クスリのアオキHD 2024年5月期決算発表レポ「フード&ドラッグへの転換は完了間近。M&Aで新規エリアに進出へ」

月刊MD2024年10月号は恒例「ドラッグストア白書」特集。本稿では2024年7月10日に開催されたクスリのアオキHDの2024年5月期決算発表会のレポートをお届けする。月刊MD本誌では本内容をよりタイパ良く読めるレポートを掲載している。(談・文責/編集部)

EDLPの継続で既存店は好調に推移

取締役・八幡 亮一氏:はじめに私から前期の決算の概要と今期の業績予想・計画についてお話をさせていただきます。

まずは出退店の実績です。ドラッグ店舗の出店は45店舗です。M&Aによる取得10店舗、これはよどばしの店舗と四国、愛媛のママイ9店舗です。調剤の開局はすべてドラッグ併設で70薬局、調剤併設率は63.5%になり、前期末より4.8%上昇しております。退店はドラッグ店舗5店舗で、当期末時点の店舗数は953店舗になっております。

こちらは既存店売上高の月次推移です。通期前提109.6%に対して実績は109.8%となり、0.2ポイント上回りました。生鮮導入の改装を進めており、このフード&ドラッグに対するお客様の支持やEDLP施策によって、既存店売上は大きく伸びています。

既存店の客数・客単価の月次推移です。既存店客数の前期比は107.6%でした。既存店客単価の前期比は102.0%で、両方とも前期を上回っています。特に生鮮導入の改装もあり、既存店の客数は毎月ご覧のとおり安定して高く伸びておりますので、しっかり集客はできていると認識しております。

売上高が大幅に伸長。粗利ミックスで粗利率は低下

7月4日に発表させていただきました決算の連結の損益計算書になります。こちらの数字は決算短信に開示している数字ですが、2020年1月に発行した有償ストックオプションの費用、株式報酬費用と呼んでおりますが、その計上が当期は68億円あります。これは当期特有の一過性の費用ですので、営業力の実態や全体比を適切に理解していただくために、株式報酬費用を除く数値で説明したほうがよいと思いますので、次のスライドで株式報酬費用を除く数値を提示し、この数字をもって説明をさせていただきます。

まず売上高、前期比115.3%と顕著な伸びを出すことができております。売上総利益率は食品の売上が好調ということで、粗利ミックスの影響がありまして、前期比で1ポイント低下して27.0%でした。

販管費率は前期から大きく改善して、前期から2.8ポイント低下して21.2%になりました。営業利益は前期比165.9%、金額では253億7,900万円でした。営業利益率も前期より大きく改善し、前期から1.8ポイント上昇して5.8%という結果になりました。経常利益も前期比140.7%で269億1,100万円でした。当期純利益は前期比155.1%で、191億1,700万円でした。ご覧のとおり、フード&ドラッグの利便性が顧客に支持され、営業面では大変好調な成績を収めることができています。

新規エリアの売上構成比は50%を超える

こちらの方はエリア別の売上の実績です。前期から北信越以外の、当社でいう新規エリア4エリアの売上構成比が50%を超えてきており、当期は前期より1.6ポイント上昇して54.4%になりました。全エリアを通じて売上は好調です。既存エリアであります北信越では、2,000億円近くというところまできております。関東も1,000億円を超えてきまして、新規エリアの中で比較的後から進出しました東北や関西についても300億円を超えてきています。

こちらが商品部門別の売上の実績です。生鮮強化によるフードの伸び率が高く、売上構成比も前期から3.6ポイント上昇して48.4%になりました。EDLP施策や風邪・インフルエンザの流行による風邪薬の好調、人流回復に伴う化粧品販売の回復などが見られております。

販管費は4費目すべてで低下

こちらは販管費の実績です。こちらの数字は株式報酬費用を人件費の中に68億円を含んでおりまして、先程と同様に株式報酬費用を除いた数字で説明したほうが実態を示していると思いますので、こちらの株式報酬費用を除くスライドで説明いたします。販管費全体としては21.2%ということで、前期から低下しております。

人件費率は9.0%で、前期から0.8ポイント低下しております。売上好調のなか、EDLPによるローコストオペレーションなどの人時生産性の向上ができたと考えております。修正計画に対しても改善しており、この成果は想定以上の効果が出たと考えております。その他経費につきましては電気代が含まれていますが、抑制できていると考えているので、4費目すべて売上比が前期より低下しております。コントロールできるところは人件費等コントロールしながら、売上好調の好影響を受けて、販管費としては低下できているということです。

フリーキャッシュフローはプラス

次に連結貸借対照表です。こちらは店舗数の増加があり、棚卸資産や有形固定資産、買掛金の増加が進んでおります。純資産につきましては前期末より188億円と大きく増加して見えますが、利益剰余金の増加に加えまして有償ストックオプションの影響がありまして、純資産の中の一つである新株予約権という項目で株式費用と同額の68億円を計上して、これが増加するという影響もあります。純資産率は前期末35.9%から38.7%で、2.8ポイント上昇・改善していることになります。

次がキャッシュフロー計算書です。ここについては少し詳しく説明していきます。営業活動におけるキャッシュフローはご覧のとおり、前期と比較して43か44くらいマイナスになっています。利益が増加したり、減価償却やのれんの償却、株式報酬費用や減損といったものを計上する前の利益では、前期から83億円増加していて、利益改善はしっかり進んでおります。

一方でこの影響につきましては、回転差資金、運転資金がプラスになるのですが、こちらが前期より41億円減少しています。

この回転差資金の減少は、曜日の巡り合わせが影響しています。前期末、2023年の5月20日が土曜日で、5日払いの支払いが当期にズレた影響があります。この影響額は30億円ほどありこれを補正しますと、前期の営業活動によるキャッシュフローは252億円、当期は298億円になり、この比較でいいますと46億円増加しておりますので、キャッシュフロー、稼ぐ力が弱くなっているわけではございません。

投資活動におけるキャッシュフローは211億円の支出で、前期より支出が11億円減少しています。財務活動におけるキャッシュフローは収入で3億4,400万円で、新規借入の実行額が前期より60億円減少しておりますので、この影響が大きく、財務活動によるキャッシュフローとしましては前期から72億円減少しています。フリーキャッシュフローは58億円のプラスになっており、現金及び現金同等物の期末残高は490億円程度となっています。

弊社が2006年の末期に上場してから、積極投資ということで投資を先行してきましたので、フリーキャッシュフローはマイナスになることがありました。2006年5月から2024年5月期まで19年でフリーキャッシュフローは年あたり5億円強くらいマイナスになっている状況でした。足元の2期間、前期の2023年5月期と当期の2024年5月期の期間のフリーキャッシュフローを合算しますと、2期間の合算で147億円プラスになっておりますので、若干投資を抑えていた部分もあったと思いますが、当社としては財務体制の改善ができる基盤ができたり、投資余力が増えていると思っておりますので、今後ステークホルダーの皆さんの意見を聞きながら、また次の中計に向かってどういう方式でやるかということが協議されるような、前向きな土台が整ったと考えております。

出店予定は70店舗。M&AでSM店舗を取得

次は今期の業績予想を説明いたします。出退店の計画ですが、ドラッグ店舗の通期の出店計画は70店舗です。M&AによるSM店舗の取得計画が8店舗あり、これは先日発表した木村屋とムーミーのものでございます。退店を13店舗計画しておりますので期末店舗数は1,018店舗の予定です。

設備投資計画のほうは新規出店数を増加したり、引き続き太陽光発電にも投資をしますので、投資総額としては290億円で、前期比128.2%となっております。

こちらが先日発表しました今期の通期の業績予想です。今期も上期に株式報酬費用を3億9,200万円計上しますので、前期ほど大きな影響はございませんが、この影響を除いて説明させていただきます。株式報酬費用が前期68億1,000万円、今期3億9,200万円を除いて、売上高が4,850億円で、前期比111.0%。売上総利益率は26.6%。引き続き食品の売上拡大による粗利ミックスの影響を踏まえまして、前期から0.4ポイントの低下を見込んでおります。

販管費率は21.3%、前期並みでございます。営業利益は255億円で前期比100.5%。経常利益は260億円で前期比96.6%。当期純利益は185億円で前期比96.8%という予想で発表させていただいております。

こちらは通期の業績予想を上・下に分解したもので、こちらは株式報酬費用を除いた金額で見ていただければと考えております。株式報酬費用につきましては前期の数字のなかには上期で60億1,500万円、下期で7億9,400万円、当期は上期で3億9,200万円入っておりますのでそれらを除いた数字です。ご覧のとおり、営業利益を見ますと上期125億円、下期130億円と計画しております。

全エリアで売上前期比増を計画 販管費は前期並み

こちらがエリア別の売上の計画です。ご覧のとおり、前期に続き全エリアで販売好調、前期比増を見込んでおります。北信越以外の新規エリアには今回から四国も入れておりますが、その売上構成比は前期54.4%から今期56.6%と、2.2ポイントの上昇を見込んでおります。

こちらが商品部門別の売上計画です。ご覧のとおり、引き続きフードの売上構成比の上昇を見込んでいます。前期48.4%から当期50.1%ということで、1.7ポイントの上昇を見込んでおります。

販管費の計画ですが、こちらの数字にも株式報酬費用の3億9,200万円が入っておりますので、除いた金額がこちらになります。

まず人件費比率は前期から0.5ポイント上昇し、9.5%という予算設定にしております。9%台ということで、引き続きしっかりとコントロールしていきたいと考えております。それから省エネ什器や太陽光発電の効果による電気使用量の削減効果を見込んでおりますので、その他の経費率は前期から0.3ポイント低下を見込んでおります。

販管費全体の売上比はほぼ前期と同様の21.3%を見込んでいます。私からの説明は以上になります。引き続き社長の青木より、第3次中期経営計画の進捗状況について説明させていただきます。

第三次中期計画は順調に推移。2026年5月期の売上高目標は5,000億円

代表取締役社長・青木宏憲氏:私からは第3次中期経営計画の進捗状況についてお話させていただきます。スタート前には非常に苦しい経営状況でしたが、前期3年目の折り返し地点を迎えまして、8年ぶりに上方修正をすることができ、結果を出すことができました。その進捗状況をご説明いたします。

こちらはビジョン2026ということで、2026年のアオキのありたい姿を描かせていただいております。人口5,000人くらいの町をイメージしていただければと思いますが、アオキが出店し存在することによって便利な暮らしと笑顔につながる、健康を支えるドラッグストアを目指しております。コーポレートメッセージは、「もっと便利に、ずっと笑顔で。」になります。このビジョン2026を実現するための重点施策は具体的にはこちらの3つになります。

1つ目はフード&ドラッグへの転換。生鮮食品を追加し、ポストコロナで重要となったワンストップ性をさらに高めていきます。

2つ目は専門分野である調剤併設率の向上です。11年ぶりに目標数値を50%から70%に引き上げさせていただきました。このフード&ドラッグ、プラス調剤が当社の特徴であり、他社との差別化になります。

最後は出店戦略で、これまでの方針はエリアの拡大、高速出店でしたが、エリアの拡大は当面行わず、営業エリア内での多店舗化を行っております。

ビジョン2026における数値目標です。2026年5月期におきましては、売上高5,000億円を目指しております。中期5ヵ年で2,000億円、毎年400億円ずつの積み上げが必要となりますが、直近2年間におきましては500億円ずつ積み上げることができております。今期の計画におきましても500億円の積み上げということで4,850億円、最終年度で5,000億円の達成ははっきり見えております。

無理をすれば1年前倒しで達成可能かとも考えておりますが、皆さんの方の不安をあおってしまうこともありますので、今回に関しては狙わずに、安定走行で行かせていただければと思っております。

フード&ドラッグ実現に向けた改装は今期完了の見込み

ここからは折り返し地点となる3年目の取り組みと結果、4年目の見通しについてお話させていただきます。1つ目の重点施策であるフード&ドラッグへの転換を行うために、2020年に10年振りのフォーマット刷新を行いました。これまでのフォーマットは2つあり、1つが標準の300坪、もう1つが450坪のコンセです。

