まで、東京ビッグサイト東展示棟3〜6ホールにて、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)主催による「第23回ジャパンドラッグストアショー」(実行委員長、櫻井寛氏/丸大サクラヰ薬局常務取締役)が開催された。新型コロナウイルス感染症のため4年ぶりのリアル通常開催となった今回、来場者数は3日間で5万8,872人、475社1.310小間の出展となった。(月刊マーチャンダイジング2023年10月号より転載)

フェムケアゾーンと食と健康ゾーンを設置

食と健康ゾーンの展示。JADCSでは厚労省、関係省庁との調整で健康サポートする21のテーマで表現可能なPOPを作成

今回のテーマは「新しい生活提案と実践、持続可能社会の実現、課題と向き合うドラッグストア」〜セルフメディケーションとともに歩むこれからの暮らし〜。予防という観点から、コロナ禍でも改めて重要性が見直されたセルフメディケーションへ、ドラッグストア(DgS)がいかにお客、患者により寄り添い、サステナブル社会を実現できるかを提案した。

フェムケアゾーンの展示。BELTAは膣ケア(洗浄、保湿)、子宮ケア関連商品を販売している

展示会のメインは特別企画の二つのゾーン。一つは「女性の健康は社会の未来」をテーマとした「フェムケアゾーン」。女性活躍の場が進む中、女性の健康促進を進めることで関連する産業が加速度的に伸びている。体験コーナー、フェムケア商品が当たるガチャコーナー、DgSのフェムケア売場の提案やセミナー会場を使ったセミナーなどを行った。

[図表1]第23回JAPANドラッグストアショー食と健康アワード2023 受賞社一覧

もう一つは「食と健康ゾーン」。前回に続き「食と健康アワード2023」を設け、食と健康に関わるすべての食品のうち、新商品や注目の商品を出展社よりエントリーを募り受賞商品を表彰した(図表1)。そのほか自身の身体の状態を知るためのセルフチェックコーナーを設け、楽しみながら健康への意識を深めることを狙った。

また、メーカー各社もアース製薬の本物の虫を使った体験型や、オムロンヘルスケアのブース内でプレゼンする情報発信型など様々な工夫を凝らした展示をしていた。

ドラッグストア業界の動向 取り組むべき5つのテーマ

JACDSの展示ゾーン。健活ステーション化計画、食と健康推進活動、そらぷちキッズ(難病の子供支援)などを展示

ここでは、第23回ジャパンドラッグストアショー開催に合わせてJACDSが発行した資料集の中から「ドラッグストア業界の動向」とDgS業界が今後取り組むべき5つのテーマを紹介する。JACDSでは、資料の発行とともにテーマブースを設け「健康生活拠点化(健活ステーション)」や「狭小商圏対応型MD」などの展示も行った。以下の文章は資料の中から抜粋、編集したものである。

新型コロナウイルス感染症の発生からおよそ3年半が経ち、政府は同感染症の法律上の分類を5類に引き下げた。これにより感染者の外出自粛や医療費の負担、マスク着用、医療機関への受診など、これまで国民に求めていた様々な対策もそのほとんどが撤廃され、コロナ禍以前の生活様式に戻ることになった。

[図表2]2022年度 DgS実態調査(JACDS調査)

DgS業界を取り巻く現状は、コロナ禍にありながらも他の流通小売業界や薬業界と比較した相対的な視点では、実態調査(図表2)の示すとおり継続的な成長を見ることができ、順調な事業環境にあるといって良いだろう。しかしながら、これらの数値結果はDgS各企業の旺盛な新規出店が功を奏したことが要因として大きい。

実態調査数値には、新型コロナ陽性者の急拡大によりOTC化された抗原検査キットや自宅療養と併せて家庭での備蓄が進んだ解熱鎮痛剤などの販売数値が集計時期の関係上盛り込まれていない。DgSの事業は今後も引き続き成長が見込まれるが、医薬品をはじめとする生活必需品の供給にとどまらず、検査や予防支援など生活者の健康を支えるセルフケア、セルフメディケーションの担い手として、改めてコロナ後の新しい生活様式を踏まえた今後のDgSのあり方が問われていることを業界に身を置く事業者は強く認識することが重要だ。

JACDSでは2030年を目途に中長期的な視点で取り組む、DgSの健康生活拠点「健活ステーション」化を実現するために活動している。DgSは今後も成熟社会となった日本において引き続き国民の支持を獲得し社会インフラとしての業界成長を目指すことになる。

