TBSラジオの平日昼の人気番組「ジェーン・スー 生活は踊る」。新進気鋭のコラムニスト ジェーン・スーさんをパーソナリティに、毎日を彩る生活情報や、鋭くも温かい悩み相談などをグッドミュージックとともに放送している。同番組のヒットコンテンツが、リスナーの投票で食品スーパーのナンバーワンを決定する「スーパー総選挙」。これまでに2回行われ盛り上がりを見せていたが、2019年3月、総選挙シリーズ第2弾として「ドラッグストア総選挙」が行われた。企画背景やドラッグストア(DgS)についての所感を、ジェーン・スーさんに伺った。
DgSは男女で楽しみ方に落差
総選挙上位には熱いファン
―今回、「ドラッグストア総選挙」を行われたということですが、企画の背景や経緯を教えてください。
「スーパー総選挙」が第1回、2回とかなり皆さんに楽しんでもらえましたので、DgSもやってみようよ、という流れだったんですが、スタッフ内では最初に温度差があって。というのも、DgSといったときに、テンションがアガる人と、必要なものしか買いに行かないけど何が楽しいの?という人がぱっくり分かれたんですよ。個人差はありますが、傾向として、DgSで時間を使って楽しんでいるのは女性が多くて、男性はどこに何があるのか、どんな商品が置いてあるのかもわからなかった。
うちの番組の信条は「困ったときはリスナーに訊け」なので、総選挙をやる前提で、番組でDgSについてアンケートをとったら、性別関係なくDgSが大好きという方からたくさんメールをもらえて。これはやったら楽しいだろうな、いけるなと。
―「ドラッグストア総選挙」をやってみて、いかがでしたか。
総選挙というシステムは本当に優秀で、物語が生まれるんですよね。ウエルシア1位というのはなんとなく予想していたんですけど、サンドラッグが2位、クリエイトが3位につけてくるとは思っていなかったんです。
でも、サンドラッグを応援する人のメールってすごく熱くて、「スーパー総選挙」でいうところのヤオコーを推している人と近い。オーケーもそうでしたが、上位の企業には、信仰心にも似たユーザーのサポートや推しがありますね。あと、誰もが入ると思っていたトモズ、セイムス、ココカラファインなどがギリギリトップ10入りしなかったりとか。
―票数は731票でした。前回の「スーパー総選挙」の5,149票比べると、まだまだですね…
そうですね。でも「スーパー総選挙」も、1回目と2回目で票数は3倍以上違うので、「ドラッグストア総選挙」も、これからどんどん伸びていく可能性はありますよ。総選挙前には、まだDgSの楽しみ方がわからないリスナーに向けて、DgSにはどういう商品が置いてあるのか、どういう楽しみ方があるのかを丁寧に1週間かけて全曜日で紹介していきました。レクリエーションや啓蒙活動があった上で、総選挙を行ったという感じですが、おおいに盛り上がったと思います。
DgSがライフラインに
リスナーの声から社会が見えた
―リスナーから寄せられたメールでは、どのような声が目立ちましたか。印象として残ったものがありましたら教えてください。
一番驚いたのは、食料品店としてスーパー代わりに使っているという声がすごく多かったこと。そこは男女関係なく、みんななぜか「うどん一玉いくら」とか、とにかくうどんがいかに安いかを強調してきて…最終的に一玉8円までありましたからね! あとは、パンが安いとか、生鮮食品も売っているとか、卵を買っているとか。
リスナーのDgSの利用状況から、日本の社会が透けて見えるようで非常に興味深かったです。なぜDgSで食品を買っているのかというと、家のそばにあったスーパーがどんどんつぶれているから。あと、高齢の両親が車がなくても行ける場所にあるから。都会の人だと、もらった処方箋を調剤薬局に持っていく時間がないから。ライフスタイルの変化に加えて、もともとあった店がなくなっていく状況のなかで、DgSがライフラインとして残っているケースが多いんだなと思いました。
―ポイントの話題も、かなり盛り上がっていました。
すごかったですね。毎月20日にTポイントが1.5倍になる、というウエルシアのポイント錬金術(笑)。生活者もみんな本気なんですよ。
メールをもらって思ったことですが、DgSってスーパー以上に生活と密接に関わっているのかもしれません。男性で家事をメインにやられる方もいらっしゃいますし、介護に関わっている方はDgSに行くんですよね。トイレタリー商品のストックや、おむつを買ったり、生活者の店なんだな、と思いました。
―ドラッグストアショーにも行かれたそうですね。
入って右手のパネルコーナー、あそこがめちゃくちゃ楽しかったです。あと5時間くらいいたかったくらい。ずっとあそこにいましたね。何がすごいって、協会が考えているセルフケア・セルフメンテナンス、今後地域の健康相談の拠点となるDgSの「ハブ」的役割のような話が、リスナーのメールにも書いてあったりするんですよ。ちゃんと伝わって機能しているんだと思いました。
あと、資料をみたら、食品の売上構成比が上がって3~4割くらいになっていて。リスナーがいっていた「DgSで食品を買う」っていうのが、完全に売上にも反映されていたので、なるほどねと。「DgSってどこも置いてあるものが一緒、どこが楽しいの?」という人は、結局10年くらい前のDgSの商品構成―化粧品があって、トイレタリーがあって、薬があって―という記憶のままなんですよ。通っている人はその構成比が変わっていることを知っているし楽しめているというのはあるんじゃないでしょうか。