300坪は2010年に開発されたフォーマットですが、2010年代の終わりには同質化競争に巻き込まれております。また450坪のコンセは2014年に次世代型フォーマットとして開発いたしましたが、多店舗化できないという課題がございました。そこで2020年代の戦いに備え、他社と差別化できるフォーマットの開発に取り組みまして、新たな標準フォーマットとして400坪の追加を行っています。

400坪はフード&ドラッグを新たなコンセプトとしております。300坪とのMDにおける違いは、100坪増えた分、集客力を高めるための生鮮食品の追加と、食品の充実を謳っております。野菜、肉、冷食に関してはこちらのような品揃えになっており、ドラッグの後でSMに買い回りをしなくても夕食食材をそろえることができ、ワンストップショッピングが可能と考えております。

この新たなフォーマットである400坪でフード&ドラッグにチャレンジしたことにより、300坪と比べて競争力のあるストアコンセプトであることがわかりましたので、2年目から既存店への波及を進めております。具体的にはこれまでのメインフォーマットである300坪の改装を行い、生鮮食品の追加と食品の拡大を図っています。直近2年間で500店舗の改装を実施しており、今期の上期中には小型店50店舗を除きすべてで改装が終了する予定です。

また今期新たに追加となりますが、現在のメインフォーマットである400坪を、今期中に全店改装したいと思っております。こちらの400坪は2020年にプロトタイプを構築し、早くも4年が経過しております。この4年間の中で400坪に適したレイアウトやMD、効率的な運営の完成度が高まってきましたので、これまで出店した400坪との統一を図るために、メンテナンス改装を実施したいと考えております。そういったことで今期の改装数といたしましては、300坪で50店舗、400坪で150店舗、合わせて200店舗の改装をしていきたいと思っております。

生鮮の導入比率が拡大 惣菜は全店で導入へ

このように既存店の改装を推し進め、フード&ドラッグに転換することにより、青果と精肉の導入比率が急拡大しております。新店時より生鮮の標準装備されている450坪のコンセ、そして400坪に加え300坪の改装を合算いたしますと、青果・精肉の導入比率は新中期が始まる前は15%でしたが、前期末におきましては3年間で95%まで高まっております。

今期の新しいトピックスとなりますが、青果と精肉に加え、惣菜の導入も計画しております。こちらのようにコンビニのような品揃えとなっており、こちらは新しい標準型であります400坪の惣菜コーナーですが、このように通常は郊外のドラッグにもない品揃えになっていると思います。こちらの惣菜に関しては、今期1年で全店導入を図っていきたいと思っております。

生鮮を導入しているだけですと当然売り上げは増えますが、店舗の手間も増え、人件費率が余計悪化するのではないかというご心配は当初からいただいておりました。そのため、こちらのようなローコストオペレーションの対策を並行して実施しております。

具体的には、価格販促をEDLPに変更し、定番の売り場の拡大を行っています。EDLPに関しては、お客様がいつでも来店していただけるようになり、生鮮の導入と相まって、客数の増加につながっております。

そして人件費の部分、店舗運営にとっては、EDLPによってチラシ売り場を作る必要がなくなりますし、さらには改装でプロモーション売場を縮小し、定番売場を拡大させています。これによって、既存店売上高が大きく伸びる中においても、賃金の伸びは最小限に抑えられております。結果として、生鮮を導入して売上が伸びても人件費率はこの2年間で1.1ポイント改善しております。

こちらは既存店の売上高の推移となります。4,5年前は北陸に大手ドラッグが続々と進出したことによりまして、既存店前年比は92.2%と100%を大きく割り込み、収益性も一気に悪化し、大変ご心配をおかけいたしました。

しかし新中期に入り、改装による生鮮食品の導入、そして価格販促をEDLPに変更したことにより、こちらのように右肩上がりになっております。初年度は98%、2年目は105%、3年目においては109.8%と、この十年間で最も高い売上となりました。前期の営業利益率におきましても5.8%と、以前の水準を取り戻すことができており、このような競争が激しい状況においても、戦える競争力を取り戻すことができたと考えています。

2つ目の重点施策である、調剤併設率70%に向けた推移になります。生鮮やフードの拡大により集客力は高まりますが、お客様の信頼をつかみ利益に結びつけるうえでは、調剤のさらなる取り組みが重要となります。前期は70の開局を計画し、計画通り70の開局をいたしました。併設率はこの3年目の折り返し地点で63.5%と、60%の大台を超えています。今期も前期同様、70薬局の開局を計画しており、併設率は66.0%まで高まっています。

また調剤売上高としては、前期は107.7%と、伸びが2桁を切っております。こちらに関しては新型コロナの有料検査が調剤の方に当社の場合は入っておりますので、こちらの反動ということで、この有料検査の数値を除けば、他社以上に順調に伸びていると考えております。

併設率70%に高めるうえで最大の課題は新卒の薬剤師採用です。薬剤師の新卒採用に関しては、コロナ発生後、2021年4月においてははじめて100名を超え、その後22年、23年と、140名を超える採用ができております。しかし、前期は109名と失速しております。コロナが収束して薬剤師の取り合いが各分野で発生し、取り負けてしまいました。

また薬剤師だけではなく総合職の採用も苦戦しており、合わせて709名ということで、当初の目標から比べると150名以上のショートとなりました。こちらに関しては、出店が計画よりも少なくなったということで調整できましたが、来年に関しては出店の拡大をより図っていきたいという思いがありまして、薬剤師150名も含め、950名の採用を計画しております。しっかりと未達になることなく、採用していきたいと思っております。

好立地物件の減少に立ち向かうM&A戦略

3つ目の重点施策である出店戦略です。こちらに関しては、採用以上に現在の当社最大の課題だと思っております、立地開発になります。初年度は102店舗と好調なスタートを切ることができましたが、2年目は90店舗、3年目は45店舗と半減しております。

要因としては、この2年間続く建築費の急騰と、好立地物件の減少になります。こちらに関しては、これまで当社の収益性の改善、そして競争力の回復が確認できてきましたので、投資基準を引き下げ、M&Aを活用しながら100店舗という目標を念頭に置きながら行動していきたいと考えております。今期はその途中段階になりますので、70店舗を展開させていただいております。

内訳といたしましては、上期が17店舗、下期が53店舗を計画しており、下期への偏りから、依然厳しい状況に見えますが、M&Aを含め、この立地開発の改善の兆しは見えてきていると考えています。その100店舗に向けた後押しとして、先週の決算発表で地場SMの2企業の子会社を発表させていただいております。

1件目が香川県のムーミーです。半年前に四国初進出となる、愛媛県のママイの子会社化を発表させていただきましたが、ムーミーは四国の第二弾となり、香川県初進出になります。ムーミーの売上高は60億円、店舗数は6店舗ですが、先程の愛媛県のママイと合わせますと、売上高で約150億円、店舗数で20店舗になり、今後の四国開発の大きな土台になってくると思っております。

2件目は千葉県の房総半島のスーパーガッツです。売上高63億円、店舗数は4店舗です。一店舗あたりの売上高が16億円と、これまでの企業に比べますと非常に高い売上高です。この売上を作る力は高いと見ておりますので、関東全体の生鮮ノウハウの向上につながっていくと考えています。

これまでの5年間における地場SMの子会社化の一覧です。合計14社となりました。M&Aの目的は2つあり、1つは各エリアごとの生鮮ノウハウの獲得です。生鮮は大きな武器となりますが、エリアごとにMDを構築する必要がありますので、このように14企業に関しましては、分散する形で実施させていただいております。

2つ目は好立地物件の確保になります。14企業を合わせますと、子会社前のSMの規模といたしましては、売上高は496億円、店舗数は69店舗になります。当社の中期計画が5年間で2,000億円の上積みが必要ということになりますので、2,000億円のうちのほぼ500億円、4分の1が地場SMの、このようなM&Aによる成長ということになります。

前期の出店数と期末の店舗数です。前期は45店舗の出店を行いました。内訳としては、東北で3、関東で10、東海で4、関西エリアで10、そして地元の北信越では18になります。

今期の出店数です。内訳としては、全体で70、東北で6、関東で11、東海で21、関西で6、四国で7、地元の北信越は19です。

前期は出店に関して大幅に減少することが分かっておりましたので、環境問題、そして高騰する電気代の対策として、太陽光パネルへの投資に向けさせていただきました。前期は500店舗の計画に対し、450店舗の設置を行いました。写真のように、屋根の上にパネルを敷き詰める形になっております。今期はさらに250店舗の計画をしています。中期最終年度いたしましては800店舗となり、設置率が70%を超えています。CO2削減量としては、小売業としては3番目にあたることになると思いますが、5万トンを計画させていただいております。

最後に業績概要についてコメントさせていただきます。前期は売上高4,368億円、前期比は115.3%と高い伸びとなりました。115%超えは2年連続になります。特に前期は既存店の前年比が109.8%と、10年ぶりの高い伸びになりました。粗利率に関しては27.0%と、前期より1ポイント悪化しております。生鮮食品や食品の比率が高まったことが要因となります。

一方で販管比率については21.2%と、前期よりも2.8ポイントと大きく改善することができました。こちらに関しましては既存店前年比が109.8%と非常に高く伸びる中におきまして、ローコストオペレーションの取り組み、そして太陽光パネルの設置によりまして、人件費やその他経費の増加が大きく抑えられたことが要因と考えております。

最後に今後の業績予想です。今期に関しましては4,850億円。前期比で111.0%ということで、引き続き2桁の伸びを計画させていただいております。営業利益高としましては255億円、前期比100.0%ということで、本当にわずかですが、増益を計画させていただいております。一方、経常利益と純利益に関しては、前期におきまして補助金収入が12億円ありまして、今期に関してこの補助金収入をゼロで見ておりますので、このような減益の形とさせていただいております。(談・文責:編集部)

サイバーエージェントの提案する「調剤」と「物販」が融合した、これからのドラッグストア

サイバーエージェントでは、創業以来展開しているインターネット広告事業で培ったデジタル分野の専門知識やAI技術の研究開発組織「AILab」の技術を生かして、これまで30社以上の企業のデジタルシフトに貢献しており、近年では小売業界の支援にも注力している。さらに、同社は調剤をはじめ医療領域におけるAI活用、DXを推進するMG-DX社を子会社として保有。今回の出展では同社の総合力を生かしたドラッグストア(DgS)の調剤と物販の効果的な融合を体感できるブースが出展されていた。(月刊マーチャンダイジング2024年10月号より転載)

調剤受付のコーナーから展示を開始

MG-DX社の提供する「薬急便(やっきゅうびん)」は、調剤受付からオンライン服薬指導まで、オンライン調剤に必要な機能をすべて兼ね備えたサービス。現在、クオール薬局、サンドラッグ、サツドラ薬局など全国の薬局で採用されている。

今回の出展は、薬急便を使って調剤の受付を済ませた後、待ち時間を使って物販スペースで買物することを想定してブースを構成。

薬急便のサービスで最近とくに好評なのが「薬急便モバイルオーダー」である。これはファストフードチェーンやコーヒーチェーンで導入されているモバイルオーダーの仕組みと同様で、利用者は処方せん画像を希望する薬局に送信して受取時間を予約する。薬の準備ができるとスマホに通知が届く。会計もあらかじめクレジットカードを登録していればオンラインで決済。薬局では処方せんと引き換えに薬を受け取り、服薬指導を受ける。

処方せん画像の送信の他、従来のように店頭受付も可能。その場合、処方せんと引き換えに薬剤師が受付票を患者に渡す。そこに印刷されたQRコードを患者が読み取れば、スマホ上で呼び出し(待ち)状況の確認や、お薬の準備完了通知を受け取ることができる。

また、最大の特徴は、オンライン受付と店頭受付を統合管理できることだ。調剤スペースのデジタルサイネージで全ての待ち状況を可視化し、さらに販促動画や広告を組み合わせて流すことで、「待ち時間にお買物」という行動も促進できる。反対に物販エリアにも調剤の待ち状況を流すことで、調剤の利用促進にも繋がる。