[図表3]DgS業界が取り組まなければならない5つのテーマ

業界は単に自らの主張を展開するだけではなく、社会から期待されている役割を具現化し事業化することで成長を続ける国民生活に欠かすことのできない唯一無二の存在となることが重要だ。DgS業界として取り組む5つのテーマ(図表3)は、そのような存在となるための重要項目であり、JACDSが掲げるすべての活動の基礎と言っても過言ではない。

フェムケアゾーンの展示。フェムケアをカテゴリーごとに説明
フェムケア棚割提案。血行をよくする。新しい生理用品、睡眠改善、痛みケアなどのサブカテで提案
ツルハグループの展示。くらしリズム、くらしリズムMEDICALのコンセプトや商品を展示
ウエルシアはPB商品に加え、移動店舗「ウエタン号」を展示。ウエタン号は買物施設が少ない過疎地域で活躍している
マツキヨココカラ&カンパニーはPB商品中心に展示。小学生が考案した指に巻きやすい絆創膏などユニークな商品が並んでいた
空中に浮かぶ大きなリングと赤い布がひときわ目を引く資生堂のブース。エリクシールの新商品を中心に展示。ブースデザイン大賞受賞
アース製薬のブースでは、順路にアクリルケースに入ったゴキブリの生体を展示。リアルティのある仕掛けになっていた。ブースデザイン準大賞受賞
オムロンのブースでは「3つの社会的課題解決への取り組みで、DgSの未来を提案」というテーマでプレゼンを実施。情報発信性の高い展示。実行委員長特別賞受賞
ユニ・チャームは、犬用紙おむつマナーケアで「ペットと一緒におでかけ」というトレンドをリード、大きな市場を創造しつつある
金鳥では新たな市場を創造したムエンダーシリーズ、秋冬に向けてリニューアルした使い捨て雑巾「サッサ」を中心に展示
ロート製薬は自社開発成分配合の新スキンケアブランド「ブルーミオ」、肌をマット調に仕上げる新発想スキンケア「カラーミー」など期待の新ブランド展示
マンダムはこの秋大型リニューアルするルシードスキンケアシリーズを中心に展示。可能性の高い40代以上の更なる需要開拓を図る

可能性を増す「リテールメディア」。成功のために必須のアドテクへの理解

小売業が運営するアプリ、ECサイト、自社サイトなどオウンドメディアの存在感が増している。小売業運営のオウンドメディアは「リテールメディア」とも呼ばれ、ここに商品広告を掲載することで自社店舗の販促、あるいは、媒体収入を得るインターネット広告事業の展開が可能だ。今回はリテールメディアの持つ有利な立ち位置や将来的にこれを活用して、成功させるための技術=アドテクノロジーについて紹介する。(月刊マーチャンダイジング2023年10月号より転載)

飛躍的に技術が発達したインターネット広告

インターネット広告は1996年頃から始まり、当時はバナーを貼り付ける程度の簡単なものだった。その後、検索すると関連商品の広告が出る検索連動型(リスティング広告)、Yahooなどのポータルサイト上の決まった位置に、ユーザーの関心事と関連した広告が出現するディスプレイ広告など、技術の発展に伴い種類も増えていく。

また、広告そのものの発展と共にターゲティングやアドネットワーク(複数の広告枠への配信)など、広告を効果的に配信する技術もインターネット広告黎明期から飛躍的に発展している。とくに最近では、AIが配信相手と最適なメディアのマッチングや予算の最適な配分を自動で行うなど、AIの活用によって新たな局面を迎えている。

リテールメディア成功のカギは信頼できるパートナー選び

近年、小売業では自社アプリ、ECサイトなど自社メディアの構築に注力する企業が増えている。とくにアプリ開発には熱心で、これを使ったクーポン発行、ポイントカード機能、決済サービスなどで売上拡大、固定客化を図っている。

小売業が運営する自社メディア=リテールメディアは広告媒体としても注目されており、サイバーエージェントによると2030年には小売業の広告事業の市場規模はネット広告市場全体の10%程度に達すると予想されている。

アメリカではリテールメディアによる広告市場は2022年時点で推計410億ドル(1ドル130円換算で5兆3,300億円)の規模がある。このうちアマゾンが75%程度を占める一強状態だが(米国Pwc Statista調べ)、ウォルマートの2022年度のリテールメディア事業の売上は27億ドル(3,510億円)前年比40%増で可能性の高さを示している。

