日本の不明ロスは1兆5,000億円もある
万引きや不正による「不明ロス」は、セルフサービス型小売業の永遠の課題です。日本を含む世界24ヵ国が調査に協力した、小売業の窃盗犯罪に関する世界的な報告書である「グローバル・リテイル・セフト・バロメーター(GRTB)2014−2015版」によると、不明ロスの内訳は図表1のとおりです。
従業員による不正39%、万引き38%、犯罪性のない管理上のミス16%、取引業者の不正7%です。同報告書によると、2017年のアメリカの不明ロス率(売上高に占める不明ロス金額の割合)は1.33%、金額にすると年間470億ドルの損失を出しているそうです。
一方、日本の不明ロス率は1.35%、金額にして149億ドルです。1ドル100円で換算すると1兆4,900億円という莫大な金額が不明ロスで失われていることになります。小売業で優良といわれる営業利益率の目安が5%ですので、不明ロス率1.35%がいかに大きな数値かがわかります。
AI万引監視カメラでスキャンしない商品を追跡
ウォルマートは3年前から、店内での犯罪を防止もしくは予防するためのシステムに5億ドル以上の投資をしてきました。アメリカの不明ロス率1.33%をウォルマートの年商に換算すると、万引などの不明ロスによる損失は年間40億ドル(約4,000億円)にのぼります。その投資の一環でAIカメラの設置を急速に進めています。
すでに1,000店以上に導入されたウォルマートのAIカメラは、「セルフレジ」「従来式レジ」の両方を監視できる位置に設置されています。レジで商品をスキャンしないで通過すれば、追跡システムが担当者に通知を出し、お客が店内を出る前に声をかけることができます。
未精算の原因は、精算し忘れか、レジ担当者のミスですが、AIカメラを設置した店舗の不明ロス率を着実に改善されているようです(具体的な改善結果は未公表)。普通の買物客にとってはAIで監視されていることはわかりませんが、精算し忘れの単純ミスなのにスタッフから声をかけられると、お客は不快に感じるかもしれませんね。「プライバシー保護」の問題もあり、どう運用するかが今後の課題のようです。