こうした一連の仕組みで、待ち時間が読めずにイライラして満足度が低下する問題を解消。さらに待ち時間を買物時間にするといった習慣の定着によるドラッグストア全体の売上アップも狙える。調剤と物販融合のひとつの手段である。

調剤と物販の融合イメージ

店舗でオンライン服薬指導 患者は時間節約、薬局は効率改善

薬急便は、8月28日に新サービス「遠隔接客AIアシスタント」をリリースしたばかり。ドラッグストアショーにて、本サービスのデモンストレーションを先行公開した。

[写真1]調剤の受付から展示を開始。調剤と物販の融合を促進する「薬急便モバイルオーダー」、患者の時間節約、薬局の業務効率化につながる「遠隔接客AIアシスタント」の受付機器をそれぞれ設置。順番待ちの案内と販促のサイネージを同じ画面で表示。調剤の待ち時間を買物時間に使う起点となる

「遠隔接客AIアシスタント」は無人受付と遠隔接客を組み合わせたサービスで、店舗(薬局)で処方せん受付を行った患者のうちオンラインによる服薬指導を希望する人に対応する仕組み。待ち時間の間に先に服薬指導を受けることも可能で患者側は時間の節約につながる。

薬局側は、比較的すいている他店舗の薬剤師が遠隔で服薬指導だけを行うことができるので、混雑店舗の作業効率改善に貢献。企業全体としては、薬剤師の業務負荷の平準化、コスト改善を図ることが可能となるほか、将来的には、調剤非併設店などにも設置することで処方せん応需スポットの拡大にも繋がる。人手不足が常態化しているDgSチェーンにとっては朗報である。

ドラッグストアショーでは、遠隔接客AIアシスタントを体験できるよう、各種機器を展示、サイバーエージェントのスタッフが体験希望者に対して丁寧な説明を行っていた(写真2〜6)。

調剤と物販の融合は、単に調剤体験、買物体験を変えるだけでなく、調剤データと物販データの融合による効果も視野に入れている。これが実現すれば、調剤併設DgSで、物販は利用しているが、調剤は利用していないユーザーが明らかになり、こうした層に、調剤薬局の利用を促進することもできる。

さらに、優良顧客である調剤利用者をターゲットに物販への送客も可能、調剤未利用者の掘り起こしと合わせ、企業の収益性を大きく変える可能性を持っている。サイバーエージェントでは、こうしたデータ面での調剤と物販の融合も事業領域としており、DgSの支援を進める構えだ。

「遠隔接客AIアシスタント」の利用プロセス

[写真2]AIにより動作するマスコットのロボットが、センサーにより患者の立ち寄りを感知して「受付はこちらです」と声を掛ける
[写真3]タブレットで受け付けをすると、マイナ保険証の有無、ジェネリック薬希望の有無、受け取り方法などいくつかの質問があり、それらに回答すると最後にオンライン服薬指導を受けますかと聞かれるので、「はい」をタップするとQRコードが発券される
[写真4]QRコードを持ってオンライン服薬指導のスペースへ移動。専用の端末にQRコードをかざすとオンライン服薬指導用のモニターに服薬指導する薬剤師の画像が出る(写真5画面向って左上)
[写真5]患者の画像は画面右下に出て、中央部分に薬の説明書を表示。これを見ながら服薬指導を受ける。
[写真6]受付から他店舗へのオンライン服薬指導の依頼まで一連のサービスはAIにより自律的に行われるが、不都合があり店舗の薬剤師の支援が必要になれば、患者はその旨を伝えることができる。写真は調剤する店側のモニター、支援が必要な患者がいれば通知される

自己推薦ロボットとデジタルサイネージ

[写真7]調剤スペースの販促サイネージで商品イメージを訴求、物販スペースのサイネージと連動させることで購入率の向上を図る。順番待ちの案内では、通常の「店頭受付」、時間のかかる「多剤調剤」、「モバイル受付」を番号の色別で表示することで、調剤内容、受付方法により、待ち時間に差が生じることを患者に理解してもらう

物販スペースで展示されたのは、棚の前に立ち止まるとセンサーが感知して商品が踊り出す「自己推薦ロボット」と3面連結の迫力あるデジタルサイネージ。

[写真8]薬急便モバイルオーダーの店頭受付機器。処方せんを受け取った薬剤師が受付ボタンを押すと、薬局用の患者情報シート、患者用のQRコードが印刷されたレシートの2枚がプリントアウトされる。患者がQRコードを読み取るとスマホでお薬の準備状況の確認と準備完了通知の登録ができる。準備完了通知を利用した患者の90%以上が「薬急便」へ会員登録をするなど、オンライン調剤への移行を促進している。さらに、QRコードのレシートから自社アプリやLINE公式アカウントへの誘導も可能で、店頭受付が各種オンラインサービスとの接点になる

自己推薦ロボットは第三者的にロボットが話すのではなく、商品自らが話すコミュニケーションスタイルで消費者の関心を集める。活用に前向きな小売企業も多いという。現状は、実証実験を行っている段階で、限定された店舗で試験的な導入となっている。

[図表1]自己推薦ロボットによる販売増加率

お客の動きを感知して自らが動くことで、立ち止まり率が2倍以上にアップ(大型雑貨店での事例)、商品によっては6倍以上の販売増加率を達成している(図表1)。新たな販促プロモーションの可能性が証明されている。

また、別途AIカメラを設置して自己推薦ロボットが設置された棚の動画を撮ることで、立ち寄り率、手に取った人の割合などを計測可能。それらをメーカーにフィードバックすることで、製販協働で販促効果を上げられる。

[写真9]三面連結のミライネージは迫力があり視認性、訴求力も高い。調剤スペースのサイネージとの連動でより高い効果が期待できる

サイバーエージェントが開発した店舗サイネージ配信システム「ミライネージ」は単に動画を流すだけでなく、効果検証して改善する「運用」と一体的にサービスを提供している。売上状況を日次で把握して、配信効果の高い店舗への配信を増やすなど状況に応じて最適な施策を、早いところで週次で立案、実施している。

[写真10]ミライネージの運用を説明するボード。配信による売上変化などの実績を確認しながら、店舗ごとの出しわけなどを細かく運用することで効果を最大化させている

また、同社では広告クリエイティブ制作の専任部隊も構えており、こちらも売上状況に応じて短時間でクリエイティブを差し替えることが可能。こうしたサイネージ広告を調剤、物販両スペースで連動させることで、より高い売上効果が期待できる。

最後に8月末にリリースした新たな広告配信サービスも資料で紹介されていた。これは、ポイントやクーポンをフックに消費者行動を促すサービスで、小売企業の自社アプリで特定の広告を閲覧した人にポイントを付与。

ユーザーはそのポイントで当該小売店に限り買物をすることができるという仕組み。これにより小売アプリのアクティブユーザーは増え、リテールメディアとしての広告収入も安定化、物販収益の向上も見込める。メーカーからしても、ポイント付与のメリットを武器に確実な広告閲覧を促せるため、認知や購買効果に期待ができる。すでに一部DgSアプリへの導入が決まっているとのことだ。

調剤事業の強化を成長ドライバーとするDgSは多い。それだけで終わるのではなく、調剤強化を物販強化にも繋げることで、成長スピードはさらに早まるだろう。その意味で今回のサイバーエージェントの提案は示唆に富んでいた。

[写真11]自己推薦ロボットを設置した棚の展示
[写真12]自己推薦ロボットは棚の前を人が通過するとセンサーが感知し、「やったー、お客さんだ」といった歓喜の声を発して踊り出す。店頭における新たなプロモーションとして、活用に前向きな小売店も多い

 

コスモス薬品 2024年5月期決算発表レポ「新商勢圏への出店ペースが加速。設備投資額は過去最高に」

月刊MD2024年10月号は恒例「ドラッグストア白書」特集。本稿では2024年7月18日に開催されたコスモス薬品の2024年5月期決算発表会のレポートをお届けする。月刊MD本誌では本内容をよりタイパ良く読めるレポートを掲載している。(談・文責/編集部)

さらなるディスカウント強化で食品の売上が大きく伸長

代表取締役社長 横山 英昭氏:決算の概要についてご説明いたします。

売上高は9,649億円、前期比16.6%増、営業利益は315億円、前期比4.6%増、経常利益は342億円、前期比3.7%増、当期純利益は244億円、前期比2.8%増となりました。

新規出店は139店、閉店は7店。これにより、期末店舗数は1,490店となりました。

次に、既存店売上高の推移になります。2023年1月の下旬からディスカウント戦略をより一層強化したことにより、2024年5月期は既存店売上高が好調に推移しました。この高い前年比は、第4四半期に入って一巡して前年ハードルが上がったことにより、伸び率が鈍化しています。しかし、引き続き前年比プラスを維持しており、好調な売上高が継続していると言えます。

次に、商品区分別の売上高の状況です。すべての部門でディスカウントを強化しましたが、価格に敏感な食品で一番大きく売上が伸びています。そして、食品を買いにきていただいたお客様にその他の部門の商品をご購入いただいたことで、どの部門の売り上げを大きく伸ばすことができています。

関東・中部・関西地区への出店が進む

次に、地域別の状況です。我々が新商勢圏と位置づけている関東、中部、関西地区は積極的に出店を続けていることに加え、比較的新しい店舗のディスカウントをより一層強く打ち出したことで、これらの地域の売上高が大きく伸びました。

中国、四国、九州地区につきましても、すでに高い販売シェアを持っていますが、さらに売り上げを大きく伸ばすことができました。ただ、我が社が新商勢圏と位置づけている関東、中部、関西地区の出店ペース(?00:03:04)が速いので、東側の地域の売上高と店舗数のウエイトが今後も高まっていきます。

次に、販管費の状況です。給与、賞与は待遇改善を進めたことに加え、急激な売上高の増加に対応するために、店当たり人員数を若干増やしたことで大きく伸びました。

水道光熱費は昨年の大幅な上昇から一転して減少に転じています。ただ、これは一時的なものだと思います。日本経済全体が長いデフレから完全にインフレに転換したのですから、今後は様々なコストが上昇すると思います。このような中で、今後も可能な限り販管費を抑え、売上高を伸ばしていけるように頑張っていきたいと思います。

次にバランスシートの状況です。まず商品についてですが、急激な売上高の伸長に合わせて、若干ですが在庫を厚めに持ちました。固定資産は過去最高の出店数となる139店の出店を行ったことで、有形固定資産の前年比はやや大きくなっています。わが社はビルや商業施設へのテナントとしての入居はほとんどなく、フリースタンディングの郊外型店が大部分を占めています。

そして、土地は基本的に借りていますが、建物は自社所有が中心です。よって固定資産の比率が同業他社よりも高くなっていますが、デフレ時代に安く建てた建物が、インフレとなって格安で仕入れた優良資産となり、すでにそれを数多く抱えていると自負しています。

今後も財務のバランスを崩さない程度に積極的に設備投資を行い、さらなる成長を目指していきたいと考えております。

設備投資の増加でフリーキャッシュフローはマイナス

 

次にキャッシュフローの状況です。営業キャッシュフローは550億円ほど稼ぎましたが、先ほど説明したように、新規出店を中心とした設備投資が増えたことで、投資キャッシュフローがそれを超えて過去最高になりました。これによりフリーキャッシュフローがマイナスになりましたので、銀行借入を増やしています。

期末の現金残高は500億円を超えていますが、年間売上に対して20日分にも満たない程度なので、適正であると考えております。配当につきましては、この数年間で配当性向を10%から20%まで引き上げています。これにより、2024年5月期は予定していた通り、20円増配の120円といたします。

なお、株主優待制度を廃止し、今年の8月31日を基準日として、1対2の株式分割を実施することといたします。2025年5月期の配当は、分割前の基準で10円増配の130円、分割後の実際の年間配当は、この半分となる65円を予定しています。

なお、今後は累進配当を基本として安定的、継続的な配当を実施すると同時に、経営体質強化のための内部留保を確保し、さらなる成長のために再投資を行っていきたいと考えております。