日本でも将来を見据えて準備に取り組む小売業が出はじめている。しかし、こうした小売業でもリテールメディアを使った広告事業に精通した企業は少なく、非効率な運営や不誠実な事業者によって適正に利益を得られていないケースもある。

スタートアップ系のリテールメディア事業者は玉石混淆(いいものと悪いものが混在する)状態で、導入コストがかからないなど入り口のハードルを下げ契約を取るが、その後の効果が思うように上がらないといった企業も散見される。このような企業との取り組みは広告主であるメーカーとの信頼関係にも悪影響を及ぼし、リテールメディア事業の将来性を傷つけることにもなる。

リテールメディア事業成功のカギは、運営技術や料金制度(相場)を適切に理解すること、そしてインターネット広告の実績があり、技術を蓄積したパートナーを選ぶことにある。信頼できるパートナー選びという最初の一歩が重要であることは強調したい。

リテールメディアは優位な立ち位置にある

店舗数が4桁を超えるような大手小売業は企業全体としての客数も多く、自社メディアと接触する人の数、接触回数も多い。こうした多数の会員や利用者とポイントや特典、あるいはオリジナル商品や接客などの買物体験を通じて強く結びついていることはリテールメディアの優位性のひとつである。

加えて、小売業発信の情報は買物をする意欲のある状態で見ることが多い。同じ健康食品のインターネット広告でも、ニュースサイトを見ているときよりは、ドラッグストア(DgS)のアプリをチェックしているときに見るほうがより購買意欲を刺激するだろう。実際、リテールメディアの広告は購買やキャンペーン参加などのコンバージョン(何らかの行動的成果)が他メディアよりも高い。

さらに、リテールメディアが有望と見なされるもうひとつの理由は、ユーザー情報へのアクセスである。ID、パスワードを入力した状態でユーザーがサイトを訪れるとcookie(クッキー)と呼ばれる足跡のようなものが残る。クッキーはインターネット上で共有することが可能で、多くの企業はこのクッキーを元に、ユーザーの志向や関心事を推測し、広告を配信している。

登録アカウントでスニーカーについて検索すると、その後スニーカーの広告がサイト上に頻繁に出現したり、広告メールが届いたりするのはこのためである。近年、クッキーはプライバシーの侵害にあたるとして問題視されており規制する流れにある。2024年にはさらに規制強化される見通しだ。

クッキーが規制されても、リテールメディアと接触する人は自らが会員やユーザーである企業のメディアに自主的に接触しているので、規制の対象外となり、ログ(メディアへのアクセス履歴)を追うことが可能、効果的なターゲティングが引き続きできる。この意味において、リテールメディアには今後大きな優位性が生まれる。

「多数の会員との結びつき」、買物意欲のある状態で広告と接する「閲覧環境」、「ユーザー情報へのアクセス」、これらはリテールメディアの「地の利」とも言え、メーカーが広告出稿するときの有利なポイントになることは認識しておきたい。

アドテクノロジーを活用すればビッグ・テックにも対抗できる

リテールメディアが優位な立ち位置にあることに加えて認識すべきは、小売業が自社のオウンドメディアを広告媒体として市場に出すとき、出稿側(メーカー)はその効果をグーグルやアマゾンといった世界的なプラットフォーム企業(ビッグ・テック)と比較するということだ。メーカーは広告予算の配分先として、シビアにメディア間の投資効果を測定しリテールメディアを評価する。

広告投資にふさわしい効果が得られなければ、販促やリベートなどの「営業費」からお付き合いとしての出稿はあるだろうが、リピートは期待できない。メーカーの持つ潤沢な「広告予算」から安定的に広告出稿を受け事業化するためには、「アドテクノロジー」と呼ばれる技術を駆使して自社のリテールメディア広告がグーグルやアマゾンへの出稿と比較して引けを取らないという評価を得る必要がある。

アドテクノロジーは、デジタルサイネージでも活用が可能である。店舗入り口や店内に大型のサイネージを置き商品情報を流すサービスは導入企業も増え、本誌2023年7月号で紹介したように、ID-POSデータとの連係による効果測定、運用の技術の発展と共に大きな販促成果を出しはじめている。

近い将来デジタルサイネージからのクーポン発行などが可能になり、ここが来店客とデジタル販促をつなぐ新たな接点になる。その他、来店客の動線を追ったり、購買行動を把握したり、デジタルサイネージの拡張性、潜在的可能性は高い。

