小売業新しい働き方研究所

知っておきたい「労務管理」基本のキ

第11回「パートタイマーにも賞与」は常識になる?

前回は、今後求められる有期雇用労働者やパートタイマーの給与の考え方のうち、「手当」について解説しました。今回は賞与や基本給についてみていきましょう。

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「手当」の趣旨にそった支給がされているか

まず、前回解説した「手当」の考え方について簡単におさらいしておきましょう。賃金制度趣旨に沿って支払いがされていることが重要で、雇用形態(有期雇用であること)や就業形態(パートタイマーであること)だけを理由として、手当を一律ナシするのは、問題になるというものでした。

逆に、合理的な理由があれば問題にはなりません。指針の考え方の例について、図表をもう1度、みておきましょう。

こうした指針を踏まえ、裁判でも、手当の「名称」ではなく、手当の「趣旨」によって、不支給が問題かどうかの判断をしています。

たとえば、「住宅手当」について、前回も触れたハマキョウレックス事件※1では、「住宅に実際に要する費用の補助」との趣旨から、異動がない契約社員に支給しないのは合法(不合理でない)とされました。

一方で、「住宅の実際の負担に関わらず支給されており、福利厚生的な位置づけ」とされた案件(メトロコマース事件※2)では、契約社員に「住宅手当」を支給しないのは違法(不合理だ)とされています。

そのため、手当について、支給実態や位置づけがどうなっているか、企業は改めて見直す必要が出てきていると言えます。

※1:2018年6月1日・最高裁判決。有期雇用の契約社員(ドライバー)と正社員の給与格差について争われました。

※2:2019年2月20日・東京高裁判決。有期雇用の契約社員(販売員)と正社員の給与格差について争われました。

2019年2月に出た「アルバイト職員にも賞与」の判決

こうした考え方は、賞与でも同様です。業績貢献に応じて賞与を支給としている場合、パートタイマーへも貢献に応じた部分について同一の支給をしなければなりません。職務内容や貢献等にかかわらず正社員には全員賞与支給、パートタイマーへは全員不支給、などとしている場合は問題となります。

賞与に関しても、アルバイト職員(時給制の有期雇用労働者)にも支払うべきという判決(大阪医科大学事件)が今年2月に出て、注目を集めました。

このケースでは、賞与は「就労していることへ自体への対価」の性質であるとされ、就労していたことには正社員と変わりがないアルバイト職員にも相応の賞与が支給されるべき、とされたのです。

賞与は、労務の対価の後払い、功労褒賞、生活費の補助、労働者の意欲向上など様々な性質があることをふまえ、判決では、支給実態に照らし合わせた企業内の実質的な位置付けが重要視されています。

ですから、賞与についても、どのような「趣旨」で支払っているのかを企業において改めて定義しておく必要があります。

なおこの事件では、組織内の名称が「アルバイト職員」ですが、フルタイムで勤務していたということから、通常の短時間労働者(いわゆるパートやアルバイト)とは違うとは言えます。

それでも、「正社員=賞与あり、非正規社員=賞与なし」(で問題ない)という日本人がいままで当たり前と捉えてきた固定観念を覆した判決と言えるでしょう。

さまざまな要素で構成される基本給をどう考えるか

では基本給はどのように考えればいいのでしょうか。指針における基本給の原則の考え方は、正社員と同一の「職業経験・能力」や「成果」「職能」「勤続年数」に応じた部分に関しては同一の賃金を支払わなければならないというものです。

つまり、正社員に対して「職能給」「成果給」「勤続給」などを支給している場合、パートタイマーへも対応する「職能給」「成果給」「勤続給」を支払わなければならないということです。そのため、正社員には販売目標に達した分「成果給」を支払っているのに、パートタイマーには支払わない、というのは問題となります。

ただし、「職務内容、配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的実態」などに応じて、金額の差を設けるのは構わないとなっています。そのため、たとえば、販売目標の達成責任がある正社員が、それがないパートタイマーよりも高額の基本給をもらうことは問題ない例として挙げられています。賞与と含めて、整理したのが次の図表です。

基本給は、様々な要素がからみあうため、賞与と手当以上に判断が難しいと言えるでしょう。そうしたなか、基本給の格差についても、不合理だと認める判例が出てきました。次回は、そうした判例も含めた、現状の正社員と非正規社員の待遇差をとりまく状況や考え方をまとめていきたいと思います。

著者プロフィール

小林麻理
小林麻理コバヤシマリ

社会保険労務士、ライター。社労士事務所ワークスタイルマネジメント代表。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業後、NTTデータ入社。商業界「販売革新」編集記者などを経て2013年からライターとして活動。かねてから強い関心のあった人事・労務、働き方の問題に深く取り組むため、社会保険労務士資格を取得。2018年社労士事務所ワークスタイルマネジメントを開設(URL:http://workmanage.net)。