2025年5月期は120店舗の出店を計画 長野県・福島県での出店調査も開始

次に店舗分布図になります。2024年5月期の店舗数は、この表に書いてある通りです。2025年5月期は120店の出店を予定しており、関東、中部、関西地区に70店、九州、中国、四国地区に50店の出店を予定しております。これから、まだ出店していない長野県、そして東北地方に分類される福島県の出店調査を開始したいと思っております。

我が社は、県境や東北地区といったエリアの区分はなく、インクが染み出すように地続きで徐々に出店エリアを拡大しつつも、すでに出店している地域の店舗密度をより濃くしていくドミナント出店を今後も続けていく方針です。

調剤につきましては2024年5月末で50店舗になりましたが、積極的な展開は少し控えています。2025年5月期も4店から5店程度の併設店を増やす予定にしていますが、本格的な調剤事業の展開はもう少し先になると考えております。

以上ご説明した出店施策と、引き続きディスカウント戦略を継続することで、2025年期は売上高が1兆円を超える見通しになっております。しかしこれもただの一里塚として、さらなる成長を目指していきたいと考えております。(談・文責/編集部)

リテールメディアの現在地

リテールメディアの概念が提唱され、小売業各社がサービスとして提供し始めて数年が経過した。実際にリテールメディアをテスト運用したメーカーはその結果を受けて、今後どのように向き合っていくかを検討するフェーズに入りつつある。メーカーは一体いま、リテールメディアにどのような期待感を抱いているのだろうか。リテールメディアが今後目指していくべき方向性とは。サイバーエージェントでリテールメディア事業の統括を務め、日々メーカーと向き合い、そのニーズを知り尽くす高橋篤氏に、同社藤田和司氏が聞く。(月刊マーチャンダイジング2024年9月号より転載)

リテールメディアの担当部署が二分化してきた

藤田 小売業さんにはリテールメディアという言葉がだいぶ前向きに浸透しつつある一方、メーカーさんの見方はポジティブなもの、ネガティブなもの、様々だと感じています。高橋さんは最近のメーカーさんのリテールメディアに対する受け取り方の傾向をどう感じていますか。

高橋 おっしゃるとおり、メーカーさんはリテールメディアに対して大きく2つの印象をお持ちになられています。いろいろ試してみたうえで、そろそろいったん総括しようという積極的なものと、リテールメディアについて、本当のところはどうなんだ?という懐疑的なものです。

もう一点、ここ1~2年でメーカーさんの体制が、2種類ほどに分かれてきたということも感じています。リテールメディアをあくまでも小売店における売上を上げるための施策と捉え、営業部が担当するという体制と、ショッパーマーケティング部、トレードマーケティング部のように、マーケティング寄りの部署が担当するという企業さんです。もちろんそのどちらでもないという企業さんも見られますが、だんだんこの2つに大別されてきているように感じます。

藤田 メーカーさんが体制を変更しつつある理由は一体何なのでしょうか。

高橋 メーカーさんの営業部がリテールメディアを担当するケースでは、リテールメディアを広告として捉えるのではなく、店頭に配荷された商品をプロモーション効果で売り伸ばしたいという意図が第一にきているようです。

一方ショッパーマーケティング部やトレードマーケティング部が担当する場合は、リテールメディアが持つ独自のデータの価値や、実店舗を持っている小売業さんならではの広告の掲出場所に、ポテンシャルを感じているケースが多く見られます。

とくに外資系のメーカーさんでは、リテールメディアの専門部署を設立するケースも増えてきたように感じます(図表1)。

[図表1]リテールメディアを扱う体制の変化

藤田 外資系メーカーさんは、リテールメディアに限らず、新しいものは早く取り入れてみて、いいものは残し、そうでないものはやめていくという、取り組み判断が早いですよね。日本のメーカーさんの動きはいかがでしょうか。

高橋 そうですね。すべてとはいいませんが、変わってきたメーカーさんはいらっしゃいます。どちらかというと、メーカーさん自体が変わってきたというよりは、その話を推進するご担当者様の感度が高いという印象です。

藤田 2000年代初頭のインターネットメディアが登場してきた当初と非常に近しい匂いを感じますね。企業のなかで感度高く行動する方がいるところは取組みが早く、そうでないところは遅れがちになる。

オンライン・オフライン連動で市場は伸長する

藤田 アメリカではリテールメディアの市場の大半がオンライン広告ですが、日本の場合、実店舗のリテールメディア化を積極的に進めている小売業が多いと感じています。それぞれのマーケットの規模や、今後の伸びしろについては、どのように捉えておけばよいと思いますか。

[図表2]リテールメディア広告市場規模推計・予測
[図表3]リテールメディア広告市場規模推計・予測(店舗事業)

高橋 カルタホールディングスさんが発表されているリテールメディア広告市場の市場規模推計・予測(図表2、3)によれば、2024年のリテールメディア広告市場規模は4,688億円、うち、実店舗事業者は420億円、EC事業者は4,268億円と推定されています。

EC事業者の広告費用はプラットフォーマーの広告費が大半を占めていると思われます。さらに実店舗企業の420億円の内訳は、デジタルサイネージが170億円、デジタル広告が250億円となっています。つまり、日本においても大半がEC事業者と、実店舗小売業のデジタル広告に占められているという状況です。

藤田 この調査からは、現状は「リテールメディアの大半はオンライン広告である」と感じさせられますね。一方、実際の現場では店頭という「買い場」に近い場所で、リテールメディアを活用してプロモーションを実施した際の売上に対する効果は絶大であるとも私たちは感じています。

ECの広告は「買い場のすぐそば」(※編集部注:商品を買物かごに入れたりする画面の近く)でプロモーションをしているから、効果が出て当然です。オフライン広告は過小評価されているのではないでしょうか。

高橋 リテールメディア全体で見た場合、ECやデジタル広告も含めたオンライン広告の方が、規模が大きくなるのは当然のことだと思います。

ただ、業態やカテゴリーごとに見ていくと、そことは異なる結果になるようにも感じています。例えばコンビニの場合はオンライン広告よりもサイネージなどの店頭広告の方がシェアが高い状況です。

実店舗の小売業は、店頭を持っていることが一番の強みです。その本来のポテンシャルをまだまだ生かしきれていないという意味で、現状の試算に落ち着いているのではないでしょうか。

オンラインの顧客接点と、最終的な買い場に近い「店頭」での顧客接点という強みが、それぞれフルパワーで発揮されるようになれば、オンライン広告と店舗広告の比率が逆転する可能性はあるのではないかと私は捉えています。

藤田 サイネージに代表される店頭広告は、設備投資を含めたコストがかかりますので、規模拡大にある程度の時間がかかることは容易に想像がつきます。比較的低コストでできるオンライン広告が先行して、その後投資が必要とされる店舗での広告が後追いになるのは当然です。

オンライン広告、店頭広告どちらかだけ出稿するというのもありますが、両方を組み合わせて展開することで、効果は格段に上がります。オンラインとオフラインの広告が、相乗効果で伸長するという未来は十分にありえると思います。

どうメディアを選定していくか

高橋 最近はリテールメディアの効果測定にどのような指標を見るべきなのか、さらにその効果測定に基づいてメディアをどう選定するべきか。どうプランニングすべきか、という疑問がメーカーさんから出るようになりました。

藤田 リテールメディアの登場当初は効果測定ができるかどうかそのものが、ひとつ大きな争点でした。ある程度技術が拡充することによって効果測定が当然のことになり、今度は「“購買数1万”という数字をどうと捉えるべきなのか」という質問が増えてきているんですね。それに対して、指標をつくるところから伴走する企業が必要とされているようにも感じました。

高橋 あるメーカーさんがおっしゃっていた話が印象的です。

これまでは「リテールメディアのソリューションをテストする」こと自体が目的になっていました。ですが、メーカーさんとしては「認知を得たい」「購買を得たい」という目的がまずあって、それに適したリテールメディアを選ぶべきで、その順番を間違えないことが重要だとおっしゃるのです。

いままでは「リテールメディア」というキーワードに振り回されていましたが、少し冷静に見直すべきタイミングがきたのだと思います。

大手プラットフォーマーと比較した自社の強みをとがらせる

藤田 メーカーさんの視点から見たときに、とくにリテールメディアを運営する小売業さんが気を付けないといけないことは何だと思われますか。

高橋 広告出稿者であるメーカーさんから見たときの比較対象が他の小売業だけではないということだと思います。小売業さんとお話をしていると、「メーカーの営業部ではなくて、宣伝部やマーケティング部、ブランド部などとお付き合いはできませんか」というご相談をよく頂きます。

しかしそういった部署が広告出稿をするメディアというのは、マスメディアはもちろん、デジタルでいえばYouTube、Google、Meta、Instagram、LINE、TikTokなどの大手プラットフォーマーです。ドラッグストア、コンビニ、スーパーマーケットという実店舗メディアと比較するのではなくて、既存の広告メディアや大手プラットフォーマーと比較してどこに優位性があるのかを問われていくようになるのだと思います。

ではリテールメディアの広告の価値とは何だろうと考えると、当然マスメディアや既存のデジタルプラットフォームが持っていない、独自の購買データを基としたファーストパーティデータであり、もうひとつがサイネージをはじめとする店頭メディアや自社アプリなどの広告の掲出位置であると思います。

藤田 リテールメディアをこれから始めていこうと考えている小売業さん、あるいは一部の店舗で実験的に進めているがこれから規模を大きくしたいと考えている小売業さんはまだたくさんあると思うのですが、そのときにシンプルに何に注力すればメーカーさんとして採用しやすくなると思いますか。

高橋 自社の強みが何なのかを認識して、そこに対するメディアをつくっていくことだと思います。世の中で何がはやっている、という話ではなく、小売業さんが持っている既存の資産のなかで、どの顧客接点がその企業さん独自の価値なのかを突き詰めることがポイントなのではないでしょうか。

アプリの顧客接点が既存のプラットフォーマーと比較しても規模が大きいとか、独自のデータを持っているということがあれば、そこの強みをとがらせるべきでしょう。

全国に店舗があって、毎日これぐらいのお客様が来店されるというのが強みであれば、それを利用したメディアをつくるべきです。

[図表4]メーカーのメディア検討のこれから

藤田 逆の言い方をすると、メーカーさんのどの目的に適したメディアなのかをお伝えしていく必要があるということですね(図表4)。

メーカーさんの営業部よりも、宣伝部やマーケティング部などに対する価値をより出したいということであれば、事前の分析や事後のリポートをどれだけ手厚く提供できるかは重要なポイントです。自社の会員情報や、該当メーカーさんの購買傾向を深掘りして提供するのはもちろんですが、競合メーカーと比較してどうなのかなど、開示できるデータの幅が鍵を握るように感じています。

高橋 リテールメディア出稿に際して費用を請求するのに、データの提供は拒むとか、企画連動の話は出さないという小売業に対しては、一切取組みはしない、というスタンスをあらかじめ提示しているメーカーさんも出始めています。

藤田 リテールメディアをいわゆる「広告」としてメーカーさんから認識してもらいたいのであれば、広告として必要なリポートをきちんと提出しましょうということなのでしょうね。そうでないと、これまでの商談の延長線上で、販促費や協賛金を払っていたのと変わらないことになってしまいます。

それと、「広告メディア」として考えるのであれば、出稿主とメディアが「対等」であるべきですが、いまはそのような構造になっていないようにも感じます。基本的に、メディアというものは平等に開かれていて、広告費を支払えばだれでも出稿できるという性質のものです。これまでの「取引」の延長線での話になってしまいがちなところには配慮が必要かと思います。

小売業側も社内の連携が必須に

藤田 そう考えると、いわゆる商談のあり方というか、小売業さん側の姿勢も少し考えていくべきフェーズにきているのかもしれませんね。

高橋 デジタルの取組みが加速することによって、商談の仕方も変わっていくのではないでしょうか。リテールメディア単体で効果を出すのはそう簡単なことではありません。確実に効果を出そうとするのであれば、商品部と販促部、店舗運営部など、複数の部署が連動することが必要です。

藤田 もちろん中心となる部門やご担当者の方は必要ですが、これまで以上に、小売業さんが社内で連携していかないといけないということですね。

メディアとしての小売を使うという話はかなり多岐にわたっていて、オンラインでデータを使うという話もあれば、店頭を使うという話もあります。店頭を使う場合、企画と連動したり、売場を立ち上げるという話もあるかもしれません。そこは一気通貫で連携をとっていくような動きが必要ですよね。