インターネット広告の配信プロセス

[図表1] サイバーエージェントのインターネット広告配信モデル

図表1はサイバーエージェント社が提案するインターネット広告の配信モデルである。配信プロセスに関しては、基本的に一般的なインターネット広告と共通と考えてよい。

①アドマネジメントシステムは、インターネット広告の頭脳だ。一定の期間内に決められた予算で広告を配信するという情報と配信する広告(制作物)を登録すれば、それに沿って最適な広告を最適なメディアに自動で配信してくれる。

さらに、「3日間の実績が想定の50%に達しない場合、配信を停止する」など運用ルールを登録するとそのルールに沿って配信の指令をする。レポートの集計・表示、請求管理なども行う管理ツールの機能もある。サイバーエージェントでは、小売企業に合わせたアドマネジメントシステムの開発を行っている。

②CDP(Customer Data Platfom)は広告配信する相手のデータベース。会員ごとに各メディアへのアクセス状況、購買履歴などがデータベースとして蓄積され、商品や販促の内容に合わせターゲティングする。

現状、顧客データベースを持つ小売業は多いが、One to Oneに近い販促を実現させ、リテールメディア事業を目指すのであれば、CDPとして新たに整備する必要がある。

③配信サーバーは広告配信を管理するサーバーである。①のアドマネジメントシステムが頭脳なら、配信サーバーはそれを実行する「手足」に当たる。

アドマネジメントシステムの設計に基づき、特定の広告枠(アプリ、自社サイトなど)に特定の広告を配信するというリクエストが来ればそれを実行する。

また、配信サーバーのプロセスには別名DSP(Demand Side Platformer)という呼び名がある。これは、広告主向けに複数のネットワークが集結し一元管理されるプラットフォームである。

同様に広告の配信先である④メディア側にもSSP(Supply Side Platform)という広告収益を最大化させるためのプラットフォームがある。

インターネット広告では、大量の広告主(DSP=デマンドサイド)と大量のメディア(SSP=サプライサイド)を仲介する事業者が存在し、自動で効率的に両者をマッチングさせる仕組みがある。

サプライサイド(メディア供給側)である小売業が広告事業を始める際、SSPを利用すべきかについて議論になることが多いが、これは広告事業が進んで、媒体の在庫が余剰になった時などに利用すべき仕組みである。

SSPを使えば媒体は効率的に売れることもあるが、その分手数料を取られる。まずは、自社媒体をメーカーに販売することに専念すべきだ。

④メディアは、広告が実際に掲載される先となる。各メディアとユーザーの接触情報はひとつの「面」と捉えることができ、後述するが「面」の分断が現状、小売業のインターネット広告の課題となっている。

メディア閲覧情報=「面」の統合とマッチングにAIを活用

[図表2] 広告主、広告枠が統合運用されていない現状

小売業の媒体事業の課題は、自社アプリ、ECサイト、自社公式サイト、LINEなどと会員の接触情報がメディアごとに分断されていることである。さらに、広告主であるメーカーも一社単位で効果を追うといったように、統合性に欠けている(図表2)。

メーカーごとの効果測定だけではなく、カテゴリーやアイテム単位の分析、会員のメディアとの接触情報を統合的かつ一元的に管理することで、広告効果を上げ、より価値の高いリテールメディア広告が実現する。

[図表3] アドマネジメントシステムによるマッチングの考え方

サイバーエージェントの広告配信システムでは、アドマネジメントシステムがユーザーごとに何を訴求してどのメディアに配信すれば最適な効果を得られるかを自動で判断し実行する(図表3)。

[図表4] サイバーエージェントのアドマネジメントシステムで実現するインターネット広告イメージ

例えば、CDP(顧客データベース)の情報から会員001はアプリに頻繁に接触し価格に敏感な傾向があると判断すれば、アプリでクーポンを配信する、会員002はECの利用率が高く新商品の購買傾向が強いと判断すればECサイトを見た際に新商品の広告が出るようにするといったロジックだ。

インターネット広告の三大構成要素は、「人」(誰が見るか)、「枠」(アプリ、自社サイトなどの広告枠)、「クリエイティブ」(制作物)であり、これらを最適に結びつけることで効果も最大化できる。サイバーエージェントの広告配信システムでは、ここに最新のAI技術を導入、「AIセグメント」によりターゲット(人)を選定、「AIクリエイティブ」ではターゲットに合った最適なクリエイティブをAIが生成する。「AIレポート」は広告効果を分析して報告、最適な枠の選定に生かす。

