パートタイマーの待遇が悪いのは当たり前?
通常の従業員よりも短い時間で働くパートタイマーは小売業にとってなくてはならない存在といえます。その一方で、パートタイマーは、どんな職務内容であっても、正社員に比べて待遇が悪いのが当たり前、といったような形で長らく捉えられてきたところもあるでしょう。
もっともわかりやすい例は、部門長などの重要な職務を担っていても、パートタイマーだったら正社員よりも待遇が悪くても仕方がない、という風な捉え方をされてしまうことです※1。
それに対し、パートタイマーの待遇を法律で向上させようという動きが、活発になってきています。とくに2018年の働き方改革法の成立に伴い、雇用形態によって待遇を差別しないという考え方(同一労働同一賃金)にも注目が集まっています。
じつは、この働き方改革法の前にも、すでにこうした動きはありました。直近で大きなものが、2014年のパートタイム労働法※2の改正(翌年4月施行)です。今回はこの点を中心に、対応のポイントを押さえていきたいと思います。
この改正では「パートタイムタイム労働者の待遇の原則」が新設されました。それは、通常の労働者(いわゆる正社員)と待遇を変える場合は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して「不合理であってはならない」というものです。
※1主なパートタイマーの担い手である(だった)主婦層の「夫の扶養内」で働きたいというニーズも背景にあるでしょう。こうした状況に対し、配偶者控除の条件金額引き上げなどの動きもあります。
※2通称パートタイム労働法(正式名称「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)は、正社員との間の待遇格差の対策として1993年に制定されました。
パートタイマーの働き方を3つの区分に分ける
具体的にはどのようなことか見ていきましょう。まず、扱いの差異を判断する際に、ポイントとなるのは「職務の内容」「人材活用の仕組み」の2つです。
職務の内容は業務の内容及び責任のことを指します。(正社員のように)部門長を任されているといったケースはもちろんのこと、正社員と同じ職務内容や責任を負っているかどどうかを見ます。
「人材活用の仕組み」には、人事異動があるかどうか(やその範囲)などがはいります。正社員には異動はあるけど、パートタイマーは地域(店舗)限定勤務といった場合は、人材活用の仕組みが違うということになります。
そしてこの2つの観点から、パートタイマーの働き方を3つに分け、各々、どのような扱いにしなければいけないのかをまとめたのが次の図です。
ここで注意したいのは、無期雇用か有期雇用かでは分類しない、ということです。この改正で、無期雇用に限定されていた「差別的取扱いの禁止」の対象が、有期雇用のパートタイマーにも広げられたからです。現状、パートタイマーは有期雇用というケースも多いことから※3、法律の実効性が高められたとも言えます。
※3こうした状況に対し、勤続が長いパートタイマーの無期雇用化を促す法改正も行われています。
更衣室や休憩室などの利用は平等に
では、どのような扱いが問題になるのでしょうか。「賃金」「教育訓練」「福利厚生」の3つの観点で行わなければいけない対応をまとめたのが次の図です。
図で見てわかるとおり「通常の労働者と同視すべき人」は差別的な取扱いがすべて「禁止」となっています。職務内容も転勤条件なども正社員と同様であれば、勤務が短時間(かつ有期雇用)であっても、賃金、教育訓練、福利厚生のすべての面で正社員と同一にすべき、ということです。
このなかでも注意したいのが「福利厚生」に分類される、給食施設や休憩室、更衣室などの利用です。これらは、職務内容の差異に関係なく、配慮が「義務」とされており、差別禁止に次ぐ強い規定となっています。パートタイマーだからという理由だけで、社員がふだん当たり前に利用している設備を利用できないといったような状況ではいけないということです。
それ以外の項目に関しては、規定はあるものの、「均衡を考慮」などと表現されていて、実際にイメージがしづらい部分もあるでしょう。なかでも「賃金」については、どう考えるべきかが気になるところです。こうした状況をふまえ、働き方改革法に伴うかたちで、具体例を示したガイドラインがつくられました。次回からは、この内容について解説していきます。