「購買」だけでなく「認知」にも効果あり

藤田 最後に、小売業さんがリテールメディアを運用していくにあたって配慮すべきポイントを教えてください。

高橋 リテールメディアが「購買」だけでなく「認知」にも効果があるということをもっと前面に打ち出していった方がいいように感じています。

リテールメディアは、購買データがあるため、実施した施策の「売れた・売れなかった」という結果が、よくも悪くも可視化されてしまいます。一方で「リテールメディア=購買に効くメディア」だということだけが切り取られてしまいがちです。

ですが最近の傾向として、これまではテレビで商品を認知して、店頭で購入するという消費行動だった方が、テレビを見なくなってきて、店頭やスマートフォンで商品を認知し、そのまま購入するというケースが増えてきています。

つまりリテールメディアは必ずしも「購買」だけに効くというわけではなくて、世代や商品によっては「認知」にも十分効果を発揮できるメディアであるということです。

藤田 私たちにとってもこれは反省するべきポイントで、ここ数年間「リテールメディアは売上が取れるから、まずは売上で効果を証明していこう」とアピールしてきました。それ自体は間違ってはいなかったと思うのですが、そればかりになってしまうと、結局単なる新しい販促手法が登場しただけという話になってしまいます。

アプリのなかで、その人に合わせた商品紹介を行うとか、ブランドページをつくって世界観をお伝えするなどというようなことも次第に増えてきています。商品の魅力をきちんと伝えていくということも、リテールメディアに期待される役割のひとつだということは再確認したいところです。

私たちも「獲得」のひとつ手前にある「認知」を、リテールメディアの価値として可視化していく必要があるのかもしれません。

本日はありがとうございました。

 

《取材協力》

サイバーエージェント
リテール
メディア事業本部統括
高橋 篤氏
サイバーエージェント
協業リテールメディア部門統括
藤田 和司氏

Genky DrugStores 2024年6月期決算発表レポ「自前化の徹底で強固になるローコスト経営。坪当たり経費は低水準をキープ」

月刊MD2024年10月号は恒例「ドラッグストア白書」特集。本稿では2024年8月1日に開催されたGenky Drugstoresの2024年6月期決算発表会のレポートをお届けする。月刊MD本誌では本内容をよりタイパ良く読めるレポートを掲載している。(談・文責/編集部)

既存店昨対が好調 消費者の高い節約志向が客数増加に直結

財務IR部長 常見氏:24年6月期の実績振り返りということで、売上高・客数・客単価の前年対比の推移をご覧ください。

左側上のグラフが、売上高の既存店昨対の3年間の月別のトレンド、濃い青色のものが本年度になります。下が客数及び客単価の月度別の推移です。

今期を通して、特に生鮮食品や日配品が非常に強い集客を促し、昨対を牽引いたしました。仕入れ高の価格高騰は続いていますが、これによって1点単価は通期で4.9%増加いたしました。お客様の節約志向は非常に強く、これによって買上点数自体は2.8%減少いたしました。

しかしながら、トータルで見てお客様の節約志向が強まったことにより、例えばスーパーで週4回買い物をしていたうち、1回はちょっとゲンキーで節約しようかというマインドが強く働いたと想定をしておりまして、客数が通期でも既存店プラス4.7%という結果でございました。結果として、既存店昨対は通期で非常に強い、プラス6.7%を達成いたしました。

第4四半期の会計期間の前年比です。数字についてはご覧いただいた方が大半かと思いますので、割愛をいたします。粗利高が昨年に比べて、0.1ポイント高まったというところですが、これについては、いわゆるロスの改善であったりリベートであったり、ちょうど昨年の第4四半期に富山県小矢部市に富山小矢部RPDCという大型の物流センターを1棟建てたこともあります。そのイニシャルコストで約1億円弱がかかっており、これが仕入れ原価に入っておりますので、昨年はその分押し下げ要因になっておりますので、今年はそれらがないということでプラスに働いております。

一方、販管費が大きく下がっております。こちらは主に電気代、次いで人件費の2つが大きく寄与しております。特に電気代については一昨年、原材料と合わせて非常に高騰して異常値でしたが、それが国の補助金などもあわせて一部沈静化したこともあって大きく下がりました。セルフレジ導入等々については、後ほどの藤永の説明のところでもご説明をいたします。

売上高は期初計画を上回る

結果として、通期の売上高については1,848億6,000万円と、期初予想では1,800億円を見越していたところから48億円上振れという結果でした。粗利については概ね去年と同等でした。販管費は、先ほど申し上げたとおり主に電気代がぐっと下がりました。これは自助努力ももちろんありますが、やはり国の補助金と電力単価が下がったという影響も多分に含まれております。結果として営業利益については90億1,500万円ということで、営業利益率4.9%を達成いたしました。 新規出店は31店舗、閉店は7店舗で、純増24店舗でした。

四半期会計期間ごとのトレンドです。粗利益率については概ね20%強でコントロールができ、さらに経費をしっかりと抑制できました。これは後ほどまたご説明もありますが、1店舗当たりの売上高、坪当たり売上高がしっかりと上昇したということがあって経費率が下がったというところです。

ドラッグストアの他社も含めた粗利益率、販管比率の四半期ごとのトレンドです。他社さんのお名前を消して開示をしていますが、業界のことをよくお分かりの方は色でなんとなく判断されるかなというところでございます。我々としては、やはりコスモス薬品さんのPLのモデル、粗利益率20%、経費率15%というところを目標にして、現在その水準で概ねコントロールができています。

続いて営業利益率の各社トレンドです。今期経費がしっかり抑制できているということで、直近2年間においてはしっかりと営業利益率は上昇しています。ただ、ここから6%、7%を我々は目標としているわけではなく、現在のモデル、営業利益5%程度を1つの目標としながら、しっかりと出店を加速させていくことで成長させていくことを我々の考え方の軸としております。

坪当たり営業利益高が向上 従業員1人当たりの守備範囲も拡大

主要経営効率の推移でございます。この表の一番上、坪当たり売上高のところをご覧ください。

昨年、2023年6月期においては坪当たり売上高が118万円でしたが、今期通期においては127万円と、1点単価の物価高などもございましたが、10万円しっかりと上がっております。これはイコール1店舗当たりの売上高もしっかり上がっているとご理解ください。

上から3つ目、坪当たり販管費。こちらは去年と同水準の19万7,000円でしっかりキープできました。この2つによって、坪当たりの営業利益をしっかり確保することができました。これらに大きく寄与しているのが、その下、従業員1人当たり売場面積です。

いかに少ない人数で店舗オペレーションをコントロールできるかということを非常に重要な指標と我々は考えており、この1人当たり守備範囲とでも言いましょうか、こちらも昨年の33.6坪から34.2坪としっかり増加させています。これついてもカテゴリー納品という物流体制の見直しであったり、セルフレジの積極的な導入といったことによって店舗の質、お客様に迷惑をかけないような形で1人当たりの売り場面積を拡大させているところです。

今期の粗利率は前期と同水準をキープ

今期、25年6月期の業績予想です。売上高は2,020億円を計画しております。既存店昨対は3.3%を計画しております。粗利益高ならびに販管費、営業利益、いずれも率としては今期と同水準を維持することを念頭に置いています。粗利を無理して上げることも下げることもなく、前年と同水準でキープをしていきます。

当然販管費の状況を見ながらというところですので、もし販管費がさらに抑制することができれば、粗利率についても調整して、よりお客様にディスカウントをアピールすることも考えておりますが、今期、先行して粗利を下げるようなことは考えておりません。結果として営業利益については100億円、営業利益率5.0%を目標としております。

EPSについては、本年6月21日に株式分割を行っておりますので、これを期末に行ったと前提して記載をしております。EPSは230円39銭、昨年が208円21銭に対して、こちらも10%程度増加を考えております。

新規出店は49店舗、閉店もほとんどがスクラップ&ビルドですが7店舗ということで、昨年の31店舗から大きく加速をさせております。純増でも42店舗増です。

売上高の既存店昨対は、上期4.0%、下期2.7%で計画をしています。下期の方が昨対が低いのは、前年のハードルというところもありますので、この辺りを調整した結果、少し上期の方が高い傾向です。

粗利、販管費などはそれほど大きな差をつけているわけではありません。販管費の下期が高いのは、我々の下期に4月、5月、6月があり、いわゆる新入社員の入社で人件費が上がっていくところです。4月の新卒は440名の採用を現在計画していますので、その分の一括採用費が追加されるところです。

新規出店もやや下期に寄っていますが、少しずつ通期でならして、過度に下期に負荷がかからない形で出店を続けてまいります。

14ページは過年度5年間のトレンドですので、ご参照ください。また今期から、決算補足説明資料を出してほしいということがございましたので、ホームページにも、特に販管費の分解をした内容を5年トレンドで載せております。人件費、設備費等々もまたご参照ください。以上が数字の振り返りでございます。

投資キャッシュフローの大半が新店と新規物流センターへの投資

キャッシュフローコントロールですが、これを作ったきっかけとしては、投資家さんとのお話の中でフリーキャッシュフローの話題が出るためです。当社の見た目上、フリーキャッシュフローはずっと水面下です。営業キャッシュフローよりも投資キャッシュフローの方が大きいトレンドが続いておりますので、いつプラスに転じるんですかという議論などがございますが、この辺りについて我々の考えをご説明したいと思い、このスライドを作っております。

当社の投資キャッシュフローの95%は新規投資または新規の物流センターへの投資であり、あまり既存のリプレイスというものではございません。これら全てを我々は成長投資であると考えております。したがって、これらの投資は全てEPSの成長に繋がっております。今後のコントロールとしても引き続き、営業キャッシュフローに対して、新規の投資キャッシュフローについては1倍以上という積極的な投資スタイルを貫いてまいります。

これらのキャッシュについては当然、自分たちの営業キャッシュフロープラス金融機関様からのお借り入れを中心に、しっかりとレバレッジを効かせた成長投資を継続してまいります。したがって、引き続きフリーキャッシュフローといういわゆる見た目上の計算はマイナスになる傾向ですが、これらについてはしっかりと1.5倍以上にならないようにコントロールをして、自己資本比率については過度に毀損させないようにしてまいります。

この1倍から1.5倍という意図については当然、自己資本比率が過度に毀損すれば、その資本を増強するために公募増資であったり資本を何がしかでテコ入れする必要が出てきますが、我々の安定水準という意味では、自己資本比率は30%から40%程度あたりを安定的な水準と考えております。

逆に50%、60%になってくると保守的すぎると考えており、40%程度であれば安定的、30%を切るとさすがにちょっと薄いねというところでございます。これらのコントロールから言うと、投資家主導が先行しすぎてしまうと、こちらの薄い赤の点線のところ、1.5倍を超えるような投資になると、どうしても自己資本が弱くなってまいります。ただ1倍から1.5倍の間でコントロールができれば、自己資本は安定して少しプラスに転じるような状態ですので、この辺りはあまり心配なされる水準ではないとご理解ください。

この辺りでコントロールすることによって、ROEについてもしっかりプラスに転じることができます。昨今話題ですが、株主資本コストについてはかなり保守的に見て8%、おそらく普通に計算すれば、当社の水準でいけば5%強だと考えておりますが、少し固めに見て8%で見たとしても、直近のROEについては平均でも12%程度をキープしております。ですから、今後も引き続き、純利ということもありますので、その年度の特別損失などによってブレは生じますが、3年平均を取っていけば安定して4%以上のスプレッドはキープできると考えております。

ここもやはり自己資本比率をこの程度でキープをしながらレバレッジを利かせた成長というところが重要になってまいりますので、この辺りを非常に重要なコントロール水準と考えております。

それらによってEPSの成長10%以上を今後も続けてまいります。EPS成長率、CAGRですが、12.8%を維持しております。 これは一重に、先ほどの成長投資も兼ねてですが、当社の生活必需品に特化したディスカウントというモデルが顧客に受け入れられている証拠であると我々は強く確信しております。