これら3つのAI技術を同社ではインターネット広告における「AI三種の神器」と位置づける。同社ではAI Labという専門部署で先端的な研究機関とも連携し、指導者レベルの知見を持つ研究員が技術開発を進めており、ここで開発された技術がリテールメディアの広告配信事業に応用される。同社では今後も絶えず新しい技術を投入することで、小売業のリテールメディア事業をサポートする考えで、現在提案している広告配信システムも完成ではなく進化の途上であるとしている。

日本のリテールメディア事業は緒に就いたばかりだが、適切な知識とパートナー選び、計画的な投資と事業計画があれば、地の利を生かして大きく開花する可能性はある。今後はDXの発達でOne to Oneのデジタル販促技術は小売業各社の標準装備になるだろう。そのひとつの延長線上にリテールメディア事業もあり、その意味でもこの領域に注力する価値はある。

 

《取材協力》サイバーエージェント

サイバーエージェント
アプリ運用カンパニー
カンパニープレジデント
東樹 輝氏
サイバーエージェント
アドマネージャー部門
執行責任者
小川 隼貴氏
サイバーエージェント
協業リテールメディアDiv 統括
藤田 和司氏

アース製薬も活用!「ラウンダー業務効率化、売場精度も向上」する販促物の共同配送とは?

月刊マーチャンダイジング9月号では、メーカー販促物の共同配送がもたらす成果を小売業の経営層へのインタビューで紹介した。今回は販促物を制作、活用する立場から、アース製薬で販促物の配送、管理を担当する大田貴也氏に効果や今後の期待について話を聞いた。(月刊マーチャンダイジング2023年11月号より転載)

バックヤードの販促物が以前より整然と管理されている

アース製薬では虫ケア(殺虫剤)や入浴剤など季節性の高い商材を多く扱っていることもあり、シーズン内で需要を確実に取っていくためにも販促物は重要な役割を果たす。

「季節品は売場で目立たせることが非常に重要です。販促物を駆使してつくったプロモーション売場が売上に大きな影響を与えることは数値的にも実証されています。また、当社では棚替えを行わず通年で虫ケア売場を維持しようという提案をしています。この場合も定番売場などをシーズンやテーマに合わせて効果的に演出するために販促物は重要な役割を果たします。あるいは、今後重要になる高付加価値・高単価商品は、その価格に見合った世界観が必要です。これも販促物の力を借りて演出する必要があります」(営業本部 アカウント営業部 課長 大田貴也氏)

大田氏の発言にあるように、同社は販促物を重要な戦力と位置づけており、それだけに販促物が効率的に配送され、設置率を上げることは業績にも影響を及ぼすことになる。

ドラッグストア(DgS)6,000店舗(2023年8月時点)への販促物の共同配送システムを利用してまず効果を感じているのは、ラウンダー業務が効率化されたことだ。

同社では店舗を巡回し販促物を設置したり、店長、店舗スタッフとコミュニケーションして営業活動をサポートする専門部署に自社採用した従業員(ラウンダー)が在籍している。

「MICさんの共同配送システムを利用して感じたのは、バックヤードの販促物が以前より整理されて保管されるようになったことです。販促物を送ったときには店舗を訪問して設置状況を確認したり、自分で設置することもあります。店舗のバックヤードも拝見しますが、以前より明らかにメーカー販促物がすっきりと管理されています。これまで、ラウンダーから設置する販促物がないという電話を頻繁に受けていましたが、共同配送導入後はその連絡も目に見えて減りました」(大田氏)

MICの調査によれば、メーカー直送では店舗に1ヵ月80~100個の段ボールが個別に届き、それらがその都度バックヤードに保管されるため、販促物が埋没し設置されないという状況があった。共同配送システムにより販促物を「まとめる」ことで、管理が容易になり設置率は企業により異なるが平均で20~30%上がっている(MIC調査)。

また、アース製薬では複数の販促物の部材(バラ)を企画ごとに一梱包化する作業にラウンダーを充てることがあったが、MICの共同配送システムの導入で、この作業が基本なくなった。これによりラウンダーは店舗訪問に専念できるようになり、業務が効率化され、それが売場づくりの精度向上、販促効果のアップにもつながっている。

