取得義務化はパートタイマーも対象
2019年4月から、年10日以上の有給を付与されている従業員に対し、年5日の有給を取得させるよう、企業側に義務付けられることになりました。1人最大30万円という罰金もあるため、現場での対応が急務となっています。
さらに「年10日以上の有給を付与されている従業員」には、店長を含む管理監督者、契約社員やパートタイマーも含まれていることに注意が必要です。ここで、パートタイマーにも有給があるの?と思われた方のために、その基本を押さえておきましょう。
1週間の所定労働時間が30時間未満※1のパートタイマーには、その「所定労働日数」に応じた有給が付与されることとなっています(これを比例付与と言います)。具体的には、下記の表のようになります。
この日数は、通常の労働者の所定労働日数よりも短い分、有給日数も短くなるという考え方で定められています※2
※1:30時間以上の場合、有給の日数は通常の労働者と同じになります。
※2:具体的な計算方法は「週所定労働日数÷5.2日(厚生労働省で定めた通常の労働者の1週間の所定労働日数)」×通常の有給日数」です。たとえば、勤続が半年で週の所定労働日数が3日のパートタイマーは、3日÷5.2日×10日=5.7日なので、端数切捨てで5日といった具合です。
有給の日数は「基準日」の所定労働日数で決める
ここで注意したいのは、基準となるのが「所定労働日数」ということです。週の所定労働日数が決められている場合は、それを基準にします※3。
なお、「所定労働日数」は、有給を付与するタイミング(基準日)に決められた日数を使用します。そのため、基準日以降に所定労働日数が増えたとしても、有給日数は変わりません(もちろん、増やす分には問題ありません)。
では、「所定労働日数」が基準だとすると、通常の労働者と同じ日数働いているようなパートタイマーの有給はどのようになるのでしょうか。結論から言うと、通常の労働者と同様の扱いになります。つまり、1日あたりの所定労働時間が4時間でも、所定労働日数が5日であれば、同じ日数(半年間勤務で10日)の有給が付与されるということです。
ただし、このように有給の「日数」は同じですが、有給の対象となる「時間」が短いため、休んだ日に支払われる給与も当然、所定労働時間に応じたものになります。
※3:週所定労働日数が決められていない場合は、1年間の所定労働日数を使用します。たとえば、1年間で48~72日が所定労働日数の場合は、1週間で3日と同じ有給日数となります。
パートタイマー人材にとって最も重要なのは「給与」ではない?
このようにパートタイマーにまで有給を取得させるとなると、頭が痛いと思われる現場が多いと思います。だからこそ今回の対応を、人材確保の観点で捉えてみてはどうでしょうか。
パーソルキャリアの2018年7月時点の調査によると、バイト選びの際に最も重視するポイントは、「勤務日数・時間・シフト変更・休みの融通がきくこと」が、(高校生、大学生、フリーター、主婦、シニア)全体で17.5%と最も多く、主婦に限れば23.5%が最も重視すると回答しています。
それに対し「給与が高いこと」は全体で7.2%(6位)、主婦は4.1%(7位)にとどまっています。つまり、多くのパートタイマー人材が、「給与」よりも「働きやすさ」が重要と考えているということです。
また、リクルートジョブズの調査によると三大都市圏の2018年11月度平均時給は前年同月より27円増加の1,052円で2006年1月の調査開始以来、過去最高を更新とあります。こうした状況で、時給競争でしのぎを削るのは消耗戦になる恐れもあります。
そのため「働きやすさ」を向上させることで、人材確保するという視点がこれからますます重要になってくるでしょう。今回の有給取得義務化への対応も、「働きやすさ」を向上させるものの1つとして取り組んでいただければと思います。