DgSのヴィレヴァン化を期待
選択の負荷をいかに軽くできるか
―ご自身で、ドラッグストアは利用されていますか。
いきます。仕事帰りとか、仕事の合間とか。ぱぱすをよく利用してますね。dポイントも使えますし。買うものはトイレタリーとか化粧品、サプリですね。ネイチャーメイドのマルチビタミンやイージーファイバーとかも買っています。
―ドラッグストアとのエピソードがありましたら教えてください。
いちばん覚えているのは、何年か前の年末に仕事でめちゃくちゃ煮詰まって、プライベートでもあまりいいことがなくて、むしゃくしゃしてしょうがなかったんですけど、そのストレスを解消するのに「よし、DgSに行こう」と思って。もう大人買いだ!と、洗い流さなくていいトリートメントを、目に入った欲しい商品片っ端からバーッと全部買ったんですよ。6、7本くらい。
いつもだったら、こんなにたくさんいらないとか、そんなに内容違わないだろうとか、商品の裏側見てにらめっこしながら、口コミをネットで探して買うんですけど。もうテンションぶちあがりまして、嫌なこととか全部忘れられました。使い切るのに1年くらいかかりましたけど。
―(笑)。ちなみに、番組内でマツキヨのプライベートブランド(PB)「アルジェラン」が紹介されていましたが、DgSの商品、売場についての印象はいかがですか。
あれは素晴らしかったですね。アルジェランは絶対買おうと思っています。あのシャンプーでいちばんびっくりしたのは、洗浄成分にこだわっているところなんですよ。シャンプーにラウレス硫酸Naを使っていない。デザインがどうとか雰囲気とか、そんな話じゃないんだよ!と。DgSはメーカーさんとの付き合いがあるので難しいとは思うんですが…私がシャンプー、ボディソープを選ぶ基準はそういうところなので、これをもっと押し出せばいいのにと思いましたね。「これはこういう洗浄成分で○○です」とか。メーカーの推しているPOPじゃないPOPが見たい。
ドラッグストアショーでも、とにかくプロがつくった惹句(※1)であふれていて、きれいな言葉で何がいい、という情報が大量。判断がつかないじゃないですか。そうなると、絶対にキュレーター(※2)が必要になってくるので、そういう情報が売場にも欲しいですね。
―売場における、商品選択のサポートですね。小売の重要な役割だと思います。
DgSのヴィレッジ・ヴァンガード化を、私は期待しています。頭痛薬とかも、どんな成分がどう効くのか、私たちにはわかりにくいじゃないですか。どういう人に何がおすすめなのかを、店員さんの言葉で知りたいですね。
DgSって、いつもそうなんですけど、行って比較して検討するのは楽しいのに、あるタイミングから、選ぶことが精神的な負荷になって、すごくつらくなってくる。できるだけ種類がたくさんあるお店に行きたいと思いつつも、それが同時に疲れにもつながるんですよ。選ぶ負荷をどれだけ下げられるかっていうのは、結構大きいポイントになると思いますよ。
―最後に、DgSで働く店長の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも、本当にお疲れさまです。そしてありがとうございます。人の管理、在庫の管理、衛生管理、本部からは予達、予達といわれて本当につらいと思いますが、DgSにいくと気分が晴れたり、楽しいこともあって助かってます。どうかお体壊さないように頑張ってください!
―ありがとうございました。ドラッグストア総選挙、第二回目も楽しみにしております。
(インタビュー/店橋 花里 撮影/千葉 太一 )
※1 主に広告文などで使われる、人の心を引きつけるために飾られ、誇張されたキャッチ・フレーズ。煽り文句のこと。
※2 近年、各分野において専門的な知識を持ち、自ら情報を収集・編集し発信する役割を担う人々を指す。従来は、美術館・博物館などで展示・企画・構成などを行う学芸員などの呼称。
ジェーン・スー
コラムニスト、ラジオパーソナリティ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。また、毎週月~金の11:00~13:00に、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のパーソナリティを務める。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、最新対談集『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など。
「ジェーン・スー 生活は踊る」
TBSラジオ(FM90.5/AM954)にて毎週月~金曜日の11:00~13:00に放送中。今やTBSラジオの昼の顔となったジェーン・スーが、日々を軽やかなステップで渡っていくための「人情・愛情・生活情報」を、グッドミュージックとともに届け続けている。
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