「バラ配送」の手間とコストを解消。設置率の向上に貢献

販促物の中にはトップボードや販売スタンドといった比較的大型のものから、香り見本や吊り下げ陳列用のフックなど細かい部材のものまである。

「共同配送を利用して良かったことのひとつが、細かい販促物を直送する手間がなくなったことです。いくら小さくても配送コストはかかるし時間もかかります。モノが小さければそれだけバックヤードで埋もれて発見されない可能性も高くなります。MICさんのセンターで細かい販促物までひとつのビニール袋に企画ごとにまとめて梱包して頂くのは非常によいサービスだと思います」(大田氏)

大田氏の語るように、MICの販促物専用物流センター「はちフィル」では、メーカーからバルク(バラ)で納品された販促物を企画ごとにまとめて一包化している。

MICの販促物専用の物流センター「ハチフィル」では、写真のようにバラ納品された販促物を各店舗ごとにひとつの梱包にまとめて配送する

一方、販促物をメーカーが店舗へ直送する場合、必要な店舗、不要な店舗を選別せずに一律送ることが小売側からの不満のひとつだった。共同配送システムでは、店舗ごとに「バイヤー承認」という形で、一定程度、販促や販売計画に基づいた販促物の配送を行っているが、それでもバイヤーが全店の状況を把握している訳ではないので、完全に店舗状況に応じた配送が実現している訳ではない。

例えば、サイドネット用の販促物をサイドネットのない店舗に送ってしまうというミスマッチはまだ存在しており、こうしたミスマッチが解消されれば、販促物の設置率、販促効果は大きく改善されるだろう。販促物が設置されない理由のひとつは、設置する売場やスペースがないことだ。

MICの河合克也社長は、該当するカテゴリーの売場が棚何本あり、エンドがいくつあり、プロモーションスペースの規模がどれくらいかといった店舗状況を「見える化」し販促の精度を上げていくことを、今後やりたいことの上位に挙げ、DgSとの協働でこれに着手しようとしている。

「店舗の見える化」推進に大きな期待

チェーンストア経営の基本は標準化であり、様々な条件を揃える(標準化する)ことで、コストを下げ値頃感のある売価を実現させる、同時に生産性を上げて利益を最大化することがチェーンストアの軸となる理論である。

しかし、売場の標準化に関して言えば、取得する土地や居抜き物件の形状、面積により売場や棚割が異なり、標準化を実現させているDgS企業は極めて少ない。

また、敢えて標準化にとらわれず、バラエティに富んだ都市型店舗を主力に収益性を高めるという考えの企業もある。全体の効率や顧客満足を考えれば、あるべき姿は売場にいくつかのバリエーションはあるにせよ、数種のパターンで均一化させ、売場づくりや作業を標準化することだ。また、数百を超える売場、棚割パターンがある場合でも、「見える化」を進め本部がそれを把握して統合的に管理する必要がある。

「商談で企画が決まったら、売場があることを前提に商品や販促物を配送しますが、まれにそれがないこともまだあります。売場のあるなし、商談で決まった展開が可能かどうか店舗ごとに売場状況を把握できていれば、システム的にもムダがありませんし、販促物の効果も高くなると思います」(大田氏)

販促の効果向上のカギを握る店舗の見える化は当然メーカーの仕事の範疇ではないし、店頭サポートを得意とする大手卸と言えども、全店・全アイテムで取り引きがある訳ではないので不可能だ。一義的には小売側が自社で推進すべきだが、それが進まない現状を考えれば、MICのようなデジタル、リアル両方に強みを持つアウトソーサーと協働して進めることが現実的な解決策だろう。

[図表1]MICの考える売場の見える化戦略

MICが現在DgSと協働で進めようとしている「店舗の見える化」戦略は、全店の基本的な売場レイアウト、棚割パターンを共有し、棚替えや改装情報をタイムリーに収集してそれを基本情報に反映し売場状況をリアルタイムに近い状態で把握・管理することだ(図表1)。

将来的にはAIカメラや移動型のロボットを組み合わせるなどして、店舗を見える化していくというDX戦略もあるだろう。MICの現場力と技術力、そしてこの事業に対する意欲的な姿勢には期待が高まる。

また、アース製薬ではSDGsにも積極的に取り組んでおり、販促物の再利用、使い捨てではなく複数回使える器具の開発などを進めている。このような施策を進める上でも物資の回収や小売業への啓発活動にMICが大きな役割を果たしてくれるものと期待している。


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