今後も、例えばインバウンドであったりに囚われることなく、引き続き地域の皆様にディスカウントを通じて社会貢献をするというビジネスを貫くことで、10%以上のEPS成長を続けてまいります。

以上、簡単ではございますが、昨年度の実績並びに財務方針でございました。ここからはご説明を弊社代表の藤永にバトンを渡しまして、どのように今後我々が成長していくのかについて説明したいと思います。

客数をいかに伸ばせるかが成長のカギ

代表取締役社長 藤永賢一氏:社長の藤永です。ここからは一部補足させていただきながら、戦略問題に入っていきたいと思います。

客数、客単価、1点単価、買上点数の関係ですが、1点単価の上昇が前期プラス4.9とありましたが、これは今後は多分もう伸びてこないだろうと思います。

物価高も随分落ち着いてきて、今月の食品を中心とした値上げ品目も随分少なくなってきております。よって1点単価は伸びず、買上点数は少し下がり気味ですが回復してくるだろうと思っています。それで、客単価が横ばいか少し下がるぐらいになるだろうと見ています。そうすると既存店昨対は通常に戻るというか、客数の伸びに非常に引っ張られる状況になるのではないかと思っております。ここの客数をいかに伸ばすかが今後の戦いではないかと考えています。

我々は地方で商売しておりますので、実質賃金は地方を中心にやはり目減りしているというところで言うと、客数を伸ばす、節約に応えるというところが非常に重要ではないかというコンセプトです。

売り上げが7.6%伸びる中で経費が2.8%しか伸びなかったというところが非常に効果が出ていると思います。電気代だけではなくて、労務費のローコストオペレーションシステムといったところも寄与しているところです。

また、粗利の結果が20.4%で、経費率15.5%。これはどれを目標にしているかと言いますと、本来は20%と15%でしたが、電気代が上がりかかった一昨年から、20.5%と15.5%というふうに我々の目標値を変えております。

粗利益率について、コスモス薬品さんのここ1年半のディスカウント戦略がありまして、当社の方が粗利益率が少し上回りました。一時並んでいましたが、今は0.5%ぐらい、あちらが下がっています。かと言って、隣の経費率は当社の方が下回っているということで、ここが非常に重要です。どちらのグラフが大事かというと、右側の経費率のグラフの方が重要だと考えております。こちらについては、0.7%程度当社の方が経費率が低いというところで推移しています。

過去の推移ですが、2020年度にディスカウント強化で粗利益率が落ちて、営業利益率が2%台までダウンしました。ここでEDLPの浸透をじっと我慢をしたところですね。じわじわとお客様が、毎日安いならじゃあ行こうかということで増えてきました。

21年に営業利益が1回5%にタッチしていますが、ここは巣ごもり消費やマスクの特需で一旦上がったもので、実力ではありません。本当の実力は、2022年以降にじわじわと営業利益率が右肩上がりになってきて、業界で最低の粗利益率の割に、利益率はトップクラスにタッチすることがようやくできてきました。

小商圏でも勝ち残る店舗の仕組み作りに注力

では、戦略的な内容に入っていきます。先ほど申した通り、実質賃金はまだマイナスで、特に地方の中小企業を中心に二極化が起きているのではないかと考えております。我々のディスカウンティング戦略では、景気が良くてもディスカウントですが、ますますトレンドとしては合っているという風に考えております。それが21ページに書かれていることです。

ドラックストア1店あたりの人口がどんどん下がってきていて、お膝元の福井県では4,000人を割っています。よって、より小商圏フォーマットに切り替えていかなくてはいけない。そうすると、薬や化粧品の構成品が当然下がってきて食品が上がってきますが、ここをどうマージンコントロールするかがこれからの大きな課題になってくると考えております。

こちらにEDLP、小商圏の高来店頻度の店という我々の考えが書いてあります。エブリデイでご来店いただかないとエブリデーロープライスは効き目がありませんので、高来店頻度というのが非常に重要です。それが小商圏に繋がり、同じ名前のお客様が何度もご来店いただけるというお店を作っていきたいと考えています。

そのためのローコストオペレーションで、業界最低の坪当たり経費、または売上高対経費率というものを作って、それほど売れていない状態でも儲けをちゃんと出すというところも小商圏フォーマットの重要な局面であると思っております。

よって、7,000人、5,000人を割ってというような小商圏の中でも高速出店が可能なフォーマットを作り上げていくことが重要だと思っております。それには、食品構成費が上がってHBが下がってくることにいかに耐えうるかが我々の大切な局面であると思っております。

完全標準化されたローコストな「レギュラー店」が大半

こちらにはレイアウト図を紹介しています。レジの内側がちょうど正方形です。歩く距離の割にはアイテムSKU数をたくさん置くことができるという物理的なレイアウト理論に則ったタイプになっています。これを完全標準化して多店化をしていまして、今のところ89%のお店がこのレギュラータイプです。完全同一レイアウト、同一寸法です。

レジと入口がこの図面だと右側ですが、左側から入るお店もありますので、その場合は鏡写しに全てなっています。よってその2パターンのみという完全標準レギュラー店で、出店がしやすくオペレーションも1本で単純化できるというメリットがございます。

「近所で生活費が節約できるお店」というコンセプトで、近所ということは小商圏、生活費ということはデイリーニーズだけ、消耗品だけをお店で扱っていく、それでディスカウントしていくということが表されています。

一般的なドラッグストアとの違いは、この7,000人という商圏人口に大きく表れております。普通のドラックストアですと、調剤を含めて薬と化粧品の構成費を確保して、粗利益率を25%から32%確保されているようですが、そうすると薬、化粧品の需要から言っても7,000人では運営できない。では少ないHBの中でどう利益を出すかというところが特徴になっています。

他社さんは接客販売をやっていますが、当社はやっておりません。他社さんは調剤をやっていますが、上場ドラッグでは当社だけが調剤をやっておりません。それからEコマースも他社さんはやっていますが、当社はやっておりません。完全にこのR店1本という形になっています。

続きまして、店内動画を投影しますので、店内をご覧いただきたいと思います。

~以下動画を投影しながら解説~

入って正面は薬のレーンになっています。入口は風除室を設けており、北陸地方などの風雪に耐えうるように作ってあります。右に折れてまっすぐ行くと雑貨、食品とつながって、あくまでもHBが第1通路になっています。

食品の構成費は69%まで達してしまいましたが、通路は11通路のうち3通路だけです。パンについてもこのような平台でバラエティ販売を行っています。突き当たりが自社製造の総菜コーナー。当然バックヤードでの製造はございません。その隣に青果・精肉、それからデイリー日配、冷凍食品とつながっています。主に豚肉、鶏肉がメインで、牛肉は少なくなっています。和日配がきて洋日配。

これが11番通路で、最終通路ですね。通路幅も通常の通路よりも広くとっております。これも全部標準化された通路幅です。突き当たりから冷凍食品になって、300坪のドラッグストアでは非常に広い冷凍食品売場になっています。当然この本数も全く同じです。以上です。

~動画終わり~

物流センター・プロセスセンターでフード&ドラッグを自前化

当社の特徴は、物流センターとプロセスセンターという間接投資を重視している点にあります。よって、店頭で発見する当社の特徴は半分、残り半分は見えないところにノウハウ、仕組みが隠されていると思っていただければよいと思います。

ご覧の写真のように、スライス肉、これはちょっと高度な機械を入れなくてはいけないのですが、それからおにぎり、海苔巻きも直巻きも自社で製造しております。炊飯器も最新の単釜式炊飯器を入れて、これは岐阜県と富山県の2か所のPCで製造しています。子会社のゲンキー食品が担当しております。このゲンキー食品は当社にしか卸しませんので、他社にお惣菜を販売することはございません。3つ目は、28年に愛知県内に計画をしております。

自社製造ですので、毎週、毎月商品の見直しを図ってブラッシュアップを常に行っています。万が一数字が悪い商品があったらどんどん差し替えたりしてレベルアップを図っています。それから品質管理についても徹底して行うことができます。

こちらはそれらの商品です。最近出たサンドイッチは、コンビニエンスストアに負けない品質と、価格は100円から150円安い価格を狙っております。去年、私は仕入れでサンドイッチをやっておりまして、自社製造に切り替えたところ、1.5倍以上の売り上げになっています。

それから夕飯需要をキャッチするため、149円の小鉢お惣菜にも力を入れています。北海道のセイコーマートさんの売場でいろんなことを学ばせていただきながら作っております。お惣菜は199円、お弁当は298円が上限です。それ以上高いものはありません。198円もございます。

生鮮の鮮度管理はスーパーマーケットレベルに近づく

鮮度管理を自前でやるというのは、非常にドラックストアにとってはハードルが高いのですが、なんとかスーパーマーケットの鮮度管理に近づくことが最近できてきたと自負しております。納品時間も短くし、コールドチェーンという形で温度管理も徹底をしております。

先ほどの動画であった菓子パンの平台がこういう形ですが、この79円、89円、99円というコーナーがあるだけで、今日何のアイテムが入ってくるかは全く定番がございません。よくドラッグストアだと定番に同じパンが毎日来るのですが、それではお客様が飽きてしまうだろうということで、当社は、どんな商品が来るかわからないけど、低価格の一律コーナーという形でお客様にご提供していくということで、食パンを含め、いまだにパンの昨対はプラスを続けております。

スイーツも飽きてしまう典型ですので、コンビニエンスストアと同じように定番がありません。コーナー化してあるだけで、ここにいろんなバラエティに商品が納品されていきます。発注は本部で行って、お店側はそれをバラエティに並べるだけという形になっています。

PB商品は最低価格のものしか作らない

こちらはプライベートブランドの一覧です。このようなお菓子からパイプクリーナーまでやっております。特徴はボトムプライスライン主義という形で、常に最低価格のPBしか作りません。他社と比較しても当然低い価格。これは安いというよりも低いという表現の方が合ってると思いますが、左寄せボトムプライス。

よって、プレミアムPB、NBと同じかそれ以上に高いPBを売っている小売業が多い中で、当社は徹底して、インフレであろうがデフレであろうがボトムプライス主義ということで、商品構成グラフ左寄せという形を徹底しております。これはPBだけではなくて、NBも同じです。

それから、食品部門の構成比がどんどん上がっていく中で、いかに粗利益率を20.5%にキープするかについては、このPBの構成比を上げるというのが非常に重要だと思っています。よって、担当マーチャンダイザーの増員を含め、70%以上に食品構成費がアップしていっても、それは自然に受け入れるという体制を作っていくというのが重要です。マージンミックスの強化であります。

このようにNB品の隣にPB品を並べて、右側にスイッチするライトスイッチングPBが中心になっています。有名品の横に当社のPBが並ぶのですが、よく見ていただくと売価の種類が少ないというのを特徴にしています。

よって、プライスラインと申しますが、非常に買いやすい。プライスの数が多いとお客様の買い物が単純ではないという形になりますので、この点をPB、NBも含めてですが、我々の特徴としています。

PB売上構成比は約30%に到達

PBの構成比を上げないと食品構成比の拡大についていけなくなるということで年々上げていますが、これは数量構成比だと30%、3個に1個はレジでPBが通過していくというイメージになっています。そうするとお客様は、それを買うにはゲンキーに行くしかないということになって、節約とPBの差別化という形に繋がっておりますので、客数のアップに寄与していると言えると思います。マージンミックスも当社の方で図られていると思います。

自前化により成熟するローコストオペレーション

次はローコストオペレーションですが、ここが非常に重要なテーマになっておりますので、これも間接投資、自前化していくことによってどんどんローコストが進んでいます。サードパーティーロジスティックでやったり他のことも丸投げしていくと、どんどんコストが上がっていってしまい、コントロールもつかなくなってしまいます。

集中エリア出店もプロセスセンターを通じたエリア戦略になっておりますので、20も30も都道府県を広げていく他社と比べて、当社は5つの県に集中し、このエブリデイローコストという仕組みを堅持していくという形になっています。

