小売業新しい働き方研究所

知っておきたい「労務管理」基本のキ

第10回パートタイマーへの「手当」はどこまで必要?

職務内容や転勤範囲などが違うパートタイマー(短時間労働者のこと、以下同様)の待遇について、いわゆる正社員(通常の労働者のこと、以下同様)とのバランスをどう考えるべきなのでしょうか。今回は2018年の働き方改革法成立に伴い定められた「指針」をもとに、その考え方について解説してきたいと思います。

  • Facebook
  • Twitter
  • Line
  • Hatena

給与も正社員とのバランスをとることが必要?

前回は、職務内容や転勤範囲などが同じパートタイマーの待遇は正社員と原則、同一でなければいけない(差別的な取り扱いをしてはならない)ということや、職務内容が違うパートタイマーへも食堂・休憩室・更衣室が正社員と同じように利用できるよう配慮すべきということを説明しました。

このような「同じ」待遇のことを「均等待遇」と言います。これに対し職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して求められる「バランスの取れた」待遇のことを「均衡待遇」と言います。

法律※1では、正社員とパートタイマーや有期雇用労働者との待遇差が、職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して「不合理であってはならない」ことが定められています。

給与(賃金)も、待遇差が「不合理ではあってはならない」ことが求められるものの1つです。2018年の働き方改革法成立によって、条文上で「待遇」とされていた部分が「基本給、賞与その他の待遇」と変更されることが決まり、そのことがより明確にされました※2。

そして注意が必要なのは、「不合理であってはならない」待遇に給与を含めることが、この変更によって「新たに決められた」わけではない点です。

現在も、給与に関する均等・均衡待遇への配慮は必要であり、後述するように、非正規労働者と正社員との給与差に関して「不合理」を認める判決が最近、次々と出されているからです。

※1 この内容は、パートタイマーに関しては、現行の通称パートタイム労働法8条に、有期雇用労働者に関しては労働契約法20条に定められています。

※2 通称パートタイム労働法の対象が、有期雇用労働者にまで広げられ、通称「パートタイム・有期雇用労働法」となります。施行は2020年4月で、中小企業への適用は2021年4月からです。

「不合理」とされる「待遇差」はどんなもの?

さて、待遇差が「不合理であってはならない」と言っても、どこまでが不合理で、どこまでがそうではないのか、その判断は難しいところでしょう。

この点、2018年の働き方改革法成立に伴って出された「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下、「指針」)が参考になります。

これは、2016年に策定された「同一労働・同一賃金ガイドライン案」をベースに、その内容が補強され、正式に指針化されたものです※3。

基本的な考え方を大まかに捉えると、待遇差の理由が、雇用形態(有期雇用か無期雇用か)や就業形態(パートタイムかフルタイムか)で、それ以外の明確な理由がない場合や、各企業で決めた賃金制度趣旨にあった支給がされていない場合などが「問題になる」というものです。

つまり、賃金制度趣旨からすれば当然支払われるべきものが、有期雇用だから、パートタイムだからという理由だけで支払われていなければ問題となるということです。逆に、雇用形態や就業形態以外の明確な理由がある場合や、賃金制度趣旨に沿っていることがきちんと説明ができるのであれば問題になりません。

なお、ここでいう「問題になる」とは、法律で定められた「不合理であるもの」と認められる可能性がある場合を指し、「不法行為(法律違反)」として訴えられたら、相応の支払い(損害賠償)が発生する可能性もあるということです。

※3   正式な適用は、改正法の適用時期と同じ(中小企業を除き2020年4月~)です。

一律ナシはNG、合理的な理由があればOK

では、具体的にはどのように考えればいいのでしょうか。まず、支給される目的やその性質が比較的わかりやすい「手当」から見ていきましょう。

たとえば、「役職手当」は、「店長」といった役職の内容に対して支払う性質のものですので、パートタイマーだからナシというケースは問題になります。ただし、所定労働時間に比例した分を支払うことは、問題にならない例として挙げられています。たとえば、所定労働時間が正社員の半分のパートタイマーの手当が通常の半分といったことです。

同様に、通勤手当や出張手当は、「通勤していること」「出張したこと」に対して、手当を支払うものです。ですから、これもパートタイマーだからナシ、というのは問題になります。ただし、フルタイム(週5日)の場合は定期券相当額を支給、週3日以下の従業員には、日額の交通費を支給といった差を設けるのは、問題ないとされています。

つまり、正社員ではないから、手当が一律ナシは問題だけども、その有無や金額に合理的な説明があれば(「不合理ではない」といえるため)OKということです。これらを含めその他、指針の手当の例をいくつか表にまとめました。

特に注意すべきは、前述したように、この「指針(旧・同一労働同一賃金ガイドライン案)」に沿ったと思われるような、給与面の待遇差を「不合理」とする判決が最近、次々と出ていることです。

たとえば、有期雇用の従業員へも「作業手当」「給食手当」「通勤手当」「皆勤手当」などを支払うべきという判決(2018年6月1日/12月21日・ハマキョウレックス事件)や、同じく有期雇用の従業員へも「住宅手当」などを支払うべきという判決(2019年2月20日・メトロコマース事件)です。

いずれも、手当の趣旨からすれば、有期雇用だから支払わないというのは不合理だ、と判断されたわけです。

こうした動きをふまえ、次回は賞与や基本給についても、解説したいと思います。

著者プロフィール

小林麻理
小林麻理コバヤシマリ

社会保険労務士、ライター。社労士事務所ワークスタイルマネジメント代表。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業後、NTTデータ入社。商業界「販売革新」編集記者などを経て2013年からライターとして活動。かねてから強い関心のあった人事・労務、働き方の問題に深く取り組むため、社会保険労務士資格を取得。2018年社労士事務所ワークスタイルマネジメントを開設(URL:http://workmanage.net)。