グラフの下の方にある20万円近辺をキープしているのが坪当たり経費ですが、これはもう業界ナンバーワンに低い。20万円というと、中には倍以上の坪当たり経費、坪あたり20万円の家賃を払ってるところさえあります。よって、全経費で20万円というのは驚異的な低さであり、これが売価競争、EDLPの原資になってると思います。

それからここには載っていませんが、先ほど本部人員も入れて1人あたり30何坪となっていましたが、店段階ではなんと50坪。これはホームセンター業界に近い1人当たり守備範囲の広さですので、ここも特筆できることではないかと思っています。

それから、チラシ販促は年に4回だけという形で、波動をなくしてサプライチェーン全体の安定化、平準化を図っております。先ほどから申しているように標準化されていて、本部主導でのオペレーションの指揮・コントロールが成り立っていますので、店段階、店長段階でのばらつきはほとんどありません。

接客もしないし販促もかけないということで、殺風景なお店ですが、よく見ると安いということを追求していきます。セルフサービスの基本という形ですね。

来年夏には全店でのセルフレジ化を目指す

セルフレジにしてさらにコスト削減を図るという形で、現在3分の1まで進んでいますが、来年の夏までに全店セルフレジ化していきたいと思っています。

昨今、セルフレジでは万引きが増えるのではないかという問題がアメリカを中心に話題になっており、有人レジに戻している会社さんも増えている中ですが、当社は2年間にわたり実験をした結果、不明ロスについては悪化しないという結論が出ました。

その対策を、カメラ等を含めて徹底して行うことによって人件費の削減を図り、年間5億円のコスト効果が出ると考えています。今のところ実施店舗についても、実地棚卸しの結果、不明ロスについての拡大は見られておりません。さらに1人当たり売り場面積が拡大し、坪当たり経費が削減されるセルフレジの導入という形を進めています。

店舗作業を効率化し生産性の向上につなげる

物流センターを活用して通路別納品をやっております。これによって、店内の作業動線、歩く歩数が減って品出しスピードが上がっていくというものでありますが、全く同じレイアウトなので物流センターでこういうことが可能でありますが、他のチェーンでは、店ごと・通路ごとにカテゴリーが違いますので、これができません。よって、右往左往しながら品出しをしている風景によく出くわします。

当社の場合は、その通路に入れば、左右の動きは多少あるにしろ、別の通路にわざわざ出かけていって戻ってきたり、1つの商品を持ってうろうろしたりというようなこともありません。

コンビニエンストアのように(冷蔵ケースの)後方から飲料、小ペットボトルなどを補充しています。こういったものはドラック業界ではありませんし、全店共通の作業計画書による作業業務の標準化も本部一括で行っておりまして、時間になると工場のように何々をやってくださいという店内アナウンスが流れます。そのような形で工業化、IE化も進めています。

当然、人手不足の時代ですから、こういったところも起用していっております。ここに載っている1人当たり売場面積34坪は本部人員も物流センターの人員も全部入れた数字ですので、店段階では先ほど申したように50坪という形になっております。

店舗開発部を不動産会社に 加速する出店戦略

基盤インフラが準備できたあとは出店するだけという話になりますが、今後の出店をどのように加速させるかは重要なところでございます。

出店エリアは47都道府県のうち5つに集中しています。集中する理由は、当然、県別シェアを上げていくという狙いがありますし、物流拠点からの平準化、標準化されたSCMの構築というものが主旨でありますが、ドミナント効果によるお客様への信頼を高めていくという効果も狙っていきながら、県別の店舗数売上でドラック業界1位を狙っていくという考えでございます。

一昨年から滋賀県に出ていますが、競合他社さんも、ゲンキーさんは出たら1位になるまでずっと出し続けるんですよねと言われていますので、それに応えなきゃというふうになっております。

左は店舗開発部をゲンキー不動産という会社にして、今100名体制で出店強化を行っていることのご紹介です。一時使っていたダイワハウスさんなどのデベロッパーも完全に離脱しまして、少しそのことによって出店数が停滞したここ2、3年でしたが、ようやく自前地上げ方式で50店体制に達成できるようになってきました。

この後は年100店というのが1つ目の目標ですので、さらに中身及び人員の強化を行い、年100店、来期は少々難しいですが、再来期あたりを狙っております。来期はその中間の7、80店という形で出店の加速を図り、色々準備してきたことを成し遂げたいと思っております。

高額デベロッパーを使っていませんので、将来にわたっても地代や不動産費について非常に他社より軽い状態です。ここが重いと、坪当たり経費を減らすことに限界がすぐやってきます。当社は名古屋市内でも、店当たり地代は150万円上限という形でやっています。

デベロッパーから持ってくると青天井の地代が請求されますし、ただでさえ今は鉄骨が上がっていますので、さらに高い建築コスト、5年前に比べると2倍ぐらいの建築コストに現在なっております。当社は全店入札方式になって、今でも25%以上他社さんより安い建物で運営できています。

さらに地代も安いということで、ここについてはローコストに大きく寄与しています。ゲンキー不動産で100名、この人件費はあっという間に元を取ってしまうぐらい差があります。ここはさらに強化をしていきます。

今後はそれを100名体制に増強していきます。少し上がったり下がったりするのは、向き不向きを確認しています。やはり営業職ですので、少し向いてないなという方については半年か1年で店舗や本部に戻しておりますので、多少前後しながらですが、残った人員は先鋭部隊となっておりますので、当然少しずつ出店数も増えてくるという形です。

業務範囲も土地の契約に特化していきます。今までは新店準備、開店以外は全部本人がやっていました。もっと業務を絞って、契約まで持っていけばもうあとは全部他に任せようということで、新たに建設部を設けて業務移管をしております。このことによっても成約率が上がっていくという形になりますので、デベロッパーに頼らない、社内でやっていくという自前主義の真骨頂だといえます。

高来店頻度につながる「レギュラー店」に完全統一を図る

出店して収益が上がっていかないと、どんどん尻すぼみになってしまいます。初年度は確かに損益分岐点をなんとか超える程度というレギュラー店の平均値でありますが、その後売り上げが伸びていって利益が出ていくという構図になっていますので、EDLPの地域の中での浸透と便利さ、これがお客様の来店頻度に繋がっていく。よって客数が増え、売り上げが増えるということに繋がっております。よってこのモデル店、R店については、お客様に浸透していく便利で安いお店という形で自信を深めております。

始めて丸9年ですが、いまだにずっと年度の売り上げは伸びていっています。既存店昨対が伸びる原因もここにございます。

上記は過去のお店です。黄色い小型店は創業の頃のお店で、30数年前に始めたわけですが、その後、2000年から大型店に挑戦しました。しかしこのままではお客様のショートタイムショッピングニーズにお答えできないということで、レギュラー店を開発し、10年前から取り組んでいます。

これに全部切り替えを図っていって、この小型はもうありませんが、大型店は100店ありましたが、現在は40数店まで減っています。これも早々にR店に切り替えていくという形で完全統一を図っております。

インフラ作りの間接投資はこのRPDCという、PCとDCとTCの3つの機能が入った物流施設がメインでございます。現在は2か所あり、3か所に増やしていきます。そこにハブであるTCを子供に持って、物流体制の2024年問題に対応するために各県ごとに物流センターを作り、ドライバーさんの長期勤務を削除していくという体制で、あまり大きな物流センターを作って中部一帯に走らせるということは当社では考えておりません。

もともと、1センターあたりDCもTCも100店舗という構想ですので、そういう体制ですと2時間で行ける、2時間で帰ってこられるいうものを作っておりますので、今年度から始まった2024年問題は当社についてはそれほど問題にならないという体制を作っております。

最後になりますが、1万店にするというと、100店でも100年かかってしまいますので、もっと加速していく必要があります。当社は、チェーンストア理論の原理原則を米国チェーンに見習っております。ウォルマート、ダラージェネラルなど、アメリカを手本としています。そこを目指してさらに出店を加速し、地域のお客様に貢献していくということが我々のテーマであります。先ほども申したように、店を見学しても真意は理解できないというお店を目指しております。以上でございます。ありがとうございました。

NFI定例セミナー「ローコストオペレーション研究」(2024/9/18 13:00~16:05)開催ご案内(リアル・リモート)

今回のテーマは、「ローコストオペレーション研究」です。人件費の高騰、建築費の高騰などにより、人の生産性を高める改革による「ローコストオペレーションの実現」は待ったなしの状況です。今回は、ローコストオペレーション実現のための戦略と戦術と事例の最前線を解説します。また、人の生産性、分配率管理などのローコストオペレーション実現のための数値の見方も解説します。

2024年9月定例セミナーは、「リアル」と「リモート」の併用セミナーとします。

今回のテーマは、「ローコストオペレーション研究」です。人件費の高騰、建築費の高騰などにより、人の生産性を高める改革による「ローコストオペレーションの実現」は待ったなしの状況です。

今回は、マテハン、DX、仕組みづくりなどによるローコストオペレーション実現のための戦略と戦術と事例の最前線を解説します。また、人の生産性、分配率管理などのローコストオペレーション実現のための数値の見方も解説します。

さらに、月刊MD10月号で毎年掲載している人気企画「ドラッグストア白書」の分析を担当しているMDNEXT編集長の鹿野恵子が、決算の詳細分析からわかるドラッグストア業界の現状と課題について解説します。また、各社のDXへの挑戦についても解説します。

※座席数が限られているため、リアルでの参加の方は先着順とさせて頂きます。

開催概要

・開催日:2024年9月18日(水) 13:00~16:05(会場受付開始:12:30)
※昼食は各自お済ませの上ご来場下さい。
※セミナー開催中の途中入場はお断りします。
※リモートでの途中退席は申込責任者に報告します。

・会場:エッサム神田ホール1号館7階(701)(※案内図をご参照ください)
・実施方法:リアルとZOOMによるリモートセミナー
(ZOOMセミナーアクセス方法はお申込み者様にのみご案内いたします)
・料金:20,000円(税別・1名様)
(※ニューフォーマット研究会会員企業様には会員価格でのご案内になります)
・申し込み締め切り:2024年9月9日(月)

スケジュール

[13時~14時50分頃]

NFI代表取締役 日野 眞克

挟小商圏、オーバーストア時代の
ローコストオペレーションの原理原則

(1)最新のローコストオペレーションの事例研究
(2)マテハン、DX、仕組みづくりによるローコスト研究
(3)人の生産性、分配率管理などの経費、生産性に関する数値管理 他

[15時00分頃~16時05分頃]

MD NEXT編集長 鹿野 恵子

ドラッグストア白書 2024 詳細解説

(1)ドラッグストアの勢力図解説
(2)決算分析によるドラッグストアの現状と課題
(3)成長性、収益性、生産性数値の見方を解説 他

※講演時間は予定よりも短くなることも長くなることもあります。

会場案内図

会場詳細

〒101-0045
東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2
エッサム神田ホール1号館7階(701)
URL:https://www.essam.co.jp/hall/access/#access_1

【アクセス】
●JRでお越しの方
神田駅東口より徒歩1分
●東京メトロ銀座線でお越しの方
神田駅3番出口より徒歩0分

注意事項

①会場へお越しの方は開催会場をご確認の上、お間違えの無いようご注意ください。
アーカイブ動画の配信はいたしません。当日参加でのみセミナーのご受講が可能です。
(配信の不備等によりご視聴頂けなかった場合には、後日動画のご案内をいたします。)

③リモートの場合はZOOMウェビナー形式で行います。9月13日(金)までに、お申込書に記載された受講者のメールアドレス宛に受講用URLを記載したメールを送付いたします。

お申込みフォーム

・お申込みは以下のお申込みフォームからお願いいたします。お申込み受付後、お申込み確認メールをお送りします。また、ご請求先として記入いただいた方宛に、請求書を発送させていただきます。
・ご入金後は、理由の如何に関わらず返金は致しません。あらかじめご了承ください。

本セミナーのお申込み受付は終了しました。
たくさんの参加申込み、ありがとうございました。

ゲンキーの能登半島地震への対応記録「地域住民の生活のため、翌日全店開店を目指せ」

2024年1月1日16時10分頃、石川県能登半島地下16kmを震源とする強い地震が発生(後に令和6年能登半島地震と命名)。能登半島北部いわゆる奥能登を中心に甚大な被害をもたらした。ゲンキーは被災地域に複数の店舗を出店している。ここでは、同社取締役店舗運営部長の中川竜氏に取材。大規模地震への対応を見ていく。(月刊MD編集長 野間口 司郎)(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)

本記事の全文は月刊マーチャンダイジング note版で!

【Day1】2024年1月1日(月)

5mの大津波警報が出る中 決死の現場への移動

1月1日はゲンキーの年に1回の全店、全社の休業日である。正月午後と言えば、いわゆる「おとそ気分」でゆっくりくつろぐのが、多くの人の過ごし方である。ゲンキー従業員たちもそんな時間を過ごしていたが、16時10分頃発生した能登半島地震で様相は一変する。

中川竜店舗運営部長は、正月の挨拶回りから福井県坂井市にある自宅に着いた直後、玄関で強い揺れを感じる。子供たちを机の下に避難させると同時に大きな被害になれば、被災地域では水、食品などの緊急物資が必要になるという思いが頭をよぎったという。

[画像1]地震後最初の投稿

画像1は、中川氏が地震直後、ゲンキー幹部が参加するグループLINEに投稿した第一報である。ゲンキーのグループLINEには藤永賢一社長以下、営業系部署の部長職以上43人がメンバー登録。普段は店舗の販売状況や商品情報など営業に関する連絡に使われている。能登半島地震においては、このグループLINEに情報が集約され、それらを基に現場の指揮を中川氏が執るという態勢が取られた。

[画像2]能登帰省中の従業員から投稿された写真

地震発生直後の16時12分には石川県能登地方には3mの津波警報が、16時22分からは5mの大津波警報に切り替わり、発令されていた。これを受け中川氏は能登エリア沿岸部を中心に全従業員に避難指示を出した。その後、能登半島に帰省中のメンバーから陥没した道路状況の写真も投稿される(画像2)。

[画像3]全従業員へ避難指示の連絡完了

16時22分には石川県を管轄している藤田毅ゾーンマネージャーから課長経由で全従業員に避難指示が完了したこと、状況確認中である連絡が入る。藤永社長からは津波を心配し、店舗確認には行かないようにという指示も出た(画像3)。

中川氏の自宅はゲンキーの本社近くで北陸自動車道丸岡インターから数百メートルの距離にある。体質的に酒の飲めない中川氏は正月の挨拶回りでも飲酒することなく、車を運転できる状況にあった。地震発生直後、現場に向かうことを決意、グループLINEに第一報を投稿した直後、中川氏は16時20分頃には車に乗り込み、丸岡インターから能登を目指していた。

丸岡インターから大きな被害の出ている石川県志賀町までは通常なら所要時間は1時間40分ほど。ただ、能登地方には5mの大津波警報が発令中で「到達中」との予報も出ている。丸岡から能登に入るには、石川県金沢市を経て海岸線に沿って走る「のと里山海道」を通る必要があり、ここを通行中に5mの津波に見舞われれば車もろとものみ込まれる危険を伴う。

「5mの津波警報が出ていることは知っていました。能登へ向かう途中海岸線を走っているときに津波に遭えば命の危険があることも認識していました。のと里山海道を走っているときは自分の車しかなく、置かれた状況がよく理解できました」(中川氏)

同じ頃、中川氏と同じリスクを負って、ゾーンマネージャーの藤田氏も福井から能登に向かっていた。

「藤田にも津波の状況等は確認しましたが、『部長が行くなら私も行く』、とのことでした」(中川氏)。のちに二人は羽咋(はくい)で合流する。

[画像4]「明日、全店開店」が目標に

翌2日は、当初より本部人員、商品部、店舗開発部などの社員は店舗応援に入る予定だった。17時26分、その人員を能登の応援へ振り分ける手配を取る。この段階で店舗の被害状況はつかめていなかった。直後の17時31分、藤永社長から「明日、全店開店を目指そう!」とのLINEが入り(画像4)、これに向け中川部長以下、本部応援社員、前線の店長、パートナー(パート従業員)の奮闘が始まる。

続きは月刊マーチャンダイジング note版で!

《取材協力》

ゲンキー 取締役店舗運営部長
中川 竜氏

TOUCH TO GOが提案する「サテライト型」と「ハイブリッド型」2つの無人店舗戦略

店舗作業のなかで3割をも占めるといわれるレジ業務。レジの省人化は小売業にとって喫緊の課題である。近年ドラッグストア(DgS)でも導入が進みつつある無人決済システムを開発・提供するTOUCH TO GOでは2つの無人店舗戦略を提案しているという。代表取締役社長の阿久津智紀氏に導入状況を聞く。(月刊マーチャンダイジング2024年7月号より転載)

200㎡、2,000SKUに対応

弊誌でも既にこれまで何回か取り上げている「TOUCH TO GO」(以下TTG)の「無人決済店舗」ソリューション。利用方法は以下のとおり。

①入店して商品を手に取ると、店舗内のカメラや棚の重量センサー、AIによる画像分析などによりシステムが商品を特定。②お客がレジ前に立つと、自動でディスプレーに合計金額が提示され、会計を行う。③会計終了後にゲートが開き、お客は店舗から退出することができるようになる。

事前にアプリをインストールするなどの準備は不要で、決済手段も現金、クレジットカード、QRコード決済、交通系電子マネーをはじめ多くに対応。間口の広さを重視したソリューションといえよう。

「私たちが事業提携をしているファミリーマートさんでさえ、まだ現金の利用者の方が7割いらっしゃいます。だれでも気軽に入店できて、お支払いできるというところを大切にしたいと考えています」と阿久津氏は語る。

昨今セルフレジ化による万引きの増加が指摘されているが、だれが何を手に取ったかがすべて記録されているこの手法であれば、実質的に万引き対策にもなる。

同社が提供する無人決済サービスのなかでも、最大の売場面積とアイテム数である「TTG-SENSE」は、200㎡(約60坪)、2,000SKUに対応。1人当たりのレジ所要時間は10〜15秒で、入店人数に上限はない。

TOUCH TO GO高輪ゲートウェイ駅店。ピークタイムは1時間200人のお客をさばく

このシステムが導入されているJR高輪ゲートウェイ駅の「TOUCH TOGO高輪ゲートウェイ駅店」には、約600種類のアイテムが展開されていて、ピークタイムには1時間当り200人のお客をさばくという。

省人化という側面では、遠隔監視や遠隔接客に対応しているという点はポイントだ。営業時間中、たとえ店内が無人になっても、その様子は遠隔のコールセンターで監視されていて、お客からのお問い合わせもコールセンターで対応できる。

酒類の販売にも対応。会計の際に遠隔で年齢確認を行う

元々TTGはJR東日本系のファンドであるJR東日本スタートアップと、金融系のシステム開発を提供するサインポストの合弁会社として2019年に設立されたスタートアップ企業だ。2021年2月にはファミリーマートと資本業務提携を締結。コロナ禍の非接触ニーズを追い風に導入件数を拡大し、東芝テック、グローリーなど、POSレジの大手企業とも積極的に資本業務提携を進めている。

サテライト型とハイブリッド型の店舗戦略

市場環境に目を向ければ、労働人口の減少や人件費の高騰、また建設資材や光熱費も上昇しており、既存業態出店によって業績の拡大を目指すモデルはもはや頭うちという状況である。そこでTTGが提案するのが「マイクロマーケット市場」だ。「自動販売機以上コンビニ未満」の日販で採算が取れるビジネスモデルである。

「この程度の日販ですと、人が張り付けば赤字になりますが、これを無人にすることで採算が取れるようにしていきます。

そのために私たちは2つの戦略をご提案しています。ひとつは母店の近隣に小型店舗を出店するサテライト型店舗です。もうひとつは大きな店舗の一区画に無人のエリアをつくるハイブリッド型店舗です。無人エリアは24時間営業ができますので、深夜、早朝でも販売できるようになります」(阿久津氏)

サテライト型の無人店舗は、近くの母店の商品を従業員が運んで陳列する。その売上を母店につけることができれば、店舗にとってもメリットが大きい。DgSであれば、母店近くにある病院内売店の運営や、大学内売店などの展開などが検討できよう。これまで売り逃していた「エリア」のお客を取りにいく戦略だ。

一方のハイブリッド型店舗は、お客の多い時間帯は有人対応、お客の少ない早朝・夜間は無人店舗化することで、売上の最大化と効率化を両立する。こちらはそれまで売り逃していた「時間帯」のお客を獲得することにより、売上を増やす施策と考えられる。

「面白い事例がお菓子のシャトレーゼさんが東京・西麻布に出店した24時間営業の店舗です。昼間はケーキや焼きたてのお菓子も販売しているのですが、夜になるとそれらを販売しているエリアをシャッターで区切り、アイスクリームやドライ品だけを販売します。通常閉めていた夜間帯を活用することで売上が3割程度伸びました」。深夜の繁華街、飲んだあとに甘いものを食べたい…という需要をうまくくみ上げた。

出店時の費用も極力抑えられるような提案をしている。100Vの電源さえあればスタート可能で、大掛かりな工事は不要。既存の什器も利用できる。

この仕組みを増収のための施策としてではなく、「コストダウンのための施策」として活用している企業も多い。

例えばANAは空港のターミナル内の店舗にTTG-SENSEを導入した。航空機を待つお客のために店舗は必要だが、客数は飛行機の発着に依存するため従業員を張り付けると採算が合わなくなる。人手不足の解消と人件費削減が目的だ。

TTGでは、既存店を無人店舗化することで、レジ作業が削減され、また店舗監視や接客をコールセンターで行うことができるようになるので、通常店と比較して店舗運営のための人件費を最大75%削減可能だ。

2024年3月時点でTTGの技術を導入している店舗の総数は160店舗ほど。郵便局の空きスペース、ホテル内売店、ガソリンスタンド併設店、物流施設の休憩室、小売業の社員向け休憩所、大学の学生用売店、高速バスターミナル、病院内売店などなど、その導入企業、立地は多岐にわたる。

「無人だからのんびり買物ができる」

化粧品のオルビスは、2023年5月から「ORBIS Smart Stand」と称して、TTGの無人決済システムを導入した無人販売店舗をオープン。2024年5月末現在全国に4店舗を展開している。自分に合った手入れ方法や悩みなどをビューティーアドバイザーに相談できる「オンラインカウンセリング」サービスも店頭で提供。無用な接客がなく、マイペースに購入できると好評で、意外と男性客が多い。なお、この店舗は発注・品出しまでTTGがサポートしており、支店が近隣になくても店舗運営が可能であることを実証した。

店舗の状況に合わせてオリジナルの店舗レイアウトをつくれるのが「TTGSENSE」というソリューションだが、それをパッケージ化したのが「TTG-SENCEMICRO」だ。あらかじめ組み上げられた櫓(やぐら)を店舗に設置することで、そのエリアを無人店舗化できる。

最大3尺棚5本の構成で、200SKUの展開が可能。ガソリンスタンド、職域、ホテル内など、様々な場所で活用が進む。(大きさを倍にした、「TTGSENCE MICRO W」や、棚と決済什器のみでコンパクトな展開が可能な「TTG-SENSE SHELF」も提供している)。

価格については元々発生していた人件費等の運営コストの削減に伴い利益が出るような費用感での提供となっている。

この1年でデータの蓄積や活用の手法も洗練されてきた。お客動線や商品を手に取ったかどうかなどのデータを詳細に測定し、売場や棚の売上最大化に直結した分析基盤も構築が進んでいる。

無人決済というと、これまではお客の使用感の話が中心だったが、徐々にその段階は卒業し、店舗での活用方法に焦点が当たりつつある。それまで採算を合わせるのが困難と思われていた商圏、商材でのビジネスを成立させ、既存店の売上にプラスオンしていく。あるいは、万引きによるロスを食い止める。省人化によってコスト削減を狙う…。TTGの無人決済システムは、工夫次第で様々なメリットを小売業にもたらすものになりそうだ。

 

〈 取材協力 〉

TOUCH TO GO 代表取締役社長
阿久